JP3479676B2 - 合成膨潤性ケイ酸塩の連続製造方法 - Google Patents

合成膨潤性ケイ酸塩の連続製造方法

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JP3479676B2 JP16502093A JP16502093A JP3479676B2 JP 3479676 B2 JP3479676 B2 JP 3479676B2 JP 16502093 A JP16502093 A JP 16502093A JP 16502093 A JP16502093 A JP 16502093A JP 3479676 B2 JP3479676 B2 JP 3479676B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は合成膨潤性ケイ酸塩の連
続製造方法に関するものであり、さらに詳しくはスメク
タイトに類似した構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩、特
に3−八面体型スメクタイトに類似した構造を有する合
成膨潤性ケイ酸塩の連続合成方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】スメクタイトに類似した構造を有する合
成膨潤性ケイ酸塩として、2−八面体型スメクタイトに
類似した構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩と3−八面体
型スメクタイトに類似した構造を有する合成膨潤性ケイ
酸塩がある。2−八面体型スメクタイトに類似した構造
を有する合成膨潤性ケイ酸塩としてモンモリロナイト、
バイデライト、ノントロナイト等があり、3−八面体型
スメクタイトに類似した構造を有する合成膨潤性ケイ酸
塩の代表的なものとして、ヘクトライト、サポナイト、
スチブンサイトが知られている。これらは天然にも存在
するが、これらの合成法として、各種原料を配合して調
製したスラリーを水熱合成する方法があり、何れも水中
で膨潤して分散し粘性をおび、陽イオン交換能を有する
ようになる。サポナイト類似構造を有する合成膨潤性ケ
イ酸塩の製法として特公昭63−6486号公報、ま
た、スチブンサイト類似構造を有する合成膨潤性ケイ酸
塩の製法として特公昭63−6485号公報が開示され
ている。
【0003】一方、ヘクトライト型粘土鉱物の合成法の
主なもとしては次の3通りの方法が知られている。 (1)ニューマンは硫酸マグネシウムおよび塩化リチウ
ムを含む熱水溶液に炭酸ナトリウムおよび水ガラスを含
む水溶液を加え、沈殿物を含む系を還流煮沸した後、オ
ートクレーブ中で高温高圧で反応させ、反応混合物を濾
過、水洗して副生塩を除去した後乾燥してヘクライト型
ケイ酸塩を合成している(バーバラ・スーザン・ニュー
マン、特公昭46−813号公報)。
【0004】(2)近藤はアンモニア水溶液とマグネシ
ウム塩水溶液とを反応させ、生成した水酸化マグネシウ
ムスラリーにケイ酸ソーダ水溶液を加えて水酸化マグネ
シウム−シリカゲル複合沈殿体をつくり、濾過・水洗を
行って副生電解質を除き、水に分散させた後、リチウム
イオン、その他のアルカリ金属イオンあるいはフッ素イ
オンを添加し、100〜270℃で水熱反応させて、生
成物を乾燥してヘクトライト型ケイ酸塩を合成している
(近藤三二、特公昭51−33080号公報)。
【0005】(3)鳥居等は、ケイ酸とマグネシウム塩
の均質混合溶液をアルカリ溶液で沈殿させ、濾過、水洗
により副生溶解質を除去した後、リチウムイオン、その
他の一価陽イオンおよび要すればフッ素イオンを添加
し、100℃ないし300℃の条件下で水熱反応を行
い、次いで乾燥することによりヘクトライト型粘土鉱物
に類似した構造をもつ一般式 [ Si8 (Mg6-x-yLixNay)O 20{(OH)4-Z FZ}](x+y)-
・(x+y)M+ (ここにx、y、zの値は0≦x2,0≦y2,0<x
+y<2,0≦z<4とし、M+ はアルカリ金属イオ
ン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン
などの一価陽イオンである。)のヘクトライト型ケイ酸
塩を合成している(鳥居一雄他、特公昭61−1284
8号公報)。
【0006】しかし、ニューマンの方法では、前処理工
程がかなり複雑で時間と手間がかかる上、水熱反応時に
は大過剰のナトリウムイオンおよび反応には関与しない
塩素イオン、炭酸イオンなど陰イオンが大量に存在する
ため、生成するケイ酸塩の純度はあまり高くないといっ
た欠点を有する。しかも反応終了後に大量に生成した副
生塩を濾過・水洗で除去するため生成ケイ酸塩が膨潤、
分散してきて濾過・水洗が非常に困難となる欠点も有す
る。
【0007】また、近藤の方法では水酸化マグネシウム
−シリカゲル複合沈殿体をつくり、濾過・水洗して副生
塩を除去した後水熱合成を行うため、ニューマンの方法
の欠点は解消されているが、原料の水酸化マグネシウム
−シリカゲル複合沈殿体はアンモニア水中にマグネシウ
ム塩水溶液をゆっくり滴下して水酸化マグネシウムを生
成させた後、水ガラス水溶液をゆっくり滴下して水酸化
マグネシウム−シリカゲル複合沈殿体をつくり、攪拌し
て均質にするため、この場合も前処理に時間と手間がか
かるといった欠点を有し、しかも水熱合成時に膨潤性粘
土が生成するのにかなり長時間を要するといった欠点も
認められる。
【0008】一方、鳥居等の方法は、遊離ケイ酸とマグ
ネシウム塩の混合溶液から得た均質沈殿物を出発原料と
して用いることにより、ニューマンや近藤の方法の欠点
を克服し、優れた陽イオン交換能あるいはゲル形成能を
有するヘクトライトに類似した構造を有するケイ酸塩が
比較的短時間で得られるという点で有利な方法である。
【0009】しかし、3−八面体型スメクタイトに類似
した構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩の製造において、
鳥居等の方法も含めて、従来開示されている製造法では
原料調製後の水熱反応は、全てバッチ式方法で行われて
いる。しかもその際の反応温度は100〜350℃、反
応時間は1〜24時間といわれているが、実際的には1
80〜250℃前後で3〜10時間程度の反応時間が必
要である。また、得られる水熱合成物を経済的に製造し
ようとすると、オートクレーブに仕込むスラリー濃度を
出来るだけ高める必要があるが、スラリー濃度を高め過
ぎると粘性が大きくなり(反応が進むにつれて粘性が非
常に増大する)、攪拌による均一化が困難になり、製品
の品質と純度が低下する。
【0010】しかし、水熱合成後の乾燥工程を考える
と、スラリー濃度をできるだけ高くする必要があり(ス
ラリー濃度は2〜20%位のできるだけ高い方が好まし
い)、このため高粘性スラリーの抜き出しという面倒な
ハンドリングも必要になる。それに大型の耐圧反応容器
は非常に高価であり、更に高粘性のスラリーの攪拌は高
トルクのために極めて困難であること等も考え合わせる
と、バッチ式水熱反応は大量生産には不向きであり、こ
れが製造コスト高の主因の一つになっており、この解決
方法の出現が強く望まれていた。
【0011】
【発明が解決しようとする課題】本発明はスメクタイト
に類似した構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩、特に3−
八面体型スメクタイトに類似した構造を有する合成膨潤
性ケイ酸塩の製造において、調製原料より水熱合成する
際に採用されていた従来のバッチ式水熱合成反応の問題
点を解決し、品質と純度に優れた製品を短時間に経済的
にかつ安全に連続製造する方法を提供するものである。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者等は上記の課題
に鑑み鋭意検討を行った結果、パイプリアクター内で高
温度で連続的に水熱合成反応を行うことにより、大量生
産が可能で、製造コストの大幅な低下が可能であること
を見い出し本発明に到達した。
【0013】本発明の請求項1は、スメクタイトに類似
した構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩を合成するに当た
り、各種原料を配合して調製して得たスラリーを、パイ
プリアクター内で200℃ないし400℃の条件下で連
続的に水熱反応を行うことを特徴とする合成膨潤性ケイ
酸塩の連続製造方法である。
【0014】本発明の請求項2は、3−八面体型スメク
タイトに類似した構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩を合
成するに当たり、ケイ酸とマグネシウム塩の均質混合溶
液あるいは更にアルミニウム塩を配合した均質混合溶液
と、アルカリ溶液よりシリコン・マグネシウム複合体あ
るいはシリコン・マグネシウム・アルミニウム複合体を
つくり、副生溶解質を除去して該シリコン・マグネシウ
ム複合体あるいはシリコン・マグネシウム・アルミニウ
ム複合体を分離・洗浄及び濃縮した後、リチウムイオン
および/又はその他の陽イオン、および要すればフッ素
イオンを添加して得たスラリーを、パイプリアクター内
で200℃ないし400℃の条件下で連続的に水熱反応
を行うことを特徴とする請求項1記載の合成膨潤性ケイ
酸塩の連続製造方法である。
【0015】本発明の請求項3は、ケイ酸とマグネシウ
ム塩の均質混合溶液をアルカリ溶液で沈殿させ、濾過、
水洗により副生溶解質を除去した後、リチウムイオン、
その他の一価陽イオンおよび要すればフッ素イオンを添
加して得たスラリーを、パイプリアクター内で200℃
ないし400℃の条件下で連続的に水熱反応を行うこと
を特徴とする下記一般式で表されるヘクトライト型粘土
鉱物に類似した構造 [ Si8 (Mg6-x-yLixNay)O 20{(OH)4-Z FZ}](x+y)-
・(x+y)M+ (ここにx、y、zの値は0≦x2,0≦y2,0<x
+y<2,0≦z<4とし、M+ はアルカリ金属イオ
ン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン
などの一価陽イオンである。)をもつ請求項1記載の合
成膨潤性ケイ酸塩の連続製造方法である。
【0016】本発明を以下に詳しく説明する。本発明は
スメクタイトに類似した構造を有する合成膨潤性ケイ酸
塩の製造における全ての水熱合成反応を対象としてい
る。その中でも、特に3−八面体型スメクタイトに類似
した構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩の製造を対象にし
ており、ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイト類
似構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩の製造における水熱
合成反応は当然その対象となる。
【0017】ヘクトライト、サポナイト、スチブンサイ
ト類似構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩として、例えば
ヘクトライト類似構造を有する物質として特公昭61−
12848号公報に記載されている下記の物質、 [Si8 (Mg6-x-yLixNay)O 20{(OH)4-Z FZ}](x+y)-
・(x+y)M+ (ここにx、y、zの値は0≦x2,0≦y2,0<x
+y<2,0≦z<4とし、M+ はアルカリ金属イオ
ン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン
などの一価陽イオンである)、サポナイト類似構造を有
する物質として、特公昭63−6486号公報に記載さ
れている下記の物質、 [(SiO2)a・(MgO)b・(Al2O3)c/2・(OH)4-d・Fd]x-・Mx/y y+ (ここに[ ]内は結晶格子成分、Mはアルカリ金属カ
チオン、アルカリ土類金属カチオンおよびアンモニウム
イオンからなる群から選んだ少なくとも1個のイオン、
a,b,c,d,xおよびyは以下の値をもつ、6≦a
≦7.5,4.5≦b≦6,0.5≦c≦3.5,0≦
d≦4,0.5≦x≦1,1≦y≦2)、スチブンサイ
ト類似構造を有する物質として特公昭63−6485号
公報に記載されてる下記の物質、 [(SiO2)8・(MgO2/3)a・(OH)2/3a+b-c・Fc]b-・Mb/y y+ (式中のa,b,cおよびyの値は0<a<10,0<
b≦1,0≦c≦2/3a+bおよび1≦y≦2とし、
Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ア
ンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンか
らなる群から選んだ少なくとも1個の陽イオンである)
があり、これらの製造における水熱合成反応が本発明の
対象となる。
【0018】上記の特許公報には、ヘクトライト、サポ
ナイト、スチブンサイト類似構造を有する合成膨潤性ケ
イ酸塩の水熱合成反応前のスラリー、即ち、ケイ酸とマ
グネシウム塩の均質混合溶液あるいは更にアルミニウム
塩を配合した均質混合溶液とアルカリ溶液よりシリコン
・マグネシウム複合体あるいはシリコン・マグネシウム
・アルミニウム複合体をつくり、副生溶解質を除去して
該シリコン・マグネシウム複合体あるいはシリコン・マ
グネシウム・アルミニウム複合体を分離・洗浄及び濃縮
した後、リチウムイオンおよび/又はその他の陽イオ
ン、および要すればフッ素イオンを添加して得たスラリ
ーについて詳細に記載されており、本発明においてはこ
れらのスラリーを使用することができるが、本発明の対
象となる水熱合成反応に用いるスラリーは、これらに記
載されている内容に限定されるものではない。
【0019】また、特開昭62−292615号公報、
特開昭62−297210号公報、特開昭63−182
213号公報の特許請求の範囲に記載されている3−八
面体型スメクタイトに類似した構造を有する合成膨潤性
ケイ酸塩の製造における水熱合成反応も当然本発明の対
象となる。
【0020】本発明の特徴は、これらのスラリーの水熱
合成反応を行うに当たり、従来実施されていたバッチ式
方式に変えて、パイプリアクター内で連続的に処理する
点にある。
【0021】しかし、連続式オートクレーブの開発及び
それを用いた水熱合成反応研究の歴史は古く、1930
年頃にさかのぼるが、実操業上いくつかの問題点があ
り、その後、その装置の改良と各種化合物の水熱合成研
究は山崎等により意欲的に行われ[水熱化学実験所報
告、頁1〜4、Vol.3,No.1,1979。同、
頁56〜58、Vol.6,No.1,1986。日本
鉱業会誌、頁519〜523、103,1194(’8
7−8)、農業機械学会誌、頁79〜84、Vol.5
1,No.5(1989)、特開平4−284886号
公報など]、また、国内特許でもいくつか開示されてい
るが(特公昭51−35390号公報、特公平2−51
36号公報、特開昭51−145497号公報、特公昭
54−10956号公報、特公昭54−10957号公
報、特開昭62−260713号公報)、これまでに3
−八面体型スメクタイトに類似した構造を有する合成膨
潤性ケイ酸塩を合成するに当たり、原料スラリーの水熱
合成反応を、パイプリアクター内で連続的に行ったとい
う報告はない。
【0022】バッチ式オートクレーブの場合、前記した
ように量産或いは大量処理を考えると巨大な円筒装置が
必要になるが、肉厚円筒の内圧に対する被破壊強度は、
容器壁の厚さではなく、円筒の内径と外径の比の関数で
示される。バッチ式で大量処理を行う場合、高圧になる
にしたがって容器そのものが大砲の砲身状となり、設備
投資額の巨大化のみならず、安全工学上問題点は大き
い。
【0023】しかし、パイプリアクター内で連続的に原
料スラリーの水熱合成反応を行うと、反応速度が大きけ
れば、高温に加熱された細管中を高速通過させるだけで
反応は完結し、かつ、大量処理の可能性がある。それ
に、温度の昇降、容器の開閉、原料と生成物の詰め変え
等の手間は解消し、此の点のメリットも極めて大きいと
判断される。
【0024】そこで、本発明者等は、各種の水溶液反応
では、水の臨界点付近(300〜400℃、200〜3
00気圧)で、反応速度が著しく増大すると言われてい
る点に着目し、鋭意研究を行い、パイプリアクター内で
連続的に、原料スラリーの水熱反応を行うことにより極
めて短時間で反応が完了し、得られた製品は品質面で問
題ないことを確かめた。この結果、バッチ式の欠点が解
消され、経済的及び安全面でも有利に大量生産が可能で
あることを見出し、本発明に到達した。
【0025】以上述べた如く、本発明の特徴はパイプリ
アクターで連続的に水熱合成反応を行う点にある。パイ
プリアクターを含むパイプラインシステムの一例を図1
に示すが、本発明は勿論これに限定されるものではな
い。本発明においては、水熱合成部がパイプよりなって
いることが肝要であり、その前後のシステムは特に限定
しない。また、パイプの向きは垂直方向或いは水平方向
の何れも使用でき、また、一定の傾きを持たせて使用す
ることもできる。パイプリアクターに用いるパイプはス
トレートパイプでも蛇管式パイプでも差し支えない。
【0026】図1に於いて、1は原料スラリータンクで
あり、高圧定量ポンプ2で熱交換器3へ原料を送りこ
み、ここで加熱された原料スラリーは次の加熱反応管
(パイプリアクター)4で加熱状態で水熱合成反応を行
い、反応生成物5を得る。加熱反応管4は一段式又は多
段式であり、熱交換器3を通過後、数本並列に並べて水
熱合成反応を行うことも勿論可能である。また、加熱反
応管4の中に螺旋式の羽根を設けたり、或いは攪拌用の
羽根を設けて攪拌することにより、スラリーの均一化、
反応の促進を図ることもできる。加熱反応管4の直径は
約1〜10cmが適当であり、全長は数m〜数10mが
一般的であるが、生産規模と反応条件により適宜決めれ
ばよい。
【0027】反応温度は各種のテスト結果と各種装置の
耐圧能力等より、およそ200〜400℃が適切である
と判断される。200℃以下では反応速度が小さ過ぎ、
また、400℃以上では装置内圧力が高くなりすぎ構成
している各種装置の耐圧能力等に問題がある。
【0028】水熱合成反応後の生成物5は100℃前後
で乾燥され、場合により粉砕処理をして製品にされる
が、用途により、乾燥工程以後を省くこともできる。な
お、水熱合成反応が進むにつれてスラリーは極めて高粘
性になり、バッチ式の場合は強力な攪拌器を使用しても
スラリーの均質性が失われ、反応速度の低下、製品の不
均質性と純度の低下等を招き易いのに、パイプリアクタ
ーの場合は、細いパイプラインに、ある程度以上のスピ
ードでスラリーを通過させることにより、水熱合成の全
工程を通じ均質なスラリー状態を保つことができるた
め、前記の欠点を改善できる。
【0029】
【効果】スメクタイトに類似した構造を有する合成膨潤
性ケイ酸塩、特に3−八面体型スメクタイトに類似した
構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩の合成において、各種
原料を配合し、調製して得た原料スラリーを用いて水熱
反応するに当たり、従来採用されていたバッチ式オート
クレープをパイプリアクターに変えることにより、連続
的に製造が可能になる。さらに工業生産規模の耐圧装置
として反応温度を高めることが可能になり、また、水熱
合成の全工程を通じ均質なスラリー状態を保ち易いた
め、反応時間の大幅な短縮に貢献することができるとと
もに、高純度で均質な製品が得られる。
【0030】このため、バッチ式で数時間を要した反応
時間が数分〜数10分で終了する。それ故、小型の設備
で大量生産するのに向いている。また、目的によって
は、より細いパイプラインを復数個通過させることによ
り、より一層のスラリーの均質化が容易になり、このた
め、より一層、反応速度のアップと高純度で均質な製品
を得ることもできるようになる。
【0031】それに、バッチ式の場合、大量生産をしよ
うとすると容器の大型化が必要であるが、大型の耐圧反
応容器は非常に高価であり、更に大型化により高粘性の
スラリーの攪拌は高トルクのために極めて困難になり高
価な攪拌機が必要になるが、パイプリアクターの場合
は、小型の装置で大量生産が可能であり、設備費も安く
なる。また、温度の昇降、容器の開閉、原料と生成物の
詰め変え等の手間は解消し、この点のメリットも極めて
大きい。
【0032】
【実施例】以下に実施例により本発明を更に詳細に説明
するが、本発明の主旨を逸脱しないかぎり実施例に限定
されるものではない。次に下記の一般式で表されるヘク
トライト型粘土鉱物に類似した構造 [ Si8 (Mg6-x-yLixNay)O 20{(OH)4-Z FZ}](x+y)-
・(x+y)M+ (ここにx、y、zの値は0≦x2,0≦y2,0<x
+y<2,0≦z<4とし、M+ はアルカリ金属イオ
ン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオン
などの一価陽イオンである。)をもつ膨潤性ケイ酸塩の
水熱合成の例を示す。
【0033】(水熱合成)10リットルのビーカーに水
4リットルを入れ、3号水ガラス(SiO2 28重量
%、Na2 O9重量%、モル比3.22)860gを溶
解し、95%硫酸162gを攪拌しながら一度に加えて
ケイ酸溶液を得る。次に水1リットルに塩化マグネシウ
ム6水和物[MgCl2 ・6H2 O、一級試薬(純度9
8%)]560gを溶解し、ケイ酸溶液に加えて均質混
合溶液を調製し、2規定水酸化ナトリウム溶液3.6リ
ットル中に攪拌しながら5分間で滴下する。直ちに得ら
れた反応均質複合沈殿物を濾過し、充分に水洗した後、
水200ミリリットルと水酸化リチウム1水和物[Li
(OH)・H2 O]14.5gとよりなる溶液を加えて
スラリー状とし、水熱合成用のサンプル(原料スラリ
ー)を作成した。表1に示した条件で水熱合成テスト
後、80℃で乾燥し、粉砕して生成物の評価テストを行
った。生成物の品質の評価として、陽イオン交換能(容
量)及び見掛け粘度を測定して、バッチ式と連続式の生
成物の比較を行った。
【0034】(測定方法) (1)陽イオン交換容量(meq./100g):メチ
レンブルー吸着法 (2)見掛け粘度:テスト用サンプルを水に2重量%で
分散させ、回転粘度計(東京計器株式会社 B型粘度
計)を用い、6回転/分(剪断速度5.58sec-1
で見掛け粘度を測定した。
【0035】(実施例1〜5)図1に示したパイプライ
ンシステムを用いて水熱合成した。加熱反応管の内径は
14,3mm、長さ10,000mmのものを用いた。
なお、加熱反応管は内部に羽根や攪拌装置は含んでいな
い。生成物の陽イオン交換能(容量)及び見掛け粘度を
測定した結果を表1に示す。
【0036】
【表1】 実施例 反応温度 反応時間 陽イオン交換容量 見掛け粘度 (℃) (分) (meq/100g) (Pa・s) 1 240〜260 10 105 2.4 2 240〜260 15 108 2.1 3 290〜310 7 107 2.9 4 290〜310 10 108 2.3 5 340〜360 5 108 2.6
【0037】(比較例1〜4)5リットルのバッチ式オ
ートクレーブ(攪拌装置付き)を用いて表2に示した条
件で水熱合成し、生成物の陽イオン交換能(容量)及び
見掛け粘度を測定した結果を表2に示す。
【0038】
【表2】 比較例 反応温度 反応時間 陽イオン交換容量 見掛け粘度 (℃) (分) (meq/100g) (Pa・s) 1 200 300 99 1.9 2 225 180 101 1.4 3 200 15 45 0.1 4 225 15 61 0.2
【0039】実施例1〜5、比較例1〜4の陽イオン交
換容量と見掛け粘度の値より、生成物の品質については
パイプリアクターによる連続合成品の方が通常のバッチ
式オートクレーブ合成のものより高いことが判る。ま
た、反応時間の短い比較例3〜4の生成物は陽イオン交
換容量と、見掛け粘度の値が極めて低いため、まだ、反
応が不十分であることが判る。従って、比較例1〜4よ
りさらに反応温度を高め、反応時間は比較例1〜4より
さらに短くして連続的に反応させた実施例1〜5の結果
から、本発明の効果が大きいことが判る。なお、ヘクト
ライト型粘土鉱物以外の3−八面体型スメクタイトに類
似した構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩の合成について
も上記とほぼ同様に試験したが、最適条件は異なるとし
ても、ほぼ同じ反応結果が得られた。以上によりパイプ
リアクターで200℃ないし400℃の条件下で連続的
に水熱反応を行うことにより好結果が得られることが明
らかである。
【0040】
【発明の効果】本発明は、スメクタイトに類似した構造
を有する合成膨潤性ケイ酸塩、特に3−八面体型スメク
タイトに類似した構造を有する合成膨潤性ケイ酸塩の連
続製造方法を提供するものであり、パイプリアクター内
で高温度で連続的に水熱合成反応を行うことにより、品
質と純度に優れた製品を効率よくかつ安全に大量生産で
きる。本発明の合成膨潤性ケイ酸塩の連続製造方法によ
り、調製原料より水熱合成する際に採用されていた従来
のバッチ式水熱合成反応の諸問題点を解決し、製造コス
トの大幅な低下が可能であるので産業上の利用価値が高
い。
【図面の簡単な説明】
【図1】 パイプリアクターを含むパイプラインシステ
ムを示す。
【符号の説明】
1 原料スラリータンク 2 高圧定量ポンプ 3 熱交換器 4 加熱反応管(パイプリアクター) 5 反応生成物
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 安藤 誠之助 東京都三鷹市井の頭3−24−1 (56)参考文献 特開 昭62−292615(JP,A) 特開 昭59−21517(JP,A) 特開 昭58−181718(JP,A) 特開 昭62−292616(JP,A) 特開 昭62−297210(JP,A) 特開 昭58−185431(JP,A) 特開 昭59−19540(JP,A) 特開 昭56−63819(JP,A) 特開 昭48−42976(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C01B 33/20 - 33/46

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 合成膨潤性ケイ酸塩を合成する工程にお
    いて、各種原料を配合して得たスラリーを、240〜4
    00℃に加熱したパイプ内で連続的に水熱反応を行うこ
    とを特徴とする合成膨潤性ケイ酸塩の連続製造方法。
  2. 【請求項2】 合成膨潤性ケイ酸塩がヘクトライト、サ
    ポナイト又はスチブンサイトである請求項1記載の合成
    膨潤性ケイ酸塩の連続製造方法。
  3. 【請求項3】 合成膨潤性ケイ酸塩が、一般式: [Si8(Mg6-x-yLixNay)O20[(OH)4-ZFZ]](x+y)-・(x+y)M+ (ここにx、y、zの値は0≦x<2,0≦y<2,0
    <x+y<2,0≦z<4とし、M+はアルカリ金属イ
    オン、アンモニウムイオン、アルキルアンモニウムイオ
    ンなどの一価陽イオンである)、一般式: [(SiO2)a・(MgO)b・(Al2O3)c/2・(OH)4-d・Fd]x-・Mx/y
    y+ (ここに[ ]内は結晶格子成分、Mはアルカリ金属カ
    チオン、アルカリ土類金属カチオンおよびアンモニウム
    イオンからなる群から選んだ少なくとも1個のイオン、
    a,b,c,d,xおよびyは以下の値をもつ、6≦a
    ≦7.5,4.5≦b≦6,0.5≦c≦3.5,0≦
    d≦4,0.5≦x≦1,1≦y≦2)、又は一般式: [(SiO2)8・(MgO2/3)a・(OH)2/3a+b-c・Fc]b-・Mb/y y+ (式中のa,b,cおよびyの値は0<a<10,0<
    b≦1,0≦c≦2/3a+bおよび1≦y≦2とし、
    Mはアルカリ金属イオン、アルカリ土類金属イオン、ア
    ンモニウムイオンおよびアルキルアンモニウムイオンか
    らなる群から選んだ少なくとも1個の陽イオンである)
    で示される請求項1記載の合成膨潤性ケイ酸塩の連続製
    造方法。
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