JP3479656B2 - 高信頼性窒化ケイ素質焼結体およびその製造方法 - Google Patents

高信頼性窒化ケイ素質焼結体およびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、自動車,機械装置,化
学装置,宇宙航空機器などの広い分野において使用され
る各種機械構造部品の素材として利用でき、β型窒化ケ
イ素粉末を原料として用い、特に高い破壊靭性値と優れ
た強度を有し、強度のばらつきの小さい信頼性の高いフ
ァインセラミックス材料である高信頼性窒化ケイ素質焼
結体およびその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】窒化ケイ素を主成分とする焼結体は、常
温および高温で化学的に安定であり、高い機械的強度を
有するため、軸受等の摺動部材,ターボチャージャロー
タなどのエンジン部材として好適な材料である。
【0003】従来より、高強度の窒化ケイ素質焼結体を
得るには、α型の窒化ケイ素を主成分とする原料粉末が
必要と言われており、一般に、α型窒化ケイ素の含有率
が90重量%以上の市販粉末が使用されている。
【0004】従来、β型の窒化ケイ素質焼結体を製造す
るに際してα型の窒化ケイ素を主成分とする原料粉末を
用いるのは、 1.α型の窒化ケイ素は微粉末であり、焼結性が高いこ
と、 2.α型の窒化ケイ素は焼結中にα型からβ型への相転
移が起こり、柱状結晶が発達した組織となることにより
強度および靭性が向上すること、等の理由からであっ
た。
【0005】さらに、α型の窒化ケイ素を原料粉末とし
て用いて、一部の粒子を数十ミクロンの長さまで粒成長
させることにより、破壊靭性を向上させる手法(In−
situ composite)(例えば、Cera
m.Eng.Sci.Proc.10巻7−8号 63
2−645ページ 1989年)等も行われていた。
【0006】
【発明の解決しようとする課題】しかしながら、上述し
たα型の窒化ケイ素を出発原料とする窒化ケイ素質焼結
体は、α型からβ型への相転移によりβ型の窒化ケイ素
の柱状結晶が発達した組織となるため、破壊靭性値は向
上するものの、生成したβ型の柱状結晶は大きさが不揃
いで強度のばらつきが大きくなり、各種機械構造部品と
して使用する際の信頼性に問題があった。
【0007】例えば、上記のIn−Situ Comp
ositeでは、破壊靭性は10MPa√m以上に向上
するものの、ワイブル係数は20以下であった。
【0008】一方、β型を主成分とする窒化ケイ素粉末
としては、高純度の焼結グレードの粉末や耐火物の原料
として使用する低純度の粉末が知られている。また、β
型を主成分とする窒化ケイ素粉末を原料とする焼結体と
しては、J.Am.Ceram.Soc.57巻25ペ
ージ(1974年)や、特開昭58−151371号等
が知られている。
【0009】しかしながら、β型を主成分とする窒化ケ
イ素粉末は粒子が粗く、α相の含有率が低いため、柱状
組織が得られず、高強度の焼結体は得られないことか
ら、高強度のβ型窒化ケイ素質焼結体を製造するための
原料粉末としては使用されていなかった。
【0010】本発明者の一人は、先に、高窒素分圧下で
高温での焼結が可能となるガス圧焼結法を開発しこれを
提案した(特許第1,247,183号)。また、ガス
圧焼結法によると、従来は焼結性が低いと考えられてい
たβ型窒化ケイ素粉末を用いても、高密度まで焼結でき
ることを示した(Jaurnal of materi
als science 第11巻1103〜1107
ページ(1976年)および特公昭58−151371
号)。
【0011】さらに、別の特許出願(平成元年3月29
日付三友出願)で、高純度のβ型窒化ケイ素粉末の粒度
分布を調整することにより、高強度のβ型窒化ケイ素質
焼結体が得られることを示した。
【0012】さらにまた、粒度調整手法の改良(特願平
3−338833号,特願平3−245868号)や焼
成方法の改良(特願平3−339012号,特願平3−
246113号)により低純度の粉末を使用しても強度
が向上することを示した。さらにまた、β型の窒化ケイ
素粉末に適するように焼成手法を改良(特願平3−33
9008号,特願平3−338844号)することによ
り、強度や靭性が向上することを示した。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記の
β型の窒化ケイ素を原料粉末として用いた焼結手法で
は、強度向上のために数十ミクロンの長さの柱状結晶を
発達させるが、従来の手法ではこの柱状結晶の大きさが
不揃いなため、焼結体の強度にばらつきを生ずることが
あって信頼性は十分とは言えないという課題があった。
【0014】
【発明の目的】本発明は、上述した従来の課題にかんが
みてなされたもので、β型窒化ケイ素粉末を原料とし、
焼結助剤の種類と量や焼成条件などを工夫することによ
り、焼結体中の数十ミクロンの柱状結晶の大きさ・密度
・分布を制御することにより、強度および靭性に優れる
だけでなく、強度のばらつきが少なく、信頼性が高い窒
化ケイ素質焼結体を提供することを目的としている。
【0015】
【課題を解決するための手段】本発明に係わる窒化ケイ
素質焼結体は、上記のように、β型窒化ケイ素粉末を原
料とし、β型窒化ケイ素粉末に適した焼結助剤の種類と
量を制御して成形した後、焼結体中の粗大粒の数と大き
さの分布に注目して、粗大粒の大きさが揃った焼結体が
得られる焼成条件で焼成することにより、強度および靭
性が優れていることに加えて、高い信頼性を備えた焼結
体が得られることを新規に発明した。
【0016】すなわち、本発明に係わる高信頼性窒化ケ
イ素質焼結体の製造方法は、α型とβ型とから構成され
る窒化ケイ素粉末においてβ型を80重量%以上含む原
料粉末に、周期律表の第IIIa族の酸化物,酸化マグ
ネシウム,酸化カルシウム,酸化ジルコニウム,窒化ア
ルミニウムから選ばれる1種または2種以上の酸化物あ
るいは窒化物系焼結助剤を0.2重量%以上10重量%
以下添加して成形した後、500気圧以下の窒素ガス圧
下で1600℃以上2100℃以下の温度で焼成し、2
気圧以上の窒素ガス圧下で1800℃以上2100℃以
下の温度で粒成長の熱処理を行って粗大粒子の数と大き
さを制御することにより、強度および靭性が優れている
ことに加えて、高い信頼性を備えた窒化ケイ素質焼結体
が得られることを新規に発明した。
【0017】この窒化ケイ素質焼結体は、微細粒と粗大
粒からなる一種の複合材料となり、強度および靭性値が
高く、強度のばらつきの原因となる粗大粒の大きさをそ
ろえたことにより高い信頼性を有する。
【0018】本発明に係わる窒化ケイ素質焼結体の機械
的特性について説明する。
【0019】一般に、セラミックスの強度のばらつきは
ワイブル係数で表される。そして、ワイブル統計によれ
ば、破壊確率Fは、 の分布を持つ。ここで、σは強度,Vは体積,σは定
数である。
【0020】ワイブル係数は、この式でmとして定義さ
れ、この値が大きいほどばらつきは小さくなる。一般
に、高強度の構造用セラミックスでは、ワイブル係数が
10ないし20であり、特別なプロセスで注意深く製造
されたもので20ないし30である。
【0021】本発明に係わる窒化ケイ素質焼結体は、機
械的特性の面からは、気孔率5%以下,3点曲げ強さ5
00MPa以上,ワイブル係数40以上,破壊靭性7M
Pa√m以上であることが好適である。
【0022】多孔質の材料では、従来から、ワイブル係
数の大きい材料は知られているが、強度が低く構造用材
料として不適である。従って、本発明では、5%以下の
気孔率を有することが望ましい。
【0023】また、3点曲げ強さ500MPa未満で
は、エンジン部品などの構造用材料としては、強度が低
く不適である。さらに、ワイブル係数40未満の窒化ケ
イ素材料は従来から存在するが、信頼性に乏しい。さら
にまた、破壊靭性7MPa√m未満では構造用材料とし
ては使いにくい。
【0024】そこで、本発明では、窒化ケイ素質焼結体
を粗大粒とマトリックス粒の複合組織とすることによ
り、気孔率5%以下,3点曲げ強さ500MPa以上,
ワイブル係数40以上,破壊靭性7MPa√m以上の全
ての機械的特性を兼ね備えた材料を提供することができ
る。
【0025】次に、本発明に係わる窒化ケイ素質焼結体
の組織について説明する。
【0026】本発明に係わる窒化ケイ素質焼結体の組織
は、マトリックス粒子中に粗粒を含有する複合構造を持
ち、マトリックス粒子は、平均粒径1.5μm以上3μ
m未満の柱状のβ−Si粒子から構成され、粗粒
は、平均粒径がマトリックス粒子の平均粒径の2倍以上
で3μm以上10μm以下、平均長さ10μm以上15
0μm以下の柱状のβ−Si粒子から構成され
る。
【0027】この場合、マトリックス粒子の平均粒径が
3μm以上となると強度が低下する。また、粗粒の平均
粒径がマトリックス粒子の平均粒径の2倍未満では粗粒
による強靭化が不十分で破壊磁性が低くなる。さらに、
粗粒の平均粒径が3μm未満では粗粒による強靭化が不
十分で破壊靭性が低くなる。粗粒の平均粒径が10μm
超過では粗粒の粒内破壊が顕著になるため破壊靭性が低
下する。粗粒の平均長さが10μm未満では強靭化が不
十分で破壊靭性が低くなる。粗粒の平均長さが150μ
mを超えると粗粒が欠陥として働くため強度が低下す
る。
【0028】さらに、ワイブル係数を高くするには、粗
粒は均一に分散していた方がよい。この場合、粗粒の分
布としては、欠陥として働く30μm以上の長さの2個
もしくは3個以上の粗粒が10μm以下の距離に近接な
いしは接触しているものの割合が、30μm以上の長さ
の全粗粒の10%以下であるように分散させるのがよ
い。そして、30μm以上の長さの粗粒が複数個近接す
ると、近接した塊が欠陥として作用するため強度が低下
する。その近接距離は10μm以下で強度低下は顕著と
なるため、10μmよりも大きく離れた方がよい。ま
た、近接したものの割合が10%を超えると強度のばら
つきが顕著となるため、30μm以上の長さの全粗粒の
10%以下がよい。
【0029】また、単位体積当りの粗粒の数もワイブル
係数に影響を及ぼし、ワイブル係数を高くするには、単
位体積当りの粗粒の数に上限と下限が存在する。この場
合、焼結体の破面を観察したとき1mm当りに観察さ
れる30μm以上の長さの粗粒の数が20個以上200
個以下であるように粗粒の数を制御する。30μm以上
の長さの粗粒が1mm当り20個未満では強靭化への
寄与が小さく靭性が低くなる。また、30μm以上の長
さの粗粒は欠陥として働くため、この割合が1mm
り200個を超えると強度が低下する焼結体の割合が増
えて、ワイブル係数が低下する。
【0030】ここで、粗粒の数の測定法としては次のよ
うに行う。
【0031】焼結体を曲げ試験などにより破壊し、破面
を造る。破面を走査型電子顕微鏡などで観察し、写真を
とる。写真上で、一定面積に存在する長さ30μm以上
の長さに相当する粗粒の数を数える。
【0032】また、単位体積当りの粗粒の体積もワイブ
ル係数に影響を及ぼし、ワイブル係数を高くするために
は、単位体積当りの粗粒の体積分率に上限と下限が存在
する。つまり、30μm以上の長さの粗粒が焼結体の1
体積%以上15体積%以下の割合で含まれるとワイブル
係数が高くなる。粗粒の体積分率が1%未満では強靭化
への寄与が小さく靭性が低くなる。15%を超えると、
破壊起点として働く30μmの長さの粗粒の割合が大き
くるため、強度が低下する焼結体の割合が増えて、ワイ
ブル係数が低下する。
【0033】次に、本発明に係わる窒化ケイ素質焼結体
の製造方法について説明する。
【0034】上記の組織を得るための窒化ケイ素質焼結
体の製造方法は、特に限定しないが、一方法として、β
型窒化ケイ素原料を使用する下記の方法がある。
【0035】この方法で、出発原料粉末は、α型とβ型
とから構成される窒化ケイ素粉末においてβ型を80重
量%以上含む窒化ケイ素粉末を用いる。β型を出発原料
とすると、粒成長は添加したβ型粒子の粒成長によって
柱状結晶が発達する。従って、原料粉末を粒度調整する
ことにより、粒成長のための核の大きさが揃った原料を
使用することができる。この粉末を適当な条件で焼成す
るとβ型の粗粒の大きさが揃った材料が得られる。
【0036】一方、α型を出発原料とすると、焼成過程
で先ずα型はβ型へ相転移を起こす。この過程で数ミク
ロンのβ型の粒子ができて、以後の粒成長は生成した粒
子の粒度分布に従って起こる。相転移により生成したβ
型の粒子の大きさは制御が難しく大きなばらつきを持つ
ため、β型の粗粒の大きさはばらつく。従って、β型が
80重量%未満では相転位による核が発生して強度のば
らつきが大きくなる。
【0037】出発原料の粒度は特に限定しないが、一般
に、β型の原料は粒度が粗いため、粉砕分級処理が必要
であり、平均粒径1.0μm以下に粉砕した粉末を使用
するのがよい。さらに、粒成長のための核の大きさの分
布を揃えるためには、原料の粒度分布を制御する手法
(例えば、特願平3−338833号)を適用してもよ
い。
【0038】焼結助剤としては、周期律表の第IIIa
族(原子番号21,39,57〜71,89)の酸化
物,酸化マグネシウム,酸化カルシウム,酸化ジルコニ
ウム,窒化アルミニウムから選ばれる1種または2種以
上の酸化物あるいは窒化物を0.2重量%以上10重量
%以下添加する。焼結助剤の種類と量はこの範囲内で原
料の純度や製品の用途等に応じて決められるが、0.2
重量%より少ないと焼結性が低下して緻密な焼結体が得
られず、10重量%よりも多いと粒界相が弱くなるため
強度が低下する。
【0039】成形法は、静水圧プレス成形,射出成形,
鋳込み成形など通常の成形法で成形する。
【0040】焼成は、500気圧以下の窒素ガス圧下で
1600℃以上2100℃以下の温度で行われる。必要
な窒素ガスの圧力は焼成温度によって異なり、高温で焼
成するほど高圧の窒素雰囲気を使用する。必要な最低圧
は、1600℃以上1750℃以下で1気圧,1800
℃で2気圧,1900℃で5気圧,2000℃で10気
圧である。所定圧力よりも低いと窒化ケイ素は熱分解を
起こし、窒素を放出してケイ素となるので好ましくな
い。また、窒素ガス圧力が500気圧超過では焼結体中
に気孔が残り完全には緻密化しない。焼成の後、2気圧
以上の窒素ガス圧下で1800℃以上2100℃以下の
温度で熱処理を行い、平均粒径が3μm以上7μm以下
となるまで柱状のβ型窒化ケイ素の粗粒を成長させる。
【0041】ここで、焼成と熱処理は別の工程で行って
もよいが、通常は同一の炉を用いた一連の工程で、焼成
スケジュールを制御して焼成工程の後に熱処理工程を連
続して行う。また、必要に応じて、粒成長のための熱処
理を熱間静水圧処理の条件で行うことができる。
【0042】焼成工程において、焼成温度が1600℃
未満では緻密化せず、2100℃超過では粒成長が著し
くなり強度が低下する。また、熱処理工程において、熱
処理温度が1800℃未満では緻密化は可能であるが粗
大粒の成長が不完全であり、微細粒と粗大粒が混ざった
組織が得られない。熱処理温度が2100℃を超えると
粒成長が著しくなり強度が低下する。
【0043】焼成時間および熱処理時間は温度や助剤の
種類・量によっても異なるが、一般に、焼成時間は緻密
化が達成される最少時間がよい。また、熱処理時間は粗
大粒の大きさ・密度・分布を考慮して決められるが、通
常は30分から4時間程度の間がよい。
【0044】粗粒の粒成長は、上記の条件で温度および
焼成時間を制御することにより行われるが、粗粒の粒径
の平均値が3μm以上10μm以下となるように熱処理
される。粗粒の粒径の平均値が3μm未満では柱状結晶
の発達が不十分であり靭性が低下する。粗粒の粒径の平
均値が10μmを超えると粗大粒の大きさのばらつきが
大きくなり信頼性が低下する。
【0045】さらに、信頼性を上げるには請求項2ない
し4に記載の組織が得られるように、熱処理温度と時間
を制御して粒成長の程度を制御するとよい。
【0046】上記した窒化ケイ素質焼結体の製造方法に
よって、均一な粗大粒を含んだ複合組織が得られる理由
は明確ではないが、次のように推察される。
【0047】β型窒化ケイ素粉末を出発原料として用い
ると、粗大粒の成長の核となる粒子は原料粉末の粒度分
布に従って均一に分布する。この核から粒成長が始まる
と、粒成長が起こった核の近傍では、他の粒子は粗大粒
としての粒成長は抑制される。従って、大きさの揃った
粗大粒が均一に分布した組織が得られ、粗大粒の合体な
どによる強度低下が無いためワイブル係数が上昇する。
【0048】
【発明の作用】窒化ケイ素の焼結では、通常、α型の窒
化ケイ素が用いられ、焼成中にα型からβ型への相転移
が起こり、β型の柱状結晶が成長して強度や靭性を向上
させていたが、生成した柱状結晶の大きさは不揃いのた
め強度のばらつきが大きく、信頼性に乏しい材料であっ
たのに対して、本発明に係わる窒化ケイ素質焼結体およ
びその製造方法では、上記した構成としており、前記製
造方法の一例ではβ型の窒化ケイ素粉末を使用し、焼結
助剤の量や種類および焼成条件を制御して、得られた焼
結体中の粗大粒子の大きさ・密度・分布を制御すること
としているので、強度および破壊靭性値が高いだけでな
く、強度のばらつきが小さい信頼性の高い窒化ケイ素質
焼結体となる。
【0049】
【実施例】
(実施例1)平均粒径0.5μm,最大粒径2μmでβ
型含有量95重量%の窒化ケイ素粉末に、表1に示すよ
うに、酸化イットリウム0.8重量%と酸化ネオジム
1.2重量%を添加し、エタノールを添加した湿式ボー
ルミルにより94時間混合粉砕した。ついで、空気中で
スプレードライヤーを用いて乾燥した後、20MPaの
圧力で金型成形し、さらに200MPaの圧力でラバー
プレスを行うことにより、6mm×6mm×50mmの
成形体を得た。
【0050】次に、この成形体を黒鉛のガス圧炉を用い
て同じく表1に示すように100気圧の窒素ガス圧下で
1900℃で2時間焼成した後、300気圧の窒素ガス
圧下で2000℃で2時間焼成して本発明実施例1の窒
化ケイ素質焼結体を得た。
【0051】このようにして得た焼結体を800メッシ
ュのダイヤモンドホイールで平面研削し、3mm×4m
m×40mmの形状に加工し、JIS R 1601に
準じた室温3点曲げにより曲げ強さを測定し、また、J
IS R 1607に準じたSEPB法(試験片の3×
40mmの面にビッカース圧痕を加え、これから予亀裂
を生じさせ、この予亀裂から破壊する手法)により破壊
靭性値を求めた。ここで得られた焼結体中のβ型窒化ケ
イ素とα型窒化ケイ素の割合は表2に示すようにβ相1
00%であった。
【0052】また、同じく表2に示すように、この焼結
体の気孔率は1.1%,室温3点曲げ強さは689MP
aであり、破壊靭性値は8.5MPa√mであり、ワイ
ブル係数は53であった。
【0053】さらに、焼結体の破面を観察したところ、
表2の符号A欄に示すように、焼結体のマトリックス相
の粒子の平均粒径は1.5μmであり、表2の符号B欄
に示すように、直径3μm以上の粗大粒の平均粒径は
3.5μmであり、表2の符号C欄に示すように、直径
3μm以上の粗大粒の平均長さは50μmであった。さ
らにまた、表2の符号D欄に示すように、破面上で30
μm以上の長さの2個もしくは3個以上の粗粒が10μ
m以下の距離に近接ないしは接触しているものの割合は
3.0%であり、表2の符号E欄に示すように、1mm
当りに観察される30μm以上の長さの粗粒の数は6
8個であり、表2の符号F欄に示すように、30μm以
上の長さの粗粒の体積分率は3.2体積%であった。
【0054】このように、β型の窒化ケイ素原料粉末を
出発原料として、β型の柱状結晶の粗大粒の大きさを制
御することにより、ワイブル係数が大きい、すなわち強
度のばらつきが小さい高信頼性の窒化ケイ素質焼結体を
得ることができた。
【0055】(比較例1)平均粒径0.6μm,最大粒
径2μmでβ型含有量5重量%のα型窒化ケイ素粉末
に、表3に示すように、酸化イットリウム0.8重量%
と酸化ネオジム1.2重量%を添加し、エタノールを添
加した湿式ボールミルにより94時間混合粉砕した。つ
いで、空気中でスプレードライヤーを用いて乾燥した
後、20MPaの圧力で金型成形し、さらに200MP
aの圧力でラバープレスを行うことにより、6mm×6
mm×50mmの成形体を得た。
【0056】次いで、この成形体を実施例1と同じ工程
で焼成しそして加工を行うことにより、焼結体の特性を
測定した。
【0057】表4に示すように、ここで得られた焼結体
のβ相の割合は93%,気孔率は2%,室温3点曲げ強
さは740MPa,破壊靭性値は7.5MPa√mであ
り、強度および破壊靭性値は高かったが、ワイブル係数
は18であって、強度のばらつきは大きいものであっ
た。
【0058】さらに、焼結体の破面を観察したところ、
表4の符号A欄に示すように、焼結体のマトリックス相
の粒子の平均粒径は1.2μmであり、表4の符号B欄
に示すように、直径3μm以上の粗大粒の平均粒径は
8.2μmであり、表4の符号C欄に示すように、直径
3μm以上の粗大粒の平均長さは180μmであった。
さらにまた、表4の符号D欄に示すように、破面上で3
0μm以上の長さの2個もしくは3個以上の粗粒が10
μm以下の距離に近接ないしは接触しているものの割合
は18%であり、表4の符号E欄に示すように、1mm
当りに観察される30μm以上の長さの粗粒の数は2
40個であり、表4の符号F欄に示すように、30μm
以上の長さの粗粒の体積分率は18.6体積%であっ
た。
【0059】このように、α型の窒化ケイ素原料粉末を
出発原料として焼成すると、ワイブル係数が小さい、す
なわち強度のばらつきが大きい窒化ケイ素質焼結体とな
っていた。
【0060】(実施例2〜5) 実施例1と同じβ型含有量95重量%の窒化ケイ素粉末
を使用し、これに表1の実施例2〜5に示す組成の焼結
助剤を添加して、エタノールを添加した湿式ボールミル
により94時間混合粉砕した。ついで、空気中でスプレ
ードライヤーを用いて乾燥した後、20MPaの圧力で
金型成形し、さらに200MPaの圧力でラバープレス
を行うことにより、6mm×6mm×50mmの成形体
を得た。
【0061】次に、各成形体を黒鉛のガス圧炉を用いて
同じく表1の実施例2〜5に示す条件で焼成して本発明
実施例2〜5の窒化ケイ素質焼結体を得た。
【0062】このようにして得た窒化ケイ素質焼結体を
800メッシュのダイヤモンドホイールで平面研削し、
3mm×4mm×40mmの形状に加工し、JIS R
1601に準じた室温3点曲げにより曲げ強さを測定
し、また、JIS R 1607に準じたSEPB法
(試験片の3×40mmの面にビッカース圧痕を加え、
これから予亀裂を生じさせ、この予亀裂から破壊する手
法)により破壊靭性値を求めた。ここで得られた各焼結
体中のβ型窒化ケイ素とα型窒化ケイ素の割合は表2に
示すようにβ相が95%以上であった。
【0063】また、同じく表2に示すように、各焼結体
の気孔率,室温3点曲げ強さ,破壊靭性値,ワイブル係
数は、それぞれ気孔率5%以下,室温3点曲げ強さ50
0MPa以上,破壊靭性値7MPa√m以上,ワイブル
係数40以上であった。
【0064】さらに、焼結体の破面を観察したところ、
表2の符号A欄に示すように、焼結体のマトリックス相
の粒子の平均粒径は3μm未満であり、表2の符号B欄
に示すように、直径3μm以上の粗大粒はマトリックス
粒子の平均粒径の2倍以上であって平均粒径3μm以上
10μm以下および表2の符号C欄に示すように平均
さ10μm以上150μm以下であり、表2の符号D欄
に示すように、破面上で30μm以上の長さの2個もし
くは3個以上の粗粒が10μm以下の距離に近接ないし
は接触しているものの割合は10%以下であり、表2の
符号E欄に示すように、破面上で1mm当りに観察さ
れる30μm以上の長さの粗粒の数は20個以上200
個以下であり、表2の符号F欄に示すように、焼結体に
含まれる30μm以上の長さの粗粒の体積分率は1体積
%以上15体積%以下であった。
【0065】このように、β型の窒化ケイ素原料粉末を
出発原料として、β型の柱状結晶の粗大粒の大きさを制
御することにより、ワイブル係数が大きい、すなわち強
度のばらつきが小さい高信頼性の窒化ケイ素質焼結体を
得ることができた。
【0066】(比較例2〜6)実施例1と同じ原料粉末
を使用し、これに表3の比較例2〜6に示す組成の焼結
助剤を添加して、エタノールを添加した湿式ボールミル
により94時間混合粉砕した。ついで、空気中でスプレ
ードライヤーを用いて乾燥した後、20MPaの圧力で
金型成形し、さらに200MPaの圧力でラバープレス
を行うことにより、6mm×6mm×50mmの成形体
を得た。
【0067】次に、各成形体を黒鉛のガス圧炉を用いて
同じく表3の比較例2〜6に示す条件で焼成して本発明
比較例2〜6の窒化ケイ素質焼結体を得た。
【0068】このようにして得た窒化ケイ素質焼結体を
800メッシュのダイヤモンドホイールで平面研削し、
3mm×4mm×40mmの形状に加工し、JIS R
1601に準じた室温3点曲げにより曲げ強さを測定
し、また、JIS R 1607に準じたSEPB法
(試験片の3×40mmの面にビッカース圧痕を加え、
これから予亀裂を生じさせ、この予亀裂から破壊する手
法)により破壊靭性値を求めた。ここで得られた各焼結
体中のβ型窒化ケイ素とα型窒化ケイ素の割合を表4に
示す。また、各焼結体の気孔率,室温3点曲げ強さ,破
壊靭性値,ワイブル係数を同じく表4に示す。
【0069】さらに各焼結体の破面を観察し、表4の符
号A欄に示す焼結体のマトリックス相の粒子の平均粒
径、表4の符号B,C欄に示す直径3μm以上の粗大粒
の平均粒径および長さ、表4の符号D欄に示す破面上で
30μm以上の長さの2個もしくは3個以上の粗粒が1
0μm以下の距離に近接ないしは接触しているものの割
合、表4の符号E欄に示す破面上で1mm当りに観察
される30μm以上の長さの粗粒の数、表4の符号F欄
に示す焼結体に含まれる30μm以上の長さの粗粒の体
積分率をそれぞれ調べた。
【0070】表4に示すように、いずれの条件において
もワイブル係数が小さく、強度のばらつきが大きいもの
となっており、強度と信頼性が共に高い材料は得られな
かった。
【0071】
【表1】
【0072】
【表2】
【0073】
【表3】
【0074】
【表4】
【0075】
【発明の効果】本発明に係わる窒化ケイ素質焼結体の製
造方法は、α型とβ型とから構成される窒化ケイ素粉末
においてβ型を80重量%以上含む原料粉末に、周期律
表の第IIIa族の酸化物,酸化マグネシウム,酸化カ
ルシウム,酸化ジルコニウム,窒化アルミニウムから選
ばれる1種または2種以上の焼結助剤を0.2重量%以
上10重量%以下添加して成形した後、500気圧以下
の窒素ガス圧下で1600℃以上2100℃以下の温度
で焼成し、請求項1ないし4のいずれかに記載の組織が
発現するまで2気圧以上の窒素ガス圧下で1800℃以
上2100℃以下の温度で粒成長の熱処理を行う構成と
したから、気孔率5%以下,3点曲げ強さ500MPa
以上,ワイブル係数40以上,破壊靭性7MPa√m以
上である窒化ケイ素質焼結体を得ることが可能であり、
強度および靭性に優れていると共にワイブル係数が大き
く、強度のばらつきが少ない高信頼性の窒化ケイ素質焼
結体を提供することができるという著しく優れた効果が
もたらされる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 広 崎 尚 登 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社 内 (72)発明者 安 藤 元 英 神奈川県横浜市神奈川区宝町2番地 日 産自動車株式会社 内 (56)参考文献 特開 平2−255573(JP,A) 特開 平3−177307(JP,A) 特開 昭63−89459(JP,A) 特開 平2−175662(JP,A) 特開 平3−257070(JP,A) 特開 昭63−310771(JP,A) 特開 昭61−201663(JP,A) 特開 平5−139841(JP,A) 特開 平4−254472(JP,A)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 マトリックス粒子中に粗粒を含有する複
    合構造を持つ窒化ケイ素質焼結体であって、マトリック
    ス粒子は、平均粒径1.5μm以上3μm未満の柱状の
    β−Si粒子から構成され、粗粒は、平均粒径が
    マトリックス粒子の平均粒径の2倍以上で3μm以上1
    0μm以下、平均長さ10μm以上150μm以下の柱
    状のβ−Si粒子から構成されることを特徴とす
    る高信頼性窒化ケイ素質焼結体。
  2. 【請求項2】 破面上で30μm以上の長さの粗粒を含
    、2個もしくは3個以上の当該粗粒が、10μm以下
    の距離に近接ないしは接触している割合が、破面上で
    さ30μm以上の長さの全粗粒の10%以下である請求
    項1に記載の高信頼性窒化ケイ素質焼結体。
  3. 【請求項3】 焼結体の破面を観察したとき1mm
    りに観察される30μm以上の粗粒の数が20個以上2
    00個以下である請求項1または2に記載の高信頼性窒
    化ケイ素質焼結体。
  4. 【請求項4】 30μm以上の長さの粗粒が焼結体の1
    体積%以上15体積%以下の割合で含まれる請求項1な
    いし3のいずれかに記載の高信頼性窒化ケイ素質焼結
    体。
  5. 【請求項5】 α型とβ型とから構成される窒化ケイ素
    粉末においてβ型を80重量%以上含む原料粉末に、周
    期律表の第IIIa族の酸化物,酸化マグネシウム,酸
    化カルシウム,酸化ジルコニウム,窒化アルミニウムか
    ら選ばれる1種または2種以上の焼結助剤を0.2重量
    %以上10重量%以下添加して成形した後、500気圧
    以下の窒素ガス圧下で1600℃以上2100℃以下の
    温度で焼成し、請求項1ないし4のいずれかに記載の組
    織が発現するまで2気圧以上の窒素ガス圧下で1800
    ℃以上2100℃以下の温度で粒成長の熱処理を行うこ
    とを特徴とする高信頼性窒化ケイ素質焼結体の製造方
    法。
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