JP3475109B2 - 希土類元素ドープガラス - Google Patents

希土類元素ドープガラス

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JP3475109B2
JP3475109B2 JP02500699A JP2500699A JP3475109B2 JP 3475109 B2 JP3475109 B2 JP 3475109B2 JP 02500699 A JP02500699 A JP 02500699A JP 2500699 A JP2500699 A JP 2500699A JP 3475109 B2 JP3475109 B2 JP 3475109B2
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晃 及部
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は希土類元素ドープガ
ラス、特に、光ファイバまたは光導波路の形態をしたレ
ーザ、光増幅器等の能動的光素子に用いるのに適した希
土類元素ドープガラスに関するものである。
【0002】
【従来の技術】希土類元素をコアに含む機能性光ファイ
バとして、希土類元素イオンの電子準位間の誘導放出に
よる光増幅を利用したファイバレーザ[参考文献1,
2]や光増幅器[参考文献3,4]が報告されている。
前記光ファイバの中でもErドープファイバは光通信に
使用されている1.55μm帯の波長で光増幅作用を示
すため、光電変換を必要としないインライン光増幅器と
して注目されている。
【0003】さらに、機能性希土類ドープファイバの特
性を改善するために、希土類元素と同時にAlを共ドー
プする技術がある。Al共ドープは以下に示すように2
つの利点を有している。
【0004】第一に、一般の光ファイバに使用されてい
るSiO2 ガラスまたはGeO2 −SiO2 系ガラスで
は約0.1wt%以上の希土類元素を添加すると、いわ
ゆる濃度消光を生じる欠点があった。これは、希土類イ
オン同士がガラス中で凝集(クラスター化)することに
よって励起された電子のエネルギーが、非放射的な過程
を介して失われ易くなる現象であり、発光の寿命や効率
が損なわれる。Al共ドープはこの欠点を解消し、クラ
スター化することなしに比較的高濃度の希土類元素をド
ープできる[参考文献5]。
【0005】希土類元素を高濃度にドープすると、励起
光と希土類イオンとの作用長が短くても充分な増幅利得
が得られるため、小型のレーザまたは光増幅器が実現で
きる。
【0006】第二に、Alを共ドープすると希土類イオ
ンの発光スペクトルが変化する場合がある。特に、石英
系Erドープガラスの1.55μm帯の発光スペクトル
はAl共ドープによってブロードになり、増幅できる波
長帯域が拡大する。これは、波長多重伝送系の光増幅器
として使用する場合に大きな利点となる。
【0007】希土類元素とAlを共ドープした光ファイ
バの作製方法としては、従来、MCVD法をべースとし
た溶液含浸法(MCVD溶液含浸法)があり、例えばB.
J.Ainslie ら[参考文献6]によって報告されている。
【0008】その方法は、まず、通常の方法に従って、
出発石英ガラス管の内側に比較的低屈折率のクラッドと
なるガラス層を堆積し、次にその内側に、通常よりも低
い温度下でスート状の多孔質コアガラス層を堆積する。
次いで、希土類イオンとAlイオンを含む溶液を多孔質
コアガラス層の気孔中に含浸し、乾燥、脱水工程を経た
後、He気流中で多孔質コアガラス層を焼結・無孔化す
る。以下、通常の手順に戻り、コラプスして中実棒状の
光ファイバ母材を得るものである。
【0009】この方法によれば、希土類イオン同士がガ
ラス中でクラスター化することなく、希土類元素を3w
t.%以上添加できるとされている。
【0010】参考文献 1)C.J.Koester and E.Snitzer : App1.0pt., 3.1182(19
64). 2)S.B.Poo1e et al. : E1ectron.Lett.,21,P.738(198
5). 3)R.J.Mears et al. : Electron.Lett.,23,P.1026(198
7). 4)E.Desurvire et al. : 0pt.Lett.,12,888(1987). 5)K.Arai et al. : J.App1. Phys.,59.3430(1986). 6)B.J.Ainslie et a1. : Mater. Lett.,6,139(1988).
【0011】ちなみに、前記の溶液含浸法自体は古くか
ら知られた手法であり、近年では石英系光ファイバ母材
に希土類や遷移金属等の気相法では添加しにくい元素を
ドープする方法として広く採用されるようになった。V
AD法または外付け法で作製した多孔質ガラス(スー
ト)母材に溶液を含浸してドープトガラスを作製するこ
とも勿論可能である。
【0012】周知の通り、VAD法または外付け法(い
わゆるアウトサイドプロセス)では、MCVD法(内付
け法)と比較して、大型、均質でかつ光学特性に優れた
ガラス母材を容易に作製することができる。
【0013】そこで本件発明者らはMCVD溶液含浸法
と同様に、VAD法をべ一スとする溶液含浸法(VAD
溶液含浸法)でもAlドープが可能ではないかと考え、
以下に示す実験1、実験2の方法でAlドープ石英系ガ
ラスの作製を試みた。尚、この実験1、実験2はそれぞ
れ本発明の後記する比較例1、比較例2でもある。
【0014】(実験1=比較例1)VAD法で作製され
た平均かさ密度0.4〜0.5g/cm3 の純石英組成
のスート母材を、種々の異なる濃度の塩化アルミニウム
を溶解したメチルアルコール溶液に12〜24時間浸漬
して含浸を行った。含浸終了後、その溶媒を蒸発させて
乾燥させ、酸素気流中で約950℃まで加熱してスート
中に残留したアルミニウムの塩を酸化・定着した。この
ときのスートの乾燥重量に対する添加されたAl2 3
の重量分率(以下含浸濃度という)は0.3〜3wt.
%であった。
【0015】次いで、中心温度1500℃の電気炉中
を、体積比にして1%のCl2 と5%のO2 を含むHe
ガス雰囲気に保ちつつ、毎分2mmの速度でスートを降
下させて焼結を行った。
【0016】焼結後の母材はいずれの場合も完全に無孔
化せず、冷却後にクラックが発生した。また、Alを高
濃度含浸した母材は、内部に”す”(空洞)が生じてい
た。X線回折の結果、ガラス相特有のハローは認められ
ず、大部分が図1のようにクリストバライト(Si
2 )及びムライト(3Al2 3 ・2SiO2 )の高
融点結晶相に変化しているのが確認された。
【0017】Alと同時にErを含浸した場合もやはり
無孔化せず、透明ガラスは得られなかった。
【0018】(実験2=比較例2)VAD法によりP2
5 を1.1wt.%ドープした、平均かさ密度0.4
〜0.5g/cm3 の石英系スート母材を作製した。こ
れに実験1と同じAl溶液を含浸し、同一条件で乾燥・
酸化及び焼結を行った。
【0019】この母材は完全には無孔化せず、実験1よ
り程度は少ないもののクラックが生じた。X線回折の結
果はやはりハローを示さず、クリストバライトとリン酸
アルミニウム(AlPO4 )の高融点結晶相の析出が認
められた。
【0020】Alと共にErを含浸した場合でも、やは
り透明ガラスは得られなかった。Erを高濃度含浸した
母材では図2のように、リン酸エルビウム(ErP
4 )の析出も認められた。
【0021】以上の実験1、2により透明ガラスが得ら
れなかったのは、前記MCVDをべースとする方法に比
べて、本実験1、2のVAD溶液含浸法では焼結温度が
低いことにあると考えられた。即ち、高融点結晶相の析
出が焼結の進行を阻害したことによるものと考えられ
た。
【0022】ちなみに、Al2 3 −SiO2 系状態図
によれば、ムライトとクリストバライトの共融点は15
87±10℃であり、共融組成(Al2 3 ≒8wt.
%)よりも高シリカ側の組成では、液相線温度は共融点
とクリストバライトの融点1726±5℃の間にある。
従って、実験1の焼結温度1500℃では一旦析出した
ムライトとクリストバライトが融解することはない。こ
れらの高融点結晶相を消失させるには、その組成に応じ
て1587℃ないし1726℃よりも高い温度が必要で
ある。
【0023】一方、実験2の組成に対応するAl2 3
−P2 5 −SiO2 系の詳細な状態図は報告されてい
ないが、事情は実験1の場合と同様であると推察され
る。例えばP2 5 −SiO2 系でP2 5 =1.1w
t.%における液相線温度(クリストバライトが消失す
る温度)は1700℃以上である。またAl2 3 −P
2 5 系ではAl2 3 が30wt.%を越えると液相
線温度(AlPO4 の消失温度)は1500℃以上にな
る。
【0024】試みに、上記実験1、2で得られた母材を
酸水素火炎を用いて強熱・急冷したところ、いずれも透
明なガラスになったが、ガラス中に多数の気泡が残留
し、光学用ガラスとして実用し得るものではなかった。
【0025】以上のことより、VAD溶液含浸法ではM
CVD溶液含浸法のようにAlドープ(または共ドー
プ)ガラスを作製することはできず、その原因は焼結温
度不足によるものと確信されるに至った。
【0026】
【発明が解決しようとする課題】前記のVAD溶液含浸
法による焼結温度不足の問題を解決するには、焼結温度
を1600℃、或は1700℃以上に高めることが考え
られるが、そのような高温にするには技術上、設備上の
困難を伴う。
【0027】第一に、一般にスート母材の焼結炉に使用
されている石英ガラス製の炉心管や治具は、このような
高温では軟化変形するため長時間の使用には耐え得な
い。これを解決するには石英ガラス製の炉心管の代わり
に高融点セラミックスの炉心管を使用することが考えら
れるが、その場合は、炉心管から不純物が揮散して母材
中に混入し、その結果ファイバの伝送損失が急増する。
これは当業界では周知の事実である。
【0028】第二に、液相線温度よりも高い温度で焼結
を行うと、母材が自重によって延伸、落下してしまう場
合がある。
【0029】これらの問題はVAD溶液含浸法に限ら
ず、外付け法等も含めたいわゆるアウトサイドプロセス
(outside process )で作製した多孔質ガラスの焼結に
共通する問題点である。
【0030】ちなみに、MCVD溶液含浸法では基材の
石英ガラス管が反応管を兼ねており、これを酸水素火炎
で直接加熱する方式であるため、容易に高融点結晶相消
失温度まで加熱することができ、不純物が混入する心配
もない。また焼結時に結晶化しても、一旦冷却すること
なしに直ちに1900℃以上のコラプス工程に移行でき
るので、熱歪によるクラックも生じない。しかもコラプ
ス中に結晶相は完全に融解し、中実化後の急冷によって
透明なガラス母材が得られる。
【0031】
【発明の目的】本発明者らは上記のようなVAD法等の
アウトサイドプロセスを用いて希土類元素+Al共ドー
プガラスを作製する場合の諸問題に鑑みて、ガラス組成
の改良を検討し、本発明に至った。
【0032】本発明の目的は、比較的低い焼結温度でも
透明なガラスが得られる組成の希土類元素+Al共ドー
プガラスを提供することにある。
【0033】本発明の他の目的は、高濃度の希土類元素
をドープしても発光特性が損なわれないようにした希土
類元素+Al共ドープガラスを提供することにある。
【0034】
【課題を解決するための手段】本発明のうち請求項1の
能動的光素子用希土類元素ドープガラスは、SiO
の組成からなるホストガラス中に希土類元素が添加され
てなる能動的光素子用希土類元素ドープガラスにおい
て、前記ホストガラス中にAlとFとがドープされてな
るものである。
【0035】本発明のうち請求項2の能動的光素子用
土類元素ドープガラスは、請求項1記載の能動的光素子
希土類元素ドープガラスのホストガラス組成に、さら
にガラスの屈折率を増大させる物質が添加されてなるも
のである。
【0036】本発明のうち請求項3の能動的光素子用
土類元素ドープガラスは、請求項1のホストガラス組成
に、更にガラスの軟化温度を低下させる物質が添加され
てなるものである。
【0037】本発明のうち請求項4の能動的光素子用
土類元素ドープガラスは、SiO系の組成からなるホ
ストガラス中に希土類元素がドープされてなる能動的光
素子用希土類元素ドープガラスにおいて、前記ホストガ
ラス中にAlとFとGeとがドープされてなるものであ
る。
【0038】本発明の希土類元素ドープガラスの基礎ガ
ラス組成はR2 3 −Al2 3 −SiO2 −F系(R
は希土類元素、FはOを置換する形でドープされる)で
あり、基本的に高シリカ・無アルカリの石英系ガラスで
ある。このため、膨張係数、軟化温度などの性質が通常
の光ファイバに使用される石英系ガラスに近く、それら
との融着性がよい。従って本発明により製造される希土
類元素ドープガラスをコア材に、Fドープシリカなどの
比較的低屈折率のガラスをクラッド材に使用して、コア
−クラッド構造を有する光ファイバ(または光導波路)
を容易に作製することができる。また、一般の石英系フ
ァイバとの融着接続性にも優れたものとなる。
【0039】さらに本発明の希土類元素ドープガラスで
は、希土類元素とAlの共存効果により発光特性を損な
わずに高濃度の希土類元素を添加することができ、励起
光との作用長が短くても充分な増幅利得が得られるの
で、レーザまたは光増幅器の小型化が実現できる。さら
に、希土類元素がErの場合にはAlの共存により1.
55μm付近の光増幅を示す波長帯域が広がるため、本
発明のガラス組成は光増幅器用として好適である。
【0040】これらの効果は、公知の希土類元素+Al
共ドープ石英系ガラスと同等のものであるが、本発明の
希土類元素ドープガラスはさらにフッ素を含んでいるこ
とを特徴とする新規の石英系ガラス組成である。フッ素
を添加したことによって製造プロセス上の大きな利点を
有している。
【0041】希土類元素及びAlは石英ガラスの屈折率
を高める効果を有するが、フッ素は逆に低下させるの
で、それらのドープ量の比率によってはガラスの屈折率
は石英レベルよりも低くなり、クラッドとの屈折率差が
十分に確保されないことがある。この場合は前記基礎ガ
ラス組成に、更に屈折率を高める効果を持つ成分を添加
してもよい。
【0042】また、AlF3 は1276℃で昇華するた
め、これより高い温度で焼結を行うとガラス中に残留す
るAl量が少なくなる。この場合は前記基礎ガラス組成
に、更にガラスの軟化温度を低下させる成分を添加する
のも好ましい結果を与える。このような添加物としては
GeO2 またはP2 5 が特に好適である。いずれも石
英ガラスの屈折率を高めると同時に軟化温度を低下させ
る。前者は屈折率の増大に、後者は軟化温度の低下によ
り顕著な効果を示す。周知のように、VAD法、外付け
法では、どちらの成分も容易にスート中に添加すること
ができる。
【0043】
【作用】高シリカ、無アルカリの希土類元素+Al共ド
ープ石英系ガラスを作製するには、多孔質ガラス母材を
用いた溶液含浸法が簡便であり、かつ、希土類元素及び
Alドープ濃度の調整が容易である等の長所を有してお
り、一般性もあると考えられる。しかし、VAD溶液含
浸法ではフッ素ドープ工程を経ずに含浸母材を焼結する
と、前述の実験例のように高融点結晶相が析出するため
無孔化が困難である。
【0044】ところが、希土類元素とAlに加えてさら
にフッ素が添加されていると、焼結温度が1500℃以
下の比較的低温でも容易に無孔化・透明ガラス化でき
る。その理由は明確ではないが、(1)石英系母材のガ
ラス粒子にフッ素を添加することによって溶融粘度が低
下する。そのため焼結は速やかに進行し、また、希土類
元素およびAlのガラス中への拡散・均質化も促進され
る。(2)希土類及びAlの酸化物がフッ素と反応し
て、表1に示すような比較的低融点のフッ化物に変化す
るためと推定される。
【0045】
【表1】
【0046】希土類元素および/またはAlを高濃度含
浸した場合には、拡散・均質化が不十分で失透すること
もある。しかし、完全に無孔化したガラスマトリックス
中に少量の微粒子が分散した状態になっているので、酸
水素火炎等を用いて高温まで熱すれば直ちに透明化す
る。このときクラックが生じたり、気泡が残留したりす
ることもない。
【0047】従って本発明のガラス組成を用いれば、V
AD溶液含浸法等のアウトサイドプロセスによっても透
明で気泡の無い希土類元素+Al共ドープガラス製品が
得られる。
【0048】ちなみに、P(P2 5 )も石英ガラスの
溶液粘度を大きく低下させるドーパントとして知られて
いるが、希土類元素とAlに加えてさらにPを添加した
場合(フッ素を含まない場合)は、前述の実験例2に示
したようにリン酸アルミニウムやリン酸エルビウムとい
った高融点結晶の析出を誘発し、むしろ逆効果である。
【0049】次に、本発明の希土類元素ドープガラスを
製造する場合、希土類元素ドープ光ファイバ用のガラス
母材(ロッド)を、例えばVAD溶液含浸法により次の
ようにして製作することができる。
【0050】石英ガラススート母材をVAD法で作製
し、これに希土類元素及びAlイオンを含む溶液を含浸
させた後、この溶媒を蒸発、乾燥させて希土類元素及び
Alの塩を前記スート母材の気孔内に沈積させる。この
場合、溶液原料としては、塩化物、水和塩化物、硝酸塩
などの、アルコール溶液または水溶液等が使用できる。
【0051】また、前記の溶液を含浸させたスート母材
は、焼結に先立って酸素雰囲気中で加熱処理を施してお
くのが望ましい。溶液原料に塩化物原料を使用する場合
は、これらは比較的低温でも蒸発・揮散し易いので、酸
化して安定化させておくとガラス中へのドープ量の再現
性が向上する。溶液原料に硝酸塩を使用した場合は、硝
酸塩は200℃程度の温度で分解して酸化物となるので
特に酸化工程を行う必要はない。
【0052】また、前記焼結に先立ってCl2 或はその
他の塩素化合物の気相を含有する雰囲気中で脱水処理を
行う場合にも、雰囲気中に過剰の酸素ガスを添加してお
くのが望ましい。酸素ガスを含まないと脱水処理中に、
酸化物が再び塩化物となって揮散し易くなるからであ
る。
【0053】次いで、溶液含浸母材をフッ素を含有する
He雰囲気中で焼結・無孔化する。フッ素源としては周
知の通りSiF4 、SF6 、フレオンなどのガスを使用
することができる。
【0054】このようにして得られた希土類元素ドープ
カラスロッドを光ファイバに加工するには、例えば、外
付け法でクラッドガラス層を形成した後、これを加熱延
伸して紡糸するなどの既存の技術を利用することができ
る。このようにすれば、光を導波する部分の全体または
一部が本発明の請求項1〜4の希土類元素ドープガラス
で構成される希土類元素ドープ光ファイバまたは光導波
路が得られる。
【0055】以上の説明はVAD溶液含浸法により製作
した石英ガラススート母材を用いる場合であるが、もち
ろん外付け法やゾル−ゲル法で作製した石英ガラススー
ト母材を使用することもできる。
【0056】本発明の希土類元素ドープガラスにより、
薄膜光導波路を製作することもできる。薄膜形状の多孔
質石英系ガラスの形成には、例えば、既存の技術である
火炎加水分解法を使用することができる。このときの反
応成膜機構はVAD法や外付け法と同じである。この成
膜には熱CVD法を用いてもよい。この場合は、通常の
シリカガラス膜を堆積するときよりも基板温度を低く設
定しておけば、スート状の多孔質ガラス膜が形成され
る。
【0057】以下は前記の希土類元素ドープ光ファイバ
用のガラス母材を製作する場合と同様に、溶液含浸−乾
燥・酸化−フッ素雰囲気焼結を行って、希土類元素+A
l共ドープガラス薄膜を得る。
【0058】この方法に、既存の微細加工技術(チャネ
ル形成)とクラッドガラス層形成技術を組合せれば、任
意形状の希土類ドープ光導波路を作製することができ
る。
【0059】
【発明の実施の形態】(実施例1)VAD法で作製され
た、平均かさ密度0.4〜0.5g/cm3 の純石英組
成のスートを、種々の異なる濃度の塩化エルビウム及び
アルミニウムが溶解されたメチルアルコール溶液に12
〜24時間浸漬して含浸を行った。溶液中のAl/Er
モル比は1〜5に設定した。含浸終了後、溶媒を蒸発さ
せて乾燥し、酸素気流中で約950℃まで加熱して、前
記スート中に残留したEr及びAlの塩を酸化・定着し
た。
【0060】次に、中心温度1000℃の電気炉中を、
体積比にして1%のCl2 と10%のO2 を含むHeガ
ス雰囲気に保ちつつ、毎分3mmの速度でスートを下降
させて脱水処理を行った。脱水終了後スートを一旦低温
部にまで引き上げ、電気炉中心温度を1300℃まで昇
温した。引き続いて、炉内雰囲気を0.5vol.%の
SiF4 を含むHeガスに変更し、毎分2mmの速度で
スートを下降させて焼結した。
【0061】この結果、種々の異なる濃度のErとAl
が共ドープされたEr2 3 −Al 2 3 −SiO2
F系ガラスロッドを得た。Erがおよそ0.3wt.%
以上ドープされたガラスは、焼結直後は失透しておりピ
ンク色のオパールガラス状の外観を呈していた。失透し
た母材のX線回析図形の一例を図3に示す。この図から
明らかなように回折角2θ=22°を中心とする明瞭な
ハローが現われている。また、残留結晶相(ムライト及
び未知相)の回折強度は、図1及び図2に比べてはるか
に小さい。以上から明らかなように、母材の大部分はガ
ラス相である。
【0062】この母材をガラス加工旋盤を用いて酸水素
火炎で加熱したところ、直ちに透明化し、残留気泡のな
いガラスロッドが得られた。
【0063】次に、これらのガラスロッドの外周に、外
付け法でフッ素ドープシリカガラスのクラッド層を形成
した後、これを加熱延伸して、コア径7.5μm、外径
125μm、開口数0.12の単一モード光ファイバを
作製した。
【0064】得られたファイバのコアガラス組成と特性
の一例を表2に示す。比較のため純シリカホストガラス
に0.09wt.%のErをドープしたコアからなる単
一モードファイバの特性を同表2に4(比較)として併
せて示した。
【0065】
【表2】
【0066】波長1.55μmの蛍光寿命は約0.5w
t.%のErをドープしたファイバでも約10msec
であり、低濃度の純シリカホストガラスファイバ(同表
2の4比較)と比べて何ら遜色がない。また、波長1.
1μmにおける伝送損失は3〜12dB/kmと十分低
い。これらより、本発明のガラス組成の素性の良さを理
解することができる。
【0067】(実施例2)VAD法によりGeO2 が約
8mol%ドープされた、平均かさ密度0.4〜0.5
g/cm3 の石英系スート母材を作製し、このスートに
種々の異なる濃度の塩化エルビウムまたは塩化ネオジ
ム、及び塩化アルミニウムが溶解されたメチルアルコー
ル溶液を含浸した後、実施例1と同様にして乾燥・酸化
・脱水処理を施した。続いて、SiF4 を3.0vo
l.%含むHeガス雰囲気中で焼結を行った。この実施
例では1200℃で完全に無孔化することが可能であっ
た。
【0068】これらの組成の異なる種々のガラスロッド
の外周に、外付け法でフッ素ドープシリカガラスのクラ
ッド層を形成し、これを加熱延伸してコア径4〜6μm
・外径125μm、開口数0.18の単一モード光ファ
イバを作製した。
【0069】これらファイバの蛍光寿命や損失特性は実
施例1と同様に良好であった。
【0070】得られたファイバのうち、コア中のEr濃
度=0 .080wt.%、Al濃度=0.091w
t.%、F濃度=0.97wt.%(Al/Er原子比
=7.1)のファイバについて波長1.55μm付近の
発光スペクトルを測定した(図4のI)。励起光源に
は、波長0.98μmのTi:サファイアレーザを使用
した。ファイバ長を10cmとし、入射励起パワーは3
0mWとした。比較のためGeO2 −SiO2 系ホスト
ガラスに0.090wt.%のErをドープしたコアか
らなる単一モードファイバのスペクトルを図4のIIとし
て合わせて示した。図のように、本実施例のファイバの
発光スペクトルIは、IIに比べてかなりブロードになっ
ているのがわかる。これは、増幅帯域が広がっているこ
とを示している。
【0071】本実施例では約4wt.%までの希土類元
素及び約3wt.%までのAlが共ドープされた透明ガ
ラスロッドを得たが、この濃度がガラス化限界というわ
けではない。更に高濃度のものまで作製可能である。
【0072】(比較例1)前記実験1と全く同じにして
ガラスを製作したところ、同実験1の結果の通り、本発
明で得んとするガラスは得られなかった。
【0073】(比較例2)前記実験2と全く同じにして
ガラスを製作したところ、同実験2の結果の通り、本発
明で得んとするガラスは得られなかった。
【0074】
【発明の効果】本発明の希土類元素ドープガラスでは次
のような効果がある。
【0075】本発明の希土類元素ドープガラスは、希土
類元素とAlに加えてさらにフッ素をドープした石英系
の組成からなる。希土類元素とAlの共存効果により、
発光特性を損なわずに高濃度の希土類元素を添加するこ
とができ、励起光との作用長さが短くても充分な増幅利
得が得られるので、レーザまたは光増幅器の小型化が実
現できる。さらに希土類元素がErの場合には、Alの
共存により1.55μm付近の光増幅を示す波長帯域が
広がるため、本発明のガラス組成は光増幅器用として好
適である。
【0076】本発明の希土類元素ドープガラスは、基本
的に高シリカ、無アルカリの石英系組成であるため、熱
膨張係数、軟化温度等の性質が通常の光ファイバに使用
される石英系ガラスに近く、それらとの融着性が良い。
従って、本発明の希土類元素ドープガラスをコア材に、
Fドープシリカ等の比較的低屈折率のガラスをクラッド
材に使用して、コア−クラッド構造を有する光ファイバ
(または光導波路)を容易に作製することができる。ま
た、一般の石英系光ファイバとの融着接続性にも優れた
ものとなる。
【0077】本発明の希土類元素ドープガラスは、本発
明の希土類元素ドープガラスは、希土類元素とAlに加
えてさらにフッ素が添加されているため、製造プロセス
上に大きな利点を有している。多孔質ガラス母材から希
土類元素+Al共ドープガラスを作製するとき、フッ素
が添加されたガラス組成を用いれば、焼結温度が150
0℃以下の比較的低温でも容易に無孔化・透明ガラス化
できる。その理由は明確ではないが、(1)石英系母材
のガラス粒子にフッ素を添加したことによって溶融粘度
が低下する。そのため焼結は速やかに進行し、また、希
土類元素及びAlのガラス中への拡散・均質化も促進さ
れる。(2)希土類及びAlの酸化物がフッ素と反応し
て、表1に示すような比較的低融点のフッ化物に変化す
るためと推定される。従って、比較的焼結温度の低いV
AD法等のアウトサイドプロセスによっても、透明で気
泡の無い希土類元素+Al共ド一プカラス製品が得られ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】実験1のガラススート母材のX線回折の説明図
【図2】実験2のガラススート母材のX線回折の説明図
【図3】本発明の実施例1のガラススート母材のX線回
折の説明図
【図4】本発明の実施例2により得られたErドープ光
ファイバの発光スペクトルの説明図である。
フロントページの続き (72)発明者 佐々木 康真 東京都千代田区丸の内2丁目6番1号 古河電気工業株式会社内 (56)参考文献 特開 昭56−73638(JP,A) 特開 昭63−195147(JP,A) 特開 昭61−222940(JP,A) 特開 平1−96021(JP,A) 特開 平1−179734(JP,A)

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】SiO系の組成からなるホストガラス中
    に希土類元素が添加されてなる能動的光素子用希土類元
    素ドープガラスにおいて、前記ホストガラス中にAlと
    Fとがドープされてなることを特徴とする能動的光素子
    希土類元素ドープガラス。
  2. 【請求項2】前記ホストガラス組成に、さらにガラスの
    屈折率を増大させる物質が添加されてなることを特徴と
    する請求項1記載の能動的光素子用希土類元素ドープガ
    ラス。
  3. 【請求項3】前記ホストガラス組成に、さらにガラスの
    軟化温度を低下させる物質が添加されてなることを特徴
    とする請求項1記載の能動的光素子用希土類元素ドープ
    ガラス。
  4. 【請求項4】SiO系の組成からなるホストガラス中
    に希土類元素が添加されてなる能動的光素子用希土類元
    素ドープガラスにおいて、前記ホストガラス中にAlと
    FとGeとがドープされてなることを特徴とする能動的
    光素子用希土類元素ドープガラス。
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