JP3471524B2 - 合成樹脂ラミネートシートおよびその製造方法 - Google Patents

合成樹脂ラミネートシートおよびその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、無延伸ポリプロピ
レンフィルム、またはアルミニウム蒸着を行った二軸延
伸ポリスチレンフィルムをラミネートした合成樹脂シー
トを熱成形して食品包装用容器を製造するに当たって、
個々の食品包装用容器を熱成形したシートから切断分離
する際に容器の切断部に微細なケバが発生することを防
止、または低減することのできる、合成樹脂ラミネート
シートおよびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、ポリスチレン系樹脂は低価格で
あるにもかかわらず、剛性、衛生性、熱成形性等に優れ
ているところから、食品包装材料として広く利用されて
いる。しかしながら、このポリスチレン系樹脂はガスバ
リアー性や食用油脂等に対する耐油性に乏しいため、食
品が酸化されやすく、食品の長期保存が不可能であった
り、油性の食品を収納した場合に食品の油脂やラップの
可塑剤によって容器の変形や亀裂が発生する等の問題も
生じやすかった。
【0003】そこで、これらの問題点を改善するため、
ガスバリア性や耐油性に優れた性質を有するフィルムを
シートに貼り合わせて積層する方法が考えられ、このフ
ィルムをシートに貼り合わせるための種々の接着剤や接
着性樹脂が提案されてきた。例えば、ポリウレタン系、
ポリアクリル系、ポリエステル系等の接着剤を塗布し、
積層するドライラミネート法や積層間に接着性樹脂とし
て不飽和カルボン酸もしくは無水物をグラフト変性また
は共重合されたポリオレフィン樹脂を用い、共押出によ
りシート及び容器にガスバリアー性等の機能を付加する
機能層、接着層、基材層の構成を持ったシートを製造す
ること等がある。これらの方法に用いられる接着性樹脂
は高い接着強度を有し、接着性能の点から満足できるも
のであり、上記の共押出多層シートも良好な層間接着性
を持つ。
【0004】しかし、これらの構成のシートでは、熱成
形後に、切断刃によって個々の食品包装用容器を切断分
離する際に、シートの切断部、特に接着層面が切断刃に
引張られて繊維状になったもの(以下ケバと記す)が発
生しやすく、そのために生産性の低下を招く場合があっ
た。また、多層共押出によるシートにおいては、ダイス
中で層が構成されてしまうため、機能層と基材層の間に
アルミニウムの蒸着層を設けることが出来ない。
【0005】更に、ドライラミネートによる方法では、
加工工程上有機溶剤の使用が不可欠であって、この溶剤
による環境衛生上の問題や防火上の問題を解決しなけれ
ばならないこと、加工工程が増えることによる作業性の
低下や製造コストが上昇する等の問題もある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】そこで、本発明は、前
記従来技術の問題点を解消し、無延伸ポリプロピレンフ
ィルム、または二軸延伸ポリスチレンフィルムをラミネ
ートした合成樹脂シートを熱成形して、賦型した成形シ
ートから個々の食品包装用容器を切断分離する際に、容
器の切断部に発生し易やすい微細なケバを防止または低
減することのできる、食品包装用容器に用いられる合成
樹脂ラミネートシートおよびその製造方法を提供するも
のである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、基材層を
構成するポリスチレン系樹脂と接着層を構成する特定の
厚みと特定の物性を有する樹脂素材からなる接着性樹脂
を用いて、多層シートの押出を行いつつ、このシートに
無延伸ポリプロピレンフィルムまたはアルミニウム蒸着
を行った二軸延伸ポリスチレンフィルムを直接ラミネー
トすることにより、食品包装用容器を成形して個別に切
断分離しても、その切断面に於いてケバ立ちを生じな
い、またはケバ立ちの少ない、食品包装容器用シートが
得られることを見いだし、本発明を完成した。
【0008】すなわち本発明は、基材層、接着性樹脂層
およびフィルムがこの順序にラミネートされた三層の合
成樹脂ラミネートシートであって、基材層がポリスチレ
ン(以下「PS」と記す)系樹脂、接着性樹脂層が、ビ
カット軟化点が70℃以下で、且つショア硬度が30以
上、40以下、厚さ5μm乃至20μmである、エチレ
ン系多元共重合体またはグラフト変性ポリオレフィン重
合体、フィルムが無延伸ポリプロピレン(以下「CP
P」と記す)フィルムまたはアルミニウムを蒸着した二
軸延伸PS(以下「OPS蒸着」と記す)フィルムから
なることを特徴とする合成樹脂ラミネートシートであ
る。
【0009】本発明はまた、ビカット軟化点が70℃以
下で、かつショア硬度が30以上、40以下、厚さ5μ
m乃至20μmである、エチレン系多元共重合体または
グラフト変性ポリオレフィン重合体からなる接着性樹脂
とPS系樹脂とを220℃以上でシート状に共押出しし
つつ、この接着性樹脂層のシート面にCPPフィルムま
たはOPS蒸着フィルムのアルミニウム蒸着面を押出シ
ートの熱により貼り合わせることを特徴とする合成樹脂
製ラミネートシートの製造方法である。
【発明の実施の形態】
【0010】本発明による合成樹脂ラミネートシートの
基材層を構成するPS系樹脂としては、一般のシート押
出成形に用いられている低流動性樹脂組成物を使用する
ことができる。例としては例えば、一般用PSとハイイ
ンパクトポリスチレン(以下「HI−PS」と記す)お
よびスチレン/ブタジエン・コポリマー(以下「SB」
と記す)のいずれか、または両方との混合物、HI−P
S、ABS(アクリロニトリル/ブタジエン/スチレン
・コポリマー)およびMBS(メタクリル酸メチル/ブ
タジエン/スチレン・コポリマー)などが挙げられる。
【0011】接着層を構成する接着性樹脂は、厚み、及
び素材の物性を特定の範囲とする必要がある。まず、接
着性樹脂層の厚みについては、5μm以上、20μm以
下、好ましくは7μm以上、10μm以下が好適であ
る。接着性樹脂層の厚みが5μmを下回ると、接着性樹
脂とポリスチレン系樹脂との溶融流動性の相違によって
成形後の層間接着強度がばらつき、部分的に貼り合わせ
たフィルムと接着性樹脂層との層間で剥離現象が起きる
場合がある。一方、接着性樹脂の厚みが20μmを上回
ると、ケバの発生する可能性が高くなり、実用的に使用
することが困難となる。
【0012】さらに、ここで用いられる接着性樹脂とし
ては、ビカット軟化点が70℃以下であることが必要で
ある。ビカット軟化点が70℃を越えると、基材層と接
着性樹脂層との接着力が極端に弱くなり、層剥離し易く
なってしまうため好ましくない。接着性樹脂はまたショ
ア硬度が30以上、40以下であることが必要である。
ショア硬度が30未満であると、熱成形後に切断分離す
る際に微細なケバが極端に多く発生し、ショア硬度が4
0を越えると、基材層と接着性樹脂層との実用的な接着
強度が得られなくなるからである。
【0013】接着性樹脂として使用することができる樹
脂としては、例えばエチレン系多元共重合体またはグラ
フト変性ポリオレフィン重合体が挙げられる。エチレン
系多元共重合体は、通常の高圧ラジカル重合法で製造さ
れるエチレンを主成分として、これにラジカル重合性酸
無水物およびラジカル重合性モノマーを共重合させた多
元共重合体である。
【0014】ここで言うラジカル重合性酸無水物とは、
分子中にラジカル重合可能な不飽和結合と酸無水物基を
各々の1個以上を有し、重合によって酸無水物基を分子
中に導入できるような化合物である。例えば、無水マレ
イン酸、無水イタコン酸、無水エンディック酸,無水シ
トラコン酸,1−ブテン−3,4−ジカルボン酸無水
物、炭素数が多くとも18である末端に二重結合を有す
るアルカジエニル無水コハク酸等が例示される。これら
は単独で、あるいは2種類以上を組み合わせて用いても
差し支えない。これらの中では、無水マレイン酸が好ま
しい。
【0015】また、ラジカル重合性モノマーとしては、
ビニル系不飽和エステル化合物,ビニル系不飽和アミド
化合物,ビニル系不飽和酸化合物,ビニル系不飽和エー
テル化合物,その他の不飽和炭化水素化合物等が例示さ
れる。
【0016】具体例を挙げれば、ビニル系不飽和エステ
ル化合物としては、例えば、酢酸ビニル,(メタ)アク
リル酸メチル,(メタ)アクリル酸エチル,(メタ)ア
クリル酸プロピル,(メタ)アクリル酸ブチル,(メ
タ)アクリル酸ヘキシル,(メタ)アクリル酸オクチ
ル,(メタ)アクリル酸ラウリル,(メタ)アクリル酸
ベンジル等が挙げられる。
【0017】ビニル系不飽和アミド化合物としては、例
えば、(メタ)アクリルアミド,N−メチル(メタ)ア
クリルアミド,N−エチル(メタ)アクリルアミド,N
−プロピル(メタ)アクリルアミド,N−ブチル(メ
タ)アクリルアミド,N−ヘキシル(メタ)アクリルア
ミド,N−オクチル(メタ)アクリルアミド;N,N−
ジメチル(メタ)アクリルアミド;N,N−ジエチル
(メタ)アクリルアミド等が挙げられる。
【0018】ビニル系不飽和酸化合物としては、例え
ば、(メタ)アクリル酸が挙げられる。ビニル系不飽和
エーテル化合物としては、例えば、メチルビニルエーテ
ル,エチルビニルエーテル,プロピルニルエーテル,ブ
チルビニルエーテル,オクタデシルビニルエーテル,フ
ェニルビニルエーテル等が挙げられる。
【0019】その他の不飽和炭化水素化合物としては、
例えば、スチレン,α−メチルスチレン,アクリロニト
リル,メタクリロニトリル,アクロレイン,トリメトキ
シビニルシラン,塩化ビニル,塩化ビニリデン等が挙げ
られる。
【0020】これらの化合物は、共重合モノマーとして
それぞれ単独で用いてもよく、あるいは2種以上を併用
しても差し支えない。中でも(メタ)アクリル酸エステ
ル類は特に好ましい。また混合比率としては、ラジカル
重合性酸無水物が20wt%以下、ラジカル重合性モノ
マーが20wt%以下の配合とすることが好ましい。こ
の範囲を逸脱すると、接着性能が極端に悪化する。
【0021】本発明による接着性樹脂としては、上記エ
チレン系多元重合体のほかにグラフト変性ポリオレフィ
ン重合体を使用することができる。グラフト変性ポリオ
レフィン重合体は、ポリオレフィン樹脂をベースにし、
グラフトモノマーで変性させたグラフト共重合体であ
る。ここで、ポリオレフィン樹脂としては、高密度ポリ
エチレン、低密度ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ
ブテン、ポリイソプレン、ポリ−3−メチルブテン−
1、ポリ−4−メチルペンテン−1、ポリブタジエンお
よびこれらの重合体の構成単位となるオレフィンの共重
合体等である。さらに具体的には、プロピレン、ブテン
−1、4−メチルペンテン−1、ヘキセン−1等から選
ばれるコモノマーを用いた直鎖状低密度のオレフィン系
共重合体又はこれらの樹脂の混合物等を示す。
【0022】本発明に用いられるグラフト変性ポリオレ
フィン重合体は、上記のグラフト変性されるポリオレフ
ィン樹脂に対してグラフトモノマー由来の単位を1wt
%以下含有している。ここで、グラフトモノマーとして
は、(メタ)アクリル酸、マレイン酸、フタル酸、イタ
コン酸、無水マレイン酸または置換基を有する無水マレ
イン酸、例えば、ジメチルマレイン酸無水物あるいはエ
チレン性不飽和結合を有するカルボン酸の塩、アミド及
びエステル等が挙げられる。これらの中では、無水マレ
イン酸が特に好ましい。これらのグラフトモノマーは、
単独で、あるいは2種以上を併用しても差し支えない。
【0023】なお、本発明に用いる接着性樹脂は、該樹
脂の特徴を損なわない範囲で、例えば酸化防止剤、紫外
線吸収剤、帯電防止剤、滑剤、無機充填剤、着色剤等の
添加剤、配合剤、充填剤などを配合することができる。
【0024】次に上記合成樹脂ラミネートシートの製造
方法について説明する。多層シートの押出方法として
は、二層構造を有する多層ダイまたはマルチマニホール
ドダイと、これに直結した2台の押出機を用いて、ポリ
スチレン系樹脂と接着性樹脂を同時に共押出しする。ま
たは、2台の押出機を用いて、二層構造のフィードブロ
ックとコートハンガーダイを連結させて、PS系樹脂と
接着性樹脂を同時に共押出しする等の方法を用いること
もできる。
【0025】ダイス内における樹脂温度は、リップ口よ
り吐出後、フィルム貼り合わせ時点において、シート温
度が220℃以上を保つことが出来るように設定する必
要があり、具体的には、ダイスのリップ口からフィルム
貼り合わせ時点までの距離と作業環境の気温によって適
宜調整して決定すればよい。フィルムを貼り合わせる時
点で多層シートの接着性樹脂層の温度が220℃を下回
ると、フィルムと多層シートの十分な接着力を得ること
ができなくなる。押出時の樹脂温度の上限は、使用する
樹脂の押出可能な温度の上限範囲で、多層シートを支障
なく押出す事ができればよく、特に限定されるものでは
ない。
【0026】多層シートの接着層に貼り合わせるフィル
ムとしては、CPPフィルムまたはOPS蒸着フィルム
が用いられる。CPPフィルムは必要により、アルミニ
ウム等の金属を蒸着して用いてもよい。CPPフィルム
としては、通常ラミネートシートに用いられる市販のフ
ィルムグレードのものをそのまま用いることができる
が、多層シートの持つ熱を主体として貼り合わせること
を考えると、厚みの範囲として20μm〜50μm程度
のものが好ましい。この範囲を下回るとフィルム切れ
や、しわの発生等の問題を生じやすく、この範囲を上回
ると、PS系樹脂とPP樹脂の溶融温度差により、容器
を成形する際の熱成形可能温度範囲が狭くなったり、リ
サイクル時にPS系樹脂に対するPP樹脂の混合比率が
高くなり、外観不良や物性低下を引き起こし易くなるた
め好ましくない。
【0027】CPPフィルムは、食品包装容器として用
いる場合、容器の表面に光沢を付加すると同時に、食品
に含まれる食用油脂が、ラミネートシートの基材のPS
系樹脂と直接接触することを防ぎ、PS系樹脂シートが
食用油脂により劣化してクラックや割れが発生すること
を防止する。
【0028】貼り合わせるフィルムとしてOPS蒸着フ
ィルムを用いる場合には、厚みが20μm以上のフィル
ムに通常のアルミニウム蒸着を行ったものが用いられ
る。厚みが20μmを下回るとフィルム切れやしわの発
生の他、貼り合わせる点付近で多層シートの熱により、
フィルムの局部的伸びが発生して外観を損ねる場合があ
る。OPS蒸着フィルムを用いる場合は、蒸着面を接着
性樹脂側にしてラミネートする。
【0029】OPS蒸着フィルムは、上記CPPフィル
ムと同様食品包装容器表面に金属光沢を与えることによ
り、衛生的好印象と美麗さを持たせることができる。O
PS蒸着フィルムはさらに若干ではあるがガスバリア性
をも有する。
【0030】本発明による合成樹脂ラミネートシートの
製造工程の一例を図1に示した。図1において、1はP
S系樹脂の基材シート2と接着性樹脂層3とを同時に2
種2層構造の積層シート4として積層共押出しするダイ
である。フィルム5の繰り出し装置6と、2種2層構造
の積層シート4にフィルム5を圧着する金属ロールかま
たはゴムロール等の圧着ロール7および8を備えた引き
取り装置10を用い、2種2層構造の積層シート4がダ
イリップ9から吐出された後、できるだけ速やかに貼り
合わせができる様に圧着ロール7と8をダイリップ9に
接近させておく事が望ましい。貼り合わせるまでの距離
が長すぎると、気温や空気の流動等、接着性樹脂層3の
温度を変動させる要因が増加して好ましくない。
【0031】また、ラミネート作業は圧着ロール7と8
の温度を50℃〜80℃の範囲として行うのが望まし
く、この温度範囲を下回ると接着性樹脂層3とフィルム
5との接着力を十分に得ることができずに層間剥離を生
ずる場合があり、また、上回ると、特にOPS蒸着フィ
ルムを用いる場合にフィルムの局部的伸びが発生し易く
なる場合がある。従って、圧着ロール7と8は温度調節
可能なものを用いる方が良い。
【0032】本発明で製造された合成樹脂製ラミネート
シートを用いて食品包装容器を熱成形する方法について
は、特に限定する必要はなく、通常の合成樹脂シートを
熱成形する為の公知の方法を用いればよい。例えば、真
空成形、真空圧空成形、熱盤圧空成形などが挙げられ
る。熱成形時のシートの加熱温度は、該シートの厚みや
シートの素材構成によって調整しなければならず、一概
には規定できない。OPS蒸着フィルムを貼り合わせた
合成樹脂ラミネートシートを用いて容器を成形する場合
には、真空成形等を用いて比較的高温の条件で成形を行
なうと、アルミニウム蒸着層に亀裂が生じたり、場合に
よっては層間剥離を生じる場合があり、比較的低温で行
なうことができる真空圧空成形、または熱盤圧空成形等
の方法により成形を行なう方が好ましい。
【0033】熱成形品の切断方法については、特に限定
する必要はなく、従来使用されているナイフ刃による突
切り法等、通常、成形シートから個々の容器を打ち抜く
為の一般的な方法をそのまま用いることが出来る。
【0034】
【実施例】以下、実施例及び比較例により本発明を更に
詳細に説明する。本発明はこれらの実施例に限定される
ものではない。
【0035】各実施例及び比較例における物性の測定方
法、評価の基準は以下の通りである。
【0036】(1)接着強度:本発明による合成樹脂ラ
ミネートシートを用いて熱成形した食品用トレーの底面
のフラット部を15mm幅に切り取ったものを試験片と
し、フ ィルム層/接着性樹脂層と、基材層/接着性樹
脂層の層間を一部剥し、各層を反対 方向に引張って剥
離させ(180゜剥離強度)、その時の強度を接着強度
の評価 とした。測定には、島津製作所製:オートグラ
フAGS−500Dを使用した。但し、ヘッドスピード
は300mm/minとした。
【0037】(2)カット性評価:縦20cm、横13
cmの略方形の刃型に塩化ビニル板の受け台を油圧にて
押圧する切断装置を用い、受け台上に食品用トレーを5
枚詰み重ねてセットし、食品用トレーの切断分離を行な
い、食品用トレーのカット部のケバ発生を目視にて評価
した。 〔評価方法〕・・〔◎ カット部全面にケバ発生が見られなかった。〕 〔○ 〃 の一部にケバ発生が見られた。〕 〔× 〃 全面にケバ発生が見られた。〕
【0038】〔実施例1〕ポリスチレン系樹脂として、
HI−PS(住友化学工業株式会社製「スミブライトE
−580」)を用い、接着性樹脂として、エチレン系多
元共重合体(昭和電工株式会社製「アドテックスET1
84M」:ビカット軟化点=55℃、ショア硬度=3
3)を使用して、ダイス温度230℃で2種2層構造の
積層シートを共押出し、この積層シートの接着性樹脂面
にフィルム繰出し装置から繰り出された厚み30μmの
CPPフィルム(昭和電工株式会社製「ショウレックス
アロマーZP」)を圧着ロールにて貼り合わせ、3層構
造の厚み450μmの合成樹脂製ラミネートシートを作
製した。使用した押出機及び条件は以下の通りである。
【0039】〔押出機:スクリュー口径90mmのメイ
ン押出機、及び50mmのサブ押出機に2種2層のフィ
ードブロックを有し、吐出幅1000mmとしたダイス
を付設したもの。HI−PS層の厚さ=410μm。エ
チレン系多元共重合体接着性樹脂層=10μm。〕この
ようにして得られたシートを用いて真空圧空成形機によ
り、縦20cm、横13cm、深さ3.5cmの食品用トレー
を成形し、接着強度の測定及びカット性の評価を行っ
た。結果を表1に示すが、層間剥離が起こらない充分な
接着強度を有し、また、切断分離した際にカット部のケ
バ立ちの無い実用性のある食品用トレーが得られた。
【0040】〔実施例2〕接着性樹脂として、グラフト
変性ポリオレフィン重合体(三井石油化学工業株式会社
製「アドマーAT1153」:ビカット軟化点=65
℃、ショア硬度=37)を用いた以外は実施例1と同様
にシートの作製、およびトレーの成形を行なってその特
性を評価したところ、一部にケバ立ちがみられたが、充
分な接着強度を有し、実用上特に問題の無い食品用トレ
ーを得ることができた(表1)。
【0041】〔比較例1〕接着性樹脂として、エチレン
系多元共重合体(昭和電工株式会社製「アドテックスE
T182」:ビカット軟化点=75℃、ショア硬度=4
4、いずれも本発明の範囲外)を用いた以外は実施例1
と同様にシートの作製、トレーの成形を行なったとこ
ろ、トレーの切断分離を行なった際に、カット面の一部
(基材層/接着層間)から剥離が発生し、食品用トレー
としての商品価値が損なわれた。
【0042】〔比較例2〕接着性樹脂として、グラフト
変性ポリオレフィン重合体(三井石油化学工業株式会社
製「アドマーSF600」:ビカット軟化点>40℃、
ショア硬度=15、ショア硬度が本発明の範囲外)を用
いた以外は実施例1と同様にシートの作製を行なったと
ころ、シートの作製時に、基材層/接着層間で剥離をし
てしまい、トレーの成形が出来なかった(表1)。
【0043】〔実施例3〕実施例1において、CPPフ
ィルムの代わりに厚み30μmのOPS蒸着フィルム(旭
化成株式会社製「スタイロフィルムTH」)を用いた以
外は同様にして(接着性樹脂は変えないで)、シートの
作製、トレーの成形を行なって評価したところ、実用上
特に問題の無い食品用トレーを得ることができた(表
1)。
【0044】〔実施例4〕実施例3において、接着性樹
脂をグラフト変性ポリオレフィン重合体(三井石油化学
株式会社製「アドマーAT1153」:ビカット軟化点
=65℃、ショア硬度=37)に変えた以外は同様にし
て、シートの作製、トレーの成形を行なって評価したと
ころ、実用上特に問題の無い食品用トレーを得ることが
できた(表1)。
【0045】〔比較例3〕実施例3において、接着性樹
脂として、エチレン系多元共重合体(昭和電工株式会社
製「アドテックスET182」:ビカット軟化点=75
℃、ショア硬度=44、いずれも本発明の範囲外)を用
いた以外は同様にして、シートの作製、トレーの成形を
行なったところ、トレーを切断分離を行なった際に、カ
ット面の一部(基材層/接着層間)から剥離が発生し、
食品用トレーとしての商品価値が損なわれた(表1)。
【0046】〔比較例4〕実施例3において、接着性樹
脂として、グラフト変性ポリオレフィン共重合体(三井
石油化学工業株式会社製「アドマーSF600」:ビカ
ット軟化点>40℃、ショア硬度=44、ショア硬度が
本発明の範囲外)を用いた以外は同様にして、シートの
作製を行なったところ、シートの作製時に層間剥離を生
じトレーの成形はできなかった(表1)。
【0047】〔比較例5〕実施例1において、HI−P
S層の厚さを390μm(実施例1は410μm)、エ
チレン系多元共重合体接着性樹脂層の厚さを30μm
(実施例1は10μm、本発明の範囲は5〜20μm)
とした以外は同様に行い、シートの作製、トレーの成形
を行なったところ、食品容器の切断分離を行った際に、
カット部に多数のケバ立ちが発生し、食品用トレーとし
ては美観や衛生感に劣るものとなった(表1)。
【0048】〔比較例6〕HI−PS層の厚さを408
μm、エチレン系多元共重合体接着性樹脂層の厚さを2
μmとした以外は実施例1と同様に行い、シートの成膜
を行なったところ、シートの製作時に、層間剥離を起こ
しトレーの成形ができなかった(表1)。
【0049】
【表1】
【0050】
【発明の効果】以上詳述したように、本発明による合成
樹脂ラミネートシートは、基材のポリスチレン系樹脂と
表面のフィルムとの間に特定の物性を有する接着性樹脂
層を存在させたことにより、従来使用されている加工機
械でシートを裁断する際のケバの発生を効果的に防止ま
たは低減させることができた。したがって、この合成樹
脂ラミネートシートを用いて作成した食品包装容器はケ
バのない極めて衛生感に富むものとなると同時に、ケバ
の発生による裁断工程における生産性の低下をも防止す
ることができる。また、本発明による上記合成樹脂ラミ
ネートシートの製造方法によれば、基材シートと接着性
樹脂層とを積層共押出しした後フィルムを積層する方式
であるから、フィルム層と基材シートとの間にアルミ蒸
着層や印刷層を設けることができ、食品包装容器に使用
する場合、アルミ蒸着面や印刷面が食品と直接接触する
ことなく美観や衛生感を持たせられるし、食品に含まれ
る食用油脂によって基材シートが劣化してクラックや割
れを生ずることも防がれる。さらにこの合成樹脂ラミネ
ートシートは、接着性樹脂の特性を損なわない範囲で各
種の添加剤を配合し、耐酸化性、ガスバリアー性、耐油
性等を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明による合成樹脂ラミネートシートの製造
工程の一例を示す図
【符号の説明】
1 ダイ 2 基材 3 接着性樹脂 4 合成樹脂ラミネートシート 5 フィルム 6 フィルム繰り出し装置 7、8圧着ロール 9 ダイリップ 10 引き取り装置
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B32B 1/00 - 35/00 C08J 5/12

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 基材層、接着性樹脂層およびフィルムが
    この順序にラミネートされた三層の合成樹脂ラミネート
    シートであって、基材層がポリスチレン系樹脂、接着性
    樹脂層が、ビカット軟化点が70℃以下で、かつショア
    硬度が30以上、40以下、厚さ5μm乃至20μmで
    ある、エチレン系多元共重合体またはグラフト変性ポリ
    オレフィン重合体、フィルムが無延伸ポリプロピレンフ
    ィルムまたはアルミニウムを蒸着した二軸延伸ポリスチ
    レンフィルムからなることを特徴とする合成樹脂ラミネ
    ートシート。
  2. 【請求項2】 エチレン系多元共重合体がエチレン,ラ
    ジカル重合性酸無水物及びラジカル重合性モノマーの共
    重合体である請求項1記載の合成樹脂ラミネートシー
    ト。
  3. 【請求項3】 フィルムがアルミニウムを蒸着した二軸
    延伸ポリスチレンフィルムであるときは、アルミニウム
    蒸着面が接着性樹脂層側にラミネートされている請求項
    1記載の合成樹脂ラミネートシート。
  4. 【請求項4】 ビカット軟化点が70℃以下で、かつシ
    ョア硬度が30以上、40以下、厚さが5μm乃至20
    μmである、エチレン系多元共重合体またはグラフト変
    性ポリオレフィン重合体からなる接着性樹脂とポリスチ
    レン系樹脂とを220℃以上でシート状に共押出ししつ
    つ、このシートの接着性樹脂層の面に無延伸ポリプロピ
    レンフィルムまたはアルミニウムを蒸着した二軸延伸ポ
    リスチレンフィルムのアルミニウム蒸着面を押出シート
    の熱により貼り合わせることを特徴とする合成樹脂ラミ
    ネートシートの製造方法。
  5. 【請求項5】 エチレン系多元共重合体がエチレン,ラ
    ジカル重合性酸無水物及びラジカル重合性モノマーの共
    重合体である請求項4記載の合成樹脂ラミネートシート
    の製造方法。
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