JP3467279B2 - インフレーションフィルムの製造法 - Google Patents

インフレーションフィルムの製造法

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JP3467279B2
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久 波田野
武 番場
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  • Extrusion Moulding Of Plastics Or The Like (AREA)
  • Shaping By String And By Release Of Stress In Plastics And The Like (AREA)

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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は透明性に優れた線状低密
度ポリエチレン(以下、LLDPEという。)の生産性
の高いインフレーションフィルム製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】空冷法によるインフレーションフィルム
の生産方法は数多く提案があり、それらの提案でフィル
ムを成形するための樹脂のバブルの形状は特公昭55−
2180に示されるように大きく分けて3つないし4つ
のタイプに分けられる(図2〜図4)。
【0003】この形状を決定する要因は空冷能力、フィ
ルムの引き取り速度、溶融樹脂温度等を挙げることがで
き、中密度ポリエチレン(以下、MDPEという。)、
高密度ポリエチレン(以下、HDPEという。)など、
線状ポリエチレンであって密度の高いポリエチレンでは
図1に示されるいわゆるロング・ネックタイプのバブル
によるフィルム成形がほとんど採用され、高強度のバラ
ンスフィルムとしてショッピングバッグ等の分野に大量
に供給されている。
【0004】一方、LLDPEは分子構造は高圧法低密
度ポリエチレン(以下、LDPEという。)よりはHD
PEに似ているといっても低密度であり、超高分子量成
分を含有していないため溶融粘度がバランスフィルム用
HDPEに比して極めて小さいため、レオロジー性がH
DPEとは著しく異なり、メルトフラクチャーによる肌
あれを起こしやすい上、バブルの安定性が悪く、バブル
をロング・ネックタイプのごとき形状とすることは困難
であり、通常aタイプまたはcタイプのバブル形状によ
り成形されている(特開昭57−34920)。
【0005】しかし、このバブルの形状によるインフレ
ーションフィルム製造での最大の問題はフィルムの透明
性を高く維持しながら高速の引き取りが困難で生産性に
限度があることであり、またバブルの急激な拡大部分が
ないため強度を高くすることは不可能である点にある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、空冷インフ
レーション法によるフィルムの製造に際し、LLDPE
の有する低溶融粘度によるバブルの不安定性を解消し、
バブルの安定化、高生産性のLLDPEフィルム製造方
法の確立を目標とした。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、 [1] エチレンと炭素数が3〜10であるα−オレフ
ィンとの共重合体であって、密度0.91〜0.94g
/cm3メルトフローレート0.3〜5.0g/10
分、分子量分布2.0〜10.0である線状低密度ポリ
エチレンをリップギャップが2.5−10mmであるダ
イスから170−210℃で押出し、安定体を用いるこ
となく、フロストライン距離をダイス径の4〜20倍に
保ちながら、バブル形状を一旦ダイス径の0.7〜0.
95の径とした後、膨張比(バブル径/ダイス口径)
〜5に膨張させて引き取ることを特徴とするインフレー
ションフィルムの製造方法、および [2] 遊離基発生剤の存在下に重合させて得られるメ
ルトフローレートが0.3〜5.0g/10分、密度
0.91〜0.93g/cm3の高圧法低密度ポリエチ
レンを全体重量の50重量%以下配合された線状低密度
ポリエチレンである上記[1]に記載のインフレーショ
ンフィルムの製造方法、を開発することにより上記の課
題を解決した。
【0008】本発明で使用できるLLDPEは、高圧法
あるいは低圧法で遷移金属触媒を用い、炭素数3〜10
のα−オレフィンとエチレンとの共重合体であって、密
度約0.91〜0.94g/cm3 のポリエチレンであ
る。一般的にα−オレフィンの含有量により密度は変わ
るが、ブテン−1をコモノマーとしたときは炭素数10
00当たり、側鎖数が20〜25であれば約0.91、
側鎖数が3〜5であれば0.94と言われており、ほぼ
この範囲内である。この場合のα−オレフィンとしては
プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、4−メチルペ
ンテン−1、オクテン−1等が挙げられる。密度が0.
94g/cm3 を越えるとフィルムの透明性が低下する
ので好ましくない。
【0009】本発明の対象となるLLDPEのJIS
K 7210の表1、条件4の方法によって測定したメ
ルトフローレート(以下、MFRという。)は限定され
るものではないが約0.3〜5.0g/10分位のもの
に適用でき、特に0.4〜3.0g/10分位のLLD
PEに適用することが好ましい。
【0010】またこのLLDPEの分子量分布(MW
N で一般に表される。)は、バランスフィルム用とし
て市販されているHDPEよりは小さく、通常LLDP
Eとして市販されている2.0〜10.0程度であれば
使用可能である。
【0011】なお、このLLDPEに対して1000〜
3500Kg/cm2 の高圧下、パーオキサイド等の遊
離基発生剤の存在下に重合させて得られる密度0.91
〜0.93g/cm3 程度、MFRが0.3〜5.0g
/10分の高圧法低密度ポリエチレン(以下、LDPE
という。)を全体重量の50重量%以下配合したもので
あっても良い。
【0012】LDPEをこの割合を越える配合は製品フ
ィルムの衝撃強度の低下が顕著になるので避けるべきで
ある。このLDPEを5%以上配合したLLDPEは押
出機先端の圧力を下げる効果が明らかに看取できる。
【0013】本発明に使用する原料LLDPEは当然の
ことではあるが、通常のフィルム原料のポリエチレンに
配合されている添加剤、例えば抗酸化剤、紫外線吸収
剤、スリップ剤、ブロッキング防止剤、着色剤、帯電防
止剤等を配合しても良い。
【0014】本発明のインフレーションフィルム製造に
使用する装置としてはダイスのリップ・ギャップが2.
5〜10mmと大きいほかは上向きまたは下向きのいず
れでも良く、押出機から引き取り機までほとんどHDP
Eのインフレーション装置とおなじものを使用できる。
LLDPEフィルムの製造において、ロングネックタイ
プのバブルでリップ・ギャップを拡げることにより透明
性を高くできること、特に高いフロストラインにおける
成形においても透明性を確保できることは新規な発見で
ある。これは高いフロストラインは溶融樹脂を短いフロ
ストラインに比較して徐冷するため、透明性が悪くなる
と考えられていたが影響はほとんど無視できたことは意
外であった。
【0015】操業に際してはバブルの形状が図1に示す
ロング・ネックの形になるように、押出温度を下げる、
ダイス出口の冷却風の温度および風量を調節する、引き
取り速度を上げるなどの手段により調節しなければなら
ない。
【0016】樹脂の好適な押出温度は樹脂によりばらつ
くが、170〜210℃と通常の220℃近辺より若干
低めに設定すること、特にバブル形状が図2のaタイ
プ、図4のcタイプの形状にならぬようにメルトフラク
チャーの起こらぬ限りできるだけ低温に設定することが
良い。
【0017】わずかのメルトフラクチャーが起こる場合
にはリップ・ギャップを大きくすることでこの問題は回
避できる。
【0018】LLDPEが極めてメルトフラクチャーを
起こしやすい性質の樹脂であるのでリップ・ギャップは
一般のHDPEより遥かに大きく、2.5〜10mm、
好ましくは4〜8mmにすることが必要である。このリ
ップ・ギャップが2.5mm未満では透明性が低下し、
また10mmより大きいとフィルムの偏肉調整が困難に
なる。またメルトフラクチャーによる肌あれが認められ
るときはリップ・ギャップを大きくすることで回避す
る。これでも回避ができないときはやむを得ず樹脂温度
を上げるなどの対策を講ずる。
【0019】LLDPEにおいてもHDPEまたはMD
PEのときと同様、膨張比(見かけ、バブル径/ダイス
径)によりフィルムのインパクト強度に影響があり、こ
れが小さいときまたは大きいときは強度のバランスを失
って縦裂き性が強くなったり、輪切れを起こしたりする
ので通常2〜5くらい、好ましくは2.8〜3.8くら
いの間に収めるべきである。
【0020】バブルの形状をロングネックタイプとする
場合、バブルの径を好ましくは図1に示すごとく一旦ダ
イス径よりも小となし、最小(以下ネックポイントとい
う。)となった後急激に膨張する形とする。このように
ダイス径よりもネックポイントの径が小とすることによ
り実質の膨張比を大きくすることができ、製造されたフ
ィルムのインパクト強度等の性質を改善することにな
る。
【0021】従って同一サイズのダイスを用いて同一径
のフィルムを製造する場合であっても、ネックポイント
の径を小とすることにより、より高い実質膨張比をとる
ことができ、一般論としてはインパクト強度の強いフィ
ルムを製造できることを意味する。
【0022】しかし、ネックポイントの径がダイス径の
0.7を下回る位まで細くするとバブルがフラつき、安
定性を損なうので通常は0.75〜0.95位で、製品
品質及び生産性のバランスの良い操業ができる。
【0023】フロストライン(溶融樹脂が結晶化するラ
イン)は、ダイス面からの距離で、ダイス直径の4倍な
いし20倍、好適には5〜12倍、より好ましくは7〜
12倍位の間になるように冷却風を調節する。4倍より
短くすることは、冷却風を強く当てることが必要となり
バブルがゆれて操業が不安定となり、フィルムの厚さの
バラツク原因ともなる。一方、20倍より長くすること
はインパクト強度の低下を招くので避けたほうが良い。
【0024】このような条件で操業するとロング・ネッ
クタイプのバブルであってもバブルの安定度は増し、高
速引き取りが可能となり、従来のLLDPEインフレー
ションの速度より速い40m/min以上であっても安
定操業が可能となった。
【0025】
【作用】LLDPEはHDPEに比して溶融粘度が低
く、普通のインフレーション法によるフィルム製造にお
いてはバブルの形状はロング・ネックとすることが採用
されていなかった。従ってバブルの安定性が良好でな
く、高速成形すればバブルのゆらぎ、フィルムの厚みむ
らなどがおきて工業的な生産方法としては採用されてい
なかった。
【0026】本発明は押出温度をできるだけ低温とする
と共に、ダイスのリップ・ギャップを2.5〜10mm
と大きく維持することによりバブルの形状をロング・ネ
ックとすることに成功し、急激な膨張を行わせることに
より高速成形(引き取り速度を従来より速い速度)でも
バブルを安定化させ、透明性が良く、強度も充分あって
厚みむらの少ないフィルムの製造法を確立できた。
【0027】
【実施例】以下、実施例、比較例をあげて本発明を更に
詳細に説明する。なお、衝撃強度はJIS K−721
1、ヘーズ光沢度および像鮮明度はJIS K−710
5により測定した。
【0028】(実施例1)密度が0.922g/cm
3 、MFRが0.80g/10分であるエチレン−ブテ
ン−1共重合体(LLDPE)を用い、押出機口径50
mmφ、ダイス口径80mmφ、ダイスのリップ・ギャ
ップ3.0mmの成形機を用い、押出温度が190℃で
フィルム厚み30μm、折幅400mm、引き取り速度
30m/min、バブルはロングネックタイプであっ
て、ダイス径よりは小なる径にクビレており、フロスト
ライン距離457mmで成形を行った。結果は表1に示
す。
【0029】(実施例2)実施例1で用いたLLDPE
を80重量%、MFRが2.50g/10分のLDPE
を20重量%の組成物を用い、リップギャップを5.0
mm、折幅330mmとした以外は実施例1と同一条件
でフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0030】(比較例1)ダイスのリップ・ギャップを
1.0mm、フィルムの折幅を400mmとした以外は
実施例2と同一の樹脂組成物を用い、同一成形条件で同
サイズのフィルムを得た。結果を表1に示す。
【0031】(比較例2)ダイスのリップギャップを
3.0mm、フロストライン距離を2400mmとした
以外は比較例1と同一条件でフィルムを成形した。結果
を表1に示す。
【0032】(比較例3)ダイスのリップギャップ3.
0mm、膨張比1.59、引き取り速度25m/min
とした以外は比較例1と同一条件でフィルムを得た。こ
の場合バブルが不安定であって操業は困難であり、フィ
ルム厚さにバラツキが大きくでた。比較的安定して得ら
れた部分のフィルムの性状を表1に示す。
【0033】(比較例4)引き取り速度40m/min
の割合で押出し、他は比較例1の条件で成形しようとし
たが押出機先端の圧力が高くなり危険を感じたため、安
定した操業条件でサンプルの採取はできなかった。
【0034】
【表1】
【0035】
【発明の効果】LLDPEは低密度であってもLDPE
に比し強度が高く、またHDPEよりは透明性(ヘーズ
及びクラリティー)に優れていることは知られている。
本発明はこの特性を生かしたインフレーションフィルム
の製造法を開発した。
【0036】本発明方法によるときは低溶融粘度のLL
DPEであってもバブルは安定し、得られたフィルムの
縦、横の強度はバランスしており、特にロングネック型
であるため縦横のバランスが良いためか、クラリティー
に優れており、透明包装用として有用な材料となるもの
であろう。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明方法を実施したときの断面図である。
【図2】従来方法によるバブルの形状の断面図である。
【図3】従来方法によるバブルの形状の断面図である。
【図4】従来方法によるバブルの形状の断面図である。
【符号の説明】
1 ダイス 2 エアリング 3 フロストライン
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 番場 武 神奈川県川崎市川崎区千鳥町3−2昭和 電工株式会社川崎樹脂研究所内 (72)発明者 古出 雅士 神奈川県川崎市川崎区千鳥町3−2昭和 電工株式会社川崎樹脂研究所内 (56)参考文献 特開 平1−295824(JP,A) 特開 平1−306221(JP,A) 特開 平2−34324(JP,A) 特開 平4−8529(JP,A) 特開 平5−237929(JP,A) 特開 昭49−61252(JP,A) 特開 昭50−14762(JP,A) 特開 昭52−82963(JP,A) 特開 昭54−93057(JP,A) 特開 昭55−154126(JP,A) 特開 昭56−25418(JP,A) 特開 昭57−34920(JP,A) 特開 昭58−39420(JP,A) 特開 昭58−45026(JP,A) 特開 昭58−59069(JP,A) 特開 昭58−94434(JP,A) 特開 昭58−212918(JP,A) 特開 昭58−219021(JP,A) 特開 昭59−42931(JP,A) 特開 昭59−71825(JP,A) 特開 昭59−91031(JP,A) 特開 昭60−40229(JP,A) 特開 昭61−51324(JP,A) 特開 昭61−74823(JP,A) 特開 昭61−89827(JP,A) 特開 昭61−89828(JP,A) 特開 昭61−229529(JP,A) 特開 昭62−238731(JP,A) 特開 昭63−194928(JP,A) 特開 昭64−18625(JP,A) 特開 昭64−72828(JP,A) 実開 平5−35253(JP,U) 特公 昭56−5172(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B29C 55/00 - 55/30 B29C 47/00 - 47/96

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 エチレンと炭素数が3〜10であるα−
    オレフィンとの共重合体であって、密度0.91〜0.
    94g/cm3メルトフローレート0.3〜5.0g
    /10分、分子量分布2.0〜10.0である線状低密
    度ポリエチレンをリップギャップが2.5〜10mmで
    あるダイスから170〜210℃で押出し、安定体を用
    いることなく、フロストライン距離をダイス径の4〜2
    0倍に保ちながら、バブル形状を一旦ダイス径の0.7
    〜0.95の径とした後、膨張比(バブル径/ダイス口
    径)2〜5に膨張させて引き取ることを特徴とするイン
    フレーションフィルムの製造方法。
  2. 【請求項2】 遊離基発生剤の存在下に重合させて得ら
    れるメルトフローレートが0.3〜5.0g/10分、
    密度0.91〜0.93g/cm3の高圧法低密度ポリ
    エチレンを全体重量の50重量%以下配合された線状低
    密度ポリエチレンである請求項1に記載のインフレーシ
    ョンフィルムの製造方法。
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