JP3461687B2 - 折板屋根用制振シート、折板屋根用制振材及び折板屋根 - Google Patents

折板屋根用制振シート、折板屋根用制振材及び折板屋根

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、折板屋根用制振シ
ート、折板屋根用制振材及びそれを用いた折板屋根に関
する。
【0002】
【従来の技術】集合住宅や一個建住宅の屋根材として、
鋼板を折板状に加工した折板屋根が用いられている。一
般に、折板屋根に発泡体や不織布を貼付し、断熱性等を
向上させる方法が開示されている(例えば、特開昭59
−70560号公報)。しかしながら、上記折板屋根に
発泡体や不織布を貼付したものは、制振効果のない軽量
なものであり、さらに折板加工等の二次加工のための強
度が考慮されていなかった。
【0003】また、上記折板屋根における雨音等の騒音
を防止するために、折板屋根の室内側に制振シートを積
層する方法等が検討されているが、この制振シートに十
分な制振性を付与するためには、50重量%以上の充填
材を含有させる必要があった。しかしながら、制振シー
トに50重量%以上の充填材を含有させると強度や伸び
の低下が起こり、二次加工の際に制振シートに破れや破
断が生じる等の問題点があった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、50
重量%以上の充填材を含有していても、二次加工によっ
て折板屋根等に成形可能な折板屋根用制振シート及びそ
れを用いた折板屋根を提供することにある。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の請求項1記載の
折板屋根用制振シートは、ゴム又は熱可塑性エラストマ
ー、熱可塑性樹脂及び充填材からなる樹脂組成物より形
成される折板屋根用制振シートであって、該樹脂組成物
中における充填材が、クレー、タルク、マイカ、石英等
の鉱物系粉砕物、又はガラス繊維・粉、炭酸カルシウ
ム、石膏などの無機粉体であって、かつその含有量が5
0重量%以上であり、前記制振シートの15〜30℃に
おける、引張強度が50kgf/cm2 以上、引張破
断伸びが20%以上であり、かつ引裂強度が20kgf
/cm2 以上であることを特徴とする。
【0006】本発明の請求項2記載の折板屋根用制振材
は、請求項1記載の折板屋根用制振シートが鋼板に積層
されていることを特徴とする
【0007】本発明の請求項3記載の折板屋根は、請求
項2記載の折板屋根用制振材が折板状に成形されている
ことを特徴とする。
【0008】本発明の制振シートは、ゴム又は熱可塑性
エラストマー、熱可塑性樹脂及びクレー、タルク、マイ
カ、石英等の鉱物系粉砕物、又はガラス繊維・粉、炭酸
カルシウム、石膏などの無機粉体である充填剤を含有す
る樹脂組成物から形成される。
【0009】上記ゴムとしては、例えば、ブチルゴム、
ウレタンゴム、シリコンゴム、スチレン−イソプレンブ
ロック共重合体、EPDM等が挙げられ、加硫の有無に
係わらず使用可能である。上記熱可塑性エラストマーと
しては、例えば、イソプレン系、オレフィン系、エステ
ル系等のエラストマーが挙げられる。また、上記熱可塑
性樹脂としては、例えば、エチレン−酢酸ビニルブロッ
ク共重合体、ポリオレフィン、塩化ビニル樹脂、ポリエ
ステル等が挙げられる。
【0010】上記の中でも、後述の充填材と混合して十
分な強度を発現するためには、エチレン−酢酸ビニルブ
ロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共重合
体、石油樹脂の使用が好ましい。
【0011】上記エチレン−酢酸ビニルブロック共重合
体としては、酢酸ビニル含有量2〜50重量%のものが
好ましく、より好ましくは3〜20重量%である。酢酸
ビニル含有量が、2重量%未満では得られる制振シート
の柔軟性が不足することがあり、50重量%を超えると
樹脂組成物が粘着性を有するため、制振シートの成形時
や保管時に特別の離型処理を必要とすることがある。
【0012】上記スチレン−イソプレンブロック共重合
体は、第1成分であるスチレンと、第2成分であるイソ
プレンとのブロック共重合体であって、イソプレンとブ
タジエンとが併用されることもある。
【0013】上記スチレン−イソプレンブロック共重合
体としては、イソプレン又はイソプレン−ブタジエンブ
ロック部分のビニル結合含有量は40%以上のものが好
ましい。ビニル結合含有量が40%未満になると、上記
制振シートは通常の使用温度領域で十分な制振性能が得
られにくくなる。
【0014】また、上記スチレン−イソプレンブロック
共重合体の分子量は、3万〜30万が好ましく、より好
ましくは8万〜25万である。分子量が3万未満では、
ブロック共重合体自体の破断時の強度、伸度等の機械的
性質が低下することがある。また、分子量が30万を超
えると、充填剤と混合しにくくなる。上記ブロック共重
合体の市販品としては、例えば、クラレ社「ハイブラ」
が挙げられる。
【0015】上記石油樹脂としては、特に制限されない
が、樹脂との相溶性や充填材との接着性により、C9系
樹脂が好適に用いられる。
【0016】上記樹脂成分のうち、後述の充填材を混合
して十分な強度を発現するためには、特に、エチレン−
酢酸ビニル共重合体、スチレン−イソプレンブロック共
重合体、石油樹脂の使用が好ましい。
【0017】本発明で用いられる充填材としては、ク
ー、タルク、マイカ、石英等の鉱物系粉砕物の他、ガラ
ス繊維・粉、炭酸カルシウム、石膏などの無機粉体が挙
げられ、これらは単独で用いられてもよく、二種以上が
併用されてもよい。これらの充填材の中で、制振性及び
コストの点からマイカ、炭酸カルシウムの使用が好まし
い。
【0018】上記無機粉体の粒径は、特に制限されない
が、1〜500μmが好ましい。粒径が小さくなると、
表面積が大きくなると共に単位重量当たりの粒子数が多
くなるので、混合工程に時間がかかる。また、粒径が大
きくなると、制振シートの成形時に表面荒れやシート切
れの原因となる。
【0019】上記無機粉体の配合量は、50重量%以上
に制限され、好ましくは50〜90重量%であり、より
好ましくは55〜80重量%である。配合量が、50重
量%未満では十分な制振性能が得られず、90重量%を
超えると樹脂組成物の溶融時の流動性が低下し、制振シ
ートへの成形加工が難しくなり、充填材の結合力が不足
して所定の機械的強度が得られなくなる。
【0020】上記樹脂組成物には、必要に応じて、熱安
定剤、耐侯性向上剤、滑剤、加工助剤、顔料、着色剤な
どが配合されてもよい。
【0021】上記樹脂組成物から制振シートを得る方法
としては、例えば、樹脂組成物を樹脂分の軟化点温度以
上、具体的には、100〜170℃に加熱して、押出成
形又はカレンダー成形によってシート状に成形する方法
が挙げられる。
【0022】上記制振シートの引張強度は、小さくなる
と制振シートを鋼板に貼付する工程でシート切れを起こ
すことがあるので、50kgf/cm2 (15〜30
℃)以上に制限される。
【0023】上記制振シートの引張破断伸びは、小さく
なると制振シートを貼り合わせた鋼板を二次加工する際
にシートが破断することがあるので、20%(15〜3
0℃)以上に制限される。一方、引張破断伸びが、余り
に大きくなり過ぎると引張負荷が加わった場合にシート
が伸び過ぎて、厚みや幅方向の寸法にばらつきを生じる
ことがあるので、300%以下が好ましい。
【0024】また、上記制振シートの引裂強度は、小さ
くなると鋼板との貼り合わせ工程でシートの損傷が1箇
所でも発生すると、シート全体の破断につながることが
あり生産性が低下するので、20kgf/cm2 (15
〜30℃)以上に制限される。
【0025】尚、上記引張強度及び引張破断伸びは、J
IS K6301に準拠した3号試験片を用いて測定さ
れる値であり、上記引裂強度は、JIS K6301に
準拠したB型試験片を用いて測定される値である。
【0026】上記制振シートの比重は、1.3(g/c
3 )以上が好ましい。比重が1.3(g/cm3 )未
満では、制振シートの制振性能が十分でないことがあ
る。
【0027】上記制振シートの引張試験における20%
モジュラスは100kg/cm2 以下が好ましい。20
%モジュラスが100kg/cm2 を超えると、鋼板へ
の形状追随性が悪くなるため制振シートが鋼板から剥が
れたり、鋼板への応力歪みの影響が大きくなるため、得
られる折板屋根の寸法精度が悪くなる。
【0028】上記制振シートの成形加工を容易にした
り、耐久性を向上させるために、その片面にポリエチレ
ンテレフタレート(以下、PETという)フィルムが積
層されてもよい。
【0029】上記制振シートの厚み(PETフィルムが
積層されている場合はPETフィルムを含む)は、厚く
なると折板屋根への二次加工が難しくなるので、5mm
以下が好ましく、より好ましくは1.5mm以下であ
る。
【0030】制振シートへPETフィルムを積層する方
法としては、PETフィルムを制振シートに熱融着する
方法;PETフィルムを制振シートに接着剤により接着
する方法などが挙げられる。さらに、制振シート上に溶
剤キャスティングによりPETフィルム層を形成する方
法;押出しにより制振シートとPETフィルム層を同時
にラミネーションする方法なども使用可能である。
【0031】本発明の折板屋根用制振材は、上記制振シ
ートを鋼板に積層して得られるものである。
【0032】上記制振シートと鋼板とを積層するには、
鋼板の片側(室内側)に接着剤を塗布し、制振シートを
接着剤塗布面に圧着して乾燥又は硬化させる方法が用い
られる。また、制振シートにPET樹脂層が積層されて
いる場合は、鋼板の接着剤塗布面に、制振シートのPE
T樹脂層が積層されている側とは反対側の面を圧着して
乾燥又は硬化させる。
【0033】上記積層工程で用いられる接着剤として
は、溶剤型のクロロプレンゴム系接着剤の他、二液硬化
型のエポキシ系及びウレタン系の接着剤が用いられる。
また、上記制振シートの接着面には、予めクロロプレン
ゴム、スチレン−ブタジエン−スチレン系ブロック共重
合体等によって、プライマー処理が施されてもよい。
【0034】上記積層工程では、生産性を考慮すると連
続生産が好適であり、そのためには制振シートのロール
状物を巻き戻しながら鋼板に積層することが好ましい。
この場合、ロール状物は、通常、200〜1000mm
幅、100m以上の長尺巻き物であり、重量物であるた
め、制振シートを巻き戻して積層する際に、制振シート
に機械的強度が要求される。
【0035】本発明の折板屋根は、上記折板屋根用制振
材を折板状に成形加工することにより得られる。上記制
振材を、折板屋根へ成形加工するための生産設備として
は、上記積層体が長尺体の場合、ロールフォーミングに
よる連続生産が好ましく、小ロット生産の場合は、プレ
スによる曲げ加工が好ましい。
【0036】また、上記制振材を折板屋根へ成形する際
に、そのPET樹脂層側を成形金型に当接させることに
よって、金型と制振材との滑り性が改善され、折板屋根
に擦過傷が生じるのを防止すると共に、生産設備のライ
ン速度を高めることができる。
【0037】
【作用】本発明の折板屋根用制振シートは、50重量%
以上の、クレー、タルク、マイカ、石英等の鉱物系粉砕
物、又はガラス繊維・粉、炭酸カルシウム、石膏などの
無機粉体である、充填材を含有することにより、優れた
制振性能を有する。また、本制振シートは、所定の引張
強度、引張破断伸び及び引裂強度を有するので、鋼板と
積層された制振材を折板屋根等へ二次加工する際に、制
振シート層部分における損傷や破断が起こらない。
【0038】
【発明の実施の形態】以下に実施例を掲げて本発明を更
に詳しく説明する。
【0039】(実施例1)スチレン−イソプレンブロッ
ク共重合体(クラレ社製「ハイブラ」)20重量%、エ
チレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量18重
量%)20重量%、炭酸カルシウム(平均粒径8μm)
30重量%、及び、マイカ(200メッシュパス)30
重量%からなる樹脂組成物を押出機に供給して、0.9
mm厚の制振性シート基材を押出成形し、該制振性シー
ト基材が金型から吐出した直後に表面を粗面加工した2
6μm厚のPETフィルムを積層し、全体厚みが0.9
2mmとなるように調整しながら引き取り冷却して、制
振シートを得た。
【0040】(実施例2)スチレン−イソプレンブロッ
ク共重合体(クラレ社製「ハイブラ」)4重量%、エチ
レン−酢酸ビニル共重合体(酢酸ビニル含有量28重量
%)15重量%、石油樹脂(C9系樹脂)15重量%、
炭酸カルシウム(平均粒径8μm)36重量%、及び、
マイカ(200メッシュパス)30重量%からなる樹脂
組成物を押出機に供給して、1mm厚の制振性シート基
材を押出成形した。この制振性シート基材にアクリル系
粘着剤を塗布した後、シリコーン離型処理したPETフ
ィルムの非処理面を積層し、全体厚みが1.4mmとな
るように調整しながら引き取り冷却して、制振シートを
得た。
【0041】(実施例3)EPDM(日本合成ゴム社
製)20重量%、エチレン−酢酸ビニル共重合体(酢酸
ビニル含有量18重量%)25重量%、炭酸カルシウム
(平均粒径8μm)30重量%、及び、マイカ(200
メッシュパス)25重量%からなる樹脂組成物を押出機
に供給して、0.9mm厚の制振シートを押出成形し
た。
【0042】(比較例1)低密度ポリエチレン(三菱化
学社製)40重量%、炭酸カルシウム(平均粒径8μ
m)30重量%、及び、マイカ(200メッシュパス)
30重量%からなる樹脂組成物を押出機に供給して、
0.9mm厚の制振シートを押出成形した。
【0043】(比較例2)ポリ塩化ビニル(信越化学社
製、重合度1050)34重量%、炭酸カルシウム(平
均粒径8μm)36重量%、及び、マイカ(200メッ
シュパス)30重量%からなる樹脂組成物を押出機に供
給して、0.9mm厚の制振性シート基材を押出成形し
た。この制振性シート基材にアクリル系粘着剤を塗布し
た後、シリコーン離型処理したPETフィルムの非処理
面を積層し、全体厚みが1.4mmとなるように調整し
ながら引き取り冷却して、制振シートを得た。
【0044】(比較例3)エチレン−酢酸ビニル共重合
体(酢酸ビニル含有量4重量%)45重量%、炭酸カル
シウム(平均粒径8μm)30重量%、及び、マイカ
(200メッシュパス)25重量%からなる樹脂組成物
を押出機に供給して、0.9mm厚の制振シートを押出
成形した。(比較例4)低密度ポリエチレン(三菱化学
社製)60重量%、炭酸カルシウム(平均粒径8μm)
20重量%、及び、マイカ(200メッシュパス)20
重量%からなる樹脂組成物を押出機に供給して、0.9
mm厚の制振シートを押出成形した。
【0045】上記実施例及び比較例で得られた制振シー
トについて、下記の性能評価を行い、その結果を表1に
示した。 (1)引張強度 JIS K6301に準拠し、3号形試験片を用いて引
張強度を測定した。 (2)引張破断伸び JIS K6301に準拠し、3号形試験片を用いて引
張破断時の伸びを測定した。 (3)引裂き強度 JIS K6301に準拠し、B形試験片を用いて引裂
き強度を測定した。
【0046】(4)成形性の評価 幅910mm、長さ600mに巻いた巻物状の制振シー
トを線速5mで巻き戻しながら、クロロプレンゴム系接
着剤を使用して、200μm厚の塩化ビニル樹脂を塗装
した0.6mm厚の鋼板の塗装面とは反対側に接着して
制振材を得た後、この制振材をロールフォーミングによ
って折板状に成形し、図1に示す断面形状の折板屋根を
得た。得られた折板屋根の長さ(紙面に対して直角方
向)6m当たりの、制振シート層部分におけるクラック
(幅0.5mm以上、長さ10mm以上で制振シート層
部分全体にわたるもの)の発生箇所を目視観察によりカ
ウントし、表1に示した。また、制振シートと塩化ビニ
ル樹脂塗装鋼板とを積層した制振材を製造する際に、6
00m長さのロール状物1巻き当たりの、シート切れ発
生回数を測定した。
【0047】
【表1】
【0048】
【発明の効果】本発明の折板屋根用制振シートは、上述
の通りであり、クレー、タルク、マイカ、石英等の鉱物
系粉砕物、又はガラス繊維・粉、炭酸カルシウム、石膏
などの無機粉体である、充填材を50重量%以上含有す
るので制振性が優れると共に、所定の引張強度、引張破
断伸び及び引裂強度を有するので、鋼板と積層して得ら
れる制振材はロールフォーミング又はプレス曲げ加工に
よって、制振シート層部分にクラックや破断を生じるこ
となく、容易に折板屋根へ成形加工することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】実施例及び比較例で作製される折板屋根の形状
を示す正面図である。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ゴム又は熱可塑性エラストマー、熱可塑
    性樹脂及び充填材からなる樹脂組成物より形成される折
    板屋根用制振シートであって、該樹脂組成物中における
    充填材が、クレー、タルク、マイカ、石英等の鉱物系粉
    砕物、又はガラス繊維・粉、炭酸カルシウム、石膏など
    の無機粉体であって、かつその含有量が50重量%以上
    であり、前記制振シートの15〜30℃における、引張
    強度が50kgf/cm2 以上、引張破断伸びが20
    %以上であり、かつ引裂強度が20kgf/cm2 以
    上であることを特徴とする折板屋根用制振シート。
  2. 【請求項2】 請求項1記載の折板屋根用制振シートが
    鋼板に積層されていることを特徴とする折板屋根用制振
    材。
  3. 【請求項3】 請求項2記載の折板屋根用制振材が折板
    状に成形されていることを特徴とする折板屋根。
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