JP3458945B2 - 加工全脂豆乳及びその製造法 - Google Patents

加工全脂豆乳及びその製造法

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JP3458945B2 JP05647299A JP5647299A JP3458945B2 JP 3458945 B2 JP3458945 B2 JP 3458945B2 JP 05647299 A JP05647299 A JP 05647299A JP 5647299 A JP5647299 A JP 5647299A JP 3458945 B2 JP3458945 B2 JP 3458945B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、豆乳を比較的多量
に飲む際に胃内に感じる「重い食感」が効果的に除去さ
れた全脂豆乳、及びその製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】大豆を水などで抽出しオカラを分離して
得られる豆乳は、豆腐の原料だけではなく、それ自体飲
料として用いられる。しかしその青臭味やエグ味を理由
に敬遠する人も多数存在している。
【0003】 これら悪風味の原因の多くは、大豆中に
含まれるリポキシゲナーゼにより脂質成分が分解される
ためで、このリポキシゲナーゼを失活させ、風味を向上
させる方法が幾つか提案されている。例えば特開昭55-6
4777号公報には、重炭酸ナトリウムを加えることにより
風味を向上させているが、これら方法によって得られた
豆乳の風味は概して良いにも関わらず、敬遠する人は依
然多い。
【0004】 他方、大豆中には(固形物あたり)2%
程度のレベルでフィチン酸が含まれている。フィチン酸
はミオイノシトールの6リン酸エステルであり、蛋白質
と強固に結合していて単純な限外濾過や等電点沈澱では
分離し難いため、通常、豆乳や分離蛋白中にもほぼ同じ
程度で存在する。
【0005】 このフィチン酸は金属とキレートを形成
するため、食餌中に含まれるカルシウムや亜鉛などの必
須金属の低下させるとの指摘があり、そこで、加工度の
高い分離蛋白質の製造においては、フィチン酸を処理す
るいくつかの報告がある。
【0006】例えば、 1アルカリ性域でフィチン酸を沈
澱させる方法(特開昭52-1054 号公報)、 2高濃度塩存
在下でフィチン酸を分離させる方法(J. Food Science,
Vol.44,No.2,596,1979)、 3pH5.5付近で蛋白質だ
けを沈澱させる方法(特開平8−173052号公
報)、 4分離蛋白を得る途中の脱脂豆乳にフィチン酸を
フィターゼで処理後、陽イオン交換樹脂でpH4〜6に
し、蛋白質の純度を向上する方法(特開昭50-130800 号
公報)等が提案されている。しかしそれらは、いずれも
分離蛋白の調製法であり、蛋白も油脂も含む全体的な栄
養成分を活用した全脂豆乳について応用した例はない。
【0007】 また、 5フィターゼによりフィチン酸を
分解する方法(特開昭59-166049 号公報)も提案されて
おり、これが全脂豆乳よりフィチン酸を減少させる唯一
の提案であるが、これは全リン酸含量そのものは低下し
ない。
【0008】 いずれにせよ、全リン酸含量そのものを
低下せしめた全脂豆乳を得ることは行なわれておらず、
また全リン酸の除去により豆乳の風味を改良することに
ついて着眼した報告は存在しない。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】 本発明者は、上記の
ように、リポキシゲナーゼを失活させ風味良好と評価さ
れる豆乳に加工しても依然豆乳が敬遠される傾向の要因
を解明しようとして、それを探究する中で、その要因と
して、比較的多量の豆乳摂取後に胃部に独特な「重い食
感」が生じることに着目し、更に検討を進めた結果、こ
の「重い食感」は豆乳中に含まれるフィチン酸やその分
解物である無機リン酸と言ったリン酸化合物に由来する
ことが判明した。また、該「重い食感」は、豆乳を加工
する過程で加えられた或いは生成した塩のカチオンの種
類により軽重があることも見出した。即ちこの発明は、
豆乳を比較的多量に飲む際に胃内に感じる「重い食感」
を効果的に除去された全脂豆乳を得ることを課題とす
る。
【0010】
【課題を解決するための手段】 即ちこの発明の一つ
は、豆乳中の全リン酸含量をその固形分に対して0.5
%以下とした食感の改善された加工全脂豆乳である。
「重い食感」の一層の改善には、豆乳中の全リン酸含量
が、その固形分に対して0.2%以下とすることがより
好ましい。
【0011】この発明の他の一つは該加工全脂豆乳の製
造法に係わり、全脂豆乳をフィチン酸分解活性を有する
酵素で処理し、遊離したリン酸を除去する製造方法(よ
り好ましくは限外濾過、陰イオン交換樹脂又は電気透析
で除去する製造方法)、全脂豆乳をpH10以上のアル
カリ性に調整してフィチン酸を沈澱除去後、脱塩する製
造方法(より好ましくは陽イオン交換樹脂もしくは電気
透析で中和脱塩する製造方法、又は、中和物を限外濾
過、イオン交換樹脂もしくは電気透析で脱塩する製造方
法)、全脂豆乳に5%以上の中性塩類を添加しフィチン
酸を沈澱除去後、脱塩する製造方法(より好ましくは限
外濾過、イオン交換樹脂又は電気透析で脱塩する製造方
法)である。上記アルカリ性への調整は1価のアルカリ
剤を添加して行うことが好ましく、水酸化カリウムを添
加して行うことがより好ましい。上記中性塩類のカチオ
ンは1価が好ましく、カリウムがより好ましい。
【0012】 また、残るこの発明の一つは、上記の加
工全脂豆乳を用いた飲料又は食品である。
【0013】
【発明の実施の形態】 全脂豆乳は、丸大豆,脱皮大
豆,脱皮脱胚軸大豆など、脱脂処理を行っていない大豆
を原料とし、それを浸漬後破砕し水で抽出を行ない、オ
カラを分離して得るのが最も一般的である。
【0014】 浸漬処理は、大豆を水またはアルカリ水
に30分〜1 日ほど浸漬するのがよい。この温度は常温で
も加熱でも良く状況に応じて選択できる。一般的には破
砕の前に加熱してリポキシゲナーゼを失活させるのが、
風味をより向上させる点で好ましい。浸漬終了後そのま
ま、あるいは浸漬液を分離後に膨潤大豆に別途水を加え
てから、適当な破砕装置を用いて破砕を行う。破砕後は
遠心分離機等を用いてオカラを分離し、豆乳を得る。
【0015】 大豆のリンの存在形態は、フィチン酸、
遊離リン酸、リン脂質、核酸などであるが、この発明に
おける全リン酸含量は、全リン量(絶対値)を測定し、
遊離リン酸の量に換算し、それを豆乳中の固形分で除し
て表す(相対値)。なお、遊離リンは試料をそのままモ
リブデン酸アンモニウムで発色させる方法を、全リンは
試料を硫酸分解後にメタバナジン酸/モリブデン酸で発
色させる方法(バナドモリブデン酸吸光光度法)を用い
て測定した(第二版 化学的合成品以外の食品添加物自
主規格・日本食品添加物協会編)。
【0016】 カリウムイオン生成物は、水酸化カリウ
ムの他、塩化カリウム,硫酸カリウム,炭酸水素カリウ
ム等の塩類が使用でき、その他のアルカリ金属イオン生
成物は代表的には、ナトリウムイオンのそれら、即ち、
水酸化ナトリウム、塩化ナトリウム、硫酸ナトリウム、
炭酸水素ナトリウム等である。これらアルカリ金属イオ
ン生成物を用いる場合その使用時期は特に限定されない
が、上記の浸漬,破砕工程において全体のpHを中性〜弱
アルカリ性にする量加えるのがよく、通常豆乳固形物に
対し0.1〜3、好ましくは0.2〜1.5重量%の範
囲にある。
【0017】 また、この発明において発明効果の指標
となる豆乳の「重い食感」は、以下の試験方法にて定量
化可能である。即ち試料(N社製造市販全脂豆乳)を50
mlづつ6杯を分注する。被験者は3分おきに1杯づつを
飲み、その時々の胃部での感覚を評価する。その評価尺
度は 1何も感じない、 2やや違和感を感じる、 3胃に
「重い食感」を感じる、 4更に強い「重い食感」を感じ
る、 5それ以上の摂取ができない程の非常に強い「重い
食感」を感じる、の5 段階に区別した。
【0018】 また上記試料を1/2 希釈、1/4 希釈とし
たものについても同様の試験を行い、試料中の乾物量を
横軸で表し、先ほどの評価をプロットすると図1に示す
様になり、試料のボリュームよりは、乾物量と「重い食
感」とに直線的な関係が認められる。
【0019】 該直線関係から、便宜上上記の、非常に
強い「重い食感」を、重さ活性1(=1YU)と定め、
該「非常に強い重い食感」に至らない試料も、直線的に
「重い食感」が増えることを利用し、活性を算出する。
この方法により測定した各種飲料の重さ活性は、表1の
様になり、大豆製品等で大きいが、大豆中に含まれるフ
ィチン酸及び、その構成成分であるリン酸( 但し酸味の
ため水酸化ナトリウムで中和した) に強い活性のあるこ
とがわかる。
【0020】 表1 各種試料の「重い食感」測定値 ─────────────────────────────────── 試料 重い食感( YU/乾物g) ─────────────────────────────────── 牛乳 6杯では認識出来なかった 全卵液 6杯では認識出来なかった 水と3%大豆油の乳化物 6杯では認識出来なかった 全脂豆乳 0.067 分離大豆蛋白 0.053 0.25% フィチン酸液(NaOH中和) 2.7 0.25% リン酸液(NaOH中和) 2.6 ───────────────────────────────────
【0021】 またフィチン酸及びリン酸はカリウムイ
オンが存在すると上記「重い食感」を低減できる。即
ち、表1でフィチン酸の中和に使用した水酸化ナトリウ
ムを水酸化カリウムに置き換えていくと、「重い食感」
を半分以下に低減できる。カリウム/ナトリウム混合系
の場合、カリウム/アルカリ金属比が分子比で約7/8
程度で、「重い食感」を半減できる(表2)が、それ以
上の分子比になっても低減効果は増大が乏しいので、全
リン酸含量の低減がより有効である。
【0022】 表2 フィチン酸のカウンターカチオンによる「重い食感」の変化 ─────────────────────────────────── K:Na比 重い食感(YU/乾物g ) ─────────────────────────────────── 8:0 1.1 7:1 1.3 6:2(=3:1) 1.8 4:4 2.0 0:8 2.7 ───────────────────────────────────
【0023】(フィチン酸及びリン酸を豆乳より低減す
る方法)通常の豆乳のフィチン酸含有量は乾物当たり2
%程度であり、この範囲より大幅に全リン酸含量の低い
豆乳を調製するほど「重い食感」が大きく軽減された加
工全脂豆乳を得ることができる。豆乳固形物中の全リン
酸濃度は好ましくは0.5%以下、より好ましくは0.
2%以下とする。
【0024】 かかる低減された豆乳を得る方法の一つ
は、全脂豆乳をフィチン酸分解活性を有する酵素で処理
することにより蛋白質に結合したフィチン酸を加水分解
してリン酸を遊離させ、その後、リン酸を除去する。こ
の際に用いるフィチン酸分解活性を有する酵素は代表的
にはフィターゼやフォスファターゼで、各種の植物由
来、微生物由来、更には遺伝子組み換えにより生産され
た物など各種の起源の物が使用出来る。酵素の添加量,
処理時間,pH,温度等は、用いる酵素に応じて適宜定
めることが出来る。
【0025】 例えばNOVO社のフィターゼを用いた場合
は、 全脂豆乳1Kg に対し、フィターゼを500mg 加え、 pH
6,60℃で30分間反応させる。 その後90℃で30分間反応さ
せることで酵素を失活させ、 フィチン酸分解豆乳を得
る。
【0026】 次に、遊離したリン酸を除去するのだ
が、これには限外濾過もしくは陰イオン交換樹脂もしく
は電気透析が有効である。
【0027】 限外濾過の場合は分画分子量数万〜数十
万の限外濾過膜やセラミックフィルターを用い、低分子
の糖,塩類,リン酸を系外に除去する。大豆油エマルジ
ョンを含む蛋白成分は濾過されずに残り、結果として低
フィチン酸豆乳が得られる。この際の濃縮倍率が高いほ
ど全リン酸は除去されるが、豆乳そのものの粘度が上昇
するために通常2倍程度にしか濃縮は出来ない。そこで
濃縮前もしくは濃縮中に適宜水により希釈を行い、濃縮
倍率を上げることも出来る。2 〜5倍程度の濃縮を行う
と残存リン酸量は固形物あたり0.5%程度以下の値に
低下が可能である。例えば、東芝セラミックス社製のセ
ラミックフィルター(孔径500 オングストローム,膜面
積0.35m2)を用いると、予め3倍に希釈した豆乳
を1/3容量に濃縮してリン酸を除去した豆乳を得るこ
とが出来る。
【0028】電気透析は限外濾過より更に都合が良い。
これは、陽イオン交換膜、陰イオン交換膜で隔てられた
脱塩室に前記の溶出液を満たし、通電することでイオン
成分を膜を通して除去する。豆乳の場合は、分画分子量
数百〜数万の電気透析膜を用いると、糖などの低分子呈
味成分を残したままリン酸のみを除去することが可能で
ある。電気透析装置は、公知の電気透析装置を用いるこ
とが出来る。
【0029】陰イオン交換膜は、公知の陰イオン交換膜
を用いることができ、例えば、4級アンモニウム基、1
級アミノ基、2級アミノ基、3級アミノ基、更にこれら
のイオン交換基の複数種類が混在した様な陰イオン交換
膜が適当である。
【0030】陽イオン交換膜も、公知の陽イオン交換膜
を用いることができ、例えば、スルフォン酸基、カルボ
ン酸基、硫酸エステル基、リン酸エステル基、更にこれ
らのイオン交換基の複数種類が混在した様な陽イオン交
換膜が適当である。
【0031】電気透析装置は、陽イオン交換膜,陰イオ
ン交換膜に隔てられた試料に通電することで、イオン成
分を膜を通して除去する。電気透析装置の通電電圧、電
流、時間は電気透析装置に応じて自由に設定することが
出来る。例えばフィチン酸分解豆乳にCS-O型実験用電気
透析装置(膜プロセスエンジニアリング製)を用いる
と、9Vの定電圧で2時間通電することで、脱塩室(豆
乳)内の遊離リン酸は殆ど消失し、低リン酸の豆乳を得
ることが出来る。
【0032】また、陰イオン交換樹脂を用いても、リン
酸のみを吸着除去することが出来る。本発明に用いる陰
イオン交換樹脂は、アンバーライトIR-45 、IR-68 、IR
-93 、IR-410、IR-411(オルガノ株式会社製)やデュオ
ライトC-161 、A-375 、A-368 、A-378 (住友化学工業
株式会社製)等が使用出来るが、これらに拘らず塩基性
基を持つものからも適宜選択する。更に、ジルコニウム
フェライト系のセブントールP(武田薬品工業株式会
社)の様なリン酸吸着剤も有効である。
【0033】 これら樹脂をバッチもしくはカラムにて
フィターゼ処理豆乳に接触させると、遊離リン酸が陰イ
オン交換樹脂のアニオンと交換し、低リン酸の豆乳を得
ることが出来る。例えば、デュオライトA-375 カラムに
対し、フィターゼ処理豆乳をSV10程度で通液することで
遊離リン酸を吸着除去させることが出来る。
【0034】 フィチン酸分解活性を有する酵素を用い
ない以下の方法でも、全リン酸含量の低減が可能であ
る。
【0035】 その一法は、全脂豆乳をpH10以上のアル
カリ性とすることで、フィチン酸成分を蛋白質より分離
し沈澱することを利用し、豆乳のフィチン除去を行う。
即ち前述の全脂豆乳をpH10以上になる様にアルカリ剤で
pHを調整すると、フィチン酸を含んだ沈澱が生成する。
この際、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の2
価のアルカリ剤を用いると、蛋白質成分までもが沈澱す
るので好ましくなく、水酸化ナトリウム、水酸化カリウ
ム、アンモニア水等の1価のアルカリ剤が適当である。
【0036】 アルカリ性により生成した沈澱を遠心分
離器等で分離し、上澄を回収することでフィチン酸が低
減した豆乳が得られる。次にこの溶液を中和するが、こ
こで陽イオン交換樹脂もしくは電気透析で直接pH調整
を行うと、塩濃度を上げることなく中和することが出来
る。
【0037】 陽イオン交換樹脂は、アンバーライトIR
-124,252 ,XT-1006 (オルガノ株式会社製)やデュオ
ライトC20 、C476(住友化学工業株式会社製)等が使用
出来るが、これに拘らず酸性基を持つのものから適宜選
択することが出来る。陽イオン交換樹脂のカチオン型は
H 型とし、これをアルカリ性の脱フィチン酸豆乳に接触
させることで、塩濃度を変えず風味変化を抑えたまま豆
乳のpHを中性域に下げることが出来る。
【0038】 電気透析も同様に、アルカリ性の脱フィ
チン酸豆乳に対して処理することで、塩濃度を変えず風
味変化を抑えたまま豆乳のpHを下げることが出来る。
また、アルカリ性豆乳を各種の酸を用いて中和した上
で、その中和物を限外濾過もしくはイオン交換樹脂もし
くは電気透析で脱塩することも可能である。ここで用い
る酸は塩酸,硫酸などの鉱酸、クエン酸,酒石酸,乳酸
などの有機酸を用いることが出来るが、電気透析膜を通
過できない高分子の酸や、「重い食感」を持つリン酸は
好ましくない。
【0039】脱塩に用いるイオン交換樹脂は、上で述べ
た陰イオン交換樹脂のOH型と陽イオン交換樹脂のH 型を
用いるが、試料を2本のカラムに続けて通すか、もしく
は両樹脂を混合して通液処理することが出来る。ただし
中和後に脱塩を行うと、上昇した塩を更に脱塩する為に
2ステップとなり、処理が煩雑になる。
【0040】他の一法として、全脂豆乳に高濃度の中性
塩類を添加することで、フィチン酸成分が蛋白質より分
離し沈澱することを利用し、除フィチンを行うことが出
来る。即ち、豆乳に5%以上好ましくは8%以上、更に好ま
しくは10% 以上の中性塩類を添加すると、フィチン酸と
蛋白質の相互作用が減り、アルカリによる方法の時と同
様にフィチン酸の沈澱が起こる。ここで用いる中性塩は
塩化ナトリウム,塩化カリウム,硫酸ナトリウム,硫酸
カリウム,硫酸アンモニウムなどの1価カチオンを含む
中性塩類で、カルシウム,マグネシウムなどの2価カチ
オンを用いると、蛋白質の沈澱を引き起こす場合があり
好ましくない。
【0041】5%以下の塩濃度ではフィチン酸は殆ど沈澱
せず、8%以上の塩濃度でも一部のフィチン酸は上澄に残
留する。10% 以上では殆どのフィチン酸は沈澱するが、
塩濃度が高い為に、脱塩が困難になる。その時の濃度,
pH等を考慮した中で、なるべく低い濃度が好ましい。
【0042】本発明で得られた、「重い食感」が軽減さ
れた、飲みやすい全脂豆乳は、その用途が拡大され、飲
料のみならず、醗酵食品、小麦粉使用食品、製菓・製パ
ンによる食品、その他食品全般の主原料ないしは添加用
素材として用いることが出来るが、全脂豆乳を取り分け
含水状態で用いる食品に差異が顕著である。
【0043】
【実施例】以下に実施例を以て本発明を説明する。
【0044】実施例1 市販全脂豆乳(「すっきり豆乳力」。トーラク株式会社
販売)1,000 部にフィターゼ(アスペルギルス属由来。
シグマ社製。力価5U/mg)0.5部を加え、50℃で
1時間反応させた。反応後、住友化学工業製デュオライ
トA-375 陰イオン交換樹脂(Cl型)カラムに空間速度S
V5で通液し、リン酸を吸着除去させて試料Aを得た。
【0045】実施例2 「すっきり豆乳力」1,000 部にフィターゼ(遺伝子組み
換え品。NOVO社製。力価5U/mg)0.5部を加え、
50℃で1時間反応させた。反応後、CS-O型実験用電気透
析装置(膜プロセスエンジニアリング製)を用て通電す
ることで、遊離リン酸が低減したリン酸低含量の豆乳を
脱塩室内に得ることが出来た(試料Bとした。以下、同
様)。
【0046】実施例3 実施例1と同様に全脂豆乳をフィターゼ分解した。反応
後3倍に希釈し、東芝セラミックス社製のセラミックフ
ィルター(孔径500 Å)を用いて3倍まで濃縮すること
で、遊離リン酸を系外に排除したリン酸低含量の豆乳を
得た(試料C)。
【0047】実施例4 丸大豆を脱皮脱胚軸後、10倍量の0.2%重曹溶液で90℃,
30分間加熱した。膨潤大豆を分離後に3 倍加水し、コミ
ットロールを用いて磨砕した。磨砕スラリーを遠心分離
することで全脂豆乳を得た。得られた全脂豆乳に水酸化
カリウムを加えてpHを10とし、生じたフィチン酸を含む
沈澱を遠心分離機で分離した。次にバッチで撹拌しつつ
H 型に平衡化した陽イオン交換樹脂(デュオライトC20
)を加え、K+→H+の交換反応でpHが中性となった点
で終了とした。樹脂を除去し溶液部を回収した(試料
D)。
【0048】実施例5 実施例4と同様にして得られた全脂豆乳に水酸化カリウ
ムを加えてpHを10とし、生じたフィチン酸を含む沈澱を
遠心分離機で分離した。次に試料をマイクロアシライザ
ーEX3 型電気透析式イオン交換装置(旭化成株式会社
製)を用いて中性になるまで通電することで、脱塩室
(豆乳)内のカリウムイオンのみを排出し、低塩リン酸
低含量の豆乳を得ることが出来た(試料E)。
【0049】実施例6 実施例4と同様にして得られた全脂豆乳に水酸化ナトリ
ウムを加えてpHを10とし、生じたフィチン酸を含む沈澱
を遠心分離機で分離した。次に試料に塩酸を添加して中
和した後に、CS-O型実験用電気透析装置(膜プロセスエ
ンジニアリング製)を用て通電することで、脱塩された
豆乳を得ることが出来た(試料F)。
【0050】実施例7 実施例4と同様にして得られた全脂豆乳に水酸化ナトリ
ウムを加えてpHを10とし、生じたフィチン酸を含む沈澱
を遠心分離機で分離した。次に試料に塩酸を添加して中
和した後に3 倍に希釈し、東芝セラミックス社製のセラ
ミックフィルター(孔径500 オングストローム)を用い
て3 倍まで濃縮することで、脱塩された豆乳を得ること
が出来た(試料G)。
【0051】実施例8 「すっきり豆乳力」に塩化カリウムを10% 加え、生じた
フィチン酸を含む沈澱を遠心分離機で分離した。上澄を
3 倍に希釈し、東芝セラミックス社製のセラミックフィ
ルター(孔径500 Å)を用いて3 倍まで濃縮し、低塩リ
ン酸低含量の豆乳を得た(試料H)。
【0052】実施例9 「すっきり豆乳力」に塩化ナトリウムを8%加え、生じた
フィチン酸を含む沈澱を遠心分離機で分離した。CS-O型
実験用電気透析装置(膜プロセスエンジニアリング製)
を用いて通電することで、脱塩された豆乳を得ることが
出来た(試料I)。
【0053】参考例1 丸大豆を脱皮脱胚軸後、10倍量の0.2%炭酸水素カリウム
溶液で90℃,30分間加熱した。膨潤大豆を分離後に3 倍
加水し、コミットロールを用いて磨砕した。磨砕スラリ
ーを遠心分離することで全脂豆乳を得た(参考J)。
【0054】参考例2 丸大豆を脱皮脱胚軸後7倍量の水に一夜浸漬し、コミッ
トロールを用いて磨砕した。水酸化カリウムを用いてpH
を7.0 に維持しつつ90℃で30分間加熱し、オカラを遠心
分離することで全脂豆乳を得た(参考K)。
【0055】比較例1 丸大豆を脱皮脱胚軸後7倍量の水に一夜浸漬し、コミッ
トロールを用いて磨砕した。水酸化ナトリウムを用いて
pHを7.0 に維持しつつ90℃で30分間加熱し、オカラを遠
心分離することで全脂豆乳を得た(比較例A)。
【0056】比較例2 丸大豆を脱皮脱胚軸後、10倍量の0.2%重曹溶液で90℃,
30分間加熱した。膨潤大豆を分離後に3 倍加水し、コミ
ットロールを用いて磨砕した。磨砕スラリーを遠心分離
することで全脂豆乳を得た(比較例B)。
【0057】評価結果 各試料の「重い食感活性」と全リン酸含量を表3に示し
た。試料A〜Iでは低いリン酸含量とそれに伴って「重
い食感活性」の低下が認められた。また試料J〜Kで
は、リン酸含量は殆ど変わらないものの、「重い食感活
性」が比較例より明らかに低減されていた。
【0058】表3 各調製品の「重い食感活性」とリン
酸含量 ───────────────────────────── 試料No. 重い食感(YU/乾物g ) リン酸(乾物% ) ───────────────────────────── 試料A 0.002 0.15 試料B 0.002 0.18 試料C 0.005 0.49 試料D 0.002 0.15 試料E 0.001 0.12 試料F 0.004 0.18 試料G 0.005 0.20 試料H 0.002 0.22 試料I 0.004 0.15 ---------------------------------------------------------- 参考J 0.018 1.6 参考K 0.020 1.8 ---------------------------------------------------------- 比較例A 0.043 1.6 比較例B 0.051 1.9 ─────────────────────────────
【0059】試作例 リン酸含量が低い全脂豆乳を用いて、大豆ヨーグルトを
試作した。実施例で調製した試料Hを145℃で4秒の
殺菌処理後、40℃まで冷却した。これにショ糖1%添
加後、ラクトバチルス・ブルガリクス、ストレプトコッ
カス・サーモフィルスの各種乳酸菌(凍結乾燥乳酸菌)
の個別培養液をスターターとして各1%ずつ添加して醗
酵タンク内にて、40℃で7時間の醗酵を行った。次い
でプレート冷却器で7℃まで冷却した後に、小型の紙プ
ラスチック複合容器に充填し、乳酸醗酵物を得た。
【0060】このヨーグルト様製品は、リン酸含量を特
に低減させない全脂豆乳に比べて大量に食べても腹に持
たれる不快さは明らかに低減されていた。
【0061】
【発明の効果】以上のように、豆乳中の全リン酸含量を
その固形分に対して1.0%以下とするか又は実質的に
カリウムイオン生成物からなるアルカリ金属イオン生成
物を添加した加工全脂豆乳とすることにより、胃部に与
える「重い食感」を軽減した全脂豆乳及びその製造法を
提供することが可能になった。これによりリポキシゲナ
ーゼを失活させる等する従来の風味良好技術と相俟っ
て、全脂豆乳の嗜好性をより向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】)市販全脂豆乳及びその希釈品を飲んで、胃部
に与える食感の「重い食感」を数値化して図示したも
の。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 河野 光登 茨城県筑波郡谷和原村絹の台4丁目3番 地 不二製油株式会社つくば研究開発セ ンター内 (72)発明者 西村 隆司 大阪府泉佐野市住吉町1番地 不二製油 株式会社阪南事業所内 (72)発明者 廣塚 元彦 茨城県筑波郡谷和原村絹の台4丁目3番 地 不二製油株式会社つくば研究開発セ ンター内 (56)参考文献 特開 昭63−148953(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23C 11/10 A23L 1/20

Claims (12)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】全脂豆乳をフィチン酸分解活性を有する酵
    素で処理し、遊離したリン酸を除去し、豆乳中の全リン
    酸含量をその固形分に対して0.5%以下とすることを
    特徴とする、食感の改善された加工全脂豆乳を製造する
    方法。
  2. 【請求項2】遊離したリン酸の除去が限外濾過、陰イオ
    ン交換樹脂又は電気透析で行われる請求項1に記載の加
    工全脂豆乳を製造する方法。
  3. 【請求項3】全脂豆乳をpH10以上のアルカリ性に調
    整してフィチン酸を沈澱除去後、脱塩し、豆乳中の全リ
    ン酸含量をその固形分に対して0.5%以下とすること
    を特徴とする、食感の改善された加工全脂豆乳を製造す
    る方法。
  4. 【請求項4】脱塩方法が陽イオン交換樹脂又は電気透析
    による中和脱塩である請求項3に記載の加工全脂豆乳を
    製造する方法。
  5. 【請求項5】脱塩方法が中和物を限外濾過、イオン交換
    樹脂又は電気透析で脱塩する方法である請求項3に記載
    の加工全脂豆乳を製造する方法。
  6. 【請求項6】アルカリ性への調整を、1価のアルカリ剤
    を添加して行う請求項3〜請求項5の何れかに記載の加
    工全脂豆乳を製造する方法。
  7. 【請求項7】アルカリ性への調整を、水酸化カリウムを
    添加して行う請求項3〜請求項5の何れかに記載の加工
    全脂豆乳を製造する方法。
  8. 【請求項8】全脂豆乳に5%以上の中性塩類を添加しフ
    ィチン酸を沈澱除去後、脱塩し、豆乳中の全リン酸含量
    をその固形分に対して0.5%以下とすることを特徴と
    する、食感の改善された加工全脂豆乳を製造する方法。
  9. 【請求項9】脱塩方法が限外濾過、イオン交換樹脂又は
    電気透析で脱塩する方法である請求項8に記載の加工全
    脂豆乳を製造する方法。
  10. 【請求項10】中性塩類のカチオンが1価である請求項
    8又は請求項9に記載の加工全脂豆乳を製造する方法。
  11. 【請求項11】中性塩類のカチオンがカリウムである請
    求項8又は請求項9に記載の加工全脂豆乳を製造する方
    法。
  12. 【請求項12】請求項1〜11の何れかの製造方法によ
    り得られた加工全脂豆乳を用いた飲料又は食品。
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