JP3456239B2 - 耐熱・耐光性に優れたポリアミド組成物 - Google Patents

耐熱・耐光性に優れたポリアミド組成物

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JP3456239B2 JP31856693A JP31856693A JP3456239B2 JP 3456239 B2 JP3456239 B2 JP 3456239B2 JP 31856693 A JP31856693 A JP 31856693A JP 31856693 A JP31856693 A JP 31856693A JP 3456239 B2 JP3456239 B2 JP 3456239B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、優れた耐熱性を有する
と共に、耐光性が良好で紫外線等に対する褪色堅牢度に
も優れたポリアミド組成物に関するものであり、この組
成物は、繊維状等に加工することによって、例えば自動
車用内装材(カーシートやカーマット等)の如く過酷な
高温酸化性条件に曝される用途に有利に適用することが
できる。
【0002】
【従来の技術】ポリアミドは優れた強度、耐摩耗性、耐
衝撃性を有する他、染色性にも優れたものであり、更に
は繊維としたときの肌触りも良好である等様々の特徴を
有しているところから、繊維やフィルム等の形態で衣料
分野やインテリア分野を始めとする各種産業分野で広く
用いられている。
【0003】ところがポリアミドには、酸化劣化し易く
耐熱・耐光性に欠けるという難点があり、特に大気中で
高温に曝されたときの酸化劣化が著しい。そこで、耐熱
・耐光性を高めるための手段として様々の方法が試みら
れている。それらの中でも代表的なのは、ポリマー重合
段階や繊維等への加工段階で酸化防止剤を含有させる方
法であり、殊にポリアミドの酸化防止剤として沃化第一
銅等の銅系化合物と2−メルカプトベンゾイミダゾール
類あるいはそれらの錯化合物を含有させる方法は多数提
案されている(特公昭38-22720号公報、同48-7858 号公
報、同48-7859号公報、同48-7860 号公報、同60-17309
号公報、同61-45662号公報等)。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】ところが従来の銅錯塩
系酸化防止剤は、耐熱・耐光性改善効果において必ずし
も十分なものとはいえず、特に含金染料を用いて染色し
たものの耐熱・耐光性が不十分であって、高温で紫外線
照射を受けると短期間の内に褪色するという欠点があ
る。本発明は上記の様な事情に着目してなされたもので
あって、その目的は、ポリアミドに対して優れた耐熱・
耐光性を与え、高温で紫外線照射等を受けた場合でも長
期間に渡って優れた染色堅牢度を発揮し得る様なポリア
ミド組成物を提供しようとするものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】上記課題を解決すること
のできた本発明に係るポリアミド組成物の構成は、分子
中に配位子として酸素および/または窒素を有する銅錯
体を、銅換算で10〜1000ppm含有すると共に、
末端アミノ基との反応性を有するヒンダードアミン系酸
化防止剤を0.01〜2.0重量%含有するところに要
旨を有するものである。ここで用いられるヒンダードア
ミン系酸化防止剤としては、立体障害された少なくとも
1つのアミノ基を有するトリアジン誘導体で構成される
水酸基および/またはアミノ基に対して反応性を有する
窒素含有化合物が好ましい。
【0006】
【作用】本発明者らは、前述の様な従来技術のもとで、
ポリアミドに対して優れた耐熱・耐光性改善効果を有
し、特に含金染料等で染色されたポリアミドに対し高温
の紫外線照射雰囲気下においても優れた染色堅牢度を発
揮し得る様な改質剤を見いだすべく、様々の化合物につ
いてポリアミドに対する耐熱・耐光性改善効果を調べ
た。
【0007】その結果、上記の様にポリアミドに、分子
中に配位子として酸素および/または窒素を有する化合
物の銅錯体(A)と、末端アミノ基と反応性を有するヒ
ンダードアミン系酸化防止剤(B)とを特定量含有させ
てやれば、耐熱・耐光性の非常に良好なポリアミド組成
物が得られること、そして、こうした併用効果は、前記
銅錯体(A)をポリアミド中に銅換算で10〜1000
ppm含有させると共に、前記ヒンダードアミン系酸化
防止剤を0.01〜2.0重量%含有させることによっ
て有効に発揮されることを知った。
【0008】ここで使用される銅錯体(A)とは、分子
中に配位子として酸素および/または窒素を有する化合
物の銅錯体であり、酸素および/または窒素を配位子と
して含む化合物としては、例えば8−キノリノール、2
−(5'−t−ブチル−2'−ヒドロキシフェニル)ベン
ゾトリアゾール、1,2,3−ベンゾトリアゾール、ピ
コリン酸、キシリレンジアミン、β−アラニン、ω−ア
ミノカプロン酸、キナルイジン酸、ピラジン酸、アント
ラニル酸、o−アミノフェノール、4−アミノ−n−酪
酸、エチレンジアミン、8−メルカプトキノリン、キノ
リン−2−カルボン酸、ジエチルトリアミン、トリエチ
ルアミン等、もしくはそれらの各種誘導体が挙げられ、
これらは単独で使用し得る他、必要により2種以上を併
用することができる。また、銅錯体を構成する銅塩とし
ては、塩化銅等のハロゲン化銅、硫酸銅、酢酸銅等が挙
げられ、これらは単独で使用し得る他、必要により2種
以上を併用することができる。これらの中でも特に好ま
しいのは硫酸銅である。
【0009】上記銅錯体(A)により、紫外線等に対す
る染色堅牢度が高められる理由は明確でないが、該銅錯
体(A)が、紫外線等により発生したラジカルを補足す
る役割を発揮するためと考えられる。こうした銅錯体
(A)の作用効果を有効に発揮させるには、該銅錯体
(A)をポリアミド組成物中に10〜1000ppm、
より好ましくは10〜200ppm、更に好ましくは5
0〜100ppm含有させるべきであり、添加量が不足
する場合は十分な耐熱・耐光性改善効果が得られず、逆
に多過ぎると成形加工性が低下し、特に溶融紡糸法によ
り繊維状に加工する時に糸切れを起こす等の欠点が表わ
れてくる。
【0010】但し、本発明で意図する様な優れた耐熱・
耐光性改善効果を有効に発揮させるには、上記銅錯体
(A)のみでは不十分であり、これと共に適量の末端ア
ミノ基と反応性を有するヒンダードアミン系酸化防止剤
(B)を併用することが必要である。
【0011】ここで使用する末端アミノ基と反応性を有
するヒンダードアミン系酸化防止剤(B)は、上記銅錯
体(A)との共存により、ポリアミドにラジカルが生成
するのを抑制する作用を有するのみならず、ポリアミド
の自動酸化反応の連鎖成長を妨害する効果を発揮し、更
には含金染料の安定化効果加工も発揮し、ポリアミド組
成物およびその含金染料含有組成物の耐熱・耐光性を一
段と高める作用を発揮する。該ヒンダードアミン系酸化
防止剤(B)としては、公知の種々のヒンダードアミン
系化合物が挙げられるが、中でも特に好ましいのは、末
端基を増加させる作用を有する化合物、例えば立体障害
された少なくとも1つのアミノ基を有するトリアジン誘
導体で構成される水酸基および/またはアミノ基に対し
て反応性を有する窒素含有化合物であり、好ましい例と
しては、下記式(1)〜(5)で示される様なトリアジ
ン化合物であり、下記式(A),(B)で示される様な
立体障害されたアミノ基を有する基が結合した化合物で
ある。
【0012】
【化1】
【0013】
【化2】 それらの中でも特に好ましいのは、下記式で示されるト
リアジン誘導体である。
【0014】
【化3】
【0015】本発明で好ましく用いられる窒素含有化合
物の市販品としては、例えばサンド社より商品名「サン
ドフィルアンカ−DWL」等が挙げられる。上記ヒンダ
ードアミン系酸化防止剤(B)は、ポリアミド組成物中
に0.01〜2.0重量%、より好ましくは0.1〜
0.5重量%含有させる必要があり、0.01重量%未
満では上記銅錯体(A)との相乗効果が不十分で満足の
いく耐熱・耐光性改善効果が発揮されず、逆に多過ぎる
場合は、成形性が低下して特に繊維状に加工するときに
糸切れ等を起こし易くなる。
【0016】本発明の基材となるポリアミドとしては、
ナイロン6,ナイロン12,ナイロン46、ナイロン6
6、ナイロン610、ポリキシレンアジパミド等の脂肪
族もしくは芳香族ポリアミド、或はこれらのポリアミド
の混合物もしくは共重合ポリアミドなどが挙げられる。
【0017】上記銅錯体(A)およびヒンダードアミン
系酸化防止剤(B)をポリアミドに配合する方法は特に
限定されず、ポリアミドの重合段階もしくはレジンチッ
プの段階で、銅錯体(A)とヒンダードアミン系酸化防
止剤(B)を配合すればよいが、該銅錯体(A)などの
熱分解をより効果的に防止する意味からすると、溶融紡
糸や射出成形等の前のポリアミドレジンチップにブレン
ドする方法が好ましい。
【0018】このポリアミド組成物は、通常の射出成形
法等によってシート状やフィルム状など任意の形状に加
工することができ、また繊維状にする場合は、通常の溶
融紡糸法によって所望のデニール、断面形状、捲縮特性
や繊維物性を有するポリアミド繊維とすればよく、この
ポリアミド繊維は、必要により撚糸セットしてからカー
ペットなど所定の織物状に加工した後、酸性染料や含金
染料等によって所望の色相に染色することができる。尚
このポリアミド組成物には、必要により更に他の成分と
して酸化チタン等のダル剤や顔料、染料、酸化防止剤、
紫外線吸収剤、抗菌剤、芳香剤等の機能性改質剤を、耐
熱・耐光性等を阻害しない範囲で含有させることも勿論
可能である。
【0019】
【実施例】次に本発明の実施例を示すが、本発明はもと
より下記実施例によって制限を受けるものではなく、前
後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施
することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の
技術的範囲に含まれる。
【0020】実施例1 ナイロン6レジンチップ(水分:0.05〜0.20重
量%)を、窒素雰囲気下で撹拌しながら50〜80℃に
加熱し、非イオン系界面活性剤をレジンに対して0.0
5重量%添加し均一に混合した後、微粒子状の銅錯体
(A)(2−メルカプトベンゾイミダゾール銅錯体)を
銅換算で85ppmと、ヒンダードアミン系酸化防止剤
としてサンド社製の「サンドフィルアンカ−DWL」を
1.0重量%となる様に添加して1時間以上ブレンドし
た。
【0021】この混合物を加熱溶融し、押出機(温度:
260〜280℃、圧力:100〜200kg/cm2)、多
錘用に分岐したビーム(温度:250〜280℃)、定
量ポンプを経て紡糸ノズルからフィラメント状に吐出し
た後、200〜800m/minで巻取り、更に2〜5倍に
延伸し、加熱捲縮してからチーズに巻取った。
【0022】該ポリアミド繊維の耐光性を下記の方法で
調べた。即ち、1000デニール64フィラメント(三
角断面糸)で捲縮量(CC)=20%、捲縮安定性(C
D)=15%の改質(BCF)ナイロンを常法により2
プライセットした後、タフトとしてサキソニータイプカ
ーペット(目付1300g/m2)を作成し、下記の1/2
型含金錯塩染料処方によりウインス染色機でボイル60
分間染色、湯洗、水洗、乾燥の後、常法によりカーペッ
ト裏面にポリエチレンフィルムを融着バッキングした
後、10mm厚の雑フェルトを接着して耐光堅牢度試験用
の試料とした。
【0023】 (染色処方) Irgalan Yellow GRL 200%(1) 0.04%owf Irgalan Red Brown RL 200%(1) 0.06%owf Irgalan Grey GL 200%(1) 0.34%owf Albegal SW(CIBA-GY社製染色助剤) 1.0 %owf Albegal FFD(CIBA-GY 社製染色助剤) 0.1 g/リットル メイサン PC(明成化学社製pH調整剤) 0.5 g/リットル ソーダ灰(pH調整剤) 0.3 g/リットル 但し(1) はCIBA-GY 社製 1/2型含金染料 耐光堅牢度試験:スガ試験機社製の紫外線ロングライフ
・フェードメーター(JIS B 7751に準拠、形式:FAL-5H
B・BR、垂直型ホルダ)を使用し、照射条件として促進耐
光性試験WAL-2H(JIS D0205-1987)を準用して、83±3
℃のブラックパネル温度で全照射時間200時間の照射
を行なった。尚、試験品は20時間毎に上下位置を取り
代え、変・褪色用グレースケール(JIS L 0804)により1
〜5級の9段階で等級判定した。尚照射試料の形態は、
自動車内での使用を想定し、照射試料裏面に低密度ポリ
エチレンフィルムを融着し、更に10mm厚のフェルトを
併用して試料とした。
【0024】実施例2 上記実施例1において、微粒子状の銅錯体(A)の添加
量を85ppmとし、且つ「サンドフィルアンカーDW
L」の添加量を0.1重量%に代えた以外は実施例1と
全く同様にして耐光堅牢度試験を行なった。 実施例3 上記実施例1において、微粒子状の銅錯体(A)の添加
量を45ppmとした以外は実施例1と全く同様にして
耐光堅牢度試験を行なった。
【0025】比較例1 上記実施例1において、銅錯体(A)の添加量を85p
pmとし、ヒンダードアミン系酸化防止剤(B)を添加
しなかった以外は該実施例1と全く同様にして耐光堅牢
度試験を行なった。 比較例2 上記実施例1において、銅錯体(A)の添加を省略し、
「サンドフィルアンカーDWL」のみを1.0重量%添
加した以外は該実施例1と全く同様にして耐光堅牢度試
験を行なった。
【0026】比較例3 上記比較例2において、「サンドフィルアンカーDW
L」の添加量を0.1重量%とした以外は該比較例2と
全く同様にして耐光堅牢度試験を行なった。 比較例4 前記実施例1において、銅錯体(A)の添加量を45p
pmとし、「サンドフィルアンカーDWL」を添加しな
かった以外は該実施例1と全く同様にして耐光堅牢度試
験を行なった。
【0027】上記実施例1〜3および比較例1〜4で得
た耐光堅牢度試験結果は、下記表1に一括して示す通り
であり、実施例のポリアミド組成物は、いずれも比較例
に比べて格段に優れた耐光堅牢度を有していることがわ
かる。
【0028】
【表1】
【0029】
【発明の効果】本発明は以上の様に構成されており、耐
熱・耐光性が良好であり、特に含金錯塩系染料を用いた
染色物として非常に優れた耐光堅牢度を有するポリアミ
ド組成物を提供し得ることになった。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 濱野 健治 大阪市北区堂島浜2丁目2番8号 東洋 紡績株式会社 本社内 (72)発明者 関谷 英夫 大阪市北区堂島浜2丁目2番8号 東洋 紡績株式会社 本社内 (72)発明者 関田 悦一 福井県敦賀市呉羽町1番1号 東洋紡績 株式会社 敦賀ナイロン工場内 (56)参考文献 特開 平5−1223(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 77/00 - 77/12

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 分子中に配位子として酸素および/また
    は窒素を有する化合物の銅錯体を、銅換算で10〜10
    00ppm含有すると共に、末端アミノ基との反応性を
    有するヒンダードアミン系酸化防止剤を0.01〜2.
    0重量%含有することを特徴とする耐熱・耐光性に優れ
    たポリアミド組成物。
  2. 【請求項2】 ヒンダードアミン系酸化防止剤が、立体
    障害された少なくとも1つのアミノ基を有するトリアジ
    ン誘導体で構成される水酸基および/またはアミノ基に
    対して反応性を有する窒素含有化合物である請求項1に
    記載の耐熱・耐光性ポリアミド組成物。
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