JP3449644B2 - 耐熱鋳鋼 - Google Patents
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Description
【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、例えば自動車用エン
ジンのエキゾーストマニホールドやターボチャージャの
タービンハウジング等の排気系部品に適した耐熱鋳鋼に
関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、自動車用エンジンのエキゾースト
マニホールド等の排気系部品は、一般に高Si球状黒鉛鋳
鉄,ニレジスト球状黒鉛鋳鉄等により形成されている。 【0003】しかし、近時の自動車用エンジンの高出力
化,低燃費化の中で、より耐熱性の優れた材料の使用が
望まれている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、耐熱性の優
れた材料としては、高Ni高Cr系のオーステナイト系耐熱
鋳鋼やNi基Co基の超合金が知られているが、前者は熱膨
張率が大きく,かつ機械加工性等の生産性が良くなく材
料コストが高価である。また、後者においても、鋳造性
等の生産性が良くないうえ、材料コストが著しく高価で
あるため、実用性の点で問題がある。 【0005】この発明は、このような事情に基づいてな
されたもので、耐熱性の優れた材料でありながら、材料
コストが安価で生産性が良好な耐熱鋳鋼を提供すること
を目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、質量比率で、C:0.10
〜0.35%,Si:0.40〜2.50%,Mn:
0.30〜1.00%,Cr:15.00〜30.00
%,W:0.50〜4.00%,Ni:0.20〜1.
50%,V:0.01〜0.50%の各元素を含有する
耐熱鋳鋼であって、Ta:0.01〜1.00%が添加
されるとともに、B:0.001〜0.20%,Y:
0.01〜0.50%,La:0.01〜0.50%,
Ce:0.01〜0.50%の各元素群のうち少なくと
も一つが添加され、残部はFeおよび不可避不純物から
なる組成を有することを特徴とする。 【0007】 【作用】請求項1に記載した耐熱鋳鋼は、フェライト系
の金属組織を形成するので、従来の高合金鋼を上回る耐
熱疲労性および耐酸化性を有し、良好な耐熱性を発揮す
ることができるとともに、比較的安価で生産性も良好で
ある。 【0008】以下、各元素についての組成範囲の限定理
由について説明する。 【0009】(1)C:0.10〜0.35% Cは熱疲労寿命を延ばすためにある程度高めることは有
効であるが、一方酸化減量を抑えるためにはある程度ま
でCを低めることが必要である。 【0010】しかしながら、Cを低めると溶湯の流動性
を悪くするので、C量を0.10%以上とした。 【0011】また、Cが0.35%を越えた場合、マル
テンサイト変態点が900℃以下において現れ、いわゆ
る焼きが入って熱疲労寿命を著しく低下させるので、C
量を0.35%以下の範囲とした。 【0012】(2)Si:0.40〜2.50% Siは希土類元素である,Y,La,Ce等と共存し、
SiO2被膜の密着性を強化するため耐酸化性を著しく改善
する。 【0013】また、鋳造性を改善する効果も著しいが多
量になると延性を害し、変態点を下げるため、2.50
%以下に制限した。 【0014】(3)Mn:0.30〜1.00% Mnは適量の添加で脱酸効果およびSの害を抑える効果
を有するが、延性を害し、耐熱疲労性の低下をもたらす
ため1.00%以下とした。また、0.30%以下に抑
えるためには原材料の特別な管理を要し、コストを高め
る。 【0015】(4)Cr:15.00〜30.00% Crは本願の発明の最重要構成元素であり、フェライト
組織生成のためには、15.00%以上を添加すること
が必要である。また、Cr量が増加するに従い,耐酸化
性は向上するが、溶湯の流動性が低下し,凝固収縮率が
増加するため鋳造性が悪くなる。Cr量が30%を越え
ると著しく延性を害するのみならず、大気溶解において
大気との接触により固い表面被膜を生成しやすくなり、
この被膜が鋳物に巻き込まれてその機械的性質や耐熱疲
労性を劣化させるので、Cr量を30.00%以下に制
限した。 【0016】(5)W:0.50〜4.00% Wは耐熱疲労性,高温強度を向上させる最重要元素であ
るため、0.50%以上の添加を要するが、多量になれ
ば鋳造性が悪くなり、材質が脆化するため4.00%以
下に制限した。 【0017】(6)Ni:0.20〜1.50% Niは、高温における破壊強度を高め,靭性を増す効果
があるが、多量に添加すると常温の硬度が高まり加工性
を損ない,変態点をも低下させるので、1.50%以下
に制限した。 【0018】(7)V:0.01〜0.50% VはCと結合して安定な炭化物を生成して偏析なく分散
するため、Cr炭化物の生成を抑えその害を抑制する。
また、結晶粒の粗大化温度を高めるものである。 【0019】V量は、このような点から上記の範囲内に
制限したものである。 【0020】(8)Ta:0.01〜1.00% TaはCと結合して微細な炭化物を形成して高温での引
張強度ならびに耐熱疲労性,耐酸化性を向上させる効果
がある。 【0021】また、マルテンサイトの生成を抑制し、結
晶粒を微細化させるが多量に添加するとNiとの金属間
化合物を形成して著しく硬化し熱間亀裂を生じるので、
1.00%以下に制限している。 【0022】(9)B:0.001〜0.20% Bは結晶粒界を強化するほか、粒界炭化物の析出を抑制
し微細化させるとともにその凝集粗大化を遅らせ高温強
度と靭性を改善する効果がある。しかし、Bを多量に添
加すると逆に劣化するので、0.02%以下に制限し
た。 【0023】(10)Y:0.01〜0.50% Yは、溶湯の流動性を改善し、かつ微量不純物,非金属
介在物を減少させて溶湯の清浄作用が顕著なため、衝撃
値,引張強度,クリープ特性を向上させる。 【0024】また、母金(マトリックス)と酸化相内面
との境界にY2O3相を形成して耐酸化性も改善されるの
で、上記の範囲内で添加することとした。 【0025】(11)La:0.01〜0.50% Laは炭化物を安定させ、かつ炭化物の析出を抑える効
果を有するため、高温強度,靭性を改善し、耐熱疲労性
をも改善する。また、Laは酸素の拡散を妨げ、緻密強
固で密着性の良い酸化被膜を形成するため耐酸化性が著
しく改善される。 【0026】そのため、上記の範囲内で添加することと
した。 【0027】(12)Ce:0.01〜0.50% CeはSiO2被膜の密着性を高めるため耐酸化性が著しく
改善されるが、0.5%を越えると低融点化合物が生成
され、熱疲労性を害するので0.5%以下の範囲に制限
した。 【0028】 【実施例】以下、この発明を実施例に基づき説明する。 【0029】まず、表.1および表.2において、この
発明の実施例の耐熱ステンレス鋳鋼の化学組成を質量%
で示す。 【0030】なお、これらの表.1および2において、
例えば実1とは実施例1を意味するものであり、各実施
例において残部は実質的にFeである。また、これらの
表.1および表.2において、C,Si,Mn,Cr,
W,Ni,Ta,V,Bの各元素については分析値を示
し、Y,La,Ceの各元素については添加量を示す。 【0031】 【表1】 【表2】 これらの実施例1から実施例10の耐熱ステンレス鋳鋼
は、いずれも鋳造によりフェライト系の金属組織を形成
するものであり、これらの各実施例はいずれもフェライ
ト系耐熱ステンレス鋳鋼である。 【0032】これらの各実施例の添加元素の選択につい
ては、次のような事柄を考慮したものである。 【0033】すなわち、例えば、自動車用エンジンのエ
キゾーストマニホールドやターボチャージャのタービン
ハウジング等の排気系部品に適した耐熱鋳鋼において
は、高温において熱疲労に耐えること,および高温下で
の耐酸化性に優れていることが必要である。 【0034】自動車用エンジンにおいては、起動・停止
の繰り返しや,急速起動により過酷な熱サイクルを受け
るため、熱応力や熱歪みを発生し、熱疲労となって亀裂
を生じ破損に至る。 【0035】したがって、熱疲労の寿命を長期化するた
めには、熱膨張係数が小さく,熱サイクルによる歪み
量が小さいこと、変形抵抗が小さいこと、破壊抵抗
が高いことが好ましいものである。 【0036】これらの条件を念頭において耐熱性ステン
レス鋼の物性を調査してみると、フェライト系耐熱ステ
ンレス鋼がオーステナイト系耐熱ステンレス鋼より熱疲
労の寿命が長期化すると考えられる。 【0037】また、高温下での耐酸化性については、耐
熱性ステンレス鋼の耐酸化性は主にCrの作用によるも
のであり、Crが高くなると,微細な酸化スケール(Fe
O,Cr2O3)と母地(マトリックス)との境界面にCr2O3層
が現れ、内部からの金属イオンの外部への拡散を妨げて
耐酸化性に寄与することとなる。 【0038】逆に、このスケールに割れや剥がれを生じ
ると、酸化が促進されるので材質の熱膨張率は耐酸化性
に大きく影響する。 【0039】とくに、断続加熱の場合には、スケールの
割れや剥がれが生じやすいので、フェライト系の方がオ
ーステナイト系に比べてスケールが剥がれにくく耐酸化
性が優れたものとなりうる。 【0040】これらの観点から、成分元素としてのTa
には、次の効果を期待することができる。 【0041】 フェライトの形成による熱サイクルに
よる歪み量の軽減と熱膨張率の低減。 【0042】 結晶構造的に最も原子密度が低い体心
立方格子構造で,格子定数が小さいことにより、変形抵
抗が小さい。このためTaの添加は熱疲労寿命を長期化
する効果が大きい。 【0043】また、成分元素としてのB,Y,La,C
eには、結晶粒を微細化することによって破壊強度を高
める効果を期待することができ、前記Taによる効果を
強化する意味で併せて添加される。 【0044】このような考えの下、前記各実施例におい
ては、TaおよびB,Y,La,Ceを成分元素として
選択している。 【0045】なお、各実施例による鋳造品は、使用温度
範囲内に金属組織上の変態点が存在せず、また熱膨張の
大きいオーステナイト組織およびマルテンサイト組織が
存在せず、フェライト相およびフェライト相と炭化物相
との混在組織により構成されるものである。 【0046】一方、表.3には、自動車用エンジンの排
気系部品等に用いられる,公知の比較例についての化学
成分を質量%で示す。表.3において、例えば比1は比
較例1を意味するものであり、各比較例において残部が
実質的にFeであることは前記表.1および2と同様で
ある。また、表.3において、C,Si,Mn,Cr,
W,Ni,Mo,Nb,Ta,V,B,Mgの各元素に
ついては分析値を示すが、Yについては添加量を示す。 【0047】 【表3】 これらの比較例はいずれも自動車用排気系部品に使用さ
れるもので、比較例1は高Si球状黒鉛鋳鉄の例であり、
比較例2はニレジスト球状黒鉛鋳鉄の例である。 【0048】比較例3はフェライト系ステンレスJIS,SU
S430相当の鋳鋼である。また、比較例4はC量が本願の
発明の範囲外のものであり、比較例5は本願発明のTa
をNbに置き換えたものである。 【0049】前記の各実施例と比較例とを用いて鋳造に
より、JIS規格のY型供試材を作成することとし、鋳造
にあたっては50kg用高周波誘導炉を用いて大気溶解し、
Y型供試材用鋳型に鋳込んで作成した。 【0050】そして、このようにして得られた各実施例
と各比較例とについて、必要な処理等を行なったうえ
で、次のような試験を行なった。 【0051】すなわち、各実施例のフェライト系ステン
レス鋳鋼については、前記のようにして得られた供試材
を、900℃で2時間保持した後徐冷し、650℃以下の温度
より空冷を行なった。前記比較例1および2について
は、鋳放しのまま供試材とした。比較例3,4および5
については、800℃で2時間保持した後徐冷し、650℃よ
り空冷して供試材を得た。 【0052】これらの処理をした供試材を用いて、以下
の評価試験を行なった。これらの評価試験の結果は表.
4〜表.6に示すとおりであり、これらの表においても
例えば実1や比1等が実施例1や比較例1等を意味する
ことは前記と同様である。 【0053】(1)室温引張試験 標点間距離が35mm,標点間の直径を10mmとした丸棒試験
片(準JIS4号試験片)を用いて各実施例および各比較例
についての室温引張強度を測定した。 【0054】(2)高温引張試験 標点間距離が50mm,標点間の直径が10mmのつばつき試験
片を用いて、850℃の温度条件で引張強度を測定した。
なお、比較例1については800℃の温度条件で行なった
測定結果を示す。 【0055】(3)熱疲労試験 標点間距離が15mm,標点間の直径が10mmの丸棒試験片を
用いて、加熱−冷却による伸び,縮みを完全に拘束した
状態で加熱−冷却サイクルを繰り返し熱疲労破壊を生じ
させ、熱疲労試験とした。 【0056】なお、加熱−冷却サイクルは、下限温度を
150℃,上限温度を900℃として、各サイクルを340秒と
して、電機−油圧サ−ボ方式の熱疲労試験機を用いて行
なった。 【0057】(4)酸化試験長さ30mm,幅20mm,厚さ3mmの板
状試験片を、900℃の大気雰囲気下で200時間保持し、試
験前の質量と試験後表面の酸化物をワイヤブラシで除去
した質量とを測定し、単位面積あたりの酸化減量を求め
て耐酸化性の評価を行なった。 【0058】 【表4】 【表5】 【表6】 以上の評価試験の結果からあきらかなように、前記各実
施例はいずれも各比較例より優れた耐熱性を有すること
がわかる。 【0059】そして、これらの各実施例は、いずれもフ
ェライト系耐熱ステンレス鋳鋼であって比較的安価なC
r元素をベースとしており、例えばNi,Co,W等の
高価な成分元素の添加量が少ないので、そのコストは比
較的安価である。 【0060】また、本願の各実施例は普通鋳鋼程度の鋳
造性があることが判明しているので生産性が良好であっ
て、一般的な鋳造設備により行なうことが可能であるこ
とからも製造コストが安価である。 【0061】 【発明の効果】以上説明したように、請求項1に記載し
た耐熱鋳鋼は、フェライト系の金属組織を形成するの
で、従来の高合金鋼を上回る耐熱疲労性および耐酸化性
を有し、良好な耐熱性を発揮することができるととも
に、比較的安価で生産性も良好である。
ジンのエキゾーストマニホールドやターボチャージャの
タービンハウジング等の排気系部品に適した耐熱鋳鋼に
関するものである。 【0002】 【従来の技術】従来、自動車用エンジンのエキゾースト
マニホールド等の排気系部品は、一般に高Si球状黒鉛鋳
鉄,ニレジスト球状黒鉛鋳鉄等により形成されている。 【0003】しかし、近時の自動車用エンジンの高出力
化,低燃費化の中で、より耐熱性の優れた材料の使用が
望まれている。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】ところで、耐熱性の優
れた材料としては、高Ni高Cr系のオーステナイト系耐熱
鋳鋼やNi基Co基の超合金が知られているが、前者は熱膨
張率が大きく,かつ機械加工性等の生産性が良くなく材
料コストが高価である。また、後者においても、鋳造性
等の生産性が良くないうえ、材料コストが著しく高価で
あるため、実用性の点で問題がある。 【0005】この発明は、このような事情に基づいてな
されたもので、耐熱性の優れた材料でありながら、材料
コストが安価で生産性が良好な耐熱鋳鋼を提供すること
を目的とするものである。 【0006】 【課題を解決するための手段】この目的を達成するため
に、請求項1記載の発明は、質量比率で、C:0.10
〜0.35%,Si:0.40〜2.50%,Mn:
0.30〜1.00%,Cr:15.00〜30.00
%,W:0.50〜4.00%,Ni:0.20〜1.
50%,V:0.01〜0.50%の各元素を含有する
耐熱鋳鋼であって、Ta:0.01〜1.00%が添加
されるとともに、B:0.001〜0.20%,Y:
0.01〜0.50%,La:0.01〜0.50%,
Ce:0.01〜0.50%の各元素群のうち少なくと
も一つが添加され、残部はFeおよび不可避不純物から
なる組成を有することを特徴とする。 【0007】 【作用】請求項1に記載した耐熱鋳鋼は、フェライト系
の金属組織を形成するので、従来の高合金鋼を上回る耐
熱疲労性および耐酸化性を有し、良好な耐熱性を発揮す
ることができるとともに、比較的安価で生産性も良好で
ある。 【0008】以下、各元素についての組成範囲の限定理
由について説明する。 【0009】(1)C:0.10〜0.35% Cは熱疲労寿命を延ばすためにある程度高めることは有
効であるが、一方酸化減量を抑えるためにはある程度ま
でCを低めることが必要である。 【0010】しかしながら、Cを低めると溶湯の流動性
を悪くするので、C量を0.10%以上とした。 【0011】また、Cが0.35%を越えた場合、マル
テンサイト変態点が900℃以下において現れ、いわゆ
る焼きが入って熱疲労寿命を著しく低下させるので、C
量を0.35%以下の範囲とした。 【0012】(2)Si:0.40〜2.50% Siは希土類元素である,Y,La,Ce等と共存し、
SiO2被膜の密着性を強化するため耐酸化性を著しく改善
する。 【0013】また、鋳造性を改善する効果も著しいが多
量になると延性を害し、変態点を下げるため、2.50
%以下に制限した。 【0014】(3)Mn:0.30〜1.00% Mnは適量の添加で脱酸効果およびSの害を抑える効果
を有するが、延性を害し、耐熱疲労性の低下をもたらす
ため1.00%以下とした。また、0.30%以下に抑
えるためには原材料の特別な管理を要し、コストを高め
る。 【0015】(4)Cr:15.00〜30.00% Crは本願の発明の最重要構成元素であり、フェライト
組織生成のためには、15.00%以上を添加すること
が必要である。また、Cr量が増加するに従い,耐酸化
性は向上するが、溶湯の流動性が低下し,凝固収縮率が
増加するため鋳造性が悪くなる。Cr量が30%を越え
ると著しく延性を害するのみならず、大気溶解において
大気との接触により固い表面被膜を生成しやすくなり、
この被膜が鋳物に巻き込まれてその機械的性質や耐熱疲
労性を劣化させるので、Cr量を30.00%以下に制
限した。 【0016】(5)W:0.50〜4.00% Wは耐熱疲労性,高温強度を向上させる最重要元素であ
るため、0.50%以上の添加を要するが、多量になれ
ば鋳造性が悪くなり、材質が脆化するため4.00%以
下に制限した。 【0017】(6)Ni:0.20〜1.50% Niは、高温における破壊強度を高め,靭性を増す効果
があるが、多量に添加すると常温の硬度が高まり加工性
を損ない,変態点をも低下させるので、1.50%以下
に制限した。 【0018】(7)V:0.01〜0.50% VはCと結合して安定な炭化物を生成して偏析なく分散
するため、Cr炭化物の生成を抑えその害を抑制する。
また、結晶粒の粗大化温度を高めるものである。 【0019】V量は、このような点から上記の範囲内に
制限したものである。 【0020】(8)Ta:0.01〜1.00% TaはCと結合して微細な炭化物を形成して高温での引
張強度ならびに耐熱疲労性,耐酸化性を向上させる効果
がある。 【0021】また、マルテンサイトの生成を抑制し、結
晶粒を微細化させるが多量に添加するとNiとの金属間
化合物を形成して著しく硬化し熱間亀裂を生じるので、
1.00%以下に制限している。 【0022】(9)B:0.001〜0.20% Bは結晶粒界を強化するほか、粒界炭化物の析出を抑制
し微細化させるとともにその凝集粗大化を遅らせ高温強
度と靭性を改善する効果がある。しかし、Bを多量に添
加すると逆に劣化するので、0.02%以下に制限し
た。 【0023】(10)Y:0.01〜0.50% Yは、溶湯の流動性を改善し、かつ微量不純物,非金属
介在物を減少させて溶湯の清浄作用が顕著なため、衝撃
値,引張強度,クリープ特性を向上させる。 【0024】また、母金(マトリックス)と酸化相内面
との境界にY2O3相を形成して耐酸化性も改善されるの
で、上記の範囲内で添加することとした。 【0025】(11)La:0.01〜0.50% Laは炭化物を安定させ、かつ炭化物の析出を抑える効
果を有するため、高温強度,靭性を改善し、耐熱疲労性
をも改善する。また、Laは酸素の拡散を妨げ、緻密強
固で密着性の良い酸化被膜を形成するため耐酸化性が著
しく改善される。 【0026】そのため、上記の範囲内で添加することと
した。 【0027】(12)Ce:0.01〜0.50% CeはSiO2被膜の密着性を高めるため耐酸化性が著しく
改善されるが、0.5%を越えると低融点化合物が生成
され、熱疲労性を害するので0.5%以下の範囲に制限
した。 【0028】 【実施例】以下、この発明を実施例に基づき説明する。 【0029】まず、表.1および表.2において、この
発明の実施例の耐熱ステンレス鋳鋼の化学組成を質量%
で示す。 【0030】なお、これらの表.1および2において、
例えば実1とは実施例1を意味するものであり、各実施
例において残部は実質的にFeである。また、これらの
表.1および表.2において、C,Si,Mn,Cr,
W,Ni,Ta,V,Bの各元素については分析値を示
し、Y,La,Ceの各元素については添加量を示す。 【0031】 【表1】 【表2】 これらの実施例1から実施例10の耐熱ステンレス鋳鋼
は、いずれも鋳造によりフェライト系の金属組織を形成
するものであり、これらの各実施例はいずれもフェライ
ト系耐熱ステンレス鋳鋼である。 【0032】これらの各実施例の添加元素の選択につい
ては、次のような事柄を考慮したものである。 【0033】すなわち、例えば、自動車用エンジンのエ
キゾーストマニホールドやターボチャージャのタービン
ハウジング等の排気系部品に適した耐熱鋳鋼において
は、高温において熱疲労に耐えること,および高温下で
の耐酸化性に優れていることが必要である。 【0034】自動車用エンジンにおいては、起動・停止
の繰り返しや,急速起動により過酷な熱サイクルを受け
るため、熱応力や熱歪みを発生し、熱疲労となって亀裂
を生じ破損に至る。 【0035】したがって、熱疲労の寿命を長期化するた
めには、熱膨張係数が小さく,熱サイクルによる歪み
量が小さいこと、変形抵抗が小さいこと、破壊抵抗
が高いことが好ましいものである。 【0036】これらの条件を念頭において耐熱性ステン
レス鋼の物性を調査してみると、フェライト系耐熱ステ
ンレス鋼がオーステナイト系耐熱ステンレス鋼より熱疲
労の寿命が長期化すると考えられる。 【0037】また、高温下での耐酸化性については、耐
熱性ステンレス鋼の耐酸化性は主にCrの作用によるも
のであり、Crが高くなると,微細な酸化スケール(Fe
O,Cr2O3)と母地(マトリックス)との境界面にCr2O3層
が現れ、内部からの金属イオンの外部への拡散を妨げて
耐酸化性に寄与することとなる。 【0038】逆に、このスケールに割れや剥がれを生じ
ると、酸化が促進されるので材質の熱膨張率は耐酸化性
に大きく影響する。 【0039】とくに、断続加熱の場合には、スケールの
割れや剥がれが生じやすいので、フェライト系の方がオ
ーステナイト系に比べてスケールが剥がれにくく耐酸化
性が優れたものとなりうる。 【0040】これらの観点から、成分元素としてのTa
には、次の効果を期待することができる。 【0041】 フェライトの形成による熱サイクルに
よる歪み量の軽減と熱膨張率の低減。 【0042】 結晶構造的に最も原子密度が低い体心
立方格子構造で,格子定数が小さいことにより、変形抵
抗が小さい。このためTaの添加は熱疲労寿命を長期化
する効果が大きい。 【0043】また、成分元素としてのB,Y,La,C
eには、結晶粒を微細化することによって破壊強度を高
める効果を期待することができ、前記Taによる効果を
強化する意味で併せて添加される。 【0044】このような考えの下、前記各実施例におい
ては、TaおよびB,Y,La,Ceを成分元素として
選択している。 【0045】なお、各実施例による鋳造品は、使用温度
範囲内に金属組織上の変態点が存在せず、また熱膨張の
大きいオーステナイト組織およびマルテンサイト組織が
存在せず、フェライト相およびフェライト相と炭化物相
との混在組織により構成されるものである。 【0046】一方、表.3には、自動車用エンジンの排
気系部品等に用いられる,公知の比較例についての化学
成分を質量%で示す。表.3において、例えば比1は比
較例1を意味するものであり、各比較例において残部が
実質的にFeであることは前記表.1および2と同様で
ある。また、表.3において、C,Si,Mn,Cr,
W,Ni,Mo,Nb,Ta,V,B,Mgの各元素に
ついては分析値を示すが、Yについては添加量を示す。 【0047】 【表3】 これらの比較例はいずれも自動車用排気系部品に使用さ
れるもので、比較例1は高Si球状黒鉛鋳鉄の例であり、
比較例2はニレジスト球状黒鉛鋳鉄の例である。 【0048】比較例3はフェライト系ステンレスJIS,SU
S430相当の鋳鋼である。また、比較例4はC量が本願の
発明の範囲外のものであり、比較例5は本願発明のTa
をNbに置き換えたものである。 【0049】前記の各実施例と比較例とを用いて鋳造に
より、JIS規格のY型供試材を作成することとし、鋳造
にあたっては50kg用高周波誘導炉を用いて大気溶解し、
Y型供試材用鋳型に鋳込んで作成した。 【0050】そして、このようにして得られた各実施例
と各比較例とについて、必要な処理等を行なったうえ
で、次のような試験を行なった。 【0051】すなわち、各実施例のフェライト系ステン
レス鋳鋼については、前記のようにして得られた供試材
を、900℃で2時間保持した後徐冷し、650℃以下の温度
より空冷を行なった。前記比較例1および2について
は、鋳放しのまま供試材とした。比較例3,4および5
については、800℃で2時間保持した後徐冷し、650℃よ
り空冷して供試材を得た。 【0052】これらの処理をした供試材を用いて、以下
の評価試験を行なった。これらの評価試験の結果は表.
4〜表.6に示すとおりであり、これらの表においても
例えば実1や比1等が実施例1や比較例1等を意味する
ことは前記と同様である。 【0053】(1)室温引張試験 標点間距離が35mm,標点間の直径を10mmとした丸棒試験
片(準JIS4号試験片)を用いて各実施例および各比較例
についての室温引張強度を測定した。 【0054】(2)高温引張試験 標点間距離が50mm,標点間の直径が10mmのつばつき試験
片を用いて、850℃の温度条件で引張強度を測定した。
なお、比較例1については800℃の温度条件で行なった
測定結果を示す。 【0055】(3)熱疲労試験 標点間距離が15mm,標点間の直径が10mmの丸棒試験片を
用いて、加熱−冷却による伸び,縮みを完全に拘束した
状態で加熱−冷却サイクルを繰り返し熱疲労破壊を生じ
させ、熱疲労試験とした。 【0056】なお、加熱−冷却サイクルは、下限温度を
150℃,上限温度を900℃として、各サイクルを340秒と
して、電機−油圧サ−ボ方式の熱疲労試験機を用いて行
なった。 【0057】(4)酸化試験長さ30mm,幅20mm,厚さ3mmの板
状試験片を、900℃の大気雰囲気下で200時間保持し、試
験前の質量と試験後表面の酸化物をワイヤブラシで除去
した質量とを測定し、単位面積あたりの酸化減量を求め
て耐酸化性の評価を行なった。 【0058】 【表4】 【表5】 【表6】 以上の評価試験の結果からあきらかなように、前記各実
施例はいずれも各比較例より優れた耐熱性を有すること
がわかる。 【0059】そして、これらの各実施例は、いずれもフ
ェライト系耐熱ステンレス鋳鋼であって比較的安価なC
r元素をベースとしており、例えばNi,Co,W等の
高価な成分元素の添加量が少ないので、そのコストは比
較的安価である。 【0060】また、本願の各実施例は普通鋳鋼程度の鋳
造性があることが判明しているので生産性が良好であっ
て、一般的な鋳造設備により行なうことが可能であるこ
とからも製造コストが安価である。 【0061】 【発明の効果】以上説明したように、請求項1に記載し
た耐熱鋳鋼は、フェライト系の金属組織を形成するの
で、従来の高合金鋼を上回る耐熱疲労性および耐酸化性
を有し、良好な耐熱性を発揮することができるととも
に、比較的安価で生産性も良好である。
─────────────────────────────────────────────────────
フロントページの続き
(58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名)
C22C 38/00
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 質量比率で、C:0.10〜0.35
%,Si:0.40〜2.50%,Mn:0.30〜
1.00%,Cr:15.00〜30.00%,W:
0.50〜4.00%,Ni:0.20〜1.50%,
V:0.01〜0.50%の各元素を含有する耐熱鋳鋼
であって、Ta:0.01〜1.00%が添加されると
ともに、B:0.001〜0.20%,Y:0.01〜
0.50%,La:0.01〜0.50%,Ce:0.
01〜0.50%の各元素群のうち少なくとも一つが添
加され、残部はFeおよび不可避不純物からなる組成を
有することを特徴とする耐熱鋳鋼。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17437094A JP3449644B2 (ja) | 1994-07-26 | 1994-07-26 | 耐熱鋳鋼 |
Applications Claiming Priority (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP17437094A JP3449644B2 (ja) | 1994-07-26 | 1994-07-26 | 耐熱鋳鋼 |
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Family Applications (1)
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JP17437094A Expired - Fee Related JP3449644B2 (ja) | 1994-07-26 | 1994-07-26 | 耐熱鋳鋼 |
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Families Citing this family (1)
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---|---|---|---|---|
JP5168713B2 (ja) * | 2006-02-23 | 2013-03-27 | 大同特殊鋼株式会社 | 薄肉鋳物部品及びその製造方法 |
-
1994
- 1994-07-26 JP JP17437094A patent/JP3449644B2/ja not_active Expired - Fee Related
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JPH0841597A (ja) | 1996-02-13 |
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