JP3449330B2 - 車両用交流発電機 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は車両用交流発電機の
通風冷却用ファンおよびその製造方法に関する。

【０００２】

【従来の技術】図９は、従来の車両用交流発電機の構成
を示す断面図である。ロータ１は、界磁コイル４が巻装
されるボビン３，磁極鉄心となるヨーク５，複数の爪形
状部片からなる一対のコア２，コア２の一端面に溶接固
定されたフロントファン１５およびリヤファン１６，回
転軸６およびスリップリング７から構成されている。一
対のコア２は、界磁コイル４を巻装したボビン３、およ
びヨーク５を挟み込み、爪２ａが噛み合うように配置さ
れ、回転軸６の略中央部に挿入固定されている。ロータ
１の外周部にはステータ８が配置され、ステータ８を取
り囲むようにフロントブラケット１０、リヤブラケット
１１が配設されている。回転軸６の一方の端部にはプー
リ１２が取付けられており、エンジン（図示せず）の回
転力はベルト（図示せず）によりプーリ１２へ伝達さ
れ、ロータ１を回転駆動する。ロータ１の回転により、
コア２に取付けられたフロントファン１５およびリヤフ
ァン１６も共に回転し、発電機内を通風冷却する。図１
０は従来の車両用交流発電機に採用されているファンの
斜視図である。従来のファン１６は一枚の薄板からプレ
ス作業により成形されており、環状の支持板１８および
その一部を曲げ起こして成形した、軸方向に複数の曲面
（若しくは平面）ブレード１７を突設した構造となって
いる。このため、ブレード枚数と高さは相対関係とな
り、ファン設計の自由度が制約されていた。

【０００３】

【発明が解決しようとする課題】近年の車両用交流発電
機への高出力化要請に従い、車両用交流発電機の高速駆
動が広く普及してきた。そして、高速駆動に伴い、車両
用交流発電機の騒音が増加するという問題点が生じた。
高速駆動時の騒音の多くは、回転子の回転に伴う風切音
であり、なかでも、冷却ファンの回転による乱流音及び
干渉音の影響が大きい。このため、冷却ファンブレード
の枚数変更、ブレードの曲率半径変更や後向きブレード
の採用、ブレードの不等ピッチ配置等により騒音増加を
抑制していた。しかし、車両側（交流発電機以外のエン
ジン、補記類）の静音化が進んでいることから、従来の
薄板をプレス成形したファンの形状変更による低騒音化
への対応は限界にきている。従来の薄板プレス成形ファ
ンは、１枚の鉄板を型抜きし、曲げ起こして成形される
ため、ブレード枚数，高さ及びブレードの配置等に対す
る設計上の制約が多かった。そこで、形状設計の自由度
が高く、かつ従来の薄板成形ファンと同等の取付強度を
有し、さらにファン取付工程に変更を生じないファン構
造を得ることを目的とする。

【０００４】

【課題を解決するための手段】本発明は、複数の爪形状
部片からなる一対のコア、前記コアの中心部に挿入固着
された回転軸、前記回転軸に挿入固着された励磁電流供
給用のスリップリング及び前記コアの両端に取付けられ
たフロント及びリヤの一対のファンを有する回転子と、
前記回転子の外周に設けられた固定子と、前記回転子及
び固定子を取り囲むように配置されると共に、端部に複
数の吸気孔が設けられ、かつ外周部に複数の排気孔が設
けられたフロント側及びリヤ側のブラケットとを有し、
前記回転子は軸受けを介して前記各ブラケットに回転自
在に支持され、前記ファンは前記回転子の回転で回転し
て発電機内を通風冷却する車両用交流発電機において、
前記フロントファン及びリヤファンの少なくとも一方
は、インサート金具を有する樹脂成形ファンであると共
に、軸方向に複数のブレードを突設した環状の支持板よ
りなる遠心式ファンであり、かつ前記インサート金具が
前記コアに接合されることによって前記コアに固定され
たものであり、さらには前記環状の支持板の内径が前記
回転軸の外径若しくは前記スリップリングの樹脂部の外
径と略等しいものであることを特徴とする。

【０００５】本発明によれば、冷却ファンの構造をイン
サート金具付きの樹脂成形品としたことにより、ブレー
ド形状は曲面，平面のみならず３次元的な形状も実現可
能となる他、ブレードの開放端側に環状の整流板を設け
ることもできる。また、本発明は、樹脂成形ファンとし
たことにより、ブレード枚数，ピッチを実現可能な範囲
で自由に設定できる。また、樹脂成形ファンそのもので
は、コア背面への接合時に十分な取付強度を得ることは
難しい。しかし、本発明は、インサート金具付きの樹脂
成形品とし、インサート金具を溶接等でコア背面に機械
的に接続したことにより、従来の薄板をプレス成形した
ファンと同等の取付強度を確保することが可能となる。
さらに、本発明は、冷却ファンのブレードを突設した環
状の支持板の内径を回転軸の外径若しくはスリップリン
グの樹脂部の外径と略等しくしたことにより、冷却ファ
ンをコア背面に取付ける際のファンのコアに対する軸中
心の位置決めが容易となる。

【０００６】また、本発明は、環状の支持板の裏面（コ
アとの接触面）に、コア谷部に合わせた凸部を設けてい
る。これにより、本発明は、ファンのコアに対する回転
方向に対する位置決めが容易となる。

【０００７】

【発明の実施の形態】本発明における実施の形態につい
て図を用いて具体的に説明する。

【０００８】図４は、本発明における車両用交流発電機
の断面図である。図４において、ロータ１は、それぞれ
複数の爪２ａが設けられた一対の爪形のコア２，界磁コ
イル４が巻き回されたボビン３、ボビン３の磁極鉄芯で
あるヨーク５，回転軸６およびスリップリング７から構
成されている。一対のコア２は、爪２ａが噛み合うよう
に相対し、ボビン３およびヨーク５を挟み込むように配
置され、回転軸６がそれらの軸心位置に圧入されて固定
されている。一対のコア２の背面部には、フロントファ
ン１３およびリアファン１４がコア２に一体に取付けら
れている。また、回転軸６の一方の端部にはプーリ１２
が取付けられ、回転軸６のもう一方の端部にはスリップ
リング７が圧入されており、プーリ１２及びスリップリ
ング７は回転軸６と一体となり回転する。ステータ８
は、コア２の外周にコア２と僅かな隙間を持つように配
設されている。ブラシホルダ９には電圧制御器が実装さ
れている。そして、フロントブラケット１０とリアブラ
ケット１１が回転軸６を軸支してロータ１を囲むように
配置され、さらにステータ８を挟持している。

【０００９】実施の形態１．図１，図２にそれぞれ本発
明におけるリヤファン１４のブレード面および背面の斜
視図、図３に本発明におけるリヤファン１４に一体成形
されるインサート金具１９の斜視図を示す。各図におい
て、リアファン１４はインサート金具１９を一体成形し
た樹脂製である。インサート金具１９はＳＰＣＣｔ＝
１.２ 程度の鉄板をプレスにより成形したものであり、
インサート金具の平面部１９ａには、コア２と相対する
面側に突出する溶接箇所１９ｂが周方向に複数箇所設け
られている。また、インサート金具１９は、単なる平板
ではなく、それ自体が凹凸上に成形されており、外周部
には複数の空孔１９ｃ又は凸部１９ｄが設けられてお
り、インサート成形時の樹脂とインサート金具との結合
を強める形状となっている。樹脂ファン成形後の形状
は、インサート金具１９の大部分が樹脂で覆われ、イン
サート金具１９の露出部は溶接部のみとなる。ファン１
４の樹脂材料は、成形性及び強度を考慮し、ガラス強化
されたナイロン等を用いており、ブレード枚数，高さ及
びブレードの配置等に対する設計上の自由度を向上させ
ている。このように、鉄板プレス品のインサート金具１
９を一体成形した樹脂製のリヤファン１４は、インサー
ト金具１９に突設された溶接箇所１９ｂを有する事によ
り、設備を変更する事無く溶接固定が可能となる。な
お、上記実施の形態１では、リヤファンについての説明
のみであるが、フロントファンに関しても同様である。

【００１０】実施の形態２．図５は本発明の実施の形態
２に係る車両用交流発電機に適用されるファンの取付状
態を示す細部断面図である。ファン１４をコア２に取付
ける際の手順としては、ファン１４をコア２の背面にあ
てがい、位置決めした後、溶接箇所１９ｂにて溶接し、
固定される。図５において、インサート金具１９を一体
成形した樹脂成形リヤファン１４の樹脂部内径寸法α１
は、スリップリング７の樹脂部外径寸法β１に対し、略
等しい径に設定されている。そのため、ファン１４をコ
ア２の背面に取付ける際のファン１４のコア２に対する
軸中心の位置決めが不要となり、組立時の作業性が向上
する。

【００１１】実施の形態３．図６は本発明の実施の形態
３に係る車両用交流発電機に適用されるファンをコアに
取付る前の状態を示した斜視図、図７は本発明の実施の
形態３に係る車両用交流発電機におけるファンの取付状
態を示す図である。図６において、ファン１４のブレー
ド突出面の裏面部１４ａには、コア２の背面部形状に合
わせた台形形状の位置決め用凸部２０が片側２箇所、計
４箇所設けられている。位置決め用凸部２０の間隔α２
は、コア背面の幅β２に対して微少隙間を持つ程度に設
定されているため、ファン１４をコア２の背面に取付け
る際のファンのコアに対する回転方向に対する位置決め
が容易となり、組立時の作業性が向上する。なお、上記
実施の形態３では、位置決め凸部の形状は台形形状とし
ているが、位置決め部の形状はこれに限定されるもので
はなく、図８に示すようなコア谷部の形状に合わせた凸
形状２１でも良い。

【００１２】

【発明の効果】本発明によれば、車両用交流発電機の冷
却ファンにおいて、インサート金具を一体成形した樹脂
製としたことにより、ファンのブレード枚数，形状およ
び配置ピッチの設計上の自由度が向上すると共に、溶接
固定が可能となる。また、本発明によれば、冷却ファン
の内径部をシャフトまたはスリップリングの樹脂部の外
径と略等しくしたことにより、組立て時のファンとコア
との軸中心の位置決めが容易となり、作業性が向上す
る。

【００１３】

【００１４】また、本発明によれば、冷却ファン裏面の
コアとの接触面に、コアの背面形状に合わせた凸部を設
けたことにより、組立て時のファンとコアとの回転方向
の位置決めが容易となり、作業性が向上する。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明に係る車両用交流発電機に適用されるフ
ァンの斜視図（ブレード突設面側）である。

【図２】本発明に係る車両用交流発電機に適用されるフ
ァンの斜視図（背面側）である。

【図３】本発明に係る車両用交流発電機に適用されるフ
ァンにおけるインサート金具の斜視図である。

【図４】本発明に係る車両用交流発電機を示す断面図で
ある。

【図５】本発明の実施の形態２に係る車両用交流発電機
に適用されるファンの取付状態を示す断面図である。

【図６】本発明の実施の形態３に係る車両用交流発電機
に適用されるファンの取付前状態を示す斜視図である。

【図７】本発明の実施の形態３に係る車両用交流発電機
に適用されるファンの取付状態を示す図である。

【図８】本発明の実施の形態３に係る車両用交流発電機
に適用されるファンにおける位置決め凸部形状の他の実
施例を示す斜視図である。

【図９】従来の車両用交流発電機を示す断面図である。

【図１０】従来の車両用交流発電機に適用されるファン
の斜視図である。

【符号の説明】

１…ロータ、２…コア、３…ボビン、４…コイル、６…
回転軸、７…スリップリング、１４…リヤファン、１９
…インサート金具、２０…位置決め用凸部。

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 本田 義明 茨城県ひたちなか市大字高場2520番地 株式会社 日立製作所 自動車機器グル ープ内 (56)参考文献 特開 平４−200255（ＪＰ，Ａ) 特開 平５−30707（ＪＰ，Ａ) 特開2000−92787（ＪＰ，Ａ) 実開 昭56−20369（ＪＰ，Ｕ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) H02K 19/22 H02K 9/06

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】複数の爪形状部片からなる一対のコア、前
   記コアの中心部に挿入固着された回転軸、前記回転軸に
   挿入固着された励磁電流供給用のスリップリング及び前
   記コアの両端に取付けられたフロント及びリヤの一対の
   ファンを有する回転子と、前記回転子の外周に設けられ
   た固定子と、前記回転子及び固定子を取り囲むように配
   置されると共に、端部に複数の吸気孔が設けられ、かつ
   外周部に複数の排気孔が設けられたフロント側及びリヤ
   側のブラケットとを有し、前記回転子は軸受けを介して
   前記各ブラケットに回転自在に支持され、前記ファンは
   前記回転子の回転で回転して発電機内を通風冷却する車
   両用交流発電機において、前記フロントファン及びリヤ
   ファンの少なくとも一方は、インサート金具を有する樹
   脂成形ファンであると共に、軸方向に複数のブレードを
   突設した環状の支持板よりなる遠心式ファンであり、か
   つ前記インサート金具が前記コアに接合されることによ
   って前記コアに固定されたものであり、さらには前記環
   状の支持板の内径が前記回転軸の外径若しくは前記スリ
   ップリングの樹脂部の外径と略等しいものであることを
   特徴とする車両用交流発電機。
2. 【請求項２】請求項１に記載の車両用交流発電機におい
   て、前記環状の支持板のブレード突設面の裏側面（前記
   コアとの接触面）には、コア背面部形状に合わせた凸部
   が設けられていることを特徴とする車両用交流発電機。