JP3448012B2 - 電磁波吸収体及びその製造方法 - Google Patents

電磁波吸収体及びその製造方法

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JP3448012B2
JP3448012B2 JP2000133315A JP2000133315A JP3448012B2 JP 3448012 B2 JP3448012 B2 JP 3448012B2 JP 2000133315 A JP2000133315 A JP 2000133315A JP 2000133315 A JP2000133315 A JP 2000133315A JP 3448012 B2 JP3448012 B2 JP 3448012B2
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continuous pores
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敏秀 北澤
雅夫 宮代
佳晴 冨増
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、電磁波吸収体及び
その製造方法に関し、詳しくは、セラミック系材料から
なる電磁波吸収体及びその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、電磁波の影響を防止する目的で、
電磁波吸収体の開発、応用が進められている。この電磁
波吸収体は、例えば、テレビ電波が高層建造物により乱
反射されて生じる電波障害の問題を解決したり、移動体
通信システムの高速・大容量化や、無線LAN、衝突防
止レーダー、リモートセンシング等、新たな無線技術の
開発にともなって、クローズアップされている電磁波の
多重反射に起因するゴーストや符号誤りなどの様々な問
題を解決したりする目的で用いられるものであり、これ
までも、上述のような問題を解決するために、電磁波反
射率が小さく、電磁波吸収性の良好な建材や塗料などが
利用されている。
【0003】従来の電磁波吸収体としては、例えば、実
開昭60−48294号公報に開示された電波吸収体が
ある。この電波吸収体においては、一方の側から深部に
向けてその誘電率が徐々に大きくなるように配置された
積層誘電体板が用いられている。そして、一方の側に位
置する誘電体板には、その誘電率がほぼ1のものが使用
されており、この一方の側の誘電体板の外面全域に、ポ
リカーボネート等からなる合成樹脂の薄膜が一体的に被
覆されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の電波吸収体においては、電波吸収能力が必ずしも十
分ではないのが実情である。
【0005】また、電磁波はあらゆる方向から入射して
くるものであるが、これまでの電磁波吸収体において
は、電磁波吸収体の入射面に対して斜めから入射する電
磁波に対する電磁波吸収能力については、必ずしも十分
には考慮されておらず、入射面に対して斜めから入射す
る電磁波の吸収性能にも優れた電磁波吸収体が望まれて
いる。
【0006】本発明は、上記問題点を解決するものであ
り、電磁波吸収能力が大きく、しかも、入射面に対して
斜めから入射する電磁波の吸収性能にも優れた電磁波吸
収体及びその製造方法を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、本発明(請求項1)の電磁波吸収体は、所定の面が
電磁波の入射面となるように構成された電磁波吸収体で
あって、(a)連続気孔を有する多孔質のセラミックから
なり、(b)前記連続気孔内に炭素が存在しているととも
に、前記炭素の存在割合が、前記入射面からその反対面
に向かって大きくなり、かつ、(c)誘電損失が、入射面
からその反対面に向かって大きくなるような傾斜構造を
有していることを特徴としている。
【0008】請求項1の発明にかかる電磁波吸収体は、
連続気孔を有する多孔質のセラミックから形成されてお
り、連続気孔内に炭素が存在しているとともに、炭素の
存在割合が、入射面からその反対面に向かって大きくな
り、誘電損失が、入射面からその反対面に向かって大き
くなるような傾斜構造を有しているため、入射した電磁
波が、内部で熱損失を生じ、熱エネルギーとなって消費
され、入射面から入射した電磁波が効率よく吸収され
る。なお、本発明の電磁波吸収体において用いることが
可能なセラミックに特別の制約はなく、種々のセラミッ
ク材料を広く用いることが可能である。また、本発明の
電磁波吸収体において連続気孔の具体的な形状や、連続
気孔内における炭素の存在態様などについても特別の制
約はない。
【0009】また、請求項2の電磁波吸収体は、前記連
続気孔内の炭素の主要部が、前記反対面側から燻化処理
(含炭素物質を不完全燃焼させることにより生じた高温
気体を、前記連続気孔の内壁などと接触させることによ
り接触面に炭素膜を生じさせる処理)を施すことによ
り、連続気孔の内壁に成膜された炭素膜であることを特
徴としている。
【0010】燻化処理を施すことにより、炭素を連続気
孔内に導入し、炭素の主要部を連続気孔の内壁などに炭
素膜として保持させるとともに、入射面から反対面に向
かってその存在割合が大きくなるように傾斜して存在さ
せることが可能になり、誘電損失が入射面からその反対
面に向かって大きくなる傾斜構造を効率よく、しかも確
実に形成することが可能になり、本発明をさらに実効あ
らしめることができる。なお、燻化処理は、例えば、炭
化水素ガスなどの含炭素物質を不完全燃焼させることに
より生じた高温気体を、前記連続気孔の内壁などと接触
させることにより接触面に炭素膜を生じさせる処理であ
り、含炭素物質を不完全燃焼させることにより生じさせ
た気体中には、通常、煤(すす)状の炭素がいくらか存
在する場合が多いが、煤状の炭素の有無やその存在割合
などに特別の制約はない。
【0011】また、請求項3の電磁波吸収体は、前記連
続気孔による空隙率が、前記入射面からその反対面に向
かって小さくなるような傾斜構造を有していることを特
徴としている。
【0012】連続気孔による空隙率が、入射面からその
反対面に向かって小さくなるような傾斜構成とした場
合、誘電率が入射面からその反対面に向かって大きくな
る。したがって、誘電損失が入射面からその反対面に向
かって大きくなるとともに、誘電率も入射面からその反
対面に向かって大きくなるため、空気とのインピーダン
スマッチングが向上して、さらに効率よく電磁波を吸収
することが可能になる。
【0013】また、請求項4の電磁波吸収体は、前記炭
素の存在割合が異なる複数の層を積層することにより、
炭素の存在割合を、前記入射面からその反対面に向かっ
て段階的に大きくなるように傾斜させたことを特徴とし
ている。
【0014】炭素の存在割合が傾斜した構造とする方法
としては、一つの層の中で、炭素の存在割合を傾斜させ
る場合に限らず、炭素の存在割合が異なる複数の層を所
定の順序で積層することによっても、全体として、炭素
の存在割合を、入射面からその反対面に向かって段階的
に大きくなるように傾斜させることが可能であり、請求
項4のように、複数層構造とすることにより、構成の自
由度を向上させることが可能になる。
【0015】また、請求項5の電磁波吸収体は、前記炭
素の存在割合及び前記連続気孔による空隙率が異なる複
数の層を積層することにより、炭素の存在割合を、前記
入射面からその反対面に向かって段階的に大きくなるよ
うに傾斜させ、空隙率を、前記入射面からその反対面に
向かって段階的に小さくなるように傾斜させたことを特
徴としている。
【0016】炭素の存在割合及び連続気孔による空隙率
が異なる複数の層を積層するようにした場合、炭素の存
在割合(すなわち、誘電損失)を、前記入射面からその
反対面に向かって段階的に大きくなるように傾斜させ、
空隙率を、入射面からその反対面に向かって段階的に小
さくなるように傾斜さることが可能になり、複数層構造
で、炭素の存在割合(すなわち誘電損失)及び空隙率の
両方を傾斜構造とすることが可能になり、構成の自由度
をさらに向上させることが可能になる。
【0017】また、請求項6の電磁波吸収体は、前記入
射面側に、気孔内に炭素が導入されていない、多孔質で
誘電率の小さいセラミック層が接合され、該セラミック
層の表面が入射面となっていることを特徴としている。
【0018】請求項1〜5のいずれかに記載の電磁波吸
収体の入射面側に、気孔内に炭素が導入されていない、
多孔質で誘電率の小さいセラミック層を接合し、該セラ
ミック層の表面が入射面となるような構成とした場合、
表面の誘電率を確実に小さくして、空気とのインピーダ
ンスマッチングを向上させることが可能になり、さらに
効率よく電磁波を吸収することが可能になる。
【0019】また、請求項7の電磁波吸収体は、前記反
対面側に、電磁波の反射層として機能する導体層が配設
されていることを特徴としている。
【0020】反対面側に、電磁波の反射層として機能す
る導体層を配設した場合、入射面から前記導体層に達す
るまでに吸収されなかった電磁波が、該導体層により反
射されて、再び電磁波吸収体を通過し、その過程で電磁
波が吸収されることになるため、電磁波をさらに効率よ
く吸収することが可能になる。
【0021】また、本発明(請求項8)の電磁波吸収体
の製造方法は、電磁波の入射面を備えた電磁波吸収体の
製造方法であって、(a)連続気孔を有する多孔質のセラ
ミック焼結体を形成する工程と、(b)前記セラミック焼
結体の一方の面(入射面となる面とは反対側の面)から
燻化処理を施すことにより、炭素の存在割合が、前記入
射面からその反対面(燻化処理面)に向かって大きくな
るように、前記連続気孔の内壁に炭素膜を成膜させる工
程とを具備することを特徴としている。
【0022】連続気孔を有する多孔質のセラミック焼結
体を形成した後、その一方の面(入射面となる面とは反
対側の面)から燻化処理を施すことにより、炭素の存在
割合が、入射面からその反対面(燻化処理面)に向かっ
て大きくなるように、連続気孔の内壁に炭素膜を成膜さ
せることが可能になり、本発明の電磁波吸収体を効率よ
く製造することが可能になる。
【0023】また、請求項9の電磁波吸収体の製造方法
は、前記連続気孔を有する多孔質のセラミック焼結体を
形成する工程が、(a)流紋岩、長石質岩石、貢石、粘板
岩、真珠岩、黒曜岩及び膨張粘土からなる群から選ばれ
た少なくとも1種のセラミック原料100重量部、(b)
炭化珪素、二酸化マンガン及び酸化鉄からなる群から選
ばれた少なくとも1種の発泡剤0.1〜5重量部、(c)
天然の軽石並びに人工的に加熱発泡させた黒曜石、真珠
岩及び貢石から選ばれた少なくとも1種であって、粒度
が5mm以下の発泡中空体10〜200重量部、(d)有機
粘結剤0.3〜3.5重量部、並びに無機粘結剤5〜2
0重量部の各成分を混合し、焼成、発泡させることによ
り、連続気孔を有する多孔質のセラミック焼結体を形成
する工程であることを特徴としている。
【0024】上述の(a)〜(d)の各成分を混合し、焼
成、発泡させる工程を経てセラミック焼結体を形成する
ことにより、連続気孔を有する多孔質のセラミック焼結
体を効率よく、しかも確実に作成することが可能にな
り、本発明をより実効あらしめることができる。
【0025】
【発明の実施の形態】以下、発明の実施の形態を示し
て、本発明の特徴とするところをさらに詳しく説明す
る。 [実施形態1]図1は、本発明の一実施形態にかかる電
磁波吸収体の概略構造を示す断面図である。この実施形
態にかかる電磁波吸収体1は、例えば、セラミック焼結
体10からなるものであり、入射面1aからその反対面
(反射面)1bに向かって誘電率及び誘電損失の特性が
徐々に大きくなるように傾斜した、いわゆる傾斜構造を
有している。そして、セラミック焼結体10の反対面
(反射面)1b側には、導体層(この実施形態では炭素
膜(反射面側炭素膜))2が配設されている。
【0026】なお、セラミック焼結体10は、連続気孔
3を有する多孔質の構造を有しており、連続気孔3によ
る空隙率が、入射面1aからその反対面(反射面)1b
に向かって徐々に小さくなっており、これにより、誘電
率が入射面1aからその反対面(反射面)1bに向かっ
て大きくなるような傾斜特性が付与されている。
【0027】そして、この電磁波吸収体1においては、
連続気孔3の内部に炭素5が存在しており、炭素5の主
要部は、連続気孔3の内壁4に炭素膜5aとして保持さ
れている。また、炭素5の存在割合は、入射面1aから
その反対面(反射面)1bに向かって大きくなるように
傾斜しており、これによって、誘電損失が、入射面1a
からその反対面(反射面)1bに向かって大きくなるよ
うな傾斜特性が付与されている。
【0028】なお、この実施形態の電磁波吸収体1にお
いては、入射面1a側から途中までの領域においては、
連続気孔3の内壁4に炭素膜が形成されておらず、セラ
ミック焼結体10の略中央部から反対面(反射面)1b
に至る領域において、炭素膜5aが連続気孔3の内壁4
に、反対面(反射面)1bに向かって徐々に厚みが大き
くなるように傾斜して形成されている。したがって、こ
の実施形態の電磁波吸収体1において、入射面1a側か
ら途中までの領域は、電磁波の電磁波吸収体1への入射
を促すバッファー層としての機能を果たす領域となる。
【0029】なお、本発明の電磁波吸収体1において
は、反対面(反射面)1b側から、入射面1a側に至る
全領域に、炭素量が傾斜するように、連続気孔3の内壁
4に炭素膜を形成することも可能である。
【0030】次に、この電磁波吸収体1の製造方法につ
いて説明する。 <セラミック焼結体の作製>まず、以下の(a)〜(d)の
各原料を混合し、所定の温度条件(この実施形態では約
1150℃)で焼成して発泡させることにより、図2に
示すような、連続気孔3を有するセラミック焼結体10
を作製する。 (a)流紋岩、長石質岩石、貢石、粘板岩、真珠岩、黒曜
岩及び膨張粘土からなる群から選ばれた少なくとも1種
のセラミック原料100重量部 (b)炭化珪素、二酸化マンガン及び酸化鉄からなる群か
ら選ばれた少なくとも1種の発泡剤0.1〜5重量部 (c)天然の軽石並びに人工的に加熱発泡させた黒曜石、
真珠岩及び貢石から選ばれた少なくとも1種であって、
粒度が5mm以下の発泡中空体10〜200重量部 (d)有機粘結剤0.3〜3.5重量部、並びに無機粘結
剤5〜20重量部
【0031】なお、図3(a)に概念的に示すように、上
記(a)〜(d)の各原料を混合した、周囲に有機粘結剤1
1及び無機粘結剤12が付着した発泡中空体13と、セ
ラミック原料14とが共存した状態の配合原料を、11
50℃の温度条件下で焼成することにより、図3(b)に
概念的に示すように、成長、膨張し、開口15が生じた
発泡中空体13aと、セラミック原料14とが混在する
連続気孔を有するセラミック焼結体10(図2)が形成
される。
【0032】また、この実施形態の電磁波吸収体1(図
1)を構成するセラミック焼結体10は、図2に示すよ
うに、連続気孔3による空隙率が、入射面1aからその
反対面(反射面)1bに向かって徐々に小さくなるよう
に傾斜した構造を有しているが、このような傾斜構造の
セラミック焼結体10は、例えば、図4に示すように、
上記の各原料を配合した配合原料として、段階的に粒径
の異なる配合原料を用意しておき、粒径の大きい空隙率
の高い配合原料を敷き詰めた第1層10aの上に、第1
層10aよりも粒径が小さく、空隙率の低い配合原料を
第2層10bとして敷き詰め、さらに、第2層10bの
上に、第2層10bよりも粒径が小さく、空隙率の低い
配合原料を第3層10cとして敷き詰めた後、所定の条
件でプレスし、焼成することにより製造することができ
る。また、連続的に粒径の異なる配合原料を敷き詰める
ことにより、段階的ではなく、連続的に空隙率の傾斜し
たセラミック焼結体を得ることも可能である。なお、空
隙率が、入射面1aからその反対面(反射面)1bに向
かって小さくなるように傾斜した構造を有するセラミッ
ク焼結体10を製造する方法には、特別の制約はなく、
その他の種々の方法を用いることが可能である。
【0033】<セラミック焼結体の燻化処理>上述のよ
うにして作製したセラミック焼結体10(図2)の入射
面1a側及び側面1c側をシールした状態で、セラミッ
ク焼結体10の反対面(反射面)1b側から燻化処理を
行うことにより、図1に示すように、連続気孔3の内壁
4に炭素膜5aを析出させる。
【0034】なお、燻化処理は、例えば、セラミック焼
結体10の反対面(反射面)1b側で、炭化水素ガスを
所定の条件で不完全燃焼させることにより生じた高温気
体を、セラミック焼結体10の連続気孔3内に導入し
て、連続気孔3の内壁4に接触させることにより行う。
この燻化処理により、高温気体が反対面(反射面)1b
側から入射面1a側に向かって侵入し、反対面(反射
面)1b側では炭素膜5aの厚みが大きく、入射面1a
側に向かって炭素膜5aの厚みが小さくなるような傾斜
状態で連続気孔3の内壁4に炭素膜5aが成膜される。
このようにして、図1に示すように、炭素5の存在割合
が、入射面1a側からその反対面(燻化処理面)1b側
に向かって大きくなるように傾斜した電磁波吸収体1が
得られる。
【0035】なお、この実施形態では、上記の燻化処理
工程において、セラミック焼結体10の反対面(反射
面)1b側に、電磁波を反射する導体層として機能する
炭素膜(反射面側炭素膜)2を形成するようにした。
【0036】このようにして製造される電磁波吸収体1
においては、連続気孔3の内壁4に炭素膜5aが形成さ
れているとともに、炭素膜5a(炭素5)の存在割合
が、入射面1aからその反対面(反射面)1bに向かっ
て大きくなるように傾斜し、誘電損失が、入射面1aか
らその反対面(反射面)1bに向かって大きくなる傾斜
構造を有しているため、入射した電磁波が、内部で熱損
失を生じ、熱エネルギーとなって効率よく消費されるた
め、入射した電磁波を効率よく吸収することができる。
また、入射面1aの反対面(反射面)1bに、電磁波の
反射層として機能する導体層(反射面側炭素膜)2が配
設されているので、入射面1aから導体層2に達するま
でに吸収されなかった電磁波が、導体層2により反射さ
れて、再び電磁波吸収体1を通過し、その過程でさらに
電磁波が吸収されることになるため、電磁波をさらに効
率よく吸収することができる。
【0037】この実施形態1の電磁波吸収体1につい
て、電磁波の吸収特性(電磁波の入射角と電磁波の吸収
量の関係)を調べ、電磁波吸収体としての性能を評価し
た。電磁波の吸収特性の測定は、図5に示すような、半
径1mのアーチ状測定装置を用い、その中心に位置する
試料支持台21上に測定対象である電磁波吸収体1を載
置した状態で、放射ホーンアンテナ(送信アンテナ)2
2及び受信ホーンアンテナ(受信アンテナ)23を円周
軌道上の位置を変化させ、入射角(θi)と電磁波の吸
収量の関係を調べた。
【0038】なお、測定にあたっては、電磁波吸収体
(測定試料)1を微小上下することにより、放射ホーン
アンテナ(送信アンテナ)22と受信ホーンアンテナ
(受信アンテナ)23間の直接波の影響を除去するよう
にした(ここでは電解ベクトル法という)。また、測定
にあたっては、放射ホーンアンテナ(送信アンテナ)2
2から電磁波吸収体(測定試料)1への電磁波の入射角
θiを10度から60度に変化させて斜入射を含めた吸
収量を測定した。測定周波数10GHzにおける吸収量
の測定結果を図6に示す。
【0039】図6に示すように、この電磁波吸収体1
は、電磁波の入射角が10度から60度の斜入射におい
ても電磁波吸収能があり、しかも十分な吸収量を有して
いることがわかる。
【0040】[実施形態2]図7は、本発明の他の実施
形態にかかる電磁波吸収体31を示す図である。この電
磁波吸収体31は、セラミック焼結体を燻化処理するこ
とにより形成された、炭素の存在割合及び連続気孔によ
る空隙率が異なる複数の層(この実施形態2では、第1
吸収層31b及び、第1層吸収層31bよりも炭素の存
在割合が高く、連続気孔による空隙率が低い第2吸収層
31c)を備えているとともに、入射面1a側には炭素
を含有させていないセラミック焼結層31aが配設され
ており、さらに、反射面1b側には、導体層として、例
えば銅板32が配設された構造を有している。
【0041】このような多層構造の電磁波吸収体31
は、上述の各層、すなわち、炭素を含有させていないセ
ラミック焼結層31a、第1吸収層31b、第2吸収層
31c、及び銅板32を別途用意し、これを接合するこ
とにより製造することができる。
【0042】なお、多層構造とした場合、所定の複数種
類の吸収層を用意しておくことにより、任意の吸収層を
組み合わせるだけで、所望の吸収特性を持たせるように
することが可能になり、設計、製造の自由度を向上させ
ることができて有利な場合がある。
【0043】なお、上記実施形態1及び2では、セラミ
ック焼結体の連続気孔内に炭素を保持させる方法として
燻化処理の方法を用いているが、例えば、有機物質を混
合したセラミックスを、有機物質が炭化するような条件
で焼成(炭化焼成)し、その後、所定の面側から、傾斜
的に炭素が酸化されて除去されるような条件で焼成(酸
化焼成)を行う方法により炭素分布を傾斜構造とするこ
とも可能であり、さらにその他の方法を用いることも可
能である。
【0044】本発明は、さらにその他の点においても上
記実施形態に限定されるものではなく、複数層構造の場
合の積層数、セラミック焼結体を構成する原料の種類や
組成などに関し、発明の要旨の範囲内において、種々の
応用、変形を加えることが可能である。
【0045】
【発明の効果】上述のように、本発明(請求項1)の電
磁波吸収体は、連続気孔を有する多孔質のセラミックか
ら形成されており、連続気孔内に炭素が存在していると
ともに、炭素の存在割合が、入射面からその反対面に向
かって大きくなるように傾斜し、誘電損失が、入射面か
らその反対面に向かって大きくなるような傾斜構造を有
しているため、広い入射角度の電磁波に対する吸収能力
を有し、かつ、十分に電磁波を吸収することができる。
【0046】また、請求項2の電磁波吸収体のように、
燻化処理を施すことにより、炭素を連続気孔内に導入
し、炭素の主要部を連続気孔の内壁などに炭素膜として
保持させるとともに、入射面から反対面に向かってその
存在割合が大きくなるように傾斜して存在させることが
可能になり、誘電損失が入射面からその反対面に向かっ
て大きくなる傾斜構造を効率よく、しかも確実に形成す
ることが可能になり、本発明をさらに実効あらしめるこ
とができる。
【0047】また、請求項3の電磁波吸収体のように、
連続気孔による空隙率が、入射面からその反対面に向か
って小さくなるような傾斜構成とした場合、誘電率が入
射面からその反対面に向かって大きくなる。したがっ
て、誘電損失が入射面からその反対面に向かって大きく
なるとともに、誘電率も入射面からその反対面に向かっ
て大きくなるため、空気とのインピーダンスマッチング
が向上して、さらに効率よく電磁波を吸収することが可
能になる。
【0048】炭素の存在割合が傾斜した構造とする方法
としては、一つの層の中で、炭素の存在割合を傾斜させ
る場合に限らず、炭素の存在割合が異なる複数の層を所
定の順序で積層することによっても、全体として、炭素
の存在割合を、入射面からその反対面に向かって段階的
に大きくなるように傾斜させることが可能であり、請求
項4のように、複数層構造とすることにより、構成の自
由度を向上させることができる。
【0049】また、請求項5のように、炭素の存在割合
及び連続気孔による空隙率が異なる複数の層を積層する
ようにした場合、炭素の存在割合を、前記入射面からそ
の反対面に向かって段階的に大きくなるように傾斜さ
せ、空隙率を、入射面からその反対面に向かって段階的
に小さくなるように傾斜さることが可能になり、複数層
構造で、炭素の存在割合(すなわち誘電損失)及び空隙
率の両方を傾斜構造とすることが可能になり、構成の自
由度をさらに向上させることができる。
【0050】また、請求項6の電磁波吸収体のように、
請求項1〜5のいずれかに記載の電磁波吸収体の入射面
側に、気孔内に炭素が導入されていない、多孔質で誘電
率の小さいセラミック層を接合し、該セラミック層の表
面が入射面となるような構成とした場合、表面の誘電率
を確実に小さくして、空気とのインピーダンスマッチン
グを向上させることが可能になり、さらに効率よく電磁
波を吸収することができるようになる。
【0051】また、請求項7の電磁波吸収体のように、
反対面(反射面)側に、電磁波の反射層として機能する
導体層を配設した場合、入射面から該導体層に達するま
でに吸収されなかった電磁波が、該導体層により反射さ
れて、再び電磁波吸収体を通過し、その過程で電磁波が
吸収されることになるため、電磁波をさらに効率よく吸
収することができる。
【0052】また、本発明(請求項8)の電磁波吸収体
の製造方法は、連続気孔を有する多孔質のセラミック焼
結体を形成した後、その一方の面(入射面となる面とは
反対側の面)から燻化処理を施すようにしているので、
炭素の存在割合が、入射面からその反対面(燻化処理
面)に向かって大きくなるように、連続気孔の内壁に炭
素膜を成膜させることが可能になり、本発明の電磁波吸
収体を効率よく製造することができる。
【0053】また、請求項9の電磁波吸収体の製造方法
は、上述の(a)〜(d)の各成分を混合し、焼成、発泡さ
せる工程を経てセラミック焼結体を形成するようにして
いるので、連続気孔を有する多孔質のセラミック焼結体
を効率よく、しかも確実に作成することが可能になり、
本発明をより実効あらしめることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施形態(実施形態1)にかかる電
磁波吸収体の概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の実施形態1にかかる電磁波吸収体を構
成するセラミック焼結体の断面図である。
【図3】本発明の実施形態1にかかる電磁波吸収体の製
造方法を説明するための図であり、(a)は配合原料の焼
成前の状態を概念的に示す図、(b)は焼成後のセラミッ
ク焼結体の一部を概念的に示す図である。
【図4】本発明の実施形態1にかかる電磁波吸収体を構
成するセラミック焼結体の製造方法を示す図である。
【図5】本発明の実施形態1にかかる電磁波吸収体の吸
収特性を測定する方法を示す図である。
【図6】本発明の実施形態1にかかる電磁波吸収体の電
磁波の吸収特性を示す線図である。
【図7】本発明の他の実施形態(実施形態2)にかかる
電磁波吸収体の構成を模式的に示す図である。
【符号の説明】
1 電磁波吸収体 1a 入射面 1b 入射面の反対面(反射面) 1c 電磁波吸収体の側面 2 導体層(反射面側炭素膜) 3 連続気孔 4 連続気孔の内壁 5 炭素 5a 炭素膜 10 セラミック焼結体 10a 第1層 10b 第2層 10c 第3層 11 有機粘結剤 12 無機粘結剤 13 発泡中空体 13a 焼成後の中空発泡体 14 セラミック原料 15 開口 21 試料支持台 22 放射ホーンアンテナ(送信アンテナ) 23 受信ホーンアンテナ(受信アンテナ) 31 電磁波吸収体 31a 炭素を含有させていないセラミック焼結層 31b 第1吸収層 31c 第2吸収層 32 銅板 θi 入射角
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 北澤 敏秀 滋賀県草津市若草7丁目7番12号 (72)発明者 宮代 雅夫 滋賀県甲賀郡信楽町長野498番地 滋賀 県工業技術総合センター 信楽窯業技術 試験場内 (72)発明者 冨増 佳晴 滋賀県甲賀郡信楽町柞原926番地 大塚 オーミ陶業株式会社内 (72)発明者 脇野 喜久男 京都府長岡京市天神二丁目26番10号 株 式会社村田製作所内 (56)参考文献 特開 平1−286974(JP,A) 特開 昭61−189699(JP,A) 特開 平8−213788(JP,A) 特開 平8−213789(JP,A) 特開 平11−354974(JP,A) 特開 平9−162590(JP,A) 特開 昭50−126143(JP,A) 特開 平5−101883(JP,A) 特開 昭59−227920(JP,A) 特開 平3−131091(JP,A) 特開 平6−6067(JP,A) 特公 昭45−25625(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) H05K 9/00 C04B 38/00 - 38/10 B32B 1/00 - 35/00

Claims (9)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】所定の面が電磁波の入射面となるように構
    成された電磁波吸収体であって、 (a)連続気孔を有する多孔質のセラミックからなり、 (b)前記連続気孔内に炭素が存在しているとともに、前
    記炭素の存在割合が、前記入射面からその反対面に向か
    って大きくなり、かつ、 (c)誘電損失が、入射面からその反対面に向かって大き
    くなるような傾斜構造を有していることを特徴とする電
    磁波吸収体。
  2. 【請求項2】前記連続気孔内の炭素の主要部が、前記反
    対面側から燻化処理(含炭素物質を不完全燃焼させるこ
    とにより生じた高温気体を、前記連続気孔の内壁などと
    接触させることにより接触面に炭素膜を生じさせる処
    理)を施すことにより、連続気孔の内壁に成膜された炭
    素膜であることを特徴とする請求項1記載の電磁波吸収
    体。
  3. 【請求項3】前記連続気孔による空隙率が、前記入射面
    からその反対面に向かって小さくなるような傾斜構造を
    有していることを特徴とする請求項1又は2記載の電磁
    波吸収体。
  4. 【請求項4】前記炭素の存在割合が異なる複数の層を積
    層することにより、炭素の存在割合を、前記入射面から
    その反対面に向かって段階的に大きくなるように傾斜さ
    せたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の
    電磁波吸収体。
  5. 【請求項5】前記炭素の存在割合及び前記連続気孔によ
    る空隙率が異なる複数の層を積層することにより、炭素
    の存在割合を、前記入射面からその反対面に向かって段
    階的に大きくなるように傾斜させ、空隙率を、前記入射
    面からその反対面に向かって段階的に小さくなるように
    傾斜させたことを特徴とする請求項1〜3のいずれかに
    記載の電磁波吸収体。
  6. 【請求項6】前記入射面側に、気孔内に炭素が導入され
    ていない、多孔質で誘電率の小さいセラミック層が接合
    され、該セラミック層の表面が入射面となっていること
    を特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載の電磁波吸
    収体。
  7. 【請求項7】前記反対面側に、電磁波の反射層として機
    能する導体層が配設されていることを特徴とする請求項
    1〜6のいずれかに記載の電磁波吸収体。
  8. 【請求項8】電磁波の入射面を備えた電磁波吸収体の製
    造方法であって、 (a)連続気孔を有する多孔質のセラミック焼結体を形成
    する工程と、 (b)前記セラミック焼結体の一方の面(入射面となる面
    とは反対側の面)から燻化処理を施すことにより、炭素
    の存在割合が、前記入射面からその反対面(燻化処理
    面)に向かって大きくなるように、前記連続気孔の内壁
    に炭素膜を成膜させる工程とを具備することを特徴とす
    る電磁波吸収体の製造方法。
  9. 【請求項9】前記連続気孔を有する多孔質のセラミック
    焼結体を形成する工程が、 (a)流紋岩、長石質岩石、貢石、粘板岩、真珠岩、黒曜
    岩及び膨張粘土からなる群から選ばれた少なくとも1種
    のセラミック原料100重量部、 (b)炭化珪素、二酸化マンガン及び酸化鉄からなる群か
    ら選ばれた少なくとも1種の発泡剤0.1〜5重量部、 (c)天然の軽石並びに人工的に加熱発泡させた黒曜石、
    真珠岩及び貢石から選ばれた少なくとも1種であって、
    粒度が5mm以下の発泡中空体10〜200重量部、 (d)有機粘結剤0.3〜3.5重量部、並びに無機粘結
    剤5〜20重量部の各成分を混合し、焼成、発泡させる
    ことにより、連続気孔を有する多孔質のセラミック焼結
    体を形成する工程であることを特徴とする請求項8記載
    の電磁波吸収体の製造方法。
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