JP3437379B2 - 液体吐出ヘッド、液体吐出方法および液体吐出装置 - Google Patents

液体吐出ヘッド、液体吐出方法および液体吐出装置

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    • B41J2/00Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed
    • B41J2/005Typewriters or selective printing mechanisms characterised by the printing or marking process for which they are designed characterised by bringing liquid or particles selectively into contact with a printing material
    • B41J2/01Ink jet
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  • Particle Formation And Scattering Control In Inkjet Printers (AREA)
  • Ink Jet (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、液体に熱エネルギ
ーを作用させることによって発生する気泡を利用して可
動部材を変位させ、かつ、その気泡の発生によって所望
の液体を吐出する液体吐出ヘッド、液体吐出方法、およ
び液体吐出装置に関するものである。
【0002】本発明は、紙、糸、繊維、布帛、皮革、金
属、プラスチック、ガラス、木材、セラミックス等のプ
リント媒体に対してのプリントを行うプリンター、複写
機、通信システムを有するファクシミリ、プリンタ部を
有するワードプロセッサ等の装置、さらには各種処理装
置と複合的に組み合わせた産業用記録装置に適用するこ
とができる。
【0003】なお、本発明における、「プリント」およ
び「記録」とは、文字や図形等の意味を持つ画像をプリ
ント媒体に対して付与することだけでなく、パターン等
の意味を持たない画像を付与することをも意味する。
【0004】
【従来の技術】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行なうインクジェット記録方法、いわ
ゆるバブルジェット記録方法が従来知られている。この
バブルジェット記録方法を用いる記録装置には、USP
4,723,129等の公報に開示されているように、
インクを吐出するための吐出口と、この吐出口に連通す
るインク流路と、インク流路内に配されたインクを吐出
するためのエネルギー発生手段としての電気熱変換体が
一般的に配されている。
【0005】この様な記録方法によれば、品位の高い画
像を高速、低騒音で記録することができると共に、この
記録方法を行うヘッドではインクを吐出するための吐出
口を高密度に配置することができるため、小型の装置で
高解像度の記録画像、さらにカラー画像をも容易に得る
ことができるという多くの優れた点を有している。この
ため、このバブルジェット記録方法は近年、プリンタ
ー、複写機、ファクシミリ等の多くのオフィス機器に利
用されており、さらに、捺染装置等の産業用システムに
まで利用されるようになってきている。
【0006】このようにバブルジェット技術が多方面の
製品に利用されるに従って、次のような様々な要求が近
年さらにたかまっている。
【0007】例えば、エネルギー効率の向上の要求に対
する検討としては、保護膜の厚さを調整するといった発
熱体の最適化が挙げられている。この手法は、発生した
熱の液体への伝搬効率を向上させる点で効果がある。
【0008】また、高画質な画像を得るために、インク
の吐出スピードが速く、安定した気泡発生に基づく良好
なインク吐出を行える液体吐出方法等を与えるための駆
動条件が提案されたり、また、高速記録の観点から、吐
出された液体の液流路内への充填(リフィル)速度の速
い液体吐出ヘッドを得るために流路形状を改良したもの
も提案されている。
【0009】この流路形状の内、流路構造として図32
(a),(b)に示すものが、特開昭63−19997
2号公報等に記載されている。この公報に記載されてい
る流路構造やヘッド製造方法は、気泡の発生に伴って発
生するバック波(吐出口へ向かう方向とは逆の方向へ向
かう圧力、即ち、液室12へ向かう圧力)に着目した発
明である。このバック波は、吐出方向へ向かうエネルギ
ーでないため損失エネルギーとして知られている。
【0010】図32(a),(b)に示す発明は、発熱
素子2が形成する気泡の発生領域よりも離れ且つ、発熱
素子2に関して吐出口11とは反対側に位置する弁10
を開示する。
【0011】図32(b)においては、この弁10は、
板材等を利用する製造方法によって、流路3の天井に貼
り付いたように初期位置を持ち、気泡の発生に伴って流
路3内へ垂れ下がるものとして開示されている。この発
明は、上述したバック波の一部を弁10によって制御す
ることでエネルギー損失を抑制するものとして開示され
ている。
【0012】しかしながら、この構成において、吐出す
べき液体を保持する流路3内部に、気泡が発生した際を
検討するとわかるように、弁10によるバック波の一部
を抑制することは、液体吐出にとっては実用的なもので
ないことがわかる。
【0013】もともとバック波自体は、前述したように
吐出に直接関係しないものである。このバック波が流路
3内に発生した時点では、図32(a)に示すように、
気泡のうち吐出に直接関係する圧力はすでに流路3から
液体を吐出可能状態にしている。従って、バック波のう
ち、しかもその一部を抑制したからといっても、吐出に
大きな影響を与えないことは明らかである。
【0014】他方、バブルジェット記録方法において
は、発熱体がインクに接した状態で加熱を繰り返すた
め、発熱体の表面にインクの焦げによる堆積物が発生す
るが、インクの種類によってはこの堆積物が多く発生す
ることで、気泡の発生を不安定にしてしまい、良好なイ
ンクの吐出を行うことが困難な場合があった。また、吐
出すべき液体が熱によって劣化しやすい液体の場合や十
分に発泡が得られにくい液体の場合においても、吐出す
べき液体を変質させず、良好に吐出するための方法が望
まれていた。
【0015】このような観点から、熱により気泡を発生
させる液体(発泡液)と吐出する液体(吐出液)とを別
液体とし、発泡による圧力を吐出液に伝達することで吐
出液を吐出する方法が、特開昭61−69467号公
報、特開昭55−81172号公報、USP4,48
0,259号等の公報に開示されている。これらの公報
では、吐出液であるインクと発泡液とをシリコンゴムな
どの可撓性膜で完全分離し、発熱体に吐出液が直接接し
ないようにすると共に、発泡液の発泡による圧力を可撓
性膜の変形によって吐出液に伝える構成をとっている。
このような構成によって、発熱体表面の堆積物の防止
や、吐出液体の選択自由度の向上等を達成している。
【0016】しかしながら、前述のように吐出液と発泡
液とを完全分離する構成のヘッドにおいては、発泡時の
圧力を可撓性膜の伸縮変形によって吐出液に伝える構成
であるため、発泡による圧力を可撓性膜がかなり吸収し
てしまう。また、可撓性膜の変形量もあまり大きくない
ため、吐出液と発泡液とを分離することによる効果を得
ることはできるものの、エネルギー効率や吐出力が低下
してしまう虞があった。
【0017】
【発明が解決しようとする課題】本発明者達の一部は、
先に、従来では考えられなかった観点から、気泡(特に
膜沸騰に伴う気泡)を液流路中に形成して液体を吐出す
る方式の根本的な吐出特性を、従来では予想できない水
準に高める技術を提案した(特願平1−4109号)。
【0018】すなわち、発明者達の一部は、液滴吐出の
原理に立ち返り、従来では得られなかった気泡を利用し
た新規な液滴吐出方法及びそれに用いられるヘッド等を
提供すべく鋭意研究を行った。このとき、流路中の可動
部材の機構の原理を解析すると言った液流路中の可動部
材の動作を起点とする第1技術解析、及び気泡による液
滴吐出原理を起点とする第2技術解析、さらには、気泡
形成用の発熱体の気泡形成領域を起点とする第3解析を
行った。
【0019】これらの解析によって、可動部材の支点と
自由端の配置関係を吐出口側つまり下流側に自由端が位
置する関係にすること、また可動部材を発熱体もしく
は、気泡発生領域に面して配することで積極的に気泡を
制御する全く新規な技術を確立するに至った。
【0020】つぎに、気泡自体が吐出量に与えるエネル
ギーを考慮すると、気泡の下流側の成長成分を考慮する
ことが吐出特性を格段に向上できる要因として最大であ
るとの知見に至った。つまり、気泡の下流側の成長成分
を吐出方向へ効率よく変換させることこそ吐出効率、吐
出速度の向上をもたらすことも判明した。このことか
ら、発明者らは気泡の下流側の成長成分を積極的に可動
部材の自由端側に移動させるという従来の技術水準に比
べ極めて高い技術水準に至った。
【0021】さらに、気泡を形成するための発熱領域、
例えば電気熱変換体の液体の流れ方向の面積中心を通る
中心線から下流側、あるいは、発泡を司る面における面
積中心等の気泡下流側の成長にかかわる可動部材や液流
路等の構造的要素を勘案することも好ましいということ
がわかった。
【0022】また、一方、可動部材の配置と液供給路の
構造を考慮することで、リフィル速度を大幅に向上する
ことができることがわかった。
【0023】本発明者達の一部は、このように研究で得
られた知見および、総合的観点から、優れた液体の吐出
原理を見い出すことによって、先の提案(特開平7−4
109号)を成すに至った。
【0024】本発明は、このような先の提案に関連して
成されたものであり、その目的は、可動部材を用いる新
規な吐出原理に基づく液体の吐出方式において、液体の
吐出量および吐出速度の一層の安定化と、液体の吐出量
の制御性の一層の向上を図ることにある。
【0025】
【課題を解決するための手段】本発明の液体吐出ヘッド
の第1の形態は、液体を吐出する吐出口と、液体に気泡
を発生させるために用いられる熱を発生する発熱体が配
された気泡発生領域と、前記発熱体と距離を隔てて前記
気泡発生領域に面して配され、第1の位置と該第1の位
置よりも前記気泡発生領域から遠い第2の位置との間を
変位可能な可動部材とを含む流路を有し、該可動部材
を、前記気泡発生領域での気泡の発生に基づく圧力によ
って、前記第1の位置から前記第2の位置へ変位させ、
前記可動部材の変位によって前記気泡を吐出口に向かう
方向の上流よりも下流に大きく膨張させることで液体を
吐出する液体吐出ヘッドであって、前記液体の温度を検
出する検出手段備え、前記発熱体より上流側の前記流
路の内壁面は、前記発熱体と実質的に平坦もしくはなだ
らかに繋がることを特徴とする。
【0026】本発明の液体吐出ヘッドの第2の形態は、
流路中に配された発熱体に沿って前記発熱体と実質的に
平坦もしくはなだらかに繋がる前記発熱体より上流側
前記流路の内壁面の上から前記発熱体の上へ液体を供給
し、供給された液体に前記発熱体発生した熱を作用さ
せることで気泡を生じさせ、該気泡の発生に基づく圧力
によって、前記発熱体と距離を隔てて前記発熱体と対向
するように配され前記液体の吐出口側に自由端を有す
る可動部材の自由端を変位させ、該可動部材の変位によ
って前記圧力を前記吐出口側に導くことで液体を吐出す
る液体吐出ヘッドであって、前記液体の温度を検出する
検出手段を備えたことを特徴とする。
【0027】本発明の液体吐出ヘッドの第3の形態は、
液体を吐出するための吐出口に連通する第1の液流路
と、前記液体に気泡を発生させるために用いられる熱を
発生する発熱体が配された気泡発生領域を有する第2の
液流路と、前記吐出口側に自由端を有し前記第1の液流
路と前記気泡発生領域との間に前記発熱体と距離を隔て
配された可動部材とを有し、前記気泡発生領域に気泡
を発生させ、該気泡の発生による圧力に基づいて前記可
動部材の自由端を前記第1の液流路側に変位させ、該可
動部材の変位によって前記圧力を前記第1の液流路の
吐出口側に導くことで液体を吐出する液体吐出ヘッド
であって、前記液体の温度を検出する検出手段備え、
前記発熱体より上流側の前記第2の液流路の内壁面は、
前記発熱体と実質的に平坦もしくはなだらかに繋がる
とを特徴とする。
【0028】本発明の液体吐出方法の第1の形態は、上
記第1から第3の形態のいずれかの液体吐出ヘッドを用
て液体を吐出する方法であって、前記検出手段の検出
結果に基づいて前記発熱体に供給する駆動パルスのパル
ス幅を制御することを特徴とする。
【0029】本発明の液体吐出方法の第2の形態は、液
体を吐出する吐出口と、液体に気泡を発生させるために
用いられる熱を発生する発熱体が配された気泡発生領域
と、前記発熱体と距離を隔てて前記気泡発生領域に面し
て配され、第1の位置と該第1の位置よりも前記気泡発
生領域から遠い第2の位置との間を変位可能な可動部材
を含む流路を有し、前記発熱体より上流側の前記流路
の内壁面が前記発熱体と実質的に平坦もしくはなだらか
に繋がる液体吐出ヘッドを用い液体吐出方法であっ
て、前記可動部材を、前記気泡発生領域での気泡の発生
に基づく圧力によって、前記第1の位置から前記第2の
位置へ変位させ、前記可動部材の変位によって前記気泡
を吐出口に向かう方向の上流よりも下流に大きく膨張さ
せることで液体を吐出する工程と、前記液体の吐出動作
の頻度に基づいて、前記液体の温度を推定する工程と
前記推定した温度に基づいて前記発熱体に供給する駆動
パルスのパルス幅を制御する工程と、を有したことを特
徴とする。
【0030】本発明の液体吐出方法の第3の形態は、流
路中に配された発熱体に沿って前記発熱体と実質的に平
坦もしくはなだらかに繋がる前記発熱体より上流側の前
記流路の内壁面の上から前記発熱体の上へ液体を供給
し、供給された液体に前記発熱体発生した熱を作用さ
せることで気泡を生じさせ、該気泡の発生に基づく圧力
によって、前記発熱体と距離を隔てて前記発熱体と対向
するように配され前記液体の吐出口側に自由端を有す
る可動部材の自由端を変位させ、該可動部材の変位によ
って前記圧力を前記吐出口側に導くことで液体を吐出す
る液体吐出ヘッドを用いた液体吐出方法であって、前記
液体の吐出動作の頻度に基づいて、前記液体の温度を推
する工程と、前記推定した温度に基づいて前記発熱体
に供給する駆動パルスのパルス幅を制御する工程と、を
有したことを特徴とする。
【0031】本発明の液体吐出方法の第4の形態は、
体を吐出するための吐出口に連通する第1の液流路と、
前記液体に気泡を発生させるために用いられる熱を発生
する発熱体が配された気泡発生領域を有する第2の液流
路と、前記吐出口側に自由端を有し前記第1の液流路と
前記気泡発生領域との間に前記発熱体と距離を隔てて
された可動部材とを有し、前記発熱体より上流側の前記
第2の液流路の内壁面が前記発熱体と実質的に平坦もし
くはなだらかに繋がる液体吐出ヘッドを用い液体吐出
方法であって、前記気泡発生領域に気泡を発生させ、該
気泡の発生による圧力に基づいて前記可動部材の自由端
を前記第1の液流路側に変位させ、該可動部材の変位に
よって前記圧力を前記第1の液流路の吐出口側に導くこ
とで液体を吐出する工程と、前記液体の吐出動作の頻度
に基づいて、前記液体の温度を推定する工程と、前記推
した温度に基づいて前記発熱体に供給する駆動パルス
のパルス幅を制御する工程と、を有したことを特徴とす
る。
【0032】本発明の液体吐出方法の第5の形態は、
体を吐出するための吐出口に連通する第1の液流路と、
前記液体に気泡を発生させるために用いられる熱を発生
する発熱体が配された気泡発生領域を有する第2の液流
路と、前記吐出口側に自由端を有し前記第1の液流路と
前記気泡発生領域との間に前記発熱体と距離を隔てて
された可動部材と、前記第1、第2の液流路のいずれか
一方における液体の温度を検出する検出手段とを有し、
前記発熱体より上流側の前記第2の液流路の内壁面が前
記発熱体と実質的に平坦もしくはなだらかに繋がる液体
吐出ヘッドを用い液体吐出方法であって、前記気泡発
生領域に気泡を発生させ、該気泡の発生による圧力に基
づいて前記可動部材の自由端を前記第1の液流路側に変
位させ、該可動部材の変位によって前記圧力を前記第1
の液流路の吐出口側に導くことで液体を吐出する工程
、前記検出した温度に基づいて、前記第1、第2の液
流路の他方における液体の温度を推定する工程と、前記
検出した温度と前記推定した温度に基づいて前記発熱体
に供給する駆動パルスのパルス幅を制御する工程と、を
有したことを特徴とする。
【0033】本発明の液体吐出装置の第1の形態は、上
記第1から第3の形態のいずれかの液体吐出ヘッドを用
て液体を吐出する装置であって、前記検出手段の検出
結果に基づいて前記発熱体に供給する駆動パルスのパル
ス幅を制御する制御手段を備えたことを特徴とする。
【0034】本発明の液体吐出装置の第2の形態は、液
体を吐出する吐出口と、液体に気泡を発生させるために
用いられる熱を発生する発熱体が配された気泡発生領域
と、前記発熱体と距離を隔てて前記気泡発生領域に面し
て配され、第1の位置と該第1の位置よりも前記気泡発
生領域から遠い第2の位置との間を変位可能な可動部材
とを含む流路を有し、前記発熱体より上流側の前記流路
の内壁面が前記発熱体と実質的に平坦もしくはなだらか
に繋がる液体吐出ヘッドを用い、該可動部材を、前記気
泡発生領域での気泡の発生に基づく圧力によって、前記
第1の位置から前記第2の位置へ変位させ、前記可動部
材の変位によって前記気泡を吐出口に向かう方向の上流
よりも下流に大きく膨張させることで液体を吐出する液
体吐出装置であって、前記液体の吐出動作の頻度に基づ
き、前記液体の温度を推定する推定手段と、前記推定手
段により推定した温度に基づいて前記発熱体に供給する
駆動パルスのパルス幅を制御する制御手段と、を備えた
ことを特徴とする。
【0035】本発明の液体吐出装置の第3の形態は、流
路中に配された発熱体に沿って前記発熱体と実質的に平
坦もしくはなだらかに繋がる前記発熱体より上流側の前
記流路の内壁面の上から前記発熱体の上へ液体を供給
し、供給された液体に前記発熱体発生した熱を作用さ
せることで気泡を生じさせ、該気泡の発生に基づく圧力
によって、前記発熱体と距離を隔てて前記発熱体と対向
するように配され前記液体の吐出口側に自由端を有す
る可動部材の自由端を変位させ、該可動部材の変位によ
って前記圧力を前記吐出口側に導くことで液体を吐出す
る液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装置であって、前記
液体の吐出動作の頻度に基づき、前記液体の温度を推定
する推定手段と、前記推定手段により推定した温度に基
づいて前記発熱体に供給する駆動パルスのパルス幅を制
御する制御手段と、を備えたことを特徴とする。
【0036】本発明の液体吐出装置の第4の形態は、液
体を吐出するための吐出口に連通する第1の液流路と、
前記液体に気泡を発生させるために用いられる熱を発生
する発熱体が配された気泡発生領域を有する第2の液流
路と、前記吐出口側に自由端を有し前記第1の液流路と
前記気泡発生領域との間に前記発熱体と距離を隔てて配
された可動部材とを有し、前記発熱体より上流側の前記
第2の液流路の内壁面が前記発熱体と実質的に平坦もし
くはなだらかに繋がる液体吐出ヘッドを用い、前記気泡
発生領域に気泡を発生させ、該気泡の発生による圧力に
基づいて前記可動部材の自由端を前記第1の液流路側に
変位させ、該可動部材の変位によって前記圧力を前記第
1の液流路の前記吐出口側に導くことで液体を吐出する
液体吐出装置であって、前記液体の吐出動作の頻度に基
づき、前記液体の温度を推定する推定手段と、前記推定
手段により推定した温度に基づいて前記発熱体に供給す
る駆動パルスのパルス幅を制御する制御手段と、を備え
たことを特徴とする。
【0037】本発明の液体吐出装置の第5の形態は、
体を吐出するための吐出口に連通する第1の液流路と、
前記液体に気泡を発生させるために用いられる熱を発生
する発熱体が配された気泡発生領域を有する第2の液流
路と、前記吐出口側に自由端を有し前記第1の液流路と
前記気泡発生領域との間に前記発熱体と距離を隔てて
された可動部材と、前記第1、第2の液流路のいずれか
一方における液体の温度を検出する検出手段とを有し、
前記発熱体より上流側の前記第2の液流路の内壁面が前
記発熱体と実質的に平坦もしくはなだらかに繋がる液体
吐出ヘッドを用い、前記気泡発生領域に気泡を発生さ
せ、該気泡の発生による圧力に基づいて前記可動部材の
自由端を前記第1の液流路側に変位させ、該可動部材の
変位によって前記圧力を前記第1の液流路の吐出口側に
導くことで液体を吐出する液体吐出装置であって、前記
検出手段により検出した温度に基づいて、前記第1、第
2の液流路の他方における液体の温度を推定する推定手
段と、前記検出手段により検出した温度と前記推定手段
により推定した温度に基づいて前記発熱体に供給する
動パルスのパルス幅を制御する制御手段と、を備えたこ
とを特徴とする。
【0038】なお、本発明の説明で用いる「上流」「下
流」とは、液体の供給源から気泡発生領域(又は可動部
材)を経て、吐出口へ向かう液体の流れ方向に関して、
又はこの構成上の方向に関しての表現として表されてい
る。
【0039】また、気泡自体に関する「下流側」とは、
主として液滴の吐出に直接作用するとされる気泡の吐出
口側部分を代表する。より具体的には気泡の中心に対し
て、上記流れ方向や上記構成上の方向に関する下流側、
又は、発熱体の面積中心より下流側の領域で発生する気
泡を意味する。
【0040】また、本発明の説明で用いる「実質的に密
閉」とは、気泡が成長するとき、可動部材が変位する前
に可動部材の周囲の隙間(スリット)から気泡がすり抜
けない程度の状態を意味する。
【0041】さらに、本発明でいう「分離壁」とは、広
義では気泡発生領域と吐出口に直接連通する領域とを区
分するように介在する壁(可動部材を含んでもよい)を
意味し、狭義では気泡発生領域を含む流路を吐出口に直
接連通する液流路とを区分し、それぞれの領域にある液
体の混合を防止するものを意味する。
【0042】
【発明の実施の形態】以下、図面を参照して、本発明の
実施形態を(液体吐出部の構成の形態)、(駆動方
式)、(液体の状態量に応じたPWM制御の形態)、お
よび(他の実施形態)に分けて詳細に説明する。
【0043】(液体吐出部の構成の形態1)まず、液体
を吐出するための気泡に基づく圧力の伝搬方向や気泡の
成長方向を制御することで、液体の吐出力や吐出効率の
向上を図る場合の例について説明する。
【0044】図1は、このような本実施形態の液体吐出
ヘッドを液流路方向で切断した断面模式図を示してお
り、図2は、この液体吐出ヘッドの部分破断斜視図を示
している。
【0045】本実施形態の液体吐出ヘッドは、液体を吐
出するための吐出エネルギー発生素子として、液体に熱
エネルギーを作用させる発熱体2(本実施形態において
は40μm×105μmの形状の発熱抵抗体)が素子基
板1に設けられており、この素子基板1上には、発熱体
2に対応して液流路10が配されている。液流路10
は、吐出口18に連通していると共に、複数の液流路1
0に液体を供給するための共通液室13に連通してお
り、吐出口18から吐出された液体に見合う量の液体を
この共通液室13から受け取る。
【0046】この液流路10における素子基板1上に
は、前述の発熱体2に対向するように面して、金属等の
弾性を有する材料で構成され、平面部を有する板状の可
動部材31が片持梁状に設けられている。この可動部材
31の一端は、液流路10の壁や素子基板1上に感光性
樹脂などをパターニングして形成した土台(支持部材)
34等に固定されている。これによって、可動部材31
は保持されると共に支点(支点部分)33を構成してい
る。
【0047】この可動部材31は、液体の吐出動作によ
って共通液室13から可動部材31を経て吐出口18側
へ流れる大きな流れの上流側に支点(支点部分;固定
端)33を持ち、この支点33に対して下流側に自由端
(自由端部分)32を持つように、発熱体2に面した位
置にて発熱体2を覆うような状態で発熱体2から15μ
m程度の距離を隔てて配されている。この発熱体2と可
動部材31との間が気泡発生領域11となる。なお発熱
体2、可動部材31の種類や形状および配置はこれに限
られることなく、後述するように気泡の成長や圧力の伝
搬を制御しうる形状および配置であればよい。なお、上
述した液流路10は、後に取り上げる液体の流れの説明
のために、可動部材31を境にして直接吐出口18に連
通している部分の第1の液流路14と、気泡発生領域1
1や液体供給路12を有する部分の第2の液流路16と
の2つの領域に分けて説明する。
【0048】発熱体2を発熱させることで可動部材31
と発熱体2との間の気泡発生領域11の液体に熱を作用
し、液体にUSP4,723,129に記載されている
ような膜沸騰現象に基づく気泡を発生させる。気泡の発
生に基づく圧力と気泡は可動部材31に優先的に作用
し、可動部材31は図1(b)、(c)もしくは図2で
示されるように支点33を中心に吐出口18側に大きく
開くように変位する。可動部材31の変位若しくは変位
した状態によって、気泡の発生に基づく圧力の伝搬や気
泡自身の成長が吐出口側に導かれる。
【0049】ここで、本発明における基本的な吐出原理
の一つを説明する。本発明において最も重要な原理の1
つは、気泡に対面するように配された可動部材31が気
泡の圧力あるいは気泡自体に基づいて、定常状態の第1
の位置から変位後の位置である第2の位置へ変位し、こ
の変位する可動部材31によって、気泡の発生に伴う圧
力や気泡自身を吐出口18が配された下流側へ導くこと
である。
【0050】この原理を、可動部材31を用いない従来
の液流路構造を模式的に示した図3と本発明の図4とを
比較してさらに詳しく説明する。なお、ここでは吐出口
18方向への圧力の伝搬方向をVA、上流側への圧力の
伝搬方向をVBとして示した。
【0051】図3で示されるような従来のヘッドにおい
ては、発生した気泡40による圧力の伝搬方向を規制す
る構成はない。このため気泡40の圧力伝搬方向はV1
〜V8のように気泡表面の垂線方向となり様々な方向を
向いていた。このうち、特に液吐出に最も影響を及ぼす
VA方向に圧力伝搬方向の成分を持つものは、V1〜V
4即ち気泡40のほぼ半分の位置より吐出口18に近い
部分の圧力伝搬の方向成分であり、液吐出効率、液吐出
力、吐出速度等に直接寄与する重要な部分である。さら
に、V1は吐出方向VAの方向に最も近いため効率よく
働き、逆にV4はVAに向かう方向成分は比較的少な
い。
【0052】これに対して、図4で示される本発明の場
合には、可動部材31が図3の場合のように様々な方向
を向いていた気泡40の圧力伝搬方向V1〜V4を下流
側(吐出口側)へ導き、VAの圧力伝搬方向に変換する
ものであり、これにより気泡40の圧力が直接的に効率
よく吐出に寄与することになる。そして、気泡40の成
長方向自体も圧力伝搬方向V1〜V4と同様に下流方向
に導かれ、上流より下流で大きく成長する。このよう
に、気泡40の成長方向自体を可動部材31によって制
御し、気泡40の圧力伝搬方向を制御することで、吐出
効率や吐出力また吐出速度等の根本的な向上を達成する
ことができる。
【0053】次に図1に戻って、本実施形態の液体吐出
ヘッドの吐出動作について詳しく説明する。
【0054】図1(a)は、発熱体2に電気エネルギー
等のエネルギーが印加される前の状態であり、発熱体2
が熱を発生する前の状態である。ここで重要なことは、
可動部材31が、発熱体2の発熱によって発生した気泡
40に対し、この気泡40の少なくとも下流側部分に対
面する位置に設けられていることである。つまり、気泡
40の下流側が可動部材31に作用するように、液流路
構造上では少なくとも発熱体2の面積中心3より下流
(発熱体2の面積中心3を通って流路の長さ方向に直交
する線より下流)の位置まで可動部材31が配されてい
る。
【0055】図1(b)は、発熱体2に電気エネルギー
等が印加されて発熱体2が発熱し、発生した熱によって
気泡発生領域11内を満たす液体の一部を加熱し、膜沸
騰に伴う気泡40を発生させた状態である。
【0056】このとき可動部材31は気泡40の発生に
基づく圧力により、気泡40の圧力の伝搬方向を吐出口
18方向に導くように第1位置から第2位置へ変位す
る。ここで重要なことは、前述したように、可動部材3
1の自由端32を下流側(吐出口側)に配置し、支点3
3を上流側(共通液室側)に位置するように配置して、
可動部材31の少なくとも一部を発熱体2の下流部分す
なわち気泡40の下流部分に対面させることである。
【0057】図1(c)は気泡40がさらに成長した状
態であるが、気泡40の発生に伴う圧力に応じて、可動
部材31はさらに変位している。発生した気泡40は、
上流より下流に大きく成長すると共に可動部材31の第
1の位置(点線位置)を越えて大きく成長している。こ
のように気泡40の成長に応じて可動部材31が徐々に
変位して行くことで、気泡40の圧力伝搬方向や堆積移
動のしやすい方向、すなわち自由端32側への気泡40
の成長方向を吐出口18に均一的に向かわせることがで
きることも吐出効率を高めると考えられる。可動部材3
1は、気泡40や発泡圧を吐出口18方向へ導く際もこ
の伝達の妨げになることはほとんどなく、伝搬する圧力
の大きさに応じて効率よく圧力の伝搬方向や気泡40の
成長方向を制御することができる。
【0058】図1(d)は気泡40が、前述した膜沸騰
の後、気泡内部圧力の減少によって収縮し、消滅する状
態を示している。
【0059】第2の位置まで変位していた可動部材31
は、気泡40の収縮による負圧と可動部材31自身のば
ね性による復元力によって図1(a)の初期位置(第1
の位置)に復帰する。また、消泡時には、気泡発生領域
11での気泡40の収縮体積を補うため、また吐出され
た液体の体積分を補うために、上流側(B)すなわち共
通液室13側から流れのVD1、VD2のように、また
吐出口18側から流れのVcのように液体が流れ込んで
くる。
【0060】以上、気泡40の発生に伴う可動部材31
の動作と液体の吐出動作について説明したが、以下に、
その液体吐出ヘッドにおける液体のリフィルについて詳
しく説明する。
【0061】図1を用いて、本発明における液供給メカ
ニズムをさらに詳しく説明する。
【0062】図1(c)の後、気泡40が最大体積の状
態を経て消泡過程に入ったときには、消泡した体積を補
う体積の液体が、第1液流路14の吐出口18側と第2
液流路16の共通液室側13から気泡発生領域11に流
れ込む。可動部材31を持たない従来の液流路構造にお
いては、消泡位置に吐出口側から流れ込む液体の量と共
通液室側から流れ込む液体の量は、気泡発生領域より吐
出口に近い部分と共通液室に近い部分との流抵抗の大き
さに起因する(流路抵抗と液体の慣性に基づくものであ
る)。
【0063】このため、吐出口に近い側の流抵抗が小さ
い場合には、多くの液体が吐出口側から消泡位置に流れ
込み、メニスカスの後退量が大きくなることになる。特
に、吐出効率を高めるために吐出口に近い側の流抵抗を
小さくして吐出効率を高めようとするほど、消泡時のメ
ニスカスMの後退が大きくなり、リフィル時間が長くな
って高速印字を妨げることとなっていた。
【0064】これに対して、本実施形態は可動部材31
を設けたため、気泡40の体積Wを可動部材31の第1
位置を境に上側をW1、気泡発生領域11側をW2とし
た場合、消泡時に可動部材31が元の位置に戻った時点
でメニスカスの後退は止まり、その後、残ったW2の体
積分の液体供給は主に第2流路16の流れVD2からの
液供給によって成される。これにより、従来、気泡Wの
体積の半分程度に対応した量がメニスカスの後退量にな
っていたのに対して、それより少ないW1の半分程度の
メニスカス後退量に抑えることが可能になった。
【0065】さらに、W2の体積分の液体供給は、消泡
時の圧力を利用して可動部材31の発熱体側の面に沿っ
て主に第2液流路の上流側(VD2)から強制的に行う
ことができるため、より速いリフィルを実現できた。
【0066】ここで特徴的なことは、従来のヘッドで消
泡時の圧力を用いたリフィルを行った場合、メニスカス
の振動が大きくなってしまい画像品位の劣化につながっ
ていたが、本実施形態の高速リフィルにおいては、可動
部材31によって、吐出口18側の第1液流路14の領
域と気泡発生領域11の吐出口側での液体の流通が抑制
されるため、メニスカスの振動を極めて少なくすること
ができることである。
【0067】このように本発明は、第2流路16の液供
給路12を介しての発泡領域への強制リフィルと、上述
したメニスカス後退や振動の抑制によって高速リフィル
を達成することで、吐出の安定や高速繰り返し吐出、ま
た記録の分野に用いた場合、画質の向上や高速記録を実
現することができる。
【0068】本発明の構成においては、さらに次のよう
な有効な機能を兼ね備えている。それは、気泡40の発
生による圧力の上流側への伝搬(バック波)を抑制する
ことである。発熱体2上で発生した気泡40の内、共通
液室13側(上流側)の気泡による圧力は、その多く
が、上流側に向かって液体を押し戻す力(バック波)に
なっていた。このバック波は、上流側の圧力と、それに
よる液移動量、そして液移動に伴う慣性力を引き起こ
し、これらは液体の液流路内へのリフィルを低下させ高
速駆動の妨げにもなっていた。本発明においては、まず
可動部材31によって上流側へのこれらの作用を抑える
ことでもリフィル供給性の向上をさらに図っている。
【0069】次に、本実施形態の更なる特徴的な構造と
効果について、以下に説明する。
【0070】本実施形態の第2液流路16は、発熱体2
の上流に発熱体2と実質的に平坦につながる(発熱体表
面が大きく落ち込んでいない)内壁を持つ液体供給路1
2を有している。このような場合、気泡発生領域11お
よび発熱体2の表面への液体の供給は、可動部材31の
気泡発生領域11に近い側の面に沿って、VD2のよう
に行われる。このため、発熱体2の表面上に液体が淀む
ことが抑制され、液体中に溶存していた気体の析出や、
消泡できずに残ったいわゆる残留気泡が除去され易く、
また、液体への蓄熱が高くなりすぎることもない。従っ
て、より安定した気泡の発生を高速に繰り返し行うこと
ができる。なお、本実施形態では、実質的に平坦な内壁
を持つ液体供給路12を有するものとして説明したが、
これに限らず、発熱体2の表面となだらかに繋がり、な
だらかな内壁を有する液供給路であればよく、発熱体2
上に液体の淀みや、液体の供給に大きな乱流を生じない
形状であればよい。
【0071】また、気泡発生領域11への液体の供給
は、可動部材31の側部(スリット35)を介してVD
1から行われるものもある。しかし、気泡発生時の圧力
をさらに有効に吐出口18に導くために、図1で示すよ
うに気泡発生領域11の全体を覆う(発熱体面を覆う)
ように大きな可動部材31を用い、可動部材31が第1
の位置へ復帰することで、気泡発生領域11と第1液流
路14の吐出口18に近い領域との液体の流抵抗が大き
くなるような形態の場合、前述のVD1から気泡発生領
域11に向かっての液体の流れが妨げられる。しかし、
本発明のヘッド構造においては、気泡発生領域11に液
体を供給するための流れVD1があるため、液体の供給
性能が非常に高くなり、可動部材31で気泡発生領域1
1を覆うような吐出効率向上を求めた構造を採っても、
液体の供給性能を落とすことがない。
【0072】ところで、可動部材31の自由端32と支
点33の位置は、例えば図5で示されるように、自由端
32が相対的に支点33より下流側にある。このような
構成のため、前述した発泡の際に、気泡40の圧力伝搬
方向や成長方向を吐出口18側に導く等の機能や効果を
効率よく実現できるのである。さらに、この位置関係は
吐出に対する機能や効果のみならず、液体の供給の際に
も液流路10を流れる液体に対する流抵抗を小さくしで
き高速にリフィルできるという効果を達成している。こ
れは図5に示すように、液体の吐出によって後退したメ
ニスカスMが毛管力により吐出口18へ復帰する際や、
消泡に対しての液供給が行われる場合に、液流路10
(第1液流路14、第2液流路16を含む)内を流れる
流れS1、S2、S3に対し、逆らわないように自由端
32と支点33とを配置しているためである。
【0073】補足すれば、本実施形態の図1において
は、前述のように可動部材31の自由端32が、発熱体
2を上流側領域と下流側領域とに2分する面積中心3
(発熱体2の面積中心(中央)を通り液流路の長さ方向
に直交する線)より下流側の位置に対向するように発熱
体2に対して延在している。これによって、発熱体2の
面積中心位置3より下流側で発生する液体の吐出に大き
く寄与する圧力、又は気泡40を可動部材31が受け、
この圧力及び気泡を吐出口18側に導くことができ、吐
出効率や吐出力を根本的に向上させることができる。
【0074】さらに、加えて上記気泡40の上流側をも
利用して多くの効果を得ている。
【0075】また、本実施形態の構成においては可動部
材31の自由端32が瞬間的な機械的変位を行っている
ことも、液体の吐出に対して有効に寄与している考えら
れる。
【0076】(液体吐出部の構成の形態2)図6に、本
発明における液体吐出部の構成の第2の実施形態を示
す。この図6において、Aは可動部材31が変位してい
る状態を示し(気泡は図示せず)、Bは可動部材31が
初期位置(第1位置)の状態を示し、このBの状態をも
って、気泡発生領域11を吐出口18に対して実質的に
密閉しているとする(ここでは、図示していないがA、
B間には流路壁があり流路と流路を分離している)。
【0077】図6における可動部材31は、側部に土台
34を2点設け、その間に液供給路12を設けている。
これにより、可動部材31の発熱体2側の面に沿って、
また発熱体2の面と実質的に平坦もしくはなだらかにつ
ながる面を持つ液供給路から、液体の供給を成すことが
できる。
【0078】ここで、可動部材31の初期位置(第1位
置)では、可動部材31は、発熱体2の下流側および横
方向に配された発熱体下流壁36と発熱体側壁37に近
接または密着しており、気泡発生領域11の吐出口18
側に実質的に密閉されている。このため、発泡時の気泡
の圧力、特に気泡の下流側の圧力を逃がさず可動部材3
1の自由端32側に集中的に作用させることができる。
【0079】また、消泡時には、可動部材31は第1位
置に戻り、発熱体2上への消泡時の液供給に際しては、
気泡発生領域11の吐出口18側が実質的に密閉状態に
なるため、メニスカスの後退抑制等、先の実施形態で説
明した種々の効果を得ることができる。また、リフィル
に関する効果においても先の実施形態と同様の機能、効
果を得ることができる。
【0080】また、本実施形態においては、図2や図6
のように、可動部材31を支持固定する土台34を発熱
体2より離れた上流に設けると共に、液流路10より小
さな幅の土台34とすることで、前述のような液供給路
12への液体の供給を行っている。また、土台34の形
状のこれに限らず、リフィルをスムースに行えるもので
あればよい。
【0081】なお、本実施形態においては可動部材31
と発熱体2の間隔を15μm程度としたが、気泡の発生
に基づく圧力が十分に可動部材31に伝わる範囲であれ
ばよい。
【0082】(液体吐出部の構成の形態3)図7は、本
発明の基本的な概念の一つを示すもので、本発明におけ
る液体吐出部の構成の第3の実施形態となる。図7は、
一つの液流路中の気泡発生領域、そこで発生する気泡お
よび可動部材との位置関係を示していると共に、液体吐
出方法やリフィル方法をより分かり易くした実施形態で
ある。
【0083】前述の実施形態の多くは、可動部材31の
自由端32に対して、発生する気泡40の圧力を集中し
て、急峻な可動部材31の移動と同時に気泡40の移動
を吐出口18側に集中させることを達成している。これ
に対して、本実施形態は、発生する気泡40の自由度を
与えながら、液体の吐出に直接作用する気泡40の吐出
口18側である気泡40の下流側部分を、可動部材31
の自由端32側で規制するものである。
【0084】構成上で説明すると、図7では、前述の図
2(第1実施形態)に比較すると、図2の素子基板1上
に設けられた気泡発生領域11の下流端に位置するバリ
ヤーとしての凸部(図の斜線部分)が本実施形態では設
けられていない。つまり、可動部材31の自由端領域お
よび両側端領域は、吐出口領域に対して気泡発生領域1
1を実質的に密閉せずに開放しており、この構成が本実
施形態である。
【0085】本実施形態では、気泡の液滴吐出に直接作
用する下流側部分の内、下流側先端部の気泡成長が許容
されているので、その圧力成分を吐出に有効に利用して
いる。加えて少なくともこの下流側部分の上方へ向かう
圧力(図3のVB、VB、VBの分力)を可動部材31
の自由端側部分が、この下流側先端部の気泡成長に加え
られるように作用するため吐出効率が上述した実施形態
と同様に向上する。前記実施形態に比較して本実施形態
は、発熱体2の駆動に対する応答性が優れている。
【0086】また、本実施形態は、構造上簡単であるた
め製造上の利点がある。
【0087】本実施形態の可動部材31の支点部は、可
動部材31の面部に対して小さい幅の1つの土台34に
固定されている。従って、消泡時の気泡発生領域11へ
の液体供給は、この土台34の両側を通って供給される
(図の矢印参照)。この土台34は、液体の供給性を確
保するものであればどのような構造でもよい。
【0088】液体の供給時におけるリフィルは、本実施
形態の場合には、可動部材31の存在によって、気泡の
消泡にともなって上方から気泡発生領域11へ流れ込む
液体の流れが制御されるので、従来の発熱体のみの気泡
発生構造に対して優れたものとなる。無論、これによっ
て、メニスカスの後退量を減じることもできる。
【0089】本第3実施形態の変形実施形態としては、
可動部材31の自由端32に対する両側端(一方でも
可)のみを気泡発生領域11に対して実質的に密閉状態
とすることが好ましいものとして挙げられる。この構成
によれば、可動部材31の側方へ向かう圧力をも先に説
明した気泡の吐出口側端部の成長に変更して利用するこ
とができるので、一層吐出効率が向上する。
【0090】(液体吐出部の構成の形態4)前述した機
械的変位による液体の吐出力をさらに向上させた例を本
実施形態で説明する。図8は、このようなヘッド構造の
横断面図である。図8においては、可動部材31の自由
端32の位置が発熱体2のさらに下流側に位置するよう
に、可動部材31が延在している実施形態を示してい
る。これによって、自由端32位置での可動部材31の
変位速度を高くすることができ、可動部材31の変位に
よる吐出力の発生をさらに向上させることができる。
【0091】また、自由端32が先の実施形態に比較し
て吐出口18側に近づくことになるので、気泡40の成
長をより安定した方向成分に集中させて、より優れた吐
出を行うことができる。
【0092】また、気泡40の圧力中心部の気泡成長速
度に応じて、可動部材31は変位速度R1で変位する
が、この位置より支点33に対して、遠い位置の自由端
32はさらに速い速度R2で変位する。これにより、自
由端32を高い速度で機械的に液体に作用せしめて液移
動を起こさせることで吐出効率を高めている。
【0093】また、自由端32の形状は、図7と同じよ
うに液流れに対して垂直な形状とすることにより、気泡
40の圧力や可動部材31の機械的な作用をより効率的
に吐出に寄与させることができる。
【0094】(液体吐出部の構成の形態5)図9
(a)、(b)、(c)は、本発明における液体吐出部
の構成の第5実施形態である。
【0095】本実施形態の構造は先の実施形態と異な
り、吐出口18と直接連通する領域は液室13側と連通
した流路形状となっておらず、構造の簡略化が図れるも
のである。
【0096】液供給は全て、可動部材31の気泡発生領
域11側の面に沿った液供給路12からのみ行われるも
ので、可動部材31の自由端32や支点33の吐出口1
8に対する位置関係や発熱体2に面する構成は前述の実
施形態と同様である。
【0097】本実施形態は、吐出効率や液供給性等、前
述した効果を実現するものであるが、特にメニスカスの
後退を抑制し、ほとんど全ての液供給を消泡時の圧力を
利用して強制リフィルを行うものである。
【0098】図9(a)は、発熱体2により液体を発泡
させた状態を示しており、図9(b)は、気泡40が収
縮しつつある状態を示し、このとき可動部材31の初期
位置への復帰とS3による液供給が行われる。
【0099】図9(c)では、可動部材31が初期位置
に復帰する際のわずかなメニスカス後退Mを、消泡後に
吐出口18付近の毛細管力によって、リフィルしている
状態である。
【0100】(液体吐出部の構成の形態6)次に、本発
明における液体吐出部の構成の第6実施形態について説
明する。
【0101】本実施形態においても主たる液体の吐出原
理については先の実施形態と同じであるが、本実施形態
においては液流路を複流路構成にすることで、熱を加え
ることで発泡させる液体(発泡液)と、主として吐出さ
れる液体(吐出液)とを分けることができるものであ
る。
【0102】図10は、本実施形態の液体吐出ヘッドの
流路方向の断面模式図を示しており、図11はこの液体
吐出ヘッドの部分破断斜視図を示している。
【0103】本実施形態の液体吐出ヘッドは、液体に気
泡を発生させるための熱エネルギーを与える発熱体2が
設けられた素子基板1上に、発泡用の第2液流路16が
あり、その上に吐出口18に直接連通した吐出液用の第
1液流路14が配されている。
【0104】第1液流路14の上流側は、複数の第1液
流路14に吐出液を供給するための第1共通液室15に
連通しており、第2液流路16の上流側は、複数の第2
液流路16に発泡液を供給するための第2共通液室に連
通している。
【0105】但し、発泡液と吐出液を同じ液体とする場
合には、共通液室を一つにして共通化させてもよい。
【0106】第1と第2の液流路14、16の間には、
金属等の弾性を有する材料で構成された分離壁30が配
されており、第1液流路14と第2の液流路16とを区
分している。なお、発泡液と吐出液とができる限り混ざ
り合わない方がよい液体の場合には、この分離壁30に
よってできる限り完全に第1液流路14と第2液流路1
6の液体の流通を分離した方がよいが、発泡液と吐出液
とがある程度混ざり合っても問題がない場合には、分離
壁30に完全分離の機能を持たせなくてもよい。
【0107】発熱体2の面方向上方への投影空間(以
下、吐出圧発生領域という。;図10中のAの領域とB
の気泡発生領域11)に位置する部分の分離壁30は、
スリット35によって吐出口側(液体の流れの下流側)
が自由端となりかつ共通液室(15、17)側に支点3
3が位置する片持梁形状の可動部材31となっている。
この可動部材31は、気泡発生領域11(B)に面して
配されているため、発泡液の発泡によって第1液流路1
4の吐出口18側に向けて開口するように動作する(図
中矢印方向)。図11においても、発熱体2としての発
熱抵抗部と、この発熱抵抗部に電気信号を印加するため
の配線電極5とが配された素子基板1上に、第2の液流
路16を構成する空間を介して分離壁30が配置されて
いる。
【0108】可動部材31の支点33、自由端32の配
置と、発熱体2との配置の関係については、先の実施形
態と同様にしている。
【0109】また、先の実施形態で液供給路12と発熱
体2との構造の関係について説明したが、本実施形態に
おいても第2液流路16と発熱体2との構造の関係を同
じくしている。
【0110】次に図12を用いて本実施形態の液体吐出
ヘッドの動作を説明する。
【0111】ヘッドを駆動させるにあたっては、第1液
流路14に供給される吐出液と第2の液流路16に供給
される発泡液として同じ水系のインクを用いて動作させ
た。発熱体2が発生した熱が、第2液流路16の気泡発
生領域11内の発泡液に作用することで、先の実施形態
で説明したのと同様に、発泡液にUSP4,723,1
29に記載されているような膜沸騰現象に基づく気泡4
0を発生させる。
【0112】本実施形態においては、気泡発生領域11
の上流側を除く、3方からの発泡圧の逃げがないため、
この気泡発生にともなう圧力が吐出圧発生部に配された
可動部材6側に集中して伝搬し、気泡40の成長をとも
なって可動部材6が図12(a)の状態から図12
(b)のように第1液流路14側に変位する。この可動
部材31の動作によって第1液流路14と第2液流路1
6とが大きく連通し、気泡40の発生に基づく圧力が第
1液流路14の吐出口18側の方向(A方向)に主に伝
わる。この圧力の伝搬と、前述のような可動部材31の
機械的変位によって液体が吐出口18から吐出される。
【0113】次に、気泡40が収縮するに伴って可動部
材31が図12(a)の位置まで戻ると共に、第1液流
路14では、吐出された吐出液体の量に見合う量の吐出
液体が上流側から供給される。本実施形態においても、
この吐出液体の供給は前述の実施形態と同様に可動部材
31が閉じる方向であるため、吐出液体のリフィルを可
動部材31で妨げることがない。
【0114】本実施形態は、可動部材31の変位に伴う
発泡圧力の伝搬、気泡40の成長方向、バック波の防止
等に関する主要部分の作用や効果については先の第1実
施形態等と同じであるが、本実施形態のような2流路構
成をとることによって、さらに次のような長所がある。
【0115】すなわち、上述の実施形態の構成による
と、吐出液と発泡液とを別液体とし、発泡液の発泡で生
じた圧力によって吐出液を吐出することができる。この
ため従来、熱を加えても発泡が十分に行われにくく吐出
力が不十分であったポリエチレングリコール等の高粘度
の液体であっても、この液体を第1の液流路14に供給
し、発泡液に発泡が良好に行われる液体(エタノール:
水=4:6の混合液1〜2cP程度等)や低沸点の液体
を第2の液流路16に供給することで良好に吐出させる
ことができる。
【0116】また、発泡液として、熱を受けても発熱体
2の表面にコゲ等の堆積物を生じない液体を選択するこ
とで、発泡を安定化し、良好な吐出を行うことができ
る。
【0117】さらに、本実施形態のヘッドの構造におい
ては先の実施形態で説明したような効果をも生じるた
め、さらに高吐出効率、高吐出力で高粘性液体等の液体
を吐出することができる。
【0118】また、加熱に弱い液体の場合においてもこ
の液体を第1の液流路14に吐出液として供給し、第2
の液流路16で熱的に変質しにくく良好に発泡を生じる
液体を供給すれば、加熱に弱い液体に熱的な害を与える
ことなく、しかも上述のように高吐出効率、高吐出力で
吐出することができる。
【0119】(駆動方式)次に、上述した各実施形態の
液体吐出ヘッドの駆動方式として採用した分割パルスの
パルス幅変調およびこれによる吐出量制御の概略を説明
する。以下においては、液体吐出ヘッドとして、インク
を吐出するインクジェットプリントヘッド(以下、「イ
ンクジェット記録ヘッド」または「記録ヘッド」ともい
う)を例にして説明する。
【0120】図33は、本実施形態における分割パルス
を説明するための図である。
【0121】図33において、VOPは駆動電圧、P1
複数の分割されたヒートパルス(駆動パルス)の最初の
パルス(以下、「プレヒートパルス」という)のパルス
幅、P2 はインターバルタイム、P3 は2番目のパルス
(以下、「メインヒートパルス」という)のパルス幅で
ある。T1 ,T2 ,T3 はP1 ,P2 ,P3 を決めるた
めの時間を示している。駆動電圧VOPは、この電圧を印
加される電気熱変換体としての発熱体2がインクに気泡
40を発生させるために必要な電気エネルギーを示すも
のの一つであり、その値は発熱体2の面積,抵抗値,膜
構造や記録ヘッドの液路構造によって決まる。分割パル
ス幅変調駆動法は、P1 ,P2 ,P3 の幅で順次パルス
を与えるものであり、プレヒートパルスは、主に液路内
のインク温度を制御するためのパルスであり、本実施例
の吐出量制御の重要な役割を荷っている。このプレヒー
トパルスのパルス幅P1 は、その印加によって発熱体2
が発生する熱エネルギーによって、吐出対象の液体とし
てのインク中に発泡現象が生じないような値に設定され
る。
【0122】インターバルタイムP2 は、プレヒートパ
ルスとメインヒートパルスが相互干渉しないように一定
時間の間隔を設けるため、およびインク液路内のインク
の温度分布を均一化するために設けられる。メインヒー
トパルスは液路内のインク中に発泡を生ぜしめ、吐出口
18よりインクを吐出させるためのものであり、その幅
3 は発熱体2の面積,抵抗値,膜構造や記録ヘッドの
インク液路の構造によって決まる。
【0123】図34は、インクの吐出量のプレヒートパ
ルス依存性を示す線図であり、図において、V0 はP1
=0[μsec]のときの吐出量を示し、この値はヘッ
ド構造によって定まる。因に、本例でのV0 は、環境温
度TR =25℃の場合でV0=18.0[ng/do
t]であった。
【0124】図34の曲線aに示されるように、プレヒ
ートパルスのパルス幅P1 の増加に応じて、吐出量Vd
は、パルス幅P1 が0からP1LMTまで線形性を有して増
加し、パルス幅P1 がP1LMTより大きい範囲ではその変
化が線形性を失い、パルス幅P1MAXで飽和し最大とな
る。
【0125】このように、パルス幅P1 の変化に対する
吐出量Vd の変化が線形性を示すパルス幅P1LMTまでの
範囲は、パルス幅P1 を変化させることによる吐出量の
制御を容易に行える範囲として有効である。因に、曲線
aに示す本例ではP1LMT=1.87(μs)であり、こ
のときの吐出量はVLMT =24.0[ng/dot]で
あった。また、吐出量Vd が飽和状態となるときのパル
ス幅P1MAXは、P1MAX=2.1[μs]であり、このと
きの吐出量VMAx =25.5[ng/dot]であっ
た。
【0126】プレヒートパルスのパルス幅P1 がP1MAX
より大きい場合、吐出量Vd はVMAX より小さくなる。
この現象は上記範囲のパルス幅を有するプレヒートパル
スが印加されると発熱体2上に微小な発泡(膜沸騰の直
前状態)を生じ、この気泡が消泡する前に次のメインヒ
ートパルスが印加され、上記微小気泡がメインヒートパ
ルスによる発泡を乱すことによって吐出量が小さくな
る。この領域をプレ発泡領域と呼び、この領域ではプレ
ヒートパルスを媒介にした吐出量制御は困難なものとな
る。
【0127】図34に示すP1 =0〜P1LMT[μs]の
範囲の吐出量とパルス幅との関係を示す直線の傾きをプ
レヒートパルス依存係数と定義すると、プレヒートパル
ス依存係数:
【0128】
【数1】
【0129】となる。この係数KP は温度によらずヘッ
ド構造・駆動条件・インク物性等によって定まる。すな
わち、図34中曲線b,cは他の記録ヘッドの場合を示
しており、記録ヘッドが異なるとその吐出特性が変化す
ることが解かる。このように、記録ヘッドが異なると、
プレヒートパルスのパルス幅P1 の上限値P1LMTが異な
るため、後述されるように記録ヘッド毎の上限値P1LMT
を定めて、吐出量制御を行う。因に、本例の曲線aで示
される記録ヘッドおよびインクにおいてはKP =3.2
09[ng/μsec・dot]であった。
【0130】また、インクジェット記録ヘッドの吐出量
を決定する別の要因として、記録ヘッドの温度(インク
温度)がある。
【0131】図35は吐出量の温度依存性を示す線図で
ある。図35の曲線aに示すように、記録ヘッドの環境
温度TR (=ヘッド温度TH )の増加に対して吐出量V
d は直線的に増加する。この直線の傾きを温度依存係数
と定義すると、温度依存係数:
【0132】
【数2】
【0133】となる。この係数KT は駆動条件にはよら
ず、ヘッドの構造・インク物性等によって定まる。図3
5においても他の記録ヘッドの場合を曲線b,cに示
す。因に、本例の記録ヘッドにおいてはKT =0.3
[ng/℃・dot]であった。
【0134】結局、プレヒートパルスのパルス幅をPW
M(Pulse width modulation)制御することにより、イン
クの吐出量を積極的に調整してプリントの階調性を向上
させたり、またインクの吐出量を安定化させることが可
能となる。
【0135】例えば、プレヒートパルスは、液体を吐出
させない程度に予熱させるべく発熱体2を発熱させるこ
とになるため、可動部材31の作動環境が改善されて、
液体の吐出量および吐出速度が安定化することになる。
すなわち、プレパルスによって気泡発生領域11におけ
る液体が予熱されて、その粘性が低下し、可動部材31
に伝わる圧力の伝達効率のよい環境がつくられる。した
がって、メインヒートパルスが加えられたときの可動部
材31の所期始動が確実かつ効率よく行われて、その可
動部材31の信頼性が向上し、結果的に、液体の吐出条
件が改善されることになる。また、このような液体の吐
出状態の改善を液体の吐出時にのみ行うため、連続して
液体を吐出させる際にも、所望の吐出状態(インクを吐
出して画像をプリントする場合には、画像の階調性など
を確保するための吐出状態)を確実に得ることができ
る。
【0136】ところで、プレヒートパルスのパルス幅
は、後述するように、ヘッドに備えたダイオード等の温
度センサの検出温度に基づいてPWM制御することがで
きる。その場合、温度センサと発熱体2との位置関係の
ために生じる両者の温度差や吐出口18に応じて、温度
センサの検出温度に重み付けすることが好ましい。ま
た、可動部材31を金属製または熱伝導性のよい部材と
することにより、吐出液体への予熱がスムーズに行われ
る。また、その可動部材31に、プレヒートパルスのた
めまたは液体の連続吐出等のために加熱された発熱体2
近傍の液体の熱を吸収させることもできる。この結果、
発熱体2の近傍の液体の熱を均一化でき、例えば、ヘッ
ドに備えた温度センサの検出温度と、発熱体2の温度と
の差を小さく抑えて、プレヒートパルスのPWM制御の
精度を上げることもできる。
【0137】発熱体2に加える駆動パルスの具体例に説
明する。
【0138】図36(a)のノズル構造において、図3
6(a)、(b)のように駆動パルスのパルス幅t1,
t2,t3を以下のように設定した。
【0139】1μsec≦t1≦1.4μsec 1.5μsec≦t2≦3μsec 3μsec<t3≦8μsec(好ましくは、5μse
c≦t3≦8μsec) このような設定条件において、駆動パルスの形状に応じ
た吐出量の制御ができて、インクによるプリント画像の
多階調表現が実現できた。
【0140】また、プレヒートパルスを1.5μsec
≦t1≦1.8μsec程度の長めに設定して、発熱体
2近傍の液体の温度をある程度上昇させることにより、
液体の10ng程度以下の範囲での吐出量の制御が可能
となった。
【0141】ところで、液体の吐出量を補正すべく、ヘ
ッドの温度に応じてプレヒートパルスのパルス幅を制御
する場合、プリント媒体によっては、その制御内容を変
更することが好ましい。例えば、透明または半透明のO
HP用紙に液体としてのインクを吐出して、印字等のプ
リントをするときは、吐出量のばらつきを補正すること
も重要であるが、高濃度でプリントすることが必要であ
る場合が多い。このため、OHP用紙にプリントを行う
ときは、記録ヘッドの温度に応じたPWM制御を行わ
ず、P3 のパルス幅を固定する。このときP1 のパルス
幅を可能なかぎり長くすることにより、吐出量を多く
し、高濃度印字を実現する。
【0142】図37は、このようなOHP用紙対応のヘ
ッド駆動制御を説明するためのブロック図であり、図3
8は、この構成における各信号のタイミングチャートで
ある。
【0143】ヘッド駆動信号波形のパターンは、予めR
OM803に格納されている。まず、ヘッド駆動信号の
出力タイミングで、記録装置のコントローラ内に構成さ
れるカウンタ800Cにクロックが与えられ、このクロ
ックが入力するごとにカウンタの出力が“1”だけイン
クリメントされる。これにより、このカウンタ出力をア
ドレスとしてROM803の内容が出力されてヘッド駆
動信号となる。
【0144】このヘッド駆動信号は、各温度に対応して
プレヒートパルスのパルス幅P1 が格納されたPWM制
御テーブルのいずれを選択するかによって出力される。
すなわち、図38に示されるように、選択されるテーブ
ルに応じた波形のヘッド駆動信号が出力される。どのヘ
ッド駆動信号テーブルを選択するかは、ROM803に
入力するPWM制御テーブル選択信号によって決定され
るが、OHP用紙選択信号が“H”のときは、ORゲー
ト800Aにより、ROM803へのPWMテーブル選
択信号の全入力信号がHとなり、PWMテーブル選択信
号に関係なくテーブルAN+α−1のテーブルが選択さ
れ、図38の最上位に示されるプレヒートパルスのパル
ス幅P1 が最大で固定値となる。具体的には、P1
2.618μsecでP3 =4.114μsecとし
た。
【0145】また、図38には、印字ON信号が“H”
で印字をするときのヘッド駆動信号について記載してい
るが、印字ON信号が“L”(印字しない)の時は、図
38に示すヘッド駆動信号はパルスP3 の区別が“L”
レベルになる。
【0146】本実施例では、プレヒートパルスのパルス
幅P1 をMAXで固定した状態のみで吐出量アップを実
現しているが、ヘッドの温調温度を通常より上げて、さ
らに吐出量アップをしてもよい。具体的には、温調温度
を通常の25℃から40℃に上げる。これ以上の温度に
すると、印字中の昇温が約15℃程度ある場合があるの
で、記録ヘッドの限界温度TLIMIT =60℃に近づき好
ましくない。
【0147】なお、上述した駆動制御は、例えば紙種検
出時にOHPモードであると判別した場合にOHPモー
ドの処理に移行することによって行われる。
【0148】次に、図39ないし図41を用いて、ヘッ
ド駆動制御の他の実施例を説明する。
【0149】図39において印字データとしての画像信
号は、RAM805に格納される。画像信号がRAM8
05に格納された時点で、CPU800は画像データを
シフトレジスタ800Rにセットし、ヘッド駆動信号を
発生するようにするが、詳細について図41のフローチ
ャートをもとに説明する。
【0150】図41において、ステップS1で、CPU
800はRAM805より画像データを1画素分読みだ
し、ステップS2へ進む。ステップS2においては、上
記読みだした1画素分のデータが印字する値か否か、つ
まりインク吐出を行うか否かを判断し、印字するとき
は、ステップS3へ進み、印字しないときはステップS
9へ進む。
【0151】ステップS3においては、メインパルスの
幅P3 の区間が“H”であることをCPU800のレジ
スタ12に記憶し、ステップS4へ進む。ステップS4
においては、PWM選択信号を読み込み、プレヒートパ
ルスの“H”レベルの幅P1をCPU800のレジスタ
12に記憶してステップS5へ進む。ステップS5にお
いては、OHP選択信号を読み込み、OHP用紙に印字
モードである場合はステップS6へ進み、OHP用紙以
外に印字するモードであるときはステップS7へ進む。
【0152】ステップS6においては、ステップS4で
定めたプレヒートパルスのHレベルの幅P1 を設定でき
る最大幅に変更し、CPU800のレジスタに記憶し、
ステップS7へ進む。ステップS7においては、CPU
800のレジスタに記憶してあるプレヒートパルスのパ
ルス幅P1 とメインパルスのパルス幅P3 の情報よりヘ
ッド駆動信号を作成し、シフトレジスタ800Rに格納
し、ステップS8へ進む。シフトレジスタ800Rに格
納されたヘッド駆動信号は、クロックに同期してシフト
レジスタ800Rから出力される。
【0153】ステップS8においては、RAM805に
記憶されている画像データを全て出力したかを判断し、
全て出力した時は本処理を終了し、全て出力していない
時はステップS1へ戻る。
【0154】なお、図42は、前述したPWM制御にお
いて選択可能な駆動パルスを示す波形図である。
【0155】本発明の実施例にかかるOHP用紙のよう
な光透過部を有する記録媒体以外の一般的な記録紙を用
いる場合、PWM制御においては図42の1〜11に示
す波形を検出温度等に応じて選択する。
【0156】これに対して、上述した本発明の実施例で
は、OHP用紙に記録を行う場合、図42の1で示され
るパルスのみを用いるような制御を行った。
【0157】図42の1〜11のPWM制御において
は、P1 およびP2 を各々可変することで液体の吐出量
を可変制御しているが、図42の1と1′のパルス波形
のように、インターバルP2 の幅を変化させることでも
液体の吐出量を可変制御することもできる。この場合、
図42の1′のようにインターバル時間を長く設定する
ことにより、プレヒートによる熱が気泡発生領域11や
可動部材31へ十分に伝達し、発泡を大きくして液体の
吐出量を増大させる効果が高められる。
【0158】また、これら図42の1〜11および1′
のPWM制御の際、可動部材31があることで、大きく
なった気泡はより吐出口方向へ導かれることにより、従
来の可動部材がない場合に比較して、PWM制御による
液体の吐出量の増加率が高まる。
【0159】図43は、発熱体2に印加するパルス波形
と液体の吐出状態との関係の説明図である。この図は、
図1(c)に対応する状態であり、各部の符号も同様で
ある。図43(a)は、図42の1のパルス波形を発熱
体2に印加した場合の液吐出状態であり、図43(b)
は、図42の1′のパルス波形を発熱体2に印加した場
合である。図43(a)においても、発生した気泡40
は吐出口方向に効率よく導かれているが、図43(b)
のように、前述したような熱の十分な伝達によって気泡
40が増大した場合には、可動部材31の変位の増大よ
り、むしろ吐出口方向への気泡40の成長が顕著とな
り、より吐出量は大きくなる。これは、気泡40の移動
が、可動部材31のバネ応力に対する方向よりも抵抗が
少ない吐出口方向への成分が主となるためである。した
がって、可動部材31を備えない従来の液吐出ヘッドに
比べ、本発明のように可動部材31を備えた液体ヘッド
を用い、さらにプレヒートパルスとメインパルスとの間
のインターバルP2 の幅を制御することにより、図44
中のAのように、液体の吐出量の変化率が従来の場合の
Bに比して大きくでき、吐出量の制御性が向上すること
になる。また、プレヒートパルスの幅P1 を制御するこ
とによっても、液体の吐出量の変化率が同様に大きくな
って、吐出量の制御性が向上することになる。
【0160】(液体の状態量に応じたPWM制御の形態
1)本発明における「液体の状態量」とは、液体の吐出
量に影響する液体の温度、粘度、表面張力等の物理量を
含む。また、液体がインクの場合には、そのインク特性
も含み、そのインクの種類に応じて後述するようなPW
M制御することも可能である。
【0161】本例の場合は、素子基板1上の温度センサ
S1によって第2の液流路16内の液体(以下、「発泡
液」ともいう)の温度T2を検出し、その検出温度T2
から、第1の液流路14内の液体(以下、「記録液」と
もいう)の温度T1を推定し、その推定温度T1、検出
温度T2、またはそれらの温度差に基づいて、前述した
図33のプレヒートパルスのパルス幅P1をPWM制御
する。その際には、温度に関係する記録液の粘度ρ1、
および記録液の表面張力η1などを考慮することが好ま
しい。
【0162】図46は、図45中のZ軸線上における温
度分布を示す。この図46は、素子基板1中の温度分
布、および発泡液と記録液中の温度分布は無視してモデ
ル化したものである。この図においては、温度センサS
1の検出温度を素子基板1の温度T3とし、この検出温
度T3から、発泡液の温度T2と、記録液の温度T1を
推定するものとする(T3≧T2≧T1)。
【0163】図47は、液体の吐出量Vdを一定の制御
幅±△Vに維持するように、プレヒートパルスのパルス
幅P1を段階的に変更する場合の制御例を示す。本例の
場合は、記録液温度T1、発泡液温度T2、それらの温
度差のいずれかを液体温度THとし、その液体温度TH
がT0からTLの範囲において、その液体温度THに応
じてテーブル番号1から11を選択することによって、
プレヒートパルスのパルス幅P1を段階的に変更する。
テーブル番号1から11には、前述した図42の1から
10のように、その順序でプレヒートパルスのパルス幅
P1が小さく設定されている。T0は、例えば25℃に
設定されており、この温度以下の時は、25℃を目標温
度としてヘッドを温度調整する。液体温度THがTL以
上の温度範囲は、ヘッドによる通常プリントの範囲外で
あってあまり使用されない範囲であるが、例えば、ヘッ
ドが100%デューティーでプリントをした場合に、こ
の温度範囲まで昇温することがあり、このような場合に
備え、この領域では、P1=0(マイクロsec)とし
てメインヒートパルスのシングルパルスのみでプリント
するようにして、自己昇温を極力防止する。必要に応じ
て、そのシングルパルスをPWM制御し、昇温を防止す
ることもできる。TCはヘッドの使用限界温度を示して
いる。
【0164】図48は、液体温度と液体粘度との関係を
示し、比較的低粘度ρAの液体と比較的高粘度の液体ρ
Aの温度TAにおける粘度をρA(TA)、ρB(T
A)とし、それらの温度TB(>TA)における粘度を
ρA(TB)、ρB(TB)としている。
【0165】また、液体の表面張力が液体の吐出量に影
響を与えることもあり、例えば、液体の表面張力と吐出
量とが図49の関係となる場合もある。この図49は、
同一の吐出条件下において、超浸透インクなどのような
表面張力の小さい液体Aの吐出量が多くなり、またイン
クの吐出に前後してプリント媒体に吐出される処理液の
ような表面張力の大きな液体Bの吐出量が少なくなる場
合の例を示す。
【0166】以下、温度T1,T2に基づく具体的なP
WM制御について説明する。そのPWM制御において
は、プレヒートパルスのパルス幅P1、インターバルタ
イムP2、またはメインヒートパルスのパルス幅P3の
いずれか1つを制御対象としたり、それらを組み合わせ
るようにして関連的にPWM制御することができる。以
下においては、プレヒートパルスのパルス幅P1を制御
するものとして説明する。
【0167】1)T1=T2の場合 a)記録液Aと発泡液Bが同一インクである場合 これらの液A、Bの状態量は、ΦA(ρ1、η1)=Φ
B(ρ2、η2)と等しくなるため、発泡液Bの発泡体
積のみを制御すべく、温度T2(=T1)に基づいて、
プレヒートパルスのパルス幅P1を制御する。
【0168】b)記録液Aと発泡液Bが異種のインクで
ある場合 例えば、液A、Bの粘度がρ1<ρ2である場合、それ
らの状態量は、ΦA(ρ1、η1)≠ΦB(ρ2、η
2)と異なることになる。このような状態は、ヘッドの
長期の放置後に印字等のプリントを開始する場合、また
は充分にヘッドの温度調節を行った後に印字等のプリン
トを開始する場合に生じる。このような状態では、液
A、Bの温度が同じでも記録液の粘度ρ1が発泡液Bの
粘度ρ2が高いため、仮に、上記a)のように発泡液B
の発泡体積のみを制御すべく、温度T2(=T1)に基
づいて、プレヒートパルスのパルス幅P1を制御した場
合には、発泡液Bの発泡圧力が記録液Aに伝わることに
よって生じる吐出圧が低下し、所期の吐出量Vdが確保
できず、プリント濃度が低下してしまうことになる。そ
こで、その分だけ上記a)の場合よりもプレヒートパル
スのパルス幅P1を長く設定して、吐出量の低下を回避
する。
【0169】2)T1<T2の場合 c)記録液Aと発泡液Bが同一インクである場合 通常、プリント動作時におけるヘッドの昇温によって、
発泡液B側が高温、記録液A側が低温となる。したがっ
て、このような場合は通常のプリント動作時に生じる。
これらの液A、Bは、主として、それらの粘度ρ1、ρ
2が温度T1,T2に応じて変化することによって、そ
れらの状態量に差が生じ、記録液Aの粘度ρ1が発泡液
Bの粘度ρ2よりも高くなる。そのため、上記b)の場
合と同様に、発泡液Bの発泡圧力が記録液Aに伝わるこ
とによって生じる吐出圧が低下し、所期の吐出量Vdが
確保できず、プリント濃度が低下してしまうことにな
る。そこで、その分だけ上記a)の場合よりもプレヒー
トパルスのパルス幅P1を長く設定して、吐出量の低下
を回避する。
【0170】このとき、温度T1,T2の差△Tを求
め、この△T分の吐出量差を予め実験により測定してお
き、以下の方法によりパルス幅P1を求めてPWM制御
することが望ましい。
【0171】
【数3】P1=P1(0)+△P(T)+△P(△T) ここで、P1(0)は基準となるパルス幅、△P(T)
は、温度T1またはT2のいずれかの関数としての温度
補正量、△P(△T)は、上記の温度差△T分の吐出量
差である。例えば、P1(0)=2.0(μsec)、
△P(T)=0〜−2.0(μsec)、△P(△T)
=0〜1.0(μsec)の範囲に設定することができ
る。
【0172】d)記録液Aと発泡液Bが異種のインクで
ある場合 普通紙に記録を行う場合、記録液Aとして超浸透インク
を使用して表面張力η1を極端に低下させ、また発泡を
安定させるために発泡液Bとして通常の表面張力ρ2
(>ρ1)のインクを用いる場合がある。このような場
合、インクの温度T1,T2の温度差による吐出量の影
響は、上記c)と同様の方法によって解決可能できるも
のの、インクの表面張力ρ1、ρ2の差による吐出量の
影響は除外できない。表面張力ρ1、ρ2は温度に依ら
ないパラメータであるため、ヘッドのIDなどにより、
使用するインクの特性を予め認識しておき、その認識し
た表面張力ρ1、ρ2に応じて上記の基準パルスP1
(0)を補正すればよい。仮に、上記a)のように発泡
液Bの発泡体積のみを制御すべく、温度上方のみからプ
レヒートパルスのパルス幅P1を制御した場合には、イ
ンクが吐出して千切れるとき、その千切れ方が表面張力
によって異なって、インクの吐出量Vdが変化してしま
う。一般には、表面張力が小さいほど吐出量Vdは増加
する傾向にある。なお、吐出量Vdは表面張力のみでは
なく、上述したように温度、粘度、その他の様々なイン
クの状態(物性値)によって変化するため、主に実験に
より吐出量Vdの変化要因を分析し、それをPWM制御
に反映させることはいうまでもない。
【0173】(液体の状態量に応じたPWM制御の形態
2)本例の場合は、図50のように、素子基板1上の温
度センサS1によって第2の液流路16内の液体(以
下、「発泡液」ともいう)の温度T2を検出すると共
に、分離壁30に備えた温度センサS2によって第1の
液流路14内の液体(以下、「記録液」ともいう)の温
度T1を検出し、それらの検出温度T1、検出温度T
2、またはそれらの温度差に基づいて、前述した図33
のプレヒートパルスのパルス幅P1をPWM制御する。
その際には、温度に関係する記録液の粘度ρ1、および
記録液の表面張力η1などを考慮することが好ましい。
【0174】(液体の状態量に応じたPWM制御の形態
3)本例の場合は、液体としてのインクの吐出によって
プリント媒体に形成すべき画像に対応する画像データに
基づいて、第2の液流路16内の液体の温度T2と、第
1の液流路14内の液体の温度T1を推定する。すなわ
ち、ヘッドの動作頻度に影響するヘッドの温度変化か
ら、液体の温度T1,T2を推定する。そして、それら
の推定温度T1、T2、またはそれらの温度差に基づい
て、前述した図33のプレヒートパルスのパルス幅P1
をPWM制御する。その際には、温度に関係する記録液
の粘度ρ1、および記録液の表面張力η1などを考慮す
ることが好ましい。
【0175】また、推定温度T1、T2、またはそれら
の温度差に応じて、発熱体2の駆動パルスを選択的に変
更するようにしてもよく、その場合には、図52(A)
のようなシングルパルスと、図52(B)のようなダブ
ルパルスを選択対象とすることもできる。前者のシング
ルパルスは、パルスの立ち上がりのタイミングT3が固
定され、その立ち下がりのタイミングT4は、ヘッド固
有の特性に応じて設定されるように半固定とされてお
り、このパルスが印加されることによって、例えば、カ
ラーモードなどに適した比較的小量のインク(20p
l)が吐出される。また、後者のダブルパルスは、プレ
ヒートパルスP1、インターバルタイムP2が固定さ
れ、メインヒートパルスP3の立ち下がりのタイミング
T4は、ヘッド固有の特性に応じて設定されるように半
固定とされており、このパルスが印加されることによっ
て、例えば、文字のプリントモードなどに適した比較的
多量のインク(30pl)が吐出される。さらに、図5
1のようにサブヒータを備えて、それによるヘッドの温
度制御を積極的に組み合わせることによって、画像の階
調記録を行うこともできる。
【0176】(液体の状態量に応じたPWM制御の形態
4)本例の場合は、発熱体2として、発熱量が異なる2
つの発熱体2−1、2−2を備えている。それらの発熱
体2−1、2−2は、図53のように流路の前後方向、
または図54のように流路の幅方向に配備されており、
これらの発熱体2−1、2−2を択一的に駆動または同
時駆動することによって、液体の吐出量が3段階的(1
0pl,20pl,30pl)に大きく制御できるよう
になっている。また、前述した形態3と同様に、液体と
してのインクの吐出によってプリント媒体に形成すべき
画像に対応する画像データに基づいて、第2の液流路1
6内の液体の温度T2と、第1の液流路14内の液体の
温度T1を推定する。すなわち、ヘッドの動作頻度に影
響するヘッドの温度変化から、液体の温度T1,T2を
推定する。そして、それらの推定温度T1、T2、また
はそれらの温度差に基づいて、発熱体2−1、2−2に
対する駆動パルスをPWM制御する。
【0177】温度T1、T2を推定する場合には、それ
までの発熱体2−1、2−2による発熱量を考慮する。
その発熱量は、液体の吐出量の履歴から求めることもで
きる。つまり、発熱体2−1、2−2の駆動頻度から液
体に対する熱の影響度を認識し、それを考慮することに
よって温度T1、T2を的確に推定することができる。
【0178】図55は、発熱量の小さい発熱体2−1を
S、発熱量の大きい発熱体2−2をLとして、それらの
一方または両方の駆動パルスのパルス幅P1(S)、P
1(L)を段階的に変更する場合の制御例を示す。
【0179】P1(S)のみを制御する場合は、液体の
吐出量Vd0(S)を一定の制御幅±△Vに維持する。
すなわち、温度T1,T2またはそれらの温度差のいず
れかを液体温度THとし、その液体温度THがT0から
Tmaxの範囲において、その液体温度THに応じてP
1(S)maxからP1(S)minを選択することに
よって、パルス幅P1(S)を段階的に変更する。液体
温度THが温度T0以下の時は、そのT0を目標温度と
してヘッドを温度調整する。また、液体温度THがTm
ax以上の時は、駆動パルスをメインパルスのみとす
る。そのメインパルスを液体温度THに応じてPWM制
御することもできる。
【0180】また、P1(L)のみを制御する場合は、
液体の吐出量Vd0(L)を一定の制御幅±△Vに維持
する。すなわち、温度T1,T2またはそれらの温度差
のいずれかを液体温度THとし、その液体温度THがT
0からTmaxの範囲において、その液体温度THに応
じてP1(L)maxからP1(L)minを選択する
ことによって、パルス幅P1(L)を段階的に変更す
る。液体温度THが温度T0以下の時は、そのT0を目
標温度としてヘッドを温度調整する。また、液体温度T
HがTmax以上の時は、駆動パルスをメインパルスの
みとする。そのメインパルスを液体温度THに応じてP
WM制御することもできる。
【0181】さらに、P1(S)とP1(L)の両方を
制御する場合は、液体の吐出量Vd0(S+L)を一定
の制御幅±△Vに維持する。すなわち、温度T1,T2
またはそれらの温度差のいずれかを液体温度THとし、
その液体温度THがT0からTmaxの範囲において、
その液体温度THに応じてP1(S+L)maxからP
1(S+L)minを選択することによって、パルス幅
P1(S+L)を段階的に変更する。液体温度THが温
度T0以下の時は、そのT0を目標温度としてヘッドを
温度調整する。また、液体温度THがTmax以上の時
は、駆動パルスをメインパルスのみとする。そのメイン
パルスを液体温度THに応じてPWM制御することもで
きる。
【0182】図56は、このような3段階の吐出量Vd
0(S)、Vd0(L)、Vd0(S+L)の安定制御
により、ブラック印字(Bk)とカラー印字(Col)
を行う場合の例を示す。この例の場合には、図57のよ
うなシリアルスキャン方式の記録装置を用いる。この記
録装置は、ガイド601に沿って往復移動可能なキャリ
ッジ601上にカートリッジCが搭載され、図示しない
モータによって移動されるベルト603を介して、キャ
リッジ601が左右に往復走査されるようになってい
る。カートリッジCとしては、ブラックインク吐出用の
ヘッドとブラックインクのタンクとを一体化したヘッド
カートリッジと、カラーインク吐出用のヘッドとカラー
インクのタンクとを一体化したヘッドカートリッジが搭
載されている。604から607は、記録媒体としての
用紙Pを搬送するためのローラ、608は、各カートリ
ッジCのヘッドに対応するキャップであり、その内部が
ポンプユニット609によって吸引されることにより、
各ヘッドの目詰まり等が防止される。610、611
は、それぞれワイピング部材としての第1、第2のブレ
ード、612は、第1のブレード610をクリーニング
するための吸収体からなるブレードクリーナである。
【0183】本例の場合、ブラックインク吐出用のヘッ
ドは、発熱量の小さい発熱体Sと発熱量の大きい発熱体
Lによって3段階的に制御される吐出量Vd0(S)、
Vd0(L)、Vd0(S+L)の比が25:45:7
0に設定されている。一方、カラーインク吐出用のヘッ
ドは、発熱量の小さい発熱体Sと発熱量の大きい発熱体
Lによって3段階的に制御される吐出量Vd0(S)、
Vd0(L)、Vd0(S+L)の比が15:25:4
0に設定されている。
【0184】図56における印字モード「Fast」
は、記録密度360dpiの高速記録モードであり、ブ
ラック印字(Bk)とカラー印字(Col)の両方にお
いて、キャリッジ602の片方向の1回の走査(1パス
片)によって、1画素当たりに1ドットを形成する。そ
の際、ブラック印字の場合はインクの吐出量をVd0
(S+L)として、吐出量比を70とし、カラー印字の
場合は、インクの吐出量をVd0(S+L)として、吐
出量比を40とする。
【0185】図56における印字モード「Norm」
は、記録密度360dpiの通常の記録モードであり、
ブラック印字(Bk)とカラー印字(Col)のそれぞ
れの場合において、2値記録または3値記録が選択可能
である。ブラック印字において、2値記録の場合は、キ
ャリッジ602の片方向の2回の走査(2パス片)によ
って、結果的に1画素当たりに吐出量比70つまりVd
0(S+L)のドットを形成し、また3値記録の場合
は、キャリッジ602の片方向の2回の走査(2パス
片)を半画素分ずつずらし、インクと吐出量をVd0
(L)として、吐出量比を45とする。一方、カラー印
字において、2値記録の場合は、キャリッジ602の両
方向の2回の走査(2パス両)によって、結果的に1画
素当たりに吐出量比40つまりVd0(S+L)のドッ
トを形成し、3値記録の場合は、キャリッジ602の両
方向の2回の走査(2パス両)を半画素分ずつずらし、
インクと吐出量をVd0(L)として、吐出量比を25
とする。
【0186】図56における印字モード「HQ」は、記
録密度360dpiの高解像度の記録モードであり、ブ
ラック印字(Bk)とカラー印字(Col)のそれぞれ
の場合において5値記録を可能である。ブラック印字に
おいては、キャリッジ602の片方向の4回の走査(4
パス片)を半画素分ずつずらし、インクと吐出量をVd
0(S)として、吐出量比を25とする。一方、カラー
印字においては、キャリッジ602の片方向の4回の走
査(2パス片)を半画素分ずつずらし、インクと吐出量
をVd0(S)として、吐出量比を15とする。
【0187】(他の実施形態)以上、本発明の液体吐出
ヘッドや液体吐出方法の要部の実施形態例について説明
を行ったが、以下にこれらの実施形態例に好ましく適用
できる実施態様例について図面を用いて説明する。但
し、以下の説明においては前述の1流路形態の実施形態
例と2流路形態の実施形態例のいずれかを取り上げて説
明する場合があるが特に記載しない限り、両実施形態例
に適用しうるものである。
【0188】<液流路の天井形状>図13は本発明の液
体吐出ヘッドの流路方向断面図であるが、第1液流路1
3(若しくは図1における液流路10)を構成するため
の溝が設けられた溝付き部材50が分離壁30上に設け
られている。本実施形態例においては。可動部材31の
自由端32位置近傍の流路天井の高さが高くなってお
り、可動部材31の動作角度θをより大きく取れるよう
にしている。この可動部材31の動作範囲は、液流路の
構造、可動部材31の耐久性や発泡力等を考慮して決定
すればよいが、吐出口18の軸方向の角度を含む角度ま
で動作することが望ましいと考えられる。
【0189】また、この図で示されるように吐出口18
の直径より可動部材31の自由端32の変位高さを高く
することで、より十分な吐出力の伝達が成される。ま
た、この図で示されるように、可動部材31の自由端3
2位置の液流路天井の高さより可動部材31の支点33
位置の液流路天井の高さの方が低くなっているため、可
動部材31の変位よる上流側への圧力波の逃げがさらに
有効に防止できる。
【0190】<第2液流路と可動部材との配置関係>図
14は、上述の可動部材31と第2の液流路16との配
置関係を説明するための図であり、同図(a)は分離壁
30、可動部材31近傍を上方から見た図であり、同図
(b)は、分離壁30を外した第2液流路16を上方か
ら見た図である。そして、同図(c)は、可動部材6と
第2液流路16との配置関係を、これらの各要素を重ね
ることで模式的に示した図である。なお、いずれの図も
図面下方が吐出口18が配されている前面側である。
【0191】本実施形態例の第2の液流路16は発熱体
2の上流側(ここでの上流側とは、第2共通液室側から
発熱体位置、可動部材、第1流路を経て吐出口に向う大
きな流れの中の上流側のことである。)に狭窄部19を
持っており、発泡時の圧力が第2液流路16の上流側に
容易に逃げることを抑制するような室(発泡室)構造と
なっている。
【0192】従来のヘッドのように、発泡する流路と液
体を吐出するための流路とが同じで、発熱体より液室側
に発生した圧力が共通液室側に逃げないように狭窄部を
設けるヘッドの場合には、液体のリフィルを充分考慮し
て、狭窄部における流路断面積があまり小さくならない
構成を採る必要があった。
【0193】しかし、本実施形態例の場合、吐出される
液体の多くを第1液流路内の吐出液とすることができ、
発熱体2が設けられた第2液流路内の発泡液はあまり消
費されないようにできるため、第2液流路の気泡発生領
域11への発泡液の充填量は少なくて良い。従って、上
述の狭窄部19における間隔を数μm〜十数μmと非常
に狭くできるため、第2液流路で発生した発泡時の圧力
をあまり周囲に逃がすことをさらに抑制でき、集中して
可動部材31側に向けることができる。そしてこの圧力
を可動部材31を介して吐出力として利用することがで
きるため、より高い吐出効率、吐出力を達成することが
できる。ただ、第1液流路16の形状は上述の構造に限
られるものではなく、気泡発生に伴う圧力が効果的に可
動部材31側に伝えられる形状であれば良い。
【0194】なお、図14(c)で示されるように可動
部材31の側方は、第2液流路を構成する壁の一部を覆
っており、このことで、可動部材31の第2液流路への
落ち込みが防止できる。これによって、前述した吐出液
と発泡液との分離性をさらに高めることができる。ま
た、気泡のスリットからの逃げの抑制ができるため、さ
らに吐出圧や吐出効率を高めることができる。さらに、
前述の消泡時の圧力による上流側からのリフィルの効果
を高めることができる。
【0195】なお、図12(b)や図13においては、
可動部材31の第1の液流路14側への変位に伴って第
2の液流路4の気泡発生領域で発生した気泡の一部が第
1の液流路14側に延在しているが、この様に気泡が延
在するような第2流路の高さにすることで、気泡が延在
しない場合に比べ更に吐出力を向上させることができ
る。この様に気泡が第1の液流路14に延在するように
するためには、第2の液流路16の高さを最大気泡の高
さより低くすることが望ましく、この高さを数μm〜3
0μmとすることが望ましい。なお、本実施形態例にお
いてはこの高さを15μmとした。
【0196】<可動部材および分離壁>図15は可動部
材31の他の形状を示すもので、35は、分離壁に設け
られたスリットであり、このスリットによって、可動部
材31が形成されている。同図(a)は長方形の形状で
あり、(b)は支点側が細くなっている形状で可動部材
31の動作が容易な形状であり、同図(c)は支点側が
広くなっており、可動部材31の耐久性が向上する形状
である。動作の容易性と耐久性が良好な形状として、図
14(a)で示したように、支点側の幅が円弧状に狭く
なっている形態が望ましいが、可動部材31の形状は第
2の液流路側に入り込むことがなく、容易に動作可能な
形状で、耐久性に優れた形状であればよい。
【0197】先の実施形態例においては、板状可動部材
31およびこの可動部材31を有する分離壁5は厚さ5
μmのニッケルで構成したが、これに限られることなく
可動部材31、分離壁5を構成する材質としては発泡液
と吐出液に対して耐溶剤性があり、可動部材31として
良好に動作するための弾性を有し、微細なスリットが形
成できるものであればよい。
【0198】可動部材31の材料としては、耐久性の高
い、銀、ニッケル、金、鉄、チタン、アルミニュウム、
白金、タンタル、ステンレス、りん青銅等の金属、およ
びその合金、または、アクリロニトリル、ブタジエン、
スチレン等のニトリル基を有する樹脂、ポリアミド等の
アミド基を有する樹脂、ポリカーボネイト等のカルボキ
シル基を有する樹脂、ポリアセタール等のアルデヒド基
を持つ樹脂、ポリサルフォン等のスルホン基を持つ樹
脂、そのほか液晶ポリマー等の樹脂およびその化合物、
耐インク性の高い、金、タングステン、タンタル、ニッ
ケル、ステンレス、チタン等の金属、これらの合金およ
び耐インク性に関してはこれらを表面にコーティングし
たもの若しくは、ポリアミド等のアミド基を有する樹
脂、ポリアセタール等のアルデヒド基を持つ樹脂、ポリ
エーテルエーテルケトン等のケトン基を有する樹脂、ポ
リイミド等のイミド基を有する樹脂、フェノール樹脂等
の水酸基を有する樹脂、ポリエチレン等のエチル基を有
する樹脂、ポリプロピレン等のアルキル基を持つ樹脂、
エポキシ樹脂等のエポキシ基を持つ樹脂、メラミン樹脂
等のアミノ基を持つ樹脂、キシレン樹脂等のメチロール
基を持つ樹脂およびその化合物、さらに二酸化珪素等の
セラミックおよびその化合物が望ましい。
【0199】分離壁の材質としては、ポリエチレン、ポ
リプロピレン、ポリアミド、ポリエチレンテレフタレー
ト、メラミン樹脂、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポ
リブタジエン、ポリウレタン、ポリエーテルエーテルケ
トン、ポリエーテルサルフォン、ポリアリレート、ポリ
イミド、ポリサルフォン、液晶ポリマー(LCP)等の
近年のエンジニアリングプラスチックに代表される耐熱
性、耐溶剤性、成型性の良好な樹脂、およびその化合
物、もしくは、二酸化珪素、チッ化珪素、ニッケル、
金、ステンレス等の金属、合金およびその化合物、もし
くは表面にチタンや金をコーティングしたものが望まし
い。
【0200】また、分離壁の厚さは、分離壁としての強
度を達成でき、可動部材として良好に動作するという観
点からその材質と形状等を考慮して決定すればよいが、
0.5μm〜10μm程度が望ましい。
【0201】なお、可動部材31を形成するためのスリ
ット35の幅は本実施形態例では2μmとしたが、発泡
液と吐出液とが異なる液体であり、両液体の混液を防止
したい場合は、スリット幅を両者の液体間でメニスカス
を形成する程度の間隔とし、夫々の液体同士の流通を抑
制すればよい。例えば、発泡液として2cP(センチポ
アズ)程度の液体を用い、吐出液として100cP以上
の液体を用いた場合には、5μm程度のスリットでも混
液を防止することができるが、3μm以下にすることが
望ましい。
【0202】本発明における可動部材31としてはμm
オーダーの厚さ(tμm)を対象としており、cmオー
ダーの厚さの可動部材31は意図していない。μmオー
ダーの厚さの可動部材31にとって、μmオーダーのス
リット幅(Wμm)を対象とする場合、製造のバラツキ
をある程度考慮することが望ましい。
【0203】スリットを形成する可動部材31の自由端
32あるいは/且つ側端に対向する部材の厚みが可動部
材31の厚みと同等の場合(図12、図13等)、スリ
ット幅と厚みの関係を製造のバラツキを考慮して以下の
ような範囲にすることで発泡液と吐出液の混液を安定的
に抑制することができる。このことは限られた条件では
あるが設計上の観点として、3cp以下の粘度の発泡液
に対して高粘度インク(5cp、10cp等)を用いる
場合、W/t≦1を満足するようにすることで、2液の
混合を長期にわたって抑制することが可能な構成となっ
た。
【0204】本発明の「実質的な密閉状態」を与えるス
リットとしては、このような数μmオーダであればより
確実である。
【0205】上述のように、発泡液と吐出液とに機能分
離させた場合、可動部材31がこれらの実質的な仕切部
材となる。この可動部材31が気泡の生成に伴って移動
する際に吐出液に対して発泡液がわずかに混入すること
が見られる。画像を形成する吐出液は、インクジェット
記録の場合、色材濃度を3%乃至5%程度有するものが
一般的であることを考慮すると、この発泡液が吐出液滴
に対して20%以下の範囲で含まれても大きな濃度変化
をもたらさない。従って、このような混液としては、吐
出液滴に対して20%以下となるような発泡液と吐出液
との混合を本発明に含むものとする。
【0206】尚、上記構成例の実施では、粘性を変化さ
せても上限で15%の発泡液の混合であり、5cP以下
の発泡液では、この混合比率は、駆動周波数にもよる
が、10%程度を上限とするものであった。
【0207】特に、吐出液の粘度を20cP以下にすれ
ばする程、この混液は低減(例えば5%以下)できる。
【0208】次に、このヘッドにおける発熱体2と可動
部材31の配置関係について、図を用いて説明する。た
だし、可動部材31と発熱体2の形状および寸法,数
は、以下に限定されるものではない。発熱体2と可動部
材31の最適な配置によって、発熱体2による発泡時の
圧力を吐出圧として有効に利用することが可能となる。
【0209】熱等のエネルギーをインクに与えること
で、インクに急峻な体積変化(気泡の発生)を伴う状態
変化を生じさせ、この状態変化に基づく作用力によって
吐出口からインクを吐出し、これを被記録媒体上に付着
させて画像形成を行うインクジェット記録方法、いわゆ
るバブルジェット記録方法の従来技術においては、図1
6に示すように、発熱体2の面積とインク吐出量は比例
関係にあるが、インク吐出に寄与しない非発泡有効領域
Sが存在していることがわかる。また、発熱体2上のコ
ゲの様子から、この非発泡有効領域Sが発熱体2の周囲
に存在していることがわかる。これらの結果から、発熱
体2周囲の約4μm幅は、発泡に関与されていないとさ
れている。
【0210】したがって、発泡圧を有効利用するために
は、発熱体2の周囲から約4μm以上内側の発泡有効領
域の直上が可動部材31の可動領域で覆われるように、
可動部材31を配置するのが効果的であると、言える。
本実施形態例においては、発泡有効領域を発熱体2周囲
から約4μm以上内側としたが、発熱体2の種類や形成
方法によっては、これに限定されるものではない。
【0211】図17に、58×150μmの発熱体2に
可動領域の総面積が異なる可動部材301((a)
図)、可動部材302((b)図)を配置したときの上
部から見た模式図を示す。
【0212】可動部材301の寸法は、53×145μ
mで、発熱体2の面積よりも小さいが、発熱体2の発泡
有効領域と同じ程度の寸法であり、該発泡有効領域を覆
うように、配置されている。一方、可動部材302の寸
法は、53×220μmで発熱体2の面積よりも大きく
(幅寸法を同じにした場合、支点から可動先端間の寸法
が発熱体の長さよりも長い)、可動部材301と同じよ
うに発泡有効領域を覆うように配置されている。上記2
種の可動部材301、302に対し、それらの耐久性と
吐出効率について測定を行った。測定条件は以下の通り
である。
【0213】 発泡液 : エタノール40%水溶液 吐出用インク : 染料インク 電圧 : 20.2V 周波数 : 3kHz この測定条件で実験を行った結果、可動部材の耐久性に
関しては、(a)可動部材301の方は、1×107
ルス印加したところで可動部材301の支点部分に損傷
が見られた。(b)可動部材302の方は、3×108
パルス印加しても、損傷は見られなかった。また、投入
エネルギーに対する吐出量と吐出速度からもとまる運動
エネルギーも約1.5〜2.5倍程度向上することが確
認された。
【0214】以上の結果から、耐久性、吐出効率の両面
からみても、発泡有効領域の真上を覆うように可動部材
を設け、該可動部材の面積が発熱体の面積よりも大きい
方が、優れていることがわかる。
【0215】図18に発熱体2のエッジから可動部材3
1の支点までの距離と、可動部材31の変位量の関係を
示す。また、図19に、発熱体2と可動部材31との位
置関係を側面方向から見た断面構成図を示す。発熱体2
は40×105μmのものを用いた。発熱体2のエッジ
から可動部材31の支点33までの距離lが大きい程、
変位量が大きいことがわかる。したがって、要求される
インクの吐出量や吐出液の流路構造および発熱体形状な
どによって、最適変位量を求め、可動部材31の支点の
33位置を決めることが望ましい。
【0216】また、可動部材31の支点33が発熱体2
の発泡有効領域直上に位置する場合は、可動部材31の
変位による応力に加え、発泡圧力が直接支点に加わるた
め可動部材31の耐久性が低下してしまう。本発明者の
実験によると、発泡有効領域の真上に支点を設けたもの
では、1×106 パルス程度で、可動壁に損傷が生じて
おり、耐久性が低下してしまうことが分かっている。し
たがって、可動部材31の支点33は、発熱体2の発泡
有効領域直上外に配置することで耐久性がそれ程高くな
い形状や材質の可動部材31であっても実用可能性が高
くなる。ただし、前記発泡有効領域直上に支点がある場
合でも形状や材質を選択すれば、良好に用いることがで
きる。かかる構成において、高吐出効率および耐久性に
優れた液体吐出ヘッドが得られる。
【0217】<素子基板>以下に液体に熱を与えるため
の発熱体が設2けられた素子基板の構成について説明す
る。
【0218】図20は本発明の液体吐出ヘッドの縦断面
図を示したもので、図20(a)は後述する保護膜があ
るヘッド、同図(b)は保護膜がないものである。
【0219】素子基板1上に第2液流路16、分離壁3
0、第1液流路14、第1液流路を構成する溝を設けた
溝付き部材50が配されている。
【0220】素子基板1には、シリコン等の気体107
に絶縁および蓄熱を目的としたシリコン酸化膜またはチ
ッ化シリコン膜106を成膜し、その上に発熱体2を構
成するハフニュウムボライド(HfB2 )、チッ化タン
タル(TaN)、タンタルアルミ(TaAl)等の電気
抵抗層105(0.01〜0.2μm厚)とアルミニュ
ウム等の配線電極(0.2〜1.0μm厚)を図11の
ようにパターニングされている。この2つの配線電極1
04から抵抗層105に電圧を印加し、抵抗層に電流を
流し発熱させる。配線電極間の抵抗層上には、酸化シリ
コンやチッ化シリコン等の保護層を0.1〜2.0μm
厚で形成し、さらにそのうえにタンタル等の耐キャビテ
ーション層(0.1〜0.6μm厚)が成膜されてお
り、インク等の各種の液体から抵抗層105を保護して
いる。
【0221】特に、気泡の発生、消泡の際に発生する圧
力や衝撃波は非常に強く、堅くてもろい酸化膜の耐久性
を著しく低下させるため、金属材料のタンタル(Ta)
等が耐キャビテーション層として用いられる。
【0222】また、液体、液流路構成、抵抗材料の組み
合わせにより上述の保護層を必要としない構成でもよく
その例を図20(b)に示す。このような保護層を必要
としない抵抗層の材料としてはイリジュウム−タンタル
−アルミ合金等が挙げられる。
【0223】このように、前述の各実施形態例における
発熱体の構成としては、前述の電極間の抵抗層(発熱
部)だけででもよく、また抵抗層を保護する保護層を含
むものでもよい。
【0224】本実施形態例においては、発熱体2として
電気信号に応じて発熱する抵抗層で構成された発熱部を
有するものを用いたが、これに限られることなく、吐出
液を吐出させるのに十分な気泡を発泡液に生じさせるも
のであればよい。例えば、発熱部としてレーザ等の光を
受けることで発熱するような光熱変換体や高周波を受け
ることで発熱するような発熱部を有する発熱体でもよ
い。
【0225】なお、前述の素子基板1には、前述の発熱
部を構成する抵抗層105とこの抵抗層に電気信号を供
給するための配線電極104で構成される電気熱変換体
の他に、この電気熱変換素子を選択的に駆動するための
トランジスタ、ダイオード、ラッチ、シフトレジスタ等
の機能素子が一体的に半導体製造工程によって作り込ま
れていてもよい。
【0226】また、前述のような素子基板1に設けられ
ている電気熱変換体の発熱部を駆動し、液体を吐出する
ためには、前述の抵抗層105に配線電極104を介し
て図21で示されるような矩形パルスを印加し、配線電
極間の抵抗層105を急峻に発熱させる。
【0227】<2流路構成のヘッド構造>以下に、第
1、第2の共通液室に異なる液体を良好に分離して導入
でき部品点数の削減を図れ、コストダウンを可能とする
液体吐出ヘッドの構造例について説明する。
【0228】図22は、このような液体吐出ヘッドの構
造を示す模式図であり、先の実施形態例と同じ構成要素
については同じ符号を用いており、詳しい説明はここで
は省略する。
【0229】本実施形態例においては、溝付き部材50
は、吐出口18を有するオリフィスプレート51と、複
数の第1液流路14を構成する複数の溝と、複数の液流
路14に共通して連通し、各第1の液流路3に液体(吐
出液)を供給するための第1の共通液室15を構成する
凹部とから概略構成されている。
【0230】この溝付部材50の下側部分に分離壁30
を接合することにより複数の第1液流路14を形成する
ことができる。このような溝付部材50は、その上部か
ら第1共通液室15内に到達する第1液体供給路20を
有している。また、溝付部材50は、その上部から分離
壁30を突き抜けて第2共通液室17内に到達する第2
の液体供給路21を有している。
【0231】第1の液体(吐出液)は、図22の矢印C
で示すように、第1液体供給路20を経て、第1の共通
液室15、次いで第1の液流路14に供給され、第2の
液体(発泡液)は、図22の矢印Dで示すように、第2
液体供給路21を経て、第2共通液室17、次いで第2
液流路16に供給されるようになっている。
【0232】本実施形態例では、第2液体供給路21
は、第1液体供給路20と平行して配されているが、こ
れに限ることはなく、第1共通液室15の外側に配され
た分離壁30を貫通して、第2共通液室17に連通する
ように形成されればどのように配されてもよい。
【0233】また、第2液体供給路21の太さ(直径)
に関しては、第2液体の供給量を考慮して決められる。
第2液体供給路21の形状は丸形状である必要はなく、
矩形状等でもよい。
【0234】また、第2共通液室17は、溝付部材50
を分離壁30で仕切ることによって形成することができ
る。形成の方法としては、図23で示す本実施形態例の
分解斜視図のように、素子基板上にドライフィルムで共
通液室枠と第2液路壁を形成し、分離壁を固定した溝付
部材50と分離壁30との結合体と素子基板1とを貼り
合わせることにより第2共通液室17や第2液流路16
を形成してもよい。
【0235】本実施形態例では、アルミニュウム等の金
属で形成された支持体70上に、前述のように、発泡液
に対して膜沸騰による気泡を発生させるための熱を発生
する発熱体2としての電気熱変換素子が複数設けられた
素子基板1が配されている。
【0236】この素子基板1上には、第2液路壁により
形成された液流路16を構成する複数の溝と、複数の発
泡液流路に連通し、それぞれの発泡液路に発泡液を供給
するための第2共通液室(共通発泡液室)17を構成す
る凹部と、前述した可動壁31が設けられた分離壁30
とが配されている。
【0237】符号50は、溝付部材である。この溝付部
材は、分離壁30と接合されることで吐出液流路(第1
液流路)14を構成する溝と、吐出液流路に連通し、そ
れぞれの吐出液流路に吐出液を供給するための第1の共
通液室(共通吐出液室)15を構成するための凹部と、
第1共通液室に吐出液を供給するための第1供給路(吐
出液供給路)20と、第2の共通液室17に発泡液を供
給するための第2の供給路(発泡液供給路)21とを有
している。第2の供給路21は、第1の共通液室15の
外側に配された分離壁30を貫通して第2の共通液室1
7に連通する連通路に繋がっており、この連通路によっ
て吐出液と混合することなく発泡液を第2の共通液室1
5に供給することができる。
【0238】なお、素子基板1、分離壁30、溝付天板
50の配置関係は、素子基板1の発熱体2に対応して可
動部材31が配置されており、この可動部材31に対応
して吐出液流路14が配されている。また、本実施形態
例では、第2の供給路を1つ溝付部材に配した例を示し
たが、供給量に応じて複数設けてもよい。さらに吐出液
供給路20と発泡液供給路21の流路断面積は供給量に
比例して決めればよい。
【0239】このような流路断面積の最適化により溝付
部材50等を構成する部品をより小型化することも可能
である。
【0240】以上説明したように本実施形態例によれ
ば、第2液流路に第2液体を供給する第2の供給路と、
第1液流路に第1液体を供給する第1の供給路とが同一
の溝付部材としての溝付天板からなることにより部品点
数が削減でき、工程の短縮化とコストダウンが可能とな
る。
【0241】また第2液流路に連通した第2の共通液室
への、第2液体の供給は、第1液体と第2液体を分離す
る分離壁を突き抜ける方向で第2液流路によって行なわ
れる構造であるため、前記分離壁と溝付部材と発熱体形
成基板との貼り合わせ工程が1度で済み、作りやすさが
向上すると共に、貼り合わせ精度が向上し、良好に吐出
することができる。
【0242】また、第2液体は、分離壁を突き抜けて第
2液体共通液室へ供給されるため、第2液流路に第2液
体の供給が確実となり、供給量が十分確保できるため、
安定した吐出が可能となる。
【0243】<吐出液体、発泡液体>先の実施形態例で
説明したように本発明においては、前述のような可動部
材31を有する構成によって、従来の液体吐出ヘッドよ
りも高い吐出力や吐出効率でしかも高速に液体を吐出す
ることができる。本実施形態例の内、発泡液と吐出液と
に同じ液体を用いる場合には、発熱体2から加えられる
熱によって劣化せずに、また加熱によって発熱体2上に
堆積物を生じにくく、熱によって気化、凝縮の可逆的状
態変化を行うことが可能であり、さらに液流路や可動部
材31や分離壁等を劣化させない液体であれば種々の液
体を用いることができる。
【0244】このような液体の内、記録を行う上で用い
る液体(記録液体)としては従来のバブルジェット装置
で用いられていた組成のインクを用いることができる。
【0245】一方、本発明の2流路構成のヘッドを用
い、吐出液と発泡液を別液体とした場合には、発泡液と
して前述のような性質の液体を用いればよく、具体的に
は、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソ
プロパノール、n−ヘキサン、n−ヘプタン、n−オク
タン、トルエン、キシレン、二塩化メチレン、トリクレ
ン、フレオンTF、フレオンBF、エチルエーテル、ジ
オキサン、シクロヘキサン、酢酸メチル、酢酸エチル、
アセトン、メチルエチルケトン、水等およびこれらの混
合物が挙げられる。
【0246】吐出液としては、発泡性の有無、熱的性質
に関係なく様々な液体を用いることができる。また、従
来吐出が困難であった発泡性が低い液体、熱によって変
質、劣化しやすい液体や高粘度液体等であっても利用で
きる。
【0247】ただし、吐出液の性質として吐出液自身、
又は発泡液との反応によって、吐出や発泡また可動部材
の動作等を妨げるような液体でないことが望まれる。
【0248】記録用の吐出液体としては、高粘度インク
等をも利用することができる。その他の吐出液体として
は、熱に弱い医薬品や香水等の液体を利用することもで
きる。
【0249】本発明においては、吐出液と発泡液の両方
に用いることができる記録液体として以下のような組成
のインクを用いて記録を行ったが、吐出力の向上によっ
てインクの吐出速度が高くなったため、液滴の着弾精度
が向上し非常に良好な記録画像を得ることができた。
【0250】 染料インク(粘度2cP)の組成 (C.I.フードブラック2)染料 3重量% ジエチレングリコール 10重量% チオジグリコール 5重量% エタノール 5重量% 水 77重量% また、発泡液と吐出液に以下で示すような組成の液体を
組み合わせて吐出させて記録を行った。その結果、従来
のヘッドでは吐出が困難であった十数cP粘度の液体は
もちろん150cPという非常に高い粘度の液体でさえ
も良好に吐出でき、高画質な記録物を得ることができ
た。
【0251】 発泡液1の組成 エタノール 40重量% 水 60重量% 発泡液2の組成 水 100重量% 発泡液3の組成 イソプロピルアルコール 10重量% 水 90重量% 吐出液1顔料インク(粘度約15cP)の組成 カーボンブラック 5重量% スチレン−アクリル酸−アクリル酸エチル共重合体 1重量% (酸価140、重量平均分子量8000) モノエタノールアミン 0.25重量% グリセリン 69重量% チオジグリコール 5重量% エタノール 3重量% 水 16.75重量% 吐出液2(粘度55cP)の組成 ポリエチレングリコール200 100重量% 吐出液3(粘度150cP)の組成 ポリエチレングリコール600 100重量% ところで、前述したような従来吐出されにくいとされて
いた液体の場合には、吐出速度が低いために、吐出方向
性のバラツキが助長され記録紙上のドットの着弾精度が
悪く、また吐出不安定による吐出量のバラツキが生じこ
れらのことで、高品位画像が得にくかった。しかし、上
述の実施形態例の構成においては、気泡の発生を発泡液
を用いることで充分に、しかも安定して行うことができ
る。このことで、液滴の着弾精度向上とインク吐出量の
安定化を図ることができ記録画像品位を著しく向上する
ことができた。
【0252】<液体吐出ヘッドの製造>次に、本発明の
液体吐出ヘッドの製造工程について説明する。
【0253】図2で示したような液体吐出ヘッドの場合
には、素子基板1上に可動部材31を設けるための土台
34をドライフィルム等をパターニングすることで形成
し、この土台34に可動部材31を接着、もしくは溶着
固定した。その後、各液流路10を構成する複数の溝と
吐出口18と共通液室13を構成する凹部を有する溝付
部材を、溝と可動部材31が対応するような状態で素子
基板1に接合することで形成した。
【0254】次に、図10や図23で示されるような2
流路構成の液体吐出ヘッドの製造工程について説明す
る。
【0255】大まかには、素子基板1上に第2液流路1
6の壁を形成し、その上に分離壁30を取り付け、さら
にその上に第1液流路14を構成する溝等が設けられた
溝付き部材50を取り付ける。もしくは、第2液流路1
6の壁を形成した後、この壁の上に分離壁30を取り付
けた溝付き部材50を接合することでヘッドの製造を行
った。
【0256】さらに第2液流路の作製方法について詳し
く説明する。
【0257】図24(a)〜(e)は、本発明の液体吐
出ヘッドの製造方法の第1の実施例を説明するための概
略断面図である。
【0258】本実施例においては、(a)に示すよう
に、素子基板(シリコンウエハ)1上に半導体製造工程
で用いるのと同様の製造装置を用いてハフニュウムボラ
イドやチッ化タンタル等からなる発熱体2を有する電気
熱変換用素子を形成した後、次工程における感光性樹脂
との密着性の向上を目的として素子基板1の表面に洗浄
を施した。さらに、密着性を向上させるには、素子基板
1表面に紫外線−オゾン等による表面改質を行った後、
例えばシランカップリング剤(日本ユニカ製:A18
9)をエチルアルコールで1重量%に希釈した液を上記
改質表面上にスピンコートすることで達成される。
【0259】次に、表面洗浄を行い、密着性を向上した
基板1上に、(b)に示すように、紫外線感光性樹脂フ
ィルム(東京応化製:ドライフィルム オーディルSY
−318)DFをラミネートした。
【0260】次に、(c)に示すように、ドライフィル
ムDF上にフォトマスクPMを配し、このフォトマスク
PMを介してドライフィルムDFのうち、第2の流路壁
として残す部分に紫外線を照射した。この露光工程は、
キヤノン(株)製:MPA−600を用いて行い、約6
00mJ/cm2 の露光量で行った。
【0261】次に、(d)に示すように、ドライフィル
ムDFを、キシレンとブチルセルソルブアセテートとの
混合液からなる現像液(東京応化製:BMRC−3)で
現像し、未露光部分を溶解させ、露光して硬化した部分
を第2液流路16の壁部分として形成した。さらに、素
子基板1表面に残った残渣を酸素プラズマアッシング装
置(アルカンテック社製:MAS−800)で約90秒
間処理して取り除き、引き続き、150℃で2時間、さ
らに紫外線照射100mJ/cm2 を行って露光部分を
完全に硬化させた。
【0262】以上の方法により、上記シリコン基板から
分割、作製される複数のヒータボード(素子基板)に対
し、一様に第2の液流路を精度よく形成することができ
る。シリコン基板を、厚さ0.05mmのダイヤモンド
ブレードを取り付けたダイシングマシン(東京精密製:
AWD−4000)で各々のヒータボード1に切断、分
離した。分離されたヒータボード1を接着剤(東レ製:
SE4400)でアルミベースプレート70上に固定し
た(図27)。次いで、予めアルミベースプレート70
上に接合しておいたプリント配線基板71と、ヒータボ
ード1とを直径0.05mmのアルミワイヤ(図示略)
で接続した。
【0263】次に、このようにして得られたヒータボー
ド1に、図24(e)に示すように、上述の方法で溝付
部材50と分離壁30との接合体を位置決め接合した。
すなわち、分離壁30を有する溝付部材とヒータボード
1とを位置決めし、押さえバネ78により係合、固定し
た後、インク・発泡液用供給部材80をアルミベースプ
レート70上に接合固定し、アルミワイヤ間、溝付部材
50とヒータボード1とインク・発泡液用供給部材80
との隙間をシリコーンシーラント(東芝シリコーン製:
TSE399)で封止して完成させた。
【0264】以上の製法で、第2の液流路を形成するこ
とにより、各ヒータボードのヒータに対して位置ズレの
ない精度の良い流路を得ることができる。特に、溝付部
材50と分離壁30とをあらかじめ先の工程で接合して
おくことで、第1液流路14と可動部材31の位置精度
を高めることができる。
【0265】そして、これらの高精度製造技術によっ
て、吐出安定化が図られ印字品位が向上する。また、ウ
エハ上に一括で形成することが可能なため、多量に低コ
ストで製造することが可能である。
【0266】なお、本実施例では、第2の液流路を形成
するために紫外線硬化型のドライフィルムを用いたが、
紫外域、特に248nm付近に吸収帯域をもつ樹脂を用
い、ラミネート後、硬化させ、エキシマレーザで第2の
液流路となる部分の樹脂を直接除去することによっても
得ることが可能である。
【0267】図25(a)〜(d)は、本発明の液体吐
出ヘッドの製造方法の第2の実施例を説明するための概
略断面図である。
【0268】本実施例においては、(a)に示すよう
に、ステンレス鋼であるSUS基板100上に厚さ15
μmのレジスト101を第2の液流路の形状でパターニ
ングした。
【0269】次に、(b)に示すように、SUS基板1
00に対して電気メッキを行ってSUS基板100上に
ニッケル層102を同じく15μm成長させた。メッキ
液としては、スルフォミン酸ニッケルに応力減少剤(ワ
ールドメタル社製:ゼロオール)とほう酸、ピット防止
剤(ワールドメタル社製:NP−APS)、塩化ニッケ
ルを使用した。電着時の電界のかけ方としては、アノー
ド側に電極を付け、カソード側に既にパターニングした
SUS基板100を取り付け、メッキ液の温度を50℃
とし、電流密度を5A/cm2 とした。
【0270】次に、(c)に示すように、上記のような
メッキを終了したSUS基板100に超音波振動を与
え、ニッケル層102の部分をSUS基板100から剥
離し、所望の第2の液流路を得た。
【0271】一方、電気熱変換用素子を配設したヒータ
ボードを、半導体と同様の製造装置を用いてシリコンウ
エハに形成した。このウエハを先の実施例と同様に、ダ
イシングマシンで各々のヒータボードに分離した。この
ヒータボード1を、予めプリント基板104が接合され
たアルミベースプレート70に接合し、プリント基板7
1とアルミワイヤ(図示略)とを接続することで電気的
配線を形成した。このような状態のヒータボード1上
に、図25(d)に示すように、先の工程で得た第2液
流路と位置決め固定した。この固定に際しては、後工程
で第1の実施例と同様に分離壁を固定した天板と押さえ
バネによって係合・密着されるため、天板接合時に位置
ズレが発生しない程度に固定されていれば十分である。
【0272】本実施例では、上記位置決め固定に紫外線
硬化型接着剤(グレースジャパン製:アミコンUV−3
00)を塗布し、紫外線照射装置を用い、露光量を10
0mJ/cm2 として約3秒間で固定を完了した。
【0273】本実施例の製法によれば、発熱体に対して
位置ズレのない精度の高い第2の液流路を得ることがで
きることに加え、ニッケルで流路壁を形成しているた
め、アルカリ性の液体に強く、信頼性の高いヘッドを提
供することが可能となる。
【0274】図26(a)〜(d)は、本発明の液体吐
出ヘッドの製造方法の第3の実施例を説明するための概
略断面図である。
【0275】本実施例においては、(a)に示すよう
に、アライメント穴あるいはマーク100aを有する厚
さ15μmのSUS基板100の両面にレジスト31を
塗布した。ここで、レジストとしては、東京応化製のP
MERP−AR900を使用した。
【0276】この後、(b)に示すように、素子基板1
00のアライメント穴100aに合わせて、露光装置
(キヤノン(株)製:MPA−600)を用いて露光
し、第2の液流路を形成すべき部分のレジスト103を
除去した。露光は800mJ/cm2 の露光量で行っ
た。
【0277】次に、(c)に示すように、両面のレジス
ト103がパターニングされたSUS基板100を、エ
ッチング液(塩化第2鉄または塩化第2銅の水溶液)に
浸漬し、レジスト103から露出している部分をエッチ
ングした後、レジストを剥離した。
【0278】次に、(d)に示すように、先の製造方法
の実施例と同様に、ヒータボード1上に、エッチングさ
れたSUS基板100を位置決め固定して第2の液流路
4を有する液体吐出ヘッドを組み立てた。
【0279】本実施例の製法によれば、ヒータに対し位
置ズレのない精度の高い第2液流路4を得ることができ
ることに加え、SUSで流路を形成しているため、酸や
アルカリ性の液体に強く信頼性の高い液体吐出ヘッドを
提供することができる。
【0280】以上説明したように、本実施例の製造方法
によれば、素子基板状に予め第2液流路の壁を配設する
ことによって、電気熱変換体と第2液流路とが高精度に
位置決めすることが可能となる。また、切断、分離前の
基板上の多数の素子基板に対して第2の液流路を同時に
形成することができるので、多量に、かつ、低コストの
液体吐出ヘッドを提供することができる。
【0281】また、本実施例の製造方法の液体吐出ヘッ
ドの製造方法を実施することによって得られた液体吐出
ヘッドは、発熱体と第2液流路とが高精度に位置決めさ
れているので、電気熱変換体の発熱による発泡の圧力を
効率よく受けることができ、吐出効率に優れたものとな
る。
【0282】<液体吐出ヘッドカートリッジ>次に、上
記実施形態例に係る液体吐出ヘッドを搭載した液体吐出
ヘッドカートリッジを概略説明する。
【0283】図27は、前述した液体吐出ヘッドを含む
液体吐出ヘッドカートリッジの模式的分解斜視図であ
り、液体吐出ヘッドカートリッジは、主に液体吐出ヘッ
ド部200と液体容器80とから概略構成されている。
【0284】液体吐出ヘッド部200は、素子基板1、
分離壁30、溝付部材50、押さえバネ78、液体供給
部材90、支持体70等から成っている。素子基板1に
は、前述のように発泡液に熱を与えるための発熱抵抗体
が、複数個、列状に設けられており、また、この発熱抵
抗体を選択的に駆動するための機能素子が複数設けられ
ている。この素子基板1と可動壁を持つ前述の分離壁3
0との間に発泡液路が形成され発泡液が流通する。この
分離壁30と溝付天板50との接合によって、吐出され
る吐出液体が流通する吐出流路(不図示)が形成され
る。
【0285】押さえバネ78は、溝付部材50に素子基
板1方向への付勢力を作用させる部材であり、この付勢
力により素子基板1、分離壁30、溝付部材50と、後
述する支持体70とを良好に一体化させている。
【0286】支持体70は、素子基板1等を支持するた
めのものであり、この支持体70上にはさらに素子基板
1に接続し電気信号を供給するための回路基板71や、
装置側と接続することで装置側と電気信号のやりとりを
行うためのコンタクトパッド72が配置されている。
【0287】液体容器90は、液体吐出ヘッドに供給さ
れる、インク等の吐出液体と気泡を発生させるための発
泡液とを内部に区分収容している。液体容器90の外側
には、液体吐出ヘッドと液体容器との接続を行う接続部
材を配置するための位置決め部94と接続部を固定する
ための固定軸95が設けられている。吐出液体の供給
は、液体容器の吐出液体供給路92から接続部材の供給
路84を介して液体供給部材80の吐出液体供給路81
に供給され、各部材の吐出液体供給路83,71,21
を介して第1の共通液室に供給される。発泡液も同様
に、液体容器の供給路93から接続部材の供給路を介し
て液体供給部材80の発泡液供給路82に供給され、各
部材の発泡液体供給路84,71,22を介して第2液
室に供給される。
【0288】以上の液体吐出ヘッドカートリッジにおい
ては、発泡液と吐出液が異なる液体である場合も、供給
を行いうる供給形態および液体容器で説明したが、吐出
液体と発泡液体とが同じである場合には、発泡液と吐出
液の供給経路および容器を分けなくてもよい。
【0289】なお、この液体容器には、各液体の消費後
に液体を再充填して使用してもよい。このためには液体
容器に液体注入口を設けておくことが望ましい。又、液
体吐出ヘッドと液体容器とは一体であってもよく、分離
可能としてもよい。
【0290】<液体吐出装置>図28は、前述の液体噴
射ヘッドを搭載した液体吐出装置の概略構成を示してい
る。本実施例では特に吐出液体としてインクを用いたイ
ンク吐出記録装置を用いて説明する液体吐出装置のキャ
リッジHCは、リードスクリュー85に沿って往復移動
可能であり、インクを収容する液体タンク部90と液体
吐出ヘッド部200とが着脱可能なヘッドカートリッジ
を搭載しており、被記録媒体搬送手段で搬送される記録
紙等の被記録媒体150の幅方向に往復移動する。
【0291】不図示の駆動信号供給手段からキャリッジ
上の液体吐出手段に駆動信号が供給されると、この信号
に応じて液体吐出ヘッドから被記録媒体に対して記録液
体が吐出される。図28において符号28は、液体吐出
ヘッドの前面をキャップするキャップ部材であり、87
は、このキャップ内を吸引する吸引手段である。液体吐
出ヘッドは、これらの手段による吸引回復処理を受ける
ことで目詰まり等の防止がなされる。
【0292】また、本実施例の液体吐出装置において
は、被記録媒体搬送手段とキャリッジを駆動するための
駆動源としてのモータ111、駆動源からの動力をキャ
リッジに伝えるためのギア112、113キャリッジ軸
115等を有している。この記録装置及びこの記録装置
で行う液体吐出方法によって、各種の被記録媒体に対し
て液体を吐出することで良好な画像の記録物を得ること
ができた。
【0293】図29は、本発明の液体吐出方法および液
体吐出ヘッドを適用したインク吐出記録を動作させるた
めの装置全体のブロック図である。
【0294】記録装置は、ホストコンピュータ300よ
り印字情報を制御信号として受ける。印字情報は印字装
置内部の入力インタフェイス301に一時保存されると
同時に、記録装置内で処理可能なデータに変換され、ヘ
ッド駆動信号供給手段を兼ねるCPU302に入力され
る。CPU302はROM303に保存されている制御
プログラムに基づき、前記CPU302に入力されたデ
ータをRAM304等の周辺ユニットを用いて処理し、
印字するデータ(画像データ)に変換する。
【0295】またCPU302は前記画像データを記録
用紙上の適当な位置に記録するために、画像データに同
期して記録用紙および記録ヘッドを移動する駆動用モー
タを駆動するための駆動データを作る。画像データおよ
びモータ駆動データは、各々ヘッドドライバ307と、
モータドライバ305を介し、ヘッド200および駆動
モータ306に伝達され、それぞれ制御されたタイミン
グで駆動され画像を形成する。
【0296】上述のような記録装置に適用でき、インク
等の液体の付与が行われる被記録媒体としては、各種の
紙やOHPシート、コンパクトディスクや装飾板等に用
いられるプラスチック材、布帛、アルミニュウムや銅等
の金属材、牛皮、豚皮、人工皮革等の皮革材、木、合板
等の木材、竹材、タイル等のセラミックス材、スポンジ
等の三次元構造体等を対象とすることができる。
【0297】また上述の記録装置として、各種の紙やO
HPシート等に対して記録を行うプリンタ装置、コンパ
クトディスク等のプラスチック材に記録を行うプラスチ
ック用記録装置、金属板に記録を行う金属用記録装置、
皮革に記録を行う皮革用記録装置、木材に記録を行う木
材用記録装置、セラミックス材に記録を行うセラミック
ス用記録装置、スポンジ等の三次元網状構造体に対して
記録を行う記録装置、又布帛に記録を行う捺染装置等を
も含むものである。
【0298】またこれらの液体吐出装置に用いる吐出液
としては、夫々の被記録媒体や記録条件に合わせた液体
を用いればよい。
【0299】<記録システム>次に、本発明の液体吐出
ヘッドを記録ヘッドとして用い被記録媒体に対して記録
を行う、インクジェット記録システムの一例を説明す
る。
【0300】図30は、前述した本発明の液体吐出ヘッ
ド201を用いたインクジェット記録システムの構成を
説明するための模式図である。本実施例における液体吐
出ヘッドは、被記録媒体150の記録可能幅に対応した
長さに360dpiの間隔で吐出口を複数配したフルラ
イン型のヘッドであり、イエロー(Y),マゼンタ
(M),シアン(C),ブラック(Bk)の4色に対応
した4つのヘッドをホルダ202によりX方向に所定の
間隔を持って互いに平行に固定支持されている。
【0301】これらのヘッドに対してそれぞれ駆動信号
供給手段を構成するヘッドドライバ307から信号が供
給され、この信号に基づいて各ヘッドの駆動が成され
る。
【0302】各ヘッドには、吐出液としてY,M,C,
Bkの4色のインクがそれぞれ204a〜204dのイ
ンク容器から供給されている。なお、符号204eは発
泡液が蓄えられた発泡液容器であり、この容器から各ヘ
ッドに発泡液が供給される構成になっている。
【0303】また、各ヘッドの下方には、内部にスポン
ジ等のインク吸収部材が配されたヘッドキャップ203
a〜203dが設けられており、非記録時に各ヘッドの
吐出口を覆うことでヘッドの保守を成すことができる。
【0304】符号206は、先の各実施例で説明したよ
うな各種、非記録媒体を搬送するための搬送手段を構成
する搬送ベルトである。搬送ベルト206は、各種ロー
ラにより所定の経路に引き回されており、モータドライ
バ305に接続された駆動用ローラにより駆動される。
【0305】本実施例のインクジェット記録システムに
おいては、記録を行う前後に被記録媒体に対して各種の
処理を行う前処理装置251および後処理装置252を
それぞれ被記録媒体搬送経路の上流と下流に設けてい
る。
【0306】前処理と後処理は、記録を行う被記録媒体
の種類やインクの種類に応じて、その処理内容が異なる
が、例えば、金属、プラスチック、セラミックス等の被
記録媒体に対しては、前処理として、紫外線とオゾンの
照射を行い、その表面を活性化することでインクの付着
性の向上を図ることができる。また、プラスチック等の
静電気を生じやすい被記録媒体においては、静電気によ
ってその表面にゴミが付着しやすく、このゴミによって
良好な記録が妨げられる場合がある。このため、前処理
としてイオナイザ装置を用い被記録媒体の静電気を除去
することで、被記録媒体からごみの除去を行うとよい。
また、被記録媒体として布帛を用いる場合には、滲み防
止、先着率の向上等の観点から布帛にアルカリ性物質、
水溶性物質、合成高分子、水溶性金属塩、尿素およびチ
オ尿素から選択される物質を付与する処理を前処理とし
て行えばよい。前処理としては、これらに限らず、被記
録媒体の温度を記録に適切な温度にする処理等であって
もよい。
【0307】一方、後処理は、インクが付与された被記
録媒体に対して熱処理、紫外線照射等によるインクの定
着を促進する定着処理や、前処理で付与し未反応で残っ
た処理剤を洗浄する処理等を行うものである。
【0308】なお、本実施例では、ヘッドとしてフルラ
インヘッドを用いて説明したが、これに限らず、前述し
たような小型のヘッドを被記録媒体の幅方向に搬送して
記録を行う形態のものであってもよい。
【0309】<ヘッドキット>以下に、本発明の液体吐
出ヘッドを有するヘッドキットを説明する。図31は、
このようなヘッドキットを示した模式図であり、このヘ
ッドキットは、インクを吐出するインク吐出部511を
有する本発明のヘッド510と、このヘッドと不可分も
しくは分離可能な液体容器であるインク容器520と、
このインク容器にインクを充填するためのインクを保持
したインク充填手段とを、キット容器501内に納めた
ものである。
【0310】インクを消費し終わった場合には、インク
容器の大気連通口521やヘッドとの接続部や、もしく
はインク容器の壁に開けた穴などに、インク充填手段の
挿入部(注射針等)531の一部を挿入し、この挿入部
を介してインク充填手段内のインクをインク容器内に充
填すればよい。
【0311】このように、本発明の液体吐出ヘッドと、
インク容器やインク充填手段等を一つのキット容器内に
納めてキットにすることで、インクが消費されてしまっ
ても前述のようにすぐに、また容易にインクをインク容
器内に充填することができ、記録の開始を迅速に行うこ
とができる。
【0312】なお、本実施例のヘッドキットでは、イン
ク充填手段が含まれるもので説明を行ったが、ヘッドキ
ットとしては、インク充填手段を持たず、インクが充填
された分離可能タイプのインク容器とヘッドとがキット
容器510内に納められている形態のものであってもよ
い。
【0313】また、この図31では、インク容器に対し
てインクを充填するインク充填手段のみを示している
が、インク容器の他に発泡液を発泡液容器に充填するた
めの発泡液充填手段をキット容器内に納めた形態のもの
であってもよい。
【0314】
【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
可動部材を用いる新規な吐出原理に基づく液体の吐出方
式、つまり発生する気泡とこれによって変位する可動部
材との相乗効果により、吐出口近傍の液体を効率よく吐
出できる吐出方式において、液体の吐出量に影響する液
体の温度等の状態量に基づいて、発熱体の駆動パルスの
パルス幅を制御することによって、液体の吐出量の安定
化、および液体の吐出量の制御性を向上させることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明にて用いられる第1形態の液体吐出ヘッ
ドを示す模式断面図である。
【図2】本発明にて用いられる第1形態の液体吐出ヘッ
ドの部分破断斜視図である。
【図3】従来のヘッドにおける気泡からの圧力伝搬を示
す模式図である。
【図4】本発明にて用いられる第1形態のヘッドにおけ
る気泡からの圧力伝搬を示す模式図である。
【図5】本発明にて用いられる第1形態のヘッドにおけ
る液体の流れを説明するための模式図である。
【図6】本発明にて用いられる第2形態の液体吐出ヘッ
ドの部分破断斜視図である。
【図7】本発明にて用いられる第3形態の液体吐出ヘッ
ドの部分破断斜視図である。
【図8】本発明にて用いられる第4形態の液体吐出ヘッ
ドの断面図である。
【図9】本発明にて用いられる第5形態の液体吐出ヘッ
ドの模式断面図である。
【図10】本発明にて用いられる第6形態の液体吐出ヘ
ッド(2流路)の断面図である。
【図11】本発明にて用いられる第6形態の液体吐出ヘ
ッドの部分破断斜視図である。
【図12】本発明にて用いられる第6形態の液体吐出ヘ
ッドにおける可動部材の動作を説明するための図であ
る。
【図13】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの可動
部材と第1液流路の構造を説明するための図である。
【図14】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの可動
部材と液流路の構造を説明するための図である。
【図15】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの可動
部材の他の形状を説明するための図である。
【図16】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの発熱
体面積とインク吐出量の関係を示す図である。
【図17】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの可動
部材と発熱体との配置関係を示す図である。
【図18】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの発熱
体のエッジと支点までの距離と可動部材の変位量の関係
を示す図である。
【図19】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの発熱
体と可動部材との配置関係を説明するための図である。
【図20】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの縦断
面図である。
【図21】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの駆動
パルスの形状を示す模式図である。
【図22】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの供給
路を説明するための断面図である。
【図23】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの分解
斜視図である。
【図24】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの製造
方法を説明するための工程図である。
【図25】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの製造
方法を説明するための工程図である。
【図26】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの製造
方法を説明するための工程図である。
【図27】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドカート
リッジの分解斜視図である。
【図28】本発明に係る液体吐出装置の概略構成図であ
る。
【図29】本発明に係る液体吐出装置のブロック構成図
である。
【図30】本発明に係る液体吐出装置のシステム構成を
示す図である。
【図31】ヘッドキットの模式図である。
【図32】従来の液体吐出ヘッドの液流路構造を説明す
るための図である。
【図33】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドを駆動
パルスのパルス波形を示す図である。
【図34】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの吐出
量とパルス幅との関係を示す線図である。
【図35】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの吐出
量とヘッド温度との関係を示す線図である。
【図36】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの駆動
パルスの具体例を説明するための図である。
【図37】本発明に係る液体吐出装置における要部の一
例を示すブロック構成図である。
【図38】図37に示した構成における各信号のタイミ
ングチャートである。
【図39】本発明に係る液体吐出装置における要部の他
の例を示すブロック構成図である。
【図40】図39に示した構成における各信号のタイミ
ングチャートである。
【図41】図39に示した構成における処理手順を示す
フローチャートである。
【図42】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの駆動
パルスの他の例のパルス波形を示す図である。
【図43】(a)は、図42中の1のパルス波形を発熱
体に印加した場合の液吐出状態の説明図、(b)は、図
42中の1′のパルス波形を発熱体に印加した場合の液
吐出状態の説明図である。
【図44】本発明にて用いられる液体吐出ヘッドの駆動
パルスのインターバルタイムと吐出量との関係の説明図
である。
【図45】本発明によるPWM制御の形態1を説明する
ための要部の断面図である。
【図46】図45のZ軸線上における温度分布の説明図
である。
【図47】本発明によるPWM制御の形態1の説明図で
ある。
【図48】液体温度と液体粘度との関係の説明図であ
る。
【図49】液体の表面張力と吐出量との関係の説明図で
ある。
【図50】本発明によるPWM制御の形態2を説明する
ための要部の断面図である。
【図51】本発明によるPWM制御の形態3を説明する
ための要部の断面図である。
【図52】本発明によるPWM制御の形態3の説明図で
ある。
【図53】本発明によるPWM制御の形態4を説明する
ためのヘッドの要部の断面図である。
【図54】本発明によるPWM制御の形態4を説明する
ための他のヘッドの要部の断面図である。
【図55】本発明によるPWM制御の形態4の説明図で
ある。
【図56】本発明によるPWM制御の形態4の実施結果
の説明図である。
【図57】本発明によるPWM制御の形態4の実施装置
の斜視図である。
【符号の説明】
1 素子基板 2 発熱体 3 面積中心 10 液流路 11 気泡発生領域 12 供給路 13 共通液室 14 第1液流路 15 第1共通液室 16 第2液流路 17 第2共通液室 18 吐出口 19 狭窄部 20 第1供給路 21 第2供給路 22 第1液流路壁 23 第2液流路壁 24 凸部 30 分離壁 31 可動部材 32 自由端 33 支点 34 支持部材 35 スリット 36 気泡発生領域前壁 37 気泡発生領域側壁 40 気泡 45 液滴 50 溝付き部材 51 オリフィスプレート 70 支持体 78 ばね 80 供給部材
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 中田 佳恵 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (72)発明者 樫野 俊雄 東京都大田区下丸子3丁目30番2号 キ ヤノン株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−31918(JP,A) 特開 平5−169659(JP,A) 特開 平6−336023(JP,A) 特開 平5−64890(JP,A) 特開 平8−39807(JP,A) 特開 平7−205425(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B41J 2/01 B41J 2/05

Claims (29)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 液体を吐出する吐出口と、液体に気泡を
    発生させるために用いられる熱を発生する発熱体が配さ
    れた気泡発生領域と、前記発熱体と距離を隔てて前記気
    泡発生領域に面して配され、第1の位置と該第1の位置
    よりも前記気泡発生領域から遠い第2の位置との間を変
    位可能な可動部材とを含む流路を有し、該可動部材を、
    前記気泡発生領域での気泡の発生に基づく圧力によっ
    て、前記第1の位置から前記第2の位置へ変位させ、前
    記可動部材の変位によって前記気泡を吐出口に向かう方
    向の上流よりも下流に大きく膨張させることで液体を吐
    出する液体吐出ヘッドであって、 前記液体の温度を検出する検出手段を備え、 前記発熱体より上流側の前記流路の内壁面は、前記発熱
    体と実質的に平坦もしくはなだらかに繋がることを特徴
    とする液体吐出ヘッド。
  2. 【請求項2】 流路中に配された発熱体に沿って前記発
    熱体と実質的に平坦もしくはなだらかに繋がる前記発熱
    体より上流側の前記流路の内壁面の上から前記発熱体の
    上へ液体を供給し、供給された液体に前記発熱体が発生
    した熱を作用させることで気泡を生じさせ、該気泡の発
    生に基づく圧力によって、前記発熱体と距離を隔てて前
    記発熱体と対向するように配され、前記液体の吐出口側
    に自由端を有する可動部材の自由端を変位させ、該可動
    部材の変位によって前記圧力を前記吐出口側に導くこと
    で液体を吐出する液体吐出ヘッドであって、 前記液体の温度を検出する検出手段を備えたことを特徴
    とする液体吐出ヘッド。
  3. 【請求項3】 液体を吐出するための吐出口に連通する
    第1の液流路と、前記液体に気泡を発生させるために用
    いられる熱を発生する発熱体が配された気泡発生領域を
    有する第2の液流路と、前記吐出口側に自由端を有し前
    記第1の液流路と前記気泡発生領域との間に前記発熱体
    と距離を隔てて配された可動部材とを有し、前記気泡発
    生領域に気泡を発生させ、該気泡の発生による圧力に基
    づいて前記可動部材の自由端を前記第1の液流路側に変
    位させ、該可動部材の変位によって前記圧力を前記第1
    の液流路の前記吐出口側に導くことで液体を吐出する液
    体吐出ヘッドであって、 前記液体の温度を検出する検出手段を備え、 前記発熱体より上流側の前記第2の液流路の内壁面は、
    前記発熱体と実質的に平坦もしくはなだらかに繋がるこ
    とを特徴とする液体吐出ヘッド。
  4. 【請求項4】 前記可動部材の自由端は、前記発熱体の
    面積中心より下流側に対向するように配されていること
    を特徴とする請求項2または3に記載の液体吐出ヘッ
    ド。
  5. 【請求項5】 前記検出手段は、前記第1、第2の液通
    路の少なくとも一方における液体の温度を検出する温度
    検出手段であることを特徴とする請求項3に記載の液体
    吐出ヘッド。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれかに記載の液体
    吐出ヘッドを用いて液体を吐出する方法であって、 前記検出手段の検出結果に基づいて前記発熱体に供給す
    る駆動パルスのパルス幅を制御することを特徴とする液
    体吐出方法。
  7. 【請求項7】 液体を吐出する吐出口と、液体に気泡を
    発生させるために用いられる熱を発生する発熱体が配さ
    れた気泡発生領域と、前記発熱体と距離を隔てて前記気
    泡発生領域に面して配され、第1の位置と該第1の位置
    よりも前記気泡発生領域から遠い第2の位置との間を変
    位可能な可動部材とを含む流路を有し、前記発熱体より
    上流側の前記流路の内壁面が前記発熱体と実質的に平坦
    もしくはなだらかに繋がる液体吐出ヘッドを用いた液体
    吐出方法であって、 前記可動部材を、前記気泡発生領域での気泡の発生に基
    づく圧力によって、前記第1の位置から前記第2の位置
    へ変位させ、前記可動部材の変位によって前記気泡を吐
    出口に向かう方向の上流よりも下流に大きく膨張させる
    ことで液体を吐出する工程と、 前記液体の吐出動作の頻度に基づいて、前記液体の温度
    を推定する工程と、 前記推定した温度に基づいて前記発熱体に供給する駆動
    パルスのパルス幅を制御する工程と、 を有したことを特徴とする液体吐出方法。
  8. 【請求項8】 流路中に配された発熱体に沿って前記発
    熱体と実質的に平坦もしくはなだらかに繋がる前記発熱
    体より上流側の前記流路の内壁面の上から前記発熱体の
    上へ液体を供給し、供給された液体に前記発熱体が発生
    した熱を作用させることで気泡を生じさせ、該気泡の発
    生に基づく圧力によって、前記発熱体と距離を隔てて前
    記発熱体と対向するように配され、前記液体の吐出口側
    に自由端を有する可動部材の自由端を変位させ、該可動
    部材の変位によって前記圧力を前記吐出口側に導くこと
    で液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出方法
    であって、 前記液体の吐出動作の頻度に基づいて、前記液体の温度
    を推定する工程と、 前記推定した温度に基づいて前記発熱体に供給する駆動
    パルスのパルス幅を制御する工程と、 を有したことを特徴とする液体吐出方法。
  9. 【請求項9】 液体を吐出するための吐出口に連通する
    第1の液流路と、前記液体に気泡を発生させるために用
    いられる熱を発生する発熱体が配された気泡発生領域を
    有する第2の液流路と、前記吐出口側に自由端を有し前
    記第1の液流路と前記気泡発生領域との間に前記発熱体
    と距離を隔てて配された可動部材とを有し、前記発熱体
    より上流側の前記第2の液流路の内壁面が前記発熱体と
    実質的に平坦もしくはなだらかに繋がる液体吐出ヘッド
    を用いた液体吐出方法であって、 前記気泡発生領域に気泡を発生させ、該気泡の発生によ
    る圧力に基づいて前記可動部材の自由端を前記第1の液
    流路側に変位させ、該可動部材の変位によって前記圧力
    を前記第1の液流路の吐出口側に導くことで液体を吐出
    する工程と、 前記液体の吐出動作の頻度に基づいて、前記液体の温度
    を推定する工程と、 前記推定した温度に基づいて前記発熱体に供給する駆動
    パルスのパルス幅を制御する工程と、 を有したことを特徴とする液体吐出方法。
  10. 【請求項10】 液体を吐出するための吐出口に連通す
    る第1の液流路と、前記液体に気泡を発生させるために
    用いられる熱を発生する発熱体が配された気泡発生領域
    を有する第2の液流路と、前記吐出口側に自由端を有し
    前記第1の液流路と前記気泡発生領域との間に前記発熱
    体と距離を隔てて配された可動部材と、前記第1、第2
    の液流路のいずれか一方における液体の温度を検出する
    検出手段とを有し、前記発熱体より上流側の前記第2の
    液流路の内壁面が前記発熱体と実質的に平坦もしくはな
    だらかに繋がる液体吐出ヘッドを用いた液体吐出方法で
    あって、 前記気泡発生領域に気泡を発生させ、該気泡の発生によ
    る圧力に基づいて前記可動部材の自由端を前記第1の液
    流路側に変位させ、該可動部材の変位によって前記圧力
    を前記第1の液流路の吐出口側に導くことで液体を吐出
    する工程と、 前記検出した温度に基づいて、前記第1、第2の液流路
    の他方における液体の温度を推定する工程と、 前記検出した温度と前記推定した温度に基づいて前記発
    熱体に供給する駆動パルスのパルス幅を制御する工程
    と、 を有したことを特徴とする液体吐出方法。
  11. 【請求項11】 前記液体の温度を推定する工程では、
    画像データに基づき前記液体の温度を推定することを特
    徴とする請求項7から9のいずれかに記載の液体吐出方
    法。
  12. 【請求項12】 前記可動部材の自由端は、前記発熱体
    の面積中心より下流側に対向するように配されているこ
    とを特徴とする請求項8ないし10のいずれかに記載の
    液体吐出方法。
  13. 【請求項13】 前記第1の液流路に供給される液体と
    前記第2の液流路に供給される液体とが同一液体である
    ことを特徴とする請求項9または10に記載の液体吐出
    方法。
  14. 【請求項14】 前記第1の液流路に供給される液体と
    前記第2の液流路に供給される液体とが異なる液体であ
    ることを特徴とする請求項9または10に記載の液体吐
    出方法。
  15. 【請求項15】 前記第2の液流路に供給される液体
    は、前記第1の液流路に供給される液体に比べ、低粘度
    性、発泡性、熱安定性の少なくとも1つの性質において
    優れている液体であることを特徴とする請求項9または
    10に記載の液体吐出方法。
  16. 【請求項16】 前記液体を吐出する工程は、前記発熱
    体に、先の第1パルスと次の第2パルスとに分割された
    駆動パルスを供給する工程と、前記第1のパルスによ
    り、前記液体を前記吐出口から吐出させない程度に予熱
    する工程と、前記第2のパルスにより、前記液体を前記
    吐出口から吐出させるように加熱して気泡を発生させる
    工程とを含み、 前記発熱体に供給される駆動パルスのパルス幅を制御す
    る工程では、前記第1パルスのパルス幅、第2パルスの
    パルス幅、第1、第2パルス間のインターバルタイムの
    少なくとも1つを制御対象とすることを特徴とする請求
    項6から15のいずれかに記載の液体吐出方法。
  17. 【請求項17】 前記液体の温度に対応する該液体の粘
    度、表面張力の少なくとも1つの変化に基づいて、前記
    駆動パルスのパルス幅を制御することを特徴とする請求
    項6から16のいずれかに記載の液体吐出方法。
  18. 【請求項18】 請求項1から5のいずれかに記載の液
    体吐出ヘッドを用いて液体を吐出する装置であって、 前記検出手段の検出結果に基づいて前記発熱体に供給す
    る駆動パルスのパルス幅を制御する制御手段を備えたこ
    とを特徴とする液体吐出装置。
  19. 【請求項19】 液体を吐出する吐出口と、液体に気泡
    を発生させるために用いられる熱を発生する発熱体が配
    された気泡発生領域と、前記発熱体と距離を隔てて前記
    気泡発生領域に面して配され、第1の位置と該第1の位
    置よりも前記気泡発生領域から遠い第2の位置との間を
    変位可能な可動部材とを含む流路を有し、前記発熱体よ
    り上流側の前記流路の内壁面が前記発熱体と実質的に平
    坦もしくはなだらかに繋がる液体吐出ヘッドを用い、 該可動部材を、前記気泡発生領域での気泡の発生に基づ
    く圧力によって、前記第1の位置から前記第2の位置へ
    変位させ、前記可動部材の変位によって前記気泡を吐出
    口に向かう方向の上流よりも下流に大きく膨張させるこ
    とで液体を吐出する液体吐出装置であって、 前記液体の吐出動作の頻度に基づき、前記液体の温度を
    推定する推定手段と、 前記推定手段により推定した温度に基づいて前記発熱体
    に供給する駆動パルスのパルス幅を制御する制御手段
    と、 を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
  20. 【請求項20】 流路中に配された発熱体に沿って前記
    発熱体と実質的に平坦もしくはなだらかに繋がる前記発
    熱体より上流側の前記流路の内壁面の上から前記発熱体
    の上へ液体を供給し、供給された液体に前記発熱体が発
    生した熱を作用させることで気泡を生じさせ、該気泡の
    発生に基づく圧力によって、前記発熱体と距離を隔てて
    前記発熱体と対向するように配され、前記液体の吐出口
    側に自由端を有する可動部材の自由端を変位させ、該可
    動部材の変位によって前記圧力を前記吐出口側に導くこ
    とで液体を吐出する液体吐出ヘッドを用いた液体吐出装
    置であって、 前記液体の吐出動作の頻度に基づき、前記液体の温度を
    推定する推定手段と、 前記推定手段により推定した温度に基づいて前記発熱体
    に供給する駆動パルスのパルス幅を制御する制御手段
    と、 を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
  21. 【請求項21】 液体を吐出するための吐出口に連通す
    る第1の液流路と、前記液体に気泡を発生させるために
    用いられる熱を発生する発熱体が配された気泡発生領域
    を有する第2の液流路と、前記吐出口側に自由端を有し
    前記第1の液流路と前記気泡発生領域との間に前記発熱
    体と距離を隔てて配された可動部材とを有し、前記発熱
    体より上流側の前記第2の液流路の内壁面が前記発熱体
    と実質的に平坦もしくはなだらかに繋がる液体吐出ヘッ
    ドを用い、 前記気泡発生領域に気泡を発生させ、該気泡の発生によ
    る圧力に基づいて前記可動部材の自由端を前記第1の液
    流路側に変位させ、該可動部材の変位によって前記圧力
    を前記第1の液流路の前記吐出口側に導くことで液体を
    吐出する液体吐出装置であって、 前記液体の吐出動作の頻度に基づき、前記液体の温度を
    推定する推定手段と、 前記推定手段により推定した温度に基づいて前記発熱体
    に供給する駆動パルスのパルス幅を制御する制御手段
    と、 を備えたことを特徴とする液体吐出装置。
  22. 【請求項22】 液体を吐出するための吐出口に連通す
    る第1の液流路と、前記液体に気泡を発生させるために
    用いられる熱を発生する発熱体が配された気泡発生領域
    を有する第2の液流路と、前記吐出口側に自由端を有し
    前記第1の液流路と前記気泡発生領域との間に前記発熱
    体と距離を隔てて配された可動部材と、前記第1、第2
    の液流路のいずれか一方における液体の温度を検出する
    検出手段とを有し、前記発熱体より上流側の前記第2の
    液流路の内壁面が前記発熱体と実質的に平坦もしくはな
    だらかに繋がる液体吐出ヘッドを用い、 前記気泡発生領域に気泡を発生させ、該気泡の発生によ
    る圧力に基づいて前記可動部材の自由端を前記第1の液
    流路側に変位させ、該可動部材の変位によって前記圧力
    を前記第1の液流路の吐出口側に導くことで液体を吐出
    する液体吐出装置であって、 前記検出手段により検出した温度に基づいて、前記第
    1、第2の液流路の他方における液体の温度を推定する
    推定手段と、 前記検出手段により検出した温度と前記推定手段により
    推定した温度に基づいて前記発熱体に供給する駆動パル
    スのパルス幅を制御する制御手段と、を備えたことを特
    徴とする液体吐出装置。
  23. 【請求項23】 前記推定手段は、画像データに基づき
    前記液体の温度を推定することを特徴とする請求項19
    から21のいずれかに記載の液体吐出装置。
  24. 【請求項24】 前記可動部材の自由端は、前記発熱体
    の面積中心より下流側に対向するように配されているこ
    とを特徴とする請求項20ないし23のいずれかに記載
    の液体吐出装置。
  25. 【請求項25】 前記第1の液流路に供給される液体と
    前記第2の液流路に供給される液体とが同一液体である
    ことを特徴とする請求項21または22に記載の液体吐
    出装置。
  26. 【請求項26】 前記第1の液流路に供給される液体と
    前記第2の液流路に供給される液体とが異なる液体であ
    ることを特徴とする請求項21または22に記載の液体
    吐出装置。
  27. 【請求項27】 前記第2の液流路に供給される液体
    は、前記第1の液流路に供給される液体に比べ、低粘度
    性、発泡性、熱安定性の少なくとも1つの性質において
    優れている液体であることを特徴とする請求項21また
    は22に記載の液体吐出装置。
  28. 【請求項28】 前記発熱体に、先の第1パルスと次の
    第2パルスとに分割された駆動パルスを供給し、前記第
    1のパルスにより、前記液体を前記吐出口から吐出させ
    ない程度に予熱し、前記第2のパルスにより、前記液体
    を前記吐出口から吐出させるように加熱して気泡を発生
    させる駆動パルス供給手段を更に備え、 前記制御手段は、前記第1パルスのパルス幅、第2パル
    スのパルス幅、第1、第2パルス間のインターバルタイ
    ムの少なくとも1つを制御対象とすることを特徴とする
    請求項18から27のいずれかに記載の液体吐出装置。
  29. 【請求項29】 前記制御手段は、前記液体の温度に対
    応する該液体の粘度、表面張力の少なくとも1つの変化
    に基づいて、前記駆動パルスのパルス幅を制御すること
    を特徴とする請求項18から28のいずれかに記載の液
    体吐出装置。
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