JP3436452B2 - シールドセグメント及びその製造方法 - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、土木工事における
トンネル施工でのシールド工法におけるトンネル覆工用
セグメントおよびその製造方法に関するものである。

【０００２】

【従来の技術】従来の覆工用（シールド）セグメントと
しては鋼製、鉄筋コンクリート製、ダクタイル鋳鉄製の
ものが主に使用されている。

【０００３】その使用の区別はシールドトンネルの口
径、目的、場所、製造費用等によって使い分けがなされ
るが、ほとんどのものが５〜数10ピースに分割されたセ
グメントピースをボルト・ナットで締結して組み立てる
ものである。

【０００４】最近はシールド工法の自動化にともない、
ボルト継ぎ手のないセグメントや鋼材とコンクリートの
合成のセグメントも出現している。

【０００５】しかし、セグメントは従来の製造目的に沿
って製造されており、付加価値を与えられたセグメント
はほとんどない。

【０００６】

【発明が解決しようとする課題】現在使用されているセ
グメントは、種類によって問題の発生の仕方が異なる
が、一般的には次のような問題点がある。

【０００７】鋼製・ダクタイル鋳鉄製・コンクリート製
の大部分では仕上げ面（化粧）としての二次覆工が必要
であり、コンクリート製ではクラック（ひび割れ）の発
生や漏水を生じるおそれがある。

【０００８】また、全てのセグメントにおいて、硫化水
素、酸等に対する耐腐食性に問題があり、周辺の変位に
対し、フレキシブルな構造でなく、粗度係数が大きく、
加工・製作に手間がかかり量産化が図れない。

【０００９】さらにトンネルが大断面になるとセグメン
ト自重により発生する応力が問題となる。

【００１０】本発明の目的は前記従来例の不都合を解消
し、仕上がり面がきれいで仕上げ面としての二次覆工が
不要となり、見栄えや粗度係数も従来のセグメントに比
べ優れており、また、クラックの発生や漏水の防止も完
全で、かつ、耐腐食性もあり、また、周辺の変位に対応
するフレキシブル性を備えることもでき、加工、製作の
手間も軽減でき安価に製作でき、さらにトンネルが大断
面であってもセグメンシ自重により発生する応力を抑え
ることかでき、製造も容易なシールドセグメントおよび
その製造方法を提供することにある。

【００１１】

【課題を解決するための手段】本発明は前記目的を達成
するため、構成として、外周の全６面を構成するセグメ
ントピース外殻を合成樹脂製とし、その内部に鉄筋を配
置するとともにコンクリートを打設して合成樹脂と鉄筋
コンクリートの合成セグメントとしたこと、および、セ
グメントピース外殻のトンネル周方向接合面のうち、一
方には突条を、他方にはこの突条の嵌合溝を形成したこ
と、および、セグメントピース外殻のセグメントリング
間の接合面のうち、一方には突条を、他方にはこの突条
の嵌合溝を形成したこと、および、鉄筋は高強度鉄筋で
あり、コンクリートは軽量高強度コンクリートであるこ
とを要旨とするものである。

【００１２】また、製造方法として、外周の６面を構成
する合成樹脂製のセグメントピース外殻のうち、トンネ
ル外方面側に配置される面の板を別体とし、残りの５面
の板で構成されるセグメントピース外殻の内部に高強度
鉄筋を配筋し、その後、別体としたトンネル外方面側の
面の板を５面の板で構成されるセグメントピース外殻に
取り付けて、６面の板で構成されるセグメントピース外
殻を形成し、このセグメントピース外殻内に高流動性の
軽量高強度コンクリートを打設して合成樹脂と鉄筋コン
クリートの合成セグメントを作製することを要旨とする
ものである。

【００１３】請求項１記載の本発明によれば、仕上げ面
・粗度係数については、仕上がり面が合成樹脂材とな
り、見栄えや粗度係数も従来のセグメントに比べ優れて
いる。また、使用目的に合わせ着色することが可能なた
め、カラフルな仕上げができ、そのための二次覆工が不
要となる。

【００１４】さらに、合成樹脂を不透水性のものとすれ
ば、これでコーティングした形となり鉄筋コンクリート
部分でのクラックの発生が原因の漏水は発生しない。ま
た、硫化水素、酸等による腐食については、耐腐食性の
ある合成樹脂材を使用することにより解決でき、耐候
性、耐久性が向上する。

【００１５】また、内部の鉄筋配置を構造上有利にでき
鉄筋かぶりを低減できる。

【００１６】セグメントリング間の継ぎ手を合成樹脂製
のセグメントピース外殻相互の弾性継ぎ手とすることが
でき、特に地震時の周辺地盤の変位に対応する構造とし
ては他のセグメントに比べフレキシブルに対応ができ、
加工・製作の手間については、合成樹脂加工工場などで
セグメントピース外殻の大量生産が可能で、どこでもコ
ンクリートを打設し製作することができる。

【００１７】請求項２、請求項３記載の本発明によれ
ば、前記作用に加えて、トンネル周方向およびセグメン
トリング間ではセグメント相互はセグメントピース外殻
の突条と嵌合溝との係合により接合がなされるので、ボ
ルト・ナットなどでの締結が不要である。

【００１８】請求項４記載の本発明によれば、前記作用
に加えて、セグメントを高強度化でき、覆工厚さを低減
でき、また、セグメント重量も低減でき、トンネルが大
断面の場合のセグメント自重により発生する応力を解消
できる。

【００１９】請求項５記載の本発明によれば、トンネル
外方面側に配置される面の板を除く５面の板で構成され
る合成樹脂製のセグメントピース外殻の内部に鉄筋を配
筋した後、トンネル外方面側に配置される面の板を取り
付けて６面のセグメントピース外殻を形成し、この状態
でセグメントピース外殻内にコンクリートを打設するか
ら、セグメントピース外殻を型枠として使用でき、合成
樹脂とコンクリートとの合成セグメントを容易に製造で
きる。

【００２０】請求項６記載の本発明によれば、前記作用
に加えて、 コンクリートの打設はセグメントピース外
殻に設けた打設孔から行えるから簡単であり、高流動コ
ンクリートの使用により従来実施してきた振動締固め作
業を大幅に軽減できる。

【００２１】

【発明の実施の形態】以下、図面について本発明の実施
の形態を詳細に説明する。図１は本発明のシールドセグ
メントの実施形態を示す斜視図、図２はセグメントピー
ス外殻の分解斜視図である。

【００２２】図３に示すようにセグメントピースの種類
としては、一例としてＡ形で等分割（偶数ピース）とし
たもので、図中１は合成樹脂製のセグメントピース外
殻、２は鉄筋コンクリートで、本発明のシールドセグメ
ントは合成樹脂と鉄筋コンクリートの合成セグメントで
ある。

【００２３】この合成樹脂製のセグメントピース外殻１
は図２に示すように、湾曲する底板３とその周囲に一体
的に立ち上がる側板４ａ，４ｂ，４ｃ，４ｄと、これと
は別体のトンネル外方面側に配置される上板５とからな
る偏平箱状に形成した。

【００２４】これら側板のうち、側板４ａ，４ｂはセグ
メントリング間の接合部を形成するものであり、このう
ち側板４ａには図４にも示すように突条６を中央長さ方
向に一体形成し、側板４ｂには前記突条６に対応する嵌
合溝７を中央長さ方向に一体形成した。

【００２５】側板４ｃ，４ｄはトンネル周方向のセグメ
ント間の接合部を形成するものであり、前記側板４ａ，
４ｂと同様にして図３、図５にも示すように側板４ｃに
突条８を中央長さ方向に一体形成し、側板４ｄには前記
突条８に対応する嵌合溝９を中央長さ方向に一体形成し
た。

【００２６】また、図６に示すようにセグメントピース
外殻１は内側のコンクリート打設面にコンクリートとの
一体性を確保するための複数の突起10を適宜間隔で突設
する。

【００２７】図中11はセグメントピース外殻１の例えば
側板４ａに形成したコンクリートの打設孔、12はエア抜
き孔を示す。

【００２８】以上のように構成されるセグメントピース
外殻１を用いてセグメントを製作するには、トンネル外
方面側のプレートである上板５を除く５面のセグメント
ピース外殻１の中に、高強度の鉄筋２ａを組立て、その
後、上板５をトンネル外方面側に接着により接合し、中
空のセグメントピース外殻１を作製する。この場合の鉄
筋２ａの組立ては、工場で予め組み立てたものをセグメ
ントピース外殻１の内部に配設するが、セグメントピー
ス外殻１内に現場で組み立てることもできる。

【００２９】高強度の鉄筋２ａとしては、ＵＳＤ685
Ａ、ＵＳＤ685 Ｂ、ＵＳＤ980 、ＵＳＤ785 、ＵＳＤ12
57などが好適である。

【００３０】かかるセグメントピース外殻１の製造は合
成樹脂加工工場等で必要なシールド口径に合わせた型を
用い、型押し成形またはその他の方法で成形する。

【００３１】セグメントピース外殻１の材質としての合
成樹脂材は、塩化ビニル、アクリル樹脂、ナイロン、ポ
リカーボネート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ＡＢ
Ｓ樹脂等の熱可塑性樹脂成形品、ウレタン、ナイロン、
ジニクロペンタジエン等の反応性樹脂のＲＩＭ成形品や
不飽和ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂等のＦＲＰ成形
品等の中からシールドの使用目的に合わせて選定する。

【００３２】次に、打設孔11からコンクリートをセグメ
ントピース外殻１の内部に打設する。このコンクリート
の打設は工場または現場で行い、セグメントを仕上げ
る。コンクリートの種類としては、軽量・高強度、高流
動のものを使用する。これにより、高強度の鉄筋２ａの
使用と相まってセグメント厚さを低減でき、また、振動
締固めの作業が省略できる。さらに、セグメントピース
外殻１を型枠として使用でき、また、内部に打設したコ
ンクリートは突起10によりセグメントピース外殻１との
一体化が図れ、合成樹脂と鉄筋コンクリート２との合成
セグメントを容易に製造できる。

【００３３】前記高強度軽量コンクリートとしては、高
強度人工軽量骨材を用いたコンクリートで、例えば、焼
成フライアッシュ骨材、石灰岩砕石、早強度高炉セメン
ト、フライアッシュ混入早強ポルトランドセメント、シ
リカフューム、および高性能減水剤からなる。

【００３４】セグメントの組立ては、シールド機の真空
吸引式のエレクターでセグメントを把持して行い、図７
に示すように一例として全てのセグメントに偶数に等分
割したＡ型を使用し、トンネル周方向のセグメント相互
間の接合は図８のようにセグメントピース外殻１の突条
８と嵌合溝９との係合により行い、セグメントリング間
の接合は図９のようにセグメントピース外殻１の突条６
と嵌合溝７との係合により行う。

【００３５】この場合、セグメントが台形のときはセグ
メントリング間の接合はトンネルの長さ方向でセグメン
トの前後が交互に逆向きとなるため、側板４ｃに突条
８、側板４ｄに嵌合溝９を形成したタイプのものと、側
板４ｃに嵌合溝９、側板４ｄに突条８を形成したタイプ
のものとを用意する。

【００３６】かかるセグメントリング間、セグメント間
の接合はいずれも合成樹脂製の側板４ａ，４ｂ，４ｃ，
４ｄの接合によるフレキシブルなものとなる。

【００３７】なお、前記実施形態ではセグメントリング
間、セグメント間の接合は突条と嵌合溝との係合による
ものとしたが、これに限定されるものではなく、通しボ
ルト継ぎ手、鋼製金具式短ボルト継ぎ手、コッター式継
ぎ手、ピン継ぎ手等を適宜採択することもできる。ボル
ト式継ぎ手の場合、ボルトボックスには合成樹脂製の蓋
を施し、ボックス内を充填材で充填する。

【００３８】また、機能上、トンネル内周面側にジベル
やフックが必要な場合、施工時のみ必要なときは図10
（ａ）に示すように施工時には鋼製ジベル13を使用し、
完成時には図10（ｂ）に示すように鋼製ジベル13に替え
て樹脂製の蓋ネジ14を施す。

【００３９】完成後も必要とするときは図11のように合
成樹脂製ジベル15を使用する。

【００４０】さらに従来型のエレクターでセグメントを
把持する場合は、セグメントに把持部を設けることにな
るが、この把持部にも合成樹脂製の蓋を施し、内部を充
填材で充填する。

【００４１】

【発明の効果】以上述べたように本発明のシールドセグ
メントは、トンネル内周面が全て合成樹脂製となるの
で、耐腐食性、耐候性に優れ、また、粗度係数が小さく
平滑性に優れ、化粧仕上げとしての二次覆工が不要とな
る。

【００４２】セグメント全体が合成樹脂で覆われるた
め、鉄筋かぶりの低減を図ることができ、鉄筋の腐食も
ほとんど生じない。また、セグメントクラックからの漏
水もない。

【００４３】継ぎ手面が樹脂製となるため、継ぎ手の剛
性低減によりトンネル全体の耐震性（フレキシビリティ
ー）が向上する。

【００４４】高強度鉄筋、高流動の軽量高強度コンクリ
ートの使用により、セグメントを高強度化でき、覆工厚
さの低減が可能となる。この場合、高強度コンクリート
使用によるひび割れの発生に対しても、樹脂による全面
被覆により構造上の問題は生じない。

【００４５】軽量高強度コンクリートの使用によりセグ
メント重量を低減でき、特に大断面トンネルの場合にセ
グメント自重による応力発生を低減できるものである。

【００４６】また、内部に鉄筋を配筋した６面の合成樹
脂製の板で構成するセグメントピース外殻内に後からコ
ンクリートを打設するから、セグメントピース外殻を型
枠として使用でき合成樹脂と鉄筋コンクリートとの合成
セグメントを容易に製造できるものである。

【図面の簡単な説明】

【図１】本発明のシールドセグメントの実施形態を示す
斜視図である。

【図２】本発明のシールドセグメントでのセグメントピ
ース外殻の分解斜視図である。

【図３】本発明のシールドセグメントでのセグメントピ
ース外殻の縦断正面図である。

【図４】本発明のシールドセグメントでのセグメントピ
ース外殻の縦断側面図である。

【図５】本発明のシールドセグメントでのセグメントピ
ース外殻の側面図である。

【図６】本発明のシールドセグメントでのセグメントピ
ース外殻の要部の縦断正面図である。

【図７】本発明のシールドセグメントを組み立てた状態
の縦断正面図である。

【図８】セグメントのトンネル周方向接合部の縦断正面
図である。

【図９】セグメントのリング間接合部の縦断側面図であ
る。

【図１０】セグメントのトンネル内面側にジベルを取り
付ける場合のセグメントの縦断正面図である。

【図１１】セグメントのトンネル内面側にジベルを取り
付ける他の場合のセグメントの縦断正面図である。

【符号の説明】

１…セグメントピース外殻 ２…鉄筋コンクリー
ト ２ａ…鉄筋 ３…底板 ４ａ，４ｂ，４ｃ，
４ｄ…側板 ５…上板 ６…突条 ７…嵌合溝 ８…突条 ９…嵌合溝 10…突起 11…打設孔 12…エア抜き孔 13…鋼製ジベル 14…蓋ネジ 15…合成樹脂製ジベル

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 岡部 強 大阪府大阪市西区阿波座一丁目３番15号 鹿島建設株式会社 関西支店内 (72)発明者 本橋 賢一 東京都調布市飛田給二丁目19番１号 鹿 島建設株式会社 技術研究所内 (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) E21D 11/04 E21D 11/08

Claims (6)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 外周の全６面を構成するセグメントピー
   ス外殻を合成樹脂製とし、その内部に鉄筋を配置すると
   ともにコンクリートを打設して合成樹脂と鉄筋コンクリ
   ートの合成セグメントとしたことを特徴とするシールド
   セグメント。
2. 【請求項２】 セグメントピース外殻のトンネル周方向
   接合面のうち、一方には突条を、他方にはこの突条の嵌
   合溝を形成した請求項１記載のシールドセグメント。
3. 【請求項３】 セグメントピース外殻のセグメントリン
   グ間の接合面のうち、一方には突条を、他方にはこの突
   条の嵌合溝を形成した請求項１または請求項２のいずれ
   かに記載のシールドセグメント。
4. 【請求項４】 鉄筋は高強度鉄筋であり、コンクリート
   は軽量高強度コンクリートである請求項１記載のシール
   ドセグメント。
5. 【請求項５】 外周の６面を構成する合成樹脂製のセグ
   メントピース外殻のうち、トンネル外方面側に配置され
   る面の板を別体とし、残りの５面の板で構成されるセグ
   メントピース外殻の内部に高強度鉄筋を配筋し、その
   後、別体としたトンネル外方面側の面の板を５面の板で
   構成されるセグメントピース外殻に取り付けて、６面の
   板で構成されるセグメントピース外殻を形成し、このセ
   グメントピース外殻内に軽量高強度コンクリートを打設
   して合成樹脂と鉄筋コンクリートの合成セグメントを作
   製することを特徴としたシールドセグメントの製造方
   法。
6. 【請求項６】 セグメントピース外殻はコンクリートの
   打設孔が形成される請求項５記載のシールドセグメント
   の製造方法。