JP3435080B2 - 被膜特性に優れた無方向性電磁鋼板 - Google Patents

被膜特性に優れた無方向性電磁鋼板

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JP3435080B2 JP30310298A JP30310298A JP3435080B2 JP 3435080 B2 JP3435080 B2 JP 3435080B2 JP 30310298 A JP30310298 A JP 30310298A JP 30310298 A JP30310298 A JP 30310298A JP 3435080 B2 JP3435080 B2 JP 3435080B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は高い占積率を有し、
優れた打抜き性と密着性を保持し、さらに歪取り焼鈍後
のすべり性、密着性、耐蝕性に優れた絶縁被膜を有する
無方向性電磁鋼板に関するものである。
【0002】
【従来の技術】無方向性電磁鋼板を用いてモーターやト
ランス等の積層鉄芯を製造する場合には、通常、電磁鋼
板を剪断加工あるいは打抜きにより単位鉄芯とした後積
層し、さらにボルト締め、カシメ、溶接あるいは接着等
により固着するものである。積層鉄芯は固着後、巻線コ
イルの組込み工程などの処理が施され、最終的にモータ
ーやトランスが組み立てられるものである。
【0003】一般に無方向性電磁鋼板の表面には絶縁被
膜が施されているが、この絶縁被膜の特性により、鋼板
の溶接性、打抜き性、耐蝕性などの特性が大きく左右さ
れることから、絶縁性だけでなく、優れた被膜特性を付
与することが重要である。従来、無方向性電磁鋼板の絶
縁被膜としては無機系、有機系、無機有機混合系の絶縁
被膜が知られているが、無機系絶縁被膜では有機系や、
無機有機混合系と比較して、打抜き性が劣っており、有
機系絶縁被膜では無機系、無機有機混合系と比較して歪
取り焼鈍後の密着性、耐蝕性が劣っており使用に耐えな
い。
【0004】無機有機混合系絶縁被膜はこれら無機系、
有機系絶縁被膜の難点を解決すべく鋭意研究が重ねられ
ており、特公昭50−15013号公報では、重クロム
酸塩と酢酸ビニル、ブタジエン−スチレン共重合物、ア
クリル樹脂などの有機樹脂エマルジョンを主成分とする
処理液を用いて絶縁被膜を形成することにより高い占積
率、優れた密着性、打抜き性などの被膜特性が得られる
絶縁被膜形成方法が提案されている。
【0005】ところが、従来の無方向性電磁鋼板の無機
有機混合系絶縁被膜では重クロム酸塩の使用にみられる
ように被膜成分としてクロム酸化合物が使用されてい
る。このため、電磁鋼板の製造工程、あるいは電磁鋼板
の需要家における環境問題の厳しい現在ではクロム酸化
合物を含有しない絶縁被膜処理技術の開発が望まれてい
る。そこで、特開平5−78855号公報では100〜
350g/lのりん酸2水素アルミニウム(P2 5
算)水溶液とpH1〜3の合成樹脂水性エマルジョンと
を有機樹脂不揮発物をりん酸2水素アルミニウムと合成
樹脂水性エマルジョンの両者の不揮発物の10〜40重
量%とすることにより有害物質を含まずポットライフの
長い絶縁被膜形成用組成物を提供する技術が開示されて
いる。また、特開平6−330338号公報では特定組
成のりん酸塩と特定粒径の有機樹脂エマルジョンを特定
割合配合し、鋼板に塗布焼き付けることによりクロム酸
化合物を含まない処理液で従来のクロム酸化合物を含有
する絶縁被膜と同等の被膜特性を有しかつ優れた歪取り
焼鈍後のすべり性を保持する処理方法が開示されてい
る。
【0006】一方、同じく環境問題の1 つとして注目さ
れている産業廃棄物削減の観点からコイルの梱包を簡素
化あるいはリサイクル化する傾向に有り、従って絶縁被
膜の諸特性の中でも特に優れた耐食性が求められてい
る。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】しかし、クロム酸化合
物を使用した絶縁被膜と比較してりん酸塩を用いた絶縁
被膜では条件が厳しい場合、耐食性が劣っていた。即
ち、これらのりん酸塩と有機樹脂エマルジョンを用いた
技術では、ゲル化までは進行しないものの、処理液ある
いは塗布焼き付け工程中でしばしば有機樹脂エマルジョ
ンが凝集し、その結果、形成された絶縁被膜中に有機樹
脂が偏在化したり、あるいはクロム酸化合物と有機樹脂
との間に見られるような化学反応が存在しないために耐
食性が劣化するという問題点があることが判明した。有
機樹脂粒子が処理液中で凝集状態になっていたり焼き付
け工程中に凝集して絶縁被膜が形成された場合、有機樹
脂凝集部に水路が形成されて絶縁被膜の耐水性の低下を
もたらすものである。
【0008】本発明者らはりん酸塩を用いた絶縁被膜の
耐食性を向上させるために鋭意検討した結果、有機樹脂
の表面に存在する官能基がりん酸塩との混和性に非常に
大きな働きをしており、官能基の中でも特に水酸基とス
ルホン酸基の存在によって有機樹脂エマルジョンとりん
酸塩溶液との混和性が大きく影響されることを見出し、
本発明を完成させた。
【0009】
【課題を解決するための手段】本発明は、上記課題を解
決するためのものであって、その要旨とするところは以
下の通りである。 (1) 無方向性電磁鋼板の表面に、りん酸金属塩と、
水酸基価が5〜40mgKOH/gであって粒子径が
0.01μm 〜0.5μm の有機樹脂エマルジョンとを
含有し、前記有機樹脂エマルジョンが、りん酸金属塩1
00重量部(固形分換算)に対して5〜100重量部
(固形分換算)である処理液を塗布し、乾燥してなる絶
縁被膜を有することを特徴とする被膜特性の極めて優れ
た無方向性電磁鋼板。 (2) 有機樹脂エマルジョンが、水酸基含有モノマー
を5〜30重量部と、スルホン酸基含有モノマーを0〜
30重量部とを共重合成分として含有して得られたもの
であることを特徴とする前記(1)記載の被膜特性の極
めて優れた無方向性電磁鋼板。 3) 有機樹脂エマルジョンが、分子内にラジカル重合
性不飽和基を有する反応性乳化剤の存在下で乳化重合し
て得られたものであることを特徴とする前記(1)記載
の被膜特性の極めて優れた無方向性電磁鋼板。 (4) 絶縁被膜の付着量が0.3〜5.0g/m2
あることを特徴とする前記(1)、(2)又は(3)記
載の被膜特性の優れた電磁鋼板用電気絶縁被膜形成方
法。 (5) 処理液が、りん酸金属塩と有機樹脂エマルジョ
ンとを主成分とし、さらに非解離性水酸基、エーテル
基、エステル基を含有する水溶性低分子有機化合物を、
りん酸金属塩100重量部( 固形分換算) に対して1〜
15重量部含有することを特徴とする前記(1)、
(2)又は(3)記載の被膜特性の極めて優れた無方向
性電磁鋼板。
【0010】
【発明の実施の形態】以下、本発明を実施する具体的形
態について説明する。本発明で使用する無機化合物につ
いて説明する。本発明で使用するりん酸金属塩とはりん
酸アルミニウム、りん酸カルシウム、りん酸亜鉛、りん
酸マグネシウム等を用いることができる。りん酸金属塩
を用いる場合、りん酸金属塩をそのまま水溶液としても
良いし、りん酸溶液に金属を酸化物、水酸化物、炭酸塩
の形態で溶解せしめても良い。溶解する金属の酸化物と
しては例えば、MgO,CaO,ZnO等で、水酸化物
としてはMg(OH)2 ,Ca(OH)2 ,Zn(O
H)2 、炭酸塩としてはMgCO3 ,CaCO3 ,Zn
CO3 等である。
【0011】本発明では、その他の無機成分として必要
に応じてコロイダルシリカ、アルミナゾル、硼酸、硼酸
塩の1種または2種を用いても良い。これらを添加する
ことにより、被膜の緻密化や耐熱性の向上などの被膜改
善効果が得られるものである。
【0012】次に本発明で使用する有機樹脂について説
明する。本発明で使用する有機樹脂としては水酸基価が
5〜40であることが特徴である。本発明でいう水酸基
価とはJIS規格のK0070にて定義されている水酸
基価に準じたものであり、試料1gをアセチル化させた
とき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに必要とされ
る水酸化カリウムのmg数で示される。本発明で使用す
る場合には実際にJIS規格に沿って測定した場合のみ
ならず、理論計算によって得られた値を用いても良い。
本発明者らは有機樹脂の水酸基価がりん酸塩溶液中の有
機樹脂エマルジョンの安定性に大きく影響しており、水
酸基価が5〜40さらに好ましくは10〜25の時に非
常に混和性が優れており、従って塗布焼き付け後の絶縁
被膜中の有機樹脂の分散性に優れ極めて良好な被膜特性
が得られることを見出した。水酸基価が5〜40の値を
持つ有機樹脂エマルジョンを用いた場合、どのようなメ
カニズムで作用するのかはまだ詳細には明確ではない
が、有機樹脂エマルジョンを試料として水酸基価を測定
した場合、エマルジョン粒子表面に存在している水酸基
を測定しており、本発明範囲ではりん酸塩溶液中でもエ
マルジョン粒子表面の電気二重層が極めて安定した状態
を保持できるためと推定される。また、エマルジョン粒
子表面の水酸基がりん酸塩溶液中の金属イオンと何らか
のインターラクションを生じることにより被膜形成中に
凝集することなく均一な組成膜を形成するメカニズムも
推定される。
【0013】本発明で使用される有機樹脂としては、水
酸基価が5〜40の範囲であれば良く、したがって表面
に水酸基を持つような有機樹脂である。これらの有機樹
脂はどのようなものでも良いが、例えば主成分として
α、βモノエチレン系不飽和単量体と水酸基を含有する
単量体とから重合して得られるポリマーの1種または2
種以上の混合物である。さらに具体的には、重合せしめ
られるα、βモノエチレン系不飽和単量体としては例え
ばアクリル酸エステル類(アクリル酸メチル、アクリル
酸エチル、アクリル酸イソプロピル、アクリル酸nブチ
ル、アクリル酸2エチルへキシル、アクリル酸デシル、
アクリル酸イソオクチル、アクリル酸2エチルブチル、
アクリル酸オクチル、アクリル酸メトキシエチル、アク
リル酸エトキシエチル、アクリル酸3エトキシプロピル
等)、メタクリル酸エステル類(メタクリル酸メチル、
メタクリル酸エチル、メタクリル酸イソプロピル、メタ
クリル酸ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル
酸nへキシル、メタクリル酸ラウリル、メタクリル酸デ
シルオクチル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸
2メチルへキシル、メタクリル酸3メトキシブチルな
ど)、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、酢酸ビ
ニル、塩化ビニル、ビニルケトン、ビニルトルエンおよ
びスチレンである。水酸基を含有する単量体としては、
アクリル酸ヒドロキシプロピル、アクリル酸2ヒドロキ
シエチル、アクリル酸3ヒドロキシブチル、アクリル酸
2,2ビス(ヒドロキシメチル)エチル、メタクリル酸
2ヒドロキシエチル、メタクリル酸ヒドロキシプロピ
ル、メタクリル酸3ヒドロキシブチル、メタクリル酸
2,3ジヒドロキシプロピル、Nメチロールアクリルア
ミドなどがあげられる。水酸基価の値が5未満では本発
明で見出された混和性が十分発揮されず、40を超える
と造膜後の耐蝕性が若干劣る傾向にあるからである。
【0014】本発明で使用する樹脂エマルジョンでは、
水酸基だけでなくスルホン酸基を導入することにより格
段の樹脂分散性を得ることができる。スルホン酸基を導
入する具体的方法には、例えばスチレンスルホン酸ソー
ダなどの不飽和スルホン酸塩類を上記α、βモノエチレ
ン系不飽和単量体と水酸基を含有する単量体とを重合さ
せるときに同時にあるいは逐次的に反応させることによ
り達成することが可能である。また、特に限定するわけ
ではないが、乳化重合法を用いて有機樹脂エマルジョン
を合成する際に、重合開始剤として水溶性の過硫酸塩を
用いた場合にも粒子表面にスルホン酸基を導入すること
が可能である。この場合、厳密にはスルホン酸基ではな
く硫酸エステル基が導入されるが本発明の目的を考慮す
るとスルホン酸基と同等の働きをすることからスルホン
酸基として扱うものである。このような水溶性過硫酸塩
の例としては、例えば、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリ
ウム、過硫酸アンモニウムなどがある。
【0015】通常、樹脂エマルジョンの安定性を高めよ
うとする場合、水和力の大きい界面活性剤を用いたり、
水溶性ポリマーの吸着などの方法によりエマルジョン粒
子表面の保護層を強化したり、あるいはエマルジョン樹
脂自身の改良方法としては不飽和カルボン酸モノマーの
共重合によるカルボキシル化変性が一般的であるが、本
発明者らはりん酸金属塩を主成分とする水溶液に有機樹
脂エマルジョンを添加する場合では、エマルジョン粒子
表面に存在する水酸基とスルホン酸基が特にエマルジョ
ンの安定に非常に大きな影響を与えることを見出したも
のである。樹脂エマルジョンの安定性を高めるために導
入される親水基には、アニオン性、カチオン性、ノニオ
ン性の官能基が知られており、カルボキシル基、スルホ
ン酸基はアニオン性、アミノ基はカチオン性、水酸基、
エーテル基、アミド基などはノニオン性として知られて
いる。水酸基とスルホン酸基がりん酸金属塩を主成分と
する水溶液を用いた場合に特に良好であるメカニズムに
ついては詳細には明らかではないが、カルボキシル基は
酸解離定数が小さいため金属イオンとの結合が生じ易く
従って親水性が低下し、アミノ基のようなカチオン性親
水基ではりん酸イオンと反応することにより親水性が低
下し、エーテル基などの水酸基以外のノニオン性親水基
では水溶化力が弱すぎることからエマルジョンの安定性
に及ぼす影響が非常に小さいためと推定される。
【0016】有機樹脂エマルジョンを構成するモノマー
の配合割合としては、水酸基含有モノマーが5〜30重
量%、スルホン酸基含有モノマーが0〜30重量%とす
る。水酸基含有モノマーが5重量%未満の場合、エマル
ジョンの安定性が劣化する傾向にあり、30重量%超で
は耐食性が不十分であり、スルホン酸基含有モノマーが
30重量%超でも耐食性が不十分になる傾向がある。ま
た、スルホン酸基含有モノマーを配合しない場合には、
水溶性過硫酸塩を通常よりも余分に配合し硫酸エステル
基の導入量を増やすことが好ましい。なお、スルホン酸
基含有モノマーの含有量は0.1〜30重量%とすれば
より好ましく、さらに好ましくは2〜25重量%とする
とよい。
【0017】本発明では、耐きず付き性向上のために、
有機樹脂エマルジョン粒子を内部ゲル化重合体としても
良い。エマルジョン粒子の内部をゲル化重合体とするた
めには、α、βモノエチレン系不飽和単量体の一部を、
分子内に2個以上のラジカル重合可能なエチレン性不飽
和基を有する多官能性単量体で置き換えることにより達
成することができる。そのような多官能性単量体として
は、多価アルコールの重合性不飽和モノカルボン酸エス
テル、多塩基酸の重合性不飽和アルコールエステル、お
よび2個以上のビニル基で置換された芳香族化合物など
である。そのような例としては、エチレングリコールジ
アクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、
トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチ
レングリコールジメタクリレート、1,3ブチレングリ
コールジメタクリレート、トリメチロールプロパントリ
アクリレート、グリセロールジアクリレート、1,1,
1、トリスヒドロキシメチルエタンジアクリレート、ジ
アリルテレフタレート、ジビニルベンゼンなどである。
【0018】以上のポリマーの他にも水酸基含有単量体
をあらかじめ導入した単量体を用いることにより各種水
酸基含有有機樹脂を得ることができる。例えば、エポキ
シ樹脂に水酸基含有単量体を導入することにより本発明
で使用する有機樹脂を得ることが可能である。さらに具
体的には例えばエポキシ樹脂としては、ビスフェノール
A、F、B型、脂環型、グリシジルエーテル型、グリシ
ジルエステル型、ビフェニル型、ナフタレン型、フェノ
ールノボラック型、オルソクレゾールノボラック型、テ
トラフェニロールエタン型、トリスヒドロキシンフェニ
ルメタン型等があげられ、これらの単量体に上記水酸基
を含有する単量体として掲げた、アクリル酸ヒドロキシ
プロピル、アクリル酸2ヒドロキシエチル、アクリル酸
3ヒドロキシブチルなどを結合させることにより得るこ
とが可能である。
【0019】本発明で使用できる有機樹脂エマルジョン
の特徴は、エマルジョン粒子表面の水酸基およびスルホ
ン酸基であることから、粒子内に異種粒子を含有させた
り、表面のみに水酸基を導入するいわゆるハイブリッド
型樹脂エマルジョンを用いても良い。ここでいうハイブ
リッド型エマルジョンとは、2種以上の特性の異なる高
分子をエマルジョン粒子中に複合させたものをいい、乳
化重合法などにより様々な形態のものが実用化されてい
る。代表的なものとしては、例えばコアシェル型、パワ
ーフィード型、サンドイッチ型、粒子複合型などがあ
る。
【0020】このようにエマルジョン樹脂粒子表面に水
酸基およびスルホン酸基を導入することにより上記に述
べたアクリル、ポリスチレン、酢ビ、エポキシ、ポリウ
レタン、ポリアミド、フェノール、メラミン、シリコ
ン、ポリプロピレン、ポリエチレン等から選ばれる有機
樹脂の1種又は2種以上を本発明で使用することができ
る。
【0021】本発明で使用する有機樹脂エマルジョンは
基本的に乳化剤を必要としない。これは、エマルジョン
粒子表面に存在する水酸基およびスルホン酸基がエマル
ジョン粒子の電気二重層の安定性を高めるためである。
しかし、さらに分散性を高めるために少量の乳化剤を添
加しても何ら問題ではない。
【0022】有機樹脂エマルジョンの粒径は0.01〜
0.5μmの範囲にあることが必要である。粒径が0.
01μm未満の場合、密着性が劣化する傾向にあり、粒
径が0.5μmを超える場合には耐食性が不十分とな
る。さらに望ましい粒径範囲は0.1μm 〜0.5μm
の範囲である。これは、同じ水酸基価を持つエマルジョ
ンであっても粒径が異なればエマルジョン粒子当たりの
水酸基の量が変わるためであり、粒径が小さくなるほど
水酸基価は結果的に大きくする必要があるためと推定さ
れる。
【0023】りん酸塩と有機樹脂の混合割合については
りん酸塩100重量部に対し、有機樹脂分が5〜100
重量部が好ましい。有機樹脂分が5重量部未満では、被
膜が白く光沢が無く、100重量部超では歪取り焼鈍後
に被膜が剥離する恐れがあるからである。
【0024】絶縁被膜量としては0.3〜5.0g/m
2 とする。0.3g/m2 未満では耐電圧を十分確保す
ることが難しく、5.0g/m2 以上では被膜の密着性
が劣る傾向にあるからである。
【0025】また、焼き付け条件は、特に限定するもの
ではないが、通常行われているような300〜800℃
に設定した乾燥炉で短時間に板温で150℃から450
℃とするのが良い。
【0026】次に本発明で使用する非解離性水酸基、エ
ーテル基、エステル基を含有する水溶性低分子有機化合
物とは、アルコール、エステル、ケトン、エーテル、カ
ルボン酸、糖などの水溶性の有機物で非解離性水酸基、
エーテル基、エステル基を持つもので、有機樹脂のよう
に重合などにより高分子化していないもので望ましくは
分子量が1000以下のものである。また、本発明でい
う水溶性とは水に対して無限溶解することはもちろん、
比較的高い溶解度を持つもので十分であり、具体的な化
合物としては、ブタノール、プロパノールなどのアルコ
ール類、プロピレングリコール、グリセリン、エチレン
グリコール、トリエチレングリコールなどのポリオール
類、蔗糖、果糖等の糖類、メチルセロソルブ、ブチルセ
ロソルブ等のセロソルブ類、ジエチレングリコールモノ
メチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテ
ルなどのカルビトール類、テトラエチレングリコールジ
メチルエーテル、1、4−ジオキサンなどのエーテル
類、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート
などのエステル類などが使用できるが、特に好ましいの
はエチレングリコールなどのポリオール類である。
【0027】また、本発明において使用される非解離性
水酸基、エーテル基、エステル基を含有する水溶性低分
子有機化合物は塗布焼き付け後に被膜中に残存する必要
があることから、液体の場合は沸点、固体の場合は昇華
点が水の沸点である100℃よりも高い必要がある。通
常は沸点あるいは昇華点が200℃以上であることが望
ましい。
【0028】本発明で使用する水溶性低分子有機化合物
の配合割合をりん酸塩100重量部に対し、1〜15重
量部に制限する理由は、1重量部未満では水溶性低分子
有機化合物の効果が得られないためであり、15重量部
以上では被膜が白濁して光沢のある被膜表面が得られな
いためである。本発明で使用するりん酸金属塩と有機樹
脂エマルジョンの混合液に水溶性低分子有機化合物を添
加することにより、エマルジョン粒子の安定性が更に向
上することが期待できるものである。
【0029】
【実施例】表1に示す有機樹脂組成物を用いてそれぞれ
30重量%の有機樹脂エマルジョンを作製した。それら
のエマルジョンを用いて表2 に示す処理液を調製した。
本発明で使用される有機樹脂エマルジョンとしては、例
えば日本カーバイド( 株) 製ニカゾールなどが適当であ
る。次に、公知の方法で処理した、仕上げ焼鈍後の無方
向性電磁鋼板(板厚0.5mm)のコイルに表2に示す
有機樹脂エマルジョンを含有する処理液をゴムロール方
式の塗布装置で塗布した後、板温200℃で絶縁被膜の
塗布量が1.0g/m2 になるように焼き付け処理を行っ
た。このコイルから試料を切り出し、すべり性の評価に
ついては750℃×2時間、窒素気流中で歪取り焼鈍を
行った後特性を評価した。その結果を表3に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【表3】
【0033】[すべり性試験方法]すべり性の測定に
は、市販の表面潤滑性試験器を用いた。測定条件は、荷
重100gf,10mmφの鋼球ボールを用いて移動速
度20mm/sで実施した。評価は10回の往復摩擦の
後、表面に疵や剥離の生じなかったサンプルを合格と
し、表面に疵が生じたりボールが引っ掛かったものを不
合格とした。
【0034】表3からも明らかな如く、本実施例によれ
ば、高占積率、優れた打抜き性、耐蝕性、密着性、すべ
り性を持つ電気絶縁被膜が得られた。
【0035】
【発明の効果】本発明によれば、特定の有機樹脂エマル
ジョンと無機成分とを特定割合に配合した絶縁被膜を形
成することにより、クロム化合物を含まないために環境
問題に対応でき、高占積率、優れた打抜き性、耐蝕性、
密着性、すべり性を有する電気絶縁被膜を持つ電磁鋼板
が得られる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 C23C 22/07

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無方向性電磁鋼板の表面に、りん酸金属
    塩と、水酸基価が5〜40mgKOH/gであって粒子
    径が0.01μm 〜0.5μm の有機樹脂エマルジョン
    とを含有し、前記有機樹脂エマルジョンが、りん酸金属
    塩100重量部(固形分換算)に対して5〜100重量
    部(固形分換算)である処理液を塗布し、乾燥してなる
    絶縁被膜を有することを特徴とする被膜特性の極めて優
    れた無方向性電磁鋼板。
  2. 【請求項2】 有機樹脂エマルジョンが、水酸基含有モ
    ノマーを5〜30重量部と、スルホン酸基含有モノマー
    を0〜30重量部とを共重合成分として含有して得られ
    たものであることを特徴とする請求項1記載の被膜特性
    の極めて優れた無方向性電磁鋼板。
  3. 【請求項3】 有機樹脂エマルジョンが、分子内にラジ
    カル重合性不飽和基を有する反応性乳化剤の存在下で乳
    化重合して得られたものであることを特徴とする請求項
    1記載の被膜特性の極めて優れた無方向性電磁鋼板。
  4. 【請求項4】 絶縁被膜の付着量が0.3〜5.0g/
    2 であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の
    被膜特性の優れた電磁鋼板用電気絶縁被膜形成方法。
  5. 【請求項5】 処理液が、りん酸金属塩と有機樹脂エマ
    ルジョンとを主成分とし、さらに非解離性水酸基、エー
    テル基、エステル基を含有する水溶性低分子有機化合物
    を、りん酸金属塩100重量部( 固形分換算) に対して
    1〜15重量部含有することを特徴とする請求項1、2
    又は3記載の被膜特性の極めて優れた無方向性電磁鋼
    板。
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