JP3294515B2 - 電磁鋼板用絶縁皮膜の形成方法 - Google Patents

電磁鋼板用絶縁皮膜の形成方法

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JP3294515B2 JP28308996A JP28308996A JP3294515B2 JP 3294515 B2 JP3294515 B2 JP 3294515B2 JP 28308996 A JP28308996 A JP 28308996A JP 28308996 A JP28308996 A JP 28308996A JP 3294515 B2 JP3294515 B2 JP 3294515B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、鋼板を積層した際
に高い占積率が得られるとともに、歪取り焼鈍前後の耐
食性および歪取り焼鈍後の滑り性に優れ、しかも積層溶
接時等に不快臭の発生が少ない電磁鋼板用絶縁皮膜を形
成するための方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】電磁鋼板はモーターやトランス等の鉄芯
材料として広く使用されており、通常、その表面には渦
電流損失を低減する目的から絶縁皮膜がコーティングさ
れる。鉄芯の多くは、電磁鋼板をまず所望の形状に打ち
抜き、積層して、その積層体端面をTIG溶接すること
によって組み立てられる。したがって、絶縁皮膜の品質
としては層間絶縁抵抗値が高いことに加え、打抜性と溶
接性に優れていることが要求される。また、鉄芯加工時
の作業性の面から絶縁皮膜の良好な密着性と加工性が要
求され、さらに積層工程等でのすりキズ防止を考慮する
必要もある。また、鉄芯加工時の歪取りのために700
〜800℃程度で焼鈍(歪取り焼鈍)される場合には、
焼鈍時に鋼板同士が密着(スティッキング)を起こさ
ず、且つ焼鈍後の保存期間に発錆しないことが要求され
る。また最近では、冷蔵庫等に使用される場合にフロン
等の冷媒や絶縁油等の油類に対する耐久性も要求され
る。
【0003】上記のような絶縁皮膜に要求される諸特性
を得るため、従来から次のような改善がなされてきた。
まず、打抜性に関しては、絶縁皮膜中に有機樹脂を添加
することによって表面に潤滑性を付与すると、連続打ち
抜き作業時のバリ発生による金型取り替え頻度が大幅に
減少することが明らかにされ、クロム酸系やリン酸系化
合物を主成分とする無機系水溶液と有機樹脂エマルジョ
ンの混合溶液を塗布し、焼き付けた絶縁皮膜が、いわゆ
る無機有機系皮膜として広く実用化されている。
【0004】近年、鉄心製造現場においても作業環境の
改善が進み、これに伴い、作業者が不快感を覚えるよう
な騒音や臭気等の問題、それも精神衛生面を含めた問題
の改善に対する要望が高まりつつある。無方向性電磁鋼
板の絶縁皮膜の主流となっている無機有機系皮膜の場
合、皮膜中に有機樹脂を含んでいるため打抜性に優れる
という特徴を有しているが、最近、積層後のTIG溶接
時に皮膜中の有機樹脂が熱分解して臭気ガスが発生し、
これが作業者に不快感を与えることが問題視され、その
改善が求められている。また、アルミダイキャスト時に
も有機成分の熱分解による不快臭発生の問題がクローズ
アップされている。
【0005】このような無機有機系皮膜の積層溶接時に
発生する不快臭については、これを軽減するために従来
から多くの試みがなされてきた。例えば、特公昭53−
20259号公報ではアクリル樹脂やスチレン樹脂は熱
分解や燃焼によって不快臭を発生するため、その一部を
人間に不快感を与えないと言われている酢酸ビニルに置
き換えることが提案されている。また、特公昭60−3
6476号公報では、アクリル樹脂やスチレン樹脂に代
えて酢酸ビニル/ベオバ共重合樹脂を用いることによ
り、不快臭の発生をより少なくできることが述べられて
いる。
【0006】しかし、本発明者らが積層溶接時における
臭気の発生及び皮膜特性の評価を行ったところ、無機有
機系皮膜に含まれる有機樹脂中の酢酸ビニル樹脂の比率
が高い場合或いはアクリル系樹脂を全く含まない場合に
は、人間に不快感を与えるガスの発生は少ないものの、
耐化学薬品性や耐キズ付き性が劣り、絶縁皮膜として十
分な性能が得られないことが判った。また、酢酸ビニル
樹脂やアクリル系樹脂の含有率の高い有機樹脂を用いて
得られた皮膜は、歪取り焼鈍による皮膜の熱劣化が著し
く、良好な耐食性や滑り性が得られないという問題があ
ることも判った。
【0007】一方、歪取り焼鈍後の皮膜特性向上を目的
として、特開平5−283262号公報では、水分散性
のエポキシ樹脂をクロム酸系溶液に混合した絶縁皮膜用
塗料を開示している。エポキシ樹脂は耐熱性に優れてお
り、他の樹脂では歪取り焼鈍によってその大部分が熱分
解により消失し或いは変質するのに対し、エポキシ樹脂
成分の場合には歪取り焼鈍後もかなりの部分が劣化する
ことなく樹脂の状態で残存するという長所がある。しか
し、本発明者らが実験等で確認したところによれば、こ
の特開平5−283262号公報に示される絶縁皮膜用
塗料は、未硬化のエポキシ基を含む水分散性エポキシ樹
脂エマルジョンを使用するものであるため、塗料の貯蔵
中に樹脂成分とクロム酸成分との反応が進んでしまい、
このため十分なポットライフが得られず、また皮膜品質
も短時間で劣化してしまうことが判った。
【0008】また、特開平6−101058号公報では
皮膜表面に微細な突起を形成することで溶接性を改善す
るために、0.5〜3μmという比較的大きな粒子径の
樹脂粒子からなるエポキシ系樹脂エマルジョンを用いる
ことが開示されているが、この絶縁皮膜用塗料も樹脂粒
子径が大きいために処理液中での沈降が起き易く、十分
なポットライフが得られないことが判った。また、特開
平7−286284号公報では、樹脂粒子の内層(コ
ア)を熱硬化性樹脂、外層(シェル)を耐クロム酸性の
樹脂としたコア−シェル型エマルジョンを使用する電磁
鋼板用絶縁皮膜が開示されているが、この場合もコアの
一部に未反応の熱硬化性樹脂を含むため、クロム酸を含
有する無機系溶液と配合後短時間で劣化し、ゲル状ブツ
の発生や配合液全体のゲル化を起こし、実用上に問題が
あることが判った。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】したがって本発明の目
的は、鋼板を積層した際に高い占積率が得られるととも
に、歪取り焼鈍前後の耐食性および歪取り焼鈍後の滑り
性に優れ、しかも積層溶接時あるいはアルミダイキャス
ト時の不快臭の発生が少ない絶縁皮膜を形成することが
できる、電磁鋼板用絶縁皮膜の形成方法を提供すること
にある。
【0010】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、種々の有
機樹脂や樹脂モノマーについて積層溶接時や燃焼、加熱
時に発生するガスの臭気を比較検討し、その結果、樹脂
種によって臭気の強弱、種類および不快度に差があるこ
とを確認し、特に溶接時の不快臭の観点から樹脂種の選
別を行った。さらに、耐キズ付き性は樹脂の硬さに依存
しており、ガラス転移点(Tg)と相関性があること、
また、歪取り焼鈍後の耐食性には歪取り焼鈍後の皮膜の
亀裂の生成状態や樹脂の残炭率が大きな影響を及ぼすこ
とを確認し、これらの知見事実に基づき樹脂種の検討を
行った。その結果、樹脂の平均粒子径が0.3μm未満
で、且つ完全に三次元架橋し、エポキシ基が残存してい
ないエポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディス
パージョンを無機系溶液に添加した場合に、高い占積率
を維持しつつ、耐キズ付き性、歪取り焼鈍前後の耐食性
および歪取り焼鈍後の滑り性に優れ、且つ積層溶接時等
に不快臭の発生が少ない無機有機系絶縁皮膜が得られる
ことを見い出した。
【0011】また、処理液中に上記エポキシアクリレー
ト共重合樹脂ミクロゲルディスパージョンとともにノボ
ラックフェノール樹脂エチレンオキサイド付加物を添加
することにより、歪取り焼鈍後の耐食性および歪取り焼
鈍後の滑り性がさらに向上することを見い出した。さら
に、樹脂が完全に三次元架橋し、エポキシ基を含まない
上記エポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディス
パージョンは、これをクロム酸を含む無機系水溶液に配
合した場合でも良好な塗料安定性が得られ、且つ皮膜品
質も長時間安定していることが確認できた。本発明はこ
のような知見事実に基づきなされたもので、以下に示す
電磁鋼板用絶縁皮膜の形成方法を提供するものである。
【0012】(1) 無水クロム酸および重クロム酸塩の中
から選ばれる少なくとも1種と、2価または3価の金属
の酸化物、水酸化物および炭酸塩の中から選ばれる少な
くとも1種を主成分として含む無機系水溶液に、該水溶
液のCrO3換算量100重量部に対して、有機還元剤
を10〜50重量部、樹脂の平均粒子径が0.3μm未
満であって、樹脂が完全架橋し且つエポキシ基が残存し
ていないエポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルデ
ィスパージョンを樹脂固形分としての割合で5〜100
重量部添加した処理液を、電磁鋼板の表面に塗布し、次
いで焼き付けることを特徴とする電磁鋼板用絶縁皮膜の
形成方法。
【0013】(2) 無水クロム酸および重クロム酸塩の中
から選ばれる少なくとも1種と、2価または3価の金属
の酸化物、水酸化物および炭酸塩の中から選ばれる少な
くとも1種を主成分として含む無機系水溶液に、該水溶
液中のCrO換算量100重量部に対して、有機還元
剤を10〜50重量部、樹脂の平均粒子径が0.3μm
未満であって、樹脂が完全架橋し且つエポキシ基が残存
していないエポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲル
ディスパージョンとノボラックフェノール樹脂エチレン
オキサイド付加物とを樹脂固形分の重量比で[エポキシ
アクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージョン]
/[ノボラックフェノール樹脂エチレンオキサイド付加
物]60/40〜97/3の割合で混合した有機樹脂
液を樹脂固形分としての割合で5〜100重量部添加し
た処理液を、電磁鋼板の表面に塗布し、次いで焼き付け
ることを特徴とする電磁鋼板用絶縁皮膜の形成方法。
【0014】(3) 上記(1)または(2)の方法において、エ
ポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージ
ョンとして、 a)エポキシ樹脂と、 b)アクリル酸およびメタクリル酸の中から選ばれる少
なくとも1種のモノマーと他のモノマーとを、アクリル
酸およびメタクリル酸の合計量がアクリルモノマー中の
40重量%以上となるように配合して共重合させたカル
ボキシル基含有アクリルポリマーとを、前記エポキシ樹
脂中のエポキシ基と前記カルボキシル基含有アクリルポ
リマー中のカルボキシル基の当量比が[エポキシ基]/
[カルボキシル基]0.10〜0.50となるよう反
応させて得られたエポキシアクリレート共重合樹脂ミク
ロゲルディスパージョンを用いることを特徴とする電磁
鋼板用絶縁皮膜の形成方法。
【0015】
【発明の実施の形態】以下、本発明の詳細と限定理由に
ついて説明する。本発明において使用する処理液のベー
スとなる無機系水溶液は、無水クロム酸および重クロム
酸塩の中から選ばれる少なくとも1種と、2価または3
価の金属の酸化物、水酸化物および炭酸塩の中から選ば
れる少なくとも1種を主成分として含むもので、従来の
無機有機系皮膜形成用の処理液のベースとして用いられ
ている無機系水溶液を基本とするものである。上記無機
系水溶液には、樹脂の平均粒子径が0.3μm未満のエ
ポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージ
ョンを添加する。このエポキシアクリレート共重合樹脂
ミクロゲルディスパージョンは、樹脂中のエポキシ基が
完全に反応することでエポキシ基が残存しておらず、且
つ樹脂粒子が完全に三次元架橋しているミクロディスパ
ージョンであり、以下に示すように一般的なエマルジョ
ンとは異なる製造法によって製造されるものである。
【0016】すなわち、この製造法ではまず、アクリル
酸およびメタクリル酸の中から選ばれる少なくとも1種
のモノマーと、スチレン、アクリル酸エステルおよびメ
タクリル酸エステル等のモノマーの中から選ばれる少な
くとも1種のモノマーとをアルコール性媒体中で共重合
させてCOOH基含有ポリマーを得る。次いで、芳香族
エポキシ樹脂を仕込み、エポキシの一部とCOOH基を
エステル化反応させて非ゲル状の樹脂反応物を得る。次
いで、過剰のCOOH基の一部を塩基性化合物で中和さ
せ、水中に微分散させる。この微分散液中に含まれる樹
脂分散体に残存するエポキシ基とCOOH基とを分散液
中で反応させて、樹脂分散体をミクロゲル化する。次い
で、アルコール性媒体を減圧脱溶媒することにより、エ
ポキシ基を含まないエポキシアクリレート共重合樹脂ミ
クロゲルディスパージョンを得る。このようにして得ら
れたエポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディス
パージョンは、エポキシ基が残存していないため、上記
の無機系水溶液に配合した時に良好な塗料安定性を示
す。
【0017】一般に市販されているエポキシエマルジョ
ンは、エポキシ樹脂を乳化剤の存在下で乳化して製造さ
れるためエポキシ基が存在しており、このため上述した
ようなクロム酸を含む無機系水溶液に配合したときに塗
料安定性が劣り、処理液全体のゲル化や、凝集ブツの発
生、粘度上昇等のトラブルが発生する。本発明で用いる
エポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパー
ジョンとしては、例えば、ビスフェノールA(または
F)およびエピクロルヒドリンから得られるエポキシ樹
脂と、アクリル酸およびメタクリル酸の中から選ばれる
少なくとも1種(以下、これを(メタ)アクリル酸とい
う)とアクリル酸エステルおよびメタクリル酸エステル
の中から選ばれる少なくとも1種(以下、これを(メ
タ)アクリル酸エステルという)を共重合させて得られ
たポリマーとを反応させ、得られるものが特に好しい。
また、エポキシ樹脂と反応させる上記ポリマーとして
は、(メタ)アクリル酸エステルおよび(メタ)アクリ
ル酸と共重合可能な他の共重合性モノマー、例えば、ス
チレン、酢酸ビニル等を(メタ)アクリル酸エステルお
よび(メタ)アクリル酸と共重合させたものでもよい。
【0018】エポキシ樹脂と(メタ)アクリル酸エステ
ル及び(メタ)アクリル酸(さらに、必要に応じて他の
モノマー)を共重合させて得られたポリマーとを反応さ
せ、目的とするエポキシアクリレート共重合樹脂ミクロ
ゲルディスパージョンを得る際に、その樹脂粒子を完全
に三次元架橋(ゲル化)させるためには、エポキシ樹脂
中のエポキシ基と上記ポリマー中のカルボキシル基の
[エポキシ基]/[カルボキシル基]の当量比を0.1
0以上とする必要があり、一方、エポキシ基を全て反応
させ、反応後にエポキシ基を残存さないためには[エポ
キシ基]/[カルボキシル基]の当量比を1.0以下に
する必要がある。さらに、エポキシアクリレート共重合
樹脂ミクロゲルディスパージョンに含まれる樹脂粒子の
平均粒子径を0.3μm未満にするためにも、上記[エ
ポキシ基]/[カルボキシル基]の当量比を0.50以
下にするとともに、上記ポリマーを得る際の(メタ)ア
クリル酸がアクリルモノマー中に占める割合を40重量
%以上とする必要がある。そして、このようにエポキシ
アクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージョンを
製造する際の[エポキシ基]/[カルボキシル基]の当
量比を0.10〜0.50とし、且つ(メタ)アクリル
酸がアクリルモノマー中に占める割合を40重量%以上
とすることにより、エポキシ基が残存せず、完全に三次
元架橋され、且つ樹脂の平均粒子径が0.3μm未満で
あるミクロゲルディスパージョンが得られる。
【0019】ここで、[エポキシ基]/[カルボキシル
基]の当量比と絶縁皮膜の性能との関係について見てみ
ると、[エポキシ基]/[カルボキシル基]の当量比が
上記の範囲を下回ると、架橋が不十分となって皮膜強度
およびバリアー性が低くなるため、耐キズ付き性や歪取
り焼鈍前後の耐食性、さらには歪取り焼鈍後の滑り性が
劣る。一方、[エポキシ基]/[カルボキシル基]が当
量比が上記の範囲を超えるとエポキシアクリレート共重
合樹脂ミクロゲルディスパージョンの樹脂粒子径を0.
3μm未満とすることが難しくなるとともに、樹脂中に
未反応のエポキシ基が残存し、これが無機水溶液中の6
価クロムと反応して沈殿物が発生し易くなり、皮膜品質
にまで悪影響を及ぼす。これらの結果、歪取り焼鈍後の
耐食性が劣り、またテスター振れも起き易い。図1は後
述する実施例の製造条件とほぼ同じ条件で製造されたエ
ポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージ
ョンを用い、[エポキシ基]/[カルボキシル基]の当
量比が歪取り焼鈍前後の耐食性及びテスター振れテスト
(皮膜表面にテスターの端子を押し当て、皮膜厚が薄い
場合や皮膜欠陥が多い場合に絶縁抵抗の低下または絶縁
破壊による導通によってテスターの針が振れる現象を調
べるテストであり、図1は100回のテスト中でテスタ
ー振れが生じた回数を示す)におけるテスター振れ回数
に及ぼす影響を調べた結果を示しており、上述した傾向
が示されている。また、図1によれば[エポキシ基]/
[カルボキシル基]0.15〜0.35の範囲におい
てテスター振れ回数が顕著に低下しており、したがっ
て、[エポキシ基]/[カルボキシル基]の当量比は
0.15〜0.35の範囲が特に好ましい。
【0020】従来技術において電磁鋼板面に絶縁皮膜を
形成する場合、溶接性を重視する観点から、特開平6−
101058号公報のように0.5μm以上の比較的大
きな粒子径を持つ有機樹脂が用いられるケースがみられ
る。しかし、低級〜中級グレードの汎用電磁鋼板には平
均膜厚0.3〜1μm程度の薄い絶縁皮膜が形成される
ため、0.3μm以上の粒子径の有機樹脂粒子が処理液
中に添加されると均一な厚さの皮膜が得られず、占積率
の低下や耐食性の劣化が問題となる。これに対して0.
3μm未満、好ましくは0.2μm未満の粒子径の有機
樹脂粒子を用いた場合には、皮膜の均一性及び緻密性が
向上するため皮膜の絶縁性が向上し、テスター振れ現象
も大幅に減少する。また、有機樹脂の粒子径が0.3μ
m以上になると、処理液の貯蔵時に短時間のうちに有機
樹脂の沈降を生じるため十分なポットライフが得られ
ず、処理液の循環系(循環ポンプ、配管等)において目
詰まり等のトラブルを起し易い。また、これによって樹
脂の凝集等が生じて均一な皮膜が得にくくなるため、皮
膜品質も劣化する。したがって、樹脂の粒子径は0.3
μm未満とする必要がある。
【0021】さらに、本発明ではエポキシアクリレート
共重合樹脂ミクロゲルディスパージョンに加えて、ノボ
ラックフェノール樹脂エチレンオキサイド付加物をエポ
キシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージョ
ンとの樹脂固形分の重量比で[エポキシアクリレート共
重合樹脂ミクロゲルディスパージョン]/[ノボラック
フェノール樹脂エチレンオキサイド付加物]60/4
0〜97/3の割合で添加することにより、耐熱性をさ
らに向上させ、歪取り焼鈍後の耐食性及び滑り性を改善
することができる。しかし、ノボラックフェノール樹脂
エチレンオキサイド付加物は水溶性であるため、有機樹
脂(エポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディス
パージョン+ノボラックフェノール樹脂エチレンオキサ
イド付加物)中に占める割合が40重量%を超えると皮
膜乾燥後のベタツキや発錆が著しくなり、耐食性が劣
る。一方、3重量%未満では歪取り焼鈍後の耐食性およ
び滑り性の改善に対して十分な効果が得られない。
【0022】図2は後述する実施例の製造条件とほぼ同
じ条件で製造されたエポキシアクリレート共重合樹脂ミ
クロゲルディスパージョンを用い、有機樹脂溶液中に添
加される[エポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲル
ディスパージョン]/[ノボラックフェノール樹脂エチ
レンオキサイド付加物]の樹脂固形分での重量比が歪取
り焼鈍前後の耐食性と歪取り焼鈍後の滑り性に及ぼす影
響を調べた結果を示しており、ノボラックフェノール樹
脂エチレンオキサイド付加物の重量割合が40重量%を
超えると耐食性が劣化することが示されている。このた
め本発明では、ノボラックフェノール樹脂エチレンオキ
サイド付加物を添加する場合でも、その添加量は樹脂固
形分の重量比で[エポキシアクリレート共重合樹脂ミク
ロゲルディスパージョン]/[ノボラックフェノール樹
脂エチレンオキサイド付加物]60/40〜97/
3、好ましくは70/30〜90/10の範囲とする。
【0023】次に、上述したエポキシアクリレート共重
合樹脂ミクロゲルディスパージョンまたはこれにノボラ
ックフェノール樹脂エチレンオキサイド付加物を加えた
有機樹脂液の無機系水溶液に対する配合量は、無機系水
溶液のCrO3換算量100重量部に対して樹脂固形分
としての割合で5〜100重量部とする。この配合量が
5重量部未満では十分な打抜性が得られず、一方、10
0重量部を超えると耐熱性が著しく劣化する。さらに、
無機水溶液中に含まれるクロムを還元して皮膜を不溶化
するために、有機還元剤を添加する。この有機還元剤と
しては、例えば、ポリエチレングリコール、エチレング
リコール、ショ糖等の多価アルコールを添加する。この
有機系還元剤の添加量は、無機系水溶液のCrO3換算
量100重量部に対して10〜50重量部とする。この
配合量が10重量部未満では未還元のクロムが残存する
ために皮膜の耐水性が劣り、一方、50重量を超えると
処理液中で還元反応が進行し、処理液がゲル化してしま
う。
【0024】上記の添加剤の他に、皮膜の耐食性や耐熱
性を向上させるために、ホウ酸を添加することもでき
る。また、歪取り焼鈍後の層間絶縁性を向上させるため
に、マグネシウム、アルミニウム、カルシウム等のリン
酸塩を添加することもできる。以上のように配合した処
理液をロールコーターで電磁鋼板の表面に塗布し、乾燥
炉で焼き付けることによって、目的とする絶縁皮膜を形
成することができる。なお、絶縁皮膜の乾燥膜厚につい
ては、用途毎に最適な膜厚を選択すればよいが、一般に
は0.1〜5μm程度が好ましい。皮膜厚が0.1μm
未満では鋼板面を均一に被覆できず、絶縁皮膜としての
十分な性能が得られない。一方、5μmを超えると皮膜
密着性が劣化し、特に歪取り焼鈍後に皮膜剥離が著しく
なるため好ましくない。
【0025】以上のようにして得られた電磁鋼板の無機
有機系絶縁皮膜は、鋼板を積層した際に高い占積率が得
られるとともに、耐キズ付き性および歪取り焼鈍後の耐
食性に優れ、且つ積層溶接時やアルミダイキャスト時の
不快臭の発生も少ない。また、その他の電磁鋼板用絶縁
皮膜に必要な諸特性、例えば、層間絶縁性、密着性およ
び耐食性等の面でも十分な性能を有する。本発明が適用
される下地鋼板は、けい素鋼板等、電磁材料として通常
用いられているものであればその種類を問わない。
【0026】
【実施例】
[実施例1]板厚0.5mmの電磁鋼板コイル(Ra
0.2μmのブライト仕上げ)の表面に、エポキシアク
リレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージョンとノボ
ラックフェノール樹脂エチレンオキサイド付加物とを樹
脂固形分の重量比で[エポキシアクリレート共重合樹脂
ミクロゲルディスパージョン]/[ノボラックフェノー
ル樹脂エチレンオキサイド付加物]=6/94〜100
/0の割合で混合した有機樹脂液と無機系水溶液を混合
した処理液をロールコーターで連続的に塗布した後、乾
燥炉(炉温500℃)で焼き付け、膜厚0.7〜0.9
μmの絶縁皮膜を形成した。なお、本実施例で使用した
エポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパー
ジョンは、後述する調製法から判るようにエポキシ基が
反応によって完全に消費されるため、その樹脂はエポキ
シ基を全く含んでいない。
【0027】また、比較例として無機系水溶液にアクリ
ル樹脂(メチルメタクリレート:70%)、酢酸ビニル
樹脂、アクリル−スチレン樹脂をそれぞれ混合した処理
液を同様の方法で塗布した後、焼き付け、膜厚0.7〜
0.9μmの絶縁皮膜を形成した。以上のようにして作
成した処理液及び供試材について、後述する特性評価を
行った。その結果を、処理液の成分組成、エポキシアク
リレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージョンの樹脂
粒子径等とともに表1及び表2に示す。表1および表2
によれば、本発明例であるNo.1〜No.8はいずれ
も歪取り焼鈍後の耐食性に優れており、その他の諸特性
も良好である。これに対して、アクリル樹脂、酢酸ビニ
ル樹脂、アクリル−スチレン樹脂を用いたNo.15〜
No.17の比較例は、歪取り焼鈍後の耐食性および滑
り性が劣っている。
【0028】また、本発明例では積層体の端面をTIG
溶接した際にも不快臭の発生はほとんど無く、臭いセン
サーによる臭い値も低い値が得られている。これに対し
てアクリル樹脂、アクリル−スチレン樹脂を用いたN
o.15、No.17の比較例では溶接時に不快臭が発
生し、臭いセンサーによる臭い値も高い値になってい
る。また、アルミダイキャスト時の臭気についても溶接
時と同様、本発明例では不快臭の発生は認められなかっ
た。また、エポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲル
ディスパージョンに加えてノボラックフェノール樹脂エ
チレンオキサイド付加物を添加したもののうち、[エポ
キシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージョ
ン]/[ノボラックフェノール樹脂エチレンオキサイド
付加物]の重量比が本発明範囲を満足するNo.3〜N
o.8(いずれも本発明例)は、歪取り焼鈍後の耐食性
及び滑り性がさらに向上している。これに対し、ノボラ
ックフェノール樹脂エチレンオキサイド付加物の配合量
が本発明範囲を超えたNo.9〜No.14の比較例で
は、逆に歪取り焼鈍前後の耐食性が劣り、また耐キズ付
き性も劣化してくる。
【0029】本実施例で用いたエポキシアクリレート共
重合樹脂ミクロゲルディスパージョンの製造法と供試材
の評価項目及び試験方法を以下に示す。 (1) エポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディ
スパージョンの製造方法 (1.1) カルボキシル基含有アクリルポリマー溶液の調製 スチレン 525部 アクリル酸エチル 450部 メタクリル酸 525部 n−ブタノール 2250部 過酸化ベンゾイル 30部 上記各成分の混合物の1/4を窒素ガス置換した4口フ
ラスコに仕込み、90℃に加熱し、その温度に保ちつつ
残りの3/4を2時間かけて徐々に滴下し、滴下終了
後、さらに同温度で2時間撹拌した。反応終了後、反応
液を冷却し、酸価230(固形分換算、以下同様)、固
形分39.5重量%、平均分子量36000のカルボキ
シル基含有アクリルポリマー溶液を得た。
【0030】(1.2) エポキシ樹脂溶液の調製 エピコート 163部 エチレングリコールモノブチルエーテル 137部 窒素ガス置換した4口フラスコに上記各成分の全量を仕
込み、徐々に加熱して還流温度まで上げ、1時間撹拌し
て完全に溶解した後、80℃まで冷却し、固形分54%
重量のエポキシ樹脂溶液を得た。
【0031】(1.3) エポキシアクリレート共重合樹脂ミ
クロゲルディスパージョンの調製 下記第1工程〜第4工程によりエポキシアクリレート共
重合樹脂ミクロゲルディスパージョンを調製した。な
お、この調整例では、エポキシ樹脂中のエポキシ基とカ
ルボキシル基含有アクリルポリマー中のカルボキシル基
の[エポキシ基]/[カルボキシル基]の当量比を0.
2とした。 (a)上記(1.1)のカルボキシル基含有アクリルポリマー溶液 150部 (b)上記(1.2)のエポキシ樹脂溶液 260部 (c)2−ジメチルアミノエタノール 10部 (d)28%アンモニア水 1部 (e)イオン交換水 448部 ・第1工程 窒素ガス置換した4口フラスコに上記(a)および(b)
を仕込み、60℃まで加熱し、その後上記(c)を加え
て2時間保持した。この時点で、エポキシ基は40%反
応し、非ゲル状の樹脂反応物の酸価は61であった。な
お、上記エポキシ基の反応率は、反応生成物をテトラヒ
ドロフランに溶解させ、その酸価を測定することにより
推定した。 ・第2工程 上記反応物に上記(d)および(e)を10分かけて滴下
し、固形分23重量%、pH7.3の乳白色のミクロデ
ィスパージョンを得た。 ・第3工程 上記ミクロディスパージョンを70℃に保ち、撹拌を続
けた。6時間後にテトラヒドロフラスコに不溶性のミク
ロゲル体が生成し、水性媒体が濁った状態での酸価を測
定すると54であった。その後もミクロゲル体は増加
し、逆に酸価は低下して10時間以降の酸価は50で一
定となった。 ・第4工程 上記ミクロゲルディスパージョンを50〜70℃に保ち
ながら、減圧して脱n−ブタノールを行い、冷却し、溶
剤を含まないミクロゲルディスパージョンを得た。
【0032】(2) 評価項目・及び試験方法 (2.1) ポットライフ 調整された処理液を40℃で10日間放置して沈殿物等
の有無を調べ、下記の評価基準により評価した。 ○:変化なし △:少量の沈殿物発生 ×:多量の沈殿物発生 ××:処理液全体がゲル化 (2.2) 皮膜表面の光沢性 JIS Z 8741に準拠し、光沢度計で供試材表面の
光沢度(入射角45°、鏡面光沢)を測定し、下記の評
価基準により評価した。 ○:200%以上 △:100%以上、200%未満 ×:100%未満
【0033】(2.3) 皮膜密着性 供試材に10mmφの曲げ加工を施した後、曲げ部にテ
ープ剥離試験を実施し、テープへの剥離皮膜の付着の有
無を目視により判定し、皮膜剥離の全くないものを
“5”(良好)、皮膜が全面剥離したものを“1”(劣
る)として5段階評価した。 (2.4) 層間絶縁抵抗 層間絶縁抵抗を下記条件でJIS第2法(JIS C 2
550)により測定した。 試験温度:常温(23±5℃) 試験圧力:2N/mm2(20.4kgf/cm2) 測定方法:供試材の表・裏について各3回測定し、平均
値を算出した。
【0034】(2.5) テスター振れテスト 皮膜表面にテスターの端子を押し当てて導通テストを行
い、絶縁皮膜が薄過ぎる場合または皮膜欠陥が多い場合
に生じる、絶縁抵抗低下または絶縁破壊によるテスター
の針の振れを調べた。導通テストは100回行い、10
0回中テスター振れが生じた回数を調べた。 (2.6) 耐食性 歪取り焼鈍前後の耐食性を以下のように評価した。歪取
り焼鈍前の耐食性については、塩水噴霧試験(SST)
を実施し、15時間後の赤錆発生面積率を調べた。歪取
り焼鈍後の耐食性については、750℃(2時間、10
0%窒素中)で歪取り焼鈍した供試材の恒温恒湿試験
(温度50℃、湿度80%)を実施し、120時間後の
赤錆発生面積率を調べた。
【0035】(2.7) 耐キズ付き性 新東科学(株)製の連続荷重式引掻き試験機を用い、下
記試験条件下で連続的に荷重を変化させながら供試材表
面を引掻き、疵が発生し始める荷重を測定し、耐キズ付
き性を評価した。 ・試験条件 引掻針:材質 サファイア 先端半径 0.1mmR 連続引掻荷重:0〜200g 引掻速度:500mm/min 引掻距離:100mm ・評価基準 ○:疵発生荷重 100g以上 △:疵発生荷重 50g以上100g未満 ×:疵発生荷重 50g未満
【0036】(2.8) 滑り性 市販の表面性測定機において10mmφの超硬合金性の
摩擦球を使用し、垂直荷重200g、走査速度100m
m/minの条件で100mmの距離を10回往復摩擦
した後、皮膜表面のキズ発生、剥離状況を目視で観察
し、下記評価基準で評価した。 ○:変化なし △:微小な疵発生 ×:疵及び剥離発生 (2.9) 積層溶接時の臭気 供試材を打ち抜き後積層し、端面をTIG溶接した際に
発生する溶接ガスを臭い袋に捕集し、臭いセンサー
((株)カルモア製)で臭い値を測定した。この臭いセ
ンサーは、酸化錫半導体方式により臭い分子が半導体表
面に吸着することによって生じる電気伝導度の変化によ
る抵抗値変化(臭い値)を測定するものである。また、
官能テストは、TIG溶接機の周囲で10名の評価者が
溶接時に発生する臭いを判定する方法で行い、下記の評
価基準で評価した。 ○:不快臭なし △:軽度の不快臭あり ×:不快臭発生
【0037】(2.10) アルミダイキャスト時の臭気 供試材を450℃雰囲気で3分間加熱し、その間に発生
したガスを臭い袋に捕集し、臭いセンサー((株)カル
モア製)で臭い値を測定した。 (2.11) 打抜性 金型材質SKD−1の角形ダイスを用い、クリアランス
6%、軽油系の打抜油使用の条件で連続打抜試験を行
い、かえり高さが50μmに達するまでの打抜数を調べ
た。
【0038】[実施例2] 実施例1と同様の調製法でエポキシアクリレート共重合
樹脂ミクロゲルディスパージョンを製造したが、その際
にエポキシ樹脂中のエポキシ基とカルボキシル基含有ア
クリルポリマー中のカルボキシル基の当量比を[エポキ
シ基]/[カルボキシル基]0.01〜2.5の範囲
で変化させ、平均粒子径が0.07〜3.5μmのエポ
キシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージョ
ンを得た。なお、カルボキシル基含有アクリルポリマー
を合成する際のアクリルモノマー中に占めるメタクリル
酸の割合は40%以上であった。このようにして得られ
たエポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパ
ージョンと有機還元剤からなる有機樹脂液(この有機樹
脂液はノボラックフェノール樹脂エチレンオキサイド付
加物は添加せず)を無機系水溶液に混合して処理液を調
製し、この処理液を実施例1と同様の電磁鋼板コイルの
表面にロールコーターで連続的に塗布した後、乾燥炉
(炉温500℃)で焼き付け、膜厚0.6〜0.9μm
の絶縁皮膜を形成した。
【0039】また、比較例として特開平7−28628
4号公報に開示された内層(コア)を熱硬化樹脂、外層
(シェル)を耐クロム酸性の樹脂としたコア−シェル型
エマルジョンを下記製法により調製し、これを無機系水
溶液に添加した処理液を作成した。 ・コア−シェル型エマルジョンの製造法 最初の第一段目の乳化重合において、コアの一部を構成
するエポキシ樹脂を乳化重合に用いる(メタ)アクリル
酸エステルに溶解した後、乳化剤の存在下で乳化し、重
合開始剤の存在下で乳化重合し、次いで第二段目の乳化
重合において、シェル部を構成する(メタ)アクリル酸
エステル及び(メタ)アクリル酸を乳化剤の存在下にて
更に乳化重合してコア−シェル型エマルジョンを得た。
【0040】以上のようにして作成した処理液及び供試
材について、実施例1と同様の特性評価を行った。その
結果を処理液の成分組成、エポキシアクリレート共重合
樹脂ミクロゲルディスパージョンの粒子径等とともに表
3及び表4に示す。表3及び表4によれば、[エポキシ
基]/[カルボキシル基]の当量比が本発明範囲を満足
するエポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディス
パージョンを用いたNo.22〜No.27(いずれも
本発明例)は、耐キズ付き性、歪取り焼鈍前後の耐食性
及び滑り性に優れ、また溶接時の不快臭も少ない。これ
に対し、[エポキシ基]/[カルボキシル基]の当量比
が本発明範囲を下回っているNo.28、No.29の
比較例の場合には、架橋が不十分であるために皮膜強度
およびバリアー性が低く、このため耐キズ付き性および
歪取り焼鈍前後の耐食性さらには滑り性も劣っており、
またテスター振れも起き易い。
【0041】一方、[エポキシ基]/[カルボキシル
基]が当量比が本発明範囲を超えるNo.30〜No.
33の比較例の場合には、エポキシアクリレート共重合
樹脂ミクロゲルディスパージョンの樹脂の粒子径が0.
3μm以上となり、また樹脂中に未反応のエポキシ基が
残存するため、無機水溶液中に含まれる6価クロムとエ
ポキシ基とが反応して例えばNo.33では沈殿物が発
生し、このような樹脂中に残存するエポキシ基の影響が
皮膜品質にまで及んでいる。すなわち、これらの比較例
は歪取り焼鈍後の耐食性が劣り、またテスター振れも起
き易い。さらに、これらの比較例は長時間の安定したコ
ーティングを行うことができなかった。また、[エポキ
シ基]/[カルボキシル基]の当量比がさらに高いN
o.34、No.35の比較例とコア−シェル型エマル
ジョンを用いたNo.36の比較例では、処理液が短時
間で凝集、沈殿し、コーティングは全く不可能であっ
た。
【0042】[実施例3] 実施例1と同様の調製法で製造したエポキシアクリレー
ト共重合樹脂ミクロゲルディスパージョン(樹脂粒子
径:0.2μm)とノボラックフェノール樹脂エチレン
オキサイド付加物を樹脂固形分の重量比で[エポキシア
クリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージョン]/
[ノボラックフェノール樹脂エチレンオキサイド付加
物]90/10の割合で混合した有機樹脂溶液を使用
し、この有機樹脂溶液と無機系水溶液の配合比を変えた
処理液を作製し、この処理液を実施例1と同様の電磁鋼
板コイルの表面にロールコーターで連続的に塗布した
後、乾燥炉(炉温500℃)で焼き付け、膜厚0.7〜
0.9μmの絶縁皮膜を形成した。
【0043】以上のようにして作成した供試材につい
て、実施例1と同様の特性評価を行った。その結果を処
理液の成分組成等とともに表5及び表6に示す。表5及
び表6によれば、有機樹脂の配合量(樹脂固形分)が無
機系水溶液のCrO3換算量100重量部に対して5重
量部未満であるNo.42の比較例は打抜性が劣り、打
ち抜き数50万回程度でかえり高さが50μmを超えて
いる。一方、有機樹脂の配合量(樹脂固形分)が無機系
水溶液のCrO3換算量100重量部に対して100重
量部を超えるNo.43、No.44の比較例では打抜
性は良好であるが、耐熱性が劣化するため歪取り焼鈍後
の耐食性が劣っている。これに対して有機樹脂の配合量
が本発明範囲を満足しているNo.37〜No.41
(いずれも本発明例)は、いずれの特性にも優れた性能
が得られている。
【0044】
【表1】
【0045】
【表2】
【0046】
【表3】
【0047】
【表4】
【0048】
【表5】
【0049】
【表6】
【0050】
【発明の効果】以上述べた本発明によれば、鋼板を積層
した際に高い占積率が得られるとともに、歪取り焼鈍前
後の耐食性および歪取り焼鈍後の滑り性に優れ、しかも
積層溶接時あるいはアルミダイキャスト時の不快臭の発
生が少ない絶縁皮膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】エポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルデ
ィスパージョンを得る際のエポキシ樹脂中のエポキシ基
とカルボキシル基含有アクリルポリマー中のカルボキシ
ル基の当量比[エポキシ基]/[カルボキシル基]が歪
取り焼鈍前後の耐食性及びテスタ振れテストでのテスタ
ー振れ回数に及ぼす影響を示すグラフ
【図2】有機樹脂溶液中に添加される[エポキシアクリ
レート共重合樹脂ミクロゲルディスパージョン]/[ノ
ボラックフェノール樹脂エチレンオキサイド付加物]の
樹脂固形分での重量比が歪取り焼鈍前後の耐食性と歪取
り焼鈍後の滑り性に及ぼす影響を示したグラフ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉見 直人 東京都千代田区丸の内一丁目1番2号 日本鋼管株式会社内 (72)発明者 吉川 圭吾 千葉県千葉市中央区旭町29−6 エクセ ルアサヒ302号 (56)参考文献 特開 平7−278835(JP,A) 特開 平3−166385(JP,A) 特開 平6−235070(JP,A) 特開 平7−286282(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C23C 22/00 - 22/86

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 無水クロム酸および重クロム酸塩の中か
    ら選ばれる少なくとも1種と、2価または3価の金属の
    酸化物、水酸化物および炭酸塩の中から選ばれる少なく
    とも1種を主成分として含む無機系水溶液に、該水溶液
    のCrO換算量100重量部に対して、有機還元剤を
    10〜50重量部、樹脂の平均粒子径が0.3μm未満
    であって、樹脂が完全架橋し且つエポキシ基が残存して
    いないエポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルディ
    スパージョンを樹脂固形分としての割合で5〜100重
    量部添加した処理液を、電磁鋼板の表面に塗布し、次い
    で焼き付けることを特徴とする電磁鋼板用絶縁皮膜の形
    成方法。
  2. 【請求項2】 無水クロム酸および重クロム酸塩の中か
    ら選ばれる少なくとも1種と、2価または3価の金属の
    酸化物、水酸化物および炭酸塩の中から選ばれる少なく
    とも1種を主成分として含む無機系水溶液に、該水溶液
    中のCrO換算量100重量部に対して、有機還元剤
    を10〜50重量部、樹脂の平均粒子径が0.3μm未
    満であって、樹脂が完全架橋し且つエポキシ基が残存し
    ていないエポキシアクリレート共重合樹脂ミクロゲルデ
    ィスパージョンとノボラックフェノール樹脂エチレンオ
    キサイド付加物とを樹脂固形分の重量比で[エポキシア
    クリレート共重合樹脂ミクロゲルディスパージョン]/
    [ノボラックフェノール樹脂エチレンオキサイド付加
    物]60/40〜97/3の割合で混合した有機樹脂
    液を樹脂固形分としての割合で5〜100重量部添加し
    た処理液を、電磁鋼板の表面に塗布し、次いで焼き付け
    ることを特徴とする電磁鋼板用絶縁皮膜の形成方法。
  3. 【請求項3】 エポキシアクリレート共重合樹脂ミクロ
    ゲルディスパージョンとして、 a)エポキシ樹脂と、 b)アクリル酸およびメタクリル酸の中から選ばれる少
    なくとも1種のモノマーと他のモノマーとを、アクリル
    酸およびメタクリル酸の合計量がアクリルモノマー中の
    40重量%以上となるように配合して共重合させたカル
    ボキシル基含有アクリルポリマーとを、前記エポキシ樹
    脂中のエポキシ基と前記カルボキシル基含有アクリルポ
    リマー中のカルボキシル基の当量比が[エポキシ基]/
    [カルボキシル基]0.10〜0.50となるよう反
    応させて得られたエポキシアクリレート共重合樹脂ミク
    ロゲルディスパージョンを用いることを特徴とする請求
    項1または2に記載の電磁鋼板用絶縁皮膜の形成方法。
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