JP3430929B2 - オルガノオキシホスフィン誘導体 - Google Patents

オルガノオキシホスフィン誘導体

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は新規なオルガノオキ
シホスフィン誘導体に関するものであり、本発明のオル
ガノオキシホスフィン誘導体は、例えば、DNA合成試
薬の中間原料として有機合成化学、生化学および医薬産
業上、有用な化合物である。 【0002】 【従来の技術】これまで、オルガノオキシジクロロホス
フィン誘導体としては、後記式(1)においてR1およ
びR2のいずれも水素原子である2−シアノエトキシジ
クロロホスフィン誘導体が知られている[エイチ・ケス
ター(H.Koester)ら、テトラヘドロン・レターズ(Tet
rahedron Lett.),52,5843(1983)および特許協力条約
(PCT)WO 97/42202を参照されたい]。前記2−シ
アノエトキシホスフィン誘導体を、DNAオリゴマーの
中間原料として用いる場合には、2−シアノエトキシホ
スフィン誘導体と5’−O,塩基保護−ヌクレオシドと
を反応させ、同ヌクレオシドの3’−O−アミダイト体
(DNA合成試薬)とするのが一般的である。この方法
によれば、DNA化学合成の原料を安定的に得ることが
できるが、純度良く目的物を得るために、生成する副生
物あるいは不純物を除去することが必要であり、それに
より操作上の煩雑さが生じる、およびそのためにコスト
が嵩む等の不利な点がある。 【0003】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、DN
A合成試薬の製造において、精製工程を省くことができ
る、DNA合成試薬の中間原料である新規なオルガノオ
キシホスフィン誘導体を提供することである。 【0004】 【問題を解決するための手段】本発明者らは、上記課題
を解決すべく鋭意研究を行った結果、下記式(1)で表
されるオルガノオキシホスフィン誘導体をDNA合成試
薬の原料に用いた場合に、前記課題が解決されることを
見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明
は下記式(1)で表されるオルガノオキシホスフィン誘
導体である。 【0005】 【化2】 【0006】(式中、R1およびR2は水素原子、または
ヘテロ原子を含んでいてもよいアルキル基、シクロアル
キル基、アリール基もしくはアラルキル基を示し、Xは
アゾリル基、ジアルキルアミノ基またはモルホリノ基を
示し、Yはアゾリル基、ジアルキルアミノ基、モルホリ
ノ基または塩素原子を示す。ただし、R1およびR2のい
ずれもが水素原子、メチル基またはエチル基である場合
を除く。) 【0007】 【発明の実施の形態】本発明におけるオルガノオキシホ
スフィン誘導体は、前記式(1)で表される化合物であ
り、式(1)におけるR1およびR2は、例えば、水素原
子、メチル基、エチル基、ノルマルプロピル基、イソプ
ロピル基、イソブチル基、セカンダリーブチル基、ター
シャリーブチル基、ノルマルペンチル基、1−エチルプ
ロピル基、シクロヘキシル基、ノルマルノニル基、2−
フェニルエチル基、2−(メチルチオ)エチル基、フェニ
ル基、1,1−ジエチル−3−ブテニル基および/また
は1,1−ジメチル−2−フェニルエチル基などである
(ただし、R1およびR2のいずれもが水素原子、メチル
基またはエチル基の場合を除く)。また、Xとしては、
例えば、イミダゾリル基、2−メチルイミダゾリル基、
4−メチルイミダゾリル基、2,4−ジメチルイミダゾ
リル基、ジイソプロピルアミノ基およびモルホリノ基な
どが挙げられ、Yとしては、例えば、イミダゾリル基、
2−メチルイミダゾリル基、4−メチルイミダゾリル
基、2,4−ジメチルイミダゾリル基、ジイソプロピル
アミノ基、モルホリノ基および塩素原子などが挙げられ
る。 【0008】本発明におけるオルガノオキシホスフィン
誘導体のうち、XおよびYが同一であるものは、下記式
(2)で表されるオルガノオキシジクロロホスフィンと
下記式(3)で表されるN−トリメチルシリルアゾール
化合物、N−トリメチルシリルジアルキルアミンまたは
4−トリメチルシリルモルホリンとの反応により容易に
製造することができる(下記式(4))。 【0009】 【化3】 【0010】(式中、R1およびR2は式(1)と同じで
ある。) 【0011】 【化4】 【0012】(式中、Xは式(1)と同じである。) 【0013】 【化5】 【0014】(式中、R1、R2およびXは式(1)と同
じである。) 【0015】前記反応は、トルエンまたはクロロホルム
等のハロゲン系有機溶媒溶液中、室温で、前記オルガノ
オキシジクロロホスフィンに、これに対し2〜3当量の
前記N −トリメチルシリルアゾール化合物などを混合さ
せて反応させる。この反応溶液の1H−NMRスペクト
ルを測定して反応が完了したことを確認した後、副生し
たクロロトリメチルシラン、反応溶媒および過剰のN−
トリメチルシリルアゾール化合物などを減圧留去すれ
ば、目的とするオルガノオキシホスフィン誘導体が得ら
れる。次に、本発明におけるオルガノオキシホスフィン
誘導体のうち、Yが塩素原子のものは、前記オルガノオ
キシジクロロホスフィンと下記式(5)で表されるアゾ
ール類、ジアルキルアミンまたはモルホリンとの反応に
より容易に製造することができる(下記式(6))。 【0016】 【化6】 【0017】(式中、Xは式(1)と同じである。) 【0018】 【化7】 【0019】(式中、R1、R2およびXは式(1)と同
じである。) 【0020】前記反応は、ヘキサン溶液中、0℃の条件
で、前記オルガノオキシジクロロホスフィンに、これに
対し2〜3当量の前記アゾール類などを混合し、その後
室温で30分〜2時間反応させる。次いで、析出した塩
をアルゴンまたは窒素雰囲気下でろ別し、反応溶媒を減
圧留去して得られた残さを常法により減圧蒸留すれば、
目的とするオルガノオキシホスフィン誘導体が得られ
る。 【0021】さらに、本発明におけるオルガノオキシホ
スフィン誘導体のうち、XおよびYが異なるものは、前記
式(6)で得られた化合物と下記式(7)で表されるア
ゾール類、ジアルキルアミンまたはモルホリンとの反応
により容易に製造することができる(下記式(8))。 【0022】 【化8】 【0023】(式中、Yはアゾリル基、ジアルキルアミ
ノ基またはモルホリノ基を表す。) 【0024】 【化9】 【0025】(式中、R1およびR2は水素原子、または
ヘテロ原子を含んでもよいアルキル基、シクロアルキル
基、アリール基もしくはアラルキル基を示し、XおよびY
は異なってアゾリル基、ジアルキルアミノ基またはモル
ホリノ基を表す。ただし、R1およびR2のいずれもが水
素原子、メチル基またはエチル基のものを除く。) 【0026】前記反応は、ヘキサン溶液中、2級または
3級アミンの存在下に、0℃の条件で、前記式(6)に
従って製造したオルガノオキシモノクロロホスフィン誘
導体に、これに対し1〜2当量の前記式(7)で表され
るアゾール類などを混合させて、その後室温で30分〜
2時間反応させる。析出した塩酸塩をアルゴンまたは窒
素雰囲気下でろ別し、反応溶媒を減圧留去して得られた
残さを常法により減圧蒸留すれば、目的とするオルガノ
オキシホスフィン誘導体が得られる。 【0027】一方、前記式(2)で表される化合物は、
下記式(9)で表されるオルガノオキシとりメチルシラ
ンと三塩化リンとの反応により容易に製造することがで
きる(下記式(10)、畑 辻明ら、ヌクレイック・ア
ッシッズ・リサーチ(Nucleic Acids Res.),17,8581(1
989)参照)。 【0028】 【化10】 【0029】(式中、R1およびR2は式(1)と同じで
ある。) 【0030】 【化11】 【0031】(式中、R1 2 式(8)と同じであ
る。) 【0032】前記反応は、0℃の条件で、前記オルガノ
オキシトリメチルシランとこれに対し2〜5当量の三塩
化リンとを混合し、室温で1時間〜10日間静置すること
により達成され、得られたものを常法に従って減圧蒸留
すれば、前記オルガノオキシジクロロホスフィンが得ら
れる。前記式(9)で表されるオルガノオキシトリメチ
ルシランは、下記式(11)で表される2−シアノエタノ
ール誘導体と1,1,1,3,3,3−ヘキサメチルジ
シラザンとの反応(下記式(12))、または下記式(1
3)で表されるアルデヒドもしくはケトンとシアノメチ
ルリチウムなどのシアノメチルアルカリ金属化合物との
反応生成物に、クロロトリメチルシランを反応させるこ
とにより(下記式(14))、容易に製造することができ
る。前記シアノメチルアルカリ金属化合物は、アセトニ
トリルのシアノ基に隣接した活性水素を、ノルマルブチ
ルリチウムなどを用いてアルカリ金属化することにより
容易に製造することができる(下記式(15))。 【0033】 【化12】 【0034】(式中、R1およびR2は式(1)と同じで
ある。) 【0035】 【化13】 【0036】(式中、R1およびR2は式(1)と同じあ
る。) 【0037】前記反応は、前記2−シアノエタノール誘
導体とこれに対し1〜2当量の1,1,1,3,3,3
−ヘキサメチルジシラザンおよび0.005〜0.1当
量のイミダゾールを混合し、1〜5時間かきまぜながら加
熱・還流させることにより達成され、得られたものを常
法に従って減圧蒸留すれば、目的の前記オルガノオキシ
トリメチルシランが得られる。 【0038】 【化14】 【0039】(式中、R1およびR2は式(1)と同じで
ある。) 【0040】 【化15】 【0041】(式中、R1およびR2は式(1)と同じで
ある。) 【0042】 【化16】 【0043】前記反応は、−80〜−60℃の条件で、
ノルマルブチルリチウムのノルマルヘキサン/テトラヒ
ドロフラン(1/2)溶液にこれに対し1.0〜1.2当
量のアセトニトリルを加えて、0.5〜2時間かき混ぜ
て反応させてシアノメチルリチウムのノルマルヘキサン
/テトラヒドロフラン溶液を得る。これに−80〜−6
0℃の条件で、1.0〜1.2当量の前記アルデヒドも
しくはケトンを加え、反応温度を0.5〜1時間かけて
室温に戻した後、1.2〜1.5当量のクロロトリメチ
ルシランを加えてかき混ぜることにより反応は達成され
る。有機溶媒は乾燥剤で乾燥後、蒸留精製したものを用
いた方が良い。得られたものを常法に従って減圧蒸留す
れば、目的の前記オルガノオキシトリメチルシランが得
られる。 【0044】前記式(3)で表されるN−トリメチルシ
リルアゾール化合物、N−トリメチルシリルジアルキル
アミンまたは4−トリメチルシリルモルホリンは、前記
式(5)で表されるアゾール類、ジアルキルアミンまた
はモルホリンと1,1,1,3,3,3−ヘキサメチル
ジシラザンとの反応により容易に製造することができる
(下記式(16))。 【0045】 【化17】 【0046】前記反応は、前記式(5)で表されるアゾ
ール類、ジアルキルアミンまたはノルホリンと、これに
対し1〜2当量の1,1,1,3,3,3−ヘキサメチ
ルジシランとを混合し、3〜24時間かきまぜながら加
熱・還流させることにより達成され、このものを常法に
従って減圧蒸留すれば、目的の前記式(3)で表される
N−トリメチルシリルアゾール化合物、N−トリメチル
シリルジアルキルアミンまたは4−トリメチルシリルモ
ルホリンが得られる。このようにして合成されたオルガ
ノオキシホスフィン誘導体は、DNAオリゴマーを化学
合成する際の中間原料として有用である。例えば、2−
シアノ−1−(1,1−ジエチル−3−ブテニル)エト
キシビス(4−メチルイミダゾリル)ホスフィンを、
5’−O−(4,4’−ジメトキシトリチル)チミジン
と反応させると、その3’−O−4−メチルイミダゾリ
ルホスフィン誘導体を収率良く得る。また、このように
して得られたチミジンの3’−O−4−メチルイミダゾ
リルホスフィン誘導体は、チミジンと反応させると、そ
5’−水酸基と高選択的に反応し、DNAダイマーを
収率良く得ることができる。 【0047】 【実施例】以下、実施例により本発明の化合物について
詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定され
るものではない。 (実施例1) 2−シアノ−1−ノルマルプロピルエトキシビス(2−
メチルイミダゾリル)ホスフィンの合成 トルエン(5ml)溶液中、アルゴン雰囲気下、室温の
条件で、2−シアノ−1−ノルマルプロピルエトキシジ
クロロロホスフィン0.267g(1.25mmol)
とトリメチルシリル−2−メチルイミダゾール0.42
5g(2.75mmol)を加え、5分間反応させた。
副生したクロロトリメチルシランおよびトルエンを室温
で10分間減圧蒸留した後、残留トルエンおよび過剰の
トリメチルシリル−2−メチルイミダゾールを35℃の
条件で2時間減圧留去し、無色透明、油状の2−シアノ
−1−ノルマルプロピルエトキシビス(2−メチルイミ
ダゾリル)ホスフィンを定量的に得た。得られた化合物
の1H−NMRスペクトルのケミカルシフト(δ)は次
のとおりである。1H−NMR(TMS,CDCl 3 δ;0.75-
1.85(m,7H), 2.5(s,6H), 2.7(d,2H,J=5.0Hz), 4.25-4.8
(m,1H), 7.05(s,4H)ppm. 【0048】(実施例2〜21)実施例1と同様の操作
により、表1〜表2に示したNo.2〜No.21のオ
ルガノオキシホスフィンを合成した。各オルガノオキシ
ホスフィンの1H−NMRスペクトルのケミカルシフト
(δ)を下記表1〜表2に示した。なお、1H−NMRス
ペクトルは60MHzNMR測定装置で測定(内部標
準:TMS=0ppm)し、δ値は0.05ppm間隔
で表示し、結合定数(J値)は0.5Hz間隔で表示し
た。 【0049】 【表1】 【0050】 【表2】【0051】(実施例22) 2−シアノ−1−ターシャリーブチルエトキシビス
(N,N−ジイソプロピルアミノ)クロロホスフィンの
合成 2−シアノ−1−ターシャリーブチルエトキシジクロロ
ロホスフィン11.4g(50mmol)をノルマルヘ
キサン200mlに溶解し、室温下、これにジイソプロ
ピルアミン10.1g(100mmol)をゆっくり加
えた。そのまま2時間かき混ぜた後、生成したジイソプ
ロピルアミン塩酸塩を窒素雰囲気下でろ別した。得られ
たろ液を減圧下濃縮し、残さを減圧蒸留して2−シアノ
−1−ターシャリーブチルエトキシ(N,N−ジイソプ
ロピルアミノ)クロロホスフィン11.7g(収率80
%)を得た。得られた化合物の沸点、1H−NMRスペ
クトルおよび31P−NMRスペクトルの各ケミカルシフ
ト(δ)は次のとおりである。b.p.111-112℃/0.08mmH
g,1H−NMR(TMS,CDCl 3 δ; 1.05(s,9H), 1.2-1.3
5(m,12H), 2.6- 2.9(m,2H), 3.6-4.15(m,3H) ppm,31
−NMR((MeO) 3 PCDCl 3 )δ; 177, 180ppm(なお、31
P−NMRは161.7MHz NMR測定装置で測定した(外部
標準;(MeO) 3 P=140ppm))。 【0052】(実施例23) 2−シアノ−1−ターシャリーブチルエトキシビス
(N,N−ジイソプロピルアミノ)モルホリノホスフィ
ンの合成 2−シアノ−1−ターシャリーブチルエトキシ(N,N
−ジイソプロピルアミノ)クロロロホスフィン9.7g
(33mmol)をノルマルヘキサン150mlに溶解
し、これにジイソプロピルアミン3.4g(34mmo
l)およびモルホリン3.0g(34mmol)をこの
順序で室温下、ゆっくり加えた。そのまま1時間かき混
ぜた後、生成したジイソプロピルアミン塩酸塩を窒素雰
囲気下でろ別した。得られたろ液を減圧下濃縮し、残さ
を減圧蒸留して2−シアノ−1−ターシャリーブチルエ
トキシ(N,N−ジイソプロピルアミノ)モルホリノホ
スフィン10.0g(収率88%)を得た。得られた化
合物の沸点、1H−NMRスペクトルおよび31P−NM
Rスペクトルの各ケミカルシフト(δ)は次のとおりで
ある。b.p.125-128℃/0.08mmHg,1H−NMR(TMS,CD
Cl 3 δ; 1.0(s,9H),1.1-1.25(m,12H), 2.6- 2.75(m,2
H),2.85-3.1(m,4H) ppm,31P−NMR((MeO) 3 ,P,CDC
l 3 δ; 119, 122ppm。(31P−NMRは161.7MHz NMR
測定装置で測定した(外部標準;(MeO) 3 P=140ppm))。
また、No.2〜No.23のオルガノオキシホスフィ
ン誘導体の置換基R1、R2、XおよびYの構造を下記表
3に示した。 【0053】 【表3】【0054】 【発明の効果】本発明のオルガノオキシホスフィン誘導
体は、DNA合成試薬の中間原料として有用である。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) CA(STN) CAOLD(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 下記式(1)で表されるオルガノオキシ
    ホスフィン誘導体。 【化1】 (式中、R1およびR2は水素原子、またはヘテロ原子を
    含んでいてもよいアルキル基、シクロアルキル基、アリ
    ール基もしくはアラルキル基を示し、Xはアゾリル基、
    ジアルキルアミノ基またはモルホリノ基を示し、Yはア
    ゾリル基、ジアルキルアミノ基、モルホリノ基または塩
    素原子を示す。ただし、R1およびR2のいずれもが水素
    原子、メチル基またはエチル基である場合を除く。)
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