JP3430462B2 - 水系熱処理液 - Google Patents

水系熱処理液

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JP3430462B2
JP3430462B2 JP12964993A JP12964993A JP3430462B2 JP 3430462 B2 JP3430462 B2 JP 3430462B2 JP 12964993 A JP12964993 A JP 12964993A JP 12964993 A JP12964993 A JP 12964993A JP 3430462 B2 JP3430462 B2 JP 3430462B2
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英夫 金森
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  • Heat Treatments In General, Especially Conveying And Cooling (AREA)
  • Preventing Corrosion Or Incrustation Of Metals (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、水系熱処理液に関し、
詳しくは、使用時に所望の濃度に希釈した後で焼入れ処
理等の金属熱処理に用いられ、かつ使用による劣化を起
こしにくいために寿命が長い水系熱処理液及び該水系熱
処理液の希釈によって調製された熱処理用希釈液に関す
る。
【0002】
【従来の技術】焼入れ処理等の金属熱処理に用いられる
熱処理液は、水系(水溶液系)、エマルジョン系及び油
系に大別される。水系熱処理液は冷却能が大きく、また
油を用いないので公害や火災の危険性が少ない等の利点
を有している。その反面、水系熱処理液は、焼割れと称
する処理体の割れ損傷を発生させやすいという欠点を有
している。水は熱容量が大きく、また粘度が低くて対流
を起こしやすい。このため、処理体は水系熱処理液によ
って極めて短時間に熱を奪われ、急激に冷却されるから
である。かかる欠点を解決するために、水系熱処理液に
種々の水溶性ポリマーを配合する方法が知られている。
水系熱処理液に水溶性ポリマーを配合すると、粘度が高
くなって対流が抑制され、その結果焼割れを防止するこ
とができる。水溶性ポリマーとしては、例えばポリエチ
レングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリエチ
レングリコールとポリプロピレングリコールの重量比が
75:25のランダム共重合体等のポリオキシアルキレ
ンや、オレフィンと無水マレイン酸との共重合体の塩な
どが用いられている。また特開平4−180515号公
報には、そのような水溶性ポリマーとしてポリオキシア
ルキレン誘導体とマレイン酸類との共重合体が記載され
ている。
【0003】しかし、これらの水溶性ポリマーは、高温
の処理体と接触すると分解や変質を起こしやすい。この
ため水溶性ポリマーを含有する水系熱処理液は劣化し易
く、良好な焼割れ防止効果を長期間に渡って維持するこ
とは困難であった。その他に、特公昭57−39294
号公報には、水系熱処理液にラウリル脂肪酸類を配合す
ることによって焼割れを防止する方法が記載されてい
る。また特開昭57−85923号公報には、水系熱処
理液に水溶性有機酸,水溶性有機アミン及び水溶性ポリ
アルキレングリコールを配合することによって処理体表
面の清浄性を向上させる方法が記載されている。更に特
公平3−12129号公報には、水系熱処理液に水溶性
ポリアルキレングリコール,カルボン酸,アミン及び銅
キレート剤を配合することによって熱処理用装置の腐食
を防止する方法が記載されている。しかし、これらの方
法によっても、良好な焼割れ防止効果を長期間に渡って
維持することは困難であった。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】このような状況下で本
発明者らは、劣化を起こしにくく良好な焼割れ防止効果
を長期間に渡って維持できる水溶性ポリマー含有水系熱
処理液を開発すべく鋭意研究を重ねた。その結果、水溶
性ポリマーとしてエチレンオキシド成分を主体とする水
溶性ポリオキシアルキレン誘導体を配合すると共に、カ
ルボン酸のアルカリ金属塩及び/又はスルホン酸のアル
カリ金属塩を配合した場合に上記目的を達成でき、寿命
の長い水系熱処理液が得られることを見出した。本発明
は、このような知見に基いて完成したものである。
【0005】
【課題を解決するための手段】すなわち本発明は、
(a)水10〜89.9重量%、(b)エチレンオキシド
成分を主体とする下記一般式(I)
【化2】 〔式中、Xは水酸基を1又は2以上有する脂肪族ヒドロ
キシ化合物又は芳香族ヒドロキシ化合物に由来する残基
を示し、Yはエチレンオキシドに由来する成分を主体と
するポリオキシアルキレン基を示し、Zはポリオキシア
ルキレン基の末端に存在する水酸基又は水酸基から変換
された官能基を示す。複数のY及びZは同一であっても
異なっていてもよい。aは水酸基を1又は2以上有する
脂肪族ヒドロキシ化合物又は芳香族ヒドロキシ化合物が
有する水酸基の数を示し、bは残基Xに結合しているポ
リオキシアルキレン基の数を示す。〕で表わされ、かつ
重量平均分子量が10,000〜200,000からな
水溶性のポリオキシアルキレン誘導体10〜70重量
%、及び(c)カルボン酸のアルカリ金属塩及びスルホ
ン酸のアルカリ金属塩よりなる群から選ばれた少なくと
も1種のアルカリ金属塩0.1〜20重量%を含有するこ
とを特徴とする水系熱処理液を提供するものである。
た本発明は、(a)水10〜89.9重量%、(b)エチ
レンオキシド成分を主体とする水溶性のポリオキシアル
キレン誘導体10〜70重量%、及び(c)成分である
アルカリ金属塩が、脂肪族ジカルボン酸のナトリウム
塩,脂肪族ジカルボン酸のカリウム塩,芳香族カルボン
酸のナトリウム塩,芳香族カルボン酸のカリウム塩,脂
肪族スルホン酸のナトリウム塩,脂肪族スルホン酸のカ
リウム塩,芳香族スルホン酸のナトリウム塩及び芳香族
スルホン酸のカリウム塩よりなる群から選ばれた少なく
とも1種のアルカリ金属塩0.1〜20重量%を含有する
ことを特徴とする水系熱処理液を提供するものである。
さらに、本発明は、(a)水10〜89.9重量%、
(b)エチレンオキシド成 分を主体とする水溶性のポリ
オキシアルキレン誘導体10〜70重量%、(c)カル
ボン酸のアルカリ金属塩及びスルホン酸のアルカリ金属
塩よりなる群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金
属塩0.1〜20重量%及び(d)有機アミン化合物0.0
1〜20重量%を含有することを特徴とする水系熱処理
液を提供するものである。また本発明は、上記の(a)
成分、(b)成分及び(c)成分に加えて、(d)有機
アミン化合物0.01〜20重量%を含有することを特徴
とする水系熱処理液をも提供するものである。さらに、
本発明は、上記の水系熱処理液5〜40重量%及び水9
5〜60重量%からなる熱処理用希釈液をも提供する。
【0006】本発明の(b)成分であるエチレンオキシ
ド成分を主体とする水溶性のポリオキシアルキレン誘導
体とは、水酸基を1又は2以上有する脂肪族ヒドロキシ
化合物又は芳香族ヒドロキシ化合物にアルキレンオキシ
ドを重合させた化合物であって、エチレンオキシドに由
来する成分を主体とするポリオキシアルキレン基を有
し、かつ水溶性を有するものをいう。その化学構造は、
次の一般式(I)
【0007】
【化3】
【0008】〔式中、Xは水酸基を1又は2以上有する
脂肪族ヒドロキシ化合物又は芳香族ヒドロキシ化合物に
由来する残基を示し、Yはエチレンオキシドに由来する
成分を主体とするポリオキシアルキレン基を示し、Zは
ポリオキシアルキレン基の末端に存在する水酸基又は水
酸基から変換された官能基を示す。複数のY及びZは同
一であっても異なっていてもよい。aは水酸基を1又は
2以上有する脂肪族ヒドロキシ化合物又は芳香族ヒドロ
キシ化合物が有する水酸基の数を示し、bは残基Xに結
合しているポリオキシアルキレン基の数を示す。〕で表
すことができる。
【0009】上記の脂肪族ヒドロキシ化合物,芳香族ヒ
ドロキシ化合物及びアルキレンオキシドの種類は特に限
定されない。水酸基を1又は2以上有する脂肪族ヒドロ
キシ化合物としては、例えば、メタノール;エタノー
ル;プロパノール;ブタノール;ヘキサノール;2−ブ
タノール;2−メチルプロパノール等の直鎖又は分岐モ
ノアルカノール、エチレングリコール;プロピレングリ
コール;ヘキサン−1,2−ジオール;ブタン−2,3
−ジオール;2−メチルプロパン−1,2−ジオール等
の直鎖又は分岐ジアルカノール、グリセリン;ペンタン
−1,3,5−トリオール;トリメチロールプロパン等
の直鎖又は分岐トリアルカノール、エリトリトール;ス
クロース;ソルビトール;ペンタエリトリトール等の直
鎖又は分岐ポリアルカノールなどが挙げられる。水酸基
を1又は2以上有するヒドロキシ芳香族化合物として
は、例えばフェノール;4−メチルフェノール等の(置
換)モノフェノール、ピロカテコール;レゾルシノー
ル;フロログルシノール;2,4−ジヒドロキシトルエ
ン等の(置換)ポリフェノールが挙げられる。また上記
の脂肪族ヒドロキシ化合物及び芳香族ヒドロキシ化合物
には、これらの各化合物の分子内エーテル化物,部分エ
ーテル化物,部分エステル化物,同種化合物間の縮合物
あるいは異種化合物間の縮合物も含まれる。異種化合物
間の縮合物は脂肪族ヒドロキシ化合物と芳香族ヒドロキ
シ化合物との縮合物であってもよい。これらの中ではグ
リセリン;ヘキサン−1,2−ジオール;エチレングリ
コール;プロピレングリコールが好ましく、特にグリセ
リンが好ましい。またアルキレンオキシドを重合させた
場合において、グリセリンを用いた場合と同様の残基を
生じる化合物も好ましく用いられる。
【0010】上記のアルキレンオキシドとしては、例え
ばエチレンオキシド,プロピレンオキシド,ブチレンオ
キシド等が挙げられる。(b)成分中のポリオキシアル
キレン基は、エチレンオキシド成分のみからなるホモジ
ニアス重合体である必要はないが、エチレンオキシド成
分を主体としていることが必要である。ポリオキシアル
キレン基がエチレンオキシド以外のアルキレンオキシド
を含む共重合体基である場合には、全アルキレンオキシ
ドの50重量%以上をエチレンオキシドが占めているの
が好ましく、65重量%以上をエチレンオキシドが占め
ているのが更に好ましい。なお、共重合体基はランダム
共重合体基又はブロック共重合体基のいずれであっても
よい。
【0011】(b)成分であるポリオキシアルキレン誘
導体は、水酸基を1又は2以上有する脂肪族ヒドロキシ
化合物又は芳香族ヒドロキシ化合物に由来する残基に、
遊離の水酸基が存在していても差し支えない。またポリ
オキシアルキレン基の末端に存在する水酸基は、エーテ
ル基やエステル基等の他の官能基に変換されていても差
し支えない。更に、同一の残基に結合しているポリオキ
シアルキレン基は、同一であっても異なっていても差し
支えない。
【0012】ポリオキシアルキレン誘導体の分子量は特
に制限されないが、通常、重量平均分子量(Mw)2,0
00〜500,000、好ましくは10,000〜200,0
00のものが用いられる。なおポリオキシアルキレン誘
導体は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を
併用しても差し支えない。
【0013】本発明の(c)成分であるカルボン酸のア
ルカリ金属塩及びスルホン酸のアルカリ金属塩の種類は
特に制限されることなく、脂肪族カルボン酸,芳香族カ
ルボン酸,脂肪族スルホン酸又は芳香族スルホン酸等の
酸とアルカリ金属とから調製された塩を広く用いること
ができる。
【0014】脂肪族カルボン酸としては、通常、炭素数
3〜36、好ましくは6〜20の脂肪族ジカルボン酸が
用いられる。具体的には例えば、マロン酸;アジピン
酸;セバシン酸;アゼライン酸;エイコサン二酸;4−
メチルノナン−1,9−ジカルボン酸;ダイマー酸;
1,2−ヘキサンジカルボン酸;1,3−オクタンジカ
ルボン酸;4,5−デカンジカルボン酸等が挙げられ
る。これらの中では、炭化水素鎖の2つの末端にそれぞ
れカルボン酸が結合している脂肪族ジカルボン酸が好ま
しい。芳香族カルボン酸としては、通常、炭素数7〜3
6、好ましくは7〜20の芳香族カルボン酸が用いられ
る。具体的には例えば、安息香酸;4−エチル安息香
酸;フタル酸;イソフタル酸;サリチル酸等が挙げられ
る。また芳香族カルボン酸には、芳香環の側鎖にのみカ
ルボキシル基が結合している化合物も含まれる。具体的
には例えば、フェノキシ酢酸;ノニルフェノキシ酢酸等
が挙げられる。これらの中では、芳香環の側鎖にのみカ
ルボキシル基が結合している化合物が好ましい。脂肪族
スルホン酸としては、通常、炭素数3〜36、好ましく
は6〜22の脂肪族スルホン酸が用いられる。具体的に
は例えば、ヘキサンスルホン酸;ウンデカンスルホン
酸;エイコサンスルホン酸;3−メチルノナンスルホン
酸;デカン−2−スルホン酸等が挙げられる。また脂肪
族スルホン酸には、α−オレフィンスルホン酸も含まれ
る。具体的には例えば、1−ブテンスルホン酸;1−デ
センスルホン酸等が挙げられる。芳香族スルホン酸とし
ては、通常、炭素数6〜36、好ましくは6〜20の芳
香族スルホン酸が用いられる。具体的には例えば、ベン
ゼンスルホン酸;トルエンスルホン酸;ドデシルベンゼ
ンスルホン酸等が挙げられる。これらの中では、ベンゼ
ンスルホン酸が好ましい。一方アルカリ金属としてはカ
リウム及びナトリウムが好ましく用いられる。なお、
(c)成分であるカルボン酸のアルカリ金属塩及びスル
ホン酸のアルカリ金属塩は、1種のみを単独で用いても
よいし2種以上を併用してもよい。
【0015】本発明の熱処理液には、必要に応じて
(d)成分として有機アミン化合物を配合することがで
きる。本発明の熱処理液に有機アミン化合物を配合した
場合には、焼割れ防止効果をより長期間に渡って維持す
ることが可能となる。(d)成分である有機アミン化合
物の種類も特に制限されることなく、各種の第1級,第
2級又は第3級アミン化合物を用いることができる。
【0016】有機アミン化合物としては、通常、炭素数
4〜14、好ましくは6〜12のシクロアルキルアミ
ン,炭素数1〜12、好ましくは2〜9のアルカノール
アミン及び炭素数4〜24、好ましくは4〜8のピペラ
ジン誘導体及び炭素数4〜34、好ましくは4〜16の
モルホリン誘導体等が用いられる。ここで炭素数6〜1
2のシクロアルキルアミンの具体例としては、例えば、
モノシクロヘキシルアミン,ジシクロヘキシルアミン,
モノ(2−メチル−シクロペンチル)アミン等が挙げら
れる。炭素数2〜9のアルカノールアミンの具体例とし
ては、例えば、モノエタノールアミン,ジエタノールア
ミン,トリエタノールアミン,モノメタノール−ジエタ
ノールアミン,トリイソプロパノールアミン等が挙げら
れる。炭素数4〜8のピペラジン誘導体の具体例として
は、例えば、ピペラジン,メチルピペラジン,t−ブチ
ルピペラジン,N−メチルピペラジン等が挙げられる。
ピペラジン誘導体にはヒドロキシル基を含有する化合物
も含まれる。そのような化合物の具体例としては、例え
ば、ヒドロキシピペラジン,N−ヒドロキシピペラジ
ン,モノヒドロキシ−ジエチルピペラジン,ジヒドロキ
シ−モノエチルピペラジン,ヒドロキシ−N−メチルピ
ペラジン,N−ヒドロキシ−プロピルピペラジン等が挙
げられる。炭素数4〜16のモルホリン誘導体の具体例
としては、例えば、モルホリン,エチルモルホリン,t
−ブチルモルホリン,ジメチルモルホリン,N−メチル
モルホリン等が挙げられる。これらの中では、炭素数2
〜9のアルカノールアミン及び炭素数4〜8のヒドロキ
シル基を含有するピペラジン誘導体が好ましく、ジエタ
ノールアミン及びモノヒドロキシ−モノエチルピペラジ
ンが特に好ましい。なお、これらの有機アミン化合物
は、1種のみを単独で用いてもよいし、2種以上を併用
してもよい。
【0017】本発明の熱処理液には、本発明の目的を阻
害しない限り必要に応じて、その他の添加剤を配合する
ことができる。そのような添加剤としては、例えば、亜
硝酸ナトリウム,亜硝酸カリウム,炭酸ナトリウム,炭
酸カリウム,メタホウ酸ナトリウム,メタホウ酸カリウ
ム,リン酸ナトリウム,リン酸カリウム,ヘキサメタリ
ン酸ナトリウム,ヘキサメタリン酸カリウム,オルトケ
イ酸ナトリウム,オルトケイ酸カリウム,メタケイ酸ナ
トリウム,メタケイ酸カリウム,ベンゾトリアゾール,
トリルトリアゾール等の腐食防止剤、防錆剤、シリコー
ン系消泡剤、着色剤等が挙げられる。
【0018】本発明の熱処理液は、(a)成分である水
に(b)成分であるポリオキシアルキレン誘導体、
(c)成分であるカルボン酸のアルカリ金属塩及び/又
はスルホン酸のアルカリ金属塩を溶解し、更に必要に応
じて(d)成分である有機アミン化合物及び/又はその
他の添加剤を溶解することによって調製される。配合順
序や溶解方法等は特に制限されない。配合割合は、熱処
理液の全量を基準として、(a)成分である水が少なく
とも10重量%であり、(b)成分が10〜70重量
%、好ましくは30〜60重量%であり、(c)成分が
0.1〜20重量%、好ましくは2〜10重量%であり、
(d)成分が0.01〜20重量%、好ましくは1〜10
重量%である。いずれかの成分の配合量が上記割合の下
限値を下回る場合には、良好な焼割れ防止効果を長期間
に渡って維持することができない。一方、いずれかの成
分の配合量が上記割合の上限値を超える場合には、良好
な焼割れ防止効果を長期間に渡って維持できないことが
あり、経済的にも不利となる。
【0019】本発明の熱処理液は、保存や運搬等の便宜
を図るために調製されたいわゆる原液である。従って金
属熱処理を行う場合には、本発明の熱処理液を水で希釈
して調製した熱処理用希釈液が用いられる。好ましい希
釈割合は原液である熱処理液の濃度によって異なるが、
通常は調製された熱処理用希釈液の全量に対して、本発
明の熱処理液5〜40重量%、及び水95〜60重量%
とする。なお熱処理用希釈液の調製方法としては、熱処
理液を希釈する方法のほかに、配合成分を水に溶解して
直接的に熱処理用希釈液を調製する方法がある。そして
本発明の熱処理用希釈液には、そのように直接調製され
た熱処理用希釈液が含まれる。
【0020】
【実施例】次に、本発明を実施例及び比較例に基いて更
に詳しく説明する。但し、本発明はこれらの実施例に限
定されない。
【0021】実施例1 (a)水57wt%に、(b)ポリオキシアルキレン誘
導体(Mw=20,000、脂肪族ヒドロキシ化合物に由
来する残基がグリセリン骨格、ポリオキシアルキレン基
がエチレンオキシド75wt%とプロピレンオキシド2
5wt%とからなる共重合体基)40wt%及び(c)
セバシン酸カリウム3.0wt%を溶解して水系熱処理液
を調製した。次に、この水系熱処理液20wt%に水8
0wt%を加えて希釈し、熱処理用希釈液を調製した。
得られた熱処理用希釈液について後述の各試験を行い、
新液時の冷却能及び劣化による冷却能の変化を評価し
た。
【0022】実施例2〜8 (a)、(b)、(c)及び(d)の各成分を第1表に
示す割合で配合、溶解して水系熱処理液を調製し、この
水系熱処理液を実施例1と同様に20wt%に希釈して
熱処理用希釈液を調製した。得られた熱処理用希釈液に
ついて実施例1と同様に試験した。結果を第1表に示
す。
【0023】比較例1〜3 (a)、(b)、(c)及び(d)の各成分を第2表に
示す割合で配合、溶解して水系熱処理液を調製し、この
水系熱処理液を実施例1と同様に20wt%に希釈して
熱処理用希釈液を調製した。得られた熱処理用希釈液に
ついて実施例1と同様に試験した。結果を第2表に示
す。
【0024】熱処理用希釈液の試験は、以下に示す方法
によって行った。新液時の冷却能評価試験 800℃に加熱された処理体が熱処理用希釈液中で冷却
される際に、350℃から150℃まで冷却される間の
平均冷却速度(℃/sec)を測定した。試験はJIS
K2242に準拠して行った。この試験において平均
冷却速度Vは、次の計算式によって算出される。 V=(350−150)÷(M2 −M1 ) 〔ここでM1 は処理体が350℃になった時の時間を示
し、M2 は処理体が150℃になった時の時間を示
す。〕上式によって算出された平均冷却速度Vの値が低
いほど、マルテンサイト変態領域(350〜150℃)
において処理体をゆっくりと冷却することができ、焼割
れ防止効果が高くなる。
【0025】劣化試験 劣化による冷却能の変化を評価するために、JIS K
2514,3.2に準拠して劣化試験を行った。劣化条
件は、95℃,Fe/Cu,O2:3リットル/h,液量
350mlとした。劣化の評価は劣化試験終了時(96
時間後)の平均冷却速度(℃/sec)の比較及び平均
冷却速度が150℃/secに到達した時間の比較によ
り行った。
【0026】
【表1】
【0027】*1 ポリオキシアルキレン誘導体:どの
実施例、比較例も実施例1と同じものを使用した。 *2 セバシン酸:(c)成分と比較するために比較例
で使用した。
【0028】
【表2】
【0029】
【表3】
【0030】比較例3から明らかなように、水にポリオ
キシアルキレン誘導体のみを配合した場合の平均冷却速
度は、新液時には70℃/secと良好であり焼割れを
充分に防止できる。しかし劣化試験開始1時間後には1
50℃/secとなり、劣化試験終了時、即ち96時間
後には水(比較例2)と同等の660℃/secとなっ
た。また比較例1から明らかなように、水とポリオキシ
アルキレン誘導体に加えて更にセバシン酸(遊離のカル
ボン酸)とジエタノールアミン(有機アミン)を配合し
た場合には、平均冷却速度が150℃/secとなるの
に20時間かかっており、焼割れ防止効果が若干維持さ
れている。しかし、劣化試験終了時には水(比較例2)
と同等の580℃/secとなった。
【0031】これに対して、水とポリオキシアルキレン
誘導体に加えてセバシン酸カリウムを配合した場合(実
施例1)には、平均冷却速度が150℃/secとなる
のに200時間かかっており、劣化試験終了時において
は未だ100℃/secに過ぎず、平均冷却速度の変化
が少ない。この事実は、本発明の熱処理液が焼割れ防止
効果を長期間に渡って維持し、長い寿命を有することを
示している。セバシン酸カリウムと共にモノヒドロキシ
モノエチルピペラジンを配合した場合(実施例2)に
は、更に平均冷却速度の変化が少なくなった。この事実
は、本発明の熱処理液に有機アミンを配合した場合に
は、より優れた寿命延長効果が得られることを示してい
る。セバシン酸カリウム以外のカルボン酸アルカリ金属
塩又はスルホン酸アルカリ金属塩を配合した場合(実施
例3,4,5及び6)やモノヒドロキシモノエチルピペ
ラジン以外の有機アミンを配合した場合(実施例7)
も、優れた寿命延長効果が認められた。2種類以上のカ
ルボン酸アルカリ金属塩又はスルホン酸アルカリ金属塩
を配合した場合(実施例8)も良好な結果が得られた。
【0032】
【発明の効果】以上のように、本発明の水系熱処理液及
び熱処理用希釈液は、使用による劣化を起こしにくく、
長い寿命を有している。従って本発明の水系熱処理液及
び熱処理用希釈液は、焼入れ等の金属熱処理において、
従来の水系,油系,エマルジョン系あるいは無機系の熱
処理液に代えて好適に用いられる。また熱間鋳造や熱間
圧延等に用いることもできる。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 1/00 120 C21D 1/60

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 (a)水10〜89.9重量%、(b)エ
    チレンオキシド成分を主体とする下記一般式(I) 【化1】 〔式中、Xは水酸基を1又は2以上有する脂肪族ヒドロ
    キシ化合物又は芳香族ヒドロキシ化合物に由来する残基
    を示し、Yはエチレンオキシドに由来する成分を主体と
    するポリオキシアルキレン基を示し、Zはポリオキシア
    ルキレン基の末端に存在する水酸基又は水酸基から変換
    された官能基を示す。複数のY及びZは同一であっても
    異なっていてもよい。aは水酸基を1又は2以上有する
    脂肪族ヒドロキシ化合物又は芳香族ヒドロキシ化合物が
    有する水酸基の数を示し、bは残基Xに結合しているポ
    リオキシアルキレン基の数を示す。〕で表わされ、かつ
    重量平均分子量が10,000〜200,000からな
    水溶性のポリオキシアルキレン誘導体10〜70重量
    %、及び(c)カルボン酸のアルカリ金属塩及びスルホ
    ン酸のアルカリ金属塩よりなる群から選ばれた少なくと
    も1種のアルカリ金属塩0.1〜20重量%を含有するこ
    とを特徴とする水系熱処理液。
  2. 【請求項2】 (a)水10〜89.9重量%、(b)エ
    チレンオキシド成分を主体とする水溶性のポリオキシア
    ルキレン誘導体10〜70重量%、及び(c)成分であ
    るアルカリ金属塩が、脂肪族ジカルボン酸のナトリウム
    塩,脂肪族ジカルボン酸のカリウム塩,芳香族カルボン
    酸のナトリウム塩,芳香族カルボン酸のカリウム塩,脂
    肪族スルホン酸のナトリウム塩,脂肪族スルホン酸のカ
    リウム塩,芳香族スルホン酸のナトリウム塩及び芳香族
    スルホン酸のカリウム塩よりなる群から選ばれた少なく
    とも1種のアルカリ金属塩0.1〜20重量%を含有する
    ことを特徴とする水系熱処理液。
  3. 【請求項3】 (a)水10〜89.9重量%、(b)エ
    チレンオキシド成分を主体とする水溶性のポリオキシア
    ルキレン誘導体10〜70重量%、(c)カルボン酸の
    アルカリ金属塩及びスルホン酸のアルカリ金属塩よりな
    る群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属塩0.1
    〜20重量%及び(d)有機アミン化合物0.01〜20
    重量%を含有することを特徴とする水系熱処理液。
  4. 【請求項4】 (a)水10〜89.9重量%、(b)エ
    チレンオキシド成分を主体とする水溶性のポリオキシア
    ルキレン誘導体10〜70重量%、(c)カルボン酸の
    アルカリ金属塩及びスルホン酸のアルカリ金属塩よりな
    る群から選ばれた少なくとも1種のアルカリ金属塩0.1
    〜20重量%及び(d)ピペラジン誘導体及びアルカノ
    ールアミンよりなる群から選ばれた少なくとも1種の有
    機アミン化合物0.01〜20重量%を含有することを特
    徴とする水系熱処理液。
  5. 【請求項5】 前記一般式(I)において、Xはグリセ
    リンに由来する残基である請求項1記載の水系熱処理
    液。
  6. 【請求項6】 請求項1ないし5のいずれか一項に記載
    の水系熱処理液5〜40重量%及び水95〜60重量%
    からなる熱処理用希釈液。
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