JP3422847B2 - 耐熱性、耐面衝撃性に優れたマレイミド系樹脂組成物 - Google Patents
耐熱性、耐面衝撃性に優れたマレイミド系樹脂組成物Info
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Description
優れ、かつ成形加工性に優れたマレイミド系樹脂組成物
に関する。 【0002】 【従来の技術および発明が解決しようとする課題】電気
機器や自動車などの分野においては、近年意匠性を重要
視した製品の重要度が増加してきている。それらに使用
される材料においても、このような傾向に対応して機械
的性能が高く軽量で外観の優れたものが要求されてきて
いる。このような要求に応えるものとしてエンプラと呼
ばれている材料分野に属するポリカーボネート樹脂や変
性ポリフェニレンエーテル樹脂が使用されたり、ABS
樹脂の耐熱性を向上させた、いわゆる耐熱ABS樹脂が
開発され使用されている。特に耐熱ABS樹脂は各種改
良方法が開発され他のエンプラに比べて成形性・耐候性
・価格の面で優れており広く耐熱性樹脂材料として使用
されている。 【0003】ABS樹脂の耐熱性を向上させる方法とし
ては、アクリロニトリルとスチレンに加えてα−メチル
スチレンを重合して得られるアクリロニトリル−スチレ
ン−α−メチルスチレン三元共重合体とゴム強化樹脂と
をブレンドして樹脂組成物とするいわゆるグラフトブレ
ンド法が一般に採用されている。この場合はマトリック
スにα−メチルスチレンを含むことが耐熱性向上に寄与
しており、α−メチルスチレンの含有量が少ない場合は
十分な耐熱性が得られず、多い場合は重合速度が遅く重
合度の高い樹脂が得られ難く、かつα−メチルスチレン
単位が連鎖した構造が生成するため加工時に熱分解し易
いという欠点を有している。このようなα−メチルスチ
レンを使用することの欠点を克服する目的でマレイミド
系共重合体を使用する耐熱ABS樹脂が開発され、特開
昭61−16955号公報等で提案されている。また、
耐衝撃性の優れたマレイミド系共重合体樹脂組成物を提
供する方法として、特定のマレイミド系共重合体を使用
する樹脂組成物が特開平2−196849号公報に開示
されている。 【0004】しかし一般に耐熱ABS樹脂は、ABS樹
脂と比較して耐衝撃性が劣るという欠点があり、その改
良法として特開昭61−73755等や、マトリックス
樹脂とグラフト重合体の相溶性を考慮し、それぞれの樹
脂組成を規定した特開平5−320473号が提案され
ているが、まだ十分でない。 【0005】マレイミド系共重合体は、一般に衝撃強
度、特に面衝撃強度が低い。そのため実際の使用におい
てはゴム強化樹脂とブレンドして用いられるが、ゴム強
化樹脂とのブレンドにより得られる樹脂組成物は通常マ
レイミド系共重合体より耐熱性の劣るものとなる。耐熱
性の低下を抑えるためα−メチルスチレン、マレイミド
系単量体単位を多く含んだゴム強化樹脂をマレイミド系
共重合体にブレンドする方法もあるが、十分な耐面衝撃
性が得られない。 【0006】また、マレイミド系共重合体を使用した耐
熱ABSは耐熱性が高いが、従来のABS樹脂に比べて
溶融時の流動性が低く、成形加工性が劣るという欠点が
ある。成形加工性を改良する手法として、一般的には可
塑剤・滑剤などを添加する方法が採用されているが、樹
脂中への分散状態を一定にする必要があることや、成形
加工時に成形品の表面に浮き出て外観をそこなったり、
本来の目的である耐熱性を低下させるなどの欠点があ
る。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる状
況に鑑み鋭意検討した結果、特定の物性を有するマレイ
ミド系共重合体と特定の物性を有するゴム強化樹脂、必
要に応じて他の硬質熱可塑性樹脂を特定の割合で配合す
ることにより、耐熱性、成形加工性および耐面衝撃性に
優れたマレイミド系樹脂組成物が得られることを見い出
し本発明に至った。 【0008】すなわち、本発明は、(A)マレイミド系
単量体単位(a−1)15〜65重量%、芳香族ビニル
系単量体単位(a−2)35〜85重量%および他のビ
ニル系単量体単位(a−3)0〜35重量%(ただし、
(a−1)〜(a−3)成分の合計を100重量%とす
る。)からなる共重合体であって、該共重合体中の残存
マレイミド系単量体の含有量が0.1重量%以下で、か
つマレイミド系単量体以外の総揮発分が0.5重量%以
下であり、該共重合体中のマレイミド系単量体単位を構
成成分として含む重量平均分子量が200〜1000の
オリゴマー成分の含有量が2〜10重量%であり、該共
重合体の固有粘度が0.3〜1.5dl/gであるマレ
イミド系共重合体40〜95重量部、(B)ブタジエン
系ゴム(b−1)35〜70重量%と、アクリロニトリ
ル(b−2)7.5〜29.25重量%およびスチレン
(b−3)16.5〜48.75重量%(ただし、(b
−1)〜(b−3)成分の合計が100重量%であり、
かつ(b−2)/((b−2)+(b−3))が0.2
5〜0.45である。)とのグラフト共重合体であり、
該グラフト共重合体のブタジエン系ゴムの数平均粒子径
が0.15〜0.4μmであり、該グラフト共重合体中
に含まれる未グラフト重合体の固有粘度が0.4〜1.
2dl/gであり、該グラフト共重合体のグラフト率が
20〜80%であるゴム強化樹脂(B)60〜5重量
%、および(C)他の硬質熱可塑性樹脂0〜300重量
部(上記(A)成分と上記(B)成分の合計100重量
部に対して)からなることを特徴とする耐熱性、耐面衝
撃性に優れたマレイミド系樹脂組成物にある。 【0009】以下、本発明を詳細に説明する。 【0010】本発明の(A)成分であるマレイミド系共
重合体は、樹脂組成物の耐熱性を向上させる成分であ
り、マレイミド系単量体単位(a−1)、芳香族ビニル
系単量体単位(a−2)および他のビニル系単量体単位
(a−3)からなるものである。 【0011】本発明のマレイミド系共重合体(A)を構
成するマレイミド系単量体としては、マレイミド、N−
メチルマレイミド、N−エチルマレイミド、N−プロピ
ルマレイミド、N−イソプロピルマレイミド、N−シク
ロヘキシルマレイミド、N−フェニルマレイミド、N−
トルイルマレイミド、N−キシリ−ルマレイミド、N−
ナフチルマレイミド、N−t−ブチルマレイミド、N−
オルトクロルフェニルマレイミド、N−オルトメトキシ
フェニルマレイミド、N−オルトブロモフェニルマレイ
ミドなどが挙げられる。これらのうちN−シクロヘキシ
ルマレイミド、N−オルトクロルフェニルマレイミド、
N−オルトプロモマレイミド、N−フェニルマレイミド
が好ましく、特にN−フェニルマレイミドが好ましい。
これらのマレイミド系単量体は1種、または2種以上を
組み合せて使用することができる。 【0012】本発明のマレイミド系共重合体(A)中の
マレイミド系単量体単位(a−1)の含有量は15〜6
5重量%好ましくは20〜50重量%の範囲であること
が必要である。マレイミド系単量体単位(a−1)の含
有量が15重量%未満の場合には得られるマレイミド系
樹脂組成物の耐熱性が低く、一方、65重量%を超える
場合にはマレイミド系樹脂組成物の流動性が低く成形加
工性が劣ったものとなる。 【0013】また本発明のマレイミド系共重合体(A)
を構成するのに用いられる芳香族ビニル系単量体として
は、スチレン、α−メチルスチレン、パラメチルスチレ
ン、t−ブチルスチレン、クロルスチレン、ブロモスチ
レン、ビニルトルエンなどが挙げられ、スチレンが好ま
しい。これら芳香族ビニル系単量体は1種または2種以
上を組み合せて用いることができる。 【0014】本発明のマレイミド系共重合体(A)中の
芳香族ビニル系単量体単位(a−2)の含有量は35〜
85重量%、好ましくは40〜70重量%の範囲である
ことが必要である。芳香族ビニル系単量体単位(a−
2)の含有量が35重量%未満では得られるマレイミド
系樹脂組成物の流動性が低く成形加工性が劣ったものと
なり、一方、85重量%を超える場合にはマレイミド系
樹脂組成物の耐熱性が低下するようになる。 【0015】さらに本発明のマレイミド系共重合体
(A)を構成するのに任意成分として用いられる他のビ
ニル系単量体としては、シアン化ビニル系単量体、アク
リル酸エステル系単量体、メタクリル酸エステル系単量
体、不飽和ジカルボン酸無水物系単量体、およびビニル
カルボン酸系単量体などが挙げられる。シアン化ビニル
系単量体としてはアクリロニトリル、メタクリロニトリ
ル、フマロニトリルなどが挙げられ、アクリロニトリル
が好ましい。アクリル酸エステル系単量体としてはアク
リル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピ
ル、アクリル酸ブチル、アクリル酸シクロヘキシルなど
が挙げられる。メタクリル酸エステル系単量体としては
メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル
酸プロピル、メタクリル酸ブチル、メタクリル酸フェニ
ル、メタクリル酸イソボルニル、メタクリル酸ベンジ
ル、メタクリル酸トリクロロエチルなどが挙げられ、メ
タクリル酸メチルが好ましい。さらに、不飽和ジカルボ
ン酸無水物系単量体としてはマレイン酸、メタコン酸、
シトラコン酸の無水物などが挙げられ、マレイン酸無水
物が好ましい。またビニルカルボン酸系単量体としては
アクリル酸、メタクリル酸などが挙げられ、メタクリル
酸が好ましい。これら他のビニル系単量体は1種で、ま
たは2種以上を組み合せて用いることができる。 【0016】本発明のマレイミド系共重合体(A)中の
他のビニル系単量体単位(a−3)の含有量は0〜35
重量%、好ましくは0〜25重量%である。他のビニル
系単量体単位(a−3)が35重量%を超えると、得ら
れるマレイミド系樹脂組成物の耐熱性、耐衝撃性、加工
性などが損われるようになる。 【0017】さらに本発明のマレイミド系共重合体
(A)においては、該共重合体中の残存マレイミド系単
量体の含有量が0.1重量%以下、好ましくは0.05
重量%以下で、かつマレイミド系単量体以外の総揮発成
分が0.5重量%以下、好ましくは0.4重量%以下で
あることが必要である。残存マレイミド系単量体の含有
量が0.1重量%を超えると該共重合体の着色が著し
く、加工時の熱着色やブリードアウトなどの外観上の欠
点を生じやすくなる。さらに該共重合体中のマレイミド
系単量体以外の総揮発分としては構成成分の単量体と有
機溶剤、そして所望により使用した重合開始剤、連鎖移
動剤の残渣などが挙げられるが、これらの総量が0.5
重量%を超えると樹脂組成物の耐熱性の発現性を損なう
とともに成形加工時にシルバーストリークを生じるなど
の問題を起こすようになる。 【0018】また本発明のマレイミド系共重合体(A)
は、マレイミド系単量体を構成成分として含む重量平均
分子量が200〜1000のオリゴマー成分を2〜10
重量%、好ましくは3〜9重量%の範囲で含有する必要
がある。該オリゴマー成分の含有量は、ゲルパーミエー
ションクロマトグラフィー(GPC)の溶出曲線より対
応する範囲にあるピークの面積と全ピークの面積の比か
ら求めることができる。また、該オリゴマー成分を構成
する単量体成分は、GPCにより分離採取した該オリゴ
マー成分の溶出液を乾燥して溶媒を除去した後に元素分
析により求めることができる。該オリゴマー成分の構成
単位としては、マレイミド系単量体単位が含まれている
ことが必要であり、マレイミド系単量体単位を含まない
オリゴマー成分は、マレイミド系樹脂組成物の機械的強
度を低下させるので好ましくない。該オリゴマー成分と
しては、重量平均分子量が200以上であることが必要
であり、200に満たないオリゴマー成分は、樹脂組成
物の耐熱性の発現性を損なうとともに成形時にシルバー
ストリークの原因となり、また一方、重量平均分子量が
1000を超えるオリゴマー成分は、成形加工性の向上
効果がないので好ましくない。また該オリゴマー成分の
含有量が2重量%に満たない場合にはマレイミド系樹脂
組成物の成形加工性が劣ったものとなり、また該オリゴ
マー成分の含有量が10重量%を超えるとマレイミド系
樹脂組成物の機械的強度を低下させるとともに加熱時に
着色が起こるようになる。 【0019】さらに本発明のマレイミド系共重合体
(A)の固有粘度は、0.3〜1.5dl/g、好まし
くは0.5〜1.2dl/gの範囲であることが必要で
ある。0.3dl/gに満たない固有粘度のマレイミド
系共重合体では実用的な機械的強度が劣り実際の使用に
耐え難く、1.5dl/gを超える固有粘度のマレイミ
ド系共重合体では溶融時の流動性が悪く成形加工性が劣
ったものとなる。 【0020】本発明のマレイミド系共重合体(A)を製
造する方法としては、一般に公知の方法を採用すること
ができる。また、本発明の共重合体(A)を製造するに
際しては、所望により重合開始剤、連鎖移動剤、熱安定
剤などを添加することが可能である。本発明の共重合体
(A)を製造するに際して所望により用いることができ
る重合開始剤としては、一般に公知の有機過酸化物、ア
ゾ化合物を用いることができる。有機過酸化物として
は、ケトンパーオキシド類、パーオキシケタール類、ハ
イドロパーオキシド類、ジアルキルパーオキシド類、ジ
アシルパーオキシド類パーオキシエステル類、パーオキ
シジカーボネイト類などが用いられ、メチルエチルケト
ンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシ
ド、メチルシクロヘキサノンパーオキシド、アセチルア
セトンパーオキシド、1,1−ジブチルパーオキシ−
3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジブ
チルパーオキシシクロヘキサン、2,2−ジ−t−ブチ
ルパーオキシブタン、2,2,4−トリメチルペンチル
−2−ハイドロパーオキシド、ジクミルパーオキシド、
2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルパーオキ
シ)ヘキサン、t−ブチルクミルパーオキシド、ジ−t
−ブチルパーオキシド、トリス−(t−ブチルパーオキ
シ)トリアジン、ジ−t−ブチルパーオキシヘキサハイ
ドロテレフタレートなどが挙げられる。アゾ化合物とし
ては1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボ
ニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニ
トリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、
2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イ
ル)プロパン、アゾジ−t−オクタン2−シアノ−2−
プロピルアゾホルムアミド、ジメチル2,2’−アゾビ
ス(2−メチルプロピネート)、2,2’−アゾビス
(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)などが挙げ
られる。本発明のマレイミド系共重合体を製造するに際
して所望により用いることができる連鎖移動剤としては
公知であるものが使用でき、メルカブタン類、テルペン
油類、α−メチルスチレンダイマーなどが挙げられる。
本発明の共重合体を製造するに際して所望により用いる
ことができる熱安定剤などの添加剤としては一般に公知
であるものが使用できるが、重合を阻害したり着色など
の弊害をもたらすものは好ましくない。 【0021】本発明において用いる(B)成分であるゴ
ム強化樹脂は、樹脂組成物の耐衝撃性を発現させる成分
である。ゴム強化樹脂(B)は、ブタジエン系ゴム(b
−1)存在下に、アクリロニトリル(b−2)およびス
チレン(b−3)をグラフト重合して得られるものであ
る。 【0022】本発明において用いるゴム強化樹脂(B)
を構成するブタジエン系ゴムとは、1,3−ブタジエン
50重量%以上100重量%以下およびこれと共重合可
能なCH2 =C<基を有する単量体50重量%以下(合
計100重量%)とからなるものであり、1,3−ブタ
ジエン単独重合体または1,3−ブタジエン単位50%
以上から構成される共重合体である。該ブタジエン系ゴ
ムの具体例としては、ポリブタジエンゴム、ブタジエン
−スチレン共重合体ゴム、ブタジエンビニルトルエン共
重合体ゴム、ブタジエン−アクリロニトリル共重合体ゴ
ム、ブタジエン−メタクリロニトリル共重合体ゴム、ブ
タジエン−アクリル酸メチル共重合体ゴム、ブタジエン
−アクリル酸2−エチルヘキシル共重合体ゴム、ブタジ
エン−メタクリル酸メチル共重合体ゴム、ブタジエン−
メタクリル酸エチル共重合体ゴムなどが挙げられる。さ
らに1,3−ブタジエン単位50重量%以上から構成さ
れる三元共重合体ゴムも含まれ、ガラス転移温度が0℃
以下のものである。 【0023】本発明において用いられるブタジエン系ゴ
ム(b−1)の数平均粒子径は0.15〜0.4μm、
好ましくは0.2〜0.35μmの範囲である必要があ
る。ブタジエン系ゴムの数平均粒子径が0.15μm未
満であると最終樹脂組成物の耐面衝撃性が劣るようにな
りまた、一方、0.4μmを超えると成形外観や耐面衝
撃性が劣るようになる。 【0024】ゴム強化樹脂(B)中のブタジエン系ゴム
(b−1)の含有量は、(b−1)〜(b−3)成分の
合計100重量%中35〜70重量%、好ましくは40
〜65重量%の範囲であることが必要である。35重量
%未満の含有量ではマレイミド系樹脂組成物の耐面衝撃
性を高くするためには、樹脂組成物中に該ゴム強化樹脂
を多量に配合しなければならず、そのためにマレイミド
系樹脂組成物の耐熱性が劣るものとなり、一方、70重
量%を超えるとマレイミド系樹脂組成物の成形外観が悪
くなる。 【0025】またゴム強化樹脂(B)中のアクリロニト
リルおよびスチレンの含有量は、アクリロニトリル(b
−2)が7.5〜29.25重量%、スチレン(b−
3)が16.5〜48.75重量%の範囲である必要が
あり、かつ(アクリロニトリル(b−2)/(アクリロ
ニトリル(b−2)+スチレン(b−3)))で表され
る比率が0.25〜0.45である必要がある。(アク
リロニトリル(b−2)/(アクリロニトリル(b−
2)スチレン(b−3)))の比率が0.25未満およ
び0.45を超えるとマレイミド系共重合体(A)との
相溶性が悪く、得られるマレイミド系樹脂組成物の面衝
撃強度も低下するようになる。 【0026】またゴム強化樹脂(B)のグラフト共重合
体中に含まれる未グラフト重合体の固有粘度は0.4〜
1.2dl/g、好ましくは0.5〜0.9dl/gの
範囲である必要がある。未グラフト共重合体の固有粘度
が0.4dl/g未満であると本発明の目的とする耐面
衝撃性が低下し、一方、未グラフト共重合体の固有粘度
が1.2dl/gを超えると得られるマレイミド系樹脂
組成物の流動性が低く成形加工性も低下するようにな
る。 【0027】グラフト共重合体におけるグラフト率は2
0〜80%、好ましくは25〜60%、さらに好ましく
は30〜50%の範囲である必要がある。グラフト共重
合体のグラフト率が20%未満であるとグラフト共重合
体の凝集が起こり易く、外観も悪くなり。またグラフト
共重合体のグラフト率が80%を超えると耐面衝撃性が
低下するようになる。 【0028】本発明のゴム強化樹脂(B)の製造方法
は、乳化重合、塊状重合、溶液重合、乳化−懸濁重合、
乳化−塊状重合などの一般に公知の方法が採用できる
が、乳化重合が好ましく用いられる。 【0029】また本発明において任意成分として用い
る、上記マレイミド系共重合体(A)およびゴム強化樹
脂(B)以外の他の硬質熱可塑性樹脂(C)は成形加工
性、外観を向上させるために使用される成分であり、そ
の例としては、アクリロニトリル−スチレン共重合体
(AS樹脂)、α−メチルスチレン−アクリロニトリル
共重合体(αSAN)、ポリメチルメタクリレート(P
MMA)、メチルメタクリレート−スチレン共重合体
(MS樹脂)などが挙げられる。 【0030】本発明のマレイミド系樹脂組成物は、上述
したマレイミド系共重合体(A)とゴム強化樹脂(B)
を、前者が40〜95重量部、後者が60〜5重量部の
範囲で(A)成分と(B)成分の合計が100重量部と
なるように配合したものである。ゴム強化樹脂(B)の
配合量が5重量部未満では得られる樹脂組成物の耐面衝
撃性が十分でなく、また60重量部を超える配合量では
得られる樹脂組成物の耐熱性が低下するようになる。な
お任意成分として配合し得る他の硬質熱可塑性樹脂
(C)の使用量は、上記(A)成分と(B)成分の合計
100重量部に対して0〜300重量部である。300
重量部を超える割合の使用では最終的に得られる樹脂組
成物の耐熱性や耐面衝撃性の向上が期待できないものと
なる。 【0031】本発明のマレイミド系樹脂組成物には、熱
安定性の改良を目的としてヒンダードフェノール系抗酸
化剤やホスファイト系安定剤を、耐候性改良を目的とし
てベンゾフェノン系紫外線吸収剤やヒンダードアミン系
安定剤、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤を、加工性
改良を目的としてエチレンビスステアリルアマイドなど
のアミド系の滑剤や金属石鹸などを単独で、または併用
して配合しようとすることが可能である。さらに難燃剤
を配合して難燃性樹脂組成物とすることも可能である。 【0032】本発明のマレイミド系樹脂組成物は、射出
成形、押出成形、真空成形などの各種成形加工分野に利
用することができ、また成形品にメッキ処理、真空蒸着
処理、スパッタリング処理などの光輝処理を施すことも
可能である。 【0033】 【実施例】以下、実施例および比較例により本発明をさ
らに詳しく説明する。なお、例中の「部」は「重量部」
を、「%」は「重量%」を表わす。また例中の物性の測
定および性能評価は次に示す方法を用いて行った。 【0034】(1)マレイミド系共重合体(A)中の残
存単量体 ガスクロマトグラフィーで測定した。 【0035】(2)マレイミド系共重合体(A)の組成 元素分析により求めた。 【0036】(3)マレイミド系共重合体(A)中のオ
リゴマー成分の含有量と分子量 GPCにより単分散ポリスチレンを標準として測定し
た。 【0037】(4)マレイミド系共重合体(A)の固有
粘度 共重合体をN,N−ジメチルホルムアミドに溶解しウベ
ローデ型粘度計を用い25℃で測定した値より求めた。 【0038】(5)ゴム強化樹脂(B)のブタジエン系
ゴムの数平均粒子径 透過型電子顕微鏡写真より求めた。 【0039】(6)ゴム強化樹脂(B)の未グラフト重
量体の固有粘度 ラテックス重合体をイソプロピルアルコールで凝固さ
せ、得られた重合体をアセトンで抽出し、遠心分離、濾
過した後濾液のアセトンを蒸発させて得た重合体をN,
N−ジメチルホルムアミドに溶解させ、ウベローデ型粘
度計で25℃で測定した値より求めた。 【0040】(7)ゴム強化樹脂(B)のグラフト率 ラテックス重合体をイソプロピルアルコールで凝固させ
た試料を用い、重合体からアセトン抽出で未グラフト重
合体を除去し、試料中のグラフト重合体含有量を求め、
(グラフト重合体含有率−ゴム含有率)/ゴム含有率×
100の式より求めた。 【0041】(8)マレイミド系樹脂組成物のビカット
軟化温度 1オンスの射出成形機でシリンダー温度240℃の2オ
ンス射出成形機にて成形した試片を用いてASTM D
−1525(5kg荷重)に準拠して測定した。 【0042】(9)マレイミド系樹脂組成物のメルトイ
ンデックス ASTM D−1238により220℃の温度、10k
g荷重下で10分間の吐出量として求めた。 【0043】(10)マレイミド系樹脂組成物の耐面衝
撃性 樹脂組成物を2オンス射出成形機を用い260℃にて1
00mm×100mm×3mm(厚さ)の試片を成形
し、ASTM D−3763に準じ島津HTM−1形高
速衝撃試験機を使用し、23℃にて3.3m/秒のスピ
ードで測定した。ただし、ストライカ1/2インチ、支
持枠は3インチを使用した。 【0044】参考例 (1)マレイミド系共重合体(A)の製造 A−1:窒素置換操作を施した20リットルの撹伴装置
を備えた重合反応器に、N−フェニルマレイミド20
部、スチレン40部、アクリロニトリル20部、メチル
エチルケトン20部、1,1’アゾビス(シクロヘキサ
ン−1−カルボニトリル)0.01部、t−ドデシルメ
ルカプタン0.05部を連続的に供給し、110℃に重
合器内の温度を一定に保持しながら、平均滞在時間が2
時間になるように重合反応器の底部に備えたギヤポンプ
により重合反応液を連続的に抜き取り、引き続いて該重
合反応液を150℃に保持した熱交換器にて約20分滞
在させた後に、バレル温度230℃に制御した2ベント
タイプの30mmφの二軸押出機に導入し第一ベント部
を大気圧、第二ベント部を20トールの減圧下に揮発成
分を脱揮してペレタイザーにてペレット化し、マレイミ
ド系共重合体A−1のペレットを得た。得られた共重合
体A−1の物性の測定結果を表1に示す。 【0045】A−2:参考例A−1と同一の装置を使用
して重合反応器の温度を95℃として、1,1’アゾビ
ス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)を0.18
部、t−ドデシルメルカプタンを0.22部とした以外
は参考例A−1と全く同一の操作を行ってマレイミド系
共重合体A−2のペレットを得た。得られた共重合体A
−2の物性の測定結果を表1に示す。 【0046】A−3: 重合反応器の温度を150℃、1,1’アゾビス(シク
ロヘキサン−1−カルボニトリル)を0.001部、t
−ドデシルメルカプタンを0.005部とした以外は参
考例A−1と全く同一の操作を行ってマレイミド系共重
合体A−3のペレットを得た。得られた共重合体A−3
の物性の測定結果を表1に示す。 【表1】【0047】B−1〜B−7: (2)ゴム強化樹脂(B)の製造 5リットル撹伴機付きガラス製重合反応器に、表2に示
す割合の混合液(A)を供給した。次いで重合反応器の
内容物を60℃に昇温し、表2に示す量のクメンハイド
ロパーオキサイドを添加し重合反応器内の発熱がなくな
るまで重合させた。重合後60℃に冷却し、表2に示す
割合の混合液(B)を連続的に供給した。供給終了後重
合反応器内の発熱がなくなってからクメンハイドロパー
オキサイド0.03部加え60℃で0.5時間重合を行
い、重合を完結させた。得られたポリブタジエンゴム強
化樹脂ラテックスを硫酸により凝固し、脱水、乾燥して
ゴム強化樹脂B−1〜B−7の粉末を得た。なお使用し
たポリブタジエンゴムの数平均粒子径はいずれも0.3
μmであった。得られたゴム強化樹脂B−1〜B−7の
物性の測定結果を表3に示す。 【0048】 【表2】【0049】 【表3】 【0050】実施例1〜2、比較例1〜7 参考例A−1〜A−3で得たマレイミド系共重合体A−
1〜A−3と参考例B−1〜B−7で得たゴム強化樹脂
B−1〜B−7とを表4に示したような割合で配合し、
そのそれぞれの配合物100部に対して安定剤としてフ
ェノール系抗酸化剤(アンテージW−400、商品名、
川口化学(株)製)0.2部およびホスファイト系安定
剤(アデカスタブC、商品名、旭電化(株)製)0.2
部を加え十分混合した後、30mmφの二軸押出機にて
250℃でペレット化してマレイミド系樹脂組成物のペ
レットを得た。表4に得られた樹脂組成物の性能評価結
果を示す。 【0051】 【表4】【0052】実施例3、比較例8〜9 参考例A−1〜A−3で得たマレイミド系共重合体A−
1〜A−3と参考例B−1で得たゴム強化樹脂B−1お
よび懸濁重合法により製造したアクリロニトリル単位3
0%およびスチレン単位70%から構成される固有粘度
0.60dl/gのAS樹脂を表5に示したような割合
で配合し、そのそれぞれの配合物100部に対して安定
剤としてフェノール系抗酸化剤(アンテージW−40
0、商品名、川口化学(株)製)0.2部およびホスフ
ァイト系安定剤(アデカスタブC、商品名、旭電化
(株)製)0.2部を加え十分混合した後、30mmφ
の二軸押出機にて250℃でペレット化してマレイミド
系樹脂組成物のペレットを得た。表5に得られた樹脂組
成物の性能評価結果を示す。 【0053】 【表5】【0054】表4の実施例1と比較例1の比較、実施例
1と比較例2との比較、実施例1と比較例3〜4との比
較、実施例1〜2と比較例4〜7との比較、および表5
の実施例3と比較例8〜9との比較から明らかなよう
に、本発明のマレイミド系樹脂組成物は、耐熱性、耐面
衝撃性に優れ、かつ成形加工性に優れていることが判
る。 【0055】 【発明の効果】本発明のマレイミド系樹脂組成物は、優
れた耐熱性と耐面衝撃性を有するとともに、優れた成形
加工性を有しているため、種々の分野、例えば自動車、
OA機器、電気・電子機器などの用途に極めて有用であ
る。 【表1】
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 (A)マレイミド系単量体単位(a−
1)15〜65重量%、芳香族ビニル系単量体単位(a
−2)35〜85重量%および他のビニル系単量体単位
(a−3)0〜35重量%(ただし、(a−1)〜(a
−3)成分の合計を100重量%とする。)からなる共
重合体であって、該共重合体中の残存マレイミド系単量
体の含有量が0.1重量%以下で、かつマレイミド系単
量体以外の総揮発分が0.5重量%以下であり、該共重
合体中のマレイミド系単量体単位を構成成分として含む
重量平均分子量が200〜1000のオリゴマー成分の
含有量が2〜10重量%であり、該共重合体の固有粘度
が0.3〜1.5dl/gであるマレイミド系共重合体
40〜95重量部、 (B)ブタジエン系ゴム(b−1)35〜70重量%
と、アクリロニトリル(b−2)7.5〜29.25重
量%およびスチレン(b−3)16.5〜48.75重
量%(ただし、(b−1)〜(b−3)成分の合計が1
00重量%であり、かつ(b−2)/((b−2)+
(b−3))が0.25〜0.45である。)とのグラ
フト共重合体であり、該グラフト共重合体のブタジエン
系ゴムの数平均粒子径が0.15〜0.4μmであり、
該グラフト共重合体中に含まれる未グラフト重合体の固
有粘度が0.4〜1.2dl/gであり、該グラフト共
重合体のグラフト率が20〜80%であるゴム強化樹脂
(B)60〜5重量部、および (C)他の硬質熱可塑性樹脂0〜300重量部(上記
(A)成分と上記(B)成分の合計100重量部に対し
て)からなることを特徴とする耐熱性、耐面衝撃性に優
れたマレイミド系樹脂組成物。
Priority Applications (8)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP20154594A JP3422847B2 (ja) | 1994-08-04 | 1994-08-04 | 耐熱性、耐面衝撃性に優れたマレイミド系樹脂組成物 |
PCT/JP1995/000013 WO1995018837A1 (fr) | 1994-01-10 | 1995-01-10 | Copolymere maleimidique et composition de resine contenant ce copolymere |
CN95190019A CN1081196C (zh) | 1994-01-10 | 1995-01-10 | 马来酰亚胺共聚物及其树脂组合物 |
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US08/957,588 US5948879A (en) | 1994-01-10 | 1997-10-24 | Maleimide-based copolymer and resin composition comprising the same |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH0848840A JPH0848840A (ja) | 1996-02-20 |
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Family Applications (1)
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Country Status (1)
Country | Link |
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JP (1) | JP3422847B2 (ja) |
-
1994
- 1994-08-04 JP JP20154594A patent/JP3422847B2/ja not_active Expired - Lifetime
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Publication number | Publication date |
---|---|
JPH0848840A (ja) | 1996-02-20 |
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