JP3422204B2 - 電動式パワーステアリングの制御装置 - Google Patents

電動式パワーステアリングの制御装置

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JP3422204B2
JP3422204B2 JP2915297A JP2915297A JP3422204B2 JP 3422204 B2 JP3422204 B2 JP 3422204B2 JP 2915297 A JP2915297 A JP 2915297A JP 2915297 A JP2915297 A JP 2915297A JP 3422204 B2 JP3422204 B2 JP 3422204B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、操舵系に加えられ
る操舵トルクを操舵トルク検出手段で検出し、その検出
値に応じて電動機で発生する操舵補助力を制御すること
により、軽い操舵を行うようにした電動式パワーステア
リングの制御装置に関し、特にフィードバック系統の異
常時発生時に運転者に違和感を与えないようにしたもの
である。
【0002】
【従来の技術】従来の電動式パワーステアリングの制御
装置としては、例えば特開平5−112251号公報
(以下、単に従来例と称す)に記載されているものがあ
る。
【0003】この従来例では、メインCPUでトルクセ
ンサで検出した操舵トルク検出値を増幅回路で増幅した
後位相補償部で位相補償を行ってから関数発生部で車速
センサの車速検出値を伴って目標電流値を算出し、この
目標電流値と位相補償した操舵トルクの微分値とを加算
し、この加算値とモータ電流検出器からのモータ電流検
出値との偏差をもとに目標電圧演算部でPID演算を行
うと共に、その演算結果に基づくデューティ比のPWM
信号をモータ駆動回路に出力することにより、操舵トル
ク検出値と車速検出値とに基づいて電動モータを駆動制
御することにより操舵系に最適な操舵補助力を付与し、
サブCPUで舵輪自転監視、逆操舵補助監視及び過剰操
舵補助監視をを行うことにより、メインCPUの異常を
監視し、メインCPUの異常を検出したときにはモータ
駆動回路にモータ駆動禁止信号を出力してモータの駆動
を禁止するようにしている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記従
来の電動式パワーステアリングの制御装置にあっては、
操舵トルク検出値と車速検出値とに基づいて算出される
目標電流と実際のモータ電流との偏差をもとにPID演
算を行って、これに応じたデューティ比のPWM信号を
モータ駆動回路に供給する所謂フィードバック制御を行
うようにしているので、モータ電流を検出するモータ電
流検出器に異常が発生して、モータに電流が供給されて
操舵補助力を発生しているにも拘わらず、モータ電流検
出値が零又はその近傍の値となったときには、目標電流
がそのまま目標電圧演算部に供給されることになり、通
常PWM信号を形成する際におけるデューティ比を求め
るための制御ゲインが応答性を高めるために大きな値と
なっていることから、操舵トルク検出値が関数発生部で
の不感帯より大きくなるとデューティ比100%のPW
M信号がモータ駆動回路に出力されることになる。
【0005】このため、モータで過剰な操舵補助力が発
生されることになり、乾燥した舗装路等の高摩擦係数路
面を走行している場合には過剰な補助力が転舵輪に影響
を与えることはなくステアリングホイールがガクガクす
る程度で運転者に大きな違和感を与えることはないが、
降雨路,凍結路,雪路等の低摩擦係数路面を走行する状
態となって路面摩擦係数が急激に低下すると、ガクガク
する振動が急増して運転者に大きな違和感を与えるとい
う未解決の課題がある。
【0006】すなわち、運転者がステアリングホイール
を操舵することにより、トーションバーが捩じれ、これ
によってトルクセンサから操舵トルク検出値が出力され
ることになるが、この値が関数発生部で設定された不感
帯内であるときには目標電流が零となり、モータ駆動回
路でモータが駆動されず、たとえ電流検出器が異常であ
っても、その影響をないが、操舵トルク検出値が不感帯
を越える値となると、モータ駆動回路でモータが駆動さ
れることにより操舵補助力が発生され、転舵輪が左又は
右に転舵される。
【0007】このとき、電流検出器が異常であって、こ
れから出力される電流検出値が零であるときには、フィ
ードバック系統が遮断されていることになり、目標電流
がそのままPWM信号の算出基準となり、そのデューテ
ィ比が100%となるため、大きな操舵補助力が発生さ
れる。
【0008】このため、タイヤが急速に転舵されること
により、トーションバーの捩じれが解消されることにな
り、トルクセンサの操舵トルク検出値が零に復帰してし
まい、モータの駆動が停止されて、操舵補助力が急激に
減少すことになる。このとき、タイヤのバネ成分によっ
てタイヤが戻ることになるが、このときに路面の摩擦係
数が低下したときには、タイヤの戻り量が大きくなり、
これがトーションバーに伝達されることから、このトー
ションバーが前述とは逆方向に捩じられることになり、
これに応じてトルクセンサから逆方向の操舵トルク検出
値が出力され、これが関数発生器の不感帯を越えると目
標電流が出力されて逆操舵補助状態となり、その後、正
規の操舵補助状態に復帰することを繰り返すことによ
り、振動が助長されて運転者に違和感を与えることにな
る。
【0009】そこで、本発明は、上記従来例の未解決の
課題に着目してなされたものであり、電流検出手段に異
常が発生したときに生じる振動によって運転者に違和感
を与えることを確実に阻止することができる電動式パワ
ーステアリングの制御装置を提供することを目的として
いる。
【0010】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に、請求項1に係る電動式パワーステアリングの制御装
置は、操舵系に加えられる操舵トルクを検出する操舵ト
ルク検出手段と、前記操舵系に対して操舵補助力を付加
する電動機と、該電動機を流れる電動機電流を検出する
電動機電流検出手段と、前記操舵トルク検出手段の操舵
トルク検出値をもとに当該操舵トルク検出値とモータ目
標駆動電流との関係を表す制御マップを参照して算出し
モータ目標駆動電流と前記電動機電流検出手段の電動
機電流との偏差に応じて前記電動機を制御する制御手段
とを有する電動式パワーステアリングの制御装置におい
て、前記電動機電流検出手段の電動機電流が所定の設定
電流を下回る異常を検出する電流検出異常検出手段と、
該電流検出異常検出手段で異常を検出したときに、前記
制御マップの不感帯を広げる補正を行って前記モータ
駆動電流を低下させる目標電流補正手段とを備えてい
ることを特徴としている。
【0011】また、請求項2に係る電動式パワーステア
リングの制御装置は、請求項1に係る発明において、
記制御手段は、前記電動機に供給するデューティ制御用
電流パルスのデューティ比を前記モータ目標駆動電流と
前記電動機電流との偏差に制御ゲインを乗じて算出する
ように構成され、前記目標電流補正手段は、前記電流検
出異常検出手段で異常を検出したときに、前記制御マッ
プの不感帯を広げる補正を行うと共に、前記デューティ
比を抑制するデューティ比抑制手段を備えていることを
特徴としている。
【0012】
【0013】さらに、請求項に係る電動式パワーステ
アリングの制御装置は、請求項に係る発明において、
前記デューティ比抑制手段は、制御ゲインを小さい値に
変更するように構成されていることを特徴としている。
【0014】さらにまた、請求項に係る電動式パワー
ステアリングの制御装置は、請求項2に係る発明におい
て、前記デューティ比抑制手段は、算出されたデューテ
ィ比に1未満の補正係数を乗算して制限するように構成
されていることを特徴としている。
【0015】なおさらに、請求項5に係る電動式パワー
ステアリングの制御装置は、請求項1に係る発明におい
て、前記制御手段は、前記電動機に供給するデューティ
制御用電流パルスのデューティ比を前記モータ目標駆動
電流と前記電動機電流との偏差に制御ゲインを乗じて算
出するように構成され、前記目標電流補正手段は、前記
電流検出異常検出手段で異常を検出したときに、前記制
御マップの不感帯を広げる補正を行うと共に、モータ
駆動電流の絶対値を小さい値に抑制するように構成さ
れていることを特徴としている。
【0016】
【発明の効果】請求項1に係る発明によれば、電流検出
異常検出手段で、操舵補助力を発生する電動機の電流を
検出する電動機電流検出手段の異常を検出したときに、
目標電流補正手段で、操舵トルク検出値とモータ目標駆
動電流との関係を表す制御マップの不感帯を広げるよう
に補正するので、操舵トルク検出値の増加に拘わらずモ
ータ目標駆動電流が“0”を維持する領域が大きくな
り、大きな操舵トルクが作用しない限り電動機が停止状
態を維持することなって、操舵系に発生する振動を確実
に防止することができるという効果が得られる。
【0017】
【0018】また、請求項に係る発明によれば、目標
電流補正手段が、電流検出異常検出手段手段で異常を検
出したときに、デューティ比抑制手段で、モータ目標駆
動電流及び電動機電流の偏差に制御ゲインを乗算して算
出されるデューティ比を抑制するので、大きな操舵トル
クが作用して制御マップを参照して算出されるモータ目
標駆動電流が増加する場合でも、電動機に供給される電
圧が低下して電動機で発生される操舵補助力が抑制さ
れ、操舵系に発生する振動を確実に防止することができ
る。
【0019】さらに、請求項に係る発明によれば、デ
ューティ比抑制手段は制御ゲインを小さい値に変更する
ようにしているので、電圧抑制状態でもモータ目標駆動
電流に比例した駆動電圧を発生するとこができ、操舵ト
ルクに比例した操舵補助力を発生することができるとい
う効果が得られる。
【0020】さらにまた、請求項に係る発明によれ
ば、デューティ比抑制手段は、算出されたデューティ比
に1未満の補正係数を乗算して制限するように構成され
ているので、電圧抑制状態でもモータ目標駆動電流に比
例した駆動電圧を発生することができ、操舵トルクに比
例した操舵補助力を発生するとこができるという効果が
得られる。
【0021】なおさらに、請求項に係る発明によれ
ば、目標電流補正手段が、モータ目標駆動電流の絶対値
を小さい値に抑制するように構成されているので、上記
請求項の場合と同様に電動機で発生する操舵補助力を
一定値として過剰な操舵補助力の発生を確実に抑制する
ことができるという効果が得られる。
【0022】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態を図面
に基づいて説明する。図1は本発明の一実施形態を示す
概略構成図であり、ステアリングホイール1は、ステア
リングシャフト2の上端部に連結され、このステアリン
グシャフト2は固定部に支持されて下方に延長され、そ
の下端部にピニオン3が装着されている。
【0023】このピニオン3は、車両幅方向に水平に延
長するラック4に噛合して、ステアリングギヤを構成
し、ステアリングホイール1からステアリングシャフト
2回りの回転運動がラック4の直進運動(並進運動)に
変換される。
【0024】そして、水平に延在するラック4の両端部
は、夫々タイロッド5を介してナックル及び転舵輪6に
接続され、ラック4が水平方向移動(並進運動)するこ
とで左右の転舵輪6が転舵される。
【0025】また、ステアリングシャフト2におけるピ
ニオン3の上部には、減速機を構成するリングギヤ11
が同軸に固定され、このリングギヤ11に操舵補助モー
タ8の駆動軸9に連結されたリングギヤ10が噛合さ
れ、操舵補助モータ8が後述するコントロールユニット
7から出力されるデューティ制御されたパルス電流によ
って操舵トルクに応じた操舵補助力を発生するように制
御される。
【0026】さらに、ステアリングシャフト2における
リングギヤ11の上部にトルク検出機構12が設けられ
ている。このトルク検出機構12は、ステアリングシャ
フト2の下端部とピニオン3の上端部を連結する図示さ
れないトーションバーと、その外周に配置された操舵ト
ルクセンサ13とで構成されている。
【0027】この操舵トルクセンサ13は、上記トーシ
ョンバーの捩じれ量から操舵トルクを検出し、その操舵
トルクの大きさに応じた且つステアリングホイール1の
右切り(ピニオン3からの入力に対しては左回り)で正
値、ステアリングホイール1の左切り(ピニオン3から
の入力に対しては右回り)で負値の電圧信号でなるトル
ク検出値Tを、後述するコントロールユニット7に供給
する。
【0028】また、車両には車速を検出する車速センサ
14が搭載されており、この車速センサ14によって車
両前後方向車速が検出され、この車速の大きさに応じた
電圧信号でなる車速検出値VSPが後述されるコントロー
ルユニット7に供給される。さらに、操舵補助モータ8
には電流検出手段を構成する電流検出器16が取付けら
れており、この電流検出器16で操舵補助モータ8に流
れる実電流が検出され、その大きさに応じた電圧信号で
なる実電流検出値Vi が、コントロールユニット7に供
給される。
【0029】コントロールユニット7は、図2に示すよ
うに、操舵トルクセンサ13から出力される操舵トルク
検出値T及び電流検出器16から出力される実電流検出
値V i を入力し且つ操舵補助モータ8の回転方向と回転
速度とを制御するための操舵補助モータ8への駆動電流
をデューティ制御するデューティ制御用信号を出力する
マイクロコンピュータ15と、このマイクロコンピュー
タ15から出力されるデューティ制御用信号が供給さ
れ、これに基づいて操舵補助モータ8の回転方向と回転
速度とを制御するモータ駆動回路19とを備えている。
【0030】ここで、マイクロコンピュータ15は、F
/V変換機能及びA/D変換機能を備えた入力側インタ
フェース回路15a、マイクロプロセッサユニット等か
らなる演算処理装置(CPU)15b及びRAM,RO
M等からなる記憶装置15c及び出力側インタフェース
回路15dを有する。
【0031】そして、入力インタフェース回路15aに
は、操舵トルクセンサ13の操舵トルク検出値Tと電流
検出器16からの実電流検出値Vi が入力され、出力イ
ンタフェース回路15dからは操舵補助力発生方向を表
す左切り方向信号LD及び右切り方向信号RDと、操舵
補助モータ8に供給する電流をデューティ制御する左切
りデューティ制御用電流パルスLP及び右切りデューテ
ィ制御用電流パルスRPと、モータ駆動回路19の通電
を制御する通電制御信号CSとをモータ駆動回路19に
出力する。
【0032】また、演算処理装置15bは、後述する図
3及び図4の演算処理を実行して、正常時には操舵トル
クセンサ13の操舵トルク検出値T及び車速センサ14
の車速検出値VSPに基づいて記憶装置15cに記憶され
た正常時制御マップを参照してモータ目標駆動電流i*
を算出するが、電流検出器16が異常となって実電流検
出値Vi に基づく実電流iが電動モータ8で操舵補助力
を発生しているにも拘わらず零又はその近傍の値となっ
ているときには正常時制御マップに比較して不感帯を広
げた異常時制御マップを参照してモータ目標駆動電流i
* を算出し、算出されたモータ目標駆動電流i* と電流
検出器16からの実電流iとの偏差に基づいて操舵状態
に応じた操舵補助力を発生するように左右切り方向信号
LD,RD及び左右切りデューティ制御用電流パルスL
P,RPを形成して出力側インタフェース回路15dに
送出する。
【0033】さらに、記憶装置15cには、予め演算処
理装置15bの演算処理に必要な正常時制御マップ及び
異常時制御マップや演算式、プログラム等が格納されて
いると共に、演算処理装置15bの演算過程で必要な演
算結果を逐次記憶する。
【0034】ここで、正常時制御マップは、図5に示す
ように、横軸に操舵トルク検出値Tを、縦軸にモータ目
標駆動電流i* を夫々とり、操舵トルク検出値Tが零を
挟んで不感帯ZN を形成する設定値+TNF及び−TNF
の値であるときにはモータ目標駆動電流i* が零とな
り、設定値+TNF及び−TNFを越えると、車速検出値V
をパラメータとして設定された低車速域で大きな勾配の
特性曲線L1 、中車速域で特性曲線L1 より緩やかな勾
配の特性曲線L2 及び高車速域で一番緩やかな勾配の特
性曲線L3 に従って操舵トルク検出値Tの増加に伴って
モータ目標駆動電流i* が増加するように構成されてい
る。
【0035】また、異常時制御マップは、図6に示すよ
うに、不感帯ZA を形成する設定値が正常時制御マップ
における設定値+TNF及び−TNFに対して絶対値が大き
い(例えば|TNF|の2倍程度)設定値+TAF及び−T
AFに設定され、操舵トルク検出値がこれら設定値+TAF
及び−TAFを越えると正常時制御マップの特性曲線L 1
〜L3 と同様の勾配を有する特性曲線L1 〜L3 に従っ
て操舵トルク検出値Tの増加に伴ってモータ目標駆動電
流i* が増加するように構成されている。
【0036】一方、モータ駆動回路19は、4個のMO
SFET等のスイッチング素子Q1〜Q4 を2個づつ直
列に接続して2組の直列回路を構成し、これら直列回路
のスイッチング素子Q1 及びQ2 間とQ3 及びQ4 間と
の間に操舵補助モータ8を接続し、且つスイッチング素
子Q1 及びQ3 の入力側が互いに接続されてモータリレ
ー20及びキースイッチ21を介して負極側が接地され
たバッテリ22の正極側に接続され、スイッチング素子
2 及びQ4 の出力側が互いに接続されて電流検出用抵
抗でなる電流検出器16を介して接地されて、所謂Hブ
リッジ回路に構成されている。
【0037】そして、スイッチング素子Q1 及びQ3
夫々マイクロコンピュータ15の出力側インタフェース
回路15dから出力される左切り方向信号LD及び右切
り方向信号RDが、スイッチング素子Q4 及びQ2 に夫
々マイクロコンピュータ15の出力側インタフェース回
路15dから出力される左切りデューティ制御用電流パ
ルスLP及び右切りデューティ制御用電流パルスRPが
夫々供給され、モータリレー20のリレーコイルの一端
がスイッチング素子としてのNPNトランジスタ23を
介してキースイッチ21に接続されていると共に、他端
が接地され、このトランジスタ23にマイクロコンピュ
ータ15の出力側インタフェース回路15dから出力さ
れる通電制御信号CSが供給され、さらに電流検出器1
6を構成する電流検出用抵抗の上流側がマイクロコンピ
ュータ15の入力側インタフェース回路15aに接続さ
れている。
【0038】次に、上記実施形態の動作をマイクロコン
ピュータ15における演算処理装置15bで実行される
制御処理手順を示す図3及び図4を伴って説明する。図
3の制御処理は、メインプログラムとしてマイクロコン
ピュータ15に電源が投入されたときに実行開始され、
先ず、ステップS1で初期化を行って、記憶装置15c
に形成された前回デューティ比記憶領域に記憶されてい
る前回デューティ比D(n-1) を“0”に設定すると共
に、電流検出器16の出力異常を表す異常フラグAFを
“0”にリセットし、さらに通電制御信号CSをオン状
態とし、その他演算処理に必要な初期化を行う。
【0039】次いで、ステップS2に移行して、操舵ト
ルクセンサ13の操舵トルク検出値T、車速センサ14
の車速検出値VSP及び電流検出器16の実電流検出値V
i を夫々読込み、次いでステップS3に移行して、実電
流検出値Vi を電流検出器16の電流検出用抵抗値Rで
除して実際に電動モータ8に流れる実電流iを算出す
る。
【0040】次いで、ステップS4に移行して、後述す
る図4の電流検出異常検出処理で決定される異常フラグ
AFが電流検出器16の出力異常を表す“1”にセット
されているか否かを判定し、これが“0”にリセットさ
れているときには電流検出器16に出力異常が発生して
いないものと判断してステップS5に移行する。
【0041】このステップS5では、ステップS2で読
込んだ車速検出値VSPに基づいて図5に示す車速をパラ
メータとして操舵トルク検出値Tとモータ目標駆動電流
*との関係を表す正常時制御マップの何れかを選定す
る制御マップ選定処理を行ってからステップS6に移行
する。
【0042】このステップS6では、ステップS2で読
込んだ操舵トルク検出値TをもとにステップS65選定
された正常時制御マップを参照して、操舵補助モータの
目標駆動電流i* を算出し、次いでステップS7に移行
して、ステップS3で算出した実電流iとモータ目標駆
動電流i* とをもとに下記(1)式の演算を行って、デ
ューティ比Dを算出し、これを記憶装置15cのデュー
ティ比記憶領域に更新記憶する。
【0043】 D=K(i* −i) …………(1) ここに、Kは制御ゲインであって、目標駆動電流i*
実電流検出値iとの許容誤差範囲例えば数A程度を見込
んで十数〜数十程度の値に設定される。
【0044】次いで、ステップS8に移行して、前記ス
テップS2で読込んだ操舵トルク検出値Tが零を含む負
であるか否かを判定し、T≦0であるときには左切り状
態であると判断してステップS9に移行し、左切り方向
信号LDをオン状態とし、且つ右切り方向信号RDをオ
フ状態とすると共に、記憶装置15cのデューティ比記
憶領域に更新記憶されているデューティ比Dを読出し、
これに応じた左切りデューティ制御用電流パルスLPを
出力し、且つオフ状態の右切りデューティ制御用電流パ
ルスRPを出力してから前記ステップS2に戻り、T>
0であるときには右切り状態であると判断してステップ
S10に移行し、右切り方向信号RDをオン状態とし、
且つ左切り方向信号LDをオフ状態とすると共に、記憶
装置15cのデューティ比記憶領域に更新記憶されてい
るデューティ比Dを読出し、これに応じたデューティ比
Dの右切りデューティ制御用電流パルスRPを出力し、
且つオフ状態の左切りデューティ制御用電流パルスLP
を出力してから前記ステップS2に戻る。
【0045】一方、ステップS4の判定結果が異常フラ
グAFが“1”にセットされているものであるときに
は、電流検出器16に断線等の出力が“0”となる異常
が発生したものと判断してステップS11に移行し、前
述したステップS6と同様に車速検出値VSPに基づいて
図6に示す車速をパラメータとして操舵トルク検出値T
とモータ目標駆動電流i* との関係を表す異常時制御マ
ップの何れかを選定する制御マップ選定処理を行ってか
らステップS12に移行する。
【0046】このステップS12では、ステップS2で
読込んだ操舵トルク検出値TをもとにステップS11で
選定された異常時制御マップを参照して、操舵補助モー
タの目標駆動電流i* を算出し、次いでステップS13
に移行して、ステップS2で算出した実電流iと目標駆
動電流i* とをもとに前記(1)式の演算を行って、デ
ューティ比Dを算出する。
【0047】次いで、ステップS14に移行して、上記
ステップS13で算出したデューティ比Dに“1”未満
の補正係数A(例えばA=0.5)を乗算した値を新た
なデューティ比Dとして設定し、これを記憶装置のデュ
ーティ比記憶領域に更新記憶してから前記ステップS8
に移行する。
【0048】一方、図4の電流検出異常検出処理は、所
定時間(例えば10msec)毎にタイマ割込処理とし
て実行され、先ずステップS21で、電流検出器16の
実電流検出値Vi を読込み、次いでステップS22に移
行して、実電流検出値Vi を電流検出器16の抵抗値R
で除して実際に電動モータ8に流れる実電流iを算出す
る。
【0049】次いで、ステップS23に移行して、実電
流iが予め設定された零に近い設定電流iS 以下である
か否かを判定し、i>iS であるときには電流検出器1
6に断線等の異常が発生していないものと判断してステ
ップS24に移行して、異常フラグAFを“0”にリセ
ットしてからタイマ割込処理を終了して図3のメイン処
理に復帰する。
【0050】一方、ステップS23の判定結果が、i≦
S であるときには、電流検出器16に断線等の出力が
零又はその近傍となる異常が発生した可能性があるもの
と判断してステップS25に移行し、電動モータ8を駆
動するデューティ比が電動モータ8に印加する平均電圧
AVE に相当することから、記憶装置15cのデューテ
ィ比記憶領域に記憶されている前回のデューティ比D(n
-1) を読出し、これとモータ内部抵抗値r及び電流検出
用抵抗値Rとをもとに下記(2)式の演算を行って実際
に電動モータ8に流れる実電流の推定値iP を算出す
る。
【0051】 iP =D(n-1) /(r+R)…………(2) 次いで、ステップS26に移行して、算出した実電流推
定値iP が前述した設定電流iS に許容誤差を加算した
値より大きい値に設定された設定値iPS以上であるか否
かを判定する。この判定は、電流検出器16に断線等の
出力が零となる以上が発生しているか否かを判定するも
のであり、iP <iPSであるときには、電流検出器16
が正常であると判断してそのままタイマ割込処理を終了
して図3のメイン処理に復帰し、iP ≧iPSであるとき
には、実電流推定値iP が大きいにも拘わらず電流検出
器16で検出した実電流iが略零であって、電流検出器
16に出力異常が発生しているものと判断してステップ
27に移行し、異常フラグAFを“1”にセットして
からタイマ割込処理を終了して図3のメイン処理に復帰
する。
【0052】以上の処理において、図3の処理が制御手
段に対応し、このうちステップS4,S11〜S14の
処理が目標電流補正手段に対応し、このうちステップS
14がデューティ比抑制手段に対応し、また、図4の処
理が電流検出異常検出手段に対応している。
【0053】したがって、今、車両が停止状態であり且
つキースイッチ21がオフ状態であると共に、エンジン
も停止しているものとする。この停止状態では、マイク
ロコンピュータ15及びモータ駆動回路19に電源が投
入されていないので、電動モータ8に駆動電圧が印加さ
れておらず、操舵補助制御も停止している。
【0054】この状態から、キースイッチ21をオン状
態とすることにより、モータ駆動回路19に電源が投入
されると共に、マイクロコンピュータ15にも電源が投
入されて図3及び図4の処理が実行開始される。
【0055】このとき、先ず、図3の制御処理における
ステップS1の初期化処理で、少なくとも零のデューテ
ィ比D(n-1) が記憶装置15cのデューティ比記憶領域
に更新記憶されると共に、異常フラグAFが“0”にリ
セットされ、さらに制御信号CSがオン状態とされるこ
とにより、モータ駆動回路19がキースイッチ21を介
してバッテリ22に接続されて駆動電圧を印加可能な状
態となる。
【0056】この状態では操舵補助制御が開始されてい
ないので、電動モータ8に電圧が印加されておらず、電
流検出器16で検出される実電流検出値Vi も零となっ
ている。
【0057】このため、ステップS3で算出される実電
流iも零となり、異常フラグAFが“0”にリセットさ
れているので、ステップS5に移行して、操舵トルク検
出値T及び車速検出値VSPを読込む。
【0058】このとき、ステアリングホイール1を操舵
していない状態では、操舵トルクセンサ13の操舵トル
ク検出値Tは略“0”となっており、車速検出値VSP
零であるので、ステップS5で図4に示す特性線の内傾
斜が一番大きい特性線L1 に対応する正常時制御マップ
が選択されるが、操舵トルク検出値Tが“0”であるの
で、ステップS6で算出されるモータ目標駆動電流値i
* も“0”となる。
【0059】一方、電動モータ8が停止していて電流検
出器16で検出される実電流検出値Vi も“0”であ
り、ステップS3で算出される実電流iも“0”である
ので、、ステップS7で算出されるデューティ比Dも
“0”となり、ステップS8を経てステップS9に移行
して左方向信号LDをオン状態、右方向信号RDをオフ
状態とし、左切りデューティ制御用電流パルスLPをデ
ューティ比“0”即ちオフ状態を維持し、さらに右切り
デューティ制御用電流パルスRPをオフ状態に維持す
る。
【0060】このため、モータ駆動回路19では、スイ
ッチング素子Q1 のみがオン状態となり、他のスイッチ
ング素子Q2 〜Q4 がオフ状態となるので、H型ブリッ
ジ回路には電流が流れず、電動モータ8は非通電状態に
維持され、この電動モータ8で発生する操舵補助トルク
は“0”を維持し、非操舵状態が継続される。
【0061】この間に、図4の電流検出異常検出処理が
所定時間毎に実行されており、この処理では実電流iが
“0”であるので、ステップS23からステップS25
に移行して、モータ実電流推定値iP を算出するが、こ
のモータ実電流推定値iP は記憶装置15cのデューテ
ィ比記憶領域に記憶されている現在のデューティ比Dが
“0”であることから“0”となり、電流検出器16が
正常であると判断されてステップS26を経てそのまま
タイマ処理を終了することを繰り返しており、異常フラ
グAFが“1”にセットされることはなく、初期化によ
る“0”にリセットされた状態が継続される。
【0062】その後、車両の停止状態でステアリングホ
イール1を例えば右切りして所謂据切りを行うと、異常
フラグAFが“0”にリセットされているので、ステッ
プS5に移行する。
【0063】このときには、操舵トルク検出値Tがステ
アリングホイール1の操舵に応じた正の値となり、これ
が図5に示す正常時制御マップの不感帯ZN の上限値+
NFを越えた値となると、その増加量に応じたモータ目
標駆動電流i* が算出される。
【0064】このため、ステップS7で算出されるデュ
ーティ比Dがステアリングホイール1に与えられる操舵
トルクに応じた値となり、操舵トルク検出値Tが正であ
ることからステップS8からステップS10に移行し、
右方向信号RDをオン状態、左方向信号LDをオフ状態
とし、右切りデューティ制御用電流パルスRPを算出さ
れたデューティ比Dに応じたオン・オフ比とし、左切り
デューティ制御用電流パルスLPをオフ状態に維持させ
る。
【0065】このため、モータ駆動回路19のスイッチ
ング素子Q1 がオン状態を継続し、これに加えてスイッ
チング素子Q4 がデューティ比Dでオン・オフするの
で、電動モータ8にデューティ比Dに応じた左切り用の
駆動電圧が印加されることになり、電動モータ8が回転
駆動されて操舵トルク検出値Tに応じた右切り用操舵補
助トルクを発生することになり、軽い操舵を行うことが
できる。
【0066】このように、電動モータ8に駆動電圧が印
加されると、電流検出器16が正常状態であるときに
は、電流検出器16から電動モータ8に実際に流れる実
電流値に応じた電圧でなる実電流検出値Vi が出力さ
れ、これがマイクロコンピュータ15の入力側インタフ
ェース回路15aに入力される。
【0067】このため、図4の異常検出処理が実行され
たときに、ステップS22で算出される実電流iが増加
して、i>iS となるため、電流検出器16が正常であ
ると判断されて、直接ステップS24に移行するので、
異常フラグAFが“0”にリセットされる状態が継続さ
れ、図3の制御処理で正常時制御マップを使用した操舵
補助制御が継続される。
【0068】その後、据え切りを終了すると、操舵トル
ク検出値Tが略“0”の初期状態に復帰し、マイクロコ
ンピュータ15から出力される右方向信号RD及び左方
向信号LDがオフ状態となると共に、右切りデューティ
制御用電流パルスRP及び左切りデューティ制御用電流
パルスLPもオフ状態となり、モータ駆動回路19から
の電動モータ8に対する駆動電圧の印加が停止されて、
操舵補助制御が停止される。
【0069】その後、車両が走行を開始することにより
車速センサ14の車速検出値VSPが増加して、その車速
が中車速域となるとこれに応じて図5における特性曲線
2の正常時制御マップが選択され、さらに車速検出値
SPが増加してその車速が高車速域となるこれに応じて
図5における特性曲線L3 の正常時制御マップが選択さ
れ、この状態でステアリングホイール1が操舵されて、
操舵トルク検出値Tが不感帯ZN を越える値となると、
モータ目標駆動電流i* が車速に応じた増加量で増加し
て、電動モータ8にモータ駆動回路19からデューティ
比Dに応じた電圧が印加されることにより、車速に応じ
て最適な操舵補助力が発生される。
【0070】この走行状態で、電流検出器16に断線等
が発生して、これから出力される実電流検出値Vi が零
近傍の値となると、図4の異常検出処理が実行されたと
きに、ステップS22で算出される実電流iも零とな
り、ステアリングホイール1が操舵されていない直進走
行状態では、操舵トルク検出値Tが零となっていると共
に、記憶装置15cのデューティ比記憶領域に記憶され
ている前回のデューティ比D(n-1) も零となっているこ
とから、図4のステップS23からステップS25に移
行するが、実電流推定値iP も零となるため、ステップ
S13で一応電流検出器16が正常と判断されてそのま
まタイマ割込処理を終了することになり、異常フラグA
Fは“0”にリセットされた状態に維持される。
【0071】このため、図3の制御処理においては、異
常フラグAFが“0”にリセットされているので、ステ
ップS5移行の正常時制御マップを使用した操舵補助制
御が行われるが、操舵トルク検出値Tが零であるので、
図5の正常時制御マップの不感帯ZN 内となり、モータ
目標駆動電流i* も零となって、デューティ比Dも零と
なり、モータ駆動回路19からの電動モータ8に対する
駆動電圧の印加が停止された操舵補助制御停止状態を維
持する。
【0072】そして、電流検出器16の出力異常が継続
している状態で、直進走行状態からステアリングホイー
ル1を例えば左切りして左旋回状態に移行し、操舵トル
クセンサ13の操舵トルク検出値Tが負方向に増加し、
これが正常時制御マップの不感帯ZN を越える状態とな
っても、実電流検出値Vi が零を継続し、前回の処理時
には電動モータ8が非駆動状態であるため、デューティ
比D(n-1) も零となっているので、図4の異常検出処理
が実行されたときに、ステップS23からS25に移行
したときに、算出されるモータ実電流推定値iP
“0”の状態を継続することから、そのままタイマ割込
処理を終了し、異常フラグAFは“0”にリセットされ
た状態を維持する。
【0073】このため、図3の制御処理において、正常
時制御マップに基づく操舵補助制御が行われることによ
り、操舵トルク検出値Tに応じたデューティ比Dが算出
され、これが記憶装置15cのデューティ比記憶領域に
更新記憶され、正常時と同様に左方向信号LDがオン状
態とされると共に、デューティ比Dに応じた左切りデュ
ーティ制御用電流パルスLPがモータ駆動回路19に出
力され、電動モータ8が左回転されて操舵トルクに応じ
た操舵補助力を発生する。
【0074】このように電動モータ8が回転駆動された
後に、図4の異常検出処理が実行されると、実電流検出
値Vi が相変わらず“0”を継続し、実電流iも“0”
であるので、ステップS23を経てステップS25に移
行するが、このときにはその前の図3の制御処理によっ
て、比較的大きなデューティ比Dが記憶装置15cのデ
ューティ比記憶領域に更新記憶されていることから、算
出されるモータ実電流推定値iP が設定値iPSより大き
な値となり、電動モータ8が駆動されている状態にも拘
わらず電流検出器16の実電流検出値Vi が零近傍の値
である出力異常状態であると判断されて、初めてステッ
プS27に移行して、異常フラグAFが“1”にセット
される。このため、図3の処理が実行されたときに、ス
テップS4からステップS11に移行して、車速検出値
SPに応じて図6の異常時制御マップが選択され、選択
された異常時制御マップを参照してモータ目標駆動電流
* が算出される。
【0075】このとき、異常時制御マップは、図6に示
すように、正常時制御マップの不感帯ZN に比較して大
きな不感帯ZA が設定されているので、前回の処理時に
電動モータ8が左回転駆動されて操舵補助力を発生する
ことにより、操舵トルク検出値Tが小さくなっているこ
とも相まってモータ目標駆動電流i* は“0”となり、
ステップS13で算出されるデューティ比Dも“0”と
なるので、モータ駆動回路13への方向信号LD,RD
及びデューティ制御パルスLP,RPが共にオフ状態と
なって、モータ駆動回路19による電動モータ8への駆
動電圧の印加が停止されて、電動モータ8が停止状態と
なる。
【0076】この状態で、図4の異常検出処理が実行さ
れると、実電流iが“0”を維持しているので、ステッ
プS23からステップS25に移行し、デューティ比D
が“0”であることから、モータ実電流推定値iP
“0”となるが、ステップS26からそのままタイマ割
込を終了し、異常フラグAFはリセットされることなく
“1”にセットされた状態を継続する。
【0077】したがって、図3の制御処理では、図6の
異常時制御マップを使用した操舵補助制御が継続される
ことになる。このため、ステアリングホイール1に電流
検出器16が正常状態であるときの操舵トルクより大き
な操舵トルクを与えたとしても、図6の異常時制御マッ
プの不感帯ZA が正常時制御マップの不感帯ZN の倍程
度に設定されているので、ステップS12で算出される
モータ目標駆動電流i * が“0”の状態を継続すること
になり、操舵補助制御が停止された状態を継続する。
【0078】この結果、異常時制御マップの不感帯ZA
を越える操舵トルク検出値Tが検出されない限り、操舵
補助制御が停止された状態となるので、従来例のよう
に、電流検出器16の出力が“0”となる異常が発生し
たときに、操舵補助制御が繰り返し実行されて、特に、
乾燥した舗装路等の高摩擦係数路面を走行している状態
から降雨路,凍結路,雪路等の低摩擦係数路面を走行す
る状態となって路面摩擦係数が急変する場合であって
も、タイヤの撓みによる振動が発生することを確実に防
止することができる。
【0079】そして、操舵トルク検出値Tが異常時制御
マップの不感帯ZA を越える状態となると、ステップS
12で算出されるモータ目標駆動電流i* が“0”から
増加することになり、ステップS13で制御ゲインKが
大きな値に設定されていると共に、実電流iが零である
ことから、算出されるデューティ比Dが100%に近い
大きな値となるが、このデューティ比DにステップS1
4で補正係数Aを乗算することにより、半分程度の値に
制限される。
【0080】この制限されたデューティ比Dに応じたデ
ューティ制御パルスLP又はRPがモータ駆動回路19
に出力されることにより、電動モータ8に印加される駆
動電圧は定格電圧の半分となり、この電動モータ8で発
生される操舵補助トルクが最大発生トルクの半分に抑制
されることとなり、トーションバーの復元量が少なくな
って、操舵トルクセンサ13の操舵トルク検出値Tが
“0”まで復帰することが少なくなり、操舵補助制御が
継続されて、タイヤのバネ成分によるタイヤの直進走行
側への復帰を抑制することができ、振動の発生を確実に
抑制することができる。
【0081】また、操舵補助トルクが半分に制限される
ことにより、タイヤの捩じれ量も少なくなるので、たと
え半分の操舵トルクによってトーションバーの捩じれ量
が解消された場合でも、タイヤのバネ成分による直進走
行側への復元量も少なくなり、例えば高摩擦係数路面を
走行している状態から低摩擦係数路面を走行する状態と
なって路面摩擦係数が急変する場合に、操舵補助制御が
停止されたとしても、タイヤの復元量が少ないのでこれ
によるトーションバーの捩じれ量が少なくなり、これが
操舵トルクセンサ13で検出されたとしても、その操舵
トルク検出値Tは小さい値で異常時制御マップの不感帯
A 内の値となるので、タイヤの復元力による操舵補助
トルクの発生を抑制することができ、振動の発生を確実
に抑制することができる。
【0082】さらに、図4の異常検出処理においては、
ステップS26の判定処理で推定電流値iP が設定値i
PS未満となったときにはそのまま処理を終了するように
しているので、電流検出器16の出力が設定電流iS
越える状態となって初めて異常フラグAFが“0”にリ
セットされることになり、不用意に異常フラグAFがリ
セットされてハンチングを生じることを防止することが
できる。
【0083】なお、上記第1の実施形態においては、予
め異常時制御マップの不感帯ZA の幅が正常時制御マッ
プの不感帯ZN より広く設定されている場合について説
明したが、これに限定されるものではなく、この不感帯
A の幅を図7で実線図示のように、予め設定された所
定車速VSP1 までは、図6における不感帯ZA の幅を維
持し、所定車速VSP1 を越えると、車速VSPの増加に比
例して不感帯ZA の幅を増加させるようにしてもよく、
さらには、図7で破線図示のように異常時制御マップの
不感帯ZA の幅を車速検出値VSPが設定車速VSP1 に達
する迄の間は正常時制御マップの不感帯ZN と等しい幅
に設定し、設定車速VSP1 を越えたときに車速検出値V
SPの増加に比例して不感帯ZA の幅を増加させるように
してもよい。
【0084】また、上記第1の実施形態においては、電
流検出器16が正常であるか否かに拘わらずデューティ
比Dを等しい十数〜数十に設定された制御ゲインKを使
用した前記(1)式に従って算出するようにし、算出し
たデューティ比Dを補正係数Aで制限するようにした場
合について説明したが、これに限定されるものではな
く、電流検出器16の出力異常時には制御ゲインKの値
を目標電流の上限値でデューティ比Dが100%となる
ような小さな値に設定するようにしてもよい。このよう
に電流検出器16の出力異常時に制御ゲインKを小さい
値に変更すると、算出されるデューティ比Dは、図8に
示すように、電流検出器16からの実電流検出値Vi
基づく実電流iが略零であるので、実質的にモータ目標
駆動電流i * によって決定されることになり、モータ目
標駆動電流i* が所定値iK より小さい値であるときに
はデューティ比Dが略零となるが、これが所定値iK
越えるとモータ目標駆動電流i* の増加に比例してデュ
ーティ比Dが増加することになり、操舵トルクセンサ1
3で検出される操舵トルクに応じたデューティ比Dを得
ることができ、これに応じた操舵補助制御を行うことが
できる。
【0085】因みに、制御ゲインKを正常時の応答性を
重視した制御ゲインと同じ大きな値に設定すると、図8
で破線図示のように、モータ目標駆動電流i* が所定値
kを越えるまではデューティ比Dが略零を維持する
が、所定値iK を越えたときには急峻にモータ目標駆動
電流i* の僅かな増加に対してデューティ比Dが急激に
増加することになり、デューティ比はモータ目標駆動電
流i* が所定値iK 以下で略0%となり、所定値iK
越えると100%となる2値制御となり、ステアリング
ホイール1に与えられた操舵トルクに応じた操舵補助制
御を行うことが困難となる。
【0086】さらに、上記実施形態においては、正常時
制御マップと異常時制御マップとの2つの制御マップを
使用する場合について説明したが、これに限らず例えば
正常時制御マップのみを設け、異常時には操舵トルク検
出値Tが不感帯ZN を越えたときにその絶対値から不感
帯ZN 及びZA の幅差の1/2を減算した値を操舵トル
ク検出値Tの絶対値とし、これに符号をつけたものをも
とに正常時制御マップを参照してモータ目標駆動電流i
* を算出するようにしてもよい。
【0087】さらにまた、上記実施形態においては、モ
ータ駆動回路19をデューティ制御する場合について説
明したが、これに限定されるものではなく、モータ駆動
回路19にデューティ制御用パルスLP,RPに変えて
直接電圧を指示する電圧制御信号を供給することによ
り、電動モータ8に供給する電圧を直接変化させるよう
にしてもよく、この場合には、実際に電動モータ8に流
れる実電流の推定を電圧指令値をモータ内部抵抗値r及
び電流検出用抵抗値Rの加算値で除して算出すればよ
い。
【0088】なおさらに、上記実施形態においては、電
動モータ8に流れる電流を検出する電流検出器を電流検
出用抵抗を有する構成として電圧信号として検出する場
合について説明したが、これに限定されるものではな
く、電流検出用抵抗を省略し、これに変えて信号線の回
りに変流器を配設して直接電動モータ8の実電流を検出
するようにしてもよい。
【0089】また、上記実施形態においては、デューテ
ィ比Dをこれに補正係数Aを乗算することにより補正す
る場合について説明したが、これに限らずデューティ比
Dから所定値を減算することにより補正することもで
き、さらには図6の異常時制御マップを参照して算出さ
れるモータ目標駆動電流i* に“1”未満の補正係数B
を乗算したり、モータ目標駆動電流i* から所定値を減
算するようにしてモータ目標駆動電流i* を補正するよ
うにしてもよい。
【0090】さらに、上記実施形態においては、コント
ロールユニット7をマイクロコンピュータ15を使用し
て構成した場合について説明したが、これに限らず、関
数発生器、減算器、乗算器、パルス幅変調回路等を電子
回路を組み合わせて構成することもでき、さらには、マ
イクロコンピュータ15の演算処理装置15bでデュー
ティ制御用電流パルスLP,RPを形成することを省略
して、外部にパルス幅変調回路を設けるようにしてもよ
い。
【0091】さらにまた、モータ駆動回路19も上記構
成に限定されるものではなく、H型ブリッジ回路を構成
するスイッチング素子はトランジスタやリレー等の他の
任意のスイッチング素子を適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の第1の実施形態を示す概略構成図であ
る。
【図2】図1のコントロールユニットの具体例を示すブ
ロック図である。
【図3】コントロールユニットにおけるマイクロコンピ
ュータの操舵補助制御処理の一例を示すフローチャート
である。
【図4】コントロールユニットにおけるマイクロコンピ
ュータの電流検出異常検出処理の一例を示すフローチャ
ートである。
【図5】車速をパラメータとした操舵トルク検出値とモ
ータ目標駆動電流との関係を表す正常時制御マップを示
す特性線図である。
【図6】車速をパラメータとした操舵トルク検出値とモ
ータ目標駆動電流との関係を表す異常時制御マップを示
す特性線図である。
【図7】車速検出値と異常時制御マップの不感帯ZA
幅との関係を表す特性線図である。
【図8】制御ゲインKを変更したときのモータ目標駆動
電流i* とデューティ比Dとの関係を示す特性線図であ
る。
【符号の説明】
1 ステアリングホイール 2 ステアリングシャフト 7 コントロールユニット 8 電動モータ 13 操舵トルクセンサ 14 車速センサ 16 電流検出器 15 マイクロコンピュータ 19 モータ駆動回路
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−167086(JP,A) 特開 平7−329803(JP,A) 特開 平2−290778(JP,A) 特開 平8−91239(JP,A) 特開 平2−74464(JP,A) 特開 平8−91240(JP,A) 特開 平10−194137(JP,A) 特開 平3−213464(JP,A) 特開 平10−29555(JP,A) 特開 平8−119134(JP,A) 特開 昭60−80967(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B62D 6/00 - 6/06 B62D 5/04

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 操舵系に加えられる操舵トルクを検出す
    る操舵トルク検出手段と、前記操舵系に対して操舵補助
    力を付加する電動機と、該電動機を流れる電動機電流を
    検出する電動機電流検出手段と、前記操舵トルク検出手
    段の操舵トルク検出値をもとに当該操舵トルク検出値と
    モータ目標駆動電流との関係を表す制御マップを参照し
    算出したモータ目標駆動電流と前記電動機電流検出手
    段の電動機電流との偏差に応じて前記電動機を制御する
    制御手段とを有する電動式パワーステアリングの制御装
    置において、前記電動機電流検出手段の電動機電流が
    定の設定電流を下回る異常を検出する電流検出異常検出
    手段と、該電流検出異常検出手段で異常を検出したとき
    に、前記制御マップの不感帯を広げる補正を行って前記
    モータ目標駆動電流を低下させる目標電流補正手段とを
    備えていることを特徴とする電動式パワーステアリング
    の制御装置。
  2. 【請求項2】 前記制御手段は、前記電動機に供給する
    デューティ制御用電流パルスのデューティ比を前記モー
    タ目標駆動電流と前記電動機電流との偏差に制御ゲイン
    を乗じて算出するように構成され、前記目標電流補正手
    段は、前記電流検出異常検出手段で異常を検出したとき
    に、前記制御マップの不感帯を広げる補正を行うと共
    に、前記デューティ比を抑制するデューティ比抑制手段
    を備えていることを特徴とする請求項1記載の電動式パ
    ワーステアリングの制御装置。
  3. 【請求項3】 前記デューティ比抑制手段は、制御ゲイ
    ンを小さい値に変更するように構成されていることを特
    徴とする請求項記載の電動式パワーステアリングの制
    御装置。
  4. 【請求項4】 前記デューティ比抑制手段は、算出され
    たデューティ比に1未満の補正係数を乗算して制限する
    ように構成されていることを特徴とする請求項記載の
    電動式パワーステアリングの制御装置。
  5. 【請求項5】 前記制御手段は、前記電動機に供給する
    デューティ制御用電流パルスのデューティ比を前記モー
    タ目標駆動電流と前記電動機電流との偏差に制御ゲイン
    を乗じて算出するように構成され、前記目標電流補正手
    段は、前記電流検出異常検出手段で異常を検出したとき
    に、前記制御マップの不感帯を広げる補正を行うと共
    に、モータ目標駆動電流の絶対値を小さい値に抑制する
    ように構成されていることを特徴とする請求項1記載の
    電動式パワーステアリングの制御装置。
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