JP3418221B2 - 電力輸送用酸化物超電導導体 - Google Patents
電力輸送用酸化物超電導導体Info
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Description
酸化物超電導導体に関する。 【0002】 【従来の技術】近年、YBaCuO系,BiSrCaC
uO系,TlBaCaCuO系等のように液体窒素温度
を超える臨界温度(Tc)を有する酸化物超電導体が知
られている。 【0003】このような酸化物超電導体を応用するため
に、酸化物超電導体を種々の形状に成型することが検討
されている。例えば、酸化物超電導体を線状体に成型す
る場合には、一般に金属シース法が用いられている。こ
の方法は、金属製パイプ内に酸化物超電導体の原料粉末
を充填し、これを所望形状・寸法に縮径加工した後に熱
処理を施すものである。ここで行われる縮径加工として
は、目的とする線状体の形状に応じて押出加工、引抜加
工、スウェージング加工、圧延加工等の従来から用いら
れている塑性加工法をそのまま適用することができる。 【0004】金属製パイプに使用される材料としては、
熱伝導性、電気伝導性に優れた材料、例えばAg,Ag
合金,Cu,Cu合金等を適用できる。この中でも、酸
素透過性に優れるAg,Ag合金を用いることが好まし
い。 【0005】例えば、酸化物超電導体としてBi(22
23)系またはTl系を用いる場合は、酸化物超電導体
またはその原料粉末を金属製パイプに充填し、塑性加工
および熱処理を少なくとも1回施して複合線材を作製
し、これを単芯または多芯の形態で、そのままもしくは
フォーマー上に張り付けて酸化物超電導導体を作製す
る。この酸化物超電導導体は、ドラムに巻取り、その状
態で保管・輸送され、必要に応じて引出される。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、熱処理
を施した複合線材の表面には凹凸が現れるので、酸化物
超電導導体をドラムに巻取ったり、ドラムから引出した
りする際に、複合線材同士間または複合線材とフォーマ
ーとの間で摩擦が大きくなり、複合線材に局部的に負荷
がかかり、これにより酸化物超電導体の超電導特性が劣
化する。 【0007】本発明はかかる点に鑑みてなされたもので
あり、超電導特性を保持したまま巻取り、引出しを行う
ことができる電力輸送用酸化物超電導導体を提供するこ
とを目的とする。 【0008】 【課題を解決するための手段】本発明は、金属材料およ
び酸化物超電導体からなる複数の複合線材を支持部材上
に固定した電力輸送用酸化物超電導導体であって、前記
複合線材表面の少なくとも一部に設けられた、複合線材
同士間または複合線材と支持部材との間の摩擦を小さく
する潤滑層を具備することを特徴とする電力輸送用酸化
物超電導導体を提供する。 【0009】ここで、酸化物超電導体としては、YBa
CuO系,BiSrCaCuO系,TlBaCaCuO
系等の酸化物超電導体を用いることができる。また、金
属材料としては、Ag,Ag合金,Cu,Cu合金等を
用いることができる。この中でも、酸素透過性に優れる
Ag,Ag合金を用いることが好ましい。 【0010】金属材料と酸化物超電導体とを複合して複
合線材を得る方法としては、金属シース法、コンフォー
ム複合押出法等を採用することができる。 【0011】複合線材を固定するための支持部材として
は、円筒形状のSUS製フォーマー、銅製フォーマー等
を用いることができる。 【0012】潤滑層を構成する材料としては、テフロン
(登録商標)テープ等のような結晶性樹脂からなるテー
プ;グリース、潤滑油等のような固体もしくは液体潤滑
剤;フッ素樹脂等の樹脂からなる層、あるいは各種微粒
子からなる層を用いることができる。また、潤滑層は、
複合線材表面に編組加工を施して形成してもよい。 【0013】 【作用】本発明の電力輸送用酸化物超電導導体は、金属
材料および酸化物超電導体からなる複合線材の表面に潤
滑層を設けたことを特徴としている。 【0014】潤滑層が設けられていることにより、酸化
物超電導導体をドラムに巻取ったり、ドラムから引出し
たりする際に、複合線材同士間または複合線材とフォー
マーとの間の摩擦を小さくする。 【0015】このため、酸化物超電導導体の巻取り、引
出しの際に、複合線材に局部的に負荷がかかることを防
止できる。その結果、酸化物超電導体の超電導特性の劣
化を防止できる。 【0016】 【実施例】 実施例1 Bi2 O3 、PbO、SrCO3 、CaCO3 、CuO
の一次原料をBi:Pb:Sr:Ca:Cu=1.6:
0.4:2:2:3となるように配合・混合した後、大
気中で800℃×50hrの仮焼成を行い、仮焼粉末を
作製した。 【0017】次いで、この仮焼粉末をCIP成形して外
径約15mmφの棒状体とし、これをあらかじめ機械加工
により作製した外径25mmφ、内径15mmφの銀パイプ
内に挿入して複合ビレットを得た。得られた複合ビレッ
トを外径5mmφまでスウェージング加工し、続けて外径
1.5mmφまで伸線加工し、さらに圧延加工して幅3m
m、厚さ0.25mmのテープ状体に仕上げた。その後、
これに大気中で835℃×50hrの熱処理を施し、図
1(A)に示すような銀シース10内に酸化物超電導体
層11を有するテープ状体12(複合線材)を作製し
た。 【0018】次いで、図1(B)に示すように、テープ
状体12と厚さ50μmのテフロンテープ13(潤滑
層)とを交互に5枚重ねて積層体14を作製した。10
個の積層体14を図1(C)に示すように、外径40mm
の円筒形状のSUS製フォーマー15(支持体)上に所
定の間隔をおいて螺旋状に巻付けた。この場合の巻付け
ピッチは1mとした。このようにして本発明の酸化物超
電導導体16を得た。 【0019】この酸化物超電導導体16について、液体
窒素中、0磁場における直流臨界電流(Ic)および
0.5%の曲げ歪を加えた後の液体窒素中、0磁場にお
ける直流臨界電流を測定した。その結果、Icの低下率
は約10%であった。これは、酸化物超電導導体16に
曲げ歪を加えたときに、テフロンテープ13によりテー
プ状体12間の摩擦が抑えられて局部的な負荷がかから
なかったためであると考えられる。 【0020】実施例2 実施例1と同様にしてテープ状体12を作製した。次い
で、このテープ状体12の外側に図3に示すように1mm
のアルミナ系編組17を被覆して編組体18を作製し
た。次に、図2に示すように、編組体18をフォーマー
15上に1層毎に巻付け方向を変えて螺旋状に巻付け
た。この場合の巻付けピッチは1mとした。このように
して本発明の酸化物超電導導体19を得た。 【0021】この酸化物超電導導体19について、液体
窒素中、0磁場における直流臨界電流(Ic)および
0.5%の曲げ歪を加えた後の液体窒素中、0磁場にお
ける直流臨界電流を測定した。その結果、Icの低下率
は約8%であった。これは、酸化物超電導導体19に曲
げ歪を加えたときに、アルミナ系編組17によりテープ
状体12間の摩擦が抑えられて局部的に負荷がかからな
かったためであると考えられる。 【0022】実施例3 実施例1と同様にして熱処理を施す前のテープ状体を作
製した。次いで、図3に示すように、このテープ状体の
外側に厚さ1mmのアルミナ系編組17を被覆し、これに
大気中で835℃×60hrの熱処理を施して編組体1
8を作製した。次に、図2に示すように、編組体18を
フォーマー15上に1層毎に巻付け方向を変えて螺旋状
に巻付けた。この場合の巻付けピッチは1mとした。こ
のようにして本発明の酸化物超電導導体を得た。 【0023】この酸化物超電導導体について、液体窒素
中、0磁場における直流臨界電流(Ic)および0.5
%の曲げ歪を加えた後の液体窒素中、0磁場における直
流臨界電流を測定した。その結果、Icの低下率は約4
%であった。これは、酸化物超電導導体に曲げ歪を加え
たときに、アルミナ系編組17によりテープ状体間の摩
擦が抑えられて局部的に負荷がかからなかったためであ
ると考えられる。 【0024】実施例4 実施例1と同様にしてテープ状体12を作製した。次い
で、図4に示すように、このテープ状体12の表面にフ
ッ素樹脂20を厚さ0.05mmで被覆し、次に、図2に
示すように、編組体18をフォーマー15上に1層毎に
巻付け方向を変えて螺旋状に巻付けた。この場合の巻付
けピッチは1mとした。このようにして本発明の酸化物
超電導導体を得た。 【0025】この酸化物超電導導体について、液体窒素
中、0磁場における直流臨界電流(Ic)および0.5
%の曲げ歪を加えた後の液体窒素中、0磁場における直
流臨界電流を測定した。その結果、Icの低下率は約8
%であった。これは、酸化物超電導導体に曲げ歪を加え
たときに、フッ素樹脂20によりテープ状体間の摩擦が
抑えられて局部的に負荷がかからなかったためであると
考えられる。 【0026】実施例5 実施例1と同様にして伸線加工まで行った線状体21を
作製した。次いで、図5に示すように、線状体21の表
面にグリース22を塗布し、次に、図2に示すように、
編組体18をフォーマー15上に1層毎に巻付け方向を
変えて螺旋状に巻付けた。この場合の巻付けピッチは1
mとした。このようにして本発明の酸化物超電導導体を
得た。 【0027】この酸化物超電導導体について、液体窒素
中、0磁場における直流臨界電流(Ic)および0.5
%の曲げ歪を加えた後の液体窒素中、0磁場における直
流臨界電流を測定した。その結果、Icの低下率は約1
3%であった。これは、酸化物超電導導体に曲げ歪を加
えたときに、グリース22により線状体間の摩擦が抑え
られて局部的に負荷がかからなかったためであると考え
られる。 【0028】従来例 これに対して、比較として潤滑層を設けずに従来の方法
で酸化物超電導導体を作製した。この酸化物超電導導体
について液体窒素中、0磁場における直流臨界電流およ
び0.5%の曲げ歪を加えた後の液体窒素中、0磁場に
おける直流臨界電流を測定したところ、Ic低下率は2
0〜25%であり、かなり大きい値であった。 【0029】 【発明の効果】以上説明した如く本発明の電力輸送用酸
化物超電導導体は、金属材料および酸化物超電導体から
なる複合線材の表面に潤滑層を設けているので、複合線
材同士間または複合線材とフォーマーとの間の摩擦を小
さくでき、超電導特性を保持したまま巻取り、引出しを
行うことができるものである。
におけるテープ状体を示す斜視図、(B)は本発明の酸
化物超電導導体の一実施例における積層体を示す斜視
図、(C)は本発明の酸化物超電導導体の一実施例を示
す斜視図。 【図2】本発明の酸化物超電導導体の他の実施例を示す
斜視図。 【図3】本発明の酸化物超電導導体の他の実施例におけ
る編組体を示す斜視図。 【図4】本発明の酸化物超電導導体の他の実施例におけ
るテープ状体を示す斜視図。 【図5】本発明の酸化物超電導導体の他の実施例におけ
る線状体を示す斜視図。 【符号の説明】 10…銀シース、11…酸化物超電導体層、12…テー
プ状体、13…テフロンテープ、14…積層体、15…
フォーマー、16,19…酸化物超電導導体、17…ア
ルミナ系編組、18…編組体、20…フッ素樹脂、21
…線状体、22…グリース。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 金属材料および酸化物超電導体からなる
複数の複合線材を支持部材上に固定した電力輸送用酸化
物超電導導体であって、前記複合線材表面の少なくとも
一部に設けられた、複合線材同士間または複合線材と支
持部材との間の摩擦を小さくする潤滑層を具備すること
を特徴とする電力輸送用酸化物超電導導体。
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