JP3413370B2 - エポキシ樹脂組成物 - Google Patents

エポキシ樹脂組成物

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【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明はエポキシ樹脂組成物
に関するものであり、特に硬化性に優れ且つ室温におけ
る保存安定性が良好なエポキシ樹脂組成物を提供するも
のである。 【0002】 【従来の技術】エポキシ樹脂組成物は、電気特性、機械
特性、熱特性などが優れているため、多くの分野で採用
されており、また通常エポキシ樹脂組成物は、分子内に
2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂プレポリマ
ーと硬化剤および必要に応じて硬化促進剤を配合して用
いられている。 【0003】従来から知られているエポキシ樹脂組成物
には、硬化剤成分として第三級アミン、イミダゾール化
合物などが配合されているが、これらを用いたエポキシ
樹脂組成物は、常温における保存安定性が悪いため冷蔵
庫を用いて保管することを余儀なくされていた。 【0004】また、1,3,5−トリス(2−カルボキ
シエチル)イソシアヌレートをエポキシ樹脂硬化剤とし
て使用した場合には、このシアヌレート化合物が高融点
であり且つエポキシ樹脂との相溶性が悪いので、エポキ
シ樹脂に配合するためには、適当な有機溶剤を添加する
必要があった。 【0005】さらに特開昭59−213774号公報に
よれば、エポキシ樹脂系粉体塗料の架橋剤としてトリメ
リット酸等の芳香族カルボン酸とイミダゾリン化合物の
塩類を使用して艶消し塗膜を得る方法が提案されている
が、これらの塩類は芳香族環を含有することに起因して
耐候性に劣る場合があるという問題点があった。 【0006】 【発明が解決しようとする課題】本発明は、硬化性に優
れ常温における保存が可能であり、且つ必ずしも有機溶
剤を必要としないエポキシ樹脂組成物を提供することを
目的とする。 【0007】 【課題を解決するための手段】本発明者等は、この課題
を解決するために数多くの試験を重ねた結果、一分子内
に平均して2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂
と、硬化剤として1,3,5−トリス(2−カルボキシ
エチル)イソシアヌレートとイミダゾリン化合物の塩を
使用し、エポキシ樹脂と硬化剤の配合比を、エポキシ基
/カルボキシル基の当量比で1〜15の範囲とすること
によって、所期の物性が得られることを知見し、この発
明を完成するに至ったものである。 【0008】 【発明の実施の形態】本発明の実施において用いられる
エポキシ樹脂は、特に限定するものではないが、平均し
て一分子内に2個以上のエポキシ基を有するものであれ
ばよい。エポキシ樹脂の代表的なものとしては、ビスフ
ェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキ
シ樹脂、ビスフェノールAD型エポキシ樹脂、ヒダント
イン型を有するエポキシ樹脂、トリグリシジルイソシア
ヌレート、カテコール、レゾルシノール等の多価フェノ
ール又はグリセリンやポリエチレングリコール等の多価
アルコールとエピクロルヒドリンを反応させて得られる
ポリグリシジルエーテルあるいはp−ヒドロキシ芳香族
カルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて得られる
グリシジルエーテルエステル、フタル酸、テレフタル酸
等のポリカルボン酸とエピクロルヒドリンを反応させて
得られるポリグリシジルエステル、更にはエポキシ化フ
ェノールノボラック樹脂、エポキシ化ポリオレフィン、
水溶性エポキシ樹脂、その他ウレタン変性エポキシ樹脂
等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。 【0009】本発明に用いられる1,3,5−トリス
(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートと塩を形成
するイミダゾリン化合物の代表的なものとして、2−メ
チルイミダゾリン、2−ウンデシルイミダゾリン、2−
ヘプタデシルイミダゾリン、2−エチル−4−メチルイ
ミダゾリン、2−フェニルイミダゾリン、2−フェニル
−4−メチルイミダゾリンなどが挙げられる。 【0010】硬化剤として使用する1,3,5−トリス
(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートとイミダゾ
リン化合物の塩は、種々の方法により調製することがで
きる。例えば、1,3,5−トリス(2−カルボキシエ
チル)イソシアヌレートをメタノールなどの適当な溶媒
に加熱溶解し、次いでイミダゾリン化合物を添加し、そ
の反応溶液を冷却したのち、析出する結晶を回収して、
メタノールなどの適当な溶媒を用いて再結晶すれば良
い。1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソ
シアヌレートの3つのカルボキシル基は、その全てを塩
の形に変えることができる。通常、1,3,5−トリス
(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートと、塩を形
成するためのイミダゾリン化合物との配合比率は、塩を
生成後に平均2個のカルボキシル基が残るように設定さ
れる。 【0011】1,3,5−トリス(2−カルボキシエチ
ル)イソシアヌレートは、イミダゾリン化合物と塩を形
成させることにより融点を下げることができ、且つエポ
キシ樹脂との相溶性が向上する。従って、エポキシ樹脂
の硬化剤として1,3,5−トリス(2−カルボキシエ
チル)イソシアヌレートとイミダゾリン化合物の塩を使
用することにより、1,3,5−トリス(2−カルボキ
シエチル)イソシアヌレートの場合に比べて、硬化剤を
エポキシ樹脂に配合するための有機溶剤を必要とせず、
且つエポキシ樹脂の硬化速度が速くなる。また、硬化剤
としてイミダゾリン化合物単独で使用した場合に比べ
て、硬化物の耐屈曲性が向上し、イミダゾール化合物を
硬化剤に用いた場合と比較して、エポキシ樹脂配合物の
常温における保存安定性が向上する。さらに、エポキシ
樹脂の硬化剤にトリメリット酸とイミダゾリン化合物の
塩を使用した場合と比較して、本発明のエポキシ樹脂硬
化物の分子鎖内にトリアジン環が組み込まれるため、当
該硬化物の耐候性向上が期待できる。 【0012】本発明に係るエポキシ樹脂組成物には、必
要に応じて希釈剤、可撓性付与剤、シラン系カップリン
グ剤、消泡剤、レベリング剤、充填剤、顔料、染料等の
各種添加剤を加えることができる。 【0013】 【実施例】以下本発明を、実施例、参考例及び比較例に
よって、具体的に説明する。なお、これらの試験におけ
る評価方法は、次に示した試験規格及び条件によって行
ったものである。 ゲル化時間:JIS C−2105[熱板法(150
℃)] ポットライフ:JIS K−6838[初期粘度の2倍
に到達する時間] 硬化物の外観:目視 耐屈曲性:JIS K−5400[測定温度25℃] 碁盤目試験:JIS K−5400[測定温度25℃] 【0014】[参考例1] 〔1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシ
アヌレート・2−メチルイミダゾリン塩の製造〕2−メ
チルイミダゾリン[分子量84.12](以下2MZL
と略記する)と1,3,5−トリス(2−カルボキシエ
チル)イソシアヌレート[分子量345.26、カルボ
キシル基当量115](以下TCEICと略記する)を
用意し、攪拌機、還流コンデンサ、温度計を備えた反応
器に、メタノール250mlをTCEIC69.05g
(0.2モル)と共に仕込み66℃の温度に加熱して溶
解させた。この溶液に、メタノール50mlに2MZL
16.82g(0.2モル)を溶解した溶液を滴下し、
次いで反応溶液を冷却し、析出した結晶を回収した。こ
の結晶をメタノール溶媒によって再結晶し、濾取して真
空乾燥機で70℃、3時間乾燥することにより目的物の
TCEIC・2MZL塩62.94g(収率73.3
%)を得た。得られたTCEIC・2MZL塩の融点は
208℃であった。 【0015】[参考例2] 〔1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシ
アヌレート・2−フェニルイミダゾリン塩の製造〕参考
例1で用いたTCEIC69.05g(0.2モル)
と、2−フェニルイミダゾリン[分子量146.19]
(以下2PZLと略記する)29.24g(0.2モ
ル)を、参考例1と同様の方法により処理し、目的物の
TCEIC・2PZL塩84.53g(収率86.0
%)を得た。得られたTCEIC・2PZL塩の融点は
210℃であった。 【0016】[参考例3] 〔1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシ
アヌレート・2−エチル−4−メチルイミダゾリン塩の
製造〕参考例1で用いたTCEIC69.05g(0.
2モル)と、2−エチル−4−メチルイミダゾリン[分
子量112.17](以下2E4MZLと略記する)2
2.43g(0.2モル)を、参考例1と同様の方法に
より処理し、目的物のTCEIC・2E4MZL塩8
5.44g(収率93.4%)を得た。得られたTCE
IC・2E4MZL塩の融点は217℃であった。 【0017】[参考例4] 〔1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシ
アヌレート・2−ウンデシルイミダゾリン塩の製造〕参
考例1で用いたTCEIC69.05g(0.2モル)
と、2−ウンデシルイミダゾリン[分子量224.3
8](以下C11ZLと略記する)44.88g(0.
2モル)を、参考例1と同様の方法により処理し、目的
物のTCEIC・C11ZL塩71.43g(収率6
2.7%)を得た。得られたTCEIC・C11ZL塩
の融点は163℃であった。 【0018】[参考例5] 〔1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシ
アヌレート・2−ヘプタデシルイミダゾリン塩の製造〕
参考例1で用いたTCEIC69.05g(0.2モ
ル)と、2−ヘプタデシルイミダゾリン[分子量30
8.55](以下C17ZLと略記する)61.71g
(0.2モル)を、参考例1と同様の方法により処理
し、目的物のTCEIC・C17ZL塩112.32g
(収率85.9%)を得た。得られたTCEIC・C1
7ZL塩の融点は182℃であった。 【0019】[実施例1〜5]エポキシ樹脂[油化シェ
ルエポキシK.K.製、商品名:エピコート828、ビ
スフェノールA型エポキシ樹脂、エポキシ当量186]
100重量部と、硬化剤として参考例1〜5で製造した
TCEICとイミダゾリン化合物の塩を表1に示す割合
で計量し、乳鉢で粉砕、混合し、均一分散した樹脂組成
物を得た。得られたエポキシ樹脂組成物について、15
0℃における硬化性(ゲル化時間)及び25℃における
保存安定性(ポットライフ)を調べた。これらの結果は
表1に示したとおりであった。また、得られたエポキシ
樹脂組成物を、アルミ板および銅板に刷毛で均一に塗
り、150℃のオーブンを用いて30分間加熱硬化した
後、所定の寸法に切り出し、硬化した樹脂の塗膜性能を
調べた。これらの結果は表2に示したとおりであった。 【0020】[比較例1]実施例におけるTCEICと
イミダゾリン化合物の塩の代わりに、硬化剤としてTC
EICを表1に示す割合で使用した以外は実施例と同様
にして樹脂組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組
成物について、実施例と同様にして硬化性(ゲル化時
間)及び保存安定性(ポットライフ)を調べた。これら
の結果は表1に示したとおりであった。 【0021】[比較例2]実施例におけるTCEICと
イミダゾリン化合物の塩の代わりに、硬化剤として2−
フェニルイミダゾリン(以下2PZLと略記する)を表
1に示す割合で使用した以外は実施例と同様にして樹脂
組成物を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物につい
て、実施例と同様にして硬化性(ゲル化時間)、保存安
定性(ポットライフ)及び塗膜性能を調べた。これらの
結果は表1及び表2に示したとおりであった。 【0022】[比較例3]実施例におけるTCEICと
イミダゾリン化合物の塩の代わりに、硬化剤として2−
フェニルイミダゾール(以下2PZと略記する)を表1
に示す割合で使用した以外は実施例と同様に樹脂組成物
を調製した。得られたエポキシ樹脂組成物について、実
施例と同様にして硬化性(ゲル化時間)、保存安定性
(ポットライフ)及び塗膜性能を調べた。これらの結果
は表1及び表2に示したとおりであった。 【0023】 【表1】【0024】 【表2】 【0025】これらの試験結果から本発明品は、比較例
1および比較例2と比べて、明らかに硬化性が優れてい
た。また比較例3と比べると、硬化性はほぼ同じであっ
たが、保存安定性が飛躍的に優れていた。また本発明品
は、比較例2および比較例3に比べて、硬化物の外観、
耐屈曲性などの物性において明らかに優れているものと
認められた。 【0026】 【発明の効果】本発明に係るエポキシ樹脂組成物は、
1,3,5−トリス(2−カルボキシエチル)イソシア
ヌレートとイミダゾリン化合物の塩を硬化剤に使用する
ことを特徴とし、硬化性および常温における保存性安定
性に優れ、塗料、電気絶縁材料等の分野において好適で
ある。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開2000−160063(JP,A) 特開 平11−293189(JP,A) 特開 昭61−218578(JP,A) 特開 平5−25375(JP,A) 特開 平10−88063(JP,A) 特開2000−38438(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 59/40 C08G 59/50

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 一分子内に平均して2個以上のエポキシ
    基を有するエポキシ樹脂と、硬化剤として1,3,5−
    トリス(2−カルボキシエチル)イソシアヌレートとイ
    ミダゾリン化合物の塩を含有し、前記エポキシ樹脂と硬
    化剤の配合比をエポキシ基/カルボキシル基の当量比で
    1〜15の範囲としたことを特徴とするエポキシ樹脂組
    成物。
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