JP3409905B2 - ハロゲン系有機化合物の分解装置 - Google Patents

ハロゲン系有機化合物の分解装置

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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【産業上の利用分野】本発明は、ハロゲン系有機化合物
を分解する装置に関し、特に、紫外線照射によってハロ
ゲン系有機化合物の分解反応を行う分解装置に関する。 【0002】 【従来の技術】トリクレン、ポリクロロビフェニル(P
CB)、フロン等のハロゲン系有機化合物は、化学工業
等の各種分野で広く使われている。しかし、トリクレン
はPCB等の塩素化合物については人体に対する毒性が
明らかになり、フロン等のフッ素化合物は地球環境破壊
の問題がある等、問題点が近年明らかにされている。こ
のような状況から、含ハロゲン有機化合物の分解・無害
化する方法が求められ、様々な方法が検討されている。
その方法の1つに、紫外線分解法がある。 【0003】紫外線分解方法では、気相中のハロゲン系
有機化合物に紫外線が照射されるが、分解時に生成され
る生成物によって分解反応の進行が妨げられるため、分
解効率が低い。又、分解によって発生する腐食性ハロゲ
ン化合物ガスによって装置が損なわれる危険性も他の方
法に比べて高く、大型の装置を必要とする傾向もある。
このため、紫外線分解法の改良として、液相照射法が提
案されている。この方法では、液媒体中にハロゲン系有
機化合物を導入し、これに紫外線を照射した後に、ハロ
ゲン化水素等を除去するためにアルカリを添加して塩析
させる。 【0004】 【発明が解決しようとする課題】しかし、上述の液相照
射法を行う場合、析出塩が紫外線ランプの周囲に付着す
るのを防ぐために、紫外線照射とアルカリ添加を別の槽
内で行う必要がある。従って、装置は2以上の槽を備え
なければならず、装置の小型化が難しい。又、2つの槽
間で液媒体を移送するための手段が必要となるので、装
置の清掃やメンテナンスの点でも不利になる。 【0005】 【課題を解決するための手段】本発明は、上述の液相照
射法を実施する装置の改良に関するもので、小型化が可
能で、メンテナンス等も容易に行える、ハロゲン系有機
化合物の分解装置を提供することを目的とする。 【0006】本発明のハロゲン系有機化合物の分解装置
は、ハロゲン系有機化合物に紫外線を照射して分解する
ハロゲン系有機化合物の分解装置であって、前記ハロゲ
ン系有機化合物を含む液体を収容するための反応槽と、
該液体に紫外線を照射するための紫外線照射装置と、前
記反応槽内の液体にアルカリを添加するためのアルカリ
添加装置と、前記反応槽に収容される前記液体にバブリ
ングすることによって前記液体を均一化するためのバブ
リング装置とを備え、前記反応槽が紫外線透過性内周壁
によって区画される中空部を有する中空柱状であり、前
記紫外線照射装置が該中空部内に配設される。 【0007】 【作用】紫外線照射装置は、紫外線透過性内周壁と通し
て反応槽内の液体に紫外線を照射し、ハロゲン系有機化
合物の分解が進行する。中空部内に配設される紫外線照
射装置は、紫外線透過性内周壁によって反応槽内の液体
と隔絶され、紫外線照射後に反応槽内の液体にアルカリ
を添加することによる析出物が紫外線照射装置に付着す
ることが防がれる。 【0008】以下、本発明について詳細に説明する。 【0009】液相照射法では、ハロゲン系有機化合物を
含んだ液体を反応槽に入れ、液体の中央部に紫外線ラン
プを挿入して紫外線を照射し、液中で生成するハロゲン
化水素を中和塩析させるためにアルカリが添加される。
紫外線ランプを挿入したままで塩を析出させると塩は紫
外線ランプの表面に付着するので、紫外線ランプを槽か
ら取り出して洗浄するか、紫外線ランプを液体と分離さ
せる必要がある。又、紫外線ランプの洗浄中には、トラ
ブルによって析出物に起因したランプの故障が発生する
可能性がある。従って、故障などに強く、且つ、小型化
可能な紫外線照射装置を構成するためには、紫外線ラン
プに一切析出物が付着しないようにすることが肝要であ
る。 【0010】本発明においては、分解装置の反応槽の形
状を中空柱状にすることによって上記構成が成される。
即ち、反応槽は中心部に実質的に紫外線透過性の内周壁
によって区画される中空部を有し、該中空部に紫外線ラ
ンプが挿入され、紫外線を照射する液体は環状の槽内に
収容される。従って、紫外線ランプは、内周壁によって
紫外線を照射する液体から隔絶され、紫外線は内側壁を
透過して液体に照射される。上記中空柱状の反応槽の内
周及び外周は、円柱、多角柱のいずれの形状でもよく、
又、厳格に柱状である必要はなく樽状であってもよい
が、内周及び外周が円柱状である方が紫外線の照射効率
等の点で好ましい。 【0011】上記のような反応槽を用いる場合、通常の
攪拌羽等を反応槽の中央に配置して液体を攪拌すること
はできない。しかし、反応効率を高めるためには反応液
が常に均一になるように液体を攪拌するのが好ましく、
特に大型の反応槽である場合にはかなり重要な要素とな
る。これを解決するのに適した方法として、反応槽内の
底部にバブリング装置を設けて気泡によって反応液を均
一化するバブリング法を挙げることができる。 【0012】図1は、通常の円筒型反応槽を用いてバブ
リング法及び攪拌法の各々についてフロン12の紫外線
分解における分解率の経時変化をガスクロマトグラフで
観察した結果を示したグラフである。バブリング法にお
いては、ハロゲン系有機化合物としてフロン12を含有
するイソプロパノールに孔径40μmのフィルタを用い
てエアをバブリング(気泡径:約50〜1000μm)
しながら紫外線照射を行い、攪拌法においては、フロン
12を含有するイソプロパノールを磁気コアで攪拌しな
がら紫外線照射を行っている。フロン12の初期濃度は
体積比で3%となるように設定し、紫外線ランプは主波
長が254nmのものを用い、照射は40分間行った。分
解率は、(照射前フロン濃度−測定時フロン濃度)×1
00/(照射前フロン濃度)を計算して求めた。 【0013】図1から、明らかにバブリング法によって
高い効率で分解反応を進めることができることがわか
る。従って、前述の中空柱状の反応槽にバブリング装置
を取り付けてバブリングすることによって反応液の均一
化が十分に行える。バブリング装置については、孔を多
数有するガス導入管、フィルター等を適宜使用すること
ができ、バブリング装置の形状や配置については通常行
われる変形を必要に応じて行うことができるのは言うま
でもない。 【0014】液相照射法における液体媒体は、各種アル
コールを用いることができ、特にイソプロパノールが紫
外線分解の反応性の面で好ましい。このようなアルコー
ル系媒体に対するハロゲン系有機化合物の溶解度は一般
に大きいので、バブリングによって気体状ハロゲン系有
機化合物を容易に効率よく液体媒体に導入することがで
きる。つまり、前述のバブリング法は、単に反応液を均
一にするだけではなく、フロンのような揮発性の高いハ
ロゲン系有機化合物を紫外線照射用の液相に導入する方
法として応用することができる。揮発性ハロゲン系有機
化合物を液体状態で取り扱う場合、作業中の気化による
ロスや環境汚染が問題になるので、バブリングによるハ
ロゲン系有機化合物の液相への導入は有効な方法であ
る。バブリング法を用いれば、一旦気化したハロゲン系
化合物を紫外線照射用の液相に導入することができ、ハ
ロゲン系化合物を再度液化するための装置を必要としな
い。 【0015】 【実施例】上述したバブリングシステムを中空柱状の反
応槽に導入した分解装置の実施例を以下に説明する。 【0016】図2は、本発明に係る分解装置の一実施例
を示す。分解装置1は、フロン等のガス状ハロゲン系有
機化合物をバブリングによって液相に導入し紫外線分解
するのに適した装置である。分解装置1は、石英ガラス
で作製された中空円柱状の気密系反応槽3と、反応槽3
の中央の円柱状中空部分に立設される紫外線ランプ5を
備えている。紫外線ランプ5は安定化電源7に接続され
ている。反応槽3の中空部下方には、紫外線ランプ5を
空気冷却するためのファン9が取り付けられており、中
空部分にエアを送る。ファン9によって供給されるエア
は、ランプ5と反応槽3の内周壁との間の隙間を通って
上方へ抜ける。反応槽3内部において、底部にはリング
状のガス導入管11が付設され、導入管11は、反応槽
3の外周壁を貫通するパイプによって切り替えコック1
3と接続されている。更に、反応槽3の上部にはガス排
出口15があり、切り替えコック13とガス排出口15
とを接続する還流路17が設けられている。還流路17
の途中にはポンプ19が配設され、反応槽3を通して気
体が還流するように構成されている。常温常圧のガス状
ハロゲン系有機化合物が切り替えコック13を通して反
応槽3内へ供給される。切り替えコック13は、反応槽
3内の圧力をモニタリングして該圧力が一定に保たれる
ようにハロゲン系有機化合物の供給を制御する機能を備
える。更に、反応槽3には、液相中のハロゲン系有機化
合物濃度及びpH値を測定する測定器が取り付けられて
いる。 【0017】反応槽3の上部には溶媒投入口21があ
り、溶媒タンク23から溶媒25がパイプ27及びポン
プ29を介して供給される。この実施例においては、溶
媒としてイソプロパノール(以下、IPAと略記する)
が用いられている。更に、反応槽3の頂部にはアルカリ
投入口31が設けられ、アルカリタンク33からアルカ
リ35が投入される。この実施例においては、アルカリ
としてナトリウムアルコラート粉末が用いられている。 【0018】更に、反応槽3内の上部には多数の穴を有
するリング状の洗浄管37が配設される。洗浄液39が
洗浄水タンク41からコック43、洗浄管37を介して
反応槽3に供給され、これによって容器3の内側がシャ
ワー洗浄される。この例においては、洗浄液としてNaCl
水溶液が用いられている。 【0019】又、反応槽3の底部には排出口45が設け
られ、パイプ47、49によって液体タンク23、廃液
タンク51と接続されている。排出口45と溶媒タンク
23、廃液タンク51との接続はコック53によって切
り替えられる。排出口45とコック53との間にセンサ
ー55が設けられ、パイプ47を通過する液体の透過率
をモニタリングする。センサー55で検出した透過率の
情報に基づいてコック53は切り替えられる。 【0020】上記の分解装置1を用い、ハロゲン系有機
化合物としてフロンR12を分解する工程を以下に示
す。操作は、図3に示すフローチャートに従って行われ
る。 【0021】まず、反応槽3に所定量のIPAが貯留さ
れるようにポンプ29によって液体タンク23から反応
槽3へIPAが供給される(工程57)。次に、紫外線
照射を開始して(工程59)、所定量のフロンをガス導
入管11からIPAに吹き込み(工程65)、コック1
3を切り替えてバブリングを開始する(工程67)。一
度でIPAに溶解しきれなかったフロンは容器3内の気
相中に放出されるが、バブリングの間にポンプ19によ
って還流され、再度IPAに導入される。バブリングを
所定時間行う間(工程61〜69)、フロン濃度が検出
され、液相内のフロン濃度が所定量以下になるとフロン
が追加され(工程61)、気相圧力を検出して気相圧が
所定圧以上になるように保たれる(工程63)。IPA
中のフロンR12は、溶媒和効果により効率よく紫外線
分解され、塩素が1個水素置換した1次分解物R22に
なる。 【0022】所定時間経過後、バブリング及び紫外線照
射を停止し(工程71、73)、アルカリが添加される
(工程75)。アルカリ添加によって、1次分解物R2
2は更に塩素が水素置換した2次分解物R32及びメタ
ンに変換される。同時に、分解によって生じるハロゲン
化水素が中和されて塩が析出し、その一部は反応槽3の
内壁に付着し得る。この後、洗浄水タンク41のNaCl水
溶液が洗浄管37から供給される(工程77)。この
時、IPAは電解質を含む水と分離し、IPA中の過剰
のアルカリがNaCl水溶液に溶解する。IPA相のpH値
が測定され、過剰アルカリがほぼ完全に水相に移るまで
NaCl水溶液の添加が繰り返される(工程77、79)。 【0023】その後、反応槽3と廃液タンク51が連通
するようにコック53を制御して反応槽3内の液体を排
出口45から排出し(工程81)、センサー55を作動
させる(工程83)。センサー55は排出液の透過率を
モニタリングし(工程85)、透過率の変化によって排
出液が水溶液からIPAに変わるのを検出したらコック
53を制御して排出液を溶媒タンク23へ導く(工程8
7)。反応槽3の溶媒を排出し終わると、再度コック5
3を排液タンク51に切り替えてNaCl水溶液を洗浄管3
7から供給し、反応槽3の内壁に付着した塩等を洗い流
す(工程89)。 【0024】上述の操作において回収されるIPAには
副反応生成物であるアセトンが微量含まれる。しかし、
アセトンは、アルカリのない状態での紫外線分解反応で
は光増感材として作用するので、回収IPAは上述の操
作を繰り返すことによって有効に再利用することができ
る。 【0025】上述の操作においては、溶媒と生成塩との
分離は、IPAが電解質を含む水と分離する性質を利用
した液−液分離によって行っているが、IPA以外の親
水性溶媒を液体媒体として用いる場合には、洗浄水を加
えずに固−液分離によって溶媒と析出塩とを行うことが
できる。紫外線照射効率の点から、上記反応槽3の外周
は紫外線を反射する膜等で覆うのが好ましい。あるい
は、反応槽3の内周壁のみを紫外線透過性の材料で作製
し、他の部分を紫外線遮断性の材料で形成してもよい。 【0026】尚、図1において説明したように、バブリ
ング法の採用は分解反応の促進に対して効果的であり、
又、連続操作に対応するにも適していることから、分解
装置を図4に示されるように構成することによって、分
解装置の小型化、処理能力の向上を実現することも可能
である。この装置は、中空柱状の反応槽を用いずに通常
の冷却管5a付き紫外線ランプ5を使用し、反応槽を紫
外線照射槽3aとアルカリ添加槽3bとに分けて構成し
ている。しかし、照射槽3a底部のガス導入管11aに
よるバブリングによって分解反応が促進されることを利
用して、溶媒を比較的短時間の周期で照射槽3a、アル
カリ添加槽3b及び溶媒タンク23の間で循環させるこ
とにより、照射槽3a及びアルカリ添加槽3bの小型化
が可能になる。この装置は、紫外線分解操作とアルカリ
添加・分離操作を同時に平行して行うので、ハロゲン系
化合物の分解処理を繰り返し行う場合において特に有効
性を発揮する。 【0027】 【発明の効果】以上説明したように、本発明によれば、
ハロゲン系有機化合物の分解装置が小型化され、装置の
故障等を減少させることができるので、取り扱いやメイ
ンテナンスの点で優れ、工業的価値は大である。
【図面の簡単な説明】 【図1】攪拌法及びバブリング法に従って紫外線照射を
行った際のフロン12の分解率の経時変化を示すグラフ
である。 【図2】本発明のハロゲン系有機化合物の分解装置の一
例を示す概念図である。 【図3】図2の分解装置の操作例を示すフローチャート
である。 【図4】本発明のハロゲン系有機化合物の分解装置の他
の例を示す概念図である。 【符号の説明】 3 反応槽 5 紫外線ランプ 11、11a ガス導入管 23 溶媒タンク 33 アルカリタンク 41 洗浄水タンク 51 廃液タンク
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 早田 輝信 神奈川県横浜市磯子区新杉田町8番地 株式会社東芝 横浜事業所内 (56)参考文献 特開 平6−7474(JP,A) 特開 昭63−46178(JP,A) 特開 昭49−109351(JP,A) 特開 平5−277205(JP,A) 特開 平4−293517(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A62D 3/00 B01J 19/12 C07B 35/06

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 ハロゲン系有機化合物に紫外線を照射し
    て分解するハロゲン系有機化合物の分解装置であって、
    前記ハロゲン系有機化合物を含む液体を収容するための
    反応槽と、該液体に紫外線を照射するための紫外線照射
    装置と、前記反応槽内の液体にアルカリを添加するため
    のアルカリ添加装置と、前記反応槽に収容される前記液
    体にバブリングすることによって前記液体を均一化する
    ためのバブリング装置とを備え、前記反応槽が紫外線透
    過性内周壁によって区画される中空部を有する中空柱状
    であり、前記紫外線照射装置が該中空部内に配設される
    ことを特徴とするハロゲン系有機化合物の分解装置。
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