JP3409668B2 - フェノール系耐熱樹脂を含む摺動部品用成形材料 - Google Patents

フェノール系耐熱樹脂を含む摺動部品用成形材料

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JP3409668B2 JP31839697A JP31839697A JP3409668B2 JP 3409668 B2 JP3409668 B2 JP 3409668B2 JP 31839697 A JP31839697 A JP 31839697A JP 31839697 A JP31839697 A JP 31839697A JP 3409668 B2 JP3409668 B2 JP 3409668B2
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Description

【発明の詳細な説明】 【0001】 【発明の属する技術分野】本発明は、ハイオルト型のフ
ェノール系耐熱樹脂を用いた耐熱性と摺動性に優れた摺
動部品用の熱硬化性成形材料に関する。 【0002】 【従来の技術】代表的なフェノール樹脂であるフェノー
ル−ホルムアルデヒド樹脂 (以下、単にフェノール樹脂
ともいう) は、安価な耐熱樹脂として各種用途に幅広く
利用されている。 【0003】フェノール樹脂は、フェノールを過剰のホ
ルムアルデヒドと塩基性触媒の存在下で反応させること
により製造される熱硬化性のレゾール樹脂と、過剰のフ
ェノールをホルムアルデヒドと酸触媒の存在下で反応さ
せることにより得られるノボラック型フェノール樹脂と
に大別される。 【0004】ノボラック型フェノール樹脂は、それ自体
は熱可塑性であるが、硬化剤 (例、ヘキサメチレンテト
ラミン、レゾール樹脂等) を加えて熱硬化性樹脂として
使用される。 【0005】ノボラック型フェノール樹脂の製造におい
て、酸触媒に代えて2価金属塩(2価金属の酸化物もし
くは水酸化物、または3価金属酸化物でもよい)を触媒
として使用すると、フェノールの水酸基に対してオルト
位でメチレン結合した成分の割合が多いハイオルト型の
ノボラック型フェノール樹脂が得られ、これは硬化性が
酸触媒で得られるノボラック型フェノール樹脂より大き
い (即ち、速硬化性である) ことが知られている。 【0006】フェノール樹脂は、十分な後硬化を施すこ
とで200 ℃以上の初期耐熱性を示すが、樹脂自体がフェ
ノール性水酸基に起因して酸化され易いため、長期耐熱
性は150 ℃以下とされ、十分ではない。また、フェノー
ル性水酸基の存在により、耐水性、耐アルカリ性が比較
的弱い。これらの欠点により、フェノール樹脂の用途が
制限されている。 【0007】この欠点を改良する目的で、フェノール性
水酸基をエーテル化またはエステル化 (ホウ素、ケイ
素、リン、重金属等の触媒を使用) して保護したり、フ
ェノールに代えてp−アミノフェノールを使用する等の
手段で窒素変性したり、ビスフェノールSを使用する等
でイオウ変性したりする方法が一般に知られており、一
部では利用されている。しかし、これらの方法でも長期
耐熱性は220 ℃が限界であり、また長期耐熱性が向上し
ても硬化性が低下するといった問題があり、用途になお
制限がある。 【0008】一方、ホルムアルデヒドに代えてp−キシ
リレングリコールジメチルエーテル等のキシリレン型の
アラルキル化合物 (以下、キシリレン化合物という) を
用い、ノボラック型フェノール樹脂と同様に製造される
フェノールアラルキル樹脂も提案された (特公昭47−15
111 号公報、特開平4−142328号公報) 。この樹脂もヘ
キサメチレンテトラミン等の硬化剤により熱硬化性樹脂
として使用され、フェノール樹脂に比べて耐熱性、耐水
性、耐アルカリ性等が向上するが、硬化剤を加えて熱硬
化させる時の硬化性が劣るため、加熱硬化時間を十分と
る必要があり、生産性の面で実用化に大きな制約があ
る。さらに、成形品の寸法や形状によっては、膨れや気
孔の発生が起こり、良好な成形品が得られないことがあ
り、成形性にも問題がある。 【0009】また、フェノールアラルキル樹脂の硬化性
を改善する目的で、ホルムアルデヒドをキシリレン化合
物と併用した樹脂 (特開平4−142324号公報) 、或いは
フェノールとキシリレン化合物との反応中または反応後
にフェノール−ホルムアルデヒド樹脂を加えて変性した
樹脂 (特開平4−173834号公報、特公昭58−58378 号公
報) も知られている。これらの樹脂は硬化性は改善され
るものの、耐熱性が本来のフェノールアラルキル樹脂に
比べて劣るため、成形性を改良した耐熱樹脂としては不
十分である。 【0010】フェノール化合物と芳香族アルデヒドとキ
シリレン化合物を特定の構成比にて酸触媒下で共縮合さ
せて製造した樹脂 (特開平4−352759号、同6−184258
号、同6−136082号各公報) 、ならびにフェノールと芳
香族アルデヒドを酸触媒下で反応させて製造した樹脂と
フェノールアラルキル樹脂とを特定の割合で混合した樹
脂 (特公昭47−15111 号公報、特開平4−142328号およ
び同6−322234号各公報) も提案された。 【0011】これらの樹脂は、耐熱性がフェノールアラ
ルキル樹脂と同等以上でありながら、硬化性を改善した
ものであり、高耐熱性と良好な成形性を兼備しており、
実用的価値がある。しかし、その硬化性は、汎用のノボ
ラック型フェノール樹脂と比べるとなお劣っており、長
い硬化時間を必要としている。従って、このフェノール
樹脂と同等の成形性を得るには、成形温度を高く設定す
る等の工夫が必要で、汎用フェノール樹脂の使用条件の
ままでは使用できない欠点があり、高範囲な用途拡大に
は制限がある。 【0012】フェノール樹脂の用途の1つとして、黒
鉛、フッ素樹脂などの固体潤滑剤を配合した熱硬化性の
複合材料の成形により製造される摺動部品があり、軸受
け、ローラなどに広く利用されている。 【0013】しかし 上述したフェノール樹脂の欠点の
ため、この摺動部品は一定以上の負荷(P)や速度
(V)を超える条件下では、摩擦熱による温度上昇によ
り、摩耗や摩擦係数の増大、変動のため利用に制限があ
る。さらに、使用環境温度が150℃以上での使用には支
障があり、特に200 ℃以上での使用はほぼ不可能とな
る。また、高湿高温環境やアルカリ性雰囲気での使用に
も制限があった。 【0014】フェノール樹脂の代わりに、フェノールア
ラルキル樹脂や上述した各種の改良されたフェノール系
樹脂を使用することで、この摺動部品は使用環境の制限
は軽減されてきており、利用範囲が広がってきている
が、これらのフェノール系樹脂は前述したように硬化性
と成形性に劣るため、生産性や成形品の品質面でなお満
足できるものとは言いがたかった。 【0015】そのため、高負荷 (荷重・速度) 条件下ま
たは高温環境といった悪条件下で使用されるプラスチッ
ク製摺動部品は、ポリイミド樹脂を始めとするスーパー
エンプラと称される高価な耐熱性樹脂を用いて製造せざ
るを得ず、経済性に問題があった。 【0016】 【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、前述
したフェノール系樹脂の問題点を解消し、具体的には、
ヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤で熱硬化させた時
に汎用のノボラック型フェノール樹脂と同等の硬化性を
有し、従って成形加工が容易で、同時に長期耐熱性、耐
水性、耐アルカリ性等の機能がフェノールアラルキル樹
脂と同程度に優れている、耐熱性フェノール系樹脂を提
供することである。 【0017】本発明の別の目的は、成形時の硬化時間と
高負荷摺動特性とに優れ、かつ使用環境の制約の少ない
摺動部品の製造に適した、比較的安価な成形材料を提供
することである。 【0018】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、先に提案
した特開平6−1841258 号公報に記載のフェノール化合
物を芳香族アルデヒドおよびアラルキル化合物と反応さ
せて得られるフェノール系共縮合樹脂が、耐水性、耐ア
ルカリ性に優れ、かつ硬化性も汎用のノボラック型フェ
ノール樹脂に比べるとまだ劣っているものの、フェノー
ルアラルキル樹脂に比べれば改善されている点に着目し
た。 【0019】そして、上記のフェノール系共縮合樹脂の
耐熱性、耐水性等の物性上の長所を保持しながら硬化性
を改良すべく検討を重ねた結果、フェノール化合物と芳
香族アルデヒドとアラルキル化合物に加えてホルムアル
デヒドを共縮合させ、このホルムアルデヒドの反応時に
ハイオルト型ノボラックの製造に適した触媒および/ま
たは反応条件を採用すると、フェノールアラルキル樹脂
に匹敵する優れた耐熱性を示し、かつ硬化性が著しく改
善されたフェノール系樹脂が得られることを見出した。 【0020】また、このフェノール系樹脂に硬化剤と黒
鉛および/またはフッ素樹脂からなる固体潤滑剤粉末と
を配合した成形材料は、成形性が汎用のフェノール樹脂
を用いた摺動部品と同等と優れている上、これから成形
により得られた摺動部品が高負荷 (荷重・速度) 条件下
でも低摩擦係数、耐摩耗を保持し、かつ耐熱性、耐水
性、耐アルカリ性も十分に高いことが判明した。その結
果、フェノール系樹脂からなる摺動部品の荷重と速度の
限界が著しく広がり、かつ使用環境の制限も大幅に改善
され、従来はポリイミド樹脂等の高価な耐熱性樹脂でし
か実現できなかった高負荷条件下或いは高温下でも使用
可能な摺動部品が、フェノール系樹脂により実現可能と
なり、その低価格化が可能となることが判明した。 【0021】本発明はかかる知見に基づいて完成したも
のであって、下記のフェノール系耐熱樹脂を用いた
記の成形材料を要旨とする。フェノール化合物から
誘導されたフェノール成分(A)に、それぞれ式(1)で
表されるキシリレン成分(B)、式(2) で表されるフェ
ニルメチン成分(C)、および式(3) で表されるメチレ
ン成分(D)が結合した反復単位:−(B−A)−、−
(C−A)−および−(D−A)−からなり、[(B)+
(C)+(D)]/ (A) のモル比が 0.4〜0.95の範囲
内、(D)/[(B)+(C)+(D)]のモル比が 0.1〜
0.9 の範囲内であり、フェノール成分(A)に対するメ
チレン成分(D)の結合位置が、フェノール核の水酸基
に対するオルト位/パラ位の比率で45/55以上であり、
かつ数平均分子量 500〜5000であることを特徴とするフ
ェノール系耐熱樹脂。 【0022】 【化2】【0023】上記式中、R1 はメチル基またはエチル基
であり、aは0、1または2であり、Arはフェニル基
もしくは2〜3環の多環芳香族基であって、Arの各芳
香核の1〜2個の水素原子が炭素数1〜4のアルキル
基、ハロゲン基および水酸基から選ばれた置換基で置換
されていてもよい。 【0024】上記記載のフェノール系樹脂中に、硬
化剤と、黒鉛およびフッ素樹脂から選ばれた固体潤滑剤
の粉末とを含有することを特徴とする、摺動部品用熱硬
化性成形材料。 【0025】 【発明の実施の形態】本発明のフェノール系樹脂は、フ
ェノール化合物から誘導された2価のフェノール成分
(A) が、3種類の2価成分、即ち、式(1) のキシリレ
ン成分 (B) 、式(2) のフェニルメチン成分 (C)(より
正確にはアリールメチン成分) 、及び式(3) のメチレン
成分 (D) のそれぞれと縮合結合した反復単位を構成単
位とする共重合体 (共縮合体) である。この共重合体の
代表的な構造は、次の式(4) で示される。 【0026】 【化3】 【0027】上記式中、両末端はフェノール成分 (A)
からなり、m、n、p、qは互いに独立して正の整数を
表す。この共重合体の共重合様式は、ブロック共重合、
ランダム共重合、交互共重合のいずれか1つでもよく、
またこれらの組合わせからなるものでもよい。式(4)で
示される共重合体は、ランダム共重合体や交互共重合体
を多く含むものが好ましい。 【0028】また、式(4) で示される構造の共重合体以
外に、次の式 (5)〜(10)で示される重合体または共重合
体の1種または2種以上を含んでいてもよい。 【0029】 【化4】 【0030】上記式中、m1〜m3、n1〜n3、p1〜p3、q1
q3は、互いに独立して正の整数である。但し、式 (5)〜
(10)で示される重合体または共重合体は、式(4) で示さ
れる共重合体に比べて、耐熱性、耐水性、耐アルカリ
性、硬化性といった特性の少なくとも1つに劣るため、
その割合がなるべく少ない方が好ましい。 【0031】[(B)+(C)+(D)]/ (A) のモル比
は 0.4〜0.95の範囲内とする。このモル比は分子量に直
結し、軟化点、溶融粘度等を決めるので、目的とする用
途に応じて望ましい軟化点、溶融粘度が得られるように
選択すればよい。このモル比は、好ましくは 0.5〜0.9
、より好ましくは 0.7〜0.9 の範囲内である。 【0032】上記のモル比で反応させると、一般に数平
均分子量が 500〜5000のフェノール系樹脂が得られる。
数平均分子量は好ましくは 800〜3500、より好ましくは
1300〜2500である。 【0033】(D)/[(B)+(C)+(D)]のモル比
は 0.1〜0.9 の範囲内とする。このモル比が大きいほど
硬化性が上昇するものの、耐熱性等の硬化物の物性は低
下傾向となる。従って、要求される硬化性と耐熱性等の
物性に応じて、その値を決めるとよい。このモル比は好
ましくは 0.2〜0.7 、より好ましくは 0.2〜0.5 の範囲
内である。 【0034】上記(4) 式で示される構造を主とする本発
明のフェノール系耐熱樹脂は、芳香族アルデヒドとフェ
ノール化合物とが結合してできる、−A−C−A−で示
されるトリフェニルメチン構造 (より広義にはトリアリ
ールメチン成分) が、加熱時の剛直性を引き上げるた
め、フェノールアラルキル樹脂[(A−B) のみを反復単
位とする樹脂] より硬化性が極めて高い。しかも、この
トリフェニルメチン構造と、 (A−B) で示されるキシ
リレン結合を含む構造とが共存しているため、耐熱性、
耐水性、耐アルカリ性といった物性にも優れている。 【0035】さらに、共重合構造の中に (A−D) で示
される架橋密度の高い反復単位を導入することで、耐熱
性等の物性上の長所を実質的に保持しながら、架橋密度
が向上し、ヘキサメチレンテトラミン等の硬化剤を加え
て熱硬化させた時の硬化速度(硬化性) が著しく改善さ
れる。架橋密度を高める目的で、単にフェノール−ホル
ムアルデヒド樹脂 (フェノール樹脂) をブレンドするこ
とも考えられるが、ブレンドによる方法では、硬化性は
改善できても、耐熱性等の物性が著しく低下する。 【0036】この (D−A) で示される反復単位の結合
位置は、フェノール核の水酸基に対するオルト位/パラ
位の比率が45/55以上となるハイオルト型である。フェ
ノール成分 (A) とメチレン成分 (D) の結合は、A−
D−Aの結合様式で示して、次の式(11)〜(13)に示すよ
うに、メチレン成分が両隣のフェノールの水酸基に対し
てo,o'−結合、o,p'−結合、p,p'−結合のいずれかにな
り、その結合割合はNMRチャートの各結合に帰属する
ピークの面積から求められる。 【0037】 【化5】 【0038】これらのピークは、対応するB−A−B部
分に帰属するピークと完全には分離していないため、ピ
ークのショルダー部分を除外したピーク面積を対象とす
る。o,p'−結合のピークについては、一方がオルト位で
の結合、他方がパラ位での結合であるため、その面積の
半分づつをo,o'−結合とp,p'−結合のピークに加算し
て、オルト位とパラ位の面積を求め、その面積比 (合計
100)をオルト比/パラ位の比率とする。 【0039】メチレン成分(D)のオルト位結合割合が
高いハイオルト型のフェノール系樹脂では、フェノール
核の水酸基に対するパラ位が未反応で残る比率が高くな
っている。このパラ位の方がオルト位より反応性が高い
ため、硬化剤と速く反応することができるので、パラ位
が未反応で多く残っているハイオルト型は硬化性に優れ
ている。本発明のフェノール系樹脂の場合、上記のオル
ト位/パラ位の比率が45/55を下回ると、硬化性が低下
する。 【0040】本発明のフェノール系樹脂は、次の(a) 、
(b) 、または(c) の方法により製造することができる。 (a) フェノール化合物に酸触媒の存在下、キシリレング
リコールもしくはその反応性誘導体ならびに芳香族アル
デヒドを反応させた後、反応混合物を中和してから、2
価金属の塩、水酸化物および酸化物、ならびに3価金属
の酸化物よりなる群から選ばれた触媒の存在下、ホルム
アルデヒドもしくはその誘導体を反応させる方法。 【0041】(b) フェノール化合物に2価金属の塩、水
酸化物および酸化物、ならびに3価金属の酸化物よりな
る群から選ばれた触媒の存在下、ホルムアルデヒドもし
くはその誘導体を反応させた後、反応混合物を酸触媒の
存在下、キシリレングリコールもしくはその反応性誘導
体ならびに芳香族アルデヒドを反応させる方法。 【0042】(c) 上記(a) および(b) の方法において、
ホルムアルデヒドもしくはその誘導体を反応させる際の
触媒を、有機酸および無機酸から選ばれた1種もしくは
2種以上の酸に代え、反応液のpHを2以下にし、反応
温度を110 ℃以上にして反応させる方法。 【0043】フェノール成分 (A) の原料であるフェノ
ール化合物は、1個または複数個のフェノール性水酸基
を有する芳香族化合物である。その具体例としては、フ
ェノール、p−クレゾール、o−クレゾール、m−クレ
ゾール、p−エチルフェノール、o−エチルフェノー
ル、p−イソプロピルフェノール、p−n−プロピルフ
ェノール、p−secブチルフェノール、o−sec−ブチル
フェノール、p−tert−ブチルフェノール、o−tert−
ブチルフェノール、p−tert−アミルフェノール、p−
tert−オクチルフェノール、ノニルフェノール、ドデシ
ルフェノール、p−シクロヘキシルフェノール、o−フ
ェニルフェノール、p−フェニルフェノール、p−クミ
ルフェノール、p−α−メチルベンジルフェノール、p
−クロロフェノール、p−ブロモフェノール、α−ナフ
トール、β−ナフトール、レゾルシン、カテコール、ハ
イドロキノン、ピロガロール、フロログルシノール、p
−アミノフェノール、m−アミノフェノール等が挙げら
れるが、これらに限定されるものではない。好ましいフ
ェノール化合物はフェノールである。 【0044】キシリレン成分 (B) の原料であるキシリ
レングリコールまたはその反応性誘導体 (以下、「キシ
リレン化合物」という) は、下記の式(14)で示される化
合物である。 【0045】 【化6】 【0046】式中、R1 はメチル基またはエチル基、a
は0、1又は2であり、Xは同一でも異なっていてもよ
く、それぞれ−OH (水酸基) 、ハロゲン原子、−OR
または−OCORであり、Rはアルキル基、好ましくは
は炭素数4以下のアルキル基である。 【0047】キシリレン化合物の具体例としては、キシ
リレングリコール、キシリレングリコールジメチルエー
テル、キシリレングリコールモノメチルエーテル、キシ
リレングリコールジエチルエーテル、キシリレングリコ
ールジアセトキシエステル、キシリレングリコールジプ
ロピオキシエステル、キシリレンジクロライド、キシリ
レンジブロマイド、ならびにこれらのモノメチルキシリ
レン、モノエチルキシリレン、ジメチルキシリレン、お
よびジエチルキシリレン誘導体 (例えば、モノメチルキ
シリレングリコールおよびそのジメチルエーテル等) な
どが挙げられるが、これらに限定されるものではない。
このうち、キシリレングリコール、キシリレングリコー
ルジメチルエーテル、キシリレンジクロライドが好まし
い。 【0048】フェニルメチン成分 (C) の原料である芳
香族アルデヒドは、芳香環に直接結合した1個のアルデ
ヒド基を有する芳香族化合物である。その具体例として
は、ベンズアルデヒド、メチルベンズアルデヒド、ジメ
チルベンズアルデヒド、ハロゲン化ベンズアルデヒド、
ヒドロキシベンズアルデヒド、フェニルベンズアルデヒ
ド、ナフトアルデヒドなどが挙げられるが、これらに限
定されるものではない。好ましくはベンズアルデヒドで
ある。 【0049】メチレン成分 (D) の原料であるホルムア
ルデヒドまたはその誘導体としては、ホルムアルデヒ
ド、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、環状ホルマ
ール、ヘキサメチレンテトラミン、ブチルヘミホルマー
ル等が挙げられるが、これらに限定されるものではな
い。このうち、ホルムアルデヒド、パラホルムアルデヒ
ドが好適である。ホルムアルデヒドは、その水溶液であ
るホルマリンとして使用するのが簡便である。以下、ホ
ルムアルデヒドまたはその誘導体を、単にホルムアルデ
ヒドという。 【0050】酸触媒は、リン酸、硫酸、塩酸等の無機
酸、ならびにシュウ酸、蟻酸、マロン酸、安息香酸、ベ
ンゼンスルホン酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホ
ン酸、トリフルオロメタンスルホン酸等の有機酸のいず
れでもよい。これらの酸は、上記(a) および(b) の方法
における酸触媒、ならびに上記(c) の方法における酸触
媒のいずれとしても使用できる。 【0051】フェノール化合物とキシリレン化合物およ
び芳香族アルデヒドとの重縮合反応は酸触媒の存在下で
行う。但し、キシリレン化合物がジハロゲン化物 (例、
キシリレンジクロライド) である場合には、フェノール
化合物とキシリレン化合物との重縮合反応で発生したハ
ロゲン化水素が酸触媒として機能するため、これをフェ
ノール化合物またはフェノール化合物とホルムアルデヒ
ドとの反応混合物と反応させる際に、無触媒でも重縮合
反応が進行する。 【0052】ホルムアルデヒドとフェノール化合物との
重縮合反応は、ハイオルト型の構造を生じさせるため
に、金属化合物を触媒として使用して反応を行うか、或
いは酸触媒を使用して、反応液のpHを2以下にし、11
0 ℃以上の反応温度で反応を行う。 【0053】金属化合物触媒は、2価金属の塩、水酸化
物および酸化物、ならびに3価金属の酸化物よりなる群
から選ばれる。金属化合物触媒として有用な2価金属塩
は、Mg、Ca、Cd、Pb、Co、Ni、Zn等の2価イオンの無機
酸塩または有機酸塩 (例、低級カルボン酸塩、シュウ酸
塩等) である。具体例としては、酢酸亜鉛、酢酸コバル
ト、塩化カルシウム等が挙げられる。金属化合物触媒と
して使用できる2価または3価金属の酸化物の例は、M
g、Ca、Cd、Pb、Co、Ni、Al、B等の金属の酸化物であ
り、2価金属水酸化物の例は、Mg、Ca、Sr、Baの水酸化
物である。これらのうち特に好ましい金属化合物触媒
は、酢酸亜鉛、酢酸コバルト、酢酸マグネシウム、塩化
亜鉛、酸化マグネシウム、酸化カルシウムである。 【0054】以上に説明した各重縮合原料および触媒
は、いずれも1種または2種以上を使用することができ
る。また、これらは純品である必要はなく、本発明で利
用する反応または生成物に著しい悪影響を及ぼさない限
り、その合成反応で生成した副生物を含有していてもよ
い。 【0055】製造方法(a) は、フェノール化合物に芳香
族アルデヒドおよびキシリレン化合物を酸触媒の存在下
で反応させる第1工程と、第1工程で得られた反応混合
物を中和して酸触媒を不活性化した後、この反応混合物
に金属化合物触媒を用いてホルムアルデヒドを反応させ
る第2工程とに分かれる。 【0056】第1工程は、フェノール化合物と芳香族ア
ルデヒドとキシリレン化合物とを一括して反応釜に仕込
み、酸触媒を添加し、適度な温度で反応させることによ
り実施できる。或いは、芳香族アルデヒドとキシリレン
化合物の両者またはいずれかの一部をフェノール化合物
と共に反応釜に仕込み、酸触媒を添加し、適度な温度で
反応させた後、芳香族アルデヒドおよびキシリレン化合
物の残りを連続的ないし分割して添加し、反応を進めて
もよい。 【0057】芳香族アルデヒドとキシリレン化合物とを
完全に分割して添加し、順に反応させることもできる
が、好ましい共重合体であるランダム共重合体や交互共
重合体の割合が少なくなる。従って、フェノール化合物
に芳香族アルデヒドとキシリレン化合物の両方を一度に
または少しづつ一緒に添加して反応させるか、または分
割添加する場合でも、これらが少なくとも一部は同時に
フェノール化合物と反応するように、一部をフェノール
化合物に同時添加することが好ましい。 【0058】但し、キシリレン化合物がジハロゲン化物
(例、キシリレンジクロライド) である場合には、まず
フェノール化合物に無触媒でキシリレンジハロゲン化物
を反応させてから、酸触媒を加えて芳香族アルデヒドを
反応させることもできる。 【0059】この第1工程の反応温度は、50〜200 ℃、
好ましくは80〜180 ℃である。反応温度は段階的に変化
させてもよく、また分割添加の場合には添加ごとに反応
温度を変えてもよい。この反応は芳香族アルデヒドとキ
シリレン化合物がほぼ完全に反応するまで行うことが好
ましい。 【0060】得られた反応混合物を中和する。この中和
は、例えば、反応釜に適当な塩基をそのまま又は溶液状
で添加することにより実施できる。塩基としては、エタ
ノールアミン、メチルアミン類、エチルアミン類、プロ
ピルアミン類、ベンジルアミン類、DBU (1,8-ジアザ
ビシクロ[5.4.0]-7-ウンデセン) 、イミダゾール類など
の比較的高沸点の有機アミンが好ましいが、無機塩基
(アルカリ) も使用できる。 【0061】第2工程は、中和した第1工程の反応混合
物を第1工程と同じ反応釜に入れたまま、或いは別の反
応釜に移してから、ホルムアルデヒドと金属化合物触媒
を加えて加熱することにより実施できる。ホルムアルデ
ヒドは、全量を一度に加えてもよく、或いは分割または
連続的に添加してもよい。反応時のpHは4〜8の範囲
がよい。反応温度は50〜200 ℃であるが、比較的高い反
応温度 (例、100 ℃以上) で反応を行うことが好まし
い。 【0062】第1工程と第2工程のいずれも、重縮合反
応の副生物を系外に除去しながら反応を行うことが好ま
しいが、反応段階の一部においては還流下で反応を行っ
てもよい。各工程と反応は無溶媒でも進行する。金属化
合物触媒を用いる第2工程も、この金属化合物が酸性物
質であるフェノールと一旦反応して塩を形成する (さら
にキレート化が起こると考えられている) ので、溶媒が
なくても反応は進行する。但し、反応に不活性な溶媒
(例、水、アルコール、ケトン等) を使用してもよい。
例えば、原料の一部が反応温度では融解しない場合に
は、溶媒を使用することが好ましい。 【0063】重縮合反応の終了後、反応混合物から未反
応フェノールを蒸留により除去することが好ましい。必
要であれば、溶媒も同時に除去する。また、触媒も中
和、濾過、水洗等を適宜組合わせるか、或いは揮発性酸
触媒を用いて反応後に蒸発させることにより、生成した
樹脂から除去してもよい(例えば、樹脂を高絶縁性が要
求される用途に使用する場合)。本発明のフェノール系
樹脂は、反応釜から取り出した後、冷却前に造粒する
か、冷却後に粉砕して製品化することができる。 【0064】製造方法(b) は、フェノール化合物に金属
化合物触媒を用いてホルムアルデヒドと反応させる第1
工程と、得られた反応混合物に芳香族アルデヒドおよび
キシリレン化合物を酸触媒の存在下で反応させる第2工
程とに分かれる。 【0065】第1工程は、フェノール化合物とホルムア
ルデヒドとを反応釜に仕込み、2価の金属塩を触媒とし
て加え、加熱することにより実施できる。ホルムアルデ
ヒドは全量を一度に仕込んでも、或いは分割または連続
的に添加してもよい。この反応は、4〜8の範囲内のp
Hで、比較的高い反応温度 (好ましくは100 ℃以上)で
行い、ホルムアルデヒドがほぼ完全に反応し終わるまで
反応を進めることが好ましい。反応後、2価金属塩触媒
はそのまま反応生成物中に残しておいても、或いは中
和、水洗等により除去してもよい。 【0066】第2工程では、第1工程の生成物を入れた
反応釜 (第1工程と同じものでも、別の反応釜でもよ
い) に、芳香族アルデヒドとキシリレン化合物を加え、
酸触媒も加えて適度な温度で反応させる。芳香族アルデ
ヒドとキシリレン化合物の添加は、両者の全量を一度に
加えてもよく、或いは両者または一方の一部を添加して
反応させた後、その残りを連続的ないしは分割添加し、
反応を進めてもよい。 【0067】この場合にも、芳香族アルデヒドとキシリ
レン化合物とを完全に分割して添加し、別個に反応させ
ることもできるが、好ましい共重合体であるランダム共
重合体や交互共重合体の割合が少なくなる。従って、第
1工程の生成物に芳香族アルデヒドとキシリレン化合物
を一括反応させるか、またはその両者を完全には分割せ
ずに、芳香族アルデヒドとキシリレン化合物が少なくと
も部分的には同時に反応するようにすることが好まし
い。 【0068】但し、キシリレン化合物がジハロゲン化物
(例、キシリレンジクロライド) である場合には、第1
工程で得られた反応混合物に無触媒でまずキシリレンジ
ハロゲン化物を反応させた後、酸触媒を加えて、芳香族
アルデヒドを反応させることもできる。 【0069】反応温度は、方法(a) と同じく、第1工程
および第2工程とも50〜200 ℃、好ましくは80〜180 ℃
である。副生物の扱いや溶媒の使用は、方法(a) と同様
でよい。第2工程の終了後に得られる反応生成物は、方
法(a) の反応生成物と同様に処理すればよい。 【0070】製造方法(c) は、基本的には方法(a) また
は(b) と同様に第1工程および第2工程を行うが、方法
(a) の第2工程または方法(b) の第1工程を、金属化合
物触媒の代わりに、酸触媒の存在下で行い、その際の反
応液のpHを2以下とし、反応温度を110 ℃以上とす
る。その他の反応条件は、方法(a) または(b) と同様で
よい。また、この方法では、第1工程と第2工程のいず
れもが酸触媒の存在下で行われるので、両反応間での中
和は必要ない。 【0071】上に説明した製造方法(a) 〜(c) におい
て、各原料の使用割合は、それから誘導される各成分の
割合が、[(B)+(C)+(D)]/ (A) のモル比が
0.4〜0.95の範囲内、かつ(D)/[(B)+(C)+
(D)]のモル比が 0.1〜0.9 の範囲内、を満たすように
選択する。最初の式からわかるように、フェノール化合
物を他成分の合計に対して過剰に使用する。 【0072】方法(a) の第1工程または方法(b) の第2
工程に用いる酸触媒の量は、酸強度、用いる主原料の反
応性によって異なるので、実験により適当な量を設定す
ればよい。フェノール化合物がフェノール、キシリレン
化合物がp−キシリレングリコールジメチルエーテル、
芳香族アルデヒドがベンズアルデヒド、ホルムアルデヒ
ドがホルマリン、酸触媒がp−トルエンスルホン酸の場
合で、酸触媒の使用量は、全原料仕込み量に対して 0.1
〜1.0 重量%の範囲が適当である。 【0073】方法(a) の第2工程または方法(b) の第1
工程に用いる金属化合物触媒の使用量は、フェノール化
合物の仕込み量の 0.1〜1.0 重量%範囲内が好ましい。
この工程において、方法(c) では酸触媒を使用するが、
この場合の酸触媒の使用量は、反応液のpHが2以下に
なるようにすればよい。 【0074】本発明のフェノール系樹脂は、汎用のノボ
ラック型フェノール樹脂と同様に、硬化剤 (架橋剤) を
添加して熱硬化性樹脂として用いることが好ましい。硬
化剤としてはヘキサメチレンテトラミンが好ましいが、
これ以外にもノボラック型フェノール樹脂に使用できる
ことが知られている各種の硬化剤が使用できる。そのよ
うな硬化剤の例には、レゾール型フェノール樹脂、エポ
キシ樹脂等の樹脂、ならびにパラホルムアルデヒド、ト
リオキサンなどがある。 【0075】硬化剤の添加量は、ヘキサメチレンテトラ
ミンの場合で、樹脂100 重量部に対して5〜20重量部が
適当である。また、汎用のノボラック型フェノール樹脂
と同様に、熱硬化助剤として酸化マグネシウム、炭酸カ
ルシウム等を用いることができ、その添加量は樹脂100
重量部に対して 0.1〜5重量部が適当である。 【0076】本発明のフェノール系樹脂は、他のフェノ
ール系樹脂、例えば、汎用のノボラック型フェノール樹
脂、またはフェノールアラルキル樹脂 (フェノール化合
物とキシリレン化合物との重縮合樹脂) もしくは特開平
6−184258号公報に記載のフェノール化合物/キシリレ
ン化合物/芳香族アルデヒドの共縮合樹脂といった、他
のフェノール系耐熱樹脂、と併用することができ、それ
により混合樹脂に、本発明のフェノール系樹脂の持つ優
れた特性、例えば、硬化性または耐熱性等の物性の改善
が付与される。 【0077】本発明のフェノール系樹脂は、通常のフェ
ノール樹脂と同様の用途に使用できる。例えば、硬化剤
を加えた本発明のフェノール系樹脂に、ガラス繊維、炭
素繊維、アラミド繊維、セルロース繊維等の繊維質補強
材、ならびにガラス、木粉、炭酸カルシウム、マイカ、
シリカ等の粉末状充填材から選んだ1種もしくは2種以
上の材料を添加して、複合成形材料として用いることが
できる。また、基材として、紙、綿布、ガラス繊維のマ
ットもしくは織布、合成繊維の織布または不織布等を用
い、本発明のフェノール系樹脂 (硬化剤添加) を単独ま
たは有機溶剤でワニス化したものでプリプレグを作り、
積層材料として用いることもできる。 【0078】このような成形材料や積層材料は、フェノ
ール樹脂を用いた場合より、耐熱性、耐水性、耐アルカ
リ性などの物性に優れ、絶縁性も良好であるので、機械
部品ならびに電子・電気部品として高範囲の用途に利用
できる。 【0079】本発明のフェノール系樹脂は、ブレーキパ
ッド、ブレーキライニング等の摩擦材や砥石等の研磨
材、さらには鋳物用、耐火物等において、バインダーと
して用いることができる。また、塗料、接着剤、絶縁ワ
ニスなどにも使用できる。 【0080】本発明のフェノール系樹脂は、ヘキサメチ
レンテトラミン等の硬化剤を加え、熱硬化させた後、高
温に加熱して炭化すると、ガラス状炭素になるので、各
種の炭素材料用として利用できる。また、炭素繊維等の
炭素材料と複合化した後、炭化ないし黒鉛化することに
よりC−Cコンポジットの製造にも利用できる。 【0081】さらに、本発明のフェノール系樹脂は、エ
ポキシ樹脂の硬化剤として用いることができ、プリント
基板、ICパッケージ等の電子部品封止剤といった電子
材料用途にも利用できる。この場合には、テトラメチレ
ンヘキサミン等の硬化剤は必要ない。また、塗料、接着
剤、絶縁ワニスなどにも使用できる。 【0082】本発明のフェノール系樹脂は、ヘキサメチ
レンテトラミン等の硬化剤を加えて熱硬化性樹脂とした
場合には、次に述べるような特長を示す。 【0083】(1) 同じ温度での硬化性 (速度と硬化度)
が、汎用ノボラック型フェノール樹脂の平均的な値と同
等であり、硬化性に優れている。 【0084】(2) 耐熱性、耐水性、耐アルカリ性等の物
性は、汎用ノボラック型フェノール樹脂を大幅に上回
り、フェノールアラルキル樹脂 (フェノール/キシリレ
ン化合物の重縮合物) やフェノール/芳香族アルデヒド
/キシリレン化合物の共縮合樹脂といった、他のフェノ
ール系耐熱樹脂と同等になる。 【0085】(3) 上記の他のフェノール系耐熱樹脂は、
比較的高価なキシリレン化合物を多く使用するために、
樹脂価格が高くなり、用途に制限があるが、本発明の樹
脂は安価なホルムアルデヒドを使用するため、比較的高
価なキシリレン化合物の使用量が少なくてすみ、比較的
安価な原料コストで樹脂を製造できる。 【0086】(4) 以上の総合的な結果として、汎用のフ
ェノール樹脂に近い樹脂価格と汎用のフェノール樹脂と
同等の硬化性を有し、かつ汎用のフェノール樹脂より耐
熱性、耐水性、耐アルカリ性が著しく優れたフェノール
系樹脂が本発明により提供できる。 【0087】本発明のフェノール系耐熱樹脂の用途上の
利点を次に例示する。 (A) 成形材料、積層材料にあっては、耐熱性、耐水性、
耐アルカリ性等が汎用のフェノール樹脂より顕著に優れ
ながら、汎用のフェノール樹脂を用いた場合と同様の配
合組成や処理条件で成形材料、積層材料が製造できる。
また、汎用のフェノール樹脂を用いた場合と同等の成形
加工条件を採用して、成形品や積層品が生産できる。即
ち、他のフェノール系耐熱樹脂を使用する場合には必要
であった、配合処理時や成形加工時の特別な工夫や制限
が不要となり、既に設置されているフェノール樹脂用の
設備をそのままほぼ同じ条件で利用できるため、生産性
のよいフェノール系耐熱樹脂として極めて有用である。 【0088】(B) ブレーキパッド、ブレーキライニング
等の摩擦材のバインダーに用いると、汎用のフェノール
樹脂やその変性品と同等の配合処方や成形加工条件を採
用して生産性、耐熱性、耐湿性に優れた摩擦材が得ら
れ、極めて有用である。 【0089】(C) エポキシ樹脂の硬化剤として電子部品
封止材やプリント基板等の電子材料に利用した場合、低
吸水率で、かつ適当な高さのガラス転移温度や熱時弾性
率を有し、硬化性が高いといった有益な特徴がある。 【0090】本発明のフェノール系樹脂に、硬化剤に加
えて、黒鉛およびフッ素樹脂から選ばれた固体潤滑剤粉
末を配合した成形材料からは、高負荷ないし高温条件下
での摺動特性に優れた摺動部品を成形性よく (短い硬化
時間で、かつ気泡や膨れを発生せずに) 製造することが
できる。この摺動部品は、高荷重、高速、高温下で使用
される軸受けやローラ等として利用でき、従来の金属製
の摺動部品の代替品となる。また、この摺動部品は耐水
性や耐アルカリ性にも優れているので、高湿・高温条件
下やアルカリ性雰囲気下でも使用可能である。 【0091】従来の金属製の摺動部品は、本体がプラス
チック製の場合には組立てが複雑になったり、耐食性が
悪いためメッキ等の表面処理が必要になるが、上記の摺
動部品ではこれらの難点が解消される。また、本発明の
フェノール系樹脂は比較的安価であり、スーパーエンプ
ラを用いた摺動部品に比べて大幅なコスト削減が可能で
ある。 【0092】黒鉛粉末は、人造黒鉛、天然黒鉛、キッシ
ュ黒鉛、電極屑などのいずれも利用できる。結晶性や粒
度にも特に制限はないが、不定形の土状黒鉛より、鱗片
状黒鉛の方が好ましい。 【0093】フッ素樹脂としては、四フッ化エチレン樹
脂、パーフルオロアルコキシ樹脂、四フッ化エチレン/
六フッ化プロピレン共重合樹脂、四フッ化エチレン/エ
チレン共重合樹脂、フッ化ビニリデン樹脂、三フッ化塩
化エチレン樹脂等が例示される。このうち、四フッ化エ
チレン樹脂が好ましい。粒径は特に制限されないが、2
〜100 μm程度が適当である。 【0094】摺動特性、硬化性、耐熱性、耐薬品性等の
特性を損なわない限り、この成形材料には各種の添加剤
を1種もしくは2種以上配合することができる。このよ
うな添加剤の例としては、充填材、繊維状強化材、滑
剤、着色剤、硬化助剤 (例、消石灰) 、黒鉛とフッ素樹
脂以外の潤滑剤 (例、二硫化モリブデン) などが挙げら
れる。 【0095】固体潤滑剤の配合量は特に制限されない
が、一般に成形材料の5〜80重量%、好ましくは10〜70
重量%となる量で固体潤滑剤を配合する。固体潤滑剤
は、黒鉛とフッ素樹脂のいずれか一方でも、両者を併用
してもよい。硬化剤の配合量は、前述したように硬化剤
の種類により異なり、硬化剤がヘキサメチレンテトラミ
ンの場合でフェノール系樹脂100 重量部に対して5〜20
重量部が適当である。 【0096】成形材料は、例えば、ペレット状のフェノ
ール系樹脂に固体潤滑剤粉末を硬化剤および所望により
他の添加剤と一緒に加え、ミキサー等で予め乾式混合し
た後、ロール、ニーダー、押出機等の適当な加熱混練装
置で樹脂の軟化状態または溶融状態で混練することによ
り製造することができる。 【0097】この成形材料の成形は、目的とする摺動部
品の形状に応じて、圧縮成形、トランスファー成形、射
出成形などの慣用の成形方法から適当な方法を選択して
実施すればよい。成形温度は約 120〜250 ℃であり、成
形温度に応じて数十秒から数時間温度を保持することに
より、フェノール系樹脂が不溶不融性の熱硬化物とな
り、摺動部品が得られる。必要に応じて、成形・熱硬化
後にポストキュア (後硬化) を施すことで、摺動部品の
寸法安定性や耐熱性をさらに向上させることが可能であ
る。ポストキュア条件は、通常は 150〜300 ℃で1〜40
時間である。 【0098】 【実施例】次に実施例により本発明をさらに具体的に説
明するが、本発明はこれらの実施例に制限されるもので
はないことは当然である。実施例中、部および%は、特
に指定しない限り重量部および重量%である。 【0099】実施例中、[(B)+(C)+(D)]/
(A) のモル比を「架橋成分モル比」、(D)/[(B)
+(C)+(D)]のモル比を [D成分モル比」とそれぞ
れ表記する。これらのモル比は、原料仕込み時の各原料
の使用量、反応後の未反応原料の量、および樹脂収量か
ら算出した値である。こうして求めた計算値は、H-NM
R分析およびIR分析の分析値とほぼ一致することが確
認されている。 【0100】フェノール成分(A)のフェノール核の水
酸基に対するメチレン成分(D)の結合位置におけるオ
ルト位/パラ位の比率は、得られた樹脂の重クロロホル
ム溶媒を用いて測定したプロトンNMRチャートにおけ
る、A−D−A部分のo,o'−結合、o,p'−結合、p,p'−
結合にそれぞれ帰属するピークの面積から求めた。前述
した理由で、ピーク面積はショルダー部分を除外して測
定した。これらのピーク面積からオルト位/パラ位の比
率 (o/p比) を次式により算出した。 【0101】 【数1】 【0102】また、実施例で合成したフェノール系樹脂
の数平均分子量は、島津製作所製のGPC分析装置 (カ
ラムKF-802+KF-804、カラム層:CTO-6A、検出器:示差
屈折計 RID−6A、標準物質:ポリスチレン、溶媒:THF)
で測定した値である。 【0103】(実施例1)方法(a) による本発明の樹脂の合成 攪拌装置、温度計、冷却器およびN2 ガス導入管を備え
た四つ口フラスコに、フェノール 561.1部、ベンズアル
デヒド 120.2部、p−キシリレングリコールジメチルエ
ーテル 277.5部、酸触媒のp−トルエンスルホン酸 (1
水和物) 3部を仕込み、攪拌下N2 ガスを流しながら80
〜140 ℃に3時間加熱して反応させた。反応中、副生す
る水とメタノールを系外に除去した。 【0104】その後、反応混合物をジエチルアミン水溶
液で中和し、次いで37%ホルムアルデヒド水溶液 111.4
部と金属化合物触媒の酢酸亜鉛2.0 部を加え、還流下で
2時間反応させた後、脱水しながら3時間で150 ℃まで
昇温し、この温度に30分間保持してさらに反応させた。
その後、減圧して未反応フェノールを除去し、遊離フェ
ノール2%のフェノール系樹脂を得た。 【0105】この樹脂の架橋成分モル比は0.87、(D)
成分モル比は0.33、(A)成分のフェノール核水酸基に
対する(D)成分の結合位置のオルト/パラ比率 (o/
p比) は48/52、数平均分子量は2100であった。参考の
ために、このフェノール系樹脂のNMRチャートの部分
拡大図を図1に示す。図中にA−D−A部分のo,o'−結
合、o,p'−結合、およびp,p'−結合に帰属するピークを
それぞれD(o,o'-) 、D(o,p'-) 、および' D(p,p'-)
として示し、A−B結合のo−結合およびp−結合に帰
属するピークをそれぞれB(o-)およびB(p-)として示
す。 【0106】(実施例2)方法(b) による本発明の樹脂の合成 実施例1と同じ反応装置に、フェノール 597.2部、37%
ホルムアルデヒド水溶液 154.6部、金属化合物触媒の酢
酸亜鉛2.0 部を仕込み、攪拌下N2 ガスを流しながら還
流下で2時間反応させた後、脱水しながら3時間で150
℃まで昇温させ、この温度に30分間保持してさらに反応
させた。この反応混合物にベンズアルデヒド 134.7部、
p−キシリレングリコールジメチルエーテル 210.9部、
p−トルエンスルホン酸 (1水和物) 3.0 部を仕込み、
反応で副生する水とメタノールを系外に除去しながら 1
00〜140 ℃で3時間反応させた。さらにジエタノールア
ミンで反応生成物を中和した後、未反応フェノールを減
圧除去し、遊離フェノール2%のフェノール系樹脂を得
た。 【0107】この樹脂の架橋成分モル比は0.85、(D)
成分モル比は0.43、(A)成分のフェノール核水酸基に
対する(D)成分の結合位置のo/p比は57/43、数平
均分子量は2200であった。 【0108】(実施例3)方法(c) による本発明の樹脂の合成 実施例1と同じ反応装置に、フェノール 561.1部、ベン
ズアルデヒド 120.2部、p−キシリレングリコールジメ
チルエーテル 277.5部、p−トルエンスルホン酸 (1水
和物) 3.0 部を仕込み、実施例1と同様の反応条件で反
応させた。その後、反応混合物のpHを測定してpH=
0.5 であることを確認した後、温度を80℃程度に下げ、
37%ホルムアルデヒド水溶液 111.4部を1部/分の割合
で添加しながら還流下で1時間反応させた後、更に還流
下120 ℃で1時間反応させた。引続き、100 Torrで160
℃まで昇温させ、更に160 ℃で1時間反応させた。その
後、20 Torr まで減圧し、遊離フェノール2.5 %のフェ
ノール系樹脂を得た。 【0109】この樹脂の架橋成分モル比は0.87、(D)
成分モル比は0.32、(A)成分のフェノール核水酸基に
対する(D)成分の結合位置のo/p比は55/45、数平
均分子量は2250であった。 【0110】(比較例1)実施例1と同じ反応装置に、
フェノール 561.1部、ベンズアルデヒド 120.2部、p −
キシリレングリコールジメチルエーテル 277.5部、37%
ホルムアルデヒド水溶液 (ホルマリン) 111.4 部、酸触
媒のp−トルエンスルホン酸 (1水和物)3.0 部を仕込
み、80〜140 ℃に加熱し、反応で副生する水とメタノー
ルを系外に除去しながら4時間反応させた。その後、ジ
エタノールアミンで反応生成物を中和した後、減圧下で
未反応フェノールを除去し、遊離フェノール3%のフェ
ノール系樹脂を得た。 【0111】この樹脂の架橋成分モル比は0.85、(D)
成分モル比は0.32、(A)成分のフェノール核水酸基に
対する(D)成分の結合位置のo/p比は43/57、数平
均分子量は2000であった。参考のために、このフェノー
ル系樹脂のNMRチャートの部分拡大図を図2に示す。
図中の符号の意味は実施例1と同じである。 【0112】以上の実施例および比較例で得られた各樹
脂の硬化性と長期耐熱性を下記のようにして試験した。 (試験方法) (1) ゲル化時間 試験樹脂100 部にヘキサメチレンテトラミン15部を加
え、150 メッシュ以下に粉砕した後、JIS-K6910 に準じ
て、温度150 ℃と170 ℃でのゲル化時間を測定した。 【0113】(2) キュラストメータ硬化性 試験樹脂100 部にヘキサメチレンテトラミン15部を加
え、150 メッシュ以下に粉砕した後、3.5 gをキュラス
トメータ (オリエンテック社VSP 型) にセットし、170
℃、加重3.5 kgf/cm3 、振幅角度±1/4°で20分間のト
ルク変化をチャートにとり、最大トルク(kgf・cm) と最
大トルクの20%および80%にトルクが上昇する時のトル
ク上昇速度 (kg・cm/分) をチャートから求めた。最大
トルク (硬化度の目安) およびトルク上昇速度 (硬化速
度) で硬化性を評価した。 【0114】(3) 成形直後のバーコル硬度 試験樹脂100 部にヘキサメチレンテトラミン12部、ガラ
ス繊維80部、炭酸カルシウム80部、ステアリン酸亜鉛2
部を混合し、熱ロール上で混練して、一定の流れ性の成
形材料を試作した。 【0115】この成形材料を、トランスファー成形機に
て、金型温度175 ℃、硬化時間30秒および60秒の条件
で、長さ80mm、幅10mm、高さ4mmの平板を成形し、脱型
後10秒でのバーコル硬度 (JIS-K7060 、形式:GYZJ935)
を測定し、硬度値より成形性を評価した。この硬度が低
いと、脱型不良や脱型時の変形が発生し、良質の成形品
を作業性よく生産できない。 【0116】(4) 曲げ特性 (3) で作製した成形品を180 ℃に2時間、200 ℃で2時
間、230 ℃で2時間、さらに250 ℃で5時間加熱して、
後硬化させた。得られた硬化物の曲げ強度と曲げ弾性率
をJIS-K6911 に準じて測定した。 【0117】(5) 長期耐熱性 (3) で作製した成形品を、(4) の試験と同様に加熱して
後硬化させた後、温度250 ℃の空気中に1,000 時間放置
した。その後、試験片の重量の測定と上記(4)と同様の
曲げ試験を行い、重量保持率、曲げ強度保持率、曲げ弾
性率保持率を求めて、長期耐熱性を評価した。 【0118】試験結果を表1にまとめて示す。参考のた
めに市販フェノール樹脂 (フェノールホルムアルデヒド
樹脂、リグナイト社製ストレートノボラック) の測定値
も併せて示す。 【0119】 【表1】 【0120】表1から明らかなように、(A)〜(D)
の4成分の縮合物からなるフェノール系樹脂であって、
(A)成分のフェノール核水酸基に対する(D)成分の
結合位置のo/p比が45/55以上と高いハイオルト型の
実施例1〜3で合成した樹脂は、硬化性が良好で、特に
170 ℃以上ではゲル化時間、キュラストメータ、バーコ
ル硬度の各試験結果からわかるように、汎用フェノール
樹脂に匹敵する優れた硬化性を示す。 【0121】一方、汎用フェノール樹脂は長期耐熱性に
劣るが、本発明のフェノール系樹脂は長期耐熱性も十分
に良好である。しかし、同じ(A)〜(D)の4成分の
縮合物からなるフェノール系樹脂であっても、(A)成
分のフェノール核水酸基に対する(D)成分の結合位置
のo/p比が45/55より低い比較例1で合成した樹脂
は、長期耐熱性は実施例1〜3のハイオルト型のものと
遜色ないが、硬化性が十分ではなく、特にゲル化時間、
硬化速度、バーコル硬度が実施例1〜3に比べて劣って
いた。 【0122】(実施例4)実施例1で合成したフェノー
ル系樹脂(Aとする)に、鱗片状黒鉛粉末(LONZA社製:
KS-44)および/またはフッ素樹脂粉末 (ダイキン工業社
製: ルブロン、平均粒径7μm) を表2に示す割合(重
量部)で加え、さらに樹脂100 部当たり14部のヘキサメ
チレンテトラミンと場合により表2に示す量の硬化助剤
とを加えて、ミキサーで乾式混合した。この混合物を11
0 ℃に温度設定したロール混練機で4分間溶融混練し、
粉砕機で粉砕した後、造粒して、ペレット状の成形材料
を得た。 【0123】比較のために、表1に示した試験で使用
たのと同じ汎用フェノール樹脂 (フェノール樹脂、Bと
する) からも同様にして成形材料を調製した。 【0124】得られた各成形材料を、金型温度180 ℃、
成形圧力400 Kgf/cm2 の条件下で3分間の圧縮成形によ
り、外径25.6mm、内径20mm、高さ15mmの円筒状の成形品
を得た。この成形品を本発明のフェノール系樹脂の成形
材料では230 ℃で10時間、市販フェノール樹脂の成形材
料では180 ℃で8時間ポストキュアさせて、摺動部品を
得た。この摺動部品の摺動特性 (限界PV値、摩擦係数
および比摩耗量) を次のように試験した。試験結果も表
2に一緒に示す。 【0125】(1) 限界PV値 スラスト式摺動試験機によるリング・オン・リング摺動
試験法で、相手材S45Cに、滑り速度80cm/sec の条件下
で荷重を徐々に増加させて回転摩擦させ、焼き付きによ
り摩擦係数が急変する臨界点でのP (荷重) とV (滑り
速度) を測定し、それらの積を限界PV値(Kgf/cm2・cm
/sec) として求めた。 【0126】(2) 摩擦係数および比摩耗量 スラスト式摺動試験機によるリング・オン・リング摺動
試験法で、相手材S45Cに、滑り速度80cm/sec 、荷重5
Kgf 、雰囲気温度室温で、滑り距離が10 km になるまで
連続運転して回転摩擦させ、10分毎に摩擦力を測定する
と共に、運転終了時点での摩耗量を測定した。摩擦係数
(μ) は、摩擦力 (F) を荷重 (P) で除して求めた10
分毎の平均値である。比摩耗量 (×10-3mm3/Kgf・km)
は、運転開始時点から終了時点までの重量変化量を比重
で除して摩耗量を体積換算し、その値を荷重 (P) 及び
滑り距離 (km) で除して求めた。 【0127】 【表2】 【0128】表2に示した結果から明らかな通り、本発
明にかかるフェノール系樹脂に固体潤滑剤として黒鉛お
よび/またはフッ素樹脂の粉末を配合した熱硬化性成形
材料から得られた摺動部品は、比較例の汎用フェノール
樹脂から同様に得られた摺動部品に比べて、限界PV値
が6〜7倍も高く、高負荷摺動条件下での摩擦係数およ
び比摩耗量が著しく少なく、摺動特性に優れていた。 【0129】 【発明の効果】フェノールアラルキル樹脂を骨格とする
従来のフェノール系耐熱樹脂は、硬化性が良くないた
め、成形性が汎用フェノール樹脂よりかなり劣るのが通
念であった。本発明のフェノール系耐熱樹脂は、この通
念に反して、従来のフェノール系耐熱樹脂と同程度の耐
熱性や耐湿性を保持しつつ、硬化性が著しく改善され、
成形作業が容易である。即ち、フェノール系樹脂の耐熱
性と硬化性の両立が実現できた。しかも、ホルムアルデ
ヒドが反応成分として加わることで、従来のフェノール
系耐熱樹脂より原料コストが安価となる。従って、この
フェノール系樹脂は広範囲の用途に使用することができ
る。 【0130】また、このフェノール系耐熱樹脂に固体潤
滑剤として黒鉛および/またはフッ素樹脂を配合した成
形材料は、上記の優れた耐熱性や硬化性に加えて、高負
荷摺動条件下でも摺動特性に優れ、限界PV値が高く、
摩擦係数と比摩耗量が少ない。従って、この成形材料
は、OA機器や家電製品の摺動部品、特に高負荷 (荷重
・速度) が加わる軸受けやローラといった摺動部品に好
適であり、フェノール系摺動部品の用途拡大およびプラ
スチック製摺動部品の低価格化に寄与する。
【図面の簡単な説明】 【図1】実施例1で合成したハイオルト型フェノール系
樹脂のNMRチャートの部分拡大図。 【図2】比較例1で合成したフェノール系樹脂のNMR
チャートの部分拡大図。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI // C08G 8/04 C08G 8/04 61/02 61/02 (56)参考文献 特開 平9−302058(JP,A) 特開 平6−184258(JP,A) 特開 平6−136082(JP,A) 特開 昭57−74319(JP,A) 特開 平6−322234(JP,A) 特開 昭52−11244(JP,A) 特開 平4−168146(JP,A) 特開 平9−176450(JP,A) 特開 平5−310893(JP,A) 特開 平4−142324(JP,A) 特開 平4−142328(JP,A) 特開 平4−173834(JP,A) 特開 平7−48426(JP,A) 特公 昭47−15111(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 8/00 - 8/38 C08G 14/00 - 14/04 C08G 61/00 - 61/12 F16C 33/20 CA(STN) REGISTRY(STN)

Claims (1)

  1. (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 フェノール化合物から誘導されたフェノ
    ール成分(A)に、それぞれ式(1) で表されるキシリレ
    ン成分(B)、式(2) で表されるフェニルメチン成分
    (C)、および式(3) で表されるメチレン成分(D)が
    結合した反復単位:−(B−A)−、−(C−A)−お
    よび−(D−A)−からなり、 [(B)+(C)+(D)]/ (A) のモル比が 0.4〜0.95
    の範囲内、 (D)/[(B)+(C)+(D)]のモル比が 0.1〜0.9
    の範囲内であり、 フェノール成分(A)に対するメチレン成分(D)の結
    合位置が、フェノール核の水酸基に対するオルト位/パ
    ラ位の比率で45/55以上であり、かつ数平均分子量 500
    〜5000であるフェノール系耐熱樹脂中に、硬化剤と、黒
    鉛およびフッ素樹脂から選ばれた固体潤滑剤の粉末とを
    含有することを特徴とする、摺動部品用熱硬化性成形材
    。 【化1】上記式中、R1 はメチル基またはエチル基であり、aは
    0、1または2であり、Arはフェニル基もしくは2〜
    3環の多環芳香族基であって、Arの各芳香核の1〜2
    個の水素原子が炭素数1〜4のアルキル基、ハロゲン基
    および水酸基から選ばれた置換基で置換されていてもよ
    い。
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