JP3408267B2 - 結晶配向の多層被覆焼結合金 - Google Patents
結晶配向の多層被覆焼結合金Info
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トの基体表面に単層もしくは多層のB1型化合物層と酸
化アルミニウム層とでなる被膜を被覆してなる多層被覆
焼結合金に関する。
金の基体表面に、CVD法(化学蒸着法)やPVD法
(物理蒸着法)によりTiの炭化物,窒化物又は炭窒化
物等のB1型化合物でなる被膜を被覆した被覆焼結合
金、もしくは、基体表面にB1型化合物でなる被膜と酸
化アルミニウムの被膜を被覆した多層被覆焼結合金が多
数提案されており、その代表的なものとして、特開昭5
6−156767号公報,特開平2−159363号公
報及び特開昭48−59106号公報がある。
67号公報には、超硬合金又はサーメットの基体表面に
被覆させたTi,Zr,Hfの炭化物,窒化物,炭窒化
物の被膜の結晶が(220)面に強く配向されてなる被
覆焼結合金について記載されている。
は、超硬合金の基体表面にイオンプレーティング法でも
って、Tiの炭化物,窒化物及び炭窒化物のうちの1種
の単層又は2種以上の多層の被膜を被覆してなる被覆超
硬合金における基体の表面と接する少なくとも第1層の
被膜が(111)面に強く配向されてなる被覆焼結合金
について記載されている。
1型化合物の被膜の結晶を一定方向に配向させることに
より、被膜の付着性を高めようとしたものであるが、B
1型化合物の被膜の結晶方向性にのみ注目しているため
に、さらに別の結晶構造の被膜を被覆した多層被覆焼結
合金にすると被膜間の付着性に問題が生じること、及び
基材と被膜間の付着性においても問題がある。
合金の基体表面にB1型化合物の被膜と酸化アルミニウ
ムの被膜とを被覆した多層被覆焼結合金について記載さ
れている。同公報の多層被覆焼結合金は、被膜と被膜と
の界面、及び基体と被膜との界面における配慮が行なわ
れていないために、付着性に問題がある。
具体的には超硬合金又はサーメットの焼結合金の基体表
面に結晶構造の異なる被膜を被覆させた被覆焼結合金の
被膜間における適合性を結晶学的及び表面エネルギー的
に最適にし、被膜の耐剥離性,耐摩耗性及び耐欠損性を
高めた多層被覆焼結合金の提供を目的とする。
はサーメットの基体表面にTiの炭化物,窒化物又は炭
窒化物の被膜と酸化アルミニウムの被膜を被覆した多層
被覆焼結合金における、基体と被膜との付着性につい
て、結晶学的及び表面エネルギの観点から検討していた
所、結晶構造の異なる被膜間、被膜と基体表面との界面
における最適な結晶面の組合わせがあるという知見を得
て、本発明を完成するに至ったものである。
結合金は、超硬合金又はサーメットでなる焼結合金の基
体表面の1部又は全面に周期律表の4a(Ti,Zr,
Hf),5a(V,Nb,Ta)族金属の炭化物,窒化
物,酸化物及びこれらの相互固溶体の中の1種以上の単
層もしくは多層のB1型化合物層と酸化アルミニウム層
とでなる被膜を被覆してなる多層被覆焼結合金であっ
て、該被膜は、該基体表面に接する第1層が該B1型化
合物層でなり、かつ該第1層のB1型化合物は、Cu−
KαХ線による回折角20°〜70°(2θ)間におけ
るX線反射回折強度比の80%以上が(111)面でな
り、該酸化アルミニウム層の酸化アルミニウムは、Cu
−KαХ線による回折角20°〜70°(2θ)間のX
線反射回折強度比の80%以上が(012)面及び/又
は(104)面からなり、かつ該酸化アルミニウム層
は、Cu−KαХ線による回折角20°〜70°(2
θ)間におけるX線反射回折強度比の80%以上が(1
11)面でなるB1型化合物層に接して被覆されている
ことを特徴とするものである。
は、具体的には、例えばJIS規格のH5501(超硬
合金),B4053(超硬合金の使用選択基準),M3
916(超硬チップ鉱山工具用)及び従来の技術文献や
特許公報に記載されている超硬合金、もしくはTiC−
Ni基サーメット,Ti(C,N)−Ni基サーメット
で代表されている従来の技術文献や特許公報に記載され
ているサーメット、あるいは市販の超硬合金やサーメッ
トを用いることもできる。
又はサーメットをそのまま用いることもできるが、基体
表面に存在する硬質相、具体的には、炭化タングステン
もしくはB1型化合物の結晶面を配向させると、基体と
被膜との付着性を顕著に高めることができるので好まし
いことである。基体が超硬合金からなる場合、基体表面
に存在する炭化タングステンの結晶は、Cu−KαХ線
による回折角20°〜70°(2θ)間のX線反射回折
強度比の80%以上が(100)面及び/又は(00
1)面でなることが特に好ましい。また、基体が炭化チ
タン及び/又は炭窒化チタンを含むB1型化合物を主成
分とするサーメットの場合、基体表面に存在するB1型
化合物の結晶は、Cu−KαХ線による回折角20°〜
70°(2θ)間のX線反射回折強度比の80%以上が
(111)面でなることが特に好ましい。基体の中に存
在するB1型化合物とは、具体的には、例えば炭化チタ
ン,炭窒化チタン,又は炭化チタン,炭窒化チタンと周
期律表の4a,5a,6a(Cr,Mo,W)族金属の
炭化物,窒化物炭窒化物(炭化チタン,炭窒化チタンを
除く)の中の1種以上との相互固溶体、あるいは、芯部
が炭化チタン,炭窒化チタンでなり、芯部を包囲した周
辺部が周期律表の4a,5a,6a族金属の炭化物,窒
化物の中の2種以上の相互固溶体からなる複合相でなる
ものを挙げることができる。
表面に接する少なくとも第1層は、周期律表の4a,5
a,族金属の炭化物,窒化物,酸化物及びこれらの相互
固溶体の中の1種のB1型化合物層でなり、この第1層
が(111)面に結晶配向されていると共に、この(1
11)面に結晶配向されたB1型化合物層に接して形成
される少なくとももう1つの層である酸化アルミニウム
層は、(012)面及び/又は(104)面に結晶配向
されていることを特徴とする。この被膜の構成を具体的
に例示すると、上述の第1層に上述の結晶配向の酸化ア
ルミニウム層が形成される第1例、この第1例の酸化ア
ルムニウム層の表面に付着性を重視しない従来のB1型
化合物層が形成される第2例、第1例の酸化アルミニウ
ム層の表面に(111)面の結晶配向のB1型化合物層
が形成される第3例、上述の第1層の表面に単層又は多
層の従来のB1型化合物層とその表面に(111)面に
結晶配向のB1型化合物層とその表面に上述の結晶配向
の酸化アルミニウム層が形成される第4例を挙げること
ができる。
合、基体は市販されている従来の超硬合金又はサーメッ
トを用いることができるが、表面の結晶を配向した基体
を用いることが好ましい。超硬合金の基体表面の炭化タ
ングステンを(100)面に結晶配向させる場合は、例
えば炭化タングスを含有した超硬合金の組成成分からな
る出発原料中に周期律表の4a,5a,6a族金属のホ
ウ化物粉末、特に好ましくはホウ化タングステンを微量
混在させて、焼結工程時の昇温及び冷却の温度と雰囲気
の制御でもって作製することができる。また、超硬合金
の基体表面の炭化タングステンを(001)面に結晶配
向させる場合は、例えば周期律表の4a,5a,6a族
金属の炭化物(但し、炭化タングステンを除く)の1種
以上に炭化タングステンが1800℃以上の高温で過飽
和に固溶されてなる高温炭化過飽和炭化タングステンの
固溶体粉末を上述の出発原料中に混在させて、従来の粉
末冶金法を応用することにより作製することができる。
さらに、サーメットの基体表面に存在する窒化チタン及
び/又は炭窒化チタンを含むB1型化合物を(111)
面に結晶配向させる場合は、例えば金属溶液中で炭化チ
タン,炭窒化チタン又は窒化チタンを折出させた粉末
(マッケナ法)を出発原料として用い、これに他の必要
な出発原料粉末とを組合わせて、従来の粉末冶金法を応
用して作製することができる。
に結晶配向されてなるB1型化合物の第1層を被覆する
には、具体的には、例えばCVD法においては、炭化物
の第1層は、100Torr以下の反応容器内全ガス量
に対するハロゲン化ガス量の比を0.1〜0.2とし、
窒化物の第1層は、100Torr以下の反応容器内全
ガス量に対する窒素ガス及び/又はアンモニアガス量の
比を0.1〜0.2とし、炭酸化物の第1層は、100
Torr以下の反応容器内全ガス量に対するハロゲン化
ガス及び酸化炭素ガスの合計の比を0.1〜0.2と
し、窒酸化物の第1層は、100Torr以下の反応容
器内全ガス量に対する窒素ガス及び/又はアンモニアガ
スと酸化炭素ガスとの合計の比を0.1〜0.2とし、
炭窒酸化物の第1層は、100Torr以下の反応容器
内全ガス量に対するハロゲン化ガスと窒素ガス及び/又
はアンモニアガスと酸化炭素ガスとの合計の比を0.1
〜0.2とすることにより作製することができる。
れてないB1型化合物の単層又は多層を介在させ、次い
で、この表面に(111)面に結晶配向されたB1型化
合物層を形成した後、結晶配向された酸化アルミニウム
層を形成する。この結晶配向された酸化アルミニウム層
の内、(104)面に結晶配向するには、例えばCVD
法における反応容器内全ガス圧を600Torr〜2気
圧とし、(012)面に結晶配向するには、反応容器内
全ガス圧を10〜150Torrとすることにより作製
することができるここで述べてきた基体表面の結晶配
向、第1層の結晶配向及び酸化アルミニウム層の結晶配
向としての結晶面におけるCu−KαХ線による回折角
20°〜70°(2θ)間のX線反射回折強度比の80
%以上とは、具体的にはCuターゲット、Niフィルタ
ーを用いたX線回折装置で、回折角(2θ)20°〜7
0°間においてCu−Kα線の全反射X線強度カウント
数の総和に対するそれぞれの結晶配向面の反射X線強度
カウント数の比が80%以上からなることを現わしてい
る。
が、基体表面との付着性を高める作用をしており、基体
表面が結晶配向されていると、基体表面と第1層の相互
作用でもって付着性を高めており、結晶配向された最稠
密の酸化アルミニウム層と結晶配向された最稠密のB1
型化合物層とが相互に付着性を高める作用をし、総合的
に基体と被膜との界面及び被膜と被膜との界面におい
て、結晶学的、表面エネルギー的に、最適に適合し合っ
ているものである。
%W2B5固溶したWC(以下、B・WCと略記)と45
wt%WC−22wt%TiC−33wt%TaC組成
を高温炭化過飽和固溶体としたWC(以下、WTTと略
記)とマッケナ法により作製したTiC(以下、M・T
iCと略記),Ti(C,N)[以下、M・Ti(C,
N)と略記]粉末を用いて、表1に示す組成に配合し、
それぞれの配合粉末にアセトンと超硬合金ボールを加え
て混合粉砕及び乾燥後、1t/cm2の加圧力で成形体
とし、表1に併記した焼結条件でもって成形体を焼結し
て基体を作製した。これらの基体の硬さ,抗折強度を求
め、さらにCuターゲット,NiフィルターによるX線
回折(2θ=20°〜70°間)を行って、基体表面に
おけるX線反射回折強度比を求めて、その結果を表2に
示した。(但し、本発明品1,2及び比較品1は炭化タ
ングステン結晶面、本発明品3,4及び比較品2はB1
型化合物結晶面)
って第1層を形成した後、第1層の表面におけるX線反
射回折強度比を求めて、その結果を表3に併記した。
でもって酸化アルミニウム層を形成後、酸化アルミニウ
ム層の表面におけるX線反射回折強度比を求めて、その
結果を表4に併記した。
〜2に、さらに市販のP30相当の超硬合金の表面に本
発明品1と同様にして第1層及び酸化アルミニウム層を
形成した本発明品5を加えて切削試験を行った。切削試
験は、被削材:S48C(HB228),切削速度:2
50m/min,切込量:1.5mm,送り:0.3m
m/rev,チップ形状:SNP432,切削時間:5
分における乾式旋削試験と被削材:S55C(100×
150mm角材,HB240),切削速度:150m/
min,切込量:1.5mm,送り:0.2mm/刃
(欠損又はチッピングしないときは、0.25mm/刃
増加し、欠損又はチッピング時で寿命とした。)チップ
形状:TNP432における乾式転削試験を行い、その
結果を表5に示した。
膜の界面、及び被膜と被膜の界面における付着性が優れ
ており、被膜の効果を充分に発揮させることができるも
ので、従来の多層被覆超硬合金に比べて、切削工具とし
て用いた場合、基体表面の結晶配向をしない本発明品が
耐摩耗性において約40〜47%向上し、耐欠損性にお
いて約56%向上し、基体表面の結晶配向をした本発明
品が耐摩耗性において約75〜144%向上し、耐欠損
性において約110〜167%向上するという効果があ
る。
Claims (3)
- 【請求項1】 超硬合金又はサーメットでなる焼結合金
の基体表面の1部又は全面に周期律表の4a,5a族金
属の炭化物,窒化物,酸化物及びこれらの相互固溶体の
中の1種以上の単層もしくは多層のB1型化合物層と酸
化アルミニウム層とでなる被膜を被覆してなる多層被覆
焼結合金において、 該被膜は、該基体表面に接する第1層が該B1型化合物
層でなり、かつ該第1層のB1型化合物は、Cu−Kα
Х線による回折角20°〜70°(2θ)間のX線反射
回折強度比の80%以上が(111)面でなり、該酸化
アルミニウム層の酸化アルミニウムは、Cu−KαХ線
による回折角20°〜70°(2θ)間のX線反射回折
強度比の80%以上が(012)面及び/又は(10
4)面からなり、かつ該酸化アルミニウム層は、Cu−
KαХ線による回折角20°〜70°(2θ)間のX線
反射回折強度比の80%以上が(111)面でなるB1
型化合物層に接して被覆されていることを特徴とする結
晶配向の多層被覆焼結合金。 - 【請求項2】 上記基体は、超硬合金からなり、該基体
表面に存在する炭化タングステンは、Cu−KαХ線に
よる回折角20°〜70°(2θ)間のX線反射回折強
度比の80%以上が(100)面及び/又は(001)
面でなることを特徴とする請求項1記載の結晶配向の多
層被覆焼結合金。 - 【請求項3】 上記基体は、炭化チタン及び/又は炭窒
化チタンを含むB1型化合物を主成分とするサーメット
からなり、かつ該基体表面に存在するB1型化合物は、
Cu−KαХ線による回折角20°〜70°(2θ)間
のX線反射回折強度比の80%以上が(111)面でな
ることを特徴とする請求項1記載の結晶配向の多層被覆
焼結合金。
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