JP3407569B2 - 成形性に優れた高炭素熱延鋼板および高炭素冷延鋼板の製造方法 - Google Patents

成形性に優れた高炭素熱延鋼板および高炭素冷延鋼板の製造方法

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JP3407569B2
JP3407569B2 JP31762196A JP31762196A JP3407569B2 JP 3407569 B2 JP3407569 B2 JP 3407569B2 JP 31762196 A JP31762196 A JP 31762196A JP 31762196 A JP31762196 A JP 31762196A JP 3407569 B2 JP3407569 B2 JP 3407569B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は成形性に優れた高炭
素熱延鋼板および高炭素冷延鋼板を製造する方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】変速機やチェーン等の機械構造部品の製
造に用いられる高炭素熱延鋼板および高炭素冷延鋼板
(以下、単に「高炭素薄鋼板」と記す)は、通常、打抜
き、曲げ、絞り等の加工により所要の形状に成形された
後、焼入れ、焼戻し等の熱処理が施されて製品とされ
る。また、複数の部品を溶接等の方法で接合して製作さ
れていた部品を、鋼板の転造加工等によって一体で成形
する方法も広まりつつある。このような用途に用いられ
る高炭素薄鋼板には、熱処理後の硬さや靭性と共に良好
な板厚精度と成形性が要求される。
【0003】成形性が必要とされる用途には、JIS G 33
11に規定される炭素鋼(S30CM 〜S75CM )あるいは炭素
工具鋼(SK2M 〜SK7M )の熱延板に、セメンタイトの
球状化焼鈍(鋼板中に存在する、ラメラー状のセメンタ
イトとフェライトからなるパーライト組織を、球状のセ
メンタイトと軟質なフェライトとの組織にするための焼
鈍)を施して延性を向上させた熱延鋼板や、熱延鋼板に
冷間圧延と焼鈍を施して更なる成形性の向上を図った冷
延鋼板がある。しかし、これらの方法では成形性向上に
限界がある。
【0004】高炭素薄鋼板は、成形加工した後に焼入れ
等のためにオーステナイト化温度に加熱される。このと
き、打抜きや厳しい曲げ等の強加工を受けた部分で、オ
ーステナイト結晶粒が異常に成長することがある(以
下、単に「異常粒成長」と記す)。このような場合に
は、熱処理歪が増大し焼割れが生じるおそれがあるほ
か、靭性も損なわれる。
【0005】本発明者らの内のひとりは、成形性と焼入
性及び熱処理後の靭性とを併せて改善する高炭素薄鋼板
の製造方法を特開平5-98356 号公報及び特開平5-98357
号公報で提案した。この方法では、C含有量を0.40%以
下に制限することで成形性を確保し、焼入性をMn 及び
Bで補い、熱処理後の靭性は窒化物の析出を利用するこ
とで確保する。さらに、この熱延鋼板を冷間圧延し、箱
焼鈍法による徐加熱での焼鈍を施してパーライト組織を
球状化セメンタイト組織に変えることで成形性を向上さ
せた冷延鋼板の製造方法も提案している。しかし、この
方法でも冷延鋼板の延性や特性の均一性は十分ではな
い。また、冷間圧延後に高温長時間の球状化焼鈍を施す
と焼鈍時に鋼板同士の焼付きや着色欠陥等の品質不良が
発生しやすく、表面肌の平滑さが要求される炭素鋼冷延
鋼板を製造する方法としては経済性にも問題がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明が解決しようと
する課題は、焼入れ前には延性に優れ、かつ焼入れ後に
は所定の硬さと靭性が得られる高炭素熱延鋼板および高
炭素冷延鋼板を効率的に製造する方法を提供することで
ある。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、下記
(1)〜(4)に記載の成形性に優れた高炭素薄鋼板の
製造方法にある。
【0008】(1)重量%で、C:0.25〜0.65%、Si
:0.01〜0.1 %、Mn :0.2 〜0.5%、Cr :0.05〜0.
5 %、Ti :0.01〜0.1 %、sol.Al :0.01〜0.1 %、
N:0.003 〜0.008 %、B:0.0005〜0.005 %を含み、
かつ、Ti 、sol.Al 及びN含有量が下記の式の関係
を満たし、残部がFe 及び不可避的不純物からなる化学
組成を備える高炭素鋼熱延板に、酸洗後、650 ℃以上A
c1点未満で10〜30時間均熱する焼鈍を施すことを特徴と
する成形性に優れた高炭素熱延鋼板の製造方法。
【0009】 sol.Al +(27/48)×Ti―3×(27/14)×N>0--- ここで、元素記号は各元素の含有量(重量%)を示す。
【0010】(2)上記(1)に記載の化学組成を備え
る高炭素鋼熱延板に、酸洗後、Ac1〜「Ac1+30」℃の
温度範囲で1〜20時間均熱した後、「Ac1―30」℃まで
は3〜20℃/時の冷却速度で徐冷する焼鈍を施すことを
特徴とする成形性に優れた高炭素熱延鋼板の製造方法。
【0011】(3)上記(1)に記載の化学組成を備え
る高炭素鋼熱延板に、酸洗後、Ac1〜「Ac1+30」℃の
温度範囲で1〜20時間均熱した後、「Ac1―20」℃まで
は3〜10℃/時の冷却速度で徐冷する焼鈍を施すことを
特徴とする成形性に優れた高炭素熱延鋼板の製造方法。
【0012】(4)上記(1)から(3)までのいずれ
かに記載の方法で焼鈍を施した熱延鋼板に、30〜70%の
圧下率での冷間圧延と、650 ℃以上Ac1点未満で20秒以
上均熱する焼鈍とを施すことを特徴とする成形性に優れ
た高炭素冷延鋼板の製造方法。
【0013】本発明の基になる技術思想は、以下に述べ
る〜に集約される。
【0014】 Si とMn を低減し、かつ、セメンタ
イトを十分な大きさの球状にすること、及び、フェライ
ト組織を十分な再結晶組織にすることで鋼板の成形性を
向上させる。Si とMn を低減することにより低下する
焼入性はCr とBを添加して補填する。Cr とBを添加
しても成形性には悪影響を及ぼさない。
【0015】 フェライト組織の再結晶を十分に行な
わせるために、所定の圧下率での冷間圧延を行なった後
に焼鈍を施す。高温長時間の焼鈍を必要とするセメンタ
イトの球状化は、冷間圧延前の熱延板に焼鈍を施して
(以下、「熱延板焼鈍」と記す)完了させる。これによ
り、冷間圧延の焼鈍が大幅に簡素化できるので製造工程
での経済性が高まる。
【0016】 特性の均一化は、上記の熱延板焼鈍時
に球状化セメンタイト等の結晶組織が鋼板全体が均一に
なるような焼鈍条件を選定することで実現する。
【0017】焼入れ時に生じるおそれがあるオーステ
ナイトの異常粒成長は、Ti 、sol.Al 及びNを適正に
含有させることによって抑制する。
【0018】
【発明の実施の形態】以下に本発明の内容を具体的に説
明する。なお、鋼板の化学組成の%表示は重量%を意味
する。
【0019】(1)鋼板の化学組成 C:鋼板に所望の強度と焼入性を付与するためにCを添
加する。C含有量が0.25%に満たないときは、強度と焼
入性が不足する。また、Cが0.65%を超えると本発明の
製造方法を適用しても加工性が改善されない。このた
め、本発明でのC含有量は0.25%以上、0.65%以下とす
る。なお、比較的低い焼入温度で均一なオーステナイト
結晶組織を確保し、さらに、焼入れ後にHRC50以上の
硬さを確保するにはCを0.3 %以上含有させるのが好ま
しい。C含有量は、特に成形性が要求される場合には、
0.5 %以下にするのが好ましく、0.4 %以下であればな
お好ましい。
【0020】Si :溶鋼の脱酸剤として用いられる。脱
酸効果を確保するためにSi は0.01%以上含有させる。
0.1 %を超えると鋼板の延性が劣化する。このため本発
明ではSi 含有量の範囲を0.01〜0.1 %とする。
【0021】Mn :Sによる熱間脆化を防止すると共
に、焼入性を高めるために添加する。これらの効果を得
るためには0.2 %以上必要である。他方、成形性の面か
らはMn は少ない方が好ましい。本発明の場合、焼入性
はCr やBでも補うので、焼入性確保のためのMn 多量
添加は必要ない。このため、本発明ではMn 含有量の範
囲は0.2 〜0.5 %とする。
【0022】Cr:焼入性を向上させるためにCr を添
加する。0.05%に満たない場合にはその効果がなく、0.
5 %を超えて含有させると鋼板の延性が損なわれる。こ
のため、本発明のCr 含有量は0.05%以上、0.5 %以下
とする。通常、焼入性を向上させるには、1種類の焼入
性向上元素を大量に用いるよりも、数種類の元素を複合
して用いる方が効果的である。この意味でも、Cr を添
加してでもMn を削減するのが好ましい。
【0023】Ti 、sol.Al 及びN:Ti とsol.Al に
よって鋼中のNを固定し、鋼に固溶するBを増加させて
焼入性を向上させる。また、後述するように、鋼中の窒
化物にはオーステナイトの粗大化を抑制する効果もあ
る。これらの効果を得るためにTi を0.01%以上含有さ
せる。しかし、Ti を過剰に含有させると延性が劣化
し、焼入性向上効果も飽和するので、その上限を0.1 %
とする。sol.Al も鋼中のNを固定するために0.03%以
上含有させる。しかし、過度に含有させてもその効果が
飽和するうえ、経済性も損なうのでその上限を0.1 %と
する。
【0024】本発明では、冷間圧延前の熱延板の炭化物
を均一で粗大な球状のセメンタイトにしておくために熱
延板焼鈍を行なう。この焼鈍をAc1点以上で行なう場合
にオーステナイト結晶粒が過度に粗大化すると、セメン
タイトがオーステナイト中に溶解し易くなって球状化時
に析出核となるべき微細なセメンタイトが無くなり、冷
却時にセメンタイトが球状化しないでパーライトを形成
し、これを冷間圧延し、焼鈍しても延性が改善されない
場合がある。
【0025】これを避けるために、本発明では、窒化物
を活用して熱延板焼鈍時のオーステナイト結晶粒の粗大
化を抑制する。窒化物は、焼入れ加熱時のオーステナイ
トの異常粒成長を防止し、焼入れ後の靭性を確保するた
めにも必要である。この効果を得るためにN含有量の下
限を0.003 %とする。また、N含有量が過剰になると鋼
板の延性が損なわれるので、その上限を0.008 %とす
る。
【0026】さらに、熱延板中のN全量を窒化物として
固定すべく、sol.Al 、Ti 及びNの含有量は下記の式
に示す関係を満たすものとする。
【0027】 sol.Al +(27/48)×Ti―3×(27/14)×N>0--- ここで、元素記号は、各元素の含有量(重量%)を示
す。
【0028】B:本発明では成形性を改善するために、
Mn を通常の炭素鋼に含まれる量よりも少なくしている
ので、そのままでは焼入性が不足する。そこで、Cr に
加えてBを添加し、焼入性を補填する。Bの含有量が0.
0005%に満たない場合には焼入性向上の効果がなく、0.
005 %を超えるとその効果が飽和する。このため、Bの
含有量は0.0005%以上、0.005 %以下とする。
【0029】(2)熱延板焼鈍 本発明では、熱延板の炭化物を均一で粗大な球状のセメ
ンタイトにするために熱延板焼鈍を施す。この焼鈍は、
上記化学組成の高炭素鋼熱延板を酸洗後、650℃以上Ac
1点未満で均熱するか、または、Ac1〜「Ac1+30」℃
の温度範囲で1〜20時間均熱した後、「Ac1―30」℃ま
では3〜20℃/時の冷却速度で徐冷することを特長とす
る。なお、本発明ではAc1点を下記の式で計算して求
める。
【0030】 Ac1(℃)=723 ―11Mn +29Si +17Cr ---- ここで、元素記号は各元素の含有量(重量%)を示す。
【0031】焼鈍をAc1点未満で行なう場合には、パー
ライト組織を構成しているラメラー状セメンタイトの表
面エネルギーの減少が球状化の駆動力になっている。こ
のため球状化の進展が遅く、粗大な球状化セメンタイト
を得るには長時間の球状化焼鈍が必要になる。他方、焼
鈍をAc1点以上で行なう場合には、条件を適正に選択す
れば、ラメラー状セメンタイトの大部分はオーステナイ
ト中に固溶するが、一部分のセメンタイトは固溶しない
状態にすることが出来る。この状態から冷却すれば、残
存しているセメンタイトを析出核として固溶Cが析出す
るので、容易に粗大な球状化セメンタイト組織が得られ
る。
【0032】このように、焼鈍温度がAc1点の上である
か未満であるかによって得られる結晶組織が異なるの
で、焼鈍後の鋼板の成形性もそれぞれで異なってくる。
鋼板内での特性の変動を少なくするためには、いずれの
領域で焼鈍を施すにしても、鋼板全体が同じ温度域で均
熱されるように焼鈍条件を管理することが重要である。
このため、本発明では熱延板の球状化焼鈍温度域をAc1
点の上と未満とに区分して行なう。
【0033】Ac1点未満の領域で焼鈍する場合の焼鈍温
度の下限は650 ℃とする。焼鈍温度が650 ℃に満たない
場合には、セメンタイトの球状化に長時間を要するので
経済性に欠ける。そのうえ、低温で焼鈍した熱延板のセ
メンタイトは、球状にはなっていても粒径が微細なもの
が多く、その延性は好ましくない。この温度範囲で保持
する均熱時間は、球状化を十分に行なわせるために10時
間以上必要であり、30時間を超えると球状化が飽和す
る。このため、均熱時間の範囲は10〜30時間とする。A
c1点未満の領域で焼鈍する場合の均熱終了後の冷却速度
は任意である。
【0034】Ac1点以上の領域で焼鈍する場合の焼鈍温
度の上限は「Ac1+30」℃とする。これを超えると、セ
メンタイトがオーステナイト中に溶解してしまう。冷却
時に析出の核となるべきセメンタイトが無くなり、固溶
Cが薄片状に析出してラメラー状のセメンタイトとなる
ので延性は向上しない。均熱時間はセメンタイトの球状
化を確保する爲に1時間以上必要である。20時間を超え
るとセメンタイトが溶解してしまい、冷却時にラメラー
状のセメンタイトが生じる。このため、均熱時間は1〜
20時間とする。
【0035】Ac1点以上の領域で焼鈍する場合には、焼
鈍温度から「Ac1―30」℃までの温度域を、3〜20℃/
時の冷却速度で徐冷する。冷却速度が3℃/時に満たな
い場合は、冷却に時間を要して経済的に不利である。一
方、20℃/時以上で冷却すると、ラメラー状のセメンタ
イトが生じる。「Ac1―30」℃まで徐冷すれば球状化セ
メンタイトとしての析出はほぼ終了するので、それ以降
は通常の冷却速度で冷却しても構わない。焼鈍温度から
の冷却速度が3〜10℃/時の範囲での徐冷である場合に
は、「Ac1―20」℃までを徐冷するだけでもよい。
【0036】Ac1点未満の領域で焼鈍を施す方が、焼鈍
温度が低いのでコイル状に巻いた鋼板のコイルの中心部
と外周部の温度差が少なく、特性がより均質な鋼板を、
より安価に製造できる。しかし、焼鈍をAc1点以上の領
域で施す方法に比べるとセメンタイトの粒径が微細なた
め、冷圧、焼鈍してもその延性は劣る。
【0037】(3)冷間圧延と焼鈍 板厚が薄いもの、鋼板表面が滑らかなもの、あるいは、
より成形性に優れるもの等が必要な場合には、上述の成
形性に優れた高炭素熱延鋼板に冷間圧延と焼鈍を施す。
【0038】この場合の冷間圧下率は30〜70%とする。
成形性の改善に必要なセメンタイトの球状化は冷間圧延
前に終了しているので、冷間圧延後に施す焼鈍の主たる
目的はフェライト結晶組織の軟化である。従って長時間
の焼鈍は必ずしも必要ではなく、連続焼鈍のような短時
間の焼鈍でも目的を達せられる。むしろ箱焼鈍よりも連
続焼鈍の方が特性の均一化や生産性の向上などの利点が
あり好ましい。短時間の焼鈍で冷間圧延組織を十分に再
結晶させ、軟化させるには、歪エネルギーが必要であ
る。このため冷間圧下率は30%以上とする。他方、冷間
圧下率が過大になると、再結晶したフェライト結晶粒が
微細になり、延性が損なわれるうえ、冷間圧延時に鋼板
が破断するおそれもある。このため、その上限は70%と
する。
【0039】冷間圧延に続いて焼鈍を行なう。この焼鈍
は、650 ℃以上Ac1点未満で20秒以上均熱するものであ
る。均熱温度が650 ℃に満たない場合には冷間圧延組織
の再結晶と結晶粒の成長が不十分なために、焼鈍後の鋼
板の延性が不十分である。また、Ac1点以上に鋼板の温
度が上昇するとフェライトがオーステナイトに変態し、
固溶した炭化物が冷却時にパーライトになって析出する
ので鋼板の延性が損なわれる。
【0040】上記の温度範囲で保持する均熱時間は20秒
以上であればいくら長くても構わない。均熱時間が20秒
に満たない場合には冷間圧延組織の再結晶と軟化が不十
分で延性に劣る。均熱時間を長くすると延性の向上には
有利であるがその向上代は僅かである。むしろ経済性を
損なうのであまり長くしない方がよい。
【0041】焼鈍方式は、箱焼鈍でも連続焼鈍でも可能
である。特性の均一化や形状が優れる等の点から連続焼
鈍方式がより好ましい。箱焼鈍方式で行なう場合には、
鋼板の最冷点(最も昇熱が遅れる部分)と最熱点(最も
加熱される部分)共に上記の均熱温度範囲を外れないよ
うにすればよい。
【0042】本発明の方法は、本発明が規定する化学組
成を満たす鋼のスラブを常法により熱間圧延し、常法に
より酸洗して、本発明の製造方法で規定されている条件
の範囲内で熱延板を焼鈍する。さらに必要に応じて、冷
間圧延と焼鈍を施す。熱延板の焼鈍方式は特に限定する
ものではないが、冷延鋼板やステンレス鋼板等の製造時
に用いられている雰囲気箱焼鈍で行なうのが好ましい。
【0043】熱延板焼鈍後必要があれば、冷間圧延前に
再度、酸洗を施しても構わない。冷間圧延方法も特に限
定するものではない。また、冷間圧延後の焼鈍前に、必
要に応じて表面の脱脂洗浄等の処理を施すのも差し支え
ない。焼鈍後は常法により調質圧延や平坦形状等を修正
するためのレベラー通板等を施すことも差し支えない。
【0044】
【実施例】
(実施例1)化学組成が本発明で規定する範囲内の6種
類の鋼(本発明例)と、本発明で規定する条件から外れ
る8種類の鋼(比較例)とを溶製し、スラブとした。表
1にこれらのスラブの化学組成を示す。これらの鋼のA
c1点は、720 〜726 ℃の間にある。
【0045】
【表1】
【0046】これらのスラブを、1200℃で30分間加熱
し、仕上温度850 ℃、巻取温度600 ℃で熱間圧延を行な
い、板厚2.5 mmの熱延鋼板を得た。この熱延鋼板を酸洗
した後、300 mm角のサンプルを切り出し、2種類の条件
で熱延板焼鈍を施した。その1はAc1点未満の領域で焼
鈍する方法である。以下、これを試番aシリーズと記
す。その焼鈍温度と均熱時間とを表2に記載した。その
2はAc1点以上の領域で焼鈍する方法であり、740 ℃で
焼鈍した。以下、これを試番bシリーズと記す。この時
の均熱時間と高温域での徐冷条件を表3に示した。徐冷
が終了した後は50℃/時で室温まで冷却した。室温から
焼鈍温度までの加熱速度はいずれの場合も50℃/時で行
なった。
【0047】
【表2】
【0048】
【表3】
【0049】焼鈍した鋼板からJIS Z 2201に規定する13
B 号試験片を採取して引張試験を行なった。また、これ
らの焼鈍を施したサンプルを、870 ℃に保持した炉中で
30分加熱し、ただちに40℃の油中へ焼入れ、オーステナ
イト結晶粒度番号と硬さを測定した。また、これらの焼
鈍を施した鋼板に内側曲げ半径10mmの曲げ加工を行な
い、これを870 ℃に保持した炉中で30分間加熱し、ただ
ちに40℃の油へ焼入れ、曲げ加工部のオーステナイト結
晶粒度番号を測定した。これらの結果も表2、表3に示
した。
【0050】表2、表3から明らかなように、本発明で
規定する範囲内の化学組成を有し、本発明で規定する製
造条件で製造した鋼板は延性が良好で、十分な焼入れ硬
さを有する。また、熱処理後のオーステナイト粒径も適
正な範囲にある。
【0051】表2に記載の、比較例として試験した試番
a10〜a12は焼鈍温度が低いために、a13〜a15は均熱
時間が短すぎるために、いずれもセメンタイトの球状化
が不十分であり延性が本発明例よりも劣る。試番a16〜
a18、a20、a21、a23は化学組成が本発明の範囲を外
れるため延性が不足している。a19は延性は十分である
が焼入性が不足し硬度が劣る。また、a22はNの窒化物
としての固定が不十分でこようNが残存したために延性
が損なわれると共に、窒化物が不足して焼入温度への加
熱時にオーステナイト結晶粒が粗大化した。このサンプ
ルの焼入れ後の靭性は劣っていた。
【0052】表3に記載した比較例の内、試番b10〜b
12はいずれも徐冷終了温度が高すぎたために延性が不足
した。試番b13〜b15は冷却速度が速すぎるために、b
16〜b18は均熱時間が長すぎるために、b19〜b21は均
熱時間が短すぎるために、それぞれ延性が不足してい
る。b22〜b24、b26、b27、b29は化学組成が本発明
の範囲を外れるため延性が不足している。b25は、延性
は十分であるが焼入性が不足し、硬度が劣る。b28は、
試番a22と同様の理由で延性が不足し、また、焼入れ加
熱時にオーステナイト結晶粒が粗大化した。このサンプ
ルの焼入れ後の靭性は劣っていた。
【0053】(実施例2)表1に示す化学組成からなる
スラブを、1200℃で30分間加熱し、仕上温度850℃、巻
取温度600 ℃で熱間圧延を行ない、板厚4mmの熱延板を
得た。この熱延板を酸洗した後、300 mm角のサンプルを
切り出し、2種類の温度域での熱延板焼鈍を施した。そ
の1は、50℃/時の加熱速度でAc1点未満の690 ℃に加
熱し、24時間均熱後50℃/時で室温まで冷却した。以
下、これを「試番cシリーズ」と記す。その2は、50℃
/時の加熱速度で740 ℃に加熱し、15時間均熱後680 ℃
までを15℃/時の冷却速度で冷却し、680 ℃以降は50℃
/時で室温まで冷却した。以下、これを「試番dシリー
ズ」と記す。
【0054】これらの焼鈍を施した鋼板に15〜85%の圧
下率で冷間圧延を行なった後、箱焼鈍あるいは連続焼鈍
を施した。焼鈍材からJIS Z 2201に規定する13B 号試験
片を採取して引張試験を行なった。また、これらの焼鈍
を施したサンプルを、870 ℃に保持した炉中で30分加熱
し、ただちに40℃の油中へ焼入れ、オーステナイト結晶
粒度番号と硬さを測定した。また、これらの焼鈍を施し
た鋼板に内側曲げ半径10mmの曲げ加工を行ない、これを
870 ℃に保持した炉中で30分間加熱し、ただちに40℃の
油へ焼入れ、曲げ加工部のオーステナイト結晶粒度番号
を測定した。冷圧率、冷間圧延後の焼鈍条件及び冷圧焼
鈍材の材料特性評価結果を、熱延板焼鈍をAc1点未満の
領域で施した試番cシリーズについては表4に、熱延板
焼鈍をAc1点以上の領域で施した試番dシリーズについ
ては表5に示した。
【0055】
【表4】
【0056】
【表5】
【0057】表4、表5から明らかなように、本発明で
規定する範囲内の化学組成を有し、本発明で規定する製
造条件で製造した鋼板は延性が良好で、十分な焼入れ硬
さを有する。また、熱処理後のオーステナイト粒径も適
正な範囲にある。
【0058】表4に記載の比較例として試験した試番c
16〜c18は冷間圧延の圧下率が低いために再結晶が不十
分になり延性が劣った。c19〜c21は冷間圧延の圧下率
が高すぎるためにフェライト結晶粒が微細になって延性
が劣る。試番c22〜c24は焼鈍温度が低いために、試番
c25〜c27は焼鈍時間が短いために、いずれも再結晶が
不十分であり、延性が本発明例よりも劣る。試番c28〜
c30、c32〜c35は化学組成が本発明の範囲を外れるた
め延性が不足している。
【0059】表5に記載した比較例の内、試番d16〜d
18は冷間圧延圧下率が低いために再結晶が不十分であ
り、d19〜d21は冷間圧延圧下率が高すぎるためにフェ
ライト結晶粒が微細であり、いずれも延性が本発明例よ
りも劣る。試番d22〜d24は焼鈍温度が低いために、試
番d25〜d27は焼鈍時間が短いために再結晶が不十分で
あり、延性が本発明例よりも劣る。試番d28〜d30、d
32〜d35は化学組成が本発明の範囲を外れるため延性が
不足している。
【0060】また、c31、d31は、延性は十分であるが
焼入性が不足し、硬度が劣る。c34、d34は窒化物が不
足したために焼入れ加熱時にオーステナイト結晶粒が粗
大化した。このサンプルの焼入れ後の靭性は劣ってい
た。
【0061】
【発明の効果】本発明の方法により、均質で、成形性に
優れ、熱処理後の硬さと靭性が十分な高炭素熱延鋼板お
よび高炭素冷延鋼板が、安定して製造できる。この鋼板
を用いれば、熱処理後の硬度や靭性に優れた寸法精度の
良い機械構造部品の製造が容易になり、複雑な形状の部
品の一体成形化による工程省略も可能となる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22C 38/32 C22C 38/32 (56)参考文献 特開 平6−108158(JP,A) 特開 平5−345952(JP,A) 特開 平5−98388(JP,A) 特開 平1−100244(JP,A) 特開 昭61−76619(JP,A) 特公 昭56−47930(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C21D 9/46 C21D 8/00 - 8/02 C21D 9/52 C22C 38/00 - 38/60

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】重量%で、C:0.25〜0.65%、Si :0.01
    〜0.1 %、Mn :0.2 〜0.5 %、Cr :0.05〜0.5 %、
    Ti :0.01〜0.1 %、sol.Al :0.01〜0.1 %、N:0.
    003〜0.008 %、B:0.0005〜0.005 %を含み、かつ、
    Ti 、sol.Al 及びN含有量が下記の式の関係を満た
    し、残部がFe 及び不可避的不純物からなる化学組成を
    備える高炭素鋼熱延板に、酸洗後、650 ℃以上Ac1点未
    満の温度で10〜30時間均熱する焼鈍を施すことを特徴と
    する成形性に優れた高炭素熱延鋼板の製造方法。 sol.Al +(27/48)×Ti―3×(27/14)×N>0--- ここで、元素記号は各元素の含有量(重量%)を示す。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の化学組成を備える高炭素
    鋼熱延板に、酸洗後、Ac1〜「Ac1+30」℃の温度範囲
    で1〜20時間均熱した後、「Ac1―30」℃までは3〜20
    ℃/時の冷却速度で徐冷する焼鈍を施すことを特徴とす
    る成形性に優れた高炭素熱延鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】請求項1に記載の化学組成を備える高炭素
    鋼熱延板に、酸洗後、Ac1〜「Ac1+30」℃の温度範囲
    で1〜20時間均熱した後、「Ac1―20」℃までは3〜10
    ℃/時の冷却速度で徐冷する焼鈍を施すことを特徴とす
    る成形性に優れた高炭素熱延鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】請求項1から3までのいずれかに記載の方
    法で焼鈍を施した熱延板に、30〜70%の圧下率での冷間
    圧延と、650 ℃以上Ac1点未満で20秒以上均熱する焼鈍
    とを施すことを特徴とする成形性に優れた高炭素冷延鋼
    板の製造方法。
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