JP3400755B2 - 複合弾性糸からなる紐状糸とその製造方法 - Google Patents

複合弾性糸からなる紐状糸とその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明が属する技術分野】本発明は、コアとなる弾性糸
と、シースとなる非弾性繊維とからなる複合弾性糸を紐
状に編んで形成する紐状糸に関し、特に、弾性糸の伸度
に人為的なムラを付与した紐状糸に関する。
【0002】
【従来の技術】コアにポリウレタンやポリエステルエラ
ストマー等の弾性糸を使用し、シースに綿や各種合繊の
非弾性糸を使用した複合弾性糸が知られている。これ
は、非弾性繊維からなる粗糸を、精紡機に供給してドラ
フトし、フロントローラからフリースとして紡出し、コ
アとなる弾性糸をフロントローラの前又は後から挿入し
て上記フリース上に重ね、重ねられた弾性糸とフリース
とに撚りを与えて中心の弾性糸を周辺の非弾性糸が包ん
だ形態のコアスパン糸とするものである。
【0003】このような複合弾性糸を用いて織物や編物
を作ると、伸縮性に優れた布を得ることができ、靴下の
ゴムの部分、婦人用の下着類、等々といった多くの衣料
品に応用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、上記のコアス
パン糸では、弾性糸は伸度が一定の状態で供給されてい
るので、出来上がった複合弾性糸も一様の太さであり、
これから製織又は製編される布も凹凸のない平らなもの
しかできなかった。これに対し、近年、消費ニーズが多
様化し、表面に自然な凹凸感のある布類の人気が高まっ
てきている。
【0005】そこで、コアスパン糸の製造の際に、弾性
糸の供給速度を変化させ、伸度に強制的にムラを与え
て、伸度にムラのある弾性糸を作ることが考えられた
が、シースとコアとの間でスリップし易く、結果的には
弾性糸の伸度の倍率の変化が非常に少なくなって、布に
しても、凹凸感の少ないものしかできなかった。
【0006】また、凹凸感のある布類を作るために、伸
度の異なる複合弾性糸を結んでつなぎ、織機や編機で布
にすることも行われていたが、結び目が多くなり、非常
に手間が掛かっていた。
【0007】本発明はこのような要請に応えるもので、
製織や製編によって布にしたとき、自然な凹凸感を出す
ことができる複合弾性糸からなる紐状糸とその製造方法
とを提供することを目的としている。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記の目的を達成するた
めに本発明の複合弾性糸からなる紐状糸は、弾性糸のコ
アを、シースとなる非弾性糸のフリースに重ねて仮撚り
を加えた複合弾性糸を編んで形成した紐状糸であって、
該紐状糸を引っ張り力が加わらない自由状態にしたと
き、その太さにムラができることを特徴としている。上
記ムラを1/fゆらぎによるムラとすることが望まし
い。
【0009】本発明の複合弾性糸からなる紐状糸の製造
方法は、非弾性繊維のフリースに、コアとなる弾性糸を
その張力を変動させながら供給して重ね、重ねられた弾
性糸とフリースとを仮撚りして複合弾性糸を製造する工
程と、製造された複合弾性糸を引き続き編機に供給し紐
状に編む工程とを有することを特徴としている。
【0010】または、非弾性繊維の粗糸をドラフトして
フロントローラからフリースとして紡出し、コアとなる
弾性糸をその張力を変動させながら供給してフロントロ
ーラの前又は後のいずれかから上記フリースに重ね、重
ねられた弾性糸とフリースとを仮撚りして複合弾性糸を
製造する工程と、製造された複合弾性糸を引き続き編機
に供給し紐状に編む工程とを有することを特徴としてい
る。
【0011】上記弾性糸が、1/fゆらぎにしたがって
その張力を変化する構成としたり、上記弾性糸の張力を
弾性糸の供給速度で変更させ、非弾性繊維の速度を1と
して弾性糸の供給速度を1〜1/4の範囲で変更させる
構成としたり、上記弾性糸の張力を弾性糸の供給速度で
変更させ、非弾性繊維の速度を1として弾性糸の供給速
度を1と1/4との2段階とし、そのピッチを1/fゆ
らぎで変化させる構成とすることができる。
【0012】
【発明の実施の形態】以下に本発明の実施例を図面に基
づいて説明する。図1は本発明の複合弾性糸からなる紐
状糸を製造する装置の図である。同図に示す装置は、ド
ラフトパート1と、仮撚部2と、小型編機3と、巻取部
4と、これらの駆動モータ6と、弾性糸供給ローラ7
と、このローラ7のモータ8と、制御部9とから構成さ
れている。
【0013】ドラフトパート1は、3線ローラのエプロ
ン式で通常のリング精紡機のドラフトパートに使用され
るものである。仮撚部2は、ドラフトパート1のフロン
トローラ1aから送られてきた糸に仮撚りを加える部分
である。小型編機3は、1〜6本の針を持った小径の筒
編機で、紐状の糸を作る部分である。
【0014】仮撚部2と小型編機3との下部にはプーリ
2a,3aがあり、これにベルトが掛けられてこれらの
ベルトは駆動モータ6の駆動軸6aのプーリ6b、6c
に掛けられて駆動される。
【0015】ドラフトパート1の後方には非弾性繊維で
形成された粗糸10があり、ここから粗糸10がドラフ
トパート1のバックローラ1bに供給される。粗糸10
としては、綿などの各種の天然繊維、ポリエステル等の
合成繊維、キュプラ等の再生繊維、又はこれらの2種以
上が混合されたものを使用することができる。ただし、
非弾性繊維が絹糸のようなフィラメントの場合は、ドラ
フトパート1は不要であり、フロントローラ1aの位置
に送り出しローラを設ければよいことになる。この場合
のフィラメントもここではフリースに含めるものとす
る。
【0016】粗糸10はバックローラ1bからエプロン
ローラ1cを経てフロントローラ1aに達するが、各ロ
ーラの表面速度が順次に早くなっているので、ローラ間
でドラフトを受け、フリース10aとなりフロントロー
ラ1aから仮撚部2へと送り出される。
【0017】フロントローラ1aの前方上方には、弾性
糸11があり、弾性糸11は、弾性糸供給ローラ7によ
りフロントローラ1aのエプロンローラ1c側(後側)
に入れられてフリース10aと重なる。この弾性糸11
としては、実施例では、ポリウレタンのフィラメントを
使用しているが、ポリエステルエラストマーのフィラメ
ントの弾性糸等を使用してもよい。
【0018】弾性糸供給ローラ7は、駆動モータ8によ
り回転され、このローラの表面速度で弾性糸11は送り
出される。一方、弾性糸供給ローラ7は、制御部9内の
1/fゆらぎ信号発生装置9aからの信号に応じてコン
トローラ9bで駆動モータ8の回転速度を増減する。
【0019】弾性糸11は、弾性糸供給ローラ7とフロ
ントローラ1aとの双方にニップされているが、通常
は、フロントローラ1aの表面速度の方を大きくして中
間で弾性糸11がたるまないようにしている。
【0020】しかし、本発明では、フロントローラ1a
の表面速度は一定であるのに対し、弾性糸供給ローラ7
の表面速度は駆動モータ8が変動させている。ただし、
最大速度でもフロントローラの表面速度を越えないよう
にし、弾性糸のたるみを防止している。その結果、弾性
糸11は大きく伸びたり、小さく伸びたりと、あるいは
殆ど伸びなかったり、と伸度が変動することになる。
【0021】このように、弾性糸11の伸度の変化は、
供給速度の変化で与えられることになるが、非弾性繊維
の速度(フロントローラ1aの表面速度)を1として、
1から1/4の範囲で変動させるのが適当である。
【0022】1/fゆらぎ信号は、時系列の信号のパワ
ースペクトルを分析すると、その周波数(f)の強度が
周波数にほぼ逆比例(1/fに比例)するものであり、
これは人体の基本的なリズムの変動と関係し、自然界に
おける変化とか手作りによりできるムラと同様な変動を
する。これは、別の見方をすると、人間は同じ刺激を継
続的に受けると飽きがくるが、逆にあまり変化が激しい
刺激は却って不快感を伴うもので、この両者を適当に併
せ持つゆらぎが1/fゆらぎであると言える。
【0023】1/fゆらぎ信号は、乱数列に所定の個数
の係数を演算して作った数値列より求めることができ、
コンピュータ等を用いて公知の方法(たとえば、特開平
7−243137号参照)で作成することができる。本
発明の装置の1/fゆらぎ信号発生装置9aはこのよう
にして形成される。
【0024】1/fゆらぎ信号発生装置9aで形成され
たゆらぎ信号は、コントローラ9bに入力され、コント
ローラ9bはこのゆらぎに応じてモータ8の回転速度を
変化させる。モータ8の回転が変化すれば、弾性糸供給
ローラ7の表面速度が変化し、弾性糸11は、大きく伸
ばされたり、小さく伸ばされたりすることになる。一
方、フロントローラ1aの表面速度は一定で、非弾性繊
維のフリース10aは、非弾性繊維がほぼ真っ直ぐに伸
びた状態で弾性糸11と重なって仮撚部2に入る。
【0025】仮撚部2では、その入口側と出口側とで反
対向きで同じ数の撚りを非弾性繊維のフリース10aと
弾性糸11との重なったものに加えている。すなわち、
入口側で加えられた撚りを出口側で解き、トータルとし
て撚りが0になる。しかし、非弾性繊維のフリース10
aは、弾性糸11をコアとしてその周囲にシースのよう
に巻き付き、複合弾性糸12として収束した状態とな
る。
【0026】こうして出来た複合弾性糸12は、張力を
加えない自然状態に置くと、弾性糸11の太さは一定に
なるが、非弾性繊維が多く巻き付いて太くなった部分
と、少なく巻き付いて細くなった部分とがランダムに分
布した糸となる。しかしながら、このままの状態では不
安定で、コアの弾性糸と、シースの非弾性糸との間でス
リップインと言われる滑りが起こり、ムラが無くなった
り、あるいは、少なくなってしまう。
【0027】そこで、仮撚部2から出てきた複合弾性糸
12は、そのまま引き続き小型編機3に導入され、ここ
で編まれて編物にされる。編機としては小型で針の数も
1〜6本程度の筒編機であるので、編物というよりも、
元の複合弾性糸より太い紐状糸14となり、巻取部15
に巻き取られる。
【0028】図2は小型編機3の針本数が1本の場合の
編組織を示す。図示のように、ほぼ同じ大きさのループ
が長手方向に一列に多数連続して形成されている。図で
は編み構造を拡大し、かつ、糸をゆるめた状態で描いて
いるが、実際のループの大きさは1〜2mm程度であり、
ループの交叉部では、ほぼ結ばれた状態である。したが
って、コアとシースとは一体になり、スリップインする
ことができなくなる。こうして形成された紐状弾性糸1
4を自然状態から伸ばすと、紐状糸14に太いところ
と、細いところ、つまり、伸びが小さい部分あるいは殆
ど伸びない部分と伸びる部分、とが1/fゆらぎで変化
してできることになる。また、伸ばした状態から自然状
態に戻すとき、縮む部分と縮みが小さい部分あるいは殆
ど縮まない部分が1/fゆらぎで変化してできることに
なる。
【0029】図3は、針が2本の編機で編んだ紐状糸の
編組織を示す図である。ループが3列形成されている。
図2において、A−A断面を通過する弾性糸の本数は3
本である。また図3のB−B断面を通過する弾性糸の本
数は5本である。すなわち、編機の針の本数をN本とす
ると、紐状糸14の太さは(2N+1)倍になる。本発
明の紐状糸14は、織機や編機に仕掛けられ布となるも
のであるから、余り太いと扱い難くなる。この観点か
ら、編機の針本数は、1から6本程度が適当である。ま
た、このように編んだ後、追撚を掛けると見かけの太さ
を細くして、製織製を良くすることができる。
【0030】本発明の紐状糸14を織物や編物に使用す
ると、凹凸感に富み、しかも、延伸性に優れた布を得る
ことができる。ムラが1/fゆらぎに基づいているの
で、自然なムラとなり、心地よく感じられる。
【0031】上記実施例では、弾性糸11をフロントロ
ーラの後側(エプロンローラ側)から供給したが、フロ
ントローラの前側から供給することとしてもよい。その
場合、フロントローラの前側に適当なガイドローラを設
けるとよい。また、この場合の弾性糸のテンションは、
弾性糸供給ローラ7と仮撚部2との間で加えられること
になる。
【0032】また、上記は1/fゆらぎを伸度に具現し
たが、伸度をたとえば、非弾性繊維の速度を1として、
1と1/4との2段階にし、これらの切り替えのピッチ
を1/fゆらぎで変化させることとしてもよい。
【0033】
【発明の効果】以上に説明したように本発明の複合弾性
糸からなる紐状糸は、弾性糸をコアとし非弾性繊維をシ
ースとした複合弾性糸を編んで形成した紐状糸であっ
て、該紐状糸を引っ張り力が加わらない自由状態にした
とき、その太さにムラができる構成なので、この紐状糸
を製織したり製編して布を作ったとき、布に凹凸がで
き、変化に富み、かつ、伸縮性に優れた布を得ることが
できる。
【0034】上記のムラを1/fゆらぎにより形成する
構成とすれば、自然界におけるのと同様のムラを得るこ
とができ、自然な凹凸のある布を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の複合弾性糸からなる紐状糸を製造する
装置の構成を示す図である。
【図2】針が一本の編機で編んだ紐状糸の編組織を示す
図である。
【図3】針が2本の編機で編んだ紐状糸の編組織を示す
図である。
【符号の説明】
1 ドラフトパート 1a フロントローラ 3 編機 10 非弾性繊維の粗糸 10a フリース 11 弾性糸 12 複合弾性糸 14 複合弾性糸からなる紐状糸
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭57−95331(JP,A) 特開 平9−111624(JP,A) 特開 平8−3846(JP,A) 特開 平4−361637(JP,A) 実開 平4−135990(JP,U) 特公 昭40−22014(JP,B1) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D02G 1/00 - 3/48 D02J 1/00 - 13/00 D04B 1/00 - 39/08

Claims (7)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 弾性糸のコアを、シースとなる非弾性糸
    のフリースに重ねて仮撚りを加えた複合弾性糸を編んで
    形成した紐状糸であって、該紐状糸を引っ張り力が加わ
    らない自由状態にしたとき、その太さにムラができるこ
    とを特徴とする複合弾性糸からなる紐状糸。
  2. 【請求項2】 上記ムラが1/fゆらぎによるムラであ
    ることを特徴とする請求項1記載の複合弾性糸からなる
    紐状糸。
  3. 【請求項3】 非弾性繊維のフリースに、コアとなる弾
    性糸をその張力を変動させながら供給して重ね、重ねら
    れた弾性糸とフリースとを仮撚りして複合弾性糸を製造
    する工程と、製造された複合弾性糸を引き続き編機に供
    給し紐状に編む工程とを有することを特徴とする複合弾
    性糸からなる紐状糸の製造方法。
  4. 【請求項4】 非弾性繊維の粗糸をドラフトしてフロン
    トローラからフリースとして紡出し、コアとなる弾性糸
    をその張力を変動させながら供給してフロントローラの
    前又は後のいずれかから上記フリースに重ね、重ねられ
    た弾性糸とフリースとを仮撚りして複合弾性糸を製造す
    る工程と、製造された複合弾性糸を引き続き編機に供給
    し紐状に編む工程とを有することを特徴とする複合弾性
    糸からなる紐状糸の製造方法。
  5. 【請求項5】 上記弾性糸が、1/fゆらぎにしたがっ
    てその張力を変化することを特徴とする請求項3又は4
    記載の複合弾性糸からなる紐状糸の製造方法。
  6. 【請求項6】 上記弾性糸の張力を弾性糸の供給速度で
    変更させ、非弾性繊維の速度を1として弾性糸の供給速
    度を1〜1/4の範囲で変更させることを特徴とする請
    求項5記載の複合弾性糸からなる紐状糸の製造方法。
  7. 【請求項7】 上記弾性糸の張力を弾性糸の供給速度で
    変更させ、非弾性繊維の速度を1として弾性糸の供給速
    度を1と1/4との2段階とし、そのピッチを1/fゆ
    らぎで変化させたことを特徴とする請求項3又は4記載
    の複合弾性糸からなる紐状糸の製造方法。
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