JP3399899B2 - 薄膜磁気デバイス - Google Patents

薄膜磁気デバイス

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JP3399899B2 JP2000043117A JP2000043117A JP3399899B2 JP 3399899 B2 JP3399899 B2 JP 3399899B2 JP 2000043117 A JP2000043117 A JP 2000043117A JP 2000043117 A JP2000043117 A JP 2000043117A JP 3399899 B2 JP3399899 B2 JP 3399899B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、薄膜磁気デバイス
に関する。
【0002】
【従来の技術】フォトリソグラフィー技術、薄膜成膜技
術の進歩により近年多くの薄膜磁気デバイスが有望視さ
れている。例えば、磁気記録の高密度化に伴いより高性
能な磁気ヘッドが求められており、バルク材を機械加工
して磁極を製造するフェライトヘッドに比べて微細加工
技術を応用した薄膜磁気ヘッドはその要件を満たすもの
として急速に使用されて広がっている。
【0003】薄膜磁気ヘッドの磁極磁性膜に要求される
特性として磁歪は重要な要因とされてきた。これには2
つの理由がある。まず1つは、高い透磁率を得るために
は磁歪と結晶磁気異方性を小さくすることが必要である
ので、絶対値の小さな磁歪が要求されてきた。
【0004】他の1つは、バルクハイゼンノイズの低減
のためである。特公昭64−7401号ではパーマロイ
を磁極とする薄膜磁気ヘッドにおいて磁歪が、負の組成
の磁性薄膜例えば81wt% から84wt% のNi含有量で
磁歪が−1×10-6〜−5×10-6のものを用いること
が提案されている。全く同様に特開平1−264620
号では磁歪は−1×10-6〜−1×10-5が好ましく、
このための組成はNiが81wt% 〜83wt% であるとさ
れている。IEEE Transactions on Magnetics,MAG-7, 14
6(1971)においてJ. P. Lazzari らが述べているよう
に、磁化過程は、バルクハウゼンノイズを伴う磁壁移動
モードでなく磁化回転モードとする必要があり、このた
めには磁路方向に磁化困難軸を有する一軸異方性を付与
することが重要であり、このためには上記の小さな負の
磁歪が必要であると考えられている。
【0005】また、特開平1−180994号ではめっ
き法の特徴を考慮して、どのようにして均一な組成の磁
性薄膜を製造するかの方法が述べられている。これは上
記の提案の僅かに磁歪が負となる組成範囲が例えば82
wt% ±1wt% と極めて狭いため、形状等による電流密度
分布に起因する磁極内での均一な組成分布を得るために
提案されたものである。
【0006】また、特公平5−76682号では薄膜磁
気ヘッドの磁極が磁歪分布を有し周辺部と中心部で正負
の異なる磁歪を有する組成が提案されている。ここでは
パターン周辺部を磁歪負とし大面積となる中央部を正磁
歪としており、平面形状のパターンでの周辺部にかかる
応力を考慮しているにすぎない。このためポール先端部
においてもその周辺部は負磁歪で中央部は正磁歪となっ
ており、さらに上部磁性層、下部磁性層ともに同じ磁歪
分布となっている。
【0007】一方、日本応用磁気学会誌Vol. 8, No. 2,
65(1984)にはポリイミド樹脂による段差上に形成された
NiFe膜の異方性が応力誘起異方性で説明できること
が示されている。しかし、応力が圧縮方向か引張応力か
は不明であり、正磁歪の膜は段差上では磁化過程の変動
が大きく好ましくないとされている。
【0008】また、特開平1−264617号では薄膜
磁気ヘッドにおいて絶縁層から上部磁極に加わる応力を
緩和し磁区構造の乱れを防止するために絶縁層上にギャ
ップ層、あるいは非磁性金属層の応力緩和層を設けるこ
とを提案されている。
【0009】また特開平4−195809号では磁気コ
アの材質組成が媒体対向部とバックコンタクト周辺部と
で異なる薄膜磁気ヘッドが開示されている。しかし、こ
のものは合金そのものの異方性定数を変化させることを
目的としており、応力による磁気弾性効果は考慮されて
いない。このため上部磁極下部磁極とも同じように媒体
対向部とバックコンタクト周辺部とで異なる組成材質と
している。
【0010】以上のように従来は磁場中成膜による誘導
磁気異方性を中心に考え、それを乱す原因となる磁気弾
性効果による異方性を極力低減すること、すなわち、磁
歪を負の値で小さくし磁極内での磁歪分布を小さくする
ことに注意が払われていた。また、応力は全て引張応力
のみが考慮され、成膜後のアニールによる有機物レジス
ト層からの圧縮応力は全く考えられていなかった。この
ため、当然、上部磁極にかかる圧縮応力の方向を左右す
るヨーク幅yとコンタクトホール幅xの比には注意が払
われずに薄膜磁気ヘッドの設計が行われていた。しか
し、このような手法ではノイズの小さな薄膜磁気ヘッド
を安定して製造することは困難であった。
【0011】また、各種磁気デバイスでは、反磁界の影
響が無くなるので磁極や磁心の形状としては閉磁路とな
るリング形状が最も好ましいとされるが、薄膜磁気デバ
イスにおいては基板上に形成された多数の微細なリング
形状の磁性膜パターンの1つ1つの円周方向に磁路を設
定するためには、円周方向に磁化困難軸をもつ異方性を
付与する必要がある。しかし、これを実現する手段はな
く、効率の低下を招いていた。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、微細
パターン軟磁性薄膜に所望の方向に異方性を付与された
高性能薄膜磁気デバイスを提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)乃至(12)の本発明により達成される。
【0014】(1)凸形状の有機物絶縁層を含む層と、
その上に軟磁性合金薄膜を有する薄膜磁気デバイスであ
って、前記軟磁性合金薄膜が正から負におよぶ磁歪分布
を有し、かつ凸形状の上部領域で正または負のいずれか
の磁歪を有し、凸形状の下部領域で負または正のいずれ
であってかつ上部領域とは極性の符号(+−)が異なる
磁歪であり、その凸形状の上部領域と下部領域とを結ぶ
中間領域においてゼロ磁歪である薄膜磁気デバイス。
【0015】(2)磁歪が正である上部領域の軟磁性合
金薄膜には磁路方向に圧縮応力が働いており、磁歪が負
である下部領域の軟磁性合金薄膜には磁路方向に引張応
力が働いている上記(1)の薄膜磁気デバイス。
【0016】(3)磁歪が負である上部領域の軟磁性合
金薄膜には磁路と直角な方向に圧縮応力が働いており、
磁歪が正である下部領域の軟磁性合金薄膜には磁路と直
角な方向に引張応力が働いている上記(1)の薄膜磁気
デバイス。
【0017】(4)凸形状の層と軟磁性合金薄膜層とが
リング状に形成されており、リングに沿って閉磁路が形
成されている上記(3)の薄膜磁気デバイス。
【0018】(5)前記軟磁性合金薄膜が電気めっき法
により成膜されたものであり、前記磁歪の絶対値が1×
10-5以下である上記(1)乃至(4)のいずれかの薄
膜磁気デバイス。
【0019】(6)前記有機物絶縁層は樹脂製であり、
前記軟磁性薄膜設層後に200℃以上の温度でアニール
されている上記(1)乃至(5)のいずれかの薄膜磁気
デバイス。
【0020】本発明の手法は、従来の発明が磁気コアを
形成する磁性膜が全ての領域において負磁歪で、かつコ
ア内でより均一な組成分布(磁歪分布)を理想としてい
たのと全く異なり、磁歪が正から負におよぶ組成分布を
磁極内で形成することに大きな特徴がある。
【0021】より具体的には、凸形状の上下間を結ぶ領
域において磁歪が零となるので、圧縮応力を積極的に利
用した磁気弾性効果による異方性を利用して目的の方向
に異方性を付与できる。しかも本発明の薄膜磁気デバイ
スでは、磁歪正領域で圧縮応力を、磁歪負領域で引張応
力を働かせたり、あるいはこの逆に応力を働かせること
によって目的の方向に異方性を付与できる。
【0022】さらに、磁歪の絶対値を1×10-5以下と
すれば、このデバイスの動作時の磁歪の影響が僅少とな
ると同時に異方性が適正化され、効率が向上すると同時
にノイズの発生を少なくできる。また、軟磁性合金薄膜
を電気めっき法により成膜すれば、製造コストが安価
で、かつ、安定した磁気特性を発揮させることができ
る。
【0023】この際、デバイスとしては薄膜磁気ヘッド
が最も好適であり、コイル層を挟む下部および上部の磁
極を有し、下部磁極およびこの下部磁極に近い上部磁極
の領域の合金組成の磁歪が負であり、下部磁極からコイ
ル層を挟み離れている上部磁極の領域の合金の磁歪が正
であり、上部磁極の中間領域において磁歪ゼロの領域を
有するものとすれば、薄膜磁気ヘッドの再生動作時にお
ける再生用の磁気に対する前記磁極の合金組成の磁歪が
全体として略零となり、これにより再生ノイズが少なく
なる。
【0024】そして、それぞれコイル層を挟むヨーク部
と、互いに近接もしくは接合するポール部とコイルホー
ル部とを備える下部および上部の磁極を有し、上記磁極
のヨーク部を正磁歪組成とし、下部磁極のポール部とヨ
ーク部とを負磁歪組成とすれば、薄膜磁気ヘッドの再生
動作時における再生用の磁気に対する前記ヨーク部、ポ
ール部の磁歪が全体として略零となり、これにより再生
ノイズがさらに少なくなる。
【0025】また、前記上部磁極が一層以上の負磁歪組
成膜層と一層以上の正磁歪組成膜層とを有し、ポール部
を負磁歪組成膜層のみにより形成すれば、この薄膜磁気
ヘッドの再生動作時における再生用の磁気に対する特に
ポール部の磁歪分布が適切となり、これにより再生ノイ
ズがさらに少なくなるとともに、磁極を複数層の成膜層
により形成しているので、安定した磁気特性を発揮させ
ることができる。さらに、この場合も前記磁歪の絶対値
を1×10-5以下とすれば、この薄膜磁気ヘッドの再生
動作時における再生用の磁気に対する前記磁極の磁歪の
影響が僅少となると同時に異方性が適正化され、効率が
向上すると同時に、これにより再生ノイズが少なくな
る。また、軟磁性合金薄膜を電気めっき法により成膜す
れば、製造コストが安価で、かつ、安定した磁気特性を
発揮させることができる。そして、2x>yとすること
により、磁路方向に異方性を付与することがより一層容
易になる。
【0026】
【発明の実施の形態】以下、本発明の実施の形態につい
て詳細に説明する。
【0027】本発明の薄膜磁気デバイスの概念に含まれ
る具体的製品としては薄膜磁気ヘッドや薄膜磁気トラン
ス等があるが、以下の説明では薄膜磁気ヘッドの構造を
一例として挙げて説明する。
【0028】図1に示される薄膜磁気ヘッド1は、複数
の導体からなるコイル層5を挟むように配置された平坦
な軟磁性薄膜磁性体からなる下部磁極2と、凸形状に屈
曲した軟磁性薄膜磁性体からなる上部磁極3とから構成
される磁極4を具備し、この上部磁極3に、前記コイル
層5を挟むヨーク部6とギャップ部8を有するポール部
7a、互いに接合するコンタクトホール部7bを形成し
ている。また、コイル層5を絶縁する有機物絶縁層9が
凸形状に設けられている。
【0029】この種の薄膜磁気ヘッド1を含む薄膜磁気
デバイスの軟磁性薄膜磁性体はCo、Ni、Fe等の磁
性金属を主成分とする合金からなり、一軸磁気異方性を
有し特に磁歪値がゼロの組成範囲を含むものである。例
えばNiFe合金であるパーマロイではNi−20wt%
Fe付近が磁歪が零なるゼロ組成であり、CoFe合金
ではCo−10wt% Fe付近でゼロ磁歪となることが知
られている。この他、CoNiFe合金でのゼロ磁歪線
上の組成等も使用可能である。
【0030】さらに磁歪値は合金の結晶面配向により異
なる挙動を示し、同一組成の合金でも面配向が異なると
異なる磁歪を示す。また結晶粒径や微量な不純物の混入
により同一の主成分組成でも異なる磁歪を示す。このよ
うな場合でも磁性薄膜内において磁歪がゼロである組成
領域を有し、正磁歪領域、負磁歪領域を有していればよ
い。すなわち重要なのは組成ではなく磁歪値である。
【0031】このような磁歪が正から負におよぶ合金膜
の磁極で低ノイズ磁気ヘッドデバイスが得られる理由と
して、応力による磁気弾性効果による異方性が考えられ
る。すなわち薄膜磁気ヘッドの磁化機構をバルクハウゼ
ンノイズを伴う磁壁移動でなく、磁化回転を中心とする
ものとするためには一軸異方性を磁性体内に付与するこ
とが重要である。このために従来は磁場中で成膜し誘導
磁気異方性によりこれを実現しようとしていた。しかし
磁気弾性効果による異方性への影響があり、特に薄膜磁
気ヘッドはいろいろな異なる物性値、弾性率、内部応
力、熱膨張係数、ポアソン比等を有する材料で構成され
ている。このため応力の分布は極めて複雑であった。
【0032】本発明者は3次元応力解析を行い、アニー
ル処理を行うことで図3のような現象を見い出した。つ
まり有機物絶縁層9として使用している有機物樹脂層が
上部磁極3成膜後に変形、収縮しあるいは熱応力が発生
し、これにより下部磁極2とコイル層5、有機物絶縁層
9を挟んで対向している凸領域の上部磁極合金層に磁路
方向に圧縮応力Pを与えているのである。また同時に下
部磁極2および下部磁極2に接しているか近い部分の上
部磁極合金には磁路方向に引張応力Qが働いている。
【0033】この結果、有機物絶縁層には矢印Rの変形
力が働いている。これは下部磁極2が基板(図示せず)
と直接または間接的に固定接合されており、しかも上部
磁極3と下部磁極2とが、凸形状のコイル層5、有機物
絶縁層9を中間に挟んだ状態で、ギャップ8とコンタク
トホール部7bで固定接合されているためである。
【0034】上部磁極3のヨーク部分が磁路方向に圧縮
応力を受けている場合には、磁歪が正の場合に磁路方向
と直角の面内方向に異方性が誘導される。これに対して
下部磁極2および上部磁極3のポール部分7aやコンタ
クトホール部7bでは磁路方向に引張応力を受けている
ので、負磁歪で磁路方向と直角の面内方向に異方性が誘
導される。
【0035】すなわち成膜時の磁場印加での誘導磁気異
方性による異方性制御でなく、下部磁極2とコイル層
5、有機物絶縁層9を挟んだ状態で対向している凸領域
の上部磁極合金層の磁歪を正とすることで、圧縮応力を
積極的に利用した磁気弾性効果による異方性を用いて目
的の方向に異方性を付与するものである。図2に本発明
の薄膜磁気ヘッド1の上部磁極3を上面から見た場合の
概念図を示す。図2のAおよびC部分の磁歪が負であり
B部分の磁歪が正であることが重要である。すなわちA
およびC部分には磁路方向に引張応力が働いておりB部
分には圧縮応力が働いている。
【0036】次に、本発明の薄膜磁気ヘッド1を製造す
る方法について説明する。成膜方法としてはスパッタ
法、真空蒸着法、めっき法等が使用可能であるが、特に
電気めっき法が好ましい。この理由は電気めっきにおい
ては、合金を成膜する際、金属イオンの析出電位の違い
等により電流密度や拡散速度により合金組成が変化す
る。この特徴を活用することで凹凸のある上部磁極3の
面内で容易に組成分布を形成することが可能である。所
望の磁歪分布をもつ磁性薄膜は、めっき液の金属組成
比、金属塩濃度、導電塩濃度、電流密度条件、液の攪拌
速度等を適宜調整することにより得られる。磁歪分布は
組成分布と相関がある場合には、組成分布を大きくとる
ために成膜時の浴電圧を高くすることが有効である。
【0037】例えば、NiFe合金、すなわちパーマロ
イめっきにおいては高電流密度部分や拡散速度の遅い部
分は変則共析として知られている合金析出メカニズムに
よりFe含有量が多くなる。磁歪がゼロの組成よりもF
eが多い領域では磁歪は正を示し逆にFeが少ない領域
では磁歪は負を示す。このため成膜条件を適当に選択す
ることで上部磁極3の中でも凸部分で下部磁極2から離
れた部分を正磁歪組成合金、下部磁極2と接しているか
近い部分は負磁歪組成合金とすることが容易にできる。
【0038】さらに詳細に説明するならば、本発明はい
わゆるレジスト層等の有機物絶縁層9により凸になった
部分を他の部分と異なる組成にするものであり、この高
低を積極的に利用して成膜を行う。たとえば、凸部分は
電流密度が集中して高くなるので、電流密度が高い場合
に磁歪が正の組成となるようにする。前記のとおり、パ
ーマロイの場合では磁歪正にするには組成で鉄含有量を
多くすればよい。特開平1−180994号に示されて
いるようにパーマロイのめっきでは横軸に電流密度、縦
軸に鉄含有量をとり、その関係をグラフに表わすと山状
になり、鉄含有量最大となるピークが存在する。すなわ
ち低電流領域では電流密度の上昇につれ鉄含有量は増加
し、高電流密度領域では逆に電流密度を上げると鉄含有
量は減少する。このため本発明では低電流密度領域で成
膜すれば前記の磁歪分布を得ることができる。
【0039】電気めっきにおける成膜時の電流密度は
0.01〜20A/dm2が好ましく、直流電流の場合に
は、特に0.5〜5A/dm2が好ましい。小さすぎると析
出が遅く、工業的に利用が困難となり、大きすぎると所
望の組成が得にくく、浴の分解が進行しやすい。また、
後述するパルス電流を用いる場合には0.01〜20A/
dm 2の範囲が好ましい。
【0040】また、上部磁極3の成膜を3回以上に分け
て、異なる組成の面内均一膜を積層した構造を形成する
ことも可能である。この場合は下部磁極2と接している
か近い部分、特にポール近傍を負磁歪組成合金とし、中
間部をゼロ磁歪組成合金とし、凸部分で下部磁極2から
離れたヨーク部分を正磁歪組成合金として順に回に分
けて成膜すればよい。
【0041】さらに磁極を3層以上の構造とすることで
も目的を達成できる。例えば、上部磁極3の成膜時に第
1層として磁極全体を負磁歪組成合金で形成した後に、
中間部をゼロ磁歪組成合金とし、ポール近傍を除く部分
を正磁歪組成合金とし積層することで機能的に同じ効果
が得られる。通常のヘッドでも、磁極をポールヨーク部
分に分けて成膜する2段めっきが行われている。例えば
特公平3−8004号では、小さい面積のヨーク部分を
先に成膜してから広い面積のポールヨーク部分を成膜し
ている。しかし、これは単に磁束の局部的飽和の防止の
ためであり、本発明のように上部磁極成膜の際にポール
ヨーク部分を負磁歪組成で成膜し、中間部をゼロ磁歪組
成とし、ヨーク部分を正磁歪組成で成膜するものは従来
存在しない。
【0042】また、薄膜磁気ヘッド1においては、圧縮
応力Pを磁路方向に働くようにするために、磁気コアの
形状としてコンタクトホール7bの幅xと上部磁極3の
磁路方向に垂直な方向の寸法すなわちヨーク部6の幅y
との比が重要である。xがyより大きいか等しいことが
最も望ましいが、2x>y一般に2x>y>1/2xの
関係を満たすことが必要である。この範囲をはずれると
圧縮応力Pが磁路と垂直方向や斜め方向にも強く働き、
磁路方向に異方性を付与することが困難となる。ヨーク
幅が一定でない場合はその最大幅をyとする。また、コ
ンタクトホール幅xとは上部磁極3が有機物樹脂絶縁層
9を介さずに下部磁極2と直接接合している最大幅であ
る。なお、yは20〜100μm 程度である。
【0043】合金組成として、NiFe合金を用いた場
合には図6に示されるようにNi含有量が81.18wt
% の時にゼロ磁歪となっており、それよりもNi含有量
が少ない場合に正磁歪が、Ni含有量が多い場合に負磁
歪が得られている。しかし前述のように、微量成分の混
入等で磁歪は大きく変化するので実際にデバイスに使用
される膜の特性により組成は決定される。磁歪の絶対値
は好ましくは1×10 -5以下、特に好ましくは0.5×
10-5以下である。磁歪の絶対値がこの範囲をこえると
磁気弾性効果による異方性が強くなりすぎて実効透磁率
の低下を招く。前述したように磁気弾性効果による異方
性の大きさは応力と磁歪の積となる。有機物絶縁層9か
らの圧縮応力が大きいときには、その応力を受ける磁性
層の磁歪が小さくなければ実効透磁率が低くなってしま
う。一般に有機物絶縁層9からの応力は数十から100
0MPa 程度の範囲に管理されることが望ましい。誘導磁
気異方性を適正に付与するための膜の磁歪値は1×10
-8以上程度あれば問題はない。また応力は磁路方向に作
用することが望ましいが、磁路と垂直方向に作用する成
分が含まれている場合には、磁路方向と垂直方向の成分
の差を実効応力と考えてその実効応力が本発明の応力と
なっていればよい。
【0044】有機物絶縁層9としては十分な絶縁抵抗を
有するのは無論、パターニング可能なこと、凸型の樹脂
の上にかぶさった形で成膜される上部磁極3に有効に応
力を与えることができることが必要であり、このために
は各種樹脂、とりわけ各種のフォトレジスト、例えば、
環化ポリイソプレン、ポリイミド、ポリイミドイソイン
ドロキナゾリンジオン、ノボラック系、特にノボラック
系フォトレジストが好ましい。上部磁極3に圧縮応力P
を与えるメカニズムについては明確ではないが、アニー
ル温度で磁性薄膜の塑性変形が生じ、レジスト層と磁性
薄膜間の熱応力が生じて応力分布が生じることが考えら
れる。図4、図5にこのような場合のシミュレーション
結果を示す。レジスト層の熱膨張係数は、磁性合金等の
金属やセラミックに比べて非常に大きい。例えば、ノボ
ラック系樹脂の熱膨張係数は300から500×10-7
/℃であり、パーマロイ膜は128×10-7/℃であ
る。例えば軟化点が205℃のノボラック樹脂の上にパ
ーマロイ膜を形成し、その後250℃でアニールを行う
と、レジストが見かけ上ふくれる。この結果、図4のシ
ミュレーション結果に示されるように、磁性薄膜の上部
磁極3の変形が生じ、アニール時に上部磁極3は上方に
持ち上げられる。その後常温25℃に戻すと、レジスト
の有機物絶縁層9は大きく縮み、上部に強い圧縮応力P
が働く。また下部は下方の厚い基板の影響で引張応力Q
が働く。なお、この図4では変形の大きさを50倍に拡
大しデフォルメが行われている。また、図4中に画かれ
てはいないが、下地の基板、保護膜のアルミナ膜等もシ
ミュレーションの計算には入れられている。なお、図
4、図5は前記の2層積層タイプのものである。
【0045】この他、レジスト層に含まれていた溶剤の
うち高沸点成分が蒸発してレジスト層が収縮すること
や、レジスト成分そのものの分解反応によりレジスト層
が収縮することや、あるいは脱水反応等による縮合重合
によりレジスト層が収縮することや、さらには軟化点以
上に加熱された後の冷却過程における熱応力が発生する
ことも考えられる。前記のとおり、レジスト層の熱膨張
係数は、金属やセラミックに比べて非常に大きい。この
差によりたとえば軟化点が205℃のノボラック樹脂の
上にパーマロイ膜を形成した後に250℃のアニールを
行うと、常温に戻した時には180℃以上の温度差によ
る熱応力が発生する。またいずれのメカニズムにおいて
も乾燥レジストがパーマロイに圧縮応力を与えるもので
あれば本発明の有機物絶縁層9として利用可能である。
応力を所望の方向に発生させるために凸形状の角部分を
なだらかにすることも重要であり、上部磁性薄膜の成膜
前に低温で熱処理を行い、レジストパターンのだれを生
じさせることもできる。
【0046】応力を上部磁極3に有効に付与するために
は、上部磁極成膜後にアニールすることが有効である。
アニール温度、アニール時間は応力状態が目的の状態と
なるように適宜選択されるが、200℃以上、好ましく
は250℃以上、さらには250〜350℃で0.5時
間以上、通常0.5〜3時間である。また強制的なアニ
ール処理を行わなくとも、薄膜コイルには使用時には単
位断面積当りで見ると超高電流密度の電流が加わるため
に発熱が大きく、実使用前のウォーミングアップにより
アニール同様の効果が期待される。
【0047】このような場合、有機物絶縁層9の厚さは
0.5〜500μm 程度で有効である。また、磁性薄膜
の厚さは0.01〜10μm 程度で有効である。なお、
図示されていない基板はAl23−TiC系等各種セラ
ミックが可能である。そして、下部磁極2はこの基板上
に直接または各種下地層ないし下地構造を介して設けら
れる。
【0048】本発明においては、強い圧縮応力により、
上部磁性層とその下のレジスト層との剥離が生じること
もある。剥離が生じるとレジスト層からの圧縮応力は上
部磁極には作用しなくなる。すなわち引張応力しか作用
しない。これを防止するためには、層間の密着強度を高
めることが重要である。従来から薄膜の密着強度改善に
効果があると知られている紫外線照射法や酸素アッシン
グ処理、プラズマ重合による表面改質等はいずれも有効
である。また磁性層の下部に密着向上のための下地膜と
してクロム、チタン等の薄膜を形成することも有効であ
る。
【0049】このような上部および下部の磁極の磁区構
造を観察するにはスキャンニングカー効果顕微鏡(Scan
ning Kerr EffectMicroscopy: 例えばPhase Metrics 社
製)にて5MHz にて実ヘッド状態で観察すればよい。こ
の観察の結果、本発明では磁路方向が困難軸となってい
る。アニール前にも同じようなパターンではあるが、1
80度磁壁の本数はアニール後に比べて少なくやや異方
性が弱い。磁路方向への異方性として磁場中成膜による
誘導磁気異方性や成膜直後の弱い引張応力による磁気弾
性異方性では、十分な異方性強度は得られていない。ア
ニールによる強い圧縮応力に起因する磁気弾性異方性に
よって初めて所望の強い磁気異方性が得られる。
【0050】また、本発明は、薄膜トランス等の薄膜磁
気デバイスにおいても同様に有機物絶縁層9の形状と磁
気コアの形状、アニール条件等を選択することで所望と
する磁路方向に磁化困難軸を磁気弾性効果により付与す
ることが可能である。例えば、図7に示されるようなリ
ング形状コア12においても、リング形状で断面が凸状
の有機物絶縁層11を形成した上に磁性層12を成膜す
ることで磁路方向に困難軸を有する異方性が付与可能で
ある。なお、図7ではコイルを省略している。この場合
には下部磁極は存在しないが凸状の上部磁極が有機物絶
縁層11上に形成されており、その両端が有機物絶縁層
11を介さずに下地基板13上に接合している。このた
め図8に示されるような応力が働いている。図8におい
てPが圧縮応力、Qが引張応力、Rが有機物絶縁層11
の変形方向を示している。この場合に円周方向、すなわ
ち断面図において紙面垂直方向にも圧縮応力が働くが、
その力は小さく無視できる。すなわち薄膜磁気ヘッド形
状で考えればヨーク幅がコンタクトホール幅に等しい場
合と等価であると考えられる。そして圧縮応力は磁路と
直交する方向に働くので、この圧縮応力部分の磁性層組
成を負磁歪組成とすることで円周方向に困難軸を有する
異方性が付与される。また、下部では引張応力Qが働く
ので、この部分の組成を正磁歪組成とすることで、円周
方向に困難軸を有する一軸異方性が大きくなり、リング
状コア12の実効透過率が向上し、インダクタンス特性
が向上する。これはまた、同様に四角形状磁心にも適用
できる。これらの場合も有機物絶縁層11の厚さは0.
5〜50μm 、磁性層12の厚さは0.01〜10μm
程度である。また下地基板13はアルミナ、アルミナ−
ガラス系等種々のものが使用可能である。
【0051】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発
明をさらに詳細に説明する。
【0052】以下にその具体的実施例および比較例を示
し本発明を説明する。 実施例1 3インチ2mm厚のAl23−TiC基板上に下地アルミ
ナ膜をスパッタ法により成膜した上に電気めっき導電下
地層として1000オングストロームのパーマロイ膜を
スパッタ法により成膜した。下部磁極レジストマスクパ
ターンをパターニングした後に以下に示す条件にて電流
密度1A/dm2で下部磁極パーマロイめっき成膜を行っ
た。
【0053】 NiSO46H2O 150g/l FeSO47H2O 5−20g/l H3BO3 20g/l NH4Cl 10g/l サッカリン 1g/l 界面活性剤 0.05g/l 浴温 20℃ pH2.5 下部磁極パターニング後にアルミナギャップ層を成膜し
た。この後ノボラック系フォトレジストを用いた絶縁層
と銅めっき膜を用いたコイル層を順に3層積層した。ア
ニール後の絶縁層の総厚は20μm とした。さらにその
上にノボラック系フォトレジストの2μm の絶縁層を成
膜した上に電気めっき導電下地層として1000オング
ストロームのパーマロイ層をスパッタ法により成膜し
た。絶縁層のキュアアニールはその度に230℃1時間
行った。上部磁極パターニング後に行った上部磁極の成
膜は下部磁極成膜時と浴組成条件で各種の組成分布、す
なわち磁歪分布を有する磁極を成膜するために電流密度
を1A/dm2から8A/dm2に変化させて行った。上部磁極パ
ターンのコンタクトホール幅xは50μm 、ヨーク幅y
は60μm とした。なお、組成の絶対値はめっき浴中の
鉄イオン量を増減することで目的の組成を得た。
【0054】上部磁極成膜後にパターニングを行った後
に、250℃、1時間のアニール処理を行った。その
後、20μm のアルミナスパッタ保護膜を成膜し、機械
加工、ヘッドアセンプリを行い薄膜磁気ヘッドとした。
【0055】NiFeめっき条件を変化させて作成した
試料1ないし試料8の薄膜磁気ヘッドを用いて図1およ
び図2の各点aないしiの断面組成分布を測定した。測
定結果を表1に示す。表1中Ni含有量をwt% で示す。
なお、試料1ないし試料5は実施例、試料6ないし試料
8は比較例である。この組成分布は、同一ウェハー中の
近傍部分の同一形状の薄膜磁気ヘッドを断面加工した後
にX線マイクロアナライザーにて測定したものである。
【0056】
【表1】
【0057】表2に表1の各測定点の磁歪値を示す。単
位は10-6である。この磁歪の値は同じ組成、面配向の
薄膜を光てこ法により測定したデータを基に推定したも
のである。
【0058】
【表2】
【0059】表3にウイグルノイズの測定結果を示す。
本実施例としての試料1ないし試料5は、比較例として
の試料6ないし試料8に比べてウイグル値が極めて小さ
いことがわかる。なお、ウイグルの測定は下記のように
行った。すなわち、3.5インチのスパッタ法による磁
気ディスクを媒体とし、書き込み周波数7MHz にて書き
込み再生を繰り返しその再生出力の変動値を%で表示し
ウイグルとした。
【0060】
【表3】
【0061】さらに、磁区構造をスキャンニングカー効
果顕微鏡(Phase Metrics 社製)を用いて5MHz にて実
ヘッド状態で観察した。試料1では、図9に示されるよ
うに磁路方向が困難軸となっていた。試料2、3、4、
5は試料1と同じパターンであり、試料7、8は図10
に示す試料6と同じパターンであった。なおアニール前
の試料は全てほぼ試料1と同じようなパターンであった
が、180度磁壁の本数は試料1に比べて1本少なくや
や異方性が弱いと見られた。比較例の試料6ではポール
部分に近い領域で縦方向に磁区が見られた。アニール前
には磁路方向に弱い引張応力が作用しているためと見ら
れる。なお、図9、図10中縦軸が磁路方向であり、ま
た、横軸、縦軸とも単位はμm である。
【0062】また別途、コンタクトホール幅xを50μ
m 、ヨーク幅yを100μm とした(2x=y)各種の
組成分布を有する薄膜磁気ヘッドを試料として作成評価
したが、下部磁極および下部磁極に接しているか近い部
分の上部磁極合金の磁歪が負であり、下部磁極からコイ
ル層、有機物絶縁層を挟み離れている上部磁極合金の磁
歪が正であり、その中間領域においてゼロ磁歪組成の域
部磁極合金を有する試料でもウイグルの値は上記よりも
劣るものとなった。 実施例2 実施例1において、磁極の成膜をポールヨーク部分とヨ
ーク部分とに分けて2回行った。すなわち、下部磁極は
ポールヨーク部分を3μm とヨーク部分を2μm 、共に
82.0wt% Ni−18wt% Feの均一な組成となるよ
うに成膜した。また、上部磁極のポールヨーク部分は2
μm 厚で82.0wt% Ni−18wt% Feの均一な組成
とした。
【0063】実施例の試料9では、ヨーク部分を2μm
厚、78wt% Ni−22wt% Feの均一な組成とし、ま
た比較例の試料10では、ヨーク部分を2μm 厚、82
wt%Ni−18wt% Feの均一な組成とした。その結
果、試料9のウイグルは0.8%であったが、試料10
のウイグルは2.8%であった。この場合試料10の全
磁極および試料9の下部磁極全面と上部磁極のポール部
分は磁歪が負の組成である。一方、試料9では上部磁極
のヨーク部分は磁歪が負の下地膜と正の上部膜の多層構
造となっているが上部磁極の磁歪絶対値が大きいために
膜全体としては正の磁歪の膜の挙動を示したものであ
る。 実施例3 図7のコア形状のトランスにて本発明の効果を確認し
た。すなわち、コア寸法は内径500μm 、外径600
μm とし、レジスト層の厚さは30μm とし、この上に
1.0μm の厚さのパーマロイ膜を磁場中成膜した。コ
イルは巾15μm、厚さ3μm とし、1次コイル、2次
コイルともに40ターンとした。パーマロイの磁場中成
膜後に真空中で280℃、1時間のアニールを行い異方
性を付与した。頂部の磁歪を−0.9×10-6、底部の
磁歪を+1.5×10-6とした場合には、インダクタン
スLは80nHであった。これに対し、磁歪−0.3×1
-6の均一組成膜(比較)では、Lは30nHであった。
なお、インダクタンスの測定は、ヒューレットパッカー
ド社製ネットワークアナライザHP4195Aを用いて
行った。
【0064】
【発明の効果】本発明の薄膜磁気デバイスは、凸形状の
上下間領域において磁歪が零となるので圧縮応力を積極
的に利用した磁気弾性効果による異方性を利用して目的
の方向に異方性を付与できるという効果が実現する。そ
して、磁歪正で圧縮応力を、磁歪負で引張応力を働かせ
るか、あるいはその逆の応力を働かせることによって目
的の方向に異方性を付与できる。
【0065】さらに、磁歪の絶対値を1×10-5以下と
すれば、このデバイスの動作時の磁歪の影響が僅少とな
ると同時に異方性が適正化され、効率が向上すると同時
にノイズの発生を少なくできるという効果が実現する。
【0066】また、軟磁性合金薄膜を電気めっき法によ
り成膜すれば、製造コストが安価で、かつ安定した磁気
特性を発揮させることができるという効果を奏する。
【0067】さらに薄膜磁気ヘッドとしては、コイル層
を内蔵するレジスト層を挟む下部磁極および上部磁極を
設け、下部磁極およびこの下部磁極に近い上部磁極の領
域の合金組成の磁歪を負とし、上部磁極の領域の合金の
磁歪を正とし、上部磁極の中間領域において磁歪ゼロの
領域とすれば、薄膜磁気ヘッド再生動作時において再生
用の磁気に対する前記磁極の合金組成の磁歪が全体とし
て略零となり、これにより再生ノイズが少なくなる。そ
して、それぞれコイル層を挟むヨーク部と、互いに近接
もしくは接合するポール部とコンタクトホール部とを備
えた下部磁極および上部磁極を設け、上部磁極のヨーク
部を正磁歪組成とし、ポール部およびコンタクトホール
部を負磁歪組成とすれば、再生動作時における再生用の
磁気に対するヨーク部、ポール部の磁歪が全体として略
零となり、これにより再生ノイズがさらに少なくなる。
また、上部磁極として一層以上の負磁歪組成膜層と一層
以上の正磁歪組成膜層とを設け、ポール部を負磁歪組成
膜層のみにより形成すれば、再生動作時における再生用
の磁気に対する特にポール部の磁歪分布が適切となり、
これにより再生ノイズがさらに少なくなるとともに、磁
極を複数層の成膜層により形成しているので、安定した
磁気特性を発揮させることができる。また、磁歪の絶対
値を1×10-5以下とすれば、再生動作時における再生
用の磁気に対する前記磁極の磁歪の影響が僅少となると
同時に異方性が適正化され、効率が向上すると同時に、
これにより再生ノイズが少なくなる。そして、軟磁性合
金薄膜を電気めっき法により成膜すれば、製造コストが
安価で、かつ、安定した磁気特性を発揮させることがで
きる。さらに、x、yを所定の寸法比に規制すると、磁
路方向に異方性を付与することが容易になる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の薄膜磁気デバイスの一例としての薄膜
磁気ヘッドの断面図である。
【図2】本発明の薄膜磁気デバイスの一例としての薄膜
磁気ヘッドの平面図である。
【図3】本発明の薄膜磁気デバイスの一例としての薄膜
磁気ヘッドの断面構造における有機物絶縁層の変形方向
と磁気コアにかかる応力の概念説明図である。
【図4】アニール時の形状変化を示すシミュレーション
図である。
【図5】アニール後の形状変化と応力分布を示すシミュ
レーション図である。
【図6】NiFe軟磁性薄膜の組成と磁歪の関係図であ
る。
【図7】薄膜磁気トランスの構造説明図である。
【図8】上記トランスの応力の概念説明図である。
【図9】本発明の薄膜磁気ヘッドにおけるパーマロイ薄
膜の磁区構造を示す写真である。
【図10】比較試料の薄膜磁気ヘッドにおけるパーマロ
イ薄膜の磁区構造を示す写真である。
【符号の説明】
1 薄膜磁気ヘッド 2 下部磁極 3 上部磁極 5 コイル部 6 ヨーク部 7a ポール部 7b コンタクトホール部 8 ギャップ 9 有機物絶縁層
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 吉田 誠 東京都中央区日本橋一丁目13号1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (72)発明者 長 勤 東京都中央区日本橋一丁目13号1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−252111(JP,A) 特開 昭61−192011(JP,A) 特開 平2−83810(JP,A) 特開 平5−40915(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G11B 5/31

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 凸形状の有機物絶縁層を含む層と、その
    上に軟磁性合金薄膜を有する薄膜磁気デバイスであっ
    て、 前記軟磁性合金薄膜が正から負におよぶ磁歪分布を有
    し、かつ凸形状の上部領域で正または負のいずれかの磁
    歪を有し、凸形状の下部領域で負または正のいずれかで
    あってかつ上部領域と符号の異なる磁歪であり、その凸
    形状の上部領域と下部領域を結ぶ中間領域においてゼロ
    磁歪である薄膜磁気デバイス。
  2. 【請求項2】 磁歪が正である上部領域の軟磁性合金薄
    膜には磁路方向に圧縮応力が働いており、磁歪が負であ
    る下部領域の軟磁性合金薄膜には磁路方向に引張応力が
    働いている請求項1記載の薄膜磁気デバイス。
  3. 【請求項3】 磁歪が負である上部領域の軟磁性合金薄
    膜には磁路と直角な方向に圧縮応力が働いており、磁歪
    が正である下部領域の軟磁性合金薄膜には磁路と直角な
    方向に引張応力が働いている請求項1記載の薄膜磁気デ
    バイス。
  4. 【請求項4】 凸形状の層と軟磁性合金薄膜層とがリン
    グ状に形成されており、リングに沿って閉磁路が形成さ
    れている請求項3記載の薄膜磁気デバイス。
  5. 【請求項5】 前記軟磁性合金薄膜が電気めっき法によ
    り成膜されたものであり、前記磁歪の絶対値が1×10
    -5以下である請求項1乃至4のいずれかに記載の薄膜磁
    気デバイス。
  6. 【請求項6】 前記有機物絶縁層は樹脂製であり、前記
    軟磁性薄膜設層後に200℃以上の温度でアニールされ
    ている請求項1乃至5のいずれかに記載の薄膜磁気デバ
    イス。
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