JP3399838B2 - 熱間圧延合金材の製造方法 - Google Patents

熱間圧延合金材の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、連続鋳造鋳片から
表面品質の優れた30〜80質量%のNiを含む鉄合金
を熱間圧延して製造する方法に関するものである。以下
本発明において、成分の%は質量%をあらわす。
【0002】
【従来の技術】高Ni合金は主に電子部品材料として使
用されている。例えば、Fe−42%Ni合金は電気伝
導性、耐熱性、曲げ加工性、めっき付着性及びはんだ付
性が優れていることから、ICリードフレームに使用さ
れている。また、熱膨脹率の最も小さいFe−36%N
i合金はカラーテレビ受信機のシャドウマスクなどに使
用されている。さらに、PD材、PB材、PC材など3
0〜80%Ni合金は磁気特性が優れていることや蛍光
表示管などの封着性の点から、磁気シールドケースなど
の磁性材料、電子材料や封着材料として使用されてい
る。
【0003】これらリードフレームやシャドウマスク、
磁性材料、封着材料などには圧延板が使用されるが、こ
の表面品質に対する要求は極めて厳しい。また、高価な
元素を多量に含有しているため、その歩留向上は製造コ
スト低減の最重要項目であり、特に製造工程での疵防止
による歩留向上が望まれている。
【0004】これら高Ni合金は一般に熱間加工性が悪
く、連続鋳造によって製造される鋳片は、鋳造組織の結
晶粒界へ不純物が偏析しているため、熱間圧延時に粒界
割れを生じ、熱間圧延板に表面割れや板エッジの耳割れ
による表面疵が多発しやすく、そのため該表面疵の除去
のためのグラインダー手入れの負荷が大きくなること
や、製品歩留が悪くなるなどの問題があった。
【0005】一方、ステンレス鋼や耐熱鋼もNi,C
r,Mo,Cuなどの高価な元素を多量に含有している
ため、歩留向上は製造コスト低減の最重要項目であり、
特に製造工程での疵発生を防止することによる歩留向上
が大いに望まれている。しかし、耐食性、耐酸化性およ
び強度の点から、Ni,Cr,Mo,Cuなどを多量に
含有した高合金ステンレス鋼や耐熱鋼は熱間での加工性
が劣り、熱間加工中にデンドライト粒界で割れが発生
し、へげ疵となって歩留低下の原因となっていた。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記のよう
な問題点を解決し、連続鋳造鋳片から表面疵がなく品質
の良好な30〜80%のNiを含む鉄合金の熱延板、厚
板および棒線などを歩留良く製造することを目的とする
ものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、上記問題
点を解決するために種々の製造実験を行い検討を重ねた
結果、連続鋳造(CC)された30〜80%のNiを
む鉄合金鋳片の表面に、ショットブラストによって加工
歪みを与えた後に加熱し、熱間圧延すれば鋳片表層の結
晶が再結晶・微細化された後に熱間圧延されるため、熱
間加工性の悪い鋼種や合金でも熱間圧延板の表面疵が大
幅に軽減されることを見出だした。該ショットブラスト
処理の効果は無手入れのままの鋳片でも、全面グライン
ダー手入れされた鋳片においても見られた。
【0008】また、該CC鋳片表面にショットブラスト
によって加工歪みを与えた後に加熱し、圧延後の鋳片圧
下率[(CC鋳片厚み−ブレークダウン鋳片厚み)/C
C鋳片厚み]が30〜60%のブレークダウン圧延を行
い、CC鋳片の鋳造組織を破壊した後に、該ブレークダ
ウン鋳片を再加熱し、再結晶による結晶の微細化と粒界
偏析の拡散を行った後に、仕上圧延を行うことによっ
て、表面われや耳割れ名度の表面欠陥のないわれ30〜
80%のNiを含む鉄合金の熱延板を安定して歩留まり
よく製造できることを見出だした。
【0009】さらに、該ブレークダウン圧延時のCC鋳
片の加熱温度を1000〜1270℃の比較的低温度と
することにより、鋳造結晶の破壊のためのブレークダウ
ンによる圧延効果を大きくし、また仕上圧延前の加熱を
1100〜1270℃とし、粒界偏析の拡散促進と熱延
仕上り温度を高くすることによって、より表面割れや耳
割れなどの表面欠陥のない30〜80%のNiを含む鉄
合金の熱延板が安定して歩留良く製造することができ
た。
【0010】CC鋳片をブレークダウン圧延した時に、
粒界割れなどによる表面疵が発生した場合は、再加熱・
仕上圧延する前に、該ブレークダウン鋳片の表面手入れ
によって除去することができる。また、特に熱間加工性
が悪い成分系の合金では、表面手入れされた該ブレーク
ダウン鋳片にショットブラスト処理を行っても良い。
【0011】さらに、CC鋳片やブレークダウン鋳片の
加熱は、N2 やAr、またはH2 とN2 やArの混合ガ
スなどの無酸化雰囲気炉で加熱することにより、粒界酸
化しやすい高Ni合金でも粒界酸化が防止され、表面性
状の非常に良好な熱延材を歩留良く製造することが可能
となった。
【0012】すなわち本発明は、合金の熱間圧延材の製
造方法において、連続鋳造された合金のCC鋳片の鋳造
まま、または必要に応じて表面手入れされた鋳片表面に
ショットブラスト処理を行った後に、必要に応じてN2
やAr、またはH2 とN2 やArの混合ガスなどの無酸
化雰囲気炉とする加熱炉で、一旦1000〜1270℃
に加熱した後、圧下比(圧延厚み/鋳片厚み)が30〜
65%のブレークダウン圧延を行い、その後に該ブレー
クダウン鋳片を、必要に応じて表面手入れやショットブ
ラスト処理をした後に、無酸化雰囲気炉などの加熱炉で
1100〜1270℃に再加熱し、仕上圧延することに
よって、表面疵などのない品質の優れた30〜80%の
Niを含む鉄合金の熱延板、厚板、棒線などの熱間圧延
材を製造する方法である。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明のブレークダウン圧延を行
う場合のブレークダウン圧延比と、該圧延前後の加熱温
度を限定する理由を以下に説明する。ブレークダウン圧
延比(圧延厚み/鋳片厚み)は、鋳造組織を破壊し粒界
偏析の拡散を促進するため大きい方が良いが、30%未
満ではその効果がなく、65%超では仕上圧延前の素材
厚みが小さくなり過ぎ、加熱炉内への装入可能長さの制
約から仕上圧延製品の単重が小さくなると共に、歩留が
悪くなるため、30〜65%とする。
【0014】CC鋳片のブレークダウン圧延前の加熱温
度は、低い方が鋳造組織の破壊に対し良好であるが、1
000℃未満では熱間変形抵抗が高くなると共に、熱間
延性が悪くなるので、1000〜1270℃とする。
【0015】一方、仕上熱延時のブレークダウン鋳片の
加熱温度は、熱間加工性の点から高い方がよいが、過熱
によるバーニング割れ防止と加熱費低減のため1100
〜1270℃とする。
【0016】本発明のかかる方法により上記問題点が解
決され、表面品質、内部品質、材質特性ともに良好な3
0〜80%のNiを含む鉄合金の熱間圧延製品を安定し
て歩留良く製造することが可能になった。
【0017】
【実施例】本発明の実施例について以下に説明する。表
1は、本発明例と比較例の取鍋下化学成分組成を示す。
残部はFe及び不可避的不純物である。これらの材料を
転炉または真空溶解炉で溶製した後、連続鋳造法で20
0mm厚の鋳片(スラブ)に鋳造した。該CC鋳片は、シ
ョットブラスト処理した後、表2に示した条件で必要に
応じて、ブレークダウン圧延と、該ブレークダウン鋳片
の表面をグラインダーで片面当り1mm厚さの研削手入れ
を行い、および必要に応じてショットブラスト処理後
に、加熱・仕上圧延を行い、熱延板または線材にした
後、通常通りの酸洗、グラインダーまたはピーリングに
よって熱延板または線材の表面手入れを行った。上記各
鋳片のショットブラストは、粒径1.0mmの鋼球(ショ
ット粒)を100kg/min,70〜90m/s の投射速度で
4方向から鋳片4面に投射して行った。比較例1〜3
は、ショットブラスト処理なしの通常の条件で圧延され
製造されたものであり、本発明範囲外で構成されてい
る。
【0018】本発明実施例1〜5は比較例1〜3に比
べ、いずれも表面疵が少なく、熱延板または線材の手入
負荷は大幅に軽減され、手入歩留および製品歩留が良
く、品質の良好な熱延製品を製造できた。表3は実施例
と比較例の熱延製品サイズと表面疵発生状況、手入歩留
を示す。なお本発明実施例は、従来材の方法で製造され
た製品と遜色のない良好な材質特性が得られた。
【0019】
【表1】
【0020】
【表2】
【0021】
【表3】
【0022】
【発明の効果】本発明に従って製造された30〜80%
のNiを含む鉄合金の熱間圧延材は、経済的に表面品質
および内部品質や材質ともに良好な製品が安定して得ら
れるので、産業上に及ぼす効果は極めて大きい
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C21D 7/06 C21D 7/06 B 9/52 101 9/52 101 (72)発明者 平居 正純 東京都千代田区大手町1−6−1 大平 洋金属株式会社内 (56)参考文献 特開 昭59−70447(JP,A) 特開 平7−148514(JP,A) 特開 平8−174034(JP,A) 特開 昭48−23652(JP,A) 特公 平5−21642(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 1/00 - 3/02 C21D 7/06 C21D 9/52

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 30〜80質量%のNiを含む鉄合金を
    熱間圧延して製造する方法において、連続鋳造で製造し
    たCC鋳片を、その表面にショットブラスト処理を行っ
    た後に1000〜1270℃に加熱し、圧下率が30〜
    65%のブレークダウン圧延を行い、その後、該ブレー
    クダウン鋳片を1100〜1270℃に再加熱し仕上圧
    延することを特徴とする熱間圧延合金材の製造方法。
  2. 【請求項2】 ブレークダウン圧延後にブレークダウン
    鋳片を表面手入れすることを特徴とする請求項1記載の
    熱間圧延合金材の製造方法。
  3. 【請求項3】 ブレークダウン圧延後にブレークダウン
    鋳片を表面手入れした後、ショットブラスト処理するこ
    とを特徴とする請求項1記載の熱間圧延合金材の製造方
    法。
  4. 【請求項4】 合金鋳片の加熱およびブレークダウン鋳
    片の加熱を無酸化雰囲気炉で行うことを特徴とする請求
    項1〜3のいずれか1項に記載の熱間圧延合金材の製造
    方法。
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