JP3398031B2 - p型GaN系化合物半導体の製造方法 - Google Patents

p型GaN系化合物半導体の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はp型GaN系化合物
半導体の製造方法に関し、更に詳しくは、GaN系化合
物半導体にドーピングされたp型不純物を効果的に活性
化してそのGaN系化合物半導体を高キャリア濃度のp
型半導体に転化する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】GaN,AlGaN,InGaN,Al
InGaNなどのGaN系化合物半導体から成るエピタ
キシャル成長層の場合、MOCVD法またはガス源MB
E法のいずれを適用しても、高キャリア濃度のp型層は
得られていない。これは、GaN系化合物半導体の場
合、そこにドーピングされたp型不純物のうち、1/1
0000〜1/1000程度しか活性化されないためで
ある。
【0003】現在までに報告されているp型層のキャリ
ア濃度における最高値は1×1017cm-3である。そし
て、これを用いた発光ダイオードのような光デバイスが
市販されている。しかしながら、この程度のキャリア濃
度では、高出力のバイポーラトランジスタや高耐圧ダイ
オードなどを製作することはできない。そのため、Ga
N系化合物半導体に関しては、高キャリア濃度のp型層
を形成するための研究が進められている。
【0004】例えば、p型不純物をドーピングしたのち
に、窒素ガスまたはアンモニアガス雰囲気の中で熱処理
することも試みられている。しかしながら、そのような
処理を行っても、得られたp型層のキャリア濃度は上記
した値よりも大きな値にはなっていない。また、p型不
純物のドーピングをイオン注入法で行うことも試みられ
ている。しかしながら、イオン注入されたp型不純物を
活性化して高キャリア濃度を実現したという報告は現在
までのところない。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、GaN系化
合物半導体にドーピングされているp型不純物を効果的
に活性化させ、そのことにより、前記した従来のキャリ
ア濃度よりも超かに高キャリア濃度のp型層を形成する
ことができるp型GaN系化合物半導体の製造方法の提
供を目的とする。
【0006】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明においては、800℃以上の温度に加熱
されているGaN系化合物半導体にMg,Zn,Beの
群から選ばれる少なくとも1種のp型不純物をイオン注
入し、ついで、窒素ガスと前記p型不純物を含有するガ
スから成り、かつ圧が2.026MPa以上である混合ガス
の中で、イオン注入された前記GaN系化合物半導体に
温度1200℃以上で10分間以上の熱処理を施すこと
を特徴とするp型GaN系化合物半導体の製造方法が提
供される。
【0007】とくに、前記イオン注入に際しては、前記
p型不純物とともにSiまたはGeが同時にイオン注入
されるp型GaN系化合物半導体の製造方法が提供され
る。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明方法の1例を図面に
則して説明する。最初に、サファイアのような半絶縁性
の基板1の上に、GaNバッファ層2、例えばSiがド
ーピングされているn型AlGaN層3、例えばMgが
ドーピングされているp型AlGaN層4がこの順序で
積層されている図1で示した積層構造A1が製作され
る。そして、本発明においては、この積層構造A1のp
型AlGaN層4におけるp型不純物(Mg)が活性化
されることにより、この層4が高キャリア濃度のp型層
に転化する。
【0009】まず、図2で示したように、積層構造A1
の層4に、イオン注入装置を用いてMg,Zn,Beの
1種または2種以上がp型不純物5としてイオン注入さ
れ、p型AlGaN層4のp型不純物濃度が高くなって
いる積層構造A2が形成される。このとき積層構造A1
は800℃以上の温度に加熱されていることが必要であ
る。積層構造A1の温度が800℃より低い場合は、ド
ーピングした不純物が半導体の結晶中で適切なサイトへ
移動することができずキャリアとして活性化されにくく
なるからである。しかしながら、加熱温度が高くなりす
ぎると、半導体それ自体の熱破壊が起こるのでその上限
は各層を構成する半導体が熱破壊を起こさないような温
度に設定すべきである。通常、800〜1200℃に設
定することが好ましい。
【0010】なお、このイオン注入時には、上記したp
型不純物と一緒にSiまたはGeを同時にイオン注入す
ると、後述の過程でp型不純物の活性化が有効に進み、
もって高キャリア濃度のp型層を形成することができる
ので好適である。このSiやGeは次のような働きをし
ているものと考えられる。すなわち、GaN系化合物半
導体のエピタキシャル成長層には1cm2当たり1010
程度の欠陥が存在していてこれら欠陥がp型不純物の効
果的な活性化を阻害しているものと考えられるが、同時
に注入されたSiやGeが上記欠陥と相互作用すること
により、p型不純物の活性化が効果的に進行するのであ
る。
【0011】このようにして得られた積層構造A2は、
次に、後述するガス雰囲気中で熱処理される。まず、ガ
スは、窒素ガスとp型不純物を含有するガスとの混合ガ
スが使用される。窒素ガスは積層構造A2を構成してい
るGaN系化合物半導体からNが解離することを抑制す
る。そして、p型不純物を含有するガスは、p型AlG
aN層4’にドーピングされているp型不純物が解離す
ることを抑制する。
【0012】また、上記混合ガスは2.026MPa以上の
加圧状態にあることが必要である。2.026MPaより低
圧の場合は、p型不純物の活性化が効果的に進行しない
だけではなく、Nやp型不純物の解離が起こりはじめる
からである。好ましくは2.026〜10.0MPaであ
る。積層構造A2は、上記ガス雰囲気下において温度1
200℃以上で10分以上熱処理されることが必要であ
る。
【0013】温度が1200℃より低い場合は、p型不
純物の活性化は進行せず、高キャリア濃度のp型層を形
成することができない。しかしながら、過度に高い温度
にすると、半導体の熱破壊が起こりはじめるのでその上
限は半導体の熱破壊が起こらないような温度に設定すべ
きである。通常、1200〜1600℃であることが好
ましい。
【0014】また処理時間が10分より短い場合は、同
じくp型不純物の活性化は充分に進まない。しかし、あ
まり長時間の熱処理を行ってもp型不純物の活性化にと
っては無駄である。このようなことから、処理時間は1
5〜30分に設定することが好ましい。このような熱処
理を行うことにより、積層構造A2のp型AlGaN層
4’におけるp型不純物は活性化し、図3で示したよう
に、高キャリア濃度のp型AlGaN層4”を有する積
層構造A3が得られる。
【0015】
【実施例】次のようにして、図1で示した積層構造A1
を製作した。温度640度のサファイア基板1の上に、
分子線エピタキシャル成長法でジメチルヒドラジン(3
×10ー6Torr)とGa(5×10-7Torr)を用いてGa
Nバッファ層2を形成した。
【0016】ついで、基板1の温度を850℃に設定
し、ガス源MBE法で、Ga(1×10-6Torr),Al
(5×10-7Torr),NH3(5×10-5Torr)を用
い、かつn型ドーパントとしてSi(5×10-8Torr)
を用いることにより、GaNバッファ層2の上に、厚み
5000Åのn型AlGaN層3を形成し、更にその上
に、Ga(1×10-6Torr),Al(5×10-7Tor
r),NH3(5×10-5Torr)を用い、かつp型ドーパ
ントとしてMg(5×10-8Torr)を用いることにより
厚み5000Åのp型AlGaN層4を形成した。
【0017】このp型AlGaN層4におけるMg濃度
は、質量分析装置による分析の結果、1×1018cm-3
度であった。なお、上記Mg濃度では、その1/100
00〜1/1000が活性化する程度であるため、その
濃度を電気的な方法で測定することは不可能である。次
に、上記積層構造A1をイオン注入装置にセットし、基
板1を1200℃に加熱し、イオン加圧電圧80kV
で、MgとSiを同時にイオン注入して積層構造A2を
製造した。このときのMgの注入量は濃度換算で5×1
19cm-3,Siの注入量は濃度換算で1×1019cm-3
制御した。
【0018】ついで、この積層構造A2を、III−V族
化合物半導体の単結晶引き上げに用いる液体封じ引き上
げ装置のるつぼの中にセットした。装置内温度を150
0℃とし、装置内にN299体積%,Mgガス1体積%
から成り、全体の圧が7.5MPaである混合ガスを封入し
て約30分間の熱処理を行った。
【0019】得られた積層構造A3のp型AlGaN層
4”は電気的な方法でキャリア濃度の測定が可能であ
り、その値は2×1018cm-3であり、従来にない高キャ
リア濃度のp型層になっていた。なお、上記した実施例
は、ガス源MBE法で結晶成長を行った場合であるが、
本発明は、MOCVD法で行った場合でも同様の効果を
発揮する。また、上記実施例においては、積層構造A1
における最上層が予めp型層である場合を説明している
が、本発明では、これに限定されることなく、p型不純
物をイオン注入する最上層がノンドープ層やn型層であ
ってもよい。
【0020】更に実施例ではp型不純物としてMgを用
いているが、ZnやBeを用いても同様の効果が得られ
る。Znを用いた場合には、高温高圧下における熱処理
時に混合ガスとしてZnを1体積%程度含有せしめれば
よく、またBeを用いた場合には、Beを窒素ガスに混
合した混合ガスを用いればよい。本発明は、実施例で示
したAlGaNに限定されることなく、GaN,InG
aN,AlInGaNなどのGaN系化合物半導体の全
てに対して適用することができる。
【0021】
【発明の効果】以上の説明で明らかなように、本発明方
法によれば、GaN系化合物半導体にドーピングされて
いるp型不純物を効果的に活性化することができ、もっ
てそのGaN系化合物半導体を高キャリア濃度のp型に
することができるので、高性能のGaN系のトランジス
タなどの電子デバイスを製作する上で非常に有用であ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】基板上にGaN系化合物半導体層を形成した積
層構造A1を示す断面図である。
【図2】積層構造A1の最上層にp型不純物をイオン注
入した積層構造A2を示す断面図である。
【図3】p型不純物を活性化させた積層構造A3を示す
断面図である。
【符号の説明】
1 サファイア基板 2 GaNバッファ層 3 n型AlGaN層 4 p型AlGaN層 4’ Mgがイオン注入されたp型AlGaN層 4” Mgが活性化したp型AlGaN層

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 800℃以上の温度に加熱されているG
    aN系化合物半導体にMg,Zn,Beの群から選ばれ
    る少なくとも1種のp型不純物をイオン注入し、つい
    で、窒素ガスと前記p型不純物を含有するガスから成
    り、かつ圧が2.026MPa以上である混合ガスの中で、
    イオン注入された前記GaN系化合物半導体に温度12
    00℃以上で10分間以上の熱処理を施すことを特徴と
    するp型GaN系化合物半導体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記イオン注入に際しては、前記p型不
    純物とともにSiまたはGeが同時にイオン注入される
    p型GaN系化合物半導体の製造方法。
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