JP3379841B2 - ブロック共重合ポリ(エステル−カーボネート)及びその製造方法 - Google Patents

ブロック共重合ポリ(エステル−カーボネート)及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、ブロック共重合ポリ
(エステル−カーボネート)及びその製造方法に関す
る。本発明によるポリマーは、生分解性、加水分解性を
有する熱可塑性樹脂であり、土壌または水中に存在する
微生物により分解されるので環境を汚染しないクリーン
プラスチックとして釣糸、魚網、農業用シート、包装用
フィルム、紙パックの表面フィルム、積層体材料、可塑
剤、相容化剤等に広く利用できる機能性ポリマーであ
る。さらに、本発明によるポリマーは、生体適合性があ
り、体内で加水分解されて吸収されるため、抜糸の必要
がない手術用縫合糸やクリップ等の医療材料にも利用で
きる。
【0002】
【従来の技術】近年、放置された難分解性のフィルムや
釣り糸などによる環境汚染問題が深刻になっていること
から、自然界に存在する微生物によって容易に分解され
るプラスチック材料が求められている。また、生体適合
性を持ち、なおかつ生体内で分解吸収されるプラスチッ
ク材料は、組織が再生する間だけ強度を保ち、組織の再
生後は速やかになくなるものが望まれている。
【0003】脂肪族ポリエステル類は、生分解性、生体
適合性が認められており、その中でも微生物が菌体内に
蓄積するポリ(R)−3−ヒドロキシ酪酸(以下、P
[(R)-3HB]と略記する。)は高い融点(約180℃)の熱可
塑性樹脂であることから注目されている(生分解性高分
子材料、21頁、土肥義治著、工業調査会1990年発行参
照)。更に、種々のポリ(R)−3−ヒドロキシアルカ
ン酸(以下、P[(R)-3HA]と略記する。)を菌体内に蓄積
する微生物は数多く存在することが知られている(生分
解性高分子材料、26頁、土肥義治編著、工業調査会1990
年発行参照)。P[(R)-3HB]の物性を改良した、(R)−
3−ヒドロキシ酪酸と(R)−3−ヒドロキシ吉草酸の
共重合体(以下、P[(R)-3HB-co-(R)-3HV] と略記す
る。)がP.A. Holmes (Phys. Technol., 1985, (16),
P. 32 )によって、また(R)−3−ヒドロキシ酪酸と
4−ヒドロキシ酪酸の共重合体(以下、P[(R)-3HB-co-4
HB] と略記する。)が土肥ら(Polym. Commun. 29, 174
(1988) )によって、それぞれ報告されている。これら
の共重合体はランダム共重合体である(Macromolecules
1986, (19), 2860; Macromolecules 1988, (21), 272
2) 。
【0004】最近、化学的に(R)−3−ヒドロキシ酪
酸ユニットを持つ高分子量の種々の生分解性ランダム共
重合体ポリエステルがジスタノキサン触媒存在下、
(R)−β−ブチロラクトン(以下、(R)-BLと略記す
る。)と種々のラクトン類との開環共重合により合成さ
れた(Macromolecules, 1993, (26), 4388) 。
【0005】一方、グリコリドとラクチドのランダム共
重合体が生体吸収性の手術用縫合糸として既に実用化さ
れている(生体適合材料−その機能と応用、127頁、筏
義人編集、日本規格協会1993年発行参照)。
【0006】以上のように、ランダム共重合体を合成す
ることによりポリエステルの結晶化度を低下させ、脆い
物性を改善することが出来る。しかしながら、一般的に
ランダム共重合体は融点を低下させる原因となり、生分
解性のある脂肪族ポリエステルで融点が100℃以上のも
のを合成するためには、高分子中に結晶化度の高くなる
光学活性な3−ヒドロキシ酪酸ユニット、光学活性なL
−乳酸ユニットあるいはグリコール酸ユニットなどを大
部分含まなければならない。このことは製造コストを高
くするという工業的に大きな問題を持っている。更に、
高い融点と強度を保持しながら、柔らかいフィルムやゴ
ムを得るためにはランダム共重合体では比較的困難であ
る。
【0007】この問題を解決するための手段として、ブ
ロック共重合ポリエステルやブロック共重合ポリ(エス
テル−カーボネート)を合成することが考えられる。M.
S. Reeveらは微生物産生P[(R)-3HB]を過メタノール分解
してオリゴマーを得た後、オリゴマーの末端水酸基をト
リエチルアルミニウムと反応させて、これを重合開始剤
とし、ε−カプロラクトン(以下、CLと略記する。)、
L−ラクチド(以下、L-LAと略記する。)またはDL−
ラクチド(以下、DL-LA と略記する。)と反応させて、
P[(R)-3HB]とポリε−カプロラクトンのブロック共重合
ポリエステル(以下、P[(R)-3HB]-PCLと略記する。)、
P[(R)-3HB]とポリL−ラクチドのブロック共重合ポリエ
ステル(以下、P[(R)-3HB]-P(L-LA)と略記する。)及び
P[(R)-3HB]とポリDL−ラクチドのブロック共重合ポリ
エステル(以下、P[(R)-3HB]-P(DL-LA) と略記する。)
を得ている(Macromolecules, 1993, (26), 888)。しか
し、これら方法は微生物産生P[(R)-3HB]を原料として使
うため、コスト高になってしまうという問題がある。
【0008】一方、ブロック共重合ポリ(エステル−カ
ーボネート)に関しては、アルコール類を開始剤としス
ズ系触媒を用いて得られるラクトン類とカーボネート類
のブロック共重合体が米国特許第4,243,775号およびWO8
9/05664に開示されている。また、ポリエチレングリコ
ールを開始剤としスズ系触媒を用いて得られるラクトン
類とカーボネート類のブロック共重合体が米国特許第4,
857,602号に開示されている。さらに、ブチルリチウム
を触媒として得られるラクトン類とカーボネート類のブ
ロック共重合体がDE3607627A1に開示されている。その
他、ラクトン類とカーボネート類のブロック共重合体が
EP0 427 185 A2に開示されている。
【0009】
【発明が解決しようとする課題】ラクトン類と環状カー
ボネート類とをブロック共重合させるには、リビング重
合法によらなければならない。すなわち、用いる触媒の
存在下、最初のラクトンを開環重合させた後、そのポリ
マー末端が触媒と結合した活性状態であり、次の異なる
環状カーボネートを加えたときにそのポリマー末端と触
媒の間に逐次挿入反応を起こしながらポリマー鎖がのび
なければブロック重合ポリ(エステル−カーボネート)
は合成できない。
【0010】ところで、上記に列挙した報告の中で用い
られている触媒では、ラクトン類、特に(R)-BLと環状カ
ーボネートとの間で高分子量のブロック共重合ポリ(エ
ステル−カーボネート)を得ることはできなかった。
【0011】従って、本発明の目的は、生分解性、加水
分解性に優れた新規な高分子量のブロック共重合ポリ
(エステル−カーボネート)、及びその工業的に有利な
製造方法を提供することにある。
【0012】
【課題を解決するための手段】本発明者らは上記課題を
解決すべく鋭意研究を行なった結果、(R)-BLはジスタノ
キサン錯体で容易に開環重合し、またその際、逐次(R)-
BLを供給することによって高分子量のポリエステルが得
られることを見出した。また、(R)-BL、次いで環状カー
ボネートを逐次加えることによって高分子量のブロック
共重合ポリ(エステル−カーボネート)が得られること
を見出した。さらに、このような新規な製造方法により
得られた新規な高分子量のブロック共重合ポリ(エステ
ル−カーボネート)は高融点、高強度を保持しているだ
けでなく、柔軟性があり、生分解性、加水分解性に優れ
た熱可塑性樹脂であることを見出し、本発明を完成する
に至った。なお、これまでは、光学活性β−ブチロラク
トンと、環状カーボネート類を逐次開環共重合させて得
られるブロック共重合ポリ(エステル−カーボネート)
に関する具体的な報告はなされていない。
【0013】また、本発明により融点が115 ℃以上の高
分子量ブロック共重合ポリ(エステル−カーボネート)
が得られるようになり、用途面からも熱湯または電子レ
ンジの温度に耐え得る生分解性、加水分解性のフィル
ム、紙コップの表面フィルム、積層体材料、可塑剤、相
容化剤等の材料が供給可能となった。
【0014】即ち、本発明は、下記の一般式(I)及び
(II)、
【化3】 (式中、*は不斉炭素原子を表し、R1、R2、R3およびR4
それぞれ水素原子またはメチル基を示し、m及びnは、
それぞれ、300から5000までの自然数を表す。)で示さ
れる構造単位からなるブロック共重合ポリ(エステル−
カーボネート)を提供する。
【0015】本発明のブロック共重合ポリ(エステル−
カーボネート)は、好ましくは、構造単位(I):構造
単位(II)の比が10〜90:90〜10で、重量平均分子量
(以下Mwということがある)が60000 〜1000000 の範
囲内である。より好ましくは、Mwが75000〜800000、
さらにより好ましくは100000〜500000の範囲内である。
【0016】また、本発明は、光学活性β−ブチロラク
トンと、環状カーボネート類とを触媒の存在下に逐次開
環共重合させることを特徴とする前記ブロック共重合ポ
リ(エステル−カーボネート)の製造方法を提供する。
【0017】本発明のブロック共重合ポリ(エステル−
カーボネート)を製造するに際して用いられる触媒は、
好ましくはスズ系触媒から選ばれる。さらに好ましく
は、該スズ系触媒は、下記の一般式(III)、
【化4】 (式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル
基またはフェニル基を表し、XはCl、Br及びNCS
からなる群から選ばれ、YはCl、Br、NCS、O
H、炭素数1〜4のアルコキシ基及びフェノキシ基から
なる群から選ばれる。)で示されるジスタノキサン触媒
である。
【0018】以下、本発明を詳細に説明する。本発明の
ブロック共重合ポリ(エステル−カーボネート)の原料
である光学活性な(R)-β−ブチロラクトンと(S)-β−ブ
チロラクトンは、本出願人等による特願平4-210683号及
び特願平5-345867号の方法、すなわちジケテンをルテニ
ウム−光学活性ホスフィン錯体を触媒として不斉水素化
を行なうことにより容易に得ることができる。
【0019】また、本発明のもう一方の原料である環状
カーボネート類としては、例えば、トリメチレンカーボ
ネート、2,2−ジメチルトリメチレンカーボネート、
2−メチルトリメチレンカーボネート、3−メチルトリ
メチレンカーボネート、2,3−ジメチルトリメチレン
カーボネート、2,4−ジメチルトリメチレンカーボネ
ート、2,3,4−トリメチルトリメチレンカーボネー
ト、2,3,3,4−テトラメチルトリメチレンカーボ
ネート等が挙げられる。これらの環状カーボネートは、
対応するジオールとクロロエチルホルメートのトルエン
溶液に、トリエチルアミンを氷浴中で滴下することによ
り容易に得られる(遠藤 剛ら、日本化学会第61春季年
会講演予稿集II、1991年、社団法人日本化学会、1910
頁)。
【0020】本発明においては、これらの環状カーボネ
ートの少なくとも1種を使用し、必要に応じ数種を併用
することができる。
【0021】本発明において、ブロック共重合に付され
る光学活性β−ブチロラクトンと環状カーボネートとの
割合は、モル比で10〜90:90〜10が好ましい。より好ま
しくは20〜80:80〜20であり、さらにより好ましくは30
〜70:70〜30である。
【0022】本発明におけるブロック共重合は、光学活
性β−ブチロラクトンを不活性溶媒中または無溶媒で、
窒素またはアルゴン等の不活性気体中で反応容器に仕込
み、これに以下に説明する触媒を加え、常圧で60〜1
80℃の温度で、30分〜5時間反応させて第一段階の
重合を完了させ、この溶液に不活性溶媒を少量加えて粘
度を下げた後、不活性溶媒を少量加えた環状カーボネー
ト類を加えて更に1時間〜20時間反応させて第二段階
の反応を行なうことにより行われ、これによりAB型ブ
ロック共重合体を得ることができる。
【0023】また、ABA型、ABC型等のブロック共
重合は、第二段階と同様の方法によりAB型ブロック共
重合体に光学活性β−ブチロラクトンまたは環状カーボ
ネート類を加え反応させてブロック共重合体を得る方法
により行なわれる。
【0024】本重合反応の触媒としては、スズ系触媒、
ジスタノキサン触媒等を用いることができる。スズ系触
媒としては、ジブチルスズオキサイド、ジオクチル酸ス
ズ、ジラウリン酸ジブチルスズ等を挙げることができ
る。また、前記式(III)で示されるジスタノキサン触
媒としては、例えば、1,3−ジクロロテトラブチルジ
スタノキサン、1,3−ジクロロテトラフェニルジスタ
ノキサン、1,3−ジブロモテトラブチルジスタノキサ
ン、1−ヒドロキシ−3−クロロテトラブチルジスタノ
キサン、1−ヒドロキシ−3−ブロモテトラブチルジス
タノキサン、1−メトキシ−3−クロロテトラブチルジ
スタノキサン、1−エトキシ−3−クロロテトラブチル
ジスタノキサン、1−エトキシ−3−クロロテトラオク
チルジスタノキサン、1−エトキシ−3−クロロテトラ
ドデシルジスタノキサン、1−フェノキシ−3−クロロ
テトラブチルジスタノキサン、1−メトキシ−3−ブロ
モテトラブチルジスタノキサン、1−エトキシ−3−ブ
ロモテトラブチルジスタノキサン、1−フェノキシ−3
−ブロモテトラブチルジスタノキサン、1−ヒドロキシ
−3−(イソチオシアナト)テトラブチルジスタノキサ
ン、1−メトキシ−3−(イソチオシアナト)テトラブ
チルジスタノキサン、1−エトキシ−3−(イソチオシ
アナト)テトラブチルジスタノキサン、1−エトキシ−
3−(イソチオシアナト)テトラヘキシルジスタノキサ
ン、1−エトキシ−3−(イソチオシアナト)テトラデ
シルジスタノキサン、1−フェノキシ−3−(イソチオ
シアナト)テトラブチルジスタノキサン、1,3−ビス
(イソチオシアナト)テトラブチルジスタノキサン、
1,3−ビス(イソチオシアナト)テトラメチルジスタ
ノキサン等が挙げられる。
【0025】これらの触媒は、例えば、1,3−ジクロ
ロテトラフェニルジスタノキサンについては、J. Organ
omet. Chem. 3、 p70、 (1965)に記載されている如く、ま
た1−ヒドロキシ−3−(イソチオシアナト)テトラブ
チルジスタノキサンについては、J. Org. Chem. 56、 p5
307、 (1991)に記載されている如く、ジブチルスズオキ
サイドとジブチルスズジイソチオシアナートをエタノー
ル中で反応させることにより容易に合成することができ
る。
【0026】本発明においてはこれらの触媒の少なくと
も1種を使用し、必要に応じ数種を併用することができ
る。
【0027】触媒の添加量としては、原料モノマーに対
して1/500〜1/40000倍モルの量で使用され、好ましく
は、1/1000〜1/20000倍モルの量で使用される。
【0028】次に、溶媒としては、通常の開環重合に使
用される溶媒であれば特に限定されないが、具体的に
は、ジイソプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、
1,4−ジオキサン等の直鎖状または環状エーテル類、
臭化メチレン、ジクロロエタン等の有機ハロゲン化物、
トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族化合物類及び
これらの混合溶媒を挙げることができる。
【0029】これらの溶媒は、市販品を精製したもの、
例えば、金属ナトリウムとベンゾフェノンを加えて不活
性気体存在下蒸留して精製し、使用前まで不活性ガス中
で保存したものを使用することができる。
【0030】
【実施例】以下、実施例及び試験例等により本発明をさ
らに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例及び試験
例等に限定されるものではない。本実施例及び試験例等
で使用した分析機器及び生分解試験で使用した機器は下
記のとおりである。 1)核磁気共鳴スペクトル(NMR):AMー400型装
置(400MHz)(ブルカー社製) 2)分子量:Dー2520GPC Integrator(日立製作所
(株)製) 3)示差走査熱量計(DSC):DSC50(島津製作所
(株)製) 4)熱重量測定装置(TGA):TGA50(島津製作所
(株)製) 5)生分解性試験:活性汚泥(平成6年1月20日に財
団法人 化学品検査協会から購入)
【0031】これら機器を用い「新規化学物質に係る試
験の方法について(環保業第5号、薬発第615号、4
9基局第392号、昭和49年7月13日)に規定する
(微生物等による化学物質の分解度試験)並びにY. Do
i, A. Segawa, and M. Kunioka, Int. J. Biol. Macrom
ol., 1990, Vol. 12, April, 106.記載の内容に準拠し
て各種測定試験行なった。
【0032】以下の実施例及び比較例中、ブロック共重
合ポリ(エステル−カーボネート)の合成に関する、モ
ノマーの仕込み比(モル比)、ブロック共重合ポリ(エ
ステル−カーボネート)中のモノマーの含有比、重量平
均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)、ガラス転移
点(Tg)、融点(Tm)および分解温度(Td)のデ
ータは下記の表1にまとめて示した。
【0033】実施例1:(R)−β−ブチロラクトン
(以下、(R)-BLと略記する。)とトリメチレンカーボネ
ート(以下、TMCと略記する。)とからの逐次開環共重
合によるAB型ブロックポリ(エステル−カーボネー
ト)(以下、P[(R)-3HB]-PTMCと略記する。)の合成 30mlの反応容器に、(R)-BL 2.00g ( 23mmol)、1−エト
キシ−3−クロロテトラブチルジスタノキサン 25.3mg
(0.0225mmol) を仕込み、アルゴン(以下、Arと略記
する。)下、100 ℃、1.0時間攪拌した。この反応溶液
に、トルエン 0.5mlを加え、5分後にTMC 5.07g (50mm
ol) をトルエン 0.5mlで溶解させた溶液を加え1.0 時間
反応した。生成物をクロロホルムに溶解し、ジエチルエ
ーテル:ヘキサン=1:3の混合溶液に投入し、再沈殿
することにより、標題のブロックポリマー5.62g ( 收率
79.5%)を得た。
【0034】実施例2:(R)-BLとTMCとからの逐次開環
共重合によるP[(R)-3HB]-PTMCの合成 30mlの反応容器に、(R)-BL 7.15g ( 83mmol)、 1−エ
トキシ−3−クロロテトラブチルジスタノキサン 22.8
mg (0.0203mmol) を仕込み、Ar下、100 ℃、1.5時間
攪拌した。この反応溶液に、トルエン 0.5mlを加え、
20分後にTMC 3.42g (34mmol) をトルエン 0.5mlで溶
解させた溶液を加え1.5時間反応した。生成物をクロロ
ホルムに溶解し、ジエチルエーテル:ヘキサン=1:3
の混合溶液に投入し、再沈殿することにより、標題のブ
ロックポリマー7.75g ( 收率 73.3%)を得た。
【0035】実施例3:(R)-BLとTMCとからの逐次開環
共重合によるP[(R)-3HB]-PTMCの合成 30mlの反応容器に、(R)-BL 4.65g ( 54mmol)、 1−エ
トキシ−3−クロロテトラオクチルジスタノキサン 2
2.0mg (0.014mmol) を仕込み、Ar下、100 ℃、1.5時
間攪拌した。この反応溶液に、トルエン 0.5mlを加
え、30分後にTMC5.46g (54mmol) をトルエン 0.5ml
で溶解させた溶液を加え4.5 時間反応した。生成物をク
ロロホルムに溶解し、ジエチルエーテル:ヘキサン=
1:3の混合溶液に投入し、再沈殿することにより、標
題のブロックポリマー8.69g ( 收率 86.0%)を得た。
【0036】実施例4:(R)-BLとTMCとからの逐次開環
共重合によるP[(R)-3HB]-PTMCの合成 30mlの反応容器に、(R)-BL 3.72g ( 43mmol)、 1−チ
オイソシアナト−3−ヒドロキシテトラブチルジスタノ
キサン 11.6mg (0.011mmol) を仕込み、Ar下、100
℃、2.5 時間攪拌した。この反応溶液に、トルエン 0.
5mlを加え、1時間後にTMC 4.04g (40mmol) をトルエン
0.3mlで溶解させた溶液を加え6時間反応した。生成物
をクロロホルムに溶解し、ジエチルエーテル:ヘキサン
=1:3の混合溶液に投入し、再沈殿することにより、
標題のブロックポリマー3.41g(收率 43.9%)を得た。
【0037】実施例5:(R)-BLとTMCとからの逐次開環
共重合によるP[(R)-3HB]-PTMCの合成 30mlの反応容器に、(R)-BL 4.56g (53mmol)、 1−チ
オイソシアナト−3−ヒドロキシテトラブチルジスタノ
キサン 23.6mg (0.023mmol) を仕込み、Ar下、100
℃、1.5 時間攪拌した。この反応溶液に、トルエン 0.
5mlを加え、30分後にTMC 5.37g (53mmol)をトルエン 0.
3mlで溶解させた溶液を加え3時間反応した。生成物を
クロロホルムに溶解し、ジエチルエーテル:ヘキサン=
1:3の混合溶液に投入し、再沈殿することにより、標
題のブロックポリマー8.81g ( 收率 88.7%)を得た。
【0038】実施例6:(R)-BLとTMCとからの逐次開環
共重合によるP[(R)-3HB]-PTMCの合成 30mlの反応容器に、(R)-BL 4.92g (57mmol)、 1−ヒド
ロキシ−3−クロロテトラブチルジスタノキサン 27.3
mg (0.026mmol)を仕込み、Ar下、100 ℃、1.5時間攪
拌した。この反応溶液に、トルエン 0.5mlを加え、15
分後にTMC 5.85g(57mmol)をトルエン 0.3mlで溶解させ
た溶液を加え4時間反応した。生成物をクロロホルムに
溶解し、ジエチルエーテル:ヘキサン=1:3の混合溶
液に投入し、再沈殿することにより、標題のブロックポ
リマー7.22g ( 收率 67.1%)を得た。
【0039】実施例7:(R)-BLと2,2−ジメチルトリ
メチレンカーボネート(以下、DTCと略記する。)とか
らの逐次開環共重合によるAB型ブロックポリ(エステ
ル−カーボネート)(以下、P[(R)-3HB]-PDTCと略記す
る。)の合成 30mlの反応容器に、(R)-BL 3.89g (45mmol)、 1−エト
キシ−3−クロロテトラブチルジスタノキサン 23.8mg
(0.021mmol) を仕込み、Ar下、100 ℃、50分間攪拌
した。この反応溶液に、トルエン 0.5mlを加え、20分
後にDTC 5.94g (46mmol)をトルエン 1.0mlで溶解させた
溶液を加え4時間反応した。生成物をクロロホルムに溶
解し、メタノール溶液に投入し、再沈殿することによ
り、標題のブロックポリマー7.58g ( 收率 77.1%)を得
た。
【0040】比較例1:(±)−β−ブチロラクトン
(以下、(±)-BLと略記する。)とTMCとからの逐次開環共
重合によるAB型ブロックポリ(エステル−カーボネー
ト)(以下、P[(±)-3HB]-PTMCと略記する。)の合成 30mlの反応容器に、(±)-BL 5.53g (64mmol)、1−エト
キシ−3−クロロテトラブチルジスタノキサン 28.2mg
(0.025mmol) を仕込み、Ar下、100 ℃、40分間攪拌
した。この反応溶液に、トルエン 0.5mlを加え、10分
後にTMC 6.70g(66mmol)をトルエン 0.5mlで溶解させた
溶液を加え1.6時間反応した。生成物をクロロホルムに
溶解し、ジエチルエーテル:ヘキサン=1:2の混合溶
液に投入し、再沈殿することにより、標題のブロックポ
リマー12.2g ( 收率 99.5%)を得た。
【0041】比較例2:ε−カプロラクトン(以下、ε
-CLと略記する。)とTMCとからの逐次開環共重合による
AB型ブロック(エステル−カーボネート)(以下、PC
L-PTMC略記する。)の合成 30mlの反応容器に、ε-CL 4.37g (38mmol)、 1−エトキ
シ−3−クロロテトラブチルジスタノキサン 20.8mg
(0.0185mmol)、 トルエン 4.0mlを仕込み、Ar下、70
℃、35分間攪拌した。この反応溶液に、TMC 3.95g (39m
mol) をトルエン2.0ml溶液で溶解させた溶液を加え、2
0分後にトルエン 3.0mlを加え1時間反応した。生成物
をクロロホルムに溶解し、メタノール溶液に投入し、再
沈殿することにより、標題のブロックポリマー7.89g (
收率 94.8%)を得た。
【0042】
【表1】 *Tg(℃)の欄における「−」は、測定ピークが認められ
ないことを意味する。
【0043】試験例1:実施例1のポリマーの生分解性
試験 活性汚泥を500ppm (600ml)、pH 6.0〜7.0 、25℃の条件
で用い、実施例1で得られたポリマーの1cm ×1cm 、厚
さ0.05〜0.1mm の薄膜(ポリマーをクロロホルムに溶か
し、シャーレ等に流し込み、溶媒を蒸発させることによ
ってフィルム化したもの)について17〜25mgを50mlのフ
ラスコに入れ、タイテック(株)製、振とう恒温水槽を
用いて試験を行なった。
【0044】1週間経過後、2週間経過後、3週間経過
後及び4週間経過後におけるポリマーの重量減少を求め
た。その結果を図1に示す。この結果から、実施例1で
得られたポリマーフィルムは4週間後に3.36mgの重量減
少があった。
【0045】試験例2:実施例2のポリマーの生分解性
試験 実施例2で得られたポリマーにつき、試験例1と同様に
して生分解性試験を行なった。その結果は図1に示すと
おりであり、4週間後に4.99mgの重量減少があった。
【0046】試験例3:実施例3のポリマーの生分解性
試験 実施例3で得られたポリマーにつき、試験例1と同様に
して生分解性試験を行なった。その結果は図1に示すと
おりであり、4週間後に5.51mgの重量減少があった。
【0047】試験例4:実施例7のポリマーの生分解性
試験 実施例7で得られたポリマーにつき、試験例1と同様に
して生分解性試験を行なった。その結果は図1に示すと
おりであり、4週間後に2.10mgの重量減少があった。
【0048】比較試験例1:比較例1のポリマーの生分
解性試験 比較例1で得られたポリマーにつき、試験例1と同様に
して生分解性試験を行なった。その結果は図1に示すと
おりであり、4週間後に0.19mgの重量減少があった。
【0049】比較試験例:比較例2のポリマーの生分解
性試験 比較例2で得られたポリマーにつき、試験例1と同様に
して生分解性試験を行なった。その結果は図1に示すと
おりであり、4週間後に1.42mgの重量減少があった。
【0050】
【発明の効果】以上説明してきたように、本発明のブロ
ック共重合ポリ(エステル−カーボネート)において
は、高活性な触媒の存在下で光学活性β−ブチロラクト
ンと、環状カーボネートとを開環重合させて製造される
結果、高分子量、高融点を有し実用に耐え得る高強度の
生分解性、加水分解性材料となる。このブロック共重合
ポリ(エステル−カーボネート)は、釣糸、農業用シー
ト、包装用フィルム、医療材料等の用途の他に、熱湯ま
たは電子レンジの温度に耐え得るフィルム、紙コップの
表面フィルム、積層体材料、可塑剤、相容化剤等の材料
として新たな用途が開かれることになった。
【図面の簡単な説明】
【図1】各試験例におけるポリマーの生分解性試験結果
を示す、日数とポリマーの重量減少量との関係を表すグ
ラフである。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 荻原 利光 神奈川県平塚市西八幡1−4−11 高砂 香料工業株式会社総合研究所内 (72)発明者 高橋 陽子 神奈川県平塚市西八幡1−4−11 高砂 香料工業株式会社総合研究所内 (56)参考文献 米国特許4470416(US,A) 土肥義治,生分解性プラスチックのお はなし,日本,(財)日本規格協会, 1991年10月 5日,第47頁〜第50頁 (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08G 63/00 - 63/91 CA(STN) REGISTRY(STN) WPI/L(QUESTEL)

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記の一般式(I)及び(II)、 【化1】 (式中、*は不斉炭素原子を表し、R1、R2、R3およびR4
    それぞれ水素原子またはメチル基を示し、m及びnは、
    それぞれ、300から5000までの自然数を表す。)で示さ
    れる構造単位からなるブロック共重合ポリ(エステル−
    カーボネート)。
  2. 【請求項2】 構造単位(I):構造単位(II)のモル
    比が10〜90:90〜10で、分子量が60000 〜1000000 であ
    る請求項1記載のブロック共重合ポリ(エステル−カー
    ボネート)。
  3. 【請求項3】 光学活性β−ブチロラクトンと、環状カ
    ーボネート類とを触媒の存在下に逐次開環共重合させる
    ことを特徴とする請求項1記載のブロック共重合ポリ
    (エステル−カーボネート)の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記触媒が、スズ系触媒から選ばれる請
    求項3記載の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記触媒が、下記の一般式(III)、 【化2】 (式中、R5は炭素数1〜12のアルキル基、アラルキル
    基またはフェニル基を表し、XはCl、Br及びNCS
    からなる群から選ばれ、YはCl、Br、NCS、O
    H、炭素数1〜4のアルコキシ基及びフェノキシ基から
    なる群から選ばれる。)で示されるジスタノキサン触媒
    である請求項4記載の製造方法。
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