JP4047160B2 - 脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルム - Google Patents
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Description
【発明の属する技術分野】
本発明は、高分子量脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルムに関するものである。更に詳しくは、生分解性を有し、実用上十分な高分子量を有し、熱安定性および引張り強度等にすぐれた脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルムに関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、フィルム、繊維、その他の成形品の成形に用いられていたポリエステルは、その数平均分子量が1万以上の高分子量ポリエステルであった。この高分子量ポリエステルは、テレフタル酸とエチレングリコールまたは1,4−ブタンジオールとから調製された芳香族ポリエステルに限られ、脂肪族ポリエステルは極めて少なかった。脂肪族ポリエステルがそれほど実用化されなかった理由としては、(1) 脂肪族ポリエステルの融点が比較的低いこと、(2) 脂肪族ポリエステルが通常知られた重縮合反応では数平均分子量で15,000以上にならず、熱分解しやすく、数平均分子量1万程度の分子量では実用上十分な強度が得られなかったこと、などが挙げられる。
【0003】
特開平4−189822号公報、および特開平5−287043号公報などに提案されているように、数平均分子量が5,000以上、望ましくは10,000以上で、末端基が実質的にヒドロキシル基であるポリエステルジオールに、その融点以上の溶融状態において、カップリング剤としてのイソシアナートを添加することにより、高分子量のウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルが得られているが、高分子量のウレタン結合を含む脂肪族ポリエステルは、汎用プラスチック成形法で成形する場合、条件によっては着色したり、ミクロゲルが発生したりするなどの問題がある。
【0004】
また、特開平5−310898号公報に提案されているように、グリコール成分と脂肪族ジカルボン酸成分とをエステル化し、生成したポリエステルジオールを触媒の存在下、温度180〜230℃の範囲、および0.005〜0.1mmHgの高真空下で脱グリコール反応を行うことにより、数平均分子量が25,000〜70,000で、末端基に実質的にヒドロキシル基を有する高分子量脂肪族ポリエステルが合成されているが、このような高真空状態を得ることは工業的には困難を伴う。
【0005】
更に、特開平5−43665号公報には、乳酸、グリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸をゲルマニウム化合物の存在下で、不活性ガス気流下または減圧下で加熱脱水重縮合して還元粘度が0.67〜0.89の脂肪族ポリエステルを製造する方法が開示されている。この脂肪族ポリエステルから得られるフィルム、成形品も実用上充分な機械強度を有するものではない。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】
本発明の目的は、生分解性を有し、実用上十分な高分子量を有し、熱安定性および引張り強度等にすぐれた脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルムを提供することにある。
【0007】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、生分解性を有すると同時に十分に実用に耐え得る脂肪族ポリエステルフィルムを提供すべく、鋭意検討を行った結果、ゲルマニウム化合物等の触媒の存在下、脂肪族または脂環式ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を主成分とし、乳酸、グリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸を特定量共重合させることにより、重合速度の著しい増大が見られ、結果的に鎖延長剤を使用することなしに、極めて容易に、数平均分子量1万以上の高分子量脂肪族ポリエステル共重合体が得られることを見い出し、本発明に到達した。この高分子量脂肪族ポリエステル共重合体は、融点が比較的高く、実用上十分な強度を有し、また、オキシカルボン酸成分の導入により、得られるポリエステルの結晶性が低下し、可撓性を有するものである。更に、この高分子量脂肪族ポリエステル共重合体は、優れた生分解性を示すものである。
【0008】
本発明はかかる知見に基づき達成されたもので、本発明に係わるフイルムは、下記式(l)式下記(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%、下記(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、およびコハク酸を含む下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%からなり、かつ数平均分子量が1万〜20万である脂肪族ポリエステル共重合体からなることを特徴とするものである。
【0009】
なお、このポリエステル共重合体は、触媒の存在下、重縮合反応により脂肪族または脂環式ジオールおよび脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体を反応させて、数平均分子量1万〜20万の脂肪族ポリエステルを製造するに際して、脂肪族オキシカルボン酸を所望のポリエステル共重合体組成となるように、例えば脂肪族ジカルボン酸100モルに対して0.04〜60モル共重合させることにより製造することができる。
【0010】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
本発明における上記(I)式の脂肪族オキシカルボン酸単位を与える脂肪族オキシカルボン酸としては、分子中に1個の水酸基とカルボン酸基を有する脂肪族化合物であれば特に限定されるものではなく、式、HO−R1 −COOH、(式中、R1 は2価の脂肪族炭化水素基)で表わされるものをいう。更には、(IV)式の脂肪族オキシカルボン酸単位を与える式(V)、
【0011】
【化2】
【0012】
(式中、pは0または1〜10、好ましくは0または1〜5の整数である)で示される脂肪族オキシカルボン酸が重合反応性向上効果が認められる点で特に好ましい。
【0013】
脂肪族オキシカルボン酸の具体例としては、乳酸、グリコール酸、2−ヒドロキシ−n−酪酸、2−ヒドロキシカプロン酸、2−ヒドロキシ3,3−ジメチル酪酸、2−ヒドロキシ−3−メチル酪酸、2−ヒドロキシイソカプロン酸、あるいはこれらの混合物が挙げられる。これらに光学異性体が存在する場合には、D体、L体、またはラセミ体のいずれでもよく、形態としては固体、液体、または水溶液であってもよい。これらの中で好ましいのは、乳酸またはグリコール酸であり、特に好ましいのは、使用時の重合速度の増大が特に顕著で、かつ入手の容易な乳酸またはグリコール酸である。形態は、30〜95%の水溶液のものが容易に入手することができるので好ましい。これら脂肪族オキシカルボン酸は単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0014】
(II)式の脂肪族または脂環式ジオール単位を与えるジオールとしては、特に限定されないが、式、HO−R2 −OHで表される化合物をいう。ここで、R2 は、2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基である。
好ましい2価の脂肪族炭化水素基としては、R2 が−(CH2 )n −(nは2〜10の整数)で表される脂肪族炭化水素基が挙げられる。中でも特に好ましいのは、nが2〜6の脂肪族炭化水素基である。
好ましい2価の脂環式炭化水素基としては、上記式のR2 が炭素数3〜10の脂環式炭化水素基であり、中でも特に好ましいのは4〜6の2価の脂環式炭化水素基である。
【0015】
(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノールが好適に挙げられる。得られる共重合体の物性の面から、特に1,4−ブタンジオールであることが好ましい。これらは単独でも、二種以上の混合物として使用することもできる。
【0016】
(III)式のコハク酸を含む脂肪族ジカルボン酸単位を与える脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体としては、式、HOOC−R3−COOH(式中、R3は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基、好ましくは、−(CH2)m−、だだしmは0または1〜10の整数、好ましくは0または1〜6の整数)で表されるもの、またはそれらの炭素数1〜4の低級アルコールエステル、例えばジメチルエステル等、またはそれらの酸無水物をいう。
【0017】
その具体例としては、コハク酸を含む、シュウ酸、グルタル酸、アジピン酸、セバシン酸、ドデカンニ酸、およびそれらの低級アルコールエステル、無水コハク酸、無水アジピン、等が挙げられる。得られる共重合体の物性の面から、コハク酸を含む、アジピン酸、セバシン酸またはこれらの無水物、及びこれらの低級アルコールエステルが好ましく、特にはコハク酸、無水コハク酸、またはこれらの混合物が好ましい。これらは単独でも2種以上混合して使用することもできる。
【0018】
これらの脂肪族または脂環式ジオール、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体および少量の脂肪族オキシカルボン酸とからの高分子量脂肪族ポリエステル共重合体の製造は、公知技術で行うことができる。すなわちこのポリエステル共重合体を製造する際の重縮合反応は、従来から採用されている重縮合反応の範囲内で適切な条件を設定することができ、特に制限されない。
【0019】
脂肪族または脂環式ジオールの使用量は、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し、実質的に等モルであるが、一般には、エステル化中の留出があることから、1〜20モル%過剰に用いられる。
添加される脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族オキシカルボン酸が少なすぎると添加効果が表れず、多すぎると得られるポリエステル共重合体の結晶性が失われ成形上好ましくなく、かつ耐熱性、機械的特性などが不十分となる。脂肪族オキシカルボン酸の量は、脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体100モルに対し好ましくは0.04〜60モル、より好ましくは1.0〜40モル、特に好ましくは2〜20モルである。
【0020】
脂肪族オキシカルボン酸の添加時期・方法は、重縮合反応以前であれば特に限定されず、例えば、(1) あらかじめ触媒を脂肪族オキシカルボン酸溶液に溶解させた状態で添加する方法、(2) 原料仕込み時触媒を添加すると同時に添加する方法、などが挙げられる。
脂肪族ポリエステル共重合体は、好ましくは上記原料を重合触媒の存在下で重縮合させて製造される。触媒としては、ゲルマニウム化合物が好適である。ゲルマニウム化合物としては、特に制限されるものではなく、酸化ゲルマニウム、テトラアルコキシゲルマニウムなどの有機ゲルマニウム化合物、塩化ゲルマニウムなどの無機ゲルマニウム化合物が挙げられる。価格や入手の容易さなどから、酸化ゲルマニウム、テトラエトキシゲルマニウム、テトラブトキシゲルマニウムなどが好ましく、特には、酸化ゲルマニウムが好適である。また、本発明の目的を損なわない限り、他の触媒の併用を妨げない。
【0021】
触媒の使用量は、使用するモノマー量に対して0.001〜3重量%、より好ましくは0.005〜1.5重量%である。触媒の添加時期は、重縮合以前であれば特に限定されないが、原料仕込み時に添加しておいてもよく、減圧開始時に添加してもよい。原料仕込み時に乳酸、グリコール酸等の脂肪族オキシカルボン酸と同時に添加するか、または脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して添加する方法が好ましく、特には、触媒の保存性が良好となる点で脂肪族オキシカルボン酸水溶液に触媒を溶解して添加する方法が好ましい。
【0022】
脂肪族ポリエステル共重合体を製造する際の温度、時間、圧力などの条件は、温度が150〜260℃、好ましくは180〜230℃の範囲で選ぶのがよく、重合時間は2時間以上、好ましくは4〜15時間の範囲で選ぶのがよい。減圧度は10mmHg以下、より好ましくは2mmHg以下で選ぶのがよい。
脂肪族ポリエステル共重合体の組成比は、(II)式の脂肪族または脂環式ジオール単位と(III)式の脂肪族ジカルボン酸単位のモル比が、実質的に等しいことが必要である。脂肪族または脂環式ジオール単位と脂肪族ジカルボン酸単位とは、各々35〜49.99モル%の範囲、好ましくは40〜49.75モル%、より好ましくは45〜49.5モル%の範囲で選ぶのがよい。また、(I)式の脂肪族オキシカルボン酸単位は0.02〜30モル%の範囲で選ぶのがよい。脂肪族オキシカルボン酸が30モル%を超えると結晶性が失われ、成形上好ましくなく、また0.02モル%未満だと添加効果が現れない。上記範囲で好ましいのは0.5〜20モル%、より好ましくは1.0〜10モル%の範囲である。
【0023】
脂肪族ポリエステル共重合体の数平均分子量は1万〜20万、好ましくは3万〜20万である。
また、本発明の効果を損なわない限り、この脂肪族ポリエステル共重合体に、他の共重合成分を導入することができる。他の共重合成分としては、ヒドロキシ安息香酸等の芳香族オキシカルボン酸類、ビスフェノールA等の芳香族ジオール類、テレフタル酸、イソフタル酸等の芳香族ジカルボン酸、またはトリメチロールプロパン、グリセリンなどの多価アルコール、多価カルボン酸またはその無水物、リンゴ酸などの多価オキシカルボン酸等が挙げられる。
【0024】
以上のように、本発明は、脂肪族または脂環式ジオール単位、脂肪族カルボン酸単位、および脂肪族オキシカルボン酸単位を特定の比率で有し、かつ数平均分子量が1万以上、より好ましくは3万以上である高分子量脂肪族ポリエステル共重合体が、実用上十分な強度と融点を有することに基づいたものである。特には、乳酸等の脂肪族オキシカルボン酸を用いることにより、極めて容易に高分子量化を達成できたものである。
【0025】
この高分子量脂肪族ポリエステル共重合体は、押出成形法などの汎用プラスチック成形法により、フィルムに成形できる。その際、結晶核剤、酸化防止剤、滑剤、着色剤、離型剤、フィラー、他のポリマーなど、必要に応じ添加することができる。
【0026】
この高分子量脂肪族ポリエステル共重合体は、生分解性を有しており、土中のバクテリアによって、2〜12カ月で完全に分解する特性があり、環境衛生上極めて有用なポリマーである。従ってこのポリエステル共重合体からなる本発明に係るフィルムは、今後、ショッピングバッグ、ゴミ袋、農業用フィルムなどの用途への使用が期待される。
【0027】
【実施例】
以下、本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はその要旨を超えない限り、これら実施例に限定されるものではない。
なお、以下の例における特性値は、次の方法により測定した。
(1)ポリマー組成; 1H−NMR法により、得られたスペクトルの面積比により組成を計算した。
(2)数平均分子量(Mn);GPC法によって測定した。サンプルをクロロホルムに溶解し、東ソー社製GPC HLC−8020を用いてポリスチレン換算により測定した。カラムはPLgel−10μ−MIXを使用した。
【0028】
(3)熱的性質;DSC法(昇温速度16℃/minで窒素下で測定)により融点を求めた。
(4)引張り特性;実施例、比較例で得られたポリエステルから、卓上熱プレス法によって厚さ0.30〜0.37mmのフィルム作成し、このフィルムからJIS K7127に準拠して2号ダンベルを作成した。このダンベルにつき、JIS K7127に準拠し、破断伸度と破断強度とを測定した。
(5)生分解性試験:得られたポリエステルから、卓上熱プレス法によって厚さ0.30〜0.37mmのフィルムを作成し、これを2cm×2cmに切断しテストピースを作成した。このテストピースを3ヵ月間土中に埋没させて、目視により生分解性を確認した。
【0029】
[実施例1]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量100mlの反応容器に、コハク酸を35.4g、1,4−ブタンジオールを28.4g、酸化ゲルマニウムをあらかじめ1重量%溶解させた90%乳酸水溶液2.9gを仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下180℃に昇温し、この温度で45分間反応させたあと、20mmHgの減圧下で1.75時間反応させた。引き続いて温度を220℃とし、0.5mmHgの減圧下において4時間重合を行った。
得られたポリエステルの 1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位4.6モル%、1,4−ブタンジオール単位47.7モル%、コハク酸単位47.7モル%であり、Mnは58,900、融点は108℃であった。このポリマーを卓上熱プレスでフィルムを作成したところ、強靱なフィルムが得られた。また、生分解性試験の結果、3ヵ月後のフィルムには、多数の虫食い状の穴が見られ、生分解性が確認された。
【0030】
[実施例2]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量150mlの反応容器に、コハク酸を59.1g、1,4−ブタンジオールを49.6g、90%L−乳酸水溶液を5.0g、テトラブトキシゲルマニウム180μlを仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下185℃に昇温し、この温度で50分間反応させたあと、20mmHgの減圧下において1.8時間反応させた。引き続いて温度を220℃とし、0.5mmHgの減圧下において2時間重合を行った。
得られたポリエステルの 1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位4.4モル%、1,4−ブタンジオール単位47.8モル%、コハク酸単位47.8モル%であり、Mnは69,000であり、引張り特性は表−1に示した通りであった。また、実施例1と同程度の生分解性が認められた。
【0031】
[実施例3]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量300mlの反応容器に、コハク酸を118.1g、1,4−ブタンジオールを99.1g、酸化ゲルマニウムをあらかじめ1重量%溶解させた90%乳酸水溶液6.3gを仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下185℃に昇温し、この温度で0.5時間反応させたあと、内温を220℃に昇温し、この温度で0.5時間反応させた。引き続いて、0.5mmHgの減圧下において4時間重合を行った。
得られたポリエステルの 1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位3.0モル%、1,4−ブタンジオール単位48.5モル%、コハク酸単位48.5モル%であり、Mnは62,500であり、引張り特性は表−1に示した通りであった。また、実施例1と同程度の生分解性が認められた。
【0032】
[実施例4]
実施例3で使用したのと同じ反応容器に、コハク酸を118.1g、1,4−ブタンジオールを99.1g、酸化ゲルマニウムをあらかじめ1重量%溶解させた70%グリコール酸水溶液6.3gを仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下185℃に昇温し、この温度で0.5時間反応させたあと、内温を220℃に昇温し、この温度で0.5時間反応させた。引き続いて、0.5mmHgの減圧下において6時間重合を行った。
得られたポリエステルの 1H−NMRによるポリマー組成は、グリコール酸単位2.4モル%、1,4−ブタンジオール単位48.8モル%、コハク酸単位48.8モル%であり、Mnは42,500であった。また、実施例1と同程度の生分解性が認められた。
【0033】
[実施例5]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量300mlの反応容器にコハク酸を100.3g、アジピン酸を21.9g、1,4−ブタンジオールを103.1g、酸化ゲルマニウムをあらかじめ1重量%溶解させた90%乳酸水溶液6.3gを仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下185℃に昇温し、0.5時間反応させた後、220℃に昇温し、0.5時間反応した。引き続いて0.5mmHgの減圧下において4時間重合をおこなった。得られたポリエステルのMnは71,000、融点は95℃であり、引張り特性は表1に示した通りであった。また 1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位2.8モル%、1,4−ブタンジオール単位48.9モル%、コハク酸単位40.8モル%、アジピン酸単位7.5モル%であり、生分解性試験の結果、3ヵ月後のフィルムは、ボロボロになっており、生分解性が確認された。
【0034】
[比較例1]
実施例2で使用したのと同じ反応容器に、コハク酸を59.1g、1,4−ブタンジオールを47.3g、酸化ゲルマニウムを0.05gを仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下185℃に昇温し、この温度で50分間反応させたあと、20mmHgの減圧下において2時間反応させた。引き続いて温度を220℃とし、0.5mmHgの減圧下において4時間重合を行った。
得られたポリエステルのMnは1,500であり、引張り特性は表−1に示した通りであった。
【0035】
[比較例2]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量300mlの反応容器にコハク酸を118.0g、1,4−ブタンジオールを99.1g、酸化アンチモンをあらかじめ1重量%溶解させた90%乳酸水溶液6.3gを仕込んだ。容器内容物を攪拌下、窒素ガスを導入し、窒素ガス雰囲気下185℃に昇温し、0.5時間反応させた後、220℃に昇温し、0.5時間反応した。引き続いて0.5mmHgの減圧下において4時間重合をおこなった。得られたポリエステルのMnは8,800であった。また 1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位2.9モル%、1,4−ブタンジオール単位48.7モル%、コハク酸単位48.4モル%であった。
【0036】
【表1】
【0037】
以上の実施例および比較例の結果より、次のことが明らかである。
(1) 本発明に係る脂肪族オキシカルボン酸単位を有するポリエステル共重合体は、高い分子量を有し(実施例1〜実施例5)、高い引張り特性を発揮している(実施例2〜実施例3)。
(2) これに対して、比較例のポリエステル共重合体は、分子量が小さく、引張り特性も十分ではない(比較例1〜比較例2)。
【0038】
[実施例6]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量300mlの反応容器内に、無水コハク酸を100.1g、1,4−ブタンジオール99.1g、酸化ゲルマニウムをあらかじめ1重量%溶解させた90%乳酸水溶液6.3g(無水コハク酸のモル数に対し、6.3モル%)を仕込み、窒素雰囲気中185℃にて0.5時間反応させた後、220℃に昇温し、0.5時間反応した。引き続いて0.5mmHgの減圧下において6時間重合を行った。
【0039】
得られたポリエステルは白色であり、Mnは67,600であった。また融点は108℃であった。また 1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位3.2モル%、コハク酸単位48.4モル%、1,4−ブタンジオール単位48.4モル%であった。得たポリエステルを卓上熱プレス200℃、100kg/cm2 で厚さ0.35mmのフィルムを作成したところ、強靱なフィルムが得られた。その引張り強さは、破断強度が320kg/cm2 、伸びは330%であった。生分解性試験の結果、3ヵ月後のフィルムには多数の虫食い状の穴が見られ生分解性が確認された。
【0040】
[実施例7]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量300mlの反応容器内に、無水コハク酸を100.1g、1,4−ブタンジオールを99.1g、90%乳酸水溶液10.6g(無水コハク酸のモル数に対して、10.6モル%)、テトラブトキシゲルマニウム0.2gを仕込み、窒素雰囲気中185℃にて0.5時間反応させた後、220℃に昇温し、0.5時間反応した。引き続いて0.5mmHgの減圧下において5時間重合を行なった。
【0041】
得たポリエステルは白色であり、Mnが70,000であった。また、融点は103℃であった。また 1H−NMRによるポリマー組成は、乳酸単位4.9モル%、コハク酸単位47.6モル%、1,4−ブタンジオール単位47.5モル%であった。得たポリエステルを卓上熱プレスで厚さ0.35mmのフィルムを作成したところ、強靱なフィルムが得られ、その引張り強さは、破断強度が470kg/cm2 、伸びは630%であった。また、実施例6と同程度の生分解性が認められた。
【0042】
[実施例8]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量300mlの反応容器内に、無水コハク酸を50.1g、コハク酸を59.1g、1,4−ブタンジオールを99.1g、酸化ゲルマニウムをあらかじめ1重量%溶解させた70%グリコール酸水溶液6.3g(無水コハク酸およびコハク酸の合計モル数に対し、11モル%)を仕込み、窒素雰囲気中185℃にて0.5時間反応させた後、220℃に昇温し、0.5時間反応を行った。引き続いて0.5mmHgの減圧下において5時間重合を行った。
【0043】
得たポリエステルは白色であり、Mnが60,000であった。また 1H−NMRによるポリマー組成は、グリコール酸単位5.0モル%、コハク酸単位47.5モル%、1,4−ブタンジオール単位47.5モル%であった。得たポリエステルを卓上熱プレスで厚さ0.35mmのフィルムを作成したところ、強靱なフィルムが得られ、その引張り強さは、破断強度が300kg/cm2 、伸びは310%であった。また、実施例6と同程度の生分解性が認められた。
【0044】
[比較例3]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量300mlの反応容器内に、無水コハク酸を100.1g、1,4−ブタンジオールを99.1gを仕込み窒素雰囲気中185℃にて0.5時間反応させた後、220℃に昇温し、0.5分間反応した。引き続いてテトラブチルチタネート0.06gを添加し、0.5mmHgの減圧下において4時間重合を行なった。
得たポリエステルは灰白色のワックス状であり、Mnは7,500であった。得たポリエステルを卓上熱プレスでフィルムを作成しようとしたが、脆く、フィルムは得られなかった。
【0045】
[比較例4]
数平均分子量が65,100の少量のウレタン結合を含む、1,4−ブタンジオール単位とコハク酸単位からなる脂肪族ポリエステル(昭和高分子社製、ビオノーレ#1010)を卓上熱プレスで厚さ35mmのフィルムを作成し、引張試験を行なったところ、破断強度は330kg/cm2 、伸びは280%であった。
【0046】
[比較例5]
攪拌装置、窒素導入管、加熱装置、温度計、助剤添加口を備えた容量200mlの反応容器内に、90%L−乳酸水溶液103.5gおよび酸化ゲルマニウム0.05gを仕込み、窒素雰囲気中180℃にて2時間、常圧で攪拌し、その後、1時間かけて20mmHgまで減圧し、2時間反応させた。続いて1時間かけて昇温を行ない、200℃、2mmHgの条件で8時間重縮合反応させた。
得たポリ乳酸はやや黄色味を帯びているものの透明であり、Mnは28,000であった。得たポリエステルを卓上熱プレスでフィルムを作成しようとしたが、脆く、フィルムは得られなかった。
【0047】
【発明の効果】
本発明は、次のような特別に有利な効果を奏し、その産業上の利用価値は極めて大である。
1.原料の脂肪族ポリエステル共重合体は、実用上十分な高分子量を有し、汎用プラスチック成形法でフィルムに成形可能であり、得られたフィルムは、優れた熱安定性と、優れた引張り強度等の物性を有する。
2.脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルムは、優れた生分解性を有する。
Claims (6)
- 下記(I)式で表される脂肪族オキシカルボン酸単位0.02〜30モル%、下記(II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位35〜49.99モル%、およびコハク酸を含む下記(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位35〜49.99モル%からなり、かつ数平均分子量が1万〜20万である脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルム。
(I)−O−R1−CO−(式中、R1は2価の脂肪族炭化水素基)
(II)−O−R2−O−(式中、R2は2価の脂肪族炭化水素基または2価の脂環式炭化水素基)
(III)−OC−R3−CO−(式中、R3は直接結合または2価の脂肪族炭化水素基) - (II)式で表される脂肪族または脂環式ジオール単位と(III)式で表される脂肪族ジカルボン酸単位のモル%が実質的に等しく、それぞれ45〜49.5モル%であることを特徴とする、請求項1記載の脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルム。
- 数平均分子量が3万〜20万であることを特徴とする、請求項1または2記載の脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルム。
- (II)式における−R2−が−(CH2)n−(nは2〜10の整数)で表される脂肪族炭化水素基または炭素数3〜10の2価の脂環式炭化水素基であり、(III)式における−R3−が−(CH2)m−(mは0または1〜10の整数)であることを特徴とする、請求項1ないし3のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルム。
- (I)式における脂肪族オキシカルボン酸単位が、下記(IV)式で表されるα−ヒドロキシ脂肪族カルボン酸単位であることを特徴とする、請求項1ないし4のいずれかに記載の脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルム。
- (I)式が乳酸またはグリコール酸単位、(II)式が1,4−ブタンジオール単位、(III)式がコハク酸単位であることを特徴とする、請求項1ないし5のいずれか1項に記載の脂肪族ポリエステル共重合体からなるフィルム。
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