JP3377145B2 - イオウ変性クロロプレン系重合体組成物及びその製造方法 - Google Patents

イオウ変性クロロプレン系重合体組成物及びその製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、耐オゾン性に優れたク
ロロプレン系重合体組成物、及びその製造方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】クロロプレン重合体は、一般ゴム物性、
耐候性、耐熱性、耐薬品性などの物性のバランスが良好
であるため、一般工業用ゴム製品、自動車部品、接着剤
等幅広い分野で使用されている。イオウ変性クロロプレ
ン重合体は、ポリマー中にイオウ結合が存在するため、
一般のクロロプレン重合体と比較して、機械的強度や動
的特性が優れること、素練りにより粘度低下が容易であ
ること、金属酸化物のみで加硫可能であること、スコー
チ安定性に優れること等の特性を有しているため、自動
車用ベルトや各種スポンジ、防振材などに用いられてき
た。しかしながら、近年ゴム製品が使用される環境が苛
酷になってきており、従来のクロロプレン重合体では対
応が困難な状況になってきてる。
【0003】このような要求特性の一つに、耐オゾン性
があるが、クロロプレン重合体においては、老化防止剤
を添加することによって耐オゾン性を改良する方法が一
般的であり、広く用いられている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、老化防
止剤を添加する方法では、未加硫物の焼け、老化防止剤
のブルーム、加硫物の引張り強度の低下等の問題を引き
起こす虞れがあるため、老化防止剤の種類や使用量の選
定が難しいばかりでなく、耐オゾン性の改良効果も十分
なものではなかった。
【0005】本発明は、かかる欠点を解決するものであ
り、耐オゾン性を大幅に改良させたイオウ変性クロロプ
レン系重合体組成物及びその製造方法を提供することを
目的とするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、イ
オウ変性クロロプレン重合体に、α,β−不飽和カルボ
ン酸エステルの重合体を含有してなるイオウ変性クロロ
プレン系重合体組成物に関するものであり、より具体的
には、上記のα,β−不飽和カルボン酸エステルがアク
リル酸エステルであること、さらに、アクリル酸エステ
ルがn−ブチルアクリレートであることを特徴とするイ
オウ変性クロロプレン系重合体組成物に関するものであ
る。また、本発明は、クロロプレン重合体ラテックス
と、α,β−不飽和カルボン酸エステルの重合体エマル
ジョンを混合することを特徴とするイオウ変性クロロプ
レン系重合体組成物の製造方法に関するものである。
【0007】本発明におけるイオウ変性クロロプレン重
合体とは、2−クロロ−1,3−ブタジエン(以下クロ
ロプレンと記す)とイオウを必須成分として含有する重
合体であり、必要に応じて他のクロロプレンと共重合可
能な単量体の1種以上を重合させたものも含む。
【0008】本発明におけるクロロプレンと共重合可能
な単量体としては、例えば2,3−ジクロロ−1,3−
ブタジエン、1−クロロ−1,3−ブタジエン、ブタジ
エン、イソプレン、スチレン、アクリロニトリル、アク
リル酸及びそのエステル、メタクリル酸及びそのエステ
ル等が例示でき、必要に応じて2種以上用いてもかまわ
ない。
【0009】本発明におけるイオウ変性クロロプレン重
合体の重合は、公知の如何なる方法によることもできる
が、水性乳化液中でラジカル重合させる方法が最も一般
的且つ適当である。
【0010】水性乳化重合を行う際の乳化剤としては特
に制限は無く、一般的にクロロプレンの乳化重合に使用
される乳化剤、例えばロジン酸塩、脂肪酸塩、アルキル
ベンゼンスルホン酸塩等のアニオン系乳化剤、あるいは
アルキルポリエチレングリコール、ポリビニルアルコー
ル等のノニオン系乳化剤、更に第4級アンモニウム塩等
のカチオン系乳化剤等が使用できる。しかし、好ましく
は、ロジン酸塩、脂肪酸塩等のアニオン系乳化剤であ
る。
【0011】本発明における重合温度には特に制限は無
いが、好ましくは0〜55℃の範囲である。重合温度が
0℃より低い場合には水の凝固が問題となり、55℃よ
り高い場合にはクロロプレンの蒸気圧の関係から加圧設
備が必要となってくる。
【0012】重合開始剤としては、通常のクロロプレン
の乳化重合法で用いられている有機又は無機の過酸化物
でよく、例えば過酸化ベンゾイル、過硫酸カリウム、過
硫酸アンモニウム等が例示できる。また、反応の制御や
重合を完全に行う目的でレドックス系のラジカル開始剤
を用いることもできる。
【0013】本発明におけるα,β−不飽和カルボン酸
エステルの重合体は、α,β−不飽和カルボン酸エステ
ルの単独重合体又は、2種以上のα,β−不飽和カルボ
ン酸エステルの共重合体である。
【0014】ここで、α,β−不飽和カルボン酸エステ
ルとは、α,β−不飽和カルボン酸とアルコールからな
るエステルのことであり、α,β−不飽和カルボン酸と
しては例えばアクリル酸、メタクリル酸、クロトン酸、
マレイン酸、フマル酸等が挙げられるが、特にアクリル
酸が好ましい。
【0015】また、アルコールとしては、エチルアルコ
ール、ブチルアルコール、ドデシルアルコール、オクタ
デシルアルコール等のアルキルアルコール、アリルアル
コール等のアルケニルアルコール、シクロペンチルアル
コール、シクロヘキシルアルコール等の環状アルコー
ル、ベンジルアルコール、フェネチルアルコール等のア
ラルキルアルコール、メトキシエチルアルコール、エト
キシエチルアルコール、グリシジルアルコール、ジアル
キルアミノエチルアルコールなどが例示できるが、中で
もn−ブチルアルコール及びエチルアルコールが好まし
く、特ににn−ブチルアルコールが好ましい。
【0016】本発明のα,β−不飽和カルボン酸エステ
ルの重合体を重合する方法としては、公知の如何なる方
法も用い得るが、乳化ラジカル重合による方法が一般的
である。
【0017】また、本発明のα,β−不飽和カルボン酸
エステルの重合体は、本発明の効果を損なわない範囲で
α,β−不飽和カルボン酸エステル以外の単量体を共重
合しても良い。α,β−不飽和カルボン酸エステル以外
の単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、アクリ
ロニトリル、エチレン、プロピレン、スチレン、酢酸ビ
ニル、塩化ビニル、イソプレン、ブタジエン、クロロプ
レン、2,3−ジクロロ−1,3−ブタジエン、グリシ
ジルメタクリレート、アリルグリシジルエーテル、2−
クロロエチルビニルエーテル、クロロ酢酸ビニル等が例
示できる。
【0018】また、該α,β−不飽和カルボン酸エステ
ルの重合体を乳化重合する際の乳化剤としては、特に制
限はなく、クロロプレン重合体の重合と同様、種々の乳
化剤が使用できる。
【0019】また、該α,β−不飽和カルボン酸エステ
ルの重合体の分子量に特に制限はないが、数平均分子量
が30万以上であることが好ましい。分子量の調整は、
連鎖移動剤を用いて行えばよく、連鎖移動剤としては、
特に制限はないが、一般に知られている連鎖移動剤、例
えば、ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタ
ン、ジエチエルキサントゲンスルフィド等のキサントゲ
ンスルフィド、ヨードホルム等のハロゲン化炭化水素等
が使用できる。
【0020】また、該α,β−不飽和カルボン酸エステ
ルの重合温度には、特に制限は無いが、0〜90℃の間
で選定するのが好ましい。0℃以下では水の凝固が、9
0℃以上では水の蒸発が問題となる。
【0021】本発明のイオウ変性クロロプレン系重合体
組成物は、イオウ変性クロロプレン重合体にα,β−不
飽和カルボン酸エステルの重合体を含有することが必須
である。その含有比率には特に制限はないが、イオウ変
性クロロプレン重合体が本来有する各種物性を損なうこ
となく、耐オゾン性の優れた組成物とするには、α,β
−不飽和カルボン酸エステルからなる重合体の含有量
は、3〜60重量%の範囲が好ましく、5〜40重量%
がより好ましく、5〜30重量%が更に好ましい。
【0022】また、本発明のイオウ変性クロロプレン系
重合体組成物は、α,β−不飽和カルボン酸エステルの
重合体をイオウ変性クロロプレン重合体に含有させたも
のである。その製造方法には特に制限はないが、製造方
法の例をあげれば、これら双方を混合すればよく、例え
ば、乳化重合で得たラテックス及びエマルジョンを混合
する方法、固体状の重合体同士をオープンロール、ニー
ダー、バンバリーミキサー、単軸または二軸押出機など
で混練することによる方法、有機溶媒に溶解した溶液同
士をブレンドする方法等が用いられる。なかでも、乳化
重合で得たラテックス及びエマルジョンを混合する方法
は、均一な混合物を容易に得ることができるので好まし
い。
【0023】
【実施例】次に実施例により本発明を具体的に説明する
が、本発明はこの実施例にのみ限定されるものではな
い。なお以下の説明においては、部および%は、重量基
準によって示す。
【0024】イオウ変性クロロプレン重合体ラテックス
の製造 3リットルのガラスコルベン中、窒素気流下で、水10
0部、乳化剤として不均化ロジン酸5部、水酸化カリウ
ム1.0部、分散剤としてホルムアルデヒドナフタレン
スルホン酸縮合物のナトリウム塩0.8部を仕込み、溶
解後、撹拌しながらクロロプレン100部およびイオウ
0.3部との混合物を加え、重合温度40℃で、ラジカ
ル重合開始剤として過硫酸カリウムを用いて重合し、単
量体の転化率が65%に到達したとき、ターシャリブチ
ルカテコールとチオジフェニルアミンを加えて重合を停
止させ、未反応単量体を減圧下で除去することによりイ
オウ変性クロロプレン系重合体ラテックスを得た。
【0025】α,β−不飽和カルボン酸エステルからな
る重合体の製造 3リットルのガラスコルベン中、窒素気流下で、水10
0部、乳化剤としてドデシルベンゼンスルホン酸ナトリ
ウム5部を仕込み溶解後、α,β−不飽和カルボン酸エ
ステルとしてn−ブチルアクリレート100部とドデシ
ルメルカプタン0.01部を撹拌しながら加えた。重合
温度70℃でラジカル開始剤として過硫酸カリウムを用
いて単量体の転化率が98%となるまで重合を行うこと
により、n−ブチルアクリレート重合体エマルジョンを
得た。このn−ブチルアクリレート重合体エマルジョン
を凍結乾燥し、重合体を得てポリスチレンを標準物質と
するゲルパーミエーションクロマトグラフィー(島津製
作所 以下GPCと記述)により数平均分子量を測定し
たところ約60万であった。
【0026】実施例1 イオウ変性クロロプレン重合体ラテックス100部に対
してn−ブチルアクリレート重合体エマルジョン10部
(固形分換算)を撹拌しながら添加し、更に充分に撹拌
した後凍結凝固乾燥法によってイオウ変性クロロプレン
系重合体組成物を得た。
【0027】実施例2 n−ブチルアクリレート重合体エマルジョンの添加量を
20部(固形分換算)とし、実施例1同様の操作でイオ
ウ変性クロロプレン系重合体組成物を得た。
【0028】比較例1 イオウ変性クロロプレン重合体ラテックス単独で、実施
例1同様の操作でイオウ変性クロロプレン系重合体組成
物を得た。
【0029】上記のイオウ変性クロロプレン系重合体組
成物(生ゴム)を、表1に示す処方で加硫物とし、物性
試験を実施した。硬度、引張強さ、伸びはJIS−K6
301に準拠して試験を行い、耐オゾン性はJIS−K
6259に準拠して静的オゾン試験を行った。試験結果
を表2に示す。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
【発明の効果】以上の通り本発明のイオウ変性クロロプ
レン系重合体は、耐オゾン性に優れており、しかも、イ
オウ変性クロロプレン重合体が本来備えている優れた機
械的物性も保持されている。従って、Vベルト、平ベル
ト、歯付ベルトなどのベルト類や、スポンジ等の素材と
して好適である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平8−188676(JP,A) 特開 平8−226539(JP,A) 特開 昭61−118440(JP,A) 特開 昭56−84777(JP,A) 特開 昭59−145228(JP,A) 特開 平4−272945(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C08L 11/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イオウ変性クロロプレン重合体に、α,
    β−不飽和カルボン酸エステルの重合体を含有してなる
    イオウ変性クロロプレン系重合体組成物。
  2. 【請求項2】 請求項1において、α,β−不飽和カル
    ボン酸エステルがアクリル酸エステルであることを特徴
    とするイオウ変性クロロプレン系重合体組成物。
  3. 【請求項3】 請求項2において、アクリル酸エステル
    がn−ブチルアクリレートであることを特徴とするイオ
    ウ変性クロロプレン系重合体組成物。
  4. 【請求項4】 クロロプレン重合体ラテックスと、α,
    β−不飽和カルボン酸エステルの重合体エマルジョンを
    混合することを特徴とするイオウ変性クロロプレン系重
    合体組成物の製造方法。
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