JP3374401B2 - 音響・画像機器用導体の製造方法 - Google Patents

音響・画像機器用導体の製造方法

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和夫 澤田
由弘 中井
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】この発明は、音響機器および画像
機器の配線に使用される電線の製造方法に関するもので
あり、たとえば、ステレオおよびVTRなどの配線に使
用される電線の製造方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ステレオおよびVTRなどの音響機器お
よび画像機器においては、信号が正確に、位相差を生じ
ることなく伝達されないと、画像および音響に悪影響を
及ぼす。すなわち、像がぼけたり音が鮮明でなかったり
する。
【0003】このような音響・画像機器用の電線として
は、従来、タフピッチ銅および無酸素銅を冷間加工した
後、焼鈍軟化して再結晶させた軟銅線、冷間加工したま
まの硬銅線、またはこれらに錫などのめっきを施した線
などが使用されている。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このよ
うな従来の導体においては、電線導体中に含まれている
不純物元素などによって、電線導体中の電子密度の規則
性が乱され、信号電流の位相にずれを生じる。
【0005】この発明の目的は、これら従来の欠点を解
消し、電子の散乱原因を減少し、信号の伝達の乱れを軽
減して、鮮明な音響および画像を得ることのできる導体
の製造方法を提供することにある。
【0006】
【課題を解決するための手段および作用】本発明に従う
導体の製造方法は、純度99.9%以上の銅を用い、4
00℃〜580℃の範囲内の温度で1分〜24時間の熱
処理を製造工程中に少なくとも1回施すことを特徴とし
ている。
【0007】発明において、熱処理は、冷間加工後
最終線径に至る前に施処理後の冷間加工の減面率
は、65%以上であることが好ましい。熱処理後に65
%以上の冷間加工を施すのが好ましいのは、これより低
い冷間加工の場合、引張強さ等の機械的特性等が劣り、
導体の変形などにより、音響・画像信号の電流に位相差
を生じる恐れがあるからである。
【0008】熱処理を施す原材料としは、一方向凝固
材または単結晶材であることが好ましい。
【0009】発明では、原材料として、純度99.9
%以上の銅を用いている。これは、純度が99.9%未
満であれば、不純物が多くなり、信号が正確に伝達され
ないからである。
【0010】本発明において、400℃〜580℃の範
囲内の温度で熱処理を行なうのは、これにより導体中に
含まれる不純物元素を析出させることができ、電子密度
の不規則性をなくし、高周波信号電流の位相のずれを起
こりにくくするためである。これにより、鮮明な音響お
よび画像を得ることができる。
【0011】熱処理の温度が400℃未満の温度になる
と、所望の鮮明な音響および画像を得るのに長時間熱処
理する必要が生じ、工業的に不適切であり、また効果が
十分でない。また、580℃より高温になると、不純物
の再固溶が起こり、また熱処理温度が高温となるため工
業的に不利になり、それを補うだけの十分な熱処理の効
果が得られない。
【0012】処理後に65%以上の冷間加工を施すこ
とが好ましいのは、これより低い冷間加工の場合、引っ
張り強度等の機械的特性等が劣り、導体の変形等によ
り、音響・画像信号の電流に位相差を生ずるおそれがあ
るからである。
【0013】また、原材料として、一方向凝固材または
単結晶材を用いることが好ましいとしているのは、導体
に電流が流れる際に通過する結晶粒界の数が少なく抑え
られることにより位相のずれを軽減できること、および
原材料中に含まれるガス元素の量か少ないため、特に酸
素の存在による半導体的特性を有する化合物の生成を抑
えることができることによる。
【0014】また、この発明により製造される音響・画
像機器用導体は、単線として使用しても、複数本撚り合
わせて撚線として使用してもよい。また、この発明にお
いては、最終線径および撚線段階で仕上げ軟化が実施さ
れてもよい。
【0015】本発明に従えば、熱処理を施すことによ
り、残留抵抗比を熱処理を施していない導体と比較し2
0%以上上昇させることができる
【0016】本発明では、熱処理を施した導体の残留抵
抗比は、200以上であることが好ましい。また、熱処
理後の導体に含有される酸素量は、40massppm
以下であることが好ましい。
【0017】発明では、熱処理により残留抵抗比を熱
処理を施していない導体と比較して20%以上上昇させ
ることができる。これは、残留抵抗比が大きいほど、電
子の散乱原因の存在が少なくなり、信号伝達の乱れが小
さくなるため、音響・画像の質を向上させることができ
るからである。熱処理後の導体の残留抵抗比は、200
以上であることが好ましい。なお、一般に99.9%の
純度の銅は、150〜200程度の残留抵抗比を示す。
【0018】発明において銅に含有される酸素量
massppm以下が好ましいのは、酸素が銅導体中
でCu2 Oの形態で存在し、このCu2 Oが半導体的な
性質を有することから、酸素量が多い場合にはこれらの
Cu2 Oにより大きく信号の伝達が乱されるからであ
る。
【0019】発明における熱処理は、製造工程におい
て連続式で行なわれてもよいし、バッチ式で行なわれて
もよい。また発明の導体は、単線として使用してもよ
いし、複数本撚り合わせて撚線として使用してもよい。
また、最終線径および撚線段階で仕上げ軟化が実施され
てもよい。またその表面に錫等をめっきして使用しても
よい。さらに、絶縁体を被覆して使用してもよい。
【0020】
【実施例】実施例1 純度99.99%の無酸素銅を原材料として、まず直径
12mmの線材を鋳造した。結晶組織が多結晶のものは
模型連続鋳造法により鋳造し、結晶組織が1方向凝固ま
たは単結晶のものは、加熱鋳型式連続鋳造法より鋳造し
た。
【0021】鋳造後、表1に示すような400℃〜58
0℃の熱処理条件で熱処理を行なった。試料NO.1〜
6については、直径12mmの線材を鋳造した後に熱処
理を行なった。試料NO.7については、直径12mm
に鋳造後、冷間伸線により一旦直径6.2mmにした
後、表1に示す熱処理条件で熱処理し、その後再び冷間
伸線を行ない、直径0.78mmの線材とした。試料N
O.1〜6は、熱処理後に冷間伸線し、直径0.78m
mの線材とした。また試料NO.8は試料NO.1〜6
と同じ熱処理および冷間伸線を行なった後、230℃×
3時間で仕上げ軟化を行なった。
【0022】試料NO.9は、直径8mmに熱間加工し
た後、熱処理し、熱処理後直径0.8mmにまで冷間伸
線し、得られた線材を21本撚り合わせて撚線とした。
試料NO.10は、横型連続鋳造法により直径8mmの
線材に鋳造し、冷間伸線して直径2.0mmとして、4
00℃で5時間熱処理を施した。熱処理後に再び、冷間
伸線して直径0.78mmとした。
【0023】比較としての試料NO.11は、横型連続
鋳造法により直径12mmの線材に鋳造した後に、一旦
冷間伸線して直径6.2mmとし、その後にこの発明の
熱処理温度の範囲外である850℃で6時間熱処理を施
した。熱処理後、再び冷間伸線して直径0.78mmの
線材とした。
【0024】比較としての試料NO.12は、横型連続
鋳造法により直径12mmの線材に鋳造した後、一旦冷
間伸線して直径4.6mmとし、その後にこの発明の熱
処理温度の範囲外である150℃で2時間熱処理を施し
た。熱処理後、再び冷間伸線して直径0.78mmの線
材とした。
【0025】従来例としての試料NO.13を、原材料
としてタフピッチ銅を用い、横型連続鋳造法により直径
12mmに鋳造した後、熱処理せずに冷間伸線により直
径0.78mmの線材とした。
【0026】同じく従来例としての試料NO.14は、
99.99%の無酸素銅を用い、横型連続鋳造法により
直径12mmに鋳造した後、冷間伸線により直径0.7
8mmの線材とした。
【0027】
【表1】
【0028】以上のようにして得られた導体について、
音響および画像特性を評価した。ステレオおよびVTR
の配線材として、上記半導体を用い、解像度、繊細感、
透明度、画質の密度および低音・中音・高音の伸びにつ
いて評価した。その結果を表2に示す。これらの評価
は、従来例である試料NO.13を10として相対的に
評価した。
【0029】
【表2】
【0030】表1および2において、NO.7およびN
O.10が本願請求項に係る発明である。表2の結果か
ら明らかなように、この発明に従い得られる導体は、比
較例および従来例のものと比べ、音響および画像におい
て優れた特性を示すことがわかった。
【0031】実施例2NO.29は、 純度99.9%のタフピッチ銅(酸素含
有量190massppm)を用い、それ以外のものに
ついては純度99.99%の無酸素銅(酸素含有量3
assppm)を原材料として用いた。
【0032】O.27および28については、加熱鋳
型式連続鋳造法により結晶組織が一方向凝固のものを鋳
造し、他の例については横型連続鋳造法により結晶組織
が多結晶のものを鋳造した。各例では、直径8mmの線
材を鋳造した。
【0033】鋳造後は、以下に述べる熱処理を施した
後、O.26については直径0.2mmの線材とした
後7本撚り合わせて撚線とし、他の例については直径
0.8mmの線材とした。
【0034】O.21では、冷間加工を施す前に58
0℃で5時間熱処理し、直径2.6mmに伸線後、22
0℃で3時間の熱処理を施した。
【0035】O.22では、冷間加工を施す前に60
0℃で3時間の熱処理を施した。O.23では、直径
6.8mmに伸線後、500℃で5時間の熱処理を施
し、直径2.6mmに伸線後、400℃で1時間の熱処
理を施した。
【0036】O.24では、冷間加工を施す前に58
0℃で5時間、その後直径2.6mmに伸線後、280
℃で2時間熱処理を施すとともに、最終線径で230℃
3時間の仕上げ軟化を施した。
【0037】O.25では、冷間加工を施す前に47
0℃で9時間の熱処理を施した。また撚線後に200℃
で3時間の仕上げ軟化を施した。
【0038】O.26では、冷間加工を施す前に53
0℃で4時間の熱処理を施した。O.27では、線径
6.2mmに伸線後、650℃で0.5時間の熱処理を
施した。また、280℃で2時間の仕上げ軟化を施し
た。
【0039】O.28では、冷間加工を施す前に60
0℃で5時間、直径2.0mmで220℃5時間の熱処
理を施した。
【0040】比較例のNO.29では、冷間加工を施す
前に150℃で3時間の熱処理を施した。
【0041】比較例のNO.30では、冷間加工を施す
前に850℃で8時間の熱処理を施した。
【0042】従来例NO.31では、原材料として前記
のタフピッチ銅を用い、従来例NO.32では原材料と
して前記の無酸素銅を用いて、横型連続鋳造法により線
径8mmに鋳造後、線径0.8mmに伸線した。
【0043】以上のようにして得られた導体について、
300℃で2時間の熱処理により転位等を除去した後、
4端子法を用いて、室温と液体ヘリウム温度での抵抗を
測定し、残留抵抗比を求めた。また、これらの導体につ
いて、ステレオおよびVTRの配線材として使用した際
の解像度、繊細感、透明度、画質の密度および低音・中
音・高音の伸びについて評価した。これらの結果を表3
に示す。音響および画像特性の評価については従来例N
O.31を10として相対的に評価した。
【0044】
【表3】
【0045】表3においてNO.23が本願請求項に係
る発明である。表3の結果から明らかなように、本発明
による導体は、比較例および従来例のものに比べ、音響
および画像において優れた特性を示すことがわかった。
【0046】
【発明の効果】以上説明したように、この発明に従え
ば、電子の散乱原因を減少し、信号の伝達の乱れを軽減
することにより、繊細な音響および画像を得ることがで
きる。
【0047】また、ゾーンメルト法などのような特別な
工程による高純度化などを必ずしも必要としないので、
比較的低コストで工業的に有利な方法で良好な導体を製
造することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI C22F 1/00 C22F 1/00 691C (72)発明者 宮崎 健史 大阪市此花区島屋一丁目1番3号 住友 電気工業株式会社 大阪製作所内 (56)参考文献 特開 昭60−125359(JP,A) 特開 平2−175849(JP,A) 特開 昭60−3808(JP,A) 特開 平3−134143(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C22F 1/00 - 3/02 C22C 9/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 純度99.9%以上の銅を用い、冷間加
    工後の最終線径に至る前に400℃〜580℃の範囲内
    の温度で1分〜24時間の熱処理を少なくとも1回施す
    ことを特徴とする、音響・画像機器用導体の製造方法。
  2. 【請求項2】 前記熱処理を施すことにより、残留抵抗
    比を熱処理を施していない導体と比較し20%以上上昇
    させることを特徴とする、請求項1に記載の音響・画像
    機器用導体の製造方法。
  3. 【請求項3】 前記熱処理を施した導体の残留抵抗比が
    200以上であることを特徴とする、請求項1または2
    に記載の音響・画像機器用導体の製造方法。
  4. 【請求項4】 含有される酸素量が40massppm
    以下である銅を用いることを特徴とする、請求項1〜3
    のいずれか1項に記載の音響・画像機器用導体の製造方
    法。
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