JP3373789B2 - ポリマー碍子の外被成形方法 - Google Patents

ポリマー碍子の外被成形方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、コア部材と、この
コア部材の外周に設けた胴部と複数の笠とからなる外被
とから構成されるポリマー碍子の外被を金型を使用して
成形するポリマー碍子の外被成形方法に関するものであ
る。
【0002】
【従来の技術】図7は本発明の対象でもある従来のポリ
マー碍子の構成の一例を示す部分断面図である。図7に
示す例において、ポリマー碍子1は、コア部材としての
中実のFRPコア2と、このFRPコア2の外周に設け
られたシリコーンゴム等のゴム製の外被3と、FRPコ
ア2の両端部にかしめ固定された両端金具4とから構成
される。外被3は胴部5と複数の笠6とから構成されて
いる。
【0003】上述した構成のポリマー碍子1の外被3
は、通常上型と下型とからなる金型を利用して成形され
る。この金型による成形の際、FRPコア2が偏芯する
と胴部5の肉厚を守ることができず、そのようなポリマ
ー碍子1を使用すると送電線路の異常電圧等により閃絡
時に胴部4が貫通するなどの事態を招く。圧縮成形、ト
ランスファー成形、インジェクション成形等の金型を使
用した成形では、それらの成形方法上FRPコア2の偏
芯は発生し得るものであり、対策が求められていた。
【0004】その対策として、従来、トランスファー成
形又はインジェクション成形において、図8(a)、
(b)にその平面図および正面図を示すように、ランナ
ー51、ノズル52を介して供給されるゴム流入方向に
抗して、FRPコア2に支え棒53をあて、その状態で
ランナー51、ノズル52を介して金型54のキャビテ
ィ55内にゴムを充填した後、支え棒53を後退させて
キャビティ55内から支え棒53を退去させる方法が採
られていた。また、その際の支え棒53でFRPコア2
に傷が付くのを防ぐため、図9(a)、(b)にその平
面図および正面図を示すように、FRPコア2に共素地
ゴムのリング56を巻いておき、このリング56上から
支え棒53をあてる方法も知られている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】上述した従来の対策
は、インジェクション成形やトランスファー成形ではF
RPコア2の偏芯防止にある程度有効である。しかしな
がら、FRPコア2の表面には外被3を形成するゴムと
の接着のためプライマー処理を施してあり、この表面に
リング56をはめる作業は、FRPコア2と外被3との
接着を阻害する汚れをFRPコア2の表面に付着させる
可能性が高かった。また、支え棒53を直接FRPコア
2にあてる方法は、FRPコア2の表面に傷が付く恐れ
が高かった。
【0006】さらに、支え棒53および支え棒53を出
し入れする構造を金型54に形成する必要があるため、
金型構造が複雑で保守、操作等に手間を要する問題があ
った。さらにまた、圧縮成形などで、FRPコア2の周
囲にゴムを覆い、その状態で上型と下型との間にFRP
コア2をセットし、上型と下型とを徐々に閉じて成形す
る場合は、上述した支え棒53を利用する方法はいずれ
も技術的に不利でFRPコア2が損傷しやすいため、利
用することができなかった。
【0007】本発明の目的は上述した課題を解消して、
簡単な方法でコア部材を損傷することなく外被成形にお
けるコア部材の偏芯を防ぐことができるポリマー碍子の
外被成形方法を提供しようとするものである。
【0008】
【課題を解決するための手段】本発明のポリマー碍子の
外被成形方法は、コア部材と、このコア部材の外周に設
けた胴部と複数の笠とからなる外被とから構成されるポ
リマー碍子の外被を金型を使用して成形する外被成形方
法において、前記外被と同じゴムからなり、成形時に胴
部の肉厚を確保するためのスペーサを、金型の胴部に対
応する部分に設けたことを特徴とするものである。
【0009】本発明では、金型の胴部に対応する部分に
設けた、好ましくは外被を形成するゴムと共素地からな
り、好ましくは金型セット時に金型の胴部キャビティの
内側に突出する、成形時に胴部の肉厚を確保するための
スペーサが、成形の際コア部材の偏芯を防止出来、その
結果胴部の肉厚を一定の厚さに保った状態で外被成形を
実施することができる。本発明は成形方法を問わず使用
することができるが、特にその中でも圧縮成形に利用す
ると、スペーサの先端部分が、コア部材の移動速度に応
じて移動するよう構成できるとともに、スペーサの先端
部分を首振り可能なスペーサヘッドから構成することが
できるため、好ましい態様となる。
【0010】
【発明の実施の形態】まず、本発明の対象となるポリマ
ー碍子は、従来例として図7を使用して説明したポリマ
ー碍子1と同じであり、コア部材としてのFRPコア2
と、このFRPコア2の外周に設けられたシリコーンゴ
ム等のゴム製の外被3と、FRPコア2の両端部にかし
め固定された両端金具4とから構成される。外被3は胴
部5と複数の笠6とから構成されている。また、外被成
形方法も、圧縮成形、トランスファー成形、インジェク
ション成形等金型を使用する点も同じである。
【0011】本発明のポリマー碍子の外被成形方法は、
成形時に胴部の肉厚を確保するためのスペーサを、金型
の胴部に対応する部分に設けたことを特徴とするもので
あり、以下具体的に説明する。図1は本発明のポリマー
碍子の外被成形方法の概要を説明するための図である。
図1に示す例において、11は金型であり、この金型1
1には、胴部5を形成するための胴部キャビティ12−
1と笠6を形成するための笠キャビティ12−2とから
なるキャビティ12を形成している。なお、図1に示す
例では、上型あるいは下型のいずれか一方の分割面から
見た図を示している。
【0012】また、13はスペーサであり、図1に示す
金型11の分割面において、一対の2個のスペーサ13
を、金型11の胴部に対応する部分に設けている。すな
わち、図2に図1におけるスペーサ13の部分の断面図
を示すように、金型11の胴部キャビティ12−1に、
キャビティ12と接する面から2つのスペーサ装着部1
4を形成し、これらのスペーサ装着部14にスペーサ1
3を装着している。本例では、金型11を構成する上型
と下型にそれぞれ2個のスペーサ13を設ける例を示し
ている。また、スペーサ13の装着にあたっては、スペ
ーサ13のキャビティ12と反対側の後端に円柱形状の
水平方向ズレ防止部13−2を設け、この水平方向ズレ
防止部13−2がスペーサ装着部14の対応する部分に
はまり込み、スペーサ13が圧縮されて変形しても位置
ズレがないよう構成している。
【0013】一対のスペーサ13は、笠6間の胴部5の
すべてに設ける必要はなく、予め金型11においてFR
Pコア2の偏芯が大きい位置がわかっている場合はその
位置にのみ設ければよく、通常は複数の胴部5に対し1
箇所程度設ければよい。また偏芯の方向が分っている場
合は、左右いずれか一方にのみ設ければよい。さらに、
図3(a),(b)に示すように、金型11として複数
のセグメント11−1,11−2を組み合わせて構成す
る金型11を利用する場合は、セグメントのうち加硫終
了後の成形物を胴部5を突上げて離型するエジェクタ1
5に一対のスペーサ13を設けるよう構成することが好
ましい。このように構成すると、金型セグメント11−
2に直接スペーサ装着部14を加工せずに済み、エジェ
クタ15は突上げステム16とは着脱自在の構造にでき
ることからスペーサの装着、その増減、偏芯の方向に合
わせた左右どちらか一方への装着、装着の取やめ、など
が、金型11の分解、セグメントの入れ替え、を伴わず
に単にエジェクタ15の交換、向き替えのみで操業中自
在に行なうことができて好ましい。
【0014】図1および図2に示す例では、スペーサ1
3をスペーサ装着部14に装着した状態で、スペーサ1
3の表面が金型11の分割面と同一平面になるよう構成
している。そのため、スペーサ13自体は、上型と下型
とを閉じた状態でも変形することはない。なお、スペー
サ13の先端部分13−1のうちFRPコア2に面する
角部は面取り部13−3とし、FRPコア2との接着障
害を防止できる構成としている。そして、スペーサ13
の先端部分13−1が予め所定量だけキャビティ12−
1内に突出しており、その結果、スペーサ13自体は変
形することなく、上型と下型とを閉じて金型11をセッ
トした状態で、スペーサ13が金型11の胴部キャビテ
ィ12−1の内側に突出するよう構成することができ
る。なお、スペーサ13の材質は有る程度弾性を有して
いればどのような材料でも使用することができるが、本
発明においては、スペーサ13の先端部分13−1が成
形後外被3の胴部5にその一部として残留するため、外
被3と共素地のゴムから構成することが好ましい。な
お、成形後胴部5から突出したスペーサ13は切り落と
し仕上げることで対応する。
【0015】図4は本発明のポリマー碍子の外被成形方
法で使用するスペーサ13の他の例の構成を示す図であ
り、図4(a)はその平面図を、図4(b)はその正面
図を、図4(c)はその側面図をそれぞれ示している。
図4に示すスペーサ13において、図1および図2に示
すスペーサ13と異なる点は、先端部分13−1と水平
方向ズレ防止部13−2の構成である。すなわち、図4
に示すスペーサ13では、先端部分13−1を、くびれ
部21とくびれ部21から膨張するスペーサヘッド22
とから構成している。そのため、スペーサヘッド22は
首振り動作可能である。また、水平方向ズレ防止部13
−2を、スペーサ13の本体から両側面に突出させた2
つの円柱部分から構成するとともに、上型あるいは下型
のいずれか一方のみに装着することを考慮して、2つの
円柱部分をスペーサ13の両側面のうち半分よりも若干
小さい範囲に設けている。上下方向ズレ防止部13−3
も同目的で設けている。
【0016】図4に示すスペーサ13の動作について、
図5を参照して以下に説明する。図5において、スペー
サ13の高さをhs、金型11またはエジェクタ15の
うち下型に設けたスペーサ装着部14の深さをds(上
型のds)とすると、上下型が閉じてきて、hs−2d
sまで近付くと、スペーサ13のつぶれ変形が始まる。
この時からスペーサヘッド22のキャビティ12内への
進入が始まる。この時、直径DのFRPコア2の中心線
は、上下型間(hs−2ds)の略中央、言い換えると
下型面から(hs−2ds)/2の位置にあると推察さ
れる。つまり、FRPコア2は、全下降ストローク中最
後の(hs−2ds)/2を残した所でスペーサ13と
出会い、FRPコア2が偏芯している場合で極端な場合
はスペーサヘッド22と接触し、その後はスペーサヘッ
ド22と共に下降するので、FRPコア2の表面がスペ
ーサ13でこすれてプライマー処理による接着剤膜が損
傷することはない。また、その後(hs−2ds)/2
だけの下降工程中において、両者が接触しており、か
つ、スペーサヘッド22とFRPコア2の下降速度に差
があった場合でも、スペーサヘッド22は付け根にくび
れ部21があるため容易に首を振って対応することがで
きる。
【0017】図6は本発明のポリマー碍子の外被成形方
法で使用するスペーサ13のさらに他の例の構成を示す
図である。図6に示す例では、上型および下型のそれぞ
れ2箇所すなわち全部で4箇所スペーサ13を設け、各
スペーサ13をスペーサ装着部14に装着した状態にお
いて、各スペーサ13の上端が上型または下型の分割面
から突出しており、上型と下型とを徐々に閉じて行くに
従ってスペーサ13がつぶされて変形するよう構成して
いる。図6に示す例では、このスペーサ13の変形を容
易にするために、各スペーサ13に肉抜き穴31を設け
ている。
【0018】上述したようにスペーサ13を使用した本
発明のポリマー碍子の外被成形方法によれば、FRPコ
ア2の偏芯を効果的に防止できる。そのため、従来はF
RPコア2の偏芯を考慮して、胴部5の厚みを実際は例
えば3mmで十分な性能を得ることができるところを例
えば5mmと設計しているのを、始めから3mmに設計
することができる。また、本発明において、スペーサ1
3を設ける箇所については、まず、金型11におけるF
RPコア2の偏芯方向が予めわかっている場合は、図4
および図5に示したように、分割面の片側のみでよい。
片側に設ける場合も、上型と下型の両方にスペーサ13
を設けてもよいし、いずれか一方にスペーサ13を設け
てもよい。さらに、胴部5の厚みをなるべく薄くする設
計例えば上述した例においては3mmと設計する場合
は、分割面の両側にスペーサ13を設けることが好まし
い。
【0019】さらにまた、本発明の対象となる成形方法
についても、金型を使用した成形であれば、トランスフ
ァー成形、インジェクション成形、圧縮成形等のいずれ
の成形方法でも適用できる。このうち、トランスファー
成形、インジェクション成形では、スペーサ13のキャ
ビティ12内への突出量を多くしてFRPコア2を支持
するよう構成することで、FRPコア2の表面に傷を付
けず、また、FRPコア2の偏芯を防止した状態で、外
被を成形することができる。ただ、本発明のスペーサ1
3を使用したポリマー碍子の外被成形方法は、圧縮成形
における偏芯防止に特に効果があることはいうまでもな
い。
【0020】
【発明の効果】以上の説明から明らかなように、本発明
によれば、金型の胴部に対応する部分に設けた、好まし
くは外被を形成するゴムと共素地からなり、好ましくは
金型セット時に金型の胴部キャビティの内側に突出す
る、成形時に胴部の肉厚を確保するためのスペーサが、
成形の際コア部材の偏芯を防止出来るため、胴部の肉厚
を一定の厚さに保った状態で外被成形を実施することが
できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明のポリマー碍子の外被成形方法の概要を
説明するための図である。
【図2】図1に示すスペーサの部分の断面を示す図であ
る。
【図3】本発明のポリマー碍子の外被成形方法の他の例
の概要を説明するための図である。
【図4】本発明のポリマー碍子の外被成形方法で使用す
るスペーサの他の例の構成を示す図である。
【図5】図4に示すスペーサの動作を説明するための図
である。
【図6】本発明のポリマー碍子の外被成形方法で使用す
るスペーサのさらに他の例の構成を示す図である。
【図7】本発明の対象となる従来のポリマー碍子の構成
の一例を示す部分断面図である。
【図8】従来のトランスファー成形又はインジェクショ
ン成形の一例を説明するための図である。
【図9】従来のトランスファー成形又はインジェクショ
ン成形の他の例を説明するための図である。
【符号の説明】
1 ポリマー碍子、2 FRPコア、3 外被、4 両
端金具、5 胴部、6笠、11 金型、12 キャビテ
ィ、12−1 胴部キャビティ、12−2 笠キャビテ
ィ、13 スペーサ、13−1 先端部分、13−2
水平方向ズレ防止部、13−3 面取り部、13−4
上下方向ズレ防止部、14 スペーサ装着部、21 く
びれ部、22 スペーサヘッド、31 肉抜き穴

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】コア部材と、このコア部材の外周に設けた
    胴部と複数の笠とからなる外被とから構成されるポリマ
    ー碍子の外被を金型を使用して成形する外被成形方法に
    おいて、前記外被と同じゴムからなり、成形時に胴部の
    肉厚を確保するためのスペーサを、金型の胴部に対応す
    る部分に設けたことを特徴とするポリマー碍子の外被成
    形方法。
  2. 【請求項2】上型と下型とを閉じて金型をセットした状
    態で、前記スペーサが金型の胴部キャビティの内側に突
    出するよう構成する請求項1記載のポリマー碍子の外被
    成形方法。
  3. 【請求項3】前記スペーサが、スペーサの金型の胴部か
    らのズレを防止するズレ防止部を有する請求項1または
    2記載のポリマー碍子の外被成形方法。
  4. 【請求項4】前記成形方法が、上型と下型とを徐々に閉
    じて外被の成形を行う圧縮成形である請求項1〜のい
    ずれか1項に記載のポリマー碍子の外被成形方法。
  5. 【請求項5】前記圧縮成形において、前記スペーサの先
    端部分が、コア部材の移動速度に応じて移動する請求項
    記載のポリマー碍子の外被成形方法。
  6. 【請求項6】前記圧縮成形において、前記スペーサの先
    端部分を首振り可能なスペーサヘッドから構成する請求
    または記載のポリマー碍子の外被成形方法。
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