JP3371022B2 - ポリエステル系ケミカルレース基布 - Google Patents

ポリエステル系ケミカルレース基布

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JP3371022B2
JP3371022B2 JP33830893A JP33830893A JP3371022B2 JP 3371022 B2 JP3371022 B2 JP 3371022B2 JP 33830893 A JP33830893 A JP 33830893A JP 33830893 A JP33830893 A JP 33830893A JP 3371022 B2 JP3371022 B2 JP 3371022B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、従来の水溶性ビニロン
からなるケミカルレ−ス基布に代えて、安価でしかも優
れた品質のレ−スを提供することのできるポリエステル
系ケミカルレース基布に関する。
【0002】
【従来の技術】従来からケミカルレース用基布はすべて
水溶性ビニロンが用いられており、水溶性ビニロンの存
在によりケミカルレース技術が発展したと言っても過言
ではない。しかしながら、水溶性ビニロンは製糸コスト
が高い上、吸湿性が高いために製織工程や、レースの刺
繍工程では特別な温調室管理を必要とし、管理上極めて
繁雑で、困難性が高い。また、現在最も生産性が高いと
言われているウォータージェットルームは水溶性という
本質故に使用不可能になっており、生産性の低い製織方
法に頼らざるを得ない。さらに水溶性ビニロンとはい
え、大量の熱水で除去することが必要なため、多大なユ
ーティリティを必要とし、かつまたそのための溶解工程
に特別な装置が必要となり、ケミカルレース基布の製造
コストはどうしても高くならざるを得ない。一方、水溶
性ビニロンのように簡単に溶解可能なポリマーとしてア
ルカリ易溶性ポリマーがある。アルカリ易溶性ポリマー
は旧くから知られており、スルホイソフタル酸およびそ
の誘導体、ポリエチレングリコール等を共重合したポリ
エチレンテレフタレートがアルカリ易溶性ポリマーとし
て多く用いられている。特に該ポリマ−は溶解分割型複
合繊維の溶解セグメントとして使用され、それらの複合
繊維は特開昭54−6965号公報、特開昭56−94
42号公報、特開平1−162813号公報等に数多く
提案されている。また、アルカリ易溶性ポリマーを単独
で用いることも提案されており、例えば特開昭64−2
6747号公報には「ポリエステルフィラメントと絹長
繊維の繭糸からなる混繊糸であって、絹の精練条件で容
易に溶解するポリエステルと容易に溶解しないポリエス
テルの複合繊維もしくは複合糸からなる混繊糸」が提案
されている。特開昭55−90673号公報には「アル
カリ減量速度の異なる2種以上のポリエステル系繊維を
含む布帛に、アルカリ含有抜食糊を印捺し、アルカリ減
量速度が大なるポリエステル系繊維を抜食せしめる」と
記載されている。
【0003】このようにアルカリ易溶性ポリマーを利用
した提案は数多くあるが、アルカリ溶解速度と糸強度を
兼備えた単独糸は製糸ができないため、芯鞘構造あるい
はレギュラー糸との混繊糸でしか用いることができず、
いずれも繊維もしくは布帛の一部を残すものである。本
発明のように、ケミカルレース用基布としてアルカリ易
溶性ポリマー単独糸をタテ糸・ヨコ糸に用い、布帛を完
全に溶解除去させる提案は今までなされていない。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】上記の水溶性ビニロン
の欠点を解消することが本発明の目的であり、本発明者
等は水溶性ビニロンに代えてアルカリ易溶性ポリマ−を
用いてケミカルレ−ス基布を製造することを検討した結
果、本発明に到達した。すなわち、本発明のケミカルレ
−ス基布の特徴は、水溶性ビニロンの代わりにアルカリ
易溶性ポリマー単独糸をタテ糸・ヨコ糸に使った布帛で
あり、レ−ス刺繍を施した後、低濃度アルカリで容易に
除去できることにある。ポリマ−の中でもポリエステル
は水溶性ビニロンに比べ製造コストが安く、また加工工
程管理が容易で、織物の生産性の高いウォータージェッ
トルームで機織可能であり、さらに溶解工程に特別の装
置を必要とせず一般の染色加工場で後加工が可能である
特徴を有する。
【0005】本発明の目的は、水溶性ビニロンからなる
基布の代わりにアルカリ易溶性ポリエステルからなる基
布を使い、安価でしかも品質の優れたケミカルレースを
提供しようとするものである。
【0006】
【課題を解決するための手段】すなわち、本発明は、エ
チレンテレフタレート単位を主たる繰り返し単位とし、
かつスルホン酸塩基含有化合物を共重合してなるポリエ
ステル糸条からなる織物であって、下記(a)〜(c)
を同時に満足することを特徴とするポリエステル系ケミ
カルレース基布である。
【0007】(a)該織物が水酸化ナトリウム濃度10
g/リットル、液温95℃のアルカリ減量条件におい
て、60分未満で完全に溶解除去される減量速度を持つ
こと。 (b)JIS一般織物試験方法L−1096−1990
に規定される引張強さおよび伸び率試験A法(ストリッ
プ法)で、ヨコ糸方向の応力−伸度曲線において、試験
片の幅5cm当り5Kgfのときの伸び率が10%以下
であること。 (c)ヨコ糸密度/タテ糸密度が0.6〜1.2の範囲
にあり、JIS一般織物試験方法L−1096−199
0に規定される滑脱抵抗力が縫目滑脱法B法による測定
で、タテ方向とヨコ方向の和で45mm未満であるこ
と。
【0008】本発明のポリエステル系ケミカルレース基
布について詳細に説明する。本発明のポリエステル系ケ
ミカルレース基布の最大の特徴は、刺繍糸およびチュー
ルの強力を低下させないアルカリ減量条件で、基布を完
全溶解除去することにある。ケミカルレースに用いられ
る刺繍糸およびチュール素材の大部分は、綿、ポリエス
テル、レーヨンの3種類である。この素材の中で、綿は
シルケット加工されるように、アルカリに対して強力を
保つことは周知の通りであり、通常のアルカリ減量条件
程度では全く影響を受けない。一方、アルカリの影響を
受けやすい素材はポリエステルとレーヨンである。ポリ
エステル織物のアルカリ減量加工は、ポリエステルがア
ルカリ水溶液中で加水分解しやすい性質を利用したもの
であり、レーヨンもアルカリに対して弱い素材であるこ
とも周知の通りである。本発明においては、綿はもちろ
んのことポリエステルやレーヨン素材の刺繍糸およびチ
ュールの強度低下をきたさないアルカリ減量条件で完全
に溶解除去されるケミカルレ−ス基布(以下、単に基布
または織物と称する場合もある)を提供することにあ
る。
【0009】綿はもちろん、ポリエステルやレーヨン素
材の刺繍糸およびチュールの強力低下をきたさないで完
全に溶解除去される基布の条件とは、水酸化ナトリウム
濃度10g/リットル、液温95℃のアルカリ減量条件
において、60分未満で完全に溶解除去される減量速度
を持つことである。基布をアルカリ水溶液で溶解除去
し、刺繍糸もしくは刺繍糸とチュールのみを残すケミカ
ルレース製造法において、単に基布素材のポリマーや繊
維のアルカリ減量速度が速いだけではあまり意味を持た
ず、基布そのものが完全溶解除去される減量速度が重要
となる。すなわち、刺繍糸およびチュールの強力低下を
きたさず基布を溶解除去するには、基布そのものが水酸
化ナトリウム濃度10g/リットル、液温95℃のアル
カリ減量条件において、60分未満で完全に溶解除去さ
れる減量速度を持たないといけない。基布の減量速度が
この条件より遅い場合、刺繍糸およびチュールの強力低
下を起こし、実用に供しえない。この条件は実用に供せ
るぎりぎりの条件であり、減量速度は速い程好ましく、
上記のアルカリ条件において30分未満で完全溶解除去
されることが望ましい。
【0010】本発明における基布の減量速度を規定し
た、水酸化ナトリウム濃度10g/リットル、液温95
℃で60分未満というアルカリ減量条件は、本発明の基
布の減量加工がこのアルカリ減量条件でしか行えないと
いうのではなく、該基布のアルカリ減量速度をアルカリ
溶解度定数や、レギュラーポリエステルの何倍という表
現では表せないため、敢えて特定のアルカリ減量条件で
規定したものである。したがって、本発明の基布におけ
る実際のアルカリ減量条件は、アルカリの種類、浴の温
度等で何等規制されるものでなく、アルカリとしては水
酸化ナトリウムに限定されるものでもなく、炭酸ナトリ
ウムを用いても良く、アルカリ濃度、浴の温度等何等規
制されない。ただしあまり弱アルカリや低温条件では基
布の溶解時間が長くなり過ぎ、一方、あまり強アルカリ
や高温条件では基布の溶解時間が短すぎて、安定に操業
することが難しくなるので好ましくない。
【0011】本発明の基布に対する最適アルカリ減量条
件として、水酸化ナトリウムを用いる場合、濃度は1〜
20g/リットルが適当である。炭酸ナトリウムを用い
る場合、濃度は50〜200g/リットルが適当であ
る。浴温や減量時間はアルカリ濃度との兼合いで適宜決
定することができる。該基布が完全に溶解除去できたか
否かの判別は、該基布の素材であるポリエステルが共重
合成分としてスルホン酸塩基含有化合物を含有するた
め、繊維鑑別用インディケーター染料(日本化薬(株)
製カヤステインQ)で染色判別して判定することができ
る。市販品繊維鑑別用インディケーター「カヤスティン
Q」の推奨処方に従って染色すると、常圧タイプカチオ
ンダイアブル繊維様の濃い茶色に染別できることから判
別可能であり、ケミカルレース基布が溶解し得たか否か
を判別できるのである。もし刺繍糸としてカチオンダイ
アブルポリエステルを使用した場合は、重量の変化と顕
微鏡観察を併用して判別することができる。
【0012】次にJIS一般織物試験方法L−1096
−1990に規定される、引張強さおよび伸び率試験A
法(ストリップ法)でヨコ糸方向に測定して得られる応
力−伸度曲線において、試験片の幅5cm当り5Kgf
のとき、伸び率が10%以下であることが必要である。
刺繍機上で基布は幅方向に地張りされるため、ヨコ糸方
向の強伸度物性が重要となり、基布のヨコ糸方向の物性
を基布の代表値と考えれば良い。刺繍機上で基布は地張
り張力約50〜70Kg/mで固定されてミシン刺繍が
施される。地張りされた基布の上に重ねられたチュール
(ネット状編物)が刺繍により目ずれを起こしたり、ま
た繊細な刺繍模様が変形を生じてはならないため、ケミ
カルレース基布の応力−伸度特性が重要になる。この点
について鋭意検討を進めた結果、基布の応力−伸度曲線
において第一次降伏点の応力がきわめて重要であること
がわかった。とりわけ基布のヨコ方向の応力が幅5cm
当り5Kgfのときの伸び率が10%を越えると、基布
に刺繍糸の縫い込み応力が加わり、基布は地張り張力か
らチュールを保護する役目を果たせず、チュールまで伸
ばされてチュールの目ずれを起こしたり、基布が伸ばさ
れて痩せるため刺繍のふくらみが減じて風合が悪くなる
等、ケミカルレースの品位が著しく損なわれる。一方、
基布の目付が55g/m2 を越えて、5cm当り5Kg
fの応力をかけた時の伸び率が2%未満となるような緻
密な高コンパクトで伸びにくい基布になると、針の打込
みに対して負荷が大となり、針の損耗が激しく刺繍糸切
れを生じやすく、また基布重量(目付)が大きくなりす
ぎて、本来除去すべき材料としてロスが大きくる等の問
題が生じるため、該伸び率は2〜10%の範囲が好まし
い。
【0013】次に、基布のヨコ糸密度/タテ糸密度の比
は0.6〜1.2の範囲にあり、JIS一般織物試験方
法L−1096−1990に規定される滑脱抵抗力が縫
目滑脱法B法による測定で、タテ方向とヨコ方向の和が
45mm未満である必要がある。刺繍機のミシンによっ
て基布に、または基布とチュールを合せたものに模様が
刺繍されるが、基布のヨコ糸密度/タテ糸密度の比が
0.6未満であると、タテ糸密度とヨコ糸密度のバラン
スが悪く、刺繍模様にずれを生じてしまう。また、基布
のヨコ糸密度/タテ糸密度の比が1.2を越えると、製
織時にヨコ方向の織縮みが大きくなりタテ糸切れが頻発
して製織が困難になる。そしてJIS一般織物試験方法
L−1096−1990に規定される滑脱抵抗力が、縫
目滑脱法B法による測定でタテ方向とヨコ方向の和が4
5mm以上あると、地張りのときに基布の目ずれのため
補助布が外れたり、ミシン刺繍のときの糸はずれや、刺
繍模様が粗く細かい刺繍が施せなくなる。望ましくは、
基布のヨコ糸密度/タテ糸密度の比が0.7〜1.0の
範囲であり、縫目滑脱抵抗力が、タテ方向とヨコ方向の
和で36mm未満である。
【0014】さらに、基布の沸水での収縮率はケミカル
レースの品位に影響するため、基布のヨコ収縮率/タテ
収縮率の比は0.8〜1.2の範囲、とくに0.9〜
1.1の範囲であり、ヨコ収縮率とタテ収縮率の和が1
0%以上であることが望ましい。基布のヨコ収縮率/タ
テ収縮率の比が上記範囲外の場合、刺繍やチュールがタ
テ、ヨコ収縮率のバランスを崩して品位を損ない、ヨコ
収縮率とタテ収縮率の和が10%未満では刺繍やチュー
ルの収縮を妨げて風合を損ねる場合がある。また本発明
のポリエステル系ケミカルレース基布の最適破断強力は
JIS一般織物試験方法L−1096−1990に規定
される、引張強さおよび伸び率試験A法(ストリップ
法)でヨコ糸方向に測定した引張強さが、試験片の幅5
cmで12Kgf以上であることが望ましく、このレベ
ル以上が保持されれば地張りの準備工程や、エンブロイ
ダリー刺繍での破損は条件の取り方次第で防ぐことがで
きる。破断強力が試験片幅5cm当り12Kgf未満で
は、基布が地張り張力に耐えることができず破れたり、
ミシン刺繍工程中に基布破れが生じる場合がある。
【0015】次に本発明のケミカルレ−ス基布を構成す
るポリエステルについて説明する。該ポリエステルはア
ルカリに対して易溶解性であることが必要である。この
アルカリ易溶性ポリエステルはタテ糸・ヨコ糸ともに、
単独糸使いで織物に形成されるため、単にアルカリ減量
速度が速いのみならず、ケミカルレース用基布に適合し
た製糸性、強度等が要求される。本発明に適したアルカ
リ易溶性ポリエステルとしてはエチレンテレフタレ−ト
を主たる繰り返し単位とし、かつスルホン酸塩基含有化
合物を共重合してなるポリエステルである。スルホン酸
塩基含有化合物とは、下記式(I)を含む化合物であ
る。
【0016】
【化1】 (式中、Arは3価の芳香族基、Mは金属原子を示す)
【0017】そして、本発明における(a)の条件を満
足するアルカリ減量速度を満足するためには、下記式
(II)で表されるジオ−ル単位、および下記式(III)で
表される側鎖単位を含有した共重合ポリエステルである
ことが好ましい。
【0018】
【化2】 (式中、R1 はアルキレン基、mは10〜100の数を
示す)
【0019】
【化3】 (式中、R2 はアルキレン基、R3 は炭素数1〜18の
炭化水素基、nは10〜100の数、xおよびyはそれ
ぞれ0または1を示す)
【0020】上記式(I)で示されるジカルボン酸単位
は、共重合ポリエステルを構成する全酸成分の0.5〜
10モル%、式(II)で表されるジオール単位および式
(III)で表される側鎖単位は、それぞれ共重合ポリエス
テルの重量に基づいて1〜20重量%含有され、かつ式
(II)で表されるジオール単位と式(III)で表される側
鎖単位の含有率の合計が共重合ポリエステルの重量に基
づいて2〜40重量%である共重合ポリエステルが好ま
しい。
【0021】上記共重合ポリエステルにおいては、それ
を構成するジカルボン酸単位として、上記の式(I)で
表されるジカルボン酸単位[以下、「ジカルボン酸単位
(I)」という]が共重合ポリエステルを構成する全酸
成分の0.5〜10モル%、とくに1〜7モル%の割合
で含有されることが好ましい。ジカルボン酸単位(I)
の共重合割合が0.5モル%未満であるとアルカリ処理
の際に該共重合ポリエステルが溶解しにくくなり、一方
10モル%を越えるとその金属スルホネート成分のイオ
ン相互作用により、該共重合ポリエステルを製造するた
めの重縮合反応中に増粘が起こり、共重合ポリエステル
が所望の極限粘度になるまで重縮合反応を継続すること
が困難になる。ジカルボン酸単位(I)においては、A
rが3価の芳香族基であり、Mは金属原子であり、基A
rとしては1,3,5−ベンゼントリイル基、1,2,
3−ベンゼントリイル基、1,2,4−ベンゼントリイ
ル基等のベンゼントリイル基;1,3,6−ナフタレン
トリイル基、1,3,7−ナフタレントリイル基、1,
4,5−ナフタレントリイル基、1,4,6−ナフタレ
ントリイル基等のナフタレントリイル基などを挙げるこ
とができる。また金属原子Mはナトリウム、リチウム等
のアルカリ金属原子である。該共重合ポリエステルは、
1種類のジカルボン酸単位(I)のみを有していてもま
たは2種以上のジカルボン酸単位(I)を有していても
よい。
【0022】該共重合ポリエステルはエチレンテレフタ
レ−ト単位を主たる繰り返し単位とするが、テレフタル
酸およびジカルボン酸単位(I)以外の共重合され得る
カルボン酸単位として、イソフタル酸、1,4−ナフタ
レンジカルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、
2,5−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ナフタレン
ジカルボン酸、4,4’−ビフェニルジカルボン酸、
3,3’−ビフェニルジカルボン酸、4,4’−ジフェ
ニルイソプロピリデンジカルボン酸、1,2−ジフェノ
キシエタン−4’,4”−ジカルボン酸、2,5−アン
トラセンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸;β−ヒ
ドロキシエトキシ安息香酸、p−オキシ安息香酸等の芳
香族ヒドロキシカルボン酸;またはそれらのエステル形
成性誘導体から誘導された芳香族ジカルボン酸単位を挙
げることができ、これらの芳香族ジカルボン酸単位は1
種類のみまたは2種以上含まれていてもよい。上記した
芳香族ジカルボン酸単位と共に、アジピン酸、アゼライ
ン酸、セバシン酸等の脂肪族ジカルボン酸;シクロヘキ
サンジカルボン酸等の脂環族ジカルボン酸やそのエステ
ル形成性誘導体から誘導された単位を含んでいてもよ
い。
【0023】また、該共重合ポリエステルは上記の式
(II)で表されるジオール単位[以下「ジオール単位
(II)」という]を共重合ポリエステルの重量に基づい
て1〜20%含有していることがよく、ジオール単位
(II)の割合が1重量%未満であると、共重合ポリエス
テルのアルカリ溶解性が低下し、一方20重量%を越え
ると紡糸性が困難になる場合がある。ジオール単位(I
I)において、R1 は炭素数1〜4のアルキレン基であ
るのが好ましく、エチレン基またはプロピレン基である
のがより好ましく、R1 がエチレン基であるのがアルカ
リ溶解性などの点から特に好ましい。ジオール単位(I
I)において、そのオキシアルキレン単位の重合度を示
すmは上記したように10〜100の範囲内の数であ
り、mが20〜80の範囲の数であるのが好ましい。ジ
オール単位(II)において、mが10よりも小さいとア
ルカリ溶解性が小さくなり、一方mが100を越えても
アルカリ溶解性はさして向上せず、むしろ着色などを生
じやすくなる。ジオール単位(II)の例としては、mが
上記10〜100の範囲内であるポリオキシエチレング
リコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリオキ
シエチレン/ポリオキシプロピレングリコール等から誘
導された単位を挙げることができ、該共重合ポリエステ
ルにおいてジオール単位(II)は一種のみまたは2種以
上含まれていてもよい。
【0024】また、該共重合ポリエステルは、エチレン
グリコ−ルおよびジオール単位(II)以外の他のジオー
ル単位を含有していてもよく、他のジオール単位として
は、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、
テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコー
ル、ヘキサメチレングリコール、ノナメチレングリコー
ル、3−メチルペンタン−1,5−ジオール、2−メチ
ルオクタン−1,8−ジオール、ジエチレングリコール
等の脂肪族ジオール;シクロヘキサンジメタノール等の
脂環族ジオールなどから誘導される単位を挙げることが
でき、これらのジオール単位は1種類のみ含まれていて
も2種類以上含まれていてもよい。
【0025】そして、該共重合ポリエステルは更に上記
の式(III)で表される側鎖単位[以下「側鎖単位(II
I)」という]を共重合ポリエステルの重量に基づいて1
〜20重量%有していることがよく、側鎖単位(III)の
割合が1重量%未満であると、アルカリ溶解性が低下
し、一方20重量%を越すと紡糸性が困難になる。側鎖
単位(III)は、例えば下記式(IV);
【0026】
【化4】 [式中、Dはジカルボン酸成分やジオールなどと反応し
て、共重合ポリエステルの主鎖に対して、上記した式
(III)で示される側鎖単位(III)を導入し得る基であ
り、R2 、R3 およびnは上記と同じ基、数を示す]で
表される化合物を共重合ポリエステルの製造時に反応さ
せることにより共重合ポリエステル中に導入することが
できる。
【0027】上記式(IV)で表される化合物において、
エステル形成性の基Dの例としては、例えば下記式;
【化5】 で表されるグリシジル基、または下記式;
【化6】 で表される2,3−ジヒドロキシプロピル基などを挙げ
ることができる。
【0028】側鎖単位(III)において、はR2 は炭素数
1〜4のアルキレン基であるのが好ましく、エチレン基
またはプロピレン基であるのがより好ましく、エチレン
基が特に好ましい。また、R3 の具体例としてはメチ
ル、エチル、n−プロピル、イソプロピル、n−ブチ
ル、sec−ブチル、tert−ブチル、nペンチル、
n−オクチル、、2−エチルヘキシル、n−ドデシル、
n−ステアリル、などのアルキル基;シクロヘキシルな
どの炭素数6〜18のアリール基を挙げることができ
る。また、この側鎖単位(III)はエチレン基とプロピレ
ン基が同じ分子中に存在してもよい。さらに、側鎖単位
(III)において、そのオキシアルキレン単位の重合度を
示すnは上記したように10〜100の範囲、とくに2
0〜80の範囲の数であるのが好ましい。nが10より
も小さいとアルカリ溶解性が小さくなり、一方nが10
0を越えてもアルカリ溶解性はさして向上せず、着色の
原因となるだけである。
【0029】側鎖単位(III)の具体例としては、ポリオ
キシエチレングリコール−メチル−グリシジルエーテ
ル、ポリオキシエチレングリコール−メチル−2,3−
ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリオキシエチレング
リコール−エチル−グリシジルエーテル、ポリオキシエ
チレングリコール−エチル−2,3−ジヒドロキシプロ
ピルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−n−プ
ロピル−グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリ
コール−n−プロピル−2,3−ジヒドロキシプロピル
エーテル、ポリオキシエチレングリコール−t−ブチル
−グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール
−t−ブチル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテ
ル、ポリオキシエチレングリコール−n−オクチル−グ
リシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−n
−オクチル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテル、
ポリオキシエチレングリコール−2−エチルヘキシル−
2,3−グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリ
コール−2−エチルヘキシル−2,3−ジヒドロキシプ
ロピルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−n−
ステアリル−グリシジルエーテル、ポリオキシエチレン
グリコール−n−ステアリル−2,3−ジヒドロキシプ
ロピルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−フェ
ニル−グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコ
ール−フェニル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテ
ル、ポリオキシエチレングリコール−ノニルフェニル−
グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−
ノニルフェニル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテ
ル、ポリオキシエチレングリコール−シクロヘキシル−
グリシジルエーテル、ポリオキシエチレングリコール−
シクロヘキシル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテ
ル、ポリオキシエチレン/ポリオキシプロピレングリコ
ール共重合体のメチルグリシジルエーテル、ポリオキシ
エチレン/ポリオキシプロピレングリコール共重合体の
メチル−2,3−ジヒドロキシプロピルエーテル、ポリ
オキシエチレン/ポリオキシプロピレングリコール共重
合体のn−プロピル−2,3−ジヒドロキシプロピルエ
ーテルなどから誘導された単位を挙げることができ、こ
れらの単位は共重合ポリエステル中に単独で含まれてい
てもまたは2種以上含まれていてもよい。
【0030】そして、該共重合ポリエステルにおいて
は、ジオール単位(II)と側鎖単位(III)を合計した含
有率が該共重合ポリエステルの重量に基づいて2〜40
重量%、とくに5〜30重量%の範囲であるのが望まし
い。ジオール単位(II)および側鎖単位(III)の合計含
有率が2重量%よりも少ないと、アルカリ溶解性が低下
し、一方40重量%を越えると紡糸性が困難になる。
【0031】また、該共重合ポリエステルは、上記した
単位以外にも、たとえばグリセリン、トリメチロールプ
ロパン等のトリオール;ペンタエリスリトール等のテト
ラオール;トリメリット酸、トリメシン酸等のトリカル
ボン酸;ピロメリット酸等のテトラカルボン酸などの4
価以上のポリカルボン酸などの多官能成分から誘導され
た共重合単位をポリエステルの溶融紡糸や溶融成形が可
能な範囲内で少量含んでいてもよい。
【0032】そして、該共重合ポリエステルはフェノー
ルとテトラクロルエタンの等重量混合溶媒中、30℃で
測定した極限粘度が0.5〜1.0dl/gであるの
が、紡糸時の工程性などの点から好ましい。
【0033】該共重合ポリエステルは上記した各単位を
共重合ポリエステル中に導入し得るジカルボン酸成分、
ジオール成分、上記の式(IV)で示した側鎖単位(III)
用化合物等を用いて常法により重縮合反応を行わせるこ
とにより製造することができる。たとえば、第一段階で
まずそれらの原料成分を用いてエステル化反応またはエ
ステル交換反応を行って低重合体を生成させ、ついで第
二段階でその低重合体を重合触媒の存在下、減圧下に加
熱して所望の重合度になるまで重縮合させることにより
製造することができるが、勿論この方法に限定されな
い。その際に、重縮合反応の前のエステル化反応または
エステル交換反応工程で、ポリエステルの製造に際して
使用される公知のエステル化触媒およびエステル交換反
応触媒を必要に応じて使用することができる。
【0034】本発明のケミカルレ−ス基布は、上述のよ
うに、例えば上記のアルカリ易溶性の共重合ポリエステ
ルからなる糸条で作製された織物であって、該織物が上
記の(a)〜(c)の条件を満足するものである。本発
明のケミカルレース基布は上記条件(a)〜(c)に加
えて、糸と糸の交差点が安定で目ずれが生じにくく、か
つまた、糸のねじれ等による目よれを防ぎ均一な平滑面
を形成せしめていることが好ましい。そのためには、織
物を構成するタテ糸には500T/M未満の撚が付与、
および/または交絡ピッチが100mm以下の非嵩高性
空気交絡が付与され、75デニール以下の太さである糸
条であって、基布の目付が20〜55g/m2 であるこ
とが好ましい。
【0035】従来のケミカルレ−ス基布を構成する水溶
性ビニロンは、その特性から糸条を構成する単繊維間に
膠着を付与することができ、実質上無撚の状態で糸条の
収束性を向上させることができる。本発明のポリエステ
ル糸条においても、紡糸延伸工程上の加熱雰囲気や冷却
状態の調節により糸条の膠着収束が可能であるが、糸条
の取扱い性や製織時の糸の解舒性、製織性の点で、屈曲
性に優れているほうが扱いやすく、膠着収束化は生産性
と均一安定性の面で好ましいとはいえない。糸条の収束
性を向上させるためには撚を加えることが好都合である
が、布面で撚による糸のねじれを生じにくくせしめるこ
とが重要であり、このため撚は500T/M未満とする
ことが好ましい。糸条の収束化達成のための有効な手段
として撚を加えることのほかに、空気交絡をあらかじめ
付与しておくことも挙げられる。すなわち、非嵩高性空
気交絡を与え、交絡ピッチを100mm以下の状態にし
て糸条に収束性を与えておくことにより、基布の製織性
を向上せしめるだけでなく、初期伸長域(無荷重から幅
5cm当り5Kgf応力時の伸長域)の伸度を抑制する
ことができ、基布の伸長安定性向上に寄与して刺繍の目
ずれを生じせしめないのである。嵩高性空気交絡はこの
点で好ましくなく、非嵩高性空気交絡が好ましい点もこ
こにある。
【0036】さらに、一層の基布の目ずれと初期伸長域
の安定性を向上させるために、該基布に特定の糊剤を付
着させることが好ましい。すなわち、織物を製布したる
後に、アルカリ可溶性糊剤を、付着量が織物に対して
0.1〜5重量%となるよう付着させることにより、タ
テ糸・ヨコ糸の収束性を向上させると共に、タテ糸・ヨ
コ糸の交差点での固着を進め目ずれを防ぐものである。
ここに用いられるべき糊剤としては、基布にエンブロイ
ダリー刺繍を施したる後に基布をアルカリ水溶液で除去
するに当り、該除去を阻害するものであってはならな
い。そこで各種糊剤を検討した結果、ポリビニルアルコ
−ル系や澱粉系よりアクリル系糊剤(たとえば互応化学
プラスサイズT−823)、CMC(カルボキシメチル
セルロース)、水可溶性ポリエステル系糊剤(イースト
マンコダック社製)等が好ましいことが判明した。糊剤
の付着量としては組織交差点間のみ付着させる場合は、
織物に対して0.1〜0.5重量%程度であり、タテ
糸、ヨコ糸、交差点共に十分固着させる場合には1〜5
重量%程度である。糊剤の付着量が5重量%を越える
と、糊剤付与後の乾燥と巻き取りに困難性を生じる場合
がある。付着量は用いるべき刺繍の図柄やタイプ、ある
いは基布の密度、目付によって変更の必要はあるが、よ
り好ましい範囲は1〜3重量%である。
【0037】糊剤の付与方法は製織後別工程でも良い
が、ウォータージェットルームで機織直後付与し水乾燥
工程で蒸発させて連続的に行っても良い。
【0038】
【実施例】以下実施例を挙げて本発明を具体的に説明す
るが、本発明はこれら実施例により何等限定されるもの
ではない。なお、実施例における各物性は以下の方法に
より測定された値である。 (1)ポリエステルの固有粘度[η](dl/g) フェノ−ル/テトラクロロエタン(等重量)混合溶媒を
用いて、30℃で測定した。 (2)織物のタテ糸およびヨコ糸密度 ルノメ−タ−を用いて測定した。 (3)基布の溶解時間(分) 刺繍を施した基布を10g/lの水酸化ナトリウム溶液
(液温度95℃)に浸漬し、時間−重量変化曲線から求
めた。 (4)基布のヨコ糸方向の伸び率(%) JIS L 1096 1990(ストリップ法)に準
拠して測定した。 (5)滑脱抵抗力(mm) JIS L 1096 1990(縫目滑脱法B法)に
準拠して測定した。 (6)熱水収縮率(Wsr:%) 測定する試料に初荷重0.05g/dをかけて長さ30
cmの点に印をつけ、ついでフリ−の状態で100℃の
沸水中に30分間浸漬した後、0.05g/dの荷重を
かけ前記点の収縮率を求めた。 (7)交絡ピッチ(mm) 0.02g/dの張力下の糸条の非交絡部分にピンを刺
し、0.1g/dの張力でピンを糸条方向に移動させ、
ピンが動かなくなった点を交絡部とし、交絡部間の長さ
の10回測定の平均値を示す。
【0039】実施例1 5−ナトリウムスルホイソフタル酸を表1に示した割合
(モル%)で含有するテレフタル酸とエチレングリコー
ルとを、1:1.25のモル比でエステル化反応器に仕
込んで、230℃、2.5Kg/cm2 の圧力下で2時
間エステル化反応を行った。ついで、得られた反応生成
物(低重合体)を予め230℃に加熱してある重縮合器
に移し、これに分子量2000のポリエチレングリコー
ルと下記式(V)
【化7】 で表されるポリオキシエチレングリシジルエーテルを、
表1に示した量で添加し、さらに、ポリエチレングリコ
ールとポリオキシエチレングリシジルエーテルの合計量
に対して、5重量%の1,3,5−トリス(4−t−ブ
チル−3−ヒドロキシ−2,6−ジメチルベンジル)−
1,3,5−トリアジン−2,4,6−(1H3H,5
H)−トリオン(アメリカンサイアナミッド社製;サイ
アノックス1790)を加え、温度を230℃から28
0℃まで45分かけて昇温しながら徐々に0.1mmH
gまで減圧にし、以後280℃で反応系の溶融粘度が、
極限粘度0.7dl/gのポリエチレンテレフタレート
の280℃における溶融粘度にほぼ一致する時点まで重
縮合反応を継続して共重合ポリエステルを得た。
【0040】得られた共重合ポリエステルのチップを、
紡糸温度290℃、紡糸速度1000m/分で、デニー
ル、フィラメント数を変えて溶融紡糸を行なった。引き
続き、延伸速度500m/分、加熱ローラー75℃で延
伸を行った。これらの延伸糸をタテ糸としては、250
T/mの追撚と、製織性を向上させるための糊付けを施
し、ヨコ糸はそのままで、織密度を変えて平織物を製織
した。結果を表1に示す。
【0041】
【表1】
【0042】表1に示した平織物の諸物性を表2に示
す。これらの平織物をケミカルレース基布として用い、
ケミカルレースを試作した。基布の特性が判定されやす
いデザインとして、インナー用途のナイロンチュールレ
ースを選定した。刺繍糸にはレーヨン糸を用いた。ナイ
ロンチュールレースを水酸化ナトリウム濃度10g/
l、浴温95℃の溶液中でアルカリ減量を施し、基布を
溶解し、ナイロンチュールレースを仕上げた。ソルブロ
ン基布使用品(水溶性ビニロンフィラメント使い基布)
を対照にして仕上がりを判定した結果を表2に示す。
【0043】
【表2】
【0044】実験No.1、2、4では、溶解時間が6
0分以上かかり、刺繍糸が強力低下をおこしている。実
験No.7は、基布の目ずれが大きすぎて補助布と縫合
わせることができず、刺繍機に掛けることができなかっ
た。また実験No.8は、実験No.7の基布を170
℃で生機セットして収縮を与えて基布の密度を増したも
のであるが、溶解時間が短く、刺繍糸の強力は保持され
ているものの、基布の沸水収縮率が小さいため刺繍糸の
収縮が妨げられ、痩せた風合であった。実験No.11
は、応力5Kgf/幅5cmの時のヨコ糸の伸び率が1
5%と大きく、地張りや刺繍工程で伸ばされれ、チュー
ルに過大張力が加わってチュールの目ずれが生じてい
た。実験No.13は、タテ糸とヨコ糸の密度バランス
が悪く、パンチング設計した図柄に対して刺繍模様に歪
みが生じていた。実験No.18は、基布の目ずれが大
きすぎて刺繍機に掛けることができなかった。実験N
o.19は、基布の密度を充分に密にして製布したもの
であるが、基布が緻密すぎて針の差し込みがしにくく、
刺繍糸切れを生じ、外観において劣っていた。一方、実
験No.3、5、6、9、10、12、14、15、1
6、および17は60分以内に基布が完全に溶解除去さ
れて刺繍糸の強力が保たれており、チュールの目ずれや
刺繍糸外れ等の欠点もなく、対照ソルブロン基布使い品
と同等の風合に仕上っていた。特に50デニ−ル使いは
対照ソルブロン基布使いより、刺繍糸のふくらみが大き
く、ソフトな風合に仕上っていた。
【0045】次に実験No.12と同じポリマー組成、
デニール、フィラメント数(50デニール/24フィラ
メント)のポリエスエル糸条を用い、非嵩高性空気交絡
により平均50mm、平均80mmおよび平均120m
mの3水準の交絡ピッチを与え、生機密度タテ84本/
吋、ヨコ75本/吋の織物をウォータージェットルーム
で機織した。また同時に交絡ピッチ平均120mmの糸
に250T/M、450T/M、および600T/Mの
追撚を与え同上密度で機織しレース基布とした。一方、
交絡ピッチが平均80mmの糸を用いた織物にアクリル
系糊剤(互応化学(株)製プラスサイズT−823)を
20倍、10倍、3倍、2倍、1.5倍に希釈してディ
ップニップ方式で浸漬し、マングルでスクイズ後に乾燥
して基布と得た。ついでチュールを使用しないダイレク
ト刺繍を行った後、実験No.12と同様にして基布の
アルカリ溶出を行い、外観評価を行った。結果を表3に
示す。
【0046】
【表3】 実験No.22のように、非嵩高性空気交絡のピッチが
平均100mmを越えるときは、生機の製織性が悪くな
る場合があり、不均一な織目となって、レースの目飛び
や模様くずれが発生する場合があった。実験No.25
のように追撚数を上げすぎると織目がよろけ、柄の変形
が認められ、ヨコの伸びも大きくなるためレース外観が
やや不良となった。実験No.26のように糊剤付着量
が0.1重量%程度では付着させない基布との格段の向
上効果はでないが、実験No.27、28、29のよう
に、付着量が0.2〜5重量%のものは細かい柄、複雑
な模様を美しく刺繍することができ、より一層の向上効
果があった。しかし付着量が過大の実験No.30の場
合、基布の折れじわが柄の歪み発生につながり外観がや
や不良であった。
【0047】
【発明の効果】本発明のケミカ−ルレ−ス基布は、ウオ
−タ−ジェットル−ムで製織可能であり、従来の水溶性
ビニロンからなる基布に代替できるものである。そし
て、刺繍後のレ−ス糸に損傷がなく、かつ刺繍模様を美
麗に仕上げることができ、ケミカルレ−スを安価に提供
できるばかりでなく、レ−ス刺繍の種類に応じて基布設
計が自由にできる。
フロントページの続き (56)参考文献 特開 昭53−45495(JP,A) 特開 昭56−9442(JP,A) 特開 昭54−6965(JP,A) 特開 昭57−61735(JP,A) 特開 平5−279933(JP,A) 特開 平4−100917(JP,A) 特開 昭60−146011(JP,A) 特開 平6−287875(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) D06M 11/38 D03D 1/00 - 27/18

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】エチレンテレフタレ−ト単位を主たる繰り
    返し単位とし、かつスルホン酸塩基含有化合物を共重合
    してなるポリエステル糸条からなる織物であって、下記
    (a)〜(c)を同時に満足することを特徴とするポリ
    エステル系ケミカルレース基布。 (a)該織物が水酸化ナトリウム濃度10g/リット
    ル、液温95℃のアルカリ減量条件において、60分未
    満で完全に溶解除去される減量速度を持つこと。 (b)JIS一般織物試験方法L−1096−1990
    に規定される引張強さおよび伸び率試験A法(ストリッ
    プ法)で、ヨコ糸方向の応力−伸度曲線において、試験
    片の幅5cm当り5Kgfのときの伸び率が10%以下
    であること。 (c)ヨコ糸密度/タテ糸密度が0.6〜1.2の範囲
    にあり、JIS一般織物試験方法L−1096−199
    0に規定される滑脱抵抗力が縫目滑脱法B法による測定
    で、タテ方向とヨコ方向の和で45mm未満であるこ
    と。
  2. 【請求項2】織物を構成するタテ糸は、500T/M未
    満の撚が付与および/または交絡ピッチが100mm以
    下の非嵩高性空気交絡が付与された75デニール以下の
    太さの糸条であり、該織物の目付が20〜55g/m2
    であることを特徴とする請求項1記載のポリエステル系
    ケミカルレース基布。
  3. 【請求項3】織物に、アルカリ可溶性糊剤が0.1〜5
    重量%の割合で付与されていることを特徴とする請求項
    1記載のポリエステル系ケミカルレース基布。
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