JP3370186B2 - セメント混和材及びセメント組成物 - Google Patents

セメント混和材及びセメント組成物

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、主に、土木・建築業界
において使用されるセメント混和材及びセメント組成物
に関する。
【0002】
【従来の技術とその課題】従来、カルシウムアルミネー
トを使用したセメント混和材やセメント組成物は数多く
提案されている(特開昭48-89222号公報、特開平4-6133
号公報等)。これらのセメント混和材やセメント組成物
は、セメントの凝結・硬化を促進し、初期の強度発現性
が良好であるため、緊急工事や短時間で道路開放を目的
とした用途等に急硬性セメントとして広範に利用されて
いる。しかしながら、従来の急硬性セメントに使用され
るセメント混和材やセメント組成物は、初期の強度発現
性は良好であるが、長期的な強度発現の伸びが小さく、
特に材令28日以降の強度発現性が乏しいという課題を有
していた。
【0003】また、生コンプラントで混練が可能である
急硬性セメント用にアルミニウム以外の3価金属の酸化
物を含有するカルシウムアルミネートが提案されている
(特開平2-225354号公報)。しかしながら、このカルシウ
ムアルミネートは活性が弱く、可使時間がとりやすい反
面、例えば、数時間で十分な強度発現性が得られるよう
なものではない等の課題があった。
【0004】本発明者は、前述の課題を解決すべく種々
検討を重ねた結果、特定のセメント混和材を使用するこ
とにより、前述の課題が解決されるとの知見を得て本発
明を完成するに至った。
【0005】
【課題を解決するための手段】即ち、本発明は、実質的
にSiO 2 を含まず、CaO/AlOモル比が2.5〜3.5で、B
O含有量が5〜20重量%である非晶質カルシウムア
ルミネートボレート、又は、CaO/AlOモル比が2.5
〜3.5で、PO含有量が5〜20重量%である非晶質カ
ルシウムアルミネートホスフェ−ト、セメントと該セメ
ント混和材とを含有してなるセメント組成物である。
【0006】以下、本発明をさらに詳しく説明する。
【0007】本発明の非晶質カルシウムアルミネートボ
レート(以下A−CABという)又は非晶質カルシウムア
ルミネートホスフェ−ト(以下A−CAPという)のCaO
/AlOモル比は2.5〜3.5であり、CaO/AlOモル
比が2.8〜3.2が好ましい。CaO/AlOモル比が2.5未
満では中期から長期材令における強度発現性が悪くなる
場合があり、CaO/AlOモル比が3.5を超えると寸法
安定性やこれを用いたセメント混練物の作業性が低下す
る場合がある。また、A−CABはBOを、A−CA
PはPOを各々5〜20重量%含有するものであり、7
〜15重量%含有することが好ましい。BO又はPO
がこの範囲外では本発明の効果が十分に得られない場合
がある
【0008】本発明において非晶質とは、すべてが非晶
質である必要はなく、例えば、ガラス化率で50%程度以
上のものであり、70%以上が好ましい。本発明でいうガ
ラス化率(X)は、A−CAB又はA−CAPを1,000℃
で3時間加熱し、その後、5℃/分の冷却速度で徐冷
し、粉末X線回折法により求めた結晶鉱物のメインピー
クの面積SとA−CAB又はA−CAP中の結晶のメ
インピークの面積Sを用い、X(%)=(1−S/S)×1
00の式から算出することが可能である。
【0009】本発明で使用するA−CAB又はA−CA
Pの原料は、特に限定されるものではなく、例えば、Ca
O原料として消石灰や石灰石粉末などが、AlO原料と
してボーキサイトやアルミ残灰などが、BO原料とし
てホウ砂やホウ酸塩などが、PO原料としてリン鉱石
やリン酸塩などが各々使用可能である。
【0010】
【0011】A−CAB又はA−CAPの原料の加熱処
理方法は、特に限定されるものではないが、例えば、ロ
ータリーキルンや電気炉などを使用することが挙げら
れ、焼成時間又は溶融時間も特に限定されるものではな
い。焼成物又は溶融物の冷却方法としては、特に限定さ
れるものではなく、例えば、水や高圧空気などによる急
冷法や、自然放冷による徐冷法などいずれの方法を用い
ることも可能である。
【0012】また、原料中の他の成分、あるいは不純物
の存在も特に限定されるものではない。例えば、Ti
O、MgO、FeO、NaO、KO、F、及びSO
の、さらに、A−CABの場合はPO 、A−CAP
の場合はSiOとBO の混入が予想されるが、これら
の存在は、各原料の加熱処理時、焼成物又は溶融物の融
点を下げる効果があり、また、焼成物又は溶融物の活性
を高める効果があることなどから好ましく、本発明の目
的を実質的に阻害しない範囲では原料中の他の成分、あ
るいは不純物の存在は問題にならない。
【0013】本発明のA−CAB又はA−CAPの粉末
度は、特に限定されるものではないが、ブレーン値で1,
500〜8,000cm/g程度の範囲のものが好ましい。1,500c
m/g未満では十分な強度発現性が得られない場合があ
り、8,000cm/gを超えるとこれを用いたコンクリート
の流動性が低下する傾向がある。
【0014】本発明で使用する無機硫酸塩とは、セッコ
ウ類、硫酸アルミニウム、及びアルカリ金属硫酸塩、カ
ルシウム以外のアルカリ土類金属硫酸塩等を総称するも
のであり、特に限定されるものではないが、セッコウ類
を使用することが本発明の効果が大であることや経済的
であることから好ましい。ここで、セッコウ類として
は、無水セッコウ、半水セッコウ、及び二水セッコウ等
が挙げられ、そのうち、無水セッコウを使用することが
本発明の効果が最も大きいことから好ましい。無水セッ
コウとしては、例えば、天然に産出する天然無水セッコ
ウの他、半水セッコウや二水セッコウを熱処理して脱水
したものや、工業副産物として発生するもの等の使用が
可能である。無機硫酸塩の粉末度は特に限定されるもの
ではないが、ブレーン値で2,000〜9,000cm/gが好まし
い。2,000cm/g未満では長期耐久性が悪くなる場合が
あり、9,000cm/gを超えるとこれを用いたセメント混
練物の流動性が低下する場合がある。無機硫酸塩の使用
量は、A−CAB又はA−CAPと、無機硫酸塩、及び
後述の凝結調整剤からなるセメント混和材100重量部
中、10〜70重量部が好ましく、30〜60重量部がより好ま
しい。10重量部未満では十分な強度増進効果が得られな
い場合があり、70重量部を超えると長期耐久性が悪くな
る場合がある。
【0015】本発明で使用する凝結調整剤としては、例
えば、クエン酸、酒石酸、グルコン酸、及びリンゴ酸等
の有機酸又はそれらの塩、リン酸又はその塩、アルカリ
金属炭酸塩、アルカリ金属重炭酸塩、並びに、ホウ酸等
が挙げられ、特に限定されるものではないが、有機酸及
び/又はそれらの塩と、アルカリ金属炭酸塩を併用する
ことが、強度発現性が良好となるので好ましい。凝結調
整剤の使用量は、使用する目的や用途に依存するため、
特に限定されるものではないが、通常、セメント混和材
100重量部中、0.5〜5重量部の範囲で使用することが好
ましく、1〜3重量部がより好ましい。0.5重量部未満
では十分な作業性が得られない場合があり、5重量部を
超えて使用すると強度発現性が低下する可能性がある。
【0016】本発明のセメント混和材は、A−CAB
A−CAP、無機硫酸塩、及び凝結調整剤を含有する
ものである。本発明のセメント混和材の粉末度は、使用
する目的や用途に依存するため、特に限定されるもので
はないが、通常、ブレーン値で1,500〜8,000cm/gの範
囲で使用することが好ましい。1,500cm/g未満では強
度発現性が悪くなる場合があり、8,000cm/gを超える
と十分な作業時間が得られない場合がある。本発明のセ
メント混和材の使用量は、セメントとセメント混和材の
合計100重量部中、10〜50重量部が好ましく、20〜30重
量部がより好ましい。10重量部未満では強度発現性効果
が十分ではなく、50重量部を越えると長期耐久性が悪く
なる場合がある。
【0017】ここでセメントとしては、普通、早強、超
早強、及び中庸熱の各種ポルトランドセメント、これら
ポルトランドセメントにポゾラン物質を混合した各種混
合セメント等が挙げられる。
【0018】本発明では、セメントとセメント混和材の
他に、減水剤、高性能減水剤、AE剤、AE減水剤、高
性能AE減水剤、増粘剤、砂や砂利等の骨材、セメント
膨張材、防錆剤、防凍剤、高分子エマルジョン、ベント
ナイトやモンモリロナイト等の粘土鉱物、並びに、ゼオ
ライト、ハイドロタルサイト、及びハイドロカルマイト
等のイオン交換体等のうちの一種又は二種以上を本発明
の目的を実質的に阻害しない範囲で併用することが可能
である。
【0019】本発明のセメント組成物の混練方法は、一
般に用いられる方法でよく、特に限定されるものではな
い。本発明のセメント混練物を製造する際に使用する混
合装置としては、既存のいかなる撹拌装置も使用可能で
あり、例えば、傾胴ミキサー、オムニミキサー、V型ミ
キサー、ヘンシェルミキサー、及びナウターミキサー等
が使用可能である。また、混合は、それぞれの材料を施
工時に混合してもよいし、あらかじめ一部を、あるいは
全部を混合しておいても差し支えない。また、養生方法
も、特に限定されるものではなく、一般に行われる養生
方法が適用可能である。
【0020】
【実施例】以下、実施例により本発明を詳細に説明す
る。
【0021】実施例1 CaO原料、Al2O3原料、B2O3原料を混合し、電気炉を用
い、1,600℃で溶融した溶融物を高圧空気法で急冷して
クリンカーを得た。得られたクリンカーを粉砕し、ブレ
ーン値で3,500±200cm2/gに調整して表1に示すような
各種A−CABを得た。このA−CAB50重量部と、無
機硫酸塩50重量部、及び凝結調整剤2重量部を配合して
セメント混和材とした。セメントとセメント混和材から
なる結合材100重量部中、セメント混和材を25重量部、
減水剤を1重量部配合して、結合材/砂比=1/2、水
/結合材比=40%で、練り上がり温度20℃に調整したモ
ルタルとし、その各材令における圧縮強度を測定した。
結果を表1に併記した。
【0022】<使用材料> CaO原料 :和光純薬工業社製試薬一級酸化カルシウム Al2O3原料 :和光純薬工業社製試薬一級酸化アルミニウ
ム B2O3原料 :和光純薬工業社製試薬一級酸化ホウ素 無機硫酸塩:天然無水セッコウ、ブレーン値4,850cm2/g 凝結調整剤:試薬1級のクエン酸と試薬1級の炭酸カリ
ウムを重量比2/3で混合したもの 減水剤 :デンカグレース社製商品名「ダーレックス
スーパー100PHX」主成分ポリカルボン酸系 セメント :電気化学工業社製普通ポルトランドセメン
ト 砂 :新潟県姫川産川砂 水 :水道水
【0023】<測定方法> 圧縮強度 :4×4×16cmの供試体を作製し、材令1日
後20℃の水中養生を行い所定の材令で測定 なお、A−CABの組成比は化学分析により求めた値で
ある。
【0024】
【表1】
【0025】実施例2 CaO/Al2O3比が3.0でB2O3含有量が10重量%のA−CA
Bを使用し、A−CABと無機硫酸塩の使用量を変化し
たこと以外は実施例1と同様に行った。結果を表2に示
す。
【0026】
【表2】
【0027】実施例3 CaO/Al2O3比が3.0でB2O3含有量が10重量%のA−CA
Bを使用し、セメント混和材の使用量を変化したこと以
外は実施例1と同様に行った。結果を表3に示す。
【0028】
【表3】
【0029】実施例4 CaO原料、Al2O3原料、B2O3原料に工業原料を用い、実施
例1と同様の方法により、CaO/Al2O3比が3.0でB2O3
有量が10重量%のA−CABを得た。このA−CAB50
重量部と、無機硫酸塩50重量部、及び凝結調整剤1重量
部を配合してセメント混和材とした。結合材100重量部
中のセメント混和材を25重量部、減水剤を1重量部配合
して、単位量が、結合材450kg/m3、粗骨材1,066kg/m3
細骨材700kg/m3、及び水144kg/m3の配合で、練り上がり
温度20℃に調整したコンクリートとし、このコンクリー
トの各材令における圧縮強度を測定した。結果を表4に
併記する。また、比較のために市販急硬性セメントを用
いた場合の強度測定結果も表4に併記する。
【0030】<使用材料> CaO原料 :電気化学工業社青海鉱山産石灰石 Al2O3原料 :市販ボーキサイト B2O3原料 :市販ホウ砂 市販急硬性セメント:電気化学工業社製商品名「デンカ
スーパーセメント」 粗骨材 :新潟県姫川産川砂利、Gmax=25mm 細骨材 :新潟県姫川産川砂、5mm下
【0031】<測定方法> 圧縮強度 :10φ×20cmの供試体を作製し、材令1日後
20℃の水中養生を行い所定の材令で測定
【0032】
【表4】
【0033】実施例5 CaO原料、Al2O3原料、P2O5原料を混合し、実施例1と同
様に表5に示すような各種A−CAPを得た。このA−
CAP50重量部と、無機硫酸塩50重量部、及び凝結調整
剤2重量部を配合してセメント混和材としたこと以外は
実施例1と同様に行った。結果を表5に併記する。な
お、A−CAPの組成比は化学分析により求めた値であ
る。
【0034】<使用材料> P2O5原料 :和光純薬工業社製試薬一級リン酸カルシウ
ム、Ca2P2O7
【0035】
【表5】
【0036】実施例6 CaO/Al2O3比が3.0でP2O5含有量が10重量%のA−CA
Pを使用し、A−CAPと無機硫酸塩の使用量を変化し
たこと以外は実施例5と同様に行った。結果を表6に示
す。
【0037】
【表6】
【0038】実施例7 CaO/Al2O3比が3.0でP2O5含有量が10重量%のA−CA
Pを使用し、セメント混和材の使用量を変化したこと以
外は実施例5と同様に行った。結果を表7に示す。
【0039】
【表7】
【0040】実施例8 CaO原料、Al2O3原料、P2O5原料に工業原料を用い、実施
例1と同様の方法により、CaO/Al2O3比が3.0でP2O5
有量が10重量%のA−CAPを得た。このA−CAP50
重量部と、無機硫酸塩50重量部、及び凝結調整剤1重量
部を配合してセメント混和材としたこと以外は実施例4
と同様に行った。結果を表8に併記する。
【0041】<使用材料> P2O5原料 :市販ピロリン酸カルシウム
【0042】
【表8】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
【0049】
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【発明の効果】本発明のセメント混和材を使用すること
により、長期強度の発現性の良好な急硬性セメントが得
られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−330875(JP,A) 特開 平4−280844(JP,A) 特開 平4−97932(JP,A) 特開 平4−331750(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) C04B 22/08 C04B 22/16

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 実質的にSiO 2 を含まず、CaO/AlO
    ル比が2.5〜3.5で、かつ、BO含有量が5〜20重量%
    である非晶質カルシウムアルミネートボレートと、無機
    硫酸塩と、凝結調整剤とを含有してなるセメント混和
    材。
  2. 【請求項2】 CaO/AlOモル比が2.5〜3.5で、か
    つ、PO含有量が5〜20重量%である非晶質カルシウ
    ムアルミネートホスフェートと、無機硫酸塩と、凝結調
    整剤とを含有してなるセメント混和材
  3. 【請求項3】 セメントと、請求項1〜記載のセメン
    ト混和材とを含有してなるセメント組成物。
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