JP3367459B2 - 溶融Zn−Al系合金めっき鋼板の製造方法 - Google Patents
溶融Zn−Al系合金めっき鋼板の製造方法Info
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自動車等の用途に使用するのに適した溶融Zn−Al系合金
めっき鋼板の製造方法、特に、めっき表面のスパングル
模様が鮮明で美麗な溶融Zn−Al系合金めっき鋼板の製造
方法に関する。 【0002】 【従来の技術】従来より、溶融Zn−Al系合金めっきは、
耐食性と耐候性を改善するために鋼板に施こすものとし
て公知であるが、鋼板の高品質化が求められるにつれ、
近年その適用量が増大している。 【0003】そのような溶融Zn−Al系合金めっき鋼板の
代表例としての溶融Zn−55%Al合金めっき鋼板は、アル
ミニウムのもつ耐久性、耐熱性、熱反射性と、亜鉛のも
つ犠牲防食性とを併せもった高性能のめっき鋼板とし
て、建材、家電製品、自動車部品などに広く使用されて
いる。このめっき鋼板は、代表的には、重量%でAl:55
%、Zn:43.4%、Si:1.6 %からなる溶融めっき浴を用
いて製造される。AlとZnの割合は耐食性を考慮して決
定され、Siはめっき密着性を阻害する鋼素地との合金
反応を抑制するために添加される。 【0004】この溶融Zn−55%Al系合金めっき鋼板は、
Al含有率が少ない他の溶融Zn−Al系合金めっき鋼板とは
異なり、めっき表面が特徴的な銀白色のスパングル模様
を呈し、意匠性に優れている特性から、生地のままで、
商工業用および一般用の建造物の屋根・壁等、あるいは
器物などに広く利用されている。 【0005】一般に溶融めっき鋼板のスパングル粒径
は、溶融めっき後の強制冷却時の風量を増大させて、冷
却速度 (従って、めっき皮膜の凝固速度) を高めると小
さくなることが知られている。溶融Zn−55%Al系合金め
っき鋼板の場合のめっき表面のスパングル粒径は平均0.
5 〜1.5 mmであり、目視でスパングル模様を識別するこ
とができる。しかし、めっき後の凝固速度を調整しても
スパングル粒径が小さくなることがあり、めっき後の凝
固速度の調整だけでは鮮明で美麗なスパングルを得るの
は困難であった。 【0006】従来にあって、このスパングルのばらつき
を抑える技術としては、以下の方法が提案されている。 1)特開平8−49055 号公報:めっき浴中のTi濃度を規定
する。 2)特開平9−241814号公報:めっき浴浸漬時間を2秒以
上とする。 3)特開平9−25550 号公報:めっき設備のスナウト内の
露点、水素濃度および浴温度を管理する。 4)特開平9−235661号公報:鋼板表面を0.05μm以上研
削する。 5)特開平10−18009 号および同10−18013 号各公報:鋼
板表面粗さ、うねりを制御する。 6)特開平10−18010 号および同18012 号各公報:鋼板表
面の集合組織、結晶粒径を制御する。 【0007】 【発明が解決しようとする課題】しかしながら、上記技
術にはそれぞれ以下のような問題がある。まず、上記1)
の方法ではめっき浴中にTi:0.001 〜0.5 wt%を含有し
ている場合はスパングルが微細になるという微細スパン
グルの製造方法が記載されている。しかし逆に、スパン
グルを安定的に大きくするためにめっき浴成分に不純物
として含まれるTi等の成分を除去するのは困難であり、
母材間ないしは同一鋼板内の幅方向、長手方向のスパン
グル粒径の変化に対応できず、鮮明で美麗なスパングル
を得るのは難しい。 【0008】上記2)については、めっきだけでスパング
ルを制御できる点では有利だが、浴中ロールの昇降装置
等の設備を新たに設ける必要がありコスト的に不利であ
る。また、浸漬時間を長くしすぎると、スパングル全体
が微細化し、溶融Zn−Al−Si系合金めっき鋼板が本来持
つ意匠性が損なわれる。 【0009】上記3)の方法は、スナウト内の雰囲気制御
によりめっき浴からのZnの蒸発を抑える方法である。こ
こで蒸発Znはめっきの欠陥もしくはスパングル模様のム
ラを誘発するものである。従って、3)の方法は通常の方
法で得られるスパングル模様のムラのレベルから悪化さ
せないというだけで、例えば、コイル間のスパングル模
様のばらつきを抑えることはできない。 【0010】上記4)、5)、6)の方法では、圧延工程など
のめっきの前工程に制約をかけることになり、また条件
に外れた鋼板をめっき原版として用いることができなく
なるなど製造コストの上昇を招く。 【0011】ここに、本発明の目的は、めっき鋼板の母
材となる材料間およびめっき直後の冷却速度によってサ
イズが異なるスパングル粒径を安定的に大きなものに制
御することにより鮮明で美麗なスパングルを有し、めっ
き皮膜の加工性に優れた溶融Zn−Al系合金めっき鋼板を
提供することである。 【0012】 【課題を解決するための手段】本発明者らは、かかる課
題を達成するために従来技術の問題がめっき前までの母
材の鋼板化学成分、溶融めっき直前に行う連続焼鈍の雰
囲気条件が異なることに起因することに着目して種々検
討・研究を重ね、溶融Zn−55%Al−1.6 %Si合金めっき
鋼板を製造する際に、鋼中のMn量と連続焼鈍炉の雰囲気
を下記式(1) のように規定することでスパングルが微細
化することなく、意匠性に優れた表面となることを知
り、本発明を完成した。 【0013】よって、本発明は、Al:40〜70wt%、Si:
0.5 〜5.0 wt%、およびZnおよび不可避的不純物:残量
を含んだめっき浴に冷延鋼板を浸漬してめっき処理を施
す溶融Zn−Al系合金めっき鋼板の製造方法において、例
えばスラブを熱間圧延し、かつ酸洗および冷間圧延して
得た鋼板、すなわち冷延鋼板を下記(1) 式を満たす条件
の雰囲気で連続焼鈍することによりめっき表面の平均ス
パングル粒径を0.7 mm以上とすることを特徴とした溶融
Zn−Al系合金めっき鋼板の製造方法である。 【0014】 Dh ≧ (0.5H+15) ln[Mn]+1.6H−33 ・・・・・(1) Dh :連続焼鈍炉の加熱帯の露点 [℃] H :連続焼鈍炉のH2濃度 [vol%] [Mn] :鋼中Mn wt%ただし、露点−30℃、H 2 濃度10%、Mn含有量0.51%の場
合を除く。 【0015】 【発明の実施の形態】次に、本発明における製造条件を
上述のように規定した理由とそれによる効果について記
述する。 【0016】(スパングルが鮮明な条件)スパングルの鮮
明性については、スパングル粒径が0.7 mm以上である場
合、スパングルを視認できるため意匠性が良いと判断さ
れる。 【0017】(母材製造条件)本発明にあっても、めっき
処理すべき鋼板は、例えばスラブを熱間圧延し、かつ酸
洗および冷間圧延した冷延鋼板であればよい。化学成分
値については、一般にめっき鋼板に採用されているアル
ミキルド鋼であれば、[Mn]以外については特に限定しな
い。 【0018】Mnは従来より鋼の強度を確保するために添
加される強化元素であるが、鋼中の[Mn]量が多いと鋼板
表面にMnが濃化し、めっき前の連続焼鈍時に鋼板表面の
還元鉄の生成を阻害し、めっきと鋼板界面の合金層形成
が不均一になり鮮明なスパングルが生じない。熱間圧延
条件、冷間圧延条件については特に限定しない。 【0019】(式(1) の意義について)後述する実施例の
結果からも分かるように式(1) の関係を満足するものは
いずれもスパングル粒径が0.7 mm以上であり、したがっ
て、本発明にしたがって式(1) を満足する操業を行うこ
とで0.7 mm以上のスパングル粒径のものが安定して得ら
れる。なお、連続焼鈍炉の雰囲気ガスの露点は加熱帯に
おいて規制するが、均熱帯においても同様に規制するの
が好ましい。 【0020】(連続溶融亜鉛めっき条件)母材鋼板を連続
溶融亜鉛めっきライン内の連続焼鈍炉において、母材鋼
中のMn量に応じた雰囲気 (露点および水素温度) で650
〜830 ℃の焼鈍を行い、連続焼鈍炉内の冷却帯で概略め
っき浴と同等の温度まで冷却した後、Al:40〜70wt%、
Si:0.5 〜5.0 wt%、およびZn:残量を含んだめっき浴
条件でめっきする。 【0021】本発明の好適態様にあっては、めっき直後
に鋼板を10〜30℃/secの冷却速度で冷却する。冷却速度
が10℃/sec未満ではスパングルは大きくなるものの、め
っきと鋼板界面の合金層が厚く成長しめっきの加工性が
劣化する。冷却速度が30℃/sec超ではスパングルが微細
化してしまう。その他の条件については特に限定しな
い。かくして、本発明によればスパングル粒径が0.7 mm
以上のものが安定して得られ、歩留りも大幅に改善され
る。 【0022】 【実施例】以下に本発明の実施例を説明する。 (実施例1)めっき用母材として、C%=0.04〜0.05、Si
%≦0.02、P%≦0.08、S%≦0.02およびMn%=0.05〜
1.00である鋼組成の低炭素Alキルド鋼の冷延鋼帯( 板厚
0.6mm ×920mm)を用いた。 【0023】これを連続式溶融めっき設備を用いて、下
記に示す条件で溶融めっきを行った。焼鈍炉にはH2、
N2、水蒸気の配管系をそれぞれ独立に設置し、炉内のガ
ス雰囲気および露点は、水素濃度計および露点計で計測
しながら、それぞれの流量を調整することにより制御し
た。 【0024】水素濃度を5vol%と10vol%に調整した2シ
リーズに分けて本発明を実施した。得られた溶融Zn−Al
系合金めっき鋼板についてスパングル粒径を計測した。
結果は、表1ないし表4および図1、図2にまとめて示
す。 【0025】図1は、水素濃度5vol%の場合についての
表1および表2の結果に基づく鋼板中のMn含有量および
焼鈍炉の加熱帯の露点とスパングル粒径との関係を示す
グラフである。 【0026】図2は、水素濃度10vol%の場合についての
表3および表4の結果に基づく鋼板中のMn含有量および
焼鈍炉の加熱帯の露点とスパングル粒径との関係を示す
グラフである。 【0027】各表のスパングルサイズは次のような基準
によって3段階で評価した。スパングル2、3を合格と
した。 スパングルサイズ=1:平均スパングル粒径<0.7 mm スパングルサイズ=2:0.7 mm≦平均スパングル粒<1.
0 mm スパングルサイズ=3:平均スパングル粒径≧1.0 mm めっき表面の実物の2倍拡大写真を用いて、100 mm長さ
当たりのスパングル個数を測定し、[100/スパングル個
数] により、スパングル粒径(mm)を算出。測定場所は母
材毎に幅方向に6ヶ所、長手方向に20ヶ所の計120 ヶ所
であり、母材毎の平均値を示す。 【0028】本例における製造条件は次の通りであっ
た。 めっき条件: めっき浴条件:Zn−55%Al−1.6 %Si 母材サイズ:0.8t×760w mm 、ライン速度:100mpm 連続焼鈍炉の加熱帯の鋼板板温度:750 ℃ 連続焼鈍炉の雰囲気中の水素濃度=5vol%、10vol% めっき浴の温度:600 ℃、めっき後の冷却速度:20℃/s
ec めっき付着量:片面80g/m2 【0029】 【表1】【0030】 【表2】【0031】 【表3】【0032】 【表4】【0033】 【発明の効果】本発明により、めっき浴への成分添加等
に依らず、めっき前母材鋼中Mn添加量に応じ、連続焼鈍
炉の雰囲気 (露点と水素濃度) を調整することにより鮮
明なスパングルを有したZn−55%Al合金めっきを得るこ
とが可能となる。このめっき鋼板は、Zn−55%Al合金め
っき鋼板で代表される優れた耐食性と、過酷な曲げ加工
に耐える良好な加工性とを有しており、しかもスパング
ル粒径が安定して大きいことから意匠性が要求される用
途へも外観上有利である。
鋼中Mn量および連続焼鈍炉加熱帯の露点とスパングルサ
イズの関係を示すグラフである。 【図2】連続焼鈍炉の雰囲気中の水素濃度10%における
鋼中Mn量および連続焼鈍炉加熱帯の露点とスパングルサ
イズの関係を示すグラフである。
Claims (1)
- (57)【特許請求の範囲】 【請求項1】 Al:40〜70wt%、Si:0.5 〜5.0 wt%、
およびZnおよび不可避的不純物:残量を含んだめっき浴
に冷延鋼板を浸漬してめっき処理を施す溶融Zn−Al系合
金めっき鋼板の製造方法において、めっき処理に先立っ
て、鋼板を下記(1) 式を満たす条件の雰囲気で連続焼鈍
することによりめっき表面の平均スパングル粒径を0.7
mm以上とすることを特徴とした、溶融Zn−Al系合金めっ
き鋼板の製造方法。 Dh ≧ (0.5H+15) ln[Mn]+1.6H−33 ・・・・・(1) Dh :連続焼鈍炉の加熱帯の露点 [℃] H :連続焼鈍炉のH2濃度 [vol%] [Mn] :鋼中Mn wt%ただし、露点−30℃、H 2 濃度10%、Mn含有量0.51%の場
合を除く。
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