JP2004124118A - プレス成形性及び外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 - Google Patents

プレス成形性及び外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Download PDF

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土岐 保
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吉川 幸宏
Kazuya Ishii
石井 一也
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高橋 克
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Abstract

【課題】GI鋼板のプレス成形時におけるめっき剥離を解消するとともに、めっき皮膜表面のスパングル開華を抑制し、さらに厚めっきを行ったときの表面外観の劣化を防止する。
【解決手段】質量%で、皮膜中のAl濃度が0.15〜1.0 %、Fe濃度が6%以下、スパングルの平均結晶粒径が1.0mm 以下、そしてWca が0.6 μm 以下とするとともに、めっき皮膜除去後の鋼板表面粗さRz (μm)が下記式を満たすように構成する。
Rz≧ 0.4×皮膜中Fe濃度(質量%)+4.0      (1)

Description

【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、家電製品、建築用材、自動車などの素材として好適な溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、溶融亜鉛めっき鋼板としては、質量%で(以下、化学組成を表す「%」表示は質量%を意味する)、Alを0.15%程度以上含有するめっき浴に浸漬して溶融めっきし、次いで付着量を調整した後に、加熱しないで冷却する溶融亜鉛めっき鋼板(以下単に「GI鋼板」と記す)と、Alを0.13%程度以下含有する低Alのめっき浴に浸漬し付着量を調整した後、めっき皮膜中のFeが8〜12%になるように、鋼板を加熱してめっき皮膜を合金化処理する合金化溶融亜鉛めっき鋼板(以下、単に「GA鋼板」と記す)とがある。
【0003】
従来は、GA鋼板の方が、一般に塗装後耐食性、溶接性に優れることから、自動車用途等には広く用いられてきた。
一方、GI鋼板では、皮膜が柔らかいため、GA鋼板で問題となる皮膜が粉状に剥離するパウダリングを気にすることなく、付着量を増大させることが可能である。これは、GI鋼板では、通常、めっき皮膜と母材との界面に脆いFe−Zn合金層が発達せず、GA鋼板に比較して密着性が良好で優れた加工性を有するめっき皮膜を備えているためである。これにより、GI鋼板では厚目付けめっきが可能であり、耐食性も優れるため、自動車業界で言う「12年防錆」という高耐食化を満足する皮膜設計が可能となる。
【0004】
また、めっき鋼板は加工時の切断部などでめっき皮膜が剥離し、あるいは損傷が生じて、その部分の耐食性(以下、単に「端面耐食性」と記す)が損なわれる場合がある。めっき鋼板においては端面耐食性が良好なことも重要であるが、GI鋼板は端面耐食性においても皮膜が柔らかく端面に回り込みやすいため、GA鋼板よりも優れた性能を有していることが知られている。
【0005】
しかしながら、GI鋼板の難点としては、以下のような問題もある。
GI鋼板は、めっき皮膜が柔かいこととも関連し、プレス成形時にめっき皮膜が金型に焼きつき、めっきが片状に剥離しやすい。これを本明細書では「めっき剥離」と言う。
【0006】
GI鋼板におけるかかる「めっき剥離」への対策の一つとしては、めっき/母材界面の密着性、つまり界面密着性を改善させることが考えられる。例えば、GA鋼板では、特開平6− 93402号公報( 特許文献1) には、耐衝撃密着性を向上させるため、中心線平均粗さ0.6 〜1.5 μm の母材を使用することが提案されている。しかしながら、GI鋼板の場合、母材表面をこの程度の粗度にするだけでは、上述のようなプレス成形時におけるめっき剥離を十分に防止できなかった。
【0007】
また、特開平11−158567号公報( 特許文献2) には、表面粗度がRz:1〜5μm 、Ra:0.1 〜1.5 μm の母材を用いて外観を向上させたGI鋼板が開示されているが、このような母材粗度のみの制御では、界面密着性が必ずしも満足されなかった。
【0008】
さらに、GI鋼板の場合、例えばめっき浴にPbを含むような場合は、スパングルが発生することがある。このスパングルは、その各々が異なる配向性を有しているため、素地の母材が変形した場合に個々の伸び率が異なり、その結果、スパングル間で凹凸が形成されることになる。スパングルが形成されていると、加工して塗装を行った外観からそれがムラとして認知され問題となる場合がある。
【0009】
【特許文献1】
特開平6−93402 号公報 (請求項2、段落0009)
【特許文献2】
特開平11−158597号公報 (請求項1、段落0016)
【0010】
【発明が解決しようとする課題】
ここに、本発明の一般的課題は、GI鋼板におけるめっき皮膜と母材との界面密着性をさらに改善する技術を開発することである。
【0011】
より具体的には、本発明の課題は、GI鋼板のプレス成形時におけるめっき剥離の問題を改善するとともに、めっき皮膜表面のスパングル開華を抑制した、プレス加工の際の耐めっき剥離性と表面外観性との優れた溶融亜鉛めっき鋼板とその製造方法を提供することである。
【0012】
本発明のさらなる課題は、いわゆる厚めっきを行った場合に見られる表面外観の劣化を防止できるGI鋼板とその製造方法を提供することである。
【0013】
【課題を解決するための手段】
本発明者らは、GI鋼板のめっき皮膜の界面密着性と表面外観の改善手段について種々研究した結果、以下の知見を得た。
【0014】
a. GI鋼板のプレス成形時の耐めっき剥離性を改善するには、めっき後のめっき/母材界面に、ある程度以上の凹凸を確保することが有効であるが、それだけでなく、さらにめっき皮膜表面をできるだけ平滑にすることが、たいへん有効であることが判明した。
【0015】
b.めっき後のめっき/母材界面に要求される凹凸レベルは、そのめっき/母材界面に形成されるFe−Zn合金層の形成の程度によっても変化し、従来の合金化溶融亜鉛めっき鋼板に見られる凹凸のレベルではGI鋼板の場合、プレス時の表面摺動抵抗が大きくなるため不十分であることが判明した。
【0016】
c.母材として十点平均粗さRzで記述する凹凸が5μm 以上または7μm 以上というかなり大きな凹凸を有するものを用いると、むしろGI鋼板のスパングル発生を抑制するのに有利であり、かつ、めっき後のめっき/母材界面にある程度以上の凹凸を確保して界面密着性を改善するうえでも有利に働くことが判明した。
【0017】
本発明はこれらの知見を基にして完成されたものであり、その要旨は下記の通りである。
(1)質量%で、皮膜中のAl濃度が0.15〜1.0 %、Fe濃度が6%以下、スパングルの平均結晶粒径が1.0mm 以下、そしてWca が0.6 μm 以下であるとともに、めっき皮膜除去後の鋼板表面粗さRz (μm)が下記式を満たすことを特徴とする、めっき密着性ならびに表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
【0018】
Rz≧ 0.4×皮膜中Fe濃度(質量%)+4.0      (1)
(2)表面粗さRzが5.0 μm 以上の冷延鋼板あるいは熱延鋼板母材を、質量%で、Alを0.13%以上、0.50%以下含有する溶融Znめっき浴に浸漬後引き上げて、非酸化性ガスを使ったガスワイピングで付着量を片面当り90g/m以下に調整した後、冷却することを特徴とする、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0019】
(3)表面粗さRzが7.0 μm 以上の冷延鋼板あるいは熱延鋼板母材を、質量%で、Alを0.13%以上、0.50%以下含有する溶融Znめっき浴に浸漬後引き上げて、ガスワイピングで付着量を調整した後、420 ℃以上600 ℃以下の温度領域に3秒以上保持し、その後、材温が420 ℃から300 ℃になるまで60秒以内で冷却することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
【0020】
【発明の実施の形態】
本発明の実施の形態について、本発明を上述のように限定した理由とともに、以下詳細に述べる。
【0021】
母材の種類:
鋼の種類は家電製品、建築用材、自動車、などの用途に従来から使用されている鋼板、あるいはめっき鋼板の母材を用いることができる。鋼種でいえば、極低炭素鋼、低炭素鋼など、用途でいえば、一般用、絞り加工用など、形態でいえば、冷間圧延鋼板、熱間圧延鋼板など、公知の鋼板を用いることができる。
【0022】
本発明によれば、界面密着性が特に改善されるから、従来より、めっき皮膜の密着性が問題となっている例えばIF−P添加鋼などに適用することが好ましい。
めっき皮膜成分:
Al:皮膜中のAl濃度が0.15〜1.0 %
皮膜中のAl濃度は、連続打点性の改善のみから言えば低いほど良い。ただし、めっき皮膜中のAl濃度を0.15%未満にするには、一般に浴組成でAl:0.13 %未満にする必要があり、これでは、Fe−Zn系のボトムドロスの形成を促進するため、製品としての外観に悪影響を及ぼしやすい。したがって、めっき皮膜中のAl濃度は0.15%以上とするのが現実的である。また、めっき後にリフロー処理(後述)を施す場合は、脆いFe−Zn合金層の成長を抑制し、適正な温度と時間でリフロー処理を遂行できる効果を得るために、めっき皮膜にはAlを、全Al量として、0.15%以上含有させるのがよい。後述のリフロー処理を行う場合、好ましくは0.30%以上である。
【0023】
一方、めっき皮膜のAl濃度が1.0 %を超える場合、めっき付着量にもよるが、前述のように溶接性が悪くなるほか、通常、浴中Al濃度を少なくとも0.5 %以上に設定する必要がある。このような高Al浴では、浴面にAlの酸化物が強固に形成され鋼板が浴に浸入する際、巻き込み易く、不めっき発生の原因にもなる。表面外観を重視するため、操業上の制約から皮膜のAl量は1.0 %以下が好ましい。さらに好ましくは、0.5 %以下である。
【0024】
Fe:Fe濃度が6%以下
皮膜中のFe濃度は、主にめっき皮膜と母材との界面に形成されたFe−Al合金層あるいはめっきの冷却過程またはめっき後の熱処理時の熱拡散により形成されるFe−Zn合金相中のFe濃度である。ことに、Fe−Zn合金相は、熱処理により皮膜表層まで達することもあるが、めっき皮膜のFe濃度が6.0 %を超えると、加工性を確保するための表層η相が殆ど消失してしまい、GA皮膜で問題となるパウダリングによる剥離量増加の問題が発生する。これを避けるために、Fe濃度は6.0 %以下とする。めっき皮膜の加工性をさらに向上させるために、好ましくは4%以下とする。
【0025】
残部:実質的にZnである。
また、さらなる耐食性の向上を目的として、Mgを1.4 %以下含有しても良い。一方、不純物としては、Fe、Ni、Cr、Pb、Sb、Sn、Cd、Bi、Ti、Mo、W 等が含まれていても本発明の効果に悪影響を及ぼさない限り構わない。ただし、Pb、Sb、Snはスパングルが開華しやすくなってしまうこと、およびPb、Sn、Cd、Biは、めっきの経時剥離性に悪影響があることから、これらはいずれもそれぞれ200ppm未満とするのが好ましい。
【0026】
めっき付着量:
特に限定する必要はないが、実用上好ましい範囲は、片面当たりの付着量で30〜200g/m2 程度である。30g/mに満たない場合は耐食性が不足する場合が多く、200g/m2 を超える場合には反応Al量を低減したところでZn量が多いため溶接性改善効果が不足することが多いためである。もちろん、使用環境等によっては付着量を適宜変更すればよい。
【0027】
高耐食性という要請に対しては、より多量の付着量とすることができ、本発明によれば、従来よりかなり多量のめっき付着量、例えば100g/m2 超とすることが可能となる。好ましくは、110g/m2 以上とすることができる。もちろん、そのような場合、付着量のバラツキがみられることがあり、そのときには、後述するリフロー処理を行えばよい。リフロー処理を行わない場合には、より確実には、めっき付着量を片面当たり90g/m以下とするのが好ましい。もちろん、そのとき、めっき付着量の調整は、非酸化性ガスの吹き付けによるガスワイピングにより行うのが好ましい。
【0028】
スパングルの平均結晶粒径:1.0mm 以下
溶融亜鉛めっき鋼板のスパングルは、塗装後外観を低下させるため、スパングルの平均結晶粒径は1.0mm 以下に限定する。より好ましくは、0.5mm 以下である。スパングルの平均結晶粒径は、後述する実施例においても言及するように、20個のスパングルの長径および短径の平均値を云う。このようなスパングルの平均結晶粒径は、例えば、めっき前鋼板の表面粗さ、浴中のPb濃度、めっき後の冷却速度等を変えることで調整することができる。
【0029】
めっき皮膜表面のWca(平均ろ波中心線うねり高さ):Wca≦0.6 μm
Wcaが0.6 μm を超えると、金型との接触が不均一となり、プレス成形時に局部的な面圧上昇をもたらし、母材割れなども起こしやすくなるほか、摺動性が急激に低下して、前述した金型との焼きつき現象によるめっき剥離を生じやすくなるため、0.6 μm 以下とする。より好ましい範囲は0.4 μm 以下である。このときのWca は、JIS−B0601 に従って求めることができ、本発明においてもそれに準じて求めることができる。Wca を調整するには、例えば、ワイピングのガス種やリフロー時の加熱温度や時間等を変更することで容易に行うことができる。
【0030】
皮膜除去後の鋼板表面粗さ:Rz (μm)≧0.4 ×皮膜中Fe濃度(質量%)+4.0   (1)
プレス成形時のめっき剥離を抑制するには、前述の表面うねりの制御のほか、めっき/母材界面に凹凸を設けることで界面密着性を改善することが好ましい。さらに、後述するリフロー処理を施す等の手段によりめっき/母材界面に脆いFe−Zn合金層が形成される場合には、要求される界面の凹凸のレベルが厳しくなることから、めっき皮膜除去後の鋼板表面粗さ(めっき/母材界面粗さとほぼ等しい)として、皮膜中のFe量に応じて前記式(1) の関係を満たす十点平均粗さRz (μm)を確保する。これは、界面密着性と関連付けて求められた実験式である。もちろん、このときの鋼板表面粗さは(Rz)は、JIS−B0601 にしたがって決定することができ、後述する実施例におけるように、本発明においてもそれに準じて決定する。本発明においては、めっき皮膜除去後の鋼板表面粗さがめっき/母材界面の粗さと考えて、上述のように規定するのである。
【0031】
このときの鋼板表面粗さは、出発母材鋼板の表面粗さばかりでなく、めっき処理条件、そしてそれに続く熱処理条件によっても変ることから、それらを適宜選定することにより上述の範囲に鋼板表面粗さRzを持ち来すようにすればよい。
【0032】
製造方法:
本発明に係る溶融亜鉛めっき鋼板を製造するには、基本的にはGI鋼板の製造方法に準じて行えばよいが、好適な製造方法を以下に例示する。
【0033】
母材は通常の方法に従って、例えば連続加熱炉で再結晶焼鈍をした後にめっき浴温度近傍まで冷却し、めっき浴に浸漬し、引き上げてガスワイピング( 気体絞り法) など公知の方法でめっき付着量を調整する。母材が再結晶焼鈍を必要としない場合には、母材を少なくとも600 ℃以上の還元雰囲気下で加熱した後めっき浴温度近傍まで冷却した後にめっき浴に浸漬する。
【0034】
めっき前の鋼板表面粗さRz:≧5μm もしくは7μm
めっき付着量を調整した後、再加熱なしに冷却する場合は、めっき母材/界面の凹凸レベルを、前記式(1) にしたがってRz:約4μm 以上に保持するには、めっき前鋼板粗さもRz:5μm 以上とするのがよい。
【0035】
もう一つの理由として、めっき処理条件およびめっき前処理条件の変動によりスパングルが開華する場合がある。このような条件変動があっても、安定して平均粒径1.0mm 以下のスパングル外観を達成する上でも、Rz:5μm 以上の母材粗さが好ましい。
【0036】
さらに、めっき面の平滑性を得るため後述するリフロー処理を施す場合、界面に脆いFe−Zn合金相が形成する。この場合でも良好なめっき密着性を確保するには、めっき/母材界面の凹凸レベルを、前記式(1) にしたがってFe%が上昇する(=合金化が進行する)に伴って大きくするのがよく、そのためには、めっき前の母材粗さを、好ましくはRz:7μm 以上、さらに好ましくは9μm 以上とするのがよい。
【0037】
めっき浴Al濃度:0.13〜0.50%
溶融亜鉛めっき浴にはAlを0.13%以上、0.50%以下含有させる。この理由は、前記皮膜中Alの項で述べたとおりである。
【0038】
めっき浴温度:
本発明においてめっき浴温度それ自体は特に制限されないが、一般的にめっき浴温度を過度に高くすると、めっき浴浸漬中に合金層が発達する。逆に過度に低くするとめっき付着量の調整が困難となる。このため、めっき浴の温度は、その融点よりも30〜60℃高く設定するのがよい。
【0039】
付着量調整方法:
めっき浴に浸漬した母材は、めっき浴から引き上げて付着量を調整するが、通常の大気吹き付けによるガスワイピングでめっき付着量を調整すると、めっき皮膜表面には凹凸が生じる。一つには、皮膜が溶融状態の時に表層に酸化物が瞬時に厚く形成されるため、皮膜の粘性が増加し、レベリングの効果が小さくなるためである。
【0040】
この対策として、めっき引き上げ後、非酸化性ガスによるガスワイピング処理を行うと、表層の酸化物形成を抑制できる。片面あたり約90g/m以下の付着量であれば、通常の条件で調質圧延した場合(例えば、ショットダルにより中心線平均粗さRa=約2μm としたワークロールで伸び率1%程度)でも、めっき表面のWcaを0.6 μm 以下に容易に設定できる。このときのガス種は、N、Ar、He等いずれでも良く、純度も97%以上で問題ない。リフロー処理を行う場合には、めっき付着量が特に制限されないことからも分かるように、ワイピングガスの種類についても特に制限されない。空気吹き付けによりガスワイピングを行ってもよい。
【0041】
付着量調整後のめっき冷却方法:
後述のリフロー処理を施さない場合、めっき/母材界面に界面合金相を発達させないという観点からは、放冷以上の冷却速度(約0.5 ℃/秒以上)が得られていれば特に問題はないが、好ましくは、めっき凝固までできるだけすばやく冷却するのがよい。これは、例えば、常用のスパングル抑制手段である水溶液噴霧やガスによる冷却等を用いれば、かつスパングル抑制効果と相まって好ましい。
【0042】
リフロー処理:
片面あたりの付着量が概ね90g/mを超える場合、例えば100g/m2 超の場合には、付着量のバラツキが大きくなるため、Wcaを所定の値以下にするには、非酸化性ガスによるガスワイピング処理とリフロー処理との併用が好ましい。
【0043】
このリフロー処理とは、めっき後にめっき皮膜の融点以上に短時間加熱し、めっき皮膜のレベリングを図るものである。従来のいわゆる合金化処理とは、目的が異なりまたFeの拡散量も異なる。リフロー処理の加熱温度は、鋼板温度で規定して、亜鉛の融点である420 ℃以上とする。迅速にレベリングを行うには、最高到達温度を480 ℃以上とするのが好ましい。しかし、加熱温度を過度に高くすると合金化が急速に進行し、Fe含有量の調整が困難となるために最高到達温度は高くても600 ℃以下とする。好ましくは550 ℃以下である。
【0044】
リフロー処理は、溶融めっきを行って一旦冷却した鋼板を再加熱して施しても構わないが、溶融めっきに連続して施すのが生産性の面から好ましい。
リフロー処理時の加熱時間、つまり保持時間は、上記温度範囲(420 ℃〜最高到達温度)の域内に3秒以上保持するのがよい。保持時間が3秒に満たない場合には、そのリフロー処理の効果が不十分で、プレス時の摺動性改善に寄与しない。リフロー処理時の加熱手段は、ガス加熱、高周波誘導加熱、通電加熱など、公知の方法によればよい。
【0045】
一方、めっき後の材温が300 ℃以上の場合においては、皮膜と鋼板素地との相互拡散が進行し、めっき前に付与した粗さが低減する。めっき/母材の密着性の観点からは、相互拡散の過度な進行を抑制する必要があるが、そのためには前記温度域内に保持後、420 ℃から300 ℃になるまでの冷却時間を60秒以内とするのがよい。
【0046】
このように、本発明にかかる溶融亜鉛めっき鋼板には、リフロー処理による溶融亜鉛めっき鋼板が包含されることはもちろん、各種溶融Zn−Al 合金めっき鋼板、例えば溶融Zn−Al−Mg合金めっき鋼板、溶融Zn−Al−Si合金めっき鋼板が含まれることは当業者には明らかである。
【0047】
めっき後の製品表面には、無処理/防錆紙、無処理/防錆油に加え、公知のクロム酸処理、リン酸塩処理、樹脂皮膜塗布などの後処理を施しても構わない。
次に、実施例によって本発明の作用効果を具体的に説明する。
【0048】
【実施例】
表1の化学組成を有する1.0mm 厚の母材を竪型溶融亜鉛めっき設備にて還元性雰囲気中で焼鈍し、Al濃度が0.10〜0.6 %である亜鉛めっき浴 (浴温 460℃) に浸漬 (浸漬時間:2s)し、引き上げてワイピング法で片面当たり、それぞれ80g/m、120g/m2 の範囲の付着量でめっきを行った後、ワイピングのガス種として空気とNガスを使用し、一部は赤外線加熱炉により、420 〜600 ℃の範囲に再加熱するリフロー処理を施した。
【0049】
その後、通常の条件(ワークロール:ショットダル加工、Ra=約2μm 、伸率0.5 〜2.0 %)でスキンパスを施した。
得られためっき鋼板のめっき皮膜の性状を以下の方法で調査した。
【0050】
化学組成:
めっき皮膜のZn、Al、Feなどの含有量は、めっき鋼板をインヒビターを添加した10%塩酸水溶液中に浸漬してめっき皮膜を溶解し、得られた溶液をICP 分光分析法で測定した。
【0051】
スパングルの平均結晶粒径:
調質圧延で不鮮明になったスパングルの平均結晶粒径は、常温5%HCl 水溶液に20〜30s 浸潰することによりエッチングし、鮮明になった後、スパングル20個の長径と短径の平均値を平均結晶粒径とした。
【0052】
めっき皮膜表面のWca:
めっき皮膜表面のろ波中心線うねりWcaは、JIS−B0601 に従って東京精密製サーフコムを用い測定を行った。高域カットオフ0.8mm 、低域カットオフ8mmを採用している。
【0053】
めっき皮膜除去後の鋼板表面粗さ(Rz):
皮膜の化学組成分析のため溶解した後の母材表面粗さは、JIS−B0601 に従って東京精密製サーフコムを用い測定を行った。得られた断面曲線については、カットオフ0.8mm を採用し、10点平均粗さRzを算出した。
【0054】
めっき前母材の表面粗さ(Rz):
測定方法は、上記に準ずる。
界面密着性:
本発明における界面密着性は、下記条件により行った円筒絞り試験により、めっき剥離およびパウダリングの有無に基づき評価を行った。
【0055】
ブランク径:60mm
ポンチ径:33mm
ダイス径:35.4mm
ダイス肩半径:3R
ブランクホルダー圧:700kgf
溶剤脱脂を行ったブランクの重量を測定した後、一般防錆油を塗布し、上述の円筒絞り試験を実施した。円筒絞り後のサンプルを溶剤脱脂後、円筒周囲のテープを剥離して、剥離片を光学顕微鏡で観察した。めっき剥離とパウダリングの区別は、平均して最大径が200 μm 以上の剥離片の場合をめっき剥離、200 μm 未満のものをパウダリングと定義している。いずれの場合にあっても、これらの小片が確認された場合は、不合格と判断する。
【0056】
塗装後の外観:
塗装は、めっき鋼板に浸漬式リン酸化成処理、カチオン型電着塗料、中塗り、上塗りの3コート塗装(合計厚100 μm)を行った。目視よりスパングルの形状の確認を行った。
【0057】
【表1】
Figure 2004124118
【0058】
【表2】
Figure 2004124118
【0059】
【発明の効果】
本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、GI鋼板の長所である200g/m2 以下という厚目付、具体的には120g/m2 という厚目付が可能で優れた耐食性を備えているうえに、短所であるプレス成形時のめっき剥離が改善されている。従って、家電製品、建築用途、自動車などの耐食性材料として、内装材のみならず外装材としても極めて好適である。また、本発明の溶融亜鉛めっき鋼板は、安価に製造できるので、工業的な価値が極めて大きい。

Claims (3)

  1. 質量%で、皮膜中のAl濃度が0.15〜1.0 %、Fe濃度が6%以下、スパングルの平均結晶粒径が1.0mm 以下、そしてWca が0.6 μm 以下であるとともに、めっき皮膜除去後の鋼板表面粗さRz (μm)が下記式を満たすことを特徴とする、耐めっき剥離性ならびに表面外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板。
    Rz≧ 0.4×皮膜中Fe濃度(質量%)+4.0      (1)
  2. 表面粗さRzが5.0 μm 以上の冷延鋼板あるいは熱延鋼板母材を、質量%で、Alを0.13%以上、0.50%以下含有する溶融Znめっき浴に浸漬後引き上げて、非酸化性ガスを使ったガスワイピングで付着量を片面当り90g/m以下に調整した後、冷却することを特徴とする、溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
  3. 表面粗さRzが7.0 μm 以上の冷延鋼板あるいは熱延鋼板母材を、質量%で、Alを0.13%以上、0.50%以下含有する溶融Znめっき浴に浸漬後引き上げて、ガスワイピングで付着量を調整した後、420 ℃以上600 ℃以下の温度領域に3秒以上保持し、その後、材温が420 ℃から300 ℃になるまで60秒以内で冷却することを特徴とする溶融亜鉛めっき鋼板の製造方法。
JP2002286434A 2002-09-30 2002-09-30 プレス成形性及び外観に優れた溶融亜鉛めっき鋼板およびその製造方法 Pending JP2004124118A (ja)

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