JP3366304B2 - ダイカスト用プランジャチップ - Google Patents

ダイカスト用プランジャチップ

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明 瀬尾
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誠石 勝見
明 瀬尾
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はダイカスト鋳造装置
に使用するダイカスト用プランジャチップの改良に関す
る。
【0002】
【従来の技術】自動車、通信機器、日用品、カメラなど
の部品製造に用いられているダイカスト鋳造装置の一つ
である横鋳込み型コールドチャンバーダイカスト鋳造装
置40は、図3に示すように、ベッド41の上に設けた固定
盤(固定プラテン)42で固定型(固定ダイス)44を支持
し、この固定型44に前方から可動盤(可動プラテン)46
に固定された可動型(可動ダイス)47を衝合させて、こ
れらの金型44、47の合面に鋳造品の原形であるキャビテ
イ48を形成している。
【0003】この固定型(固定ダイス)44に嵌入され、
キャビテイ48に連通する湯口ブッシュ45に、円筒状のス
リーブ43を当接させて固定盤42で支持し、このスリーブ
43の固定盤42より突出した後方部分(矢印B側)に溶湯
を供給するための給湯口49を開口している。
【0004】そして、鋳造に際しては、この給湯口49か
らスリーブ43内に、アルミ合金等のダイカスト鋳造の材
料の溶湯が、640℃〜750℃に昇温されてから注入
される。この充填率は、スリーブ43の容量の約40%前後
即ち約30%〜50%である。この注入の後に、この給湯口
49の近傍に待機しているプランジャ60の先端側に設けた
プランジャチップ10が、シリンダ装置53の作動によりス
リーブ43内を前進して、この溶湯を加圧することによ
り、溶湯を湯口ブッシュ45のブランジャ穴52を経由し
て、キャビテイ48内に高速・高圧で射出注入して鋳造し
ている。
【0005】このスリーブ43や湯口ブッシュ45は、その
内部をプランジャチップ10が繰り返し往復摺動するの
で、耐熱、耐摩耗性に優れた熱間用工具鋼のSKD−6
1に窒化処理したもので作られることが多い。
【0006】一方、プランジャ60は、図4に示すよう
に、シリンダ装置53に接続する中空筒形状のプランジャ
ロッド61に、同じく中空筒形状のチップジョイント62を
介してプランジャチップ10を接合して形成される。
【0007】このプランジャチップ10は、高温・高圧の
溶湯に接してスリーブ43内や湯口ブッシュ45内を繰り返
し高速で往復摺動し、大きな圧力が繰り返し加わるの
で、このプランジャチップ10の押圧面11f及び外周面12
fは、摩耗や浸蝕による損傷を受け易い。
【0008】そして、一旦、このプランジャチップ10が
損傷して表面に凹凸が生じると、往復摺動が円滑に行な
われず、カジリ付きが発生して、溶湯を十分に加圧する
ことができなくなるので、金型45,47で形成されるキャ
ビティ48への供給圧力が低下し、そのため、鋳造品の品
質が低下したり、更には、鋳造作業ができなくなる。
【0009】また、スリーブ43や湯口ブッシュ45側もプ
ランジャチップ10の荒れた面に接触することにより、損
傷を受けたり、引っ掻き傷等が発生する。
【0010】そのため、プランジャチップ10は、度々交
換する必要が生じるので、交換部品として扱われ、図5
に示すように、後端側にチップジョイント62と螺合する
ための雌ネジ部14が形成されている。
【0011】また、このプランジャチップ10は、図4に
示すように、前端側が高温・高圧の溶湯に接しながら、
スリーブ43内を摺動し、しかも、型成形時に、スリーブ
43や湯口ブッシュ45の溶湯の通路51,52内で、プランジ
ャチップ10の先端の押圧面11fとキャビティ48の壁面と
の間に残された溶湯が固まってできる所謂「ビスケッ
ト」を冷却する必要があるので、プランジャチップ10の
中央に冷却水室12を設け、通路66,67と冷却水室12と通
路68,69を経由して冷却水Wを循環している。
【0012】そして、従来技術のプランジャチップ10
は、図5に示すように、耐熱性及び耐摩耗性に優れ、ま
た、熱伝導率の良い金属材料、例えば、ベリリウム銅合
金やSKD61等の鋼を焼き入れした材料で形成された
り、鋼材S45Cを材料とし、更に、ニッケル合金やリ
ン青銅等の特殊合金をプラズマ溶射等して形成した肉盛
り部分11f、12fを、押圧部11と筒部12の部分の表面に
設けたりして作られている。なお、この肉盛り部分11
f、12fは、厚さが0.5〜0.7mm程度で、硬度が
55〜58HRC程度に形成される。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】しかしながら、従来技
術のプランジャチップにおいては、これらのベリリウム
銅合金や、表面に形成する特殊合金のプラズマ溶射等は
高価なものであるので、製造コストが非常に高くなると
いう問題がある。
【0014】また、プランジャチップの外周面が摺動に
より摩耗したり浸蝕されるために、この製造コストの高
いプランジャチップ全体を度々交換する必要が生じるの
で、交換コストが嵩み、ダイカスト鋳造品の製造コスト
が高くなってしまうという問題がある。
【0015】更に、プランジャチップの外周面において
は、先端側の耐摩耗性が重視される部分と、その後側の
潤滑性が重視される部分とに、同材料の肉盛り部を形成
しているので、必ずしも両方の要求を十分に満足するこ
とができないという問題がある。
【0016】本発明は、上述の問題を解決するためにな
されたものであり、その目的は、ダイカスト用プランジ
ャチップにおいて、耐摩耗性が要求される部分と潤滑性
が要求される部分とをチップ本体とは別の材料で形成
し、耐摩耗性と潤滑性に優れ、カジリ付きを防止でき、
しかも、摩耗等によって交換が必要になる部分を小さく
着脱可能に形成して、低コストでダイカスト鋳造できる
ダイカスト用プランジャチップを提供することである。
【0017】
【課題を解決するための手段】前記目的を達成するため
の本発明に係るダイカスト用プランジャチップは、ダイ
カスト用のプランジャスリーブに挿入され、溶湯を圧入
するプランジャの前端に配設されるプランジャチップに
おいて、溶湯を押圧する前面の押圧部と、該押圧部の背
の筒部とからなるチップ本体を有し前記筒部に後部
が開口された中空部を形成するとともに、該中空部内に
冷却水室と、該冷却水室の開口側にチップジョイントと
の接続部とを配設し、更に前記チップ本体の外周面に先
端側から、耐磨耗性金属材料からなるリング状の先端ブ
ッシュと、続いて、潤滑性金属材料からなる短筒状の中
間ブッシュを着脱自在に嵌着するとともに、前記先端ブ
ッシュを幅狭く中間ブッシュを幅広く形成したことを特
徴とする。
【0018】そして、前記先端ブッシュを鋼材S45C
にコバルト合金を表面溶射して形成し、前記中間ブッシ
ュをベリリウム銅合金又はオイルレスメタルで形成す
る。
【0019】この構成のダイカスト用プランジャチップ
によれば、耐摩耗性に優れたコバルト合金を鋼材S45
Cに表面溶射して形成したもの等の耐摩耗性材料で形成
した先端ブッシュの部分で、プランジャスリーブと当接
し、摺接するので、摺接往復運動による摩耗に対する耐
久性が増す。
【0020】この先端ブッシュが配置されるプランジャ
チップの先端外周側は、高温・高圧の溶湯に接するの
で、熱膨張し拡径する。そのため、この先端部分が特に
摩耗し易くなるので耐摩耗性が強く要求される。
【0021】また、摺接部分に潤滑性に優れたベリリウ
ム合金やオイルレスメタル等の潤滑性材料で形成された
中間ブッシュを配設しているので、往復摺動運動を円滑
に維持できカジリ付きを防止できる。
【0022】また、先端ブッシュや中間ブッシュ等の交
換が必要になる部分をリング状の小さな部品にして独立
して形成するので、耐摩耗性に優れたコバルト合金等や
潤滑性に優れたベリリウム銅合金等の高価な金属材料を
使用しても、使用量が少量で済むので、プランジャチッ
プの製造コストを低くすることができる。
【0023】なお、潤滑性に優れているとは、摺接往復
運動する際に、円滑に摺動でき、カジリ付きが発生し難
いことをいい、又、ここで用いている耐摩耗性材料や潤
滑性材料においては、合金金属の単一材料だけでなく、
鋼材S45Cにコバルト合金を表面溶射したような材料
も含んでいる。
【0024】更に、先端ブッシュや中間ブッシュ部分の
摩耗が進んだ場合においても、高温・高圧の溶湯と接触
して損傷を受け易い先端ブッシュあるいは摺接の中心と
なる中間ブッシュのみを交換すれば良く、前面に特殊合
金加工して高価なものとなるチップ本体をそのまま使用
できるので、高価なチップ本体の交換が非常に少なくな
り、交換費用が減少し、ダイカスト鋳造品の製造コスト
が低減する。
【0025】
【発明の実施の形態】次に図面を参照して本発明の実施
の形態を説明する。
【0026】本発明に係るダイカスト用プランジャチッ
プ1は、図1、図2に示すように、チップ本体2と、こ
の外周に環装されるリング状の先端ブッシュ3と短筒状
の中間ブッシュ4と短筒状の押さえブッシュ5とからな
り、チップ本体2は、溶湯を押圧する押圧部21と、この
押圧部21の背後に後部が開口された中空部を形成して設
けた冷却水室22と、開口側の接続部24とを有して形成さ
れる。
【0027】つまり、チップ本体2は、前面の押圧部21
と内部に冷却水室22と接続部24を有する筒部23を有して
形成される。この接続部24は、図3や図4に示すチップ
ジョイント62と接続できるように雌ネジ部24で形成され
ている。このチップ本体2は、鋼材S45C等の焼き入
れした鋼材等で形成され、前面の押圧面21fは、コバル
ト合金を溶射等により0.7mm〜1mm程度の厚さに
肉盛りして形成される。
【0028】そして、このチップ本体2の先端部の周囲
に、先端側から先端ブッシュ3と中間ブッシュ4とを順
に嵌合し、押さえブッシュ5のネジ部7をチップ本体2
のネジ部27に螺合し、この螺合した押さえブッシュ5を
止めネジ6で、チップ本体2に固定して形成される。
【0029】そして、先端ブッシュ3は、チップ本体2
の筒部23の周囲に嵌合するように、リング状に形成す
る。このチップ本体2は、鋼材S45Cにコバルト合金
を表面溶射して形成したり、コバルト合金やニッケル合
金等で形成されたりして、耐熱性及び耐摩耗性に優れた
耐摩耗性材料で形成される。また、中間ブッシュ4は、
チップ本体2の筒部23の周囲に嵌合するようにリング状
に形成され、先端ブッシュ3の後部に配置されるが、こ
の中間ブッシュ4は、ベリリウム銅合金やオイルレスメ
タル等の潤滑性に優れた潤滑性材料で形成される。
【0030】この先端ブシュ3は、プランジャチップ1
の先端外周部の一番摩耗し易い部分に配置されるが、摺
接の主たる部分は中間ブッシュ4であるので、先端ブッ
シュ3の幅L1は、中間ブッシュの幅L2より狭く形成
される。一例を上げれば、チップ本体2の形状が全長1
55mm、筒部23の外径が74mmφ、先端ブッシュと
中間ブッシュの外径が90mmφの時に、先端ブッシュ
3の幅L1の10mmに対し、中間ブッシュ4の幅L2
は75mmである。
【0031】そして、本体チップ3の筒部23の外周に後
部から先端ブッシュ3と中間ブッシュ4とを環装及び嵌
合し、更に、鋼材S45C等で形成された押さえブッシ
ュ5を中間ブッシュ4の後部に挿入して、チップ本体2
に螺合し、この押さえブッシュ5のネジ孔41に止めネジ
6を螺合し、先端をチップ本体2の止め孔25に押圧し
て、押さえブッシュ5を固定する。これにより、プラン
ジャチップ1を構成する。
【0032】この止めネジ6及び押さえブッシュ5を外
すことにより、チップ本体2から中間ブッシュ4と先端
ブッシュ3を後部側に引き抜くことができる。即ち、先
端ブッシュ3と中間ブッシュ4はチップ本体2に対して
着脱自在に形成される。
【0033】以上のような構成のダイカスト用プランジ
ャチップ1によれば、特に摩耗し易い先端外周部分を耐
摩耗性材料製の先端ブッシュ3で形成しているので、耐
摩耗性に優れ、また、プランジャスリーブとの摺接部分
を着脱自在の潤滑性材料製の中間ブッシュ4で形成して
いるので、潤滑性に優れており、そのため円滑に摺動で
き、カジリ付きを防止できる。
【0034】そして、これらの先端ブッシュ3と中間ブ
ッシュ4は着脱可能なリング状に形成されるので、先端
ブッシュ3に耐摩耗性に優れた高価な材料を使用し、ま
た、中間ブッシュ4に潤滑性に優れたベリリウム銅合金
やオイルレスメタル等の高価な材料を使用しても、本体
チップ2全体に比較すれば、遙に少ない量で済むので、
プランジャチップ1の製造コストを低減することができ
る。
【0035】また、プランジャチップ1は、耐摩耗性に
優れた材料で形成しても、やがて、その外周面が摩耗す
るために、交換する必要が生じるが、摩耗して傷み易い
先端外周部分に着脱自在の先端ブッシュ3を配設してい
るので、損傷時には、この先端ブッシュ3だけを交換す
ればよい。また、摺接部分の主要部分を形成する中間ブ
ッシュ4が損傷した場合でも、この中間ブッシュ4だけ
を交換すればよい。
【0036】そのため、プランジャチップ1全体の交換
が不要になり、本体チップ1等を継続使用することがで
きる。従って、プランジャチップの交換費用を低減で
き、ダイカスト鋳造品の製造コストを低減できる。
【0037】
【発明の効果】本発明に係るダイカスト用プランジャチ
ップによれば、以下のような効果を奏することができ
る。
【0038】ダイカスト用プランジャチップの先端外周
部分に、鋼材S45Cの表面にコバルト金属を溶射した
ものやコバルト合金やニッケル合金等の耐摩耗性材料で
形成したリング状の先端ブッシュを設け、この先端ブッ
シュの部分で、プランジャスリーブと当接するように構
成したので、摺接往復運動による摩耗に対して耐久性を
向上させることができる。
【0039】また、筒部の外周部の摺接部分にベリリウ
ム合金やオイルレスメタル等の潤滑性材料で形成した短
筒状の中間ブッシュを配設したので、プランジャスリー
ブ内の往復摺動運動を円滑に維持できカジリ付きを防止
できる。
【0040】更に、耐摩耗性や潤滑性に優れた高価な材
料を、リング状の小さな部品の先端ブッシュや短筒状の
中間ブッシュにだけ使用するので、これらの高価な金属
材料を使用しても、使用量が少量で済み、プランジャチ
ップの製造コストを低くすることができる。
【0041】そして、先端ブッシュや中間ブッシュ部分
の摩耗や損傷が生じた場合においても、この先端ブッシ
ュあるいは中間ブッシュのみを交換すれば良く、前面に
特殊合金加工して高価なものとなるチップ本体をそのま
ま使用できるので、高価なチップ本体の交換頻度が減少
する。
【0042】これにより交換費用が減少するので、ダイ
カスト鋳造品の製造コストが低減することができる。ま
た、交換する部分が先端ブッシュや中間ブッシュ等の小
さな部分であり、比較的大きなチップ本体の寿命を長く
できるという省資源効果がある上に、それぞれが耐摩耗
性材料や潤滑性材料で別個に作られており、材料の分別
が容易であるので、リサイクルし易く、このリサイクル
の面からも省資源効果がある。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明に係るダイカスト用プランジャチップを
示す図であり、(a)は上半分が断面を示す側面図で、
(b)は上半分がX−X断面を示す正面図である。
【図2】図1のダイカスト用プランジャチップの断面を
含む分解斜視図である。
【図3】ダイカスト鋳造装置を示す概略図である。
【図4】本発明に係るダイカスト用プランジャチップの
周辺の状態を示す側断面図である。
【図5】従来技術のダイカスト用プランジャチップを示
す図であり、(a)は上半分が断面を示す側面図で、
(b)は正面図である。
【符号の説明】
1 プランジャチップ 2 チップ本体 3 先端ブッシュ 4 中間ブッシュ 5 押さえブッシュ 21 押圧部 22 冷却水室 23 筒部 24 雌ネジ部(接続部)
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−137913(JP,A) 実開 平7−33448(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 17/20

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ダイカスト用のプランジャスリーブに挿
    入され、溶湯を圧入するプランジャの前端に配設される
    プランジャチップにおいて、溶湯を押圧する前面の押圧
    と、該押圧部の背後の筒部とからなるチップ本体を有
    前記筒部に後部が開口された中空部を形成するとと
    もに、該中空部内に冷却水室と、該冷却水室の開口側に
    チップジョイントとの接続部とを配設し、更に前記チッ
    プ本体の外周面に先端側から、耐磨耗性金属材料からな
    るリング状の先端ブッシュと、続いて、潤滑性金属材料
    からなる短筒状の中間ブッシュを着脱自在に嵌着すると
    ともに、前記先端ブッシュを幅狭く中間ブッシュを幅広
    く形成したことを特徴とするダイカスト用プランジャチ
    ップ。
  2. 【請求項2】 前記先端ブッシュを鋼材S45Cにコバ
    ルト合金を表面溶射して形成し、前記中間ブッシュをベ
    リリウム銅合金又はオイルレスメタルで形成したことを
    特徴とする請求項1記載のダイカスト用プランジャチッ
    プ。
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