JP3360066B2 - 工作機械のツールヘッド - Google Patents

Description

【発明の詳細な説明】

【０００１】

【発明の属する技術分野】本発明は、旋削工具とミル工
具等の回転工具を交換自在に装着するツールスピンドル
を備えた工作機械のツールヘッドに関する。

【０００２】

【従来の技術】ワークを把持するワークスピンドルを備
えるワークヘッドに対向して、旋削工具と回転工具を交
換自在に装着するツールスピンドルを備えるツールヘッ
ドを配設して、複雑な形状のワークをワンチャッキング
で加工する能力を有する工作機械が提案されている。

【０００３】この種のツールスピンドルにあっては、旋
削加工時には、旋削工具を装着したツールスピンドルを
クランプして、切削抵抗に耐える構造を採用する必要が
ある。

【０００４】

【発明が解決しようとする課題】しかしながら、このツ
ールスピンドルは、ミル加工時には高速で回転する構造
を備えるので、ベアリングを必要とし、ツールヘッド内
に強固なクランプ機構を装備することは、構造的にもス
ペース的にも困難が伴う。特に、切削条件の厳しい旋削
加工にあっては、ツールスピンドルの剛性が不足して、
いわゆるビビリ振動が発生することがある。また、旋削
工具にビビリ防止用の制振部材を備えることも困難であ
った。そこで本発明は、旋削加工時にツールスピンドル
の外周部に配設される制振部材を備える工作機械のツー
ルヘッドを提供するものである。

【０００５】

【課題を解決するための手段】本発明のツールヘッド
は、ワークを把持し、回転又は静止するワークスピンド
ルを備えるワークヘッドと、ワークヘッドに対向して配
設され、旋削ツール又は回転ツールを交換自在に装着し
て静止又は回転するツールスピンドルを備える。そし
て、ツールヘッドのハウジング内に回転又は静止自在に
支持されるツールスピンドルと、旋削加工時にツールス
ピンドルをハウジングに対してクランプするピストン
と、ツールスピンドルの外周部に配設され、ピストンと
連結されるリング状の制振部材を備えるものである。

【０００６】また、ツールスピンドルの外径部に形成さ
れる複数本のリング溝と、制振部材の内径部に形成され
る複数本のリング溝を備え、ミル加工時には制振部材の
リング溝は、ツールスピンドルとリング溝を隔てる山部
に対向してラビリンス機構を形成し、旋削加工時には、
制振部材のリング溝を隔てる山部は、ツールスピンドル
のリング溝を隔てる山部に対向してツールスピンドルの
制振機構を形成するものである。

【０００７】

【発明の実施の形態】図１は、本発明を実施する工作機
械の全体構成を示す斜視図、図２は要部の斜視図であ
る。複合加工旋盤である工作機械１はフレーム１０を有
し、スライドドア１２内フレーム１０上に主軸台２０が
装備される。主軸台（ワークヘッド）２０は、ワーク主
軸（ワークスピンドル）２２を有し、ワークＷ１を回転
自在に保持する。

【０００８】ワークスピンドル２２は回転軸Ｃ１を中心
として矢印Ｒ１方向に回転するとともに、ミル加工時等
には静止と割り出しが可能である。回転軸Ｃ１と平行に
制御軸であるＺ軸が設定される。ワークスピンドル２２
に対向して、テールストック３０が配設され、ワークス
ピンドル２２とともに長尺のワークＷ１等を支持する。

【０００９】フレーム１０上には、Ｚ軸に平行する第１
の直動案内装置１４が設けられ、刃物台ベース４０がＺ
軸方向に移動制御される。刃物台５０には、ツールヘッ
ド１００が装備される。ツールヘッド１００は、Ｚ軸と
Ｘ軸を含む平面に直交するＹ軸方向に移動制御されると
ともに、Ｙ軸に平行な軸線Ｃ２まわりに割り出し制御さ
れる。この回転軸をＢ軸と称する。

【００１０】ツールヘッド１００は、ツールスピンドル
１１０を備える。ツールスピンドル１１０は、旋削用の
ツールを保持固定する機能に加えて、軸線Ｃ３まわりに
矢印Ｒ３方向に回転駆動される。工作機械１は、ツール
マガジン６０と自動工具交換装置（ＡＴＣ）７０を備
え、ツールスピンドル１１０に各種のツールＴ１を装着
する。ツールスピンドル１１０に装着されるツールとし
ては、各種の旋削用ツールに加えて、ドリル、タップ、
フェースミル、エンドミル等の回転工具が用意される。

【００１１】図３は、中心線より上部が旋削加工時、か
つツールクランプの状態を示し、中心線より下部はミル
加工時、かつツールアンクランプ状態を示す。ツールヘ
ッド１００は、ハウジング１０２内にベアリング１２０
を介してツールスピンドル１１０が回転又は静止自在に
支持される。ツールスピンドル１１０の先端部には、ツ
ールシャンク穴１１２が形成してあり、ツールＴ１が交
換自在に装着される。ツールスピンドル１１０の軸心部
には、ドローバー１３０が軸方向に摺動自在に挿入され
る。ドローバー１３０の外周部には、スプリング１４０
が配設してあり、ドローバー１３０を常時ツールクラン
プ側に向けて付勢する。

【００１２】ドローバー１３０は、凹部１３２を有し、
凹部１３２はツールクランプ用のボール１６０を受け入
れる。ドローバー１３０の外周部に嵌装されるクランプ
部材１５０は、半径方向の穴１５２を有し、ボール１６
０が挿入される。ドローバー１３０がスプリング１４０
によってクランプ位置に引き込まれると、ボール１６０
は、ドローバー１３０の凹部１３２から半径方向外側に
向けて押し出され、ツールＴ１の溝に係合されるととも
に、ツールＴ１をスピンドル１１０のツールシャンク穴
１１２に向けて引き込み、ツールのクランプを達成す
る。

【００１３】ツールヘッド１００は、図示しない油圧機
構を備え、ドローバー１３０をスプリング１４０に抗し
て押し出し、ツールのアンクランプを行う。ツールヘッ
ドのハウジング１０２のツールスピンドル１１０のツー
ルシャンク穴の近傍の外周部には、シリンダ室２１０が
設けられ、ピストン２００が摺動自在に設けられる。こ
のピストン２００の側面には、カップリング用の歯部２
０２が形成される。

【００１４】一方、ハウジング１０２のシリンダ室２１
０の奥端部には、リング状の固定用カップリング部材１
８０がボルト１８４によりハウジング１０２に対して固
着される。この固定用カップリング部材１８０はピスト
ン２００の歯部２０２に対向する歯部１８２を有する。
ツールスピンドル１１０の外周部にはピン１６０を介し
て、スピンドル側のカップリング部材１７０が固着され
る。このスピンドル側のカップリング部材１７０は、固
定用カップリング部材の内側に配設されるリング状の部
材であって、ピストン２００の歯部２０２に対向する歯
部１７２を有する。

【００１５】図３の中心線から下半分に示すミル加工時
には、ツールスピンドルクランプ用のピストン２００は
図示の位置にあって、カップリング用の歯部２０２は、
固定用カップリング部材１８０、ツールスピンドル側の
カップリング部材１７０の歯部とは、噛合していない。
この状態では、ツールスピンドル１１０は、ミル工具等
の回転工具をツールシャンク穴１１２に装着し、ツール
スピンドル１１０をハウジング内に装備される。図示し
ないモータにより直接に駆動して、ワークに必要なミル
加工を施すことができる。

【００１６】このピストン２００に連結部材２２０を介
してリング状の制振部材２３０が連結される。制振部材
２３０は、クランプ用のピストン２００に対して遊動で
きる状態で連結される。ツールスピンドル１１０の制振
部材２３０の内径部に対向する位置には、３本のリング
溝１１４，１１６，１１８が設けられている。制振部材
２３０の内径部にも２本のリング溝２３２，２３４が形
成される。制振部材２３０に形成される浅いリング溝２
３２は、ミル加工時には、ツールスピンドル１１０の２
本のリング溝１１４，１１６を隔てる山部１１５に対向
し、制振部材２３０とツールスピンドル１１０の間に
は、径方向のクリアランスＧ１が確保される。

【００１７】このクリアランスＧ１の存在によって、ミ
ル加工時に回転するツールスプリング１１０は、制振部
材２３０と干渉することはない。この時に、ツールスピ
ンドル１１０の外径部のリング溝１１４，１１６，１１
８及び山部１１５，１１７と、制振部材２３０の内径部
のリング溝２３２，２３４及び山部２３１，２３３は、
ラビリンス構造を形成し、クーラントがツールスピンド
ル内部に浸入するのを防止する。

【００１８】旋削加工時には、クランプ用ピストン２０
０が図で右側に移動し、その歯部２０２が固定用のカッ
プリング部材１８０の歯部１８２とツールスピンドル側
のカップリング部材１７０の歯部１７２と噛み合う。こ
の作用によって、ツールスピンドル１１０の回転動は、
固定用カップリング部材１８０により制止される。

【００１９】固定用カップリング部材１８０は、ツール
ヘッドのハウジング２０２に固着されているので、ツー
ルスピンドル１１０は確実にクランプされる。クランプ
用ピストン２００の移動に伴い、制振部材２３０も一体
に移動する。この移動によって、制振部材２３０の内径
部に形成される浅いリング溝２３２の両側の山部２３
１，２３３は、それぞれ対向するツールスピンドル１１
０の山部１１５，１１７に向い合い、両者間のクリアラ
ンスは、極めて小さい寸法となる。

【００２０】そこで、ツールスピンドルに旋削工具が装
着され、重切削加工を実行する際に、ツールスプリング
が切削抵抗を受けて、いわゆるビビリが発生する条件と
なったときにも、制振部材２３０によって、ツールスピ
ンドル１１０のビビリ振動は制止される。

【００２１】上述の実施形態は、工作機械のツールヘッ
ドについて説明したが、例えば、工作機械は複合加工旋
盤等を用いて行なう。

【００２２】

【発明の効果】本発明の工作機械のツールヘッドは以上
のように構成されているので、ツールスピンドルに旋削
工具を装着して、切削加工を施す際に、ツールスピンド
ルの外周部に制振部材が係合されるので、加工条件が厳
しい重切削を行ってもビビリの発生は防止でき、加工効
率を向上することができる。

【００２３】また、制振部材とツールスピンドルの間に
は、ミル加工時にはラビリンス構造が形成され、クーラ
ント等がツールスピンドル内部に浸入することが防止さ
れる。したがって、ベアリングの損傷等も防止できる。

【図面の簡単な説明】

【図１】工作機械の斜視図。

【図２】工作機械の要部の斜視図。

【図３】ツールヘッドの要部の断面図。

【符号の説明】

１ 工作機械 １０ フレーム ２０ ワークヘッド ２２ ワークスピンドル ５０ 刃物台 ６０ ツールマガジン ７０ ＡＴＣ １００ ツールヘッド １０２ ハウジング １１０ ツールスピンドル １１２ ツールシャンク穴 １４０ スプリング １５０ クランプ部材 １６０ ボール １７０ スピンドル側カップリング部材 １８０ 固定用カップリング部材 ２００ ピストン ２２０ 連結部材 ２３０ 制振部材

───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平10−328907（ＪＰ，Ａ) 特開 平10−328905（ＪＰ，Ａ) 特開 平８−11010（ＪＰ，Ａ) (58)調査した分野(Int.Cl.⁷，ＤＢ名) B23B 19/02 B23Q 5/04

Claims (2)

(57)【特許請求の範囲】
1. 【請求項１】 ワークを把持し、回転又は静止するワー
   クスピンドルを備えるワークヘッドと、ワークヘッドに
   対向して配設され、旋削ツール又は回転ツールを交換自
   在に装着して静止又は回転するツールスピンドルを備え
   るツールヘッドを有する工作機械のツールヘッドであっ
   て、 ツールヘッドのハウジング内に回転又は静止自在に支持
   されるツールスピンドルと、旋削加工時にツールスピン
   ドルをハウジングに対してクランプするピストンと、ツ
   ールスピンドルの外周部に配設され、ピストンと連結さ
   れるリング状の制振部材を備える工作機械のツールヘッ
   ド。
2. 【請求項２】 ツールスピンドルの外径部に形成される
   複数本のリング溝と、制振部材の内径部に形成される複
   数本のリング溝を備え、ミル加工時には制振部材のリン
   グ溝は、ツールスピンドルとリング溝を隔てる山部に対
   向してラビリンス機構を形成し、旋削加工時には、制振
   部材のリング溝を隔てる山部は、ツールスピンドルのリ
   ング溝を隔てる山部に対向してツールスピンドルの制振
   機構を形成する請求項１記載の工作機械のツールヘッ
   ド。