JP3357381B2 - 磁石材料およびその製造方法ならびにボンディッド磁石 - Google Patents

磁石材料およびその製造方法ならびにボンディッド磁石

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JP3357381B2 JP07854191A JP7854191A JP3357381B2 JP 3357381 B2 JP3357381 B2 JP 3357381B2 JP 07854191 A JP07854191 A JP 07854191A JP 7854191 A JP7854191 A JP 7854191A JP 3357381 B2 JP3357381 B2 JP 3357381B2
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    • H01F1/059Alloys characterised by their composition containing rare earth metals and magnetic transition metals, e.g. SmCo5 and Va elements, e.g. Sm2Fe17N2

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、急冷法を用いて製造さ
れた希土類磁石材料およびその製造方法と、ボンディッ
ド磁石とに関する。
【0002】
【従来の技術】高性能希土類磁石としては、Sm−Co
系磁石やNd−Fe−B系磁石が知られているが、近
年、新規な希土類磁石の開発が盛んに行なわれている。
【0003】例えば、Sm2 Fe17とNとの化合物であ
るSm2 Fe172.3 付近の組成で、4πIs =15.
4kG、Tc =470℃、HA =14Tの基本物性が得ら
れること、Znをバインダとするメタルボンディッド磁
石として10.5MGOeの(BH)max が得られること、ま
た、Sm2 Fe17金属間化合物へのNの導入により、キ
ュリー温度が大幅に向上して熱安定性が改良されたこと
が報告されている(Paper No.S1.3 at the Sixth Inter
national Symposium on Magnetic Anisotropy and Coer
civity in Rare Earth-Transition Metal Alloys,Pitts
burgh,PA,October25,1990.(Proceedings Book:Carnegie
Mellon University,Mellon Institute,Pittsburgh,PA
15213,USA) )。
【0004】また例えば、EP 0 369 097 A1 には、希土
類金属、鉄、窒素および水素を含む磁性材料が開示され
ている。この磁性材料は、合金インゴットを80〜12
0μm 程度に粗粉砕し、さらにアンモニアガス中あるい
はこれと水素ガス等との混合ガス中で熱処理することに
より窒化および水素化されて製造される。
【0005】これらのように希土類金属および鉄に加え
窒素を含む磁性材料は、一般に、希土類金属−鉄からな
る合金を、窒素ガス流中、高圧窒素ガス中または高圧ア
ンモニアガス中、あるいはこれらの混合雰囲気中で熱処
理することにより製造される。このような熱処理では、
ガスを固相中に侵入させなければならないため、反応面
積を広くする必要がある。このため、上記EP 0 369 097
A1 に示されるように、合金インゴットを数μm から1
00μm 程度の粒径に粗粉砕した後に窒化させることが
必要であった。
【0006】上記報告のボンディッド磁石に用いられて
いる磁石粒子は、ほぼ単結晶粒子となる程度の粒径を有
するものであり、その保磁力発生機構はニュークリエー
ションタイプである。このため、磁気特性が粒子の表面
状態の影響を受け易い。すなわち、粉砕時の機械的衝撃
や粒子の酸化等により磁石粒子表面には欠陥が生じ、こ
の欠陥により磁壁が発生するが、ニュークリエーション
タイプの磁石では結晶粒内に磁壁のピンニングサイトが
ないため容易に磁壁移動が起こるので、保磁力が劣化し
易い。このため、上記提案に示される磁石は高い磁気特
性が得られにくい。また、加熱により磁石粒子表面が酸
化すると保磁力が著しく劣化するため、キュリー温度が
高いにもかかわらず、実際に使用する際には加熱に対す
る安定性が低い。しかも、粒子表面状態の悪化による磁
気特性劣化は不可逆的であるため、高温下で使用された
場合、回復不能なダメージを受ける恐れがある。
【0007】なお、上記報告に示されるボンディッド磁
石は、Znをバインダとして用いたメタルボンディッド
磁石である。メタルボンディッド磁石の磁石粒子は、成
形時に高温の溶融金属と接することにより表面が溶融す
るため、粒子表面が平滑化されて磁壁の発生が抑えられ
ると考えられ、このため上記報告ではメタルボンディッ
ド磁石を用いていると推察されるが、メタルボンディッ
ド磁石は樹脂ボンディッド磁石に比べ成形性に劣り、比
重が大きいため適用分野が狭い。また、バインダとして
メタルを用いた場合でも、ボンディッド磁石とした後に
生じた磁石粒子表面の欠陥、例えば酸化による表面状態
悪化は防止することができず、磁気特性劣化は抑えるこ
とができない。
【0008】一方、バインダとして樹脂を用いる樹脂結
合型ボンディッド磁石は、成形性に優れ、また、比重が
小さいため、各種用途に汎用されている。しかし、樹脂
結合型ボンディッド磁石では、成形時の温度が低いため
磁石粒子表面の平滑化を行なうことができず、粒子の表
面欠陥による保磁力の低下が避けられない。
【0009】ニュークリエーションタイプの磁石には、
上記したように磁石表面状態の影響を受け易い問題があ
るが、急冷法により作製されたNd−Fe−B磁石のよ
うに極めて微細な結晶粒をもつピンニングタイプの磁石
では、磁石粒子表面で発生した磁壁が結晶粒表面でピン
ニングされて移動が阻止されるため、磁石粒子の表面欠
陥の影響を受けない。そこで、Sm2 Fe17系合金を急
冷法により作製し、これを窒化させれば、磁石粒子の表
面欠陥の影響を受けず、しかも窒素添加により、飽和磁
化、キュリー温度、異方性エネルギーなどが改良された
磁石が得られると考えられる。
【0010】しかし、急冷法により作製されたSm2
17系合金は、組織が極めて緻密であり、合金中に空孔
が少なく密度が高い。このため、窒素ガス流中や高圧ア
ンモニアガス中で熱処理しても、十分に窒化することは
不可能である。
【0011】ところで、Journal of Magnetism and Mag
netic Materials 61(1986)24-28 には、Nd2 (Fe,
Si)17化合物が開示されている。この化合物では、S
i添加によりキュリー温度Tc が上昇している。また、
Journal of Magnetism and Magnetic Materials 88(199
0)1-6 には、RFe17x (R=Sm,Tm)化合物が
開示されている。この化合物では、C添加により結晶磁
気異方性が向上し、キュリー温度も上昇している。
【0012】しかし、これらの化合物のキュリー温度は
高々300℃程度であり、熱安定性が十分とはいえな
い。また、結晶磁気異方性は向上しているが、実際の保
磁力は測定されていない。そして、これらの化合物は鋳
造法などで作製されているため、粒子化した場合に上記
したような粒子表面状態の影響を受け、保磁力が劣化す
ることは免れない。
【0013】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような事
情からなされたものであり、磁気特性および熱安定性が
高く、しかも酸化や粉砕による磁気特性劣化が防止され
た磁石材料およびその製造方法と、この磁石材料を用い
たボンディッド磁石とを提供することを目的とする。
【0014】
【課題を解決するための手段】このような目的は、下記
(1)〜(8)の本発明により達成される。
【0015】(1) Smを5〜15原子%と、Nを
0.5〜25原子%含有し、残部がFe、またはFeお
よびCoであり、前記残部中におけるFeの含有率が2
0原子%以上であって、急冷法を用いて作製され、ピン
ニングタイプの保磁力発生機構を有し、平均粒子径が2
0μm 以上であり、結晶粒の平均粒子径が0.15〜
0.35μm であり、水素が実質的に含有されていない
磁石材料。
【0016】(2) 前記Nの一部に換えてCおよび/
またはSiを含有し、かつNの含有率が0.5原子%以
上である上記(1)に記載の磁石材料。
【0017】(3) R(Rは希土類金属元素の1種以
上であり、Smを必須として含む。)およびT(TはF
e、またはFeおよびCoである)を含有する溶湯状合
金を急冷した後、水素ガス雰囲気中で水素吸蔵熱処理を
施して水素を吸蔵させ、次いで、窒素ガス雰囲気中で窒
化熱処理を施して窒化する工程を有することを特徴とす
る磁石材料の製造方法。
【0018】(4) 前記溶湯状合金がCおよび/また
はSiを含有する上記(3)に記載の磁石材料の製造方
法。
【0019】(5) 前記水素吸蔵熱処理における保持
温度が350℃以下である上記(3)または(4)に記
載の磁石材料の製造方法。
【0020】(6) 前記窒化熱処理における保持温度
が、350〜650℃であってかつ前記水素吸蔵熱処理
における保持温度よりも高いものである上記(3)ない
し(5)のいずれかに記載の磁石材料の製造方法。
【0021】(7) 上記(1)または(2)に記載の
磁石材料の製造に用いられる上記(3)ないし(6)の
いずれかに記載の磁石材料の製造方法。
【0022】(8) 上記(1)または(2)に記載の
磁石材料の粉末とバインダとを含有することを特徴とす
るボンディッド磁石。
【0023】
【作用】本発明の磁石材料は、溶湯状合金の急冷により
作製されたSm−(Fe,Co)系合金またはSm−
(Fe,Co)−(C,Si)系合金に、窒素(N)を
含有させたものである。
【0024】この磁石材料は、Nを含有するためキュリ
ー温度が高く、熱安定性に優れる。また、Nを含有する
ことにより高い飽和磁化が得られ、異方性エネルギーも
向上して高い保磁力が得られる。磁気特性の向上は、N
の添加により侵入型の固溶体が形成され、Fe原子同士
や、Fe原子と希土類金属原子との距離が最適化される
ためであると考えられる。
【0025】そして、本発明の磁石材料は、急冷合金を
窒化させることにより製造されるので、平均結晶粒径が
1μm 程度以下と極めて小さく、ほぼ単磁区に近い粒径
となっている。従って、焼結法により製造される従来の
Sm−(Fe,Co)−N系磁石の単結晶磁石粒子と同
程度の粒子径にまで粉砕しても、磁石粒子内には多数の
結晶粒が含まれる。このため、磁石粒子内で磁壁がピン
ニングされることになり、磁石粒子の表面欠陥による逆
磁区発生の影響は磁石粒子表面付近に留まる。
【0026】このような作用により、粉砕時に生じた表
面欠陥による磁気特性劣化が抑えられ、樹脂結合型ボン
ディッド磁石に適用した場合でも高い保磁力が得られ
る。また、高温環境で使用されたときの粒子表面の酸化
による磁気特性劣化を抑えることができるため、N添加
によるキュリー温度の向上を有効に利用することができ
る。
【0027】さらに、保磁力発生は微細結晶粒が担うた
め、磁石粒子の径を大きくしても磁気特性が劣化するこ
とが少ない。このため、より高い耐酸化性を得ることが
でき、この意味からも熱安定性が高い。
【0028】また、磁気特性および熱安定性は、Cおよ
び/またはSiの添加により一層向上する。CやSi
は、Nと同様に結晶格子間隙に固溶するため、Nと同様
な効果を有する。しかも、CやSiはガラス化元素であ
るため、Cおよび/またはSiを含有させれば、急冷の
際の冷却速度を極端に高くしなくても微細な結晶粒が安
定して得られることになり、製造が容易となる。
【0029】従来、合金インゴットに窒素を含有させる
ための熱処理に際しては、ガスを固相中に侵入させるの
で窒化する合金の表面積の割合を大きくする必要があ
り、合金インゴットを粉砕した後、窒化している。しか
し、単ロール法などの急冷法により製造された合金は組
織が緻密であるため、粉砕しても十分に窒化することは
できない。
【0030】本発明では、水素ガス雰囲気中で水素吸蔵
熱処理を施して水素を吸蔵させた後、窒素ガス雰囲気中
で窒化熱処理を施すので、急冷合金を十分に窒化するこ
とが可能である。しかも、急冷合金を粉砕することな
く、薄帯状などのまま均質に窒化することができる。こ
れは、水素吸蔵熱処理により急冷合金中に微細なガス通
路が形成され、続く窒化熱処理の際に、このガス通路を
通って窒素が急冷合金の深部まで侵入するためであると
考えられる。
【0031】なお、上記したEP 0 369 097 A1 には、水
素吸蔵および脱水素を繰り返すことにより磁石材料を粗
粉砕する旨が記載されているが、この磁石材料は急冷法
により製造されたものではなく、また、粒径は例えば4
μm と記載されているように極めて小さいものであるの
で、前記記載は本発明の作用効果を示唆するものではな
い。
【0032】
【具体的構成】以下、本発明の具体的構成を詳細に説明
する。
【0033】本発明の磁石材料は、Smを5〜15原子
%、好ましくは7〜14原子%、Nを0.5〜25原子
%、好ましくは5〜20原子%含有し、残部が実質的に
Fe、またはFeおよびCoであり、前記残部中におけ
るFeの含有率が20原子%以上、好ましくは30原子
%以上である。
【0034】また、本発明では、Nの一部に換えてCお
よび/またはSiを含有する構成としてもよい。この場
合、Nの含有率は0.5原子%以上であり、N、Cおよ
びSiの合計含有率は25原子%以下である。
【0035】Smの含有率が前記範囲未満であると保磁
力 iHc が低下し、前記範囲を超えると残留磁束密度B
r が低下してしまう。なお、本発明では、Smの一部を
Y、La、Ce、Pr、Nd、Eu、Gd、Tb、D
y、Ho、Er、Tm、Yb、Lu等の他の希土類金属
元素の1種以上で置換してもよい。置換量が多すぎると
結晶磁気異方性が低下するため、これらの元素の置換量
は、Smの70%以下とすることが好ましい。
【0036】Nの含有率が前記範囲未満となると、キュ
リー温度の上昇と飽和磁化の向上が不十分であり、N、
CおよびSiの合計含有率が前記範囲を超えるとBr が
低下する。
【0037】Nの一部に換えて含有されるCおよび/ま
たはSiは、飽和磁化、保磁力およびキュリー温度向上
効果を示す。また、ガラス化元素としてはたらくため、
これらを含有することにより、微細な結晶粒を形成する
ための冷却条件設定が容易となる。CおよびSiの合計
含有率の下限は特にないが、合計含有率が0.25原子
%以上であれば、前記した効果は十分に発揮される。
【0038】上記各元素を除いた残部がFeであるか、
あるいはFeおよびCoであるが、残部中のFeの含有
率が前記範囲未満となるとBr が低下する。なお、前記
残部中のFe含有率の上限は特にないが、80原子%を
超えるとBr が低下する傾向にある。
【0039】なお、本発明の磁石材料中には、Mn、N
i、Zn等の上記以外の元素が含有されていてもよい。
これらの元素の含有率は3重量%以下とすることが好ま
しい。また、B、O、P、S等の元素が含有されていて
もよいが、これらの元素の含有率は2重量%以下とする
ことが好ましい。
【0040】本発明の磁石材料は、R217系の結晶粒
と結晶粒界とからなる組織構造を有する。結晶粒の平均
径は1μm 以下であり、通常、0.5μm 以下、好まし
くは0.015〜0.35μm 、特に好ましくは0.0
2〜0.1μm である。また、十分な磁気特性を得るた
めには、結晶粒の平均径が0.005μm 以上であるこ
とが好ましい。結晶粒径は、透過型電子顕微鏡等により
確認することができる。
【0041】また、本発明の磁石材料では、2kOe 以
上、特に4〜20kOe の保磁力、8kG以上、特に10〜
15kGの飽和磁化が得られ、キュリー温度は430〜4
70℃程度である。
【0042】以下、本発明の磁石材料の製造に好適な方
法を説明する。
【0043】本発明の製造方法では、急冷合金に水素ガ
ス雰囲気中で水素吸蔵熱処理を施して水素を吸蔵させ、
次いで、窒素ガス雰囲気中で窒化熱処理を施して窒化す
る。
【0044】本発明では、液体急冷法により急冷合金を
製造する。すなわち、R(Rは希土類金属元素の1種以
上であり、Smを必須として含む。)およびT(TはF
e、またはFeおよびCoである)を含有する溶湯状合
金を、105 ℃/秒程度以上の速度で急速に冷却するこ
とにより急冷合金とする。なお、Cおよび/またはSi
を含有する磁石材料を製造する場合、これらの元素を含
有する溶湯状合金を用いる。
【0045】用いる液体急冷法は特に限定されず、単ロ
ール法、双ロール法、アトマイズ法等の各種方法から適
宜選択すればよいが、量産性が高く、急冷条件の再現性
が良好であることから、通常、単ロール法を用いること
が好ましい。
【0046】急冷条件は特に限定されず、合金の組成な
どに応じて適宜設定すればよいが、通常、ロール周速は
10〜40m/s 程度である。
【0047】単ロール法などにより得られる急冷合金
は、通常、薄帯状である。薄帯の厚さは特に限定されな
いが、通常、20〜200μm であることが好ましい。
厚さが前記範囲未満の薄帯は作製することが困難であ
り、厚さが前記範囲を超える薄帯では、十分な冷却速度
を得ることが困難である。
【0048】急冷後の合金には、通常、上記したような
結晶粒が存在するが、急冷条件によってはアモルファス
状態あるいはこれに近い状態となっていることがあり、
特にCやSiを含有する合金では、冷却速度が比較的低
くてもアモルファス化し易い。この場合、急冷後に合金
を熱処理して再結晶させる。再結晶のための熱処理条件
は特に限定されず、上記したような結晶粒が出現するよ
うに適宜設定すればよいが、通常、350〜750℃に
て0.05〜1時間程度とする。なお、熱処理は、不活
性ガス雰囲気等の非酸化性雰囲気、還元性雰囲気、真空
中等で行なうことが好ましい。
【0049】次いで、急冷合金に水素吸蔵熱処理を施
す。水素吸蔵熱処理では、水素ガス雰囲気中で熱処理す
ることにより急冷合金に水素を吸蔵させる。この際の熱
処理温度は350℃以下、特に100〜300℃とする
ことが好ましく、温度保持時間は0.5〜24時間、特
に1〜10時間とすることが好ましい。また、水素ガス
の圧力は、0.1〜10気圧、特に0.5〜2気圧とす
ることが好ましい。
【0050】水素吸蔵の際の雰囲気は、水素ガスだけに
限らず、水素ガスと不活性ガスとの混合雰囲気であって
もよい。この場合の不活性ガスとしては、例えばHeま
たはAr、あるいはこれらの混合ガスが好ましい。
【0051】水素吸蔵熱処理は、2回以上行なわないこ
とが好ましい。水素吸蔵熱処理が1回だけであれば、合
金は殆ど微粉化せずに薄帯状に保たれる。なお、薄帯状
合金を粉砕してから水素吸蔵熱処理を施してもよい。
【0052】水素吸蔵熱処理後、急冷合金に窒化熱処理
を施して本発明の磁石材料とする。窒化熱処理では、窒
素ガス雰囲気中で熱処理することにより、磁石材料を窒
化する。窒化熱処理の際の保持温度は350〜650
℃、特に400〜550℃とすることが好ましい。ただ
し、この際の温度は水素吸蔵熱処理の温度よりも高いこ
とが好ましい。また、温度保持時間は、0.5〜200
時間、特に2〜100時間程度とすることが好ましく、
窒素ガスの圧力は0.1気圧程度以上とすることが好ま
しい。磁石材料中のN量は、ガス分析法により測定する
ことができる。
【0053】なお、生産性を高くするために、水素吸蔵
熱処理後、急冷合金から水素を放出させずに続いて窒化
熱処理を施すことが好ましい。この場合、急冷合金中の
水素は窒化熱処理の際の加熱により放出され、窒化後の
磁石材料中に水素は実質的に含まれない。
【0054】ただし、水素吸蔵熱処理後、急冷合金から
水素を放出させ、次いで窒化熱処理を施してもよい。こ
の場合、水素を吸蔵している急冷合金に減圧雰囲気中で
熱処理を施すことにより水素を放出させることができ
る。この場合の熱処理温度は200〜400℃とするこ
とが好ましく、温度保持時間は0.5〜2時間とするこ
とが好ましい。また、圧力は1×10-2Torr以下、特に
1×10-3Torr以下とすることが好ましく、Arガス雰
囲気中で熱処理することが好ましい。
【0055】本発明の磁石材料の形状に特に制限はな
く、薄帯状や粒状等のいずれであってもよいが、ボンデ
ィッド磁石等の磁石製品に適用される場合には、所定の
粒径にまで粉砕されて磁石粒子とされる。
【0056】ボンディッド磁石に適用する場合、磁石粒
子の平均粒子径は、通常、2μm 以上とすることが好ま
しいが、十分な耐酸化性を得るためには、平均粒子径を
好ましくは20μm 以上、より好ましくは30μm 超、
さらに好ましくは35μm 以上とすることがよい。ま
た、この程度の粒子径とすることにより、高密度のボン
ディッド磁石とすることができる。平均粒子径の上限は
特にないが、通常、1000μm 程度以下であり、好ま
しくは200μm 以下である。なお、この場合の平均粒
子径とは、篩別により求められた重量平均粒子径D50
意味する。重量平均粒子径D50は、径の小さな粒子から
重量を加算していって、その合計重量が全粒子の合計重
量の50%となったときの粒子径である。
【0057】ボンディッド磁石は、磁石粒子をバインダ
で結合して作製される。本発明の磁石材料は、プレス成
形を用いるコンプレッションボンディッド磁石、あるい
は射出成形を用いるインジェクションボンディッド磁石
のいずれにも適用することができる。バインダとして
は、各種樹脂、各種金属等のいずれであってもよい。樹
脂バインダの種類は特に限定されず、エポキシ樹脂やナ
イロン等の各種熱硬化性樹脂や各種熱可塑性樹脂から目
的に応じて適宜選択すればよい。金属バインダの種類も
特に限定されないが、亜鉛を用いることが好ましい。ま
た、磁石粒子に対するバインダの含有比率や成形時の圧
力等の各種条件にも特に制限はなく、通常の範囲から適
当に選択すればよい。
【0058】
【実施例】以下、本発明の具体的実施例を示し、本発明
をさらに詳細に説明する。
【0059】下記表1に示される磁石材料サンプルを作
製した。まず、原料合金のインゴットをアーク溶解によ
り作製し、インゴットを石英ノズルに入れて高周波誘導
加熱により溶解して溶湯状とし、単ロール法により急冷
して、厚さ80μm 、幅5mmの薄帯状急冷合金とした。
なお、冷却ロールの周速度は20〜32m/s の範囲から
選択した。また、サンプルNo. 5〜10の製造に際して
は、一部もしくは全体がアモルファス状態の急冷合金が
得られたため、急冷後にArガス雰囲気中で450〜6
00℃にて0.1〜1時間の熱処理を施し、再結晶させ
た。
【0060】次いで、急冷合金に水素吸蔵熱処理を施し
た。水素吸蔵熱処理は、1気圧の水素ガス雰囲気の真空
槽中で1時間行なった。処理時の保持温度を表1に示
す。
【0061】水素吸蔵熱処理後、降温せずに真空槽内を
1気圧の窒素ガス雰囲気に換え、表1に示す温度で5時
間加熱することにより窒化熱処理を施し、磁石材料サン
プルを得た。
【0062】なお、比較のために、水素吸蔵熱処理を施
さずに窒化熱処理だけを施したサンプルも作製した。
【0063】これらのサンプルの組織構造を透過型電子
顕微鏡により観察した結果、平均結晶粒径は0.015
〜0.35μm であった。また、X線回折の結果、これ
らのサンプルがR217型の結晶構造を有していること
が確認された。
【0064】次に、これらのサンプルをピンミルにより
粉砕し、平均粒径180μm の磁石粒子とした。
【0065】このようにして得られた各磁石粒子に対
し、組成、保磁力 iHc 、飽和磁化4πIs およびキュ
リー温度Tc の測定を行なった。
【0066】また、各磁石材料サンプルを、85℃、8
5%RHの空気中に500時間放置した後、保磁力 iH
c を測定した。これを保存後の iHc として表1に示
す。
【0067】
【表1】
【0068】表1に示される結果から、本発明の効果が
明らかである。すなわち、水素吸蔵熱処理後に窒化熱処
理を施したサンプルでは、十分に窒化されており、磁気
特性が良好でキュリー温度も高い。また、ピンニングタ
イプであるため、高温保存後の不可逆的な iHc 低下が
極めて少ない。
【0069】一方、水素吸蔵熱処理を施さずに窒化熱処
理した場合、窒化が不十分であり、磁気特性が低くキュ
リー温度も低い。なお、水素吸蔵熱処理を施さずに窒化
熱処理した薄帯状サンプルを切断し、断面の組成をオー
ジェ分析により測定したところ、サンプル中央付近の窒
素含有率は0.5%未満であった。また、表1に示され
るように、これらのサンプルでは、キュリー温度測定の
際の顕著な磁化減少が130℃付近および450℃付近
の2点で観察された。130℃付近の磁化減少は、窒化
されていない領域の存在を示すものである。
【0070】なお、表1に示される各サンプルの組成に
おいて、Feの一部をCoで置換した場合、Tc の上
昇、4πIs およびBr の向上ならびに iHc の僅かな
低下が認められた。
【0071】また、上記各磁石粒子をそれぞれエポキシ
樹脂と混合した後、プレス成形し、さらに硬化のための
熱処理を施してコンプレッションボンディッド磁石とし
た。エポキシ樹脂は磁石粒子100重量部に対し2重量
部とした。プレス成形の圧力保持時間は10秒間とし、
印加圧力は8000kgf/cm2 とした。また、樹脂硬化の
ための熱処理は、150℃にて1時間行なった。
【0072】これらのボンディッド磁石では、用いた磁
石粒子に応じた磁気特性が得られた。
【0073】
【発明の効果】本発明では、急冷合金にまず水素を吸蔵
させ、その後に窒化するので、緻密な組織をもつ急冷合
金を十分に窒化することができる。
【0074】窒素含有によりキュリー温度が向上して優
れた熱安定性が得られ、また、高い飽和磁化が得られ
る。特に、Cおよび/またはSiを含有する急冷合金で
は、キュリー温度および磁気特性がさらに向上し、ま
た、結晶粒径の制御が容易なので、高性能な磁石材料が
容易に得られる。
【0075】そして、急冷合金はピンニングタイプの保
磁力発生機構を有するので、粉砕時に生じた表面欠陥に
よる磁気特性劣化が抑えられる。このため、磁石粒子の
表面欠陥を改善することができない樹脂結合型ボンディ
ッド磁石に適用した場合でも、高い保磁力が得られる。
また、高温環境で使用されたときの粒子表面の酸化によ
る磁気特性劣化を抑えることができるため、窒素添加に
よるキュリー温度の向上を有効に利用することができ
る。さらに、ボンディッド磁石などに適用するために粉
砕する際に、高い耐酸化性を得るために磁石粒子の径を
大きくしても保磁力が低下しない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI H01F 7/02 H01F 1/06 A 1/04 A (72)発明者 米山 哲人 東京都中央区日本橋一丁目13番1号 テ ィーディーケイ株式会社内 (56)参考文献 特開 平2−257603(JP,A) 特開 昭60−204862(JP,A) 特開 昭60−131949(JP,A)

Claims (8)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 Smを5〜15原子%と、Nを0.5〜
    25原子%含有し、残部がFe、またはFeおよびCo
    であり、前記残部中におけるFeの含有率が20原子%
    以上であって、急冷法を用いて作製され、ピンニングタ
    イプの保磁力発生機構を有し、平均粒子径が20μm 以
    上であり、結晶粒の平均粒子径が0.15〜0.35μ
    m であり、水素が実質的に含有されていない磁石材料。
  2. 【請求項2】 前記Nの一部に換えてCおよび/または
    Siを含有し、かつNの含有率が0.5原子%以上であ
    る請求項1に記載の磁石材料。
  3. 【請求項3】 R(Rは希土類金属元素の1種以上であ
    り、Smを必須として含む。)およびT(TはFe、ま
    たはFeおよびCoである)を含有する溶湯状合金を急
    冷した後、水素ガス雰囲気中で水素吸蔵熱処理を施して
    水素を吸蔵させ、次いで、窒素ガス雰囲気中で窒化熱処
    理を施して窒化する工程を有することを特徴とする磁石
    材料の製造方法。
  4. 【請求項4】 前記溶湯状合金がCおよび/またはSi
    を含有する請求項3に記載の磁石材料の製造方法。
  5. 【請求項5】 前記水素吸蔵熱処理における保持温度が
    350℃以下である請求項3または4に記載の磁石材料
    の製造方法。
  6. 【請求項6】 前記窒化熱処理における保持温度が、3
    50〜650℃であってかつ前記水素吸蔵熱処理におけ
    る保持温度よりも高いものである請求項3ないし5のい
    ずれかに記載の磁石材料の製造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1または2に記載の磁石材料の製
    造に用いられる請求項3ないし6のいずれかに記載の磁
    石材料の製造方法。
  8. 【請求項8】 請求項1または2に記載の磁石材料の粉
    末とバインダとを含有することを特徴とするボンディッ
    ド磁石。
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