JP3354670B2 - 生体反応検査方法 - Google Patents

生体反応検査方法

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JP3354670B2
JP3354670B2 JP30389793A JP30389793A JP3354670B2 JP 3354670 B2 JP3354670 B2 JP 3354670B2 JP 30389793 A JP30389793 A JP 30389793A JP 30389793 A JP30389793 A JP 30389793A JP 3354670 B2 JP3354670 B2 JP 3354670B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、材料と血液等とを接触
させることにより、腫瘍壊死因子(TNF:Tumor Necr
osis Factor )の産生を誘導し、該TNFの産生能力を
測定することにより、免疫や炎症等に関する生体反応を
検査する方法に関する。
【0002】
【従来の技術】周知のごとく、生体の免疫監視機構を担
う免疫細胞としては、単球、マクロファージ、顆粒球ま
たはリンパ球等の白血球やキラー細胞、NK細胞または
LAK細胞等が重要な役割を果たしている。これらの細
胞は血液中や各臓器、器官において免疫監視を行うとと
もに、各種の免疫反応においてさまざまな役割を担って
活動している。
【0003】一般に各種の疾患や悪性腫瘍においては多
様な免疫反応によってこれらの細胞の機能が抑制された
り、または増強されることが知られている。そこでこれ
らの細胞の機能を調べることで生体の免疫機能を把握す
ることができる。例えば、各種疾患に関する免疫学的検
査では、免疫担当細胞に関する検査としてリンパ球の機
能を調べるためのリンパ球幼若化試験等や好中球貧食機
能試験、好中球殺菌能(活性酸素産生能)試験等が行わ
れている。
【0004】また一方、これらの免疫細胞から分泌され
る各種免疫因子等も生体の免疫系で重要な役割を担って
いる。特に、近年の遺伝子工学技術の発達等により、組
変えDNA技術を用いて、多くの体液性免疫因子(サイ
トカイン等)の遺伝子の構造が解明されている。これま
でに、インターロイキン、インターフェロン、TNF等
のサイトカイン類等種々のものが報告され、生体内でこ
れらの因子が密接に関わり合って、生体の免疫機能に非
常に大きく関与していることがわかってきた。現在で
は、これらのサイトカイン等の動態を知ることが生体の
免疫系を考える上ではたいへん重要なことと考えられて
いる。
【0005】従って、生体の各種の疾患や悪性腫瘍に対
する免疫学的機能を把握するために、患者の血液中のこ
れらのサイトカインの挙動を調べることが最近行われる
ようになってきた。しかしながら、これらサイトカイン
は非常に微量で生体内で作用しているために、生体内の
挙動を把握することは非常に難しい。また、これらサイ
トカインの血中濃度を測定することも重要であるが、さ
らに一歩踏み込んで血液のこれらの因子の産生能力また
は反応性を知ることも重要である。
【0006】生体の免疫機能を調べる方法として、生体
内におけるサイトカインの挙動を把握するほかに、患者
由来の免疫担当細胞自身の機能が調べられている。例え
ば、患者の白血球が持つインターフェロン−γ産生能や
インターロイキン2産生能等が免疫学的検査として調べ
られている。このように細胞自身が持つサイトカイン産
生能力を調べることで、生体反応を把握することもでき
る。
【0007】TNFは腫瘍に壊死をもたらすサイトカイ
ンである。当初は腫瘍細胞を障害する因子として注目さ
れたが、現在では、正常細胞においても炎症や代謝異常
に係わる多彩な作用を示すことが知られている。このよ
うに、TNFは全身のさまざまな組織や細胞で非常に多
彩な作用を示し、感染症や炎症性疾患に見られる生体の
さまざまな反応に関与していることがわかってきた。
【0008】従って、患者の血液や髄液中のTNF濃度
を測定することは、さまざまな病態におけるTNFの役
割を理解するうえでたいへん重要となってきている。例
えば、TNFは、関節リウマチ、川崎病、ベーチェット
病を含む多くの炎症性疾患や髄膜炎、マラリア等の感染
症等の病体に重要な役割を持つとされている(和田英
夫、斎藤令子、長尾美昌ら:播種性血管内凝固症候群に
おける血中 Tumor necrosis factor値並びにFOY 投与に
よる治療効果、現代医療、22:265−269,19
90、川上正:TNFの生理活性、Medical Immunolog
y.19:681−686,1990)。
【0009】このように、TNFは非常に広範な患者の
病因とかかわることが推測されているにもかかわらず、
実際の患者においてTNFの産生と疾患との関係が証明
されているものはあまり多くない。TNFの作用が非常
に強力で、pg/mlの濃度で作用するため、生体で機
能の異常を起こし得る産生量の変化を現在の測定系では
正確に検出できていないという可能性もある。
【0010】そこで、最近では末梢血単球等を採取し、
試験管内でそのTNF産生能を検討し、患者とTNF産
生能との関係を明らかにしようという研究が多く行われ
ている(小野日出麿、菊地秀、中村志ら:癌患者におけ
る tumor necrosis factor産生能の検討、医学のあゆ
み、150:165−166,1989、川上正、中島
敏治、松田隆秀:厚生省特定疾患ベーチェット病調査研
究班平成元年度業績:1990)。
【0011】しかし、血液中からの単球等の採取、調製
には無菌処理を含む繁雑な操作が必要であり、操作時の
手技が細胞に与える影響も大きい。また、リポポリサッ
カライド(LPS)や各種レクチン等の薬物等を刺激剤
に用いた場合、これらのTNF産生能力は特定の刺激剤
によるそのレセプター等の反応性によって大きな影響を
受ける。すなわち、ある個人のTNF産生能力よりも、
ある薬剤への細胞レセプターの感受性等が大きく影響す
ると考えられ、正確に細胞のTNF産生能力を把握する
ことは難しい。しかも、これらの多くではprime された
単球やマクロファージによってTNF産生能が検討され
ているため、正確な生体内での反応とは異なる条件での
産生を見ていることになる。また、これらの検査はいず
れも血液中に含まれる種々の液性因子や他の細胞が存在
していない系で行われており、正確に体内の生体反応を
反映しているとは言えない。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、従来
のLPSやレクチン等の刺激剤によるTNF産生能では
なく、全血等を用いてより簡略化された測定系にてTN
F産生能力を測定し得る新しい生体反応検査方法を提供
することにある。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、中心線平均粗
さRaが0.2μmから20μmであり、でこぼこ平均
間隔Sm値が200μm以下である表面粗さをもつ材料
と血液とを接触させることにより、腫瘍壊死因子(TN
F:Tumor Necrosis Factor)の産生を誘導させ、該T
NFの産生量を測定することを特徴とする生体反応検査
方法である。
【0014】本発明においては、上記の通り血液試料が
用いられるが、この血液試料としては全血、全血の希釈
液または血液細胞等を用いることができ、全血等をその
まま利用する場合には、該血液より末梢単球や好中球等
を分離する必要がなく、それに伴われる操作や処理時間
が不要であることは勿論のこと、それらの操作、処理時
間等による細胞機能の活性低下または不要な活性化が惹
起される問題もない。さらに、本発明では用いられる血
液等の量も非常に少なくてすみ、被採血者の負担も非常
に軽減される。また、全血またはその希釈血液を用いる
ため、血液中に含まれる様々な液性因子や細胞の関与が
生体内と同様に働き、より正確に生体内の防御機能を把
握することができる。
【0015】以下、本発明について詳述する。本発明方
法の実施形態の一例においては、サンプルとして血液を
採取し、この血液を全血のまま、または希釈してプレー
トウェルや試験管等に加える。これらのプレートウェル
や試験管内壁の底面または側面には、細胞からのTNF
産生を誘導するために上記特定の範囲の表面粗さが付与
されているか、あるいは該表面粗さをもつ材料が充填さ
れている。これらの容器を用いて血液を培養することに
より、上記表面粗さが付与された材料と血液とが作用し
て、TNFの産生が誘起される。このTNF産生量を測
定することにより免疫や炎症等に関する生体反応を把握
することができる。
【0016】上記において血液サンプルの採取は常法に
従い、任意の方法で実施できる。例えば、ヘパリン採
血、クエン酸採血等が挙げられる。また、希釈する場合
は、例えばリン酸緩衝液、ハンクス液、MEM、RPM
I−1640等の通常の培地をいずれも利用できる。培
養は、通常37℃付近の温度条件下で行われるが、15
℃から42℃の範囲でも行える。この培養時にプレート
や試験管を振盪器や回転培養器を用いて混和することが
TNFの産生誘導には好ましく、個々の血液サンプルの
産生能力を把握しやすくなる。
【0017】培養後のTNF産生量の測定は各種の免疫
測定法、代表的には免疫酵素抗体法等で行い得る。ま
た、このTNF産生誘導方法はLPSやレクチン等を用
いないため、細胞障害性試験によってTNF活性を評価
する場合には、各種細胞へのそれら刺激剤の影響もな
く、正確な細胞障害性を測定できる。そこで、各種細胞
障害性試験を用いてもTNFの産生を正確に測定でき
る。
【0018】次に血液等と接触する材料に付与する表面
粗さについて述べる。血液中の白血球等の細胞は異物を
貧食することで粘着性の細胞であることが知られてい
る。生体内では、侵入した細菌等を貧食することで生体
防御が行われているが、ラテックスのような高分子から
成る微粒子をも白血球は貧食する。また、生体中に高分
子材料を埋め込んだり、血液と高分子材料を接触させた
りすると白血球や血小板の粘着が起こる。これらの貧
食、粘着作用の際には、細胞内酵素の放出や活性化酸素
の遊離等の様々な反応が起こる。これらの反応は、貧食
や粘着される高分子材料の表面性状や組成等の性質によ
っても左右される。
【0019】これまで、細胞の貧食や粘着について、材
料の粒子径、繊維径及び組成については調べられている
が、材料表面の形状についてはよく分かっていなかっ
た。そこで、我々は高分子材料の表面の形状と細胞との
相互作用について調べてきた。その結果、材料表面の粗
さまたは凹凸が、TNFの産生を惹起することを見いだ
し、材料表面の形状を制御することによりTNFの産生
を高効率で誘導しようと研究を行ってきた。そして、T
NFの産生を誘導するためには、中心線平均粗さRa値
が0.2μm〜20μm、好ましくは、0.2〜10μ
mであかつでこぼこ平均間隔Sm値が200μm以
下である凹凸を表面に有することが必要なことを見いだ
した。
【0020】また、我々は同じ条件下での誘導であって
も、個々人によってTNF産生量がさまざまであること
を見いだし、この作用は個々人の潜在的な生体反応性を
あらかじめ把握するのに極めて有用であるとの認識に至
り、本発明に到達した。外来性の微生物や菌あるいは癌
等が生体(宿主)にとって一種の異物であると考えら
れ、これらの材料も生体にとって異物であるので、この
異物に対する反応を用いたTNF産生は生体の防御能を
よく反映するものと考えられる。
【0021】また、TNFは免疫や炎症反応においても
重要な役割を担っていることが最近明らかになってき
た。健常人の血液を用いてTNF産生能力を測定するこ
とは、その個人の免疫性や炎症性に対する潜在的な生体
反応性を把握するための指標となり、また、さまざまな
患者においては、免疫性や炎症性の疾患に対する進捗マ
ーカーとしても用いられる。
【0022】上記Ra値とは、JIS B0601−1
982における中心線平均粗さである。また、上記でこ
ぼこ平均間隔Sm値は以下のようにして定義される値で
ある。
【0023】でこぼこ平均間隔Sm値 現在のJIS規格では、表面粗さの高さ方向の情報につ
いては規定されているが、面方向の情報に関しては規定
されていない。しかしながら、本発明における凹凸は、
好ましくは、凹凸の面方向における間隔によっても後述
の実施例から明らかなように限界付けられるものであ
る。そこで、本発明では、でこぼこ平均間隔Sm値を用
いることにより、凹凸の面方向の範囲を規定した。
【0024】上記でこぼこの平均間隔Sm値は、以下の
ようにして求められる。まず、図1に示す粗さ曲線Aの
中心線Bに対して、それぞれ、一定の高さ及び深さの位
置に上側カウントレベル及び下側カウントレベルを引
く。次に、下側のカウントレベルと粗さ曲線Aとが交差
する2点間において、上側カウントレベルと粗さ曲線と
が交差する点が一回以上存在するときに、一つの山とし
て「山」を定義する。
【0025】そして、でこぼこ平均間隔Sm値は、図2
に示すように、基準長さLの間にある山の間隔をSmi
としたときに、下記の式で定義される値である。
【0026】
【数1】
【0027】すなわち、でこぼこ平均間隔Sm値とは、
基準長さLの間にある山同士の間隔の平均値を示す。こ
のようにして、でこぼこの平均間隔Sm値により、凹凸
の面方向の条件が定義される。
【0028】本発明者らは、Ra値の異なるさまざまな
フィルム、プレート、多孔性粒子等を用いてTNF産生
誘導試験を行った結果、中心線平均粗さRa値が0.2
μmから20μmの表面粗さを付与したフィルム、プレ
ート、多孔性粒子等の材料と血液等を接触させた時、T
NFの産生誘導が著しく高められることを見いだした。
【0029】従って、TNFの産生誘導を高めるには、
中心線平均粗さRa値が0.2μm〜20μmであるこ
とが必要である。
【0030】また、本発明者らは、前述したRa値が
0.2μm以上20μm以下であるPETフィルムを1
200メッシュのサンドペーパーで研磨時間を変えて研
磨することにより、Sm値が474、374、213、
101、56、31μmの各フィルムを作成し、後述の
フィルムによるTNF産生誘導試験を実施した結果Sm
値が200μm以下となるとTNFの産生誘導が著しく
高くなることを見いだした。
【0031】本発明に用いることのできる材料として
は、血液等と材料が接触したときに有害な金属や可塑剤
等の添加物の溶出のないものであれば、その材質を問わ
ずに利用することができる。すなわち、合成及び天然の
有機高分子材料やガラス及びアルミナ等の無機材料を用
いることができ、表面に中心線平均粗さRa値が0.2
μmから20μmの凹凸を有する材料であればその材質
は問わない。合成及び天然の有機高分子材料としては、
酢酸セルロース、ポリスチレン、ナイロン、ポリテトラ
フルオルエチレン、ポリトリフルオルエチレン、パーフ
ルオロエチレン−プロピレン共重合体、ポリエチレンテ
レフタレート、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、アクリ
ル樹脂、エチルセルロース等が例示できる。
【0032】また、表面粗さを付与する方法としては研
磨法が一般的であるが、それ以外の方法でも上記特定の
表面粗さを有するものを調製することができる。例えば
材料表面に微粒子を物理的あるいは化学的に固定する方
法や懸濁重合法によって得られる高分子多孔質材料、ゾ
ルーゲル法によって得られる表面が多孔質になったもの
も利用できる。
【0033】材料表面に微粒子を固定する方法として
は、例えば0.1μm〜20μmの微粒子をコーティン
グする方法が挙げられ、それによってTNFを産生誘導
させ得る。ここで用いる微粒子は、例えばスチレン系や
アクリル系等のビニル系モノマーの単独あるいは2成分
以上の混合物を乳化重合や懸濁重合することにより調製
することができる。これらの微粒子としては、望ましく
は、例えば、ジビニルベンゼンのような2官能基以上の
多官能性モノマーとの共重合体からなるものがよい。
【0034】次に、微粒子コーティング方法を説明す
る。まず、これらの微粒子を、コーティングのための結
合剤としての合成高分子や天然高分子を0.1〜5重量
%程度溶解させた液に懸濁させる。次に、この懸濁液に
予め成形しておいた有機もしくは無機材料からなるビー
ズ、繊維またはフィルム状の材料を浸漬し、その後乾燥
することにより、本発明のTNF産生誘導材料を作製す
ることができる。この場合のRa値の調整は微粒子の大
きさにより、またSm値の調整は懸濁粒子の濃度によっ
て行い得る。
【0035】また、多孔質材料の場合も、その形状は膜
状、繊維状またはビーズ状の何れでもよく、かつ表面の
みが多孔性であってもよく、材料全体が多孔性であって
もよい。表面多孔質材料については、例えば有機もしく
は無機材料からなるビーズ、繊維またはフィルム状の材
料に、コーティング液として合成高分子や天然高分子を
それらの良溶媒中に0.1〜5重量%程度溶解させた液
をスプレーによって霧状に吹き付けて加熱乾燥すること
によって得られる。
【0036】また、材料の全体が多孔性になっているも
のの製法としては、一般的な多孔性膜及び多孔性ビーズ
等の製法を使用することができる。例えば膜状の場合に
は、合成高分子を良溶媒に溶解させてガラス板上に流延
させて、その後、合成高分子の貧溶媒にてフィルムを洗
浄し、良溶媒を抽出することによって多孔性膜を調製す
ることができる。
【0037】多孔性材料の場合のRa値やSm値の調整
は、細孔径や細孔量を調整することによって達成され、
細孔径や細孔量は材料を溶解させる溶媒の種類や量を変
えることにより容易に調節することができる。また、懸
濁重合法で作製される粒子等では、重合体や懸濁相に溶
解しない、またはこれを溶解させない高沸点の貧溶媒の
量を変えることでも調節できる。
【0038】血液試料と、上記材料とを接触させるとき
の温度は、細胞やタンパク質への影響を考えると、15
℃〜42℃が望ましいが、15℃〜25℃の範囲よりも
25℃〜42℃の範囲の方が、よりTNFの産生誘導が
大きく、好ましい。
【0039】これらのことから、中心線平均粗さRa値
が0.2μm〜20μmであかつでこぼこ平均間隔
Sm値が200μm以下の範囲にある凹凸を表面に有す
る材料を用いて、血液等からTNFの産生誘導を行い、
免疫や炎症等に関する生体反応検査に用いることが可能
となる。
【0040】本発明において、特定の表面形状を有する
材料と血液あるいは血液細胞とが接触したときにTNF
産生が誘導されるメカニズムについては必ずしも明らか
ではないが、これらの材料が細胞と相互作用することに
よってTNFの産生誘導を行うと考えられる。TNFを
産生する細胞とは、末梢血中の細胞に限らず、リンパ
管、リンパ節、脾臓等から得られる細胞も含まれる。血
液中にはTNFを産生するこれらの細胞が多く含まれて
いる。また、血液中のこれらのTNF産生細胞が材料と
直接作用しなくとも、材料と何らかの因子が作用して、
誘導された別の因子により、TNFの産生が誘導される
ことも考えられる。
【0041】
【実施例】次に、本発明の実施例及び比較例を挙げるこ
とにより、本発明をさらに詳細に述べる。
【0042】まず、後述の実施例1〜17及び比較例1
〜13に用いた試料の作製方法及び試験方法につき説明
する。 (1)研磨フィルムの作製方法(実施例1〜9、比較例
1〜9) TNF産生誘導材料としてのフィルムを用意し、該フィ
ルムの表面をメチルアルコールで洗浄した後、ストルア
ス社(デンマーク)製、自動研磨機(商品名;プラノボ
ールペデマックス)に、220、500、1200、2
400、及び4000メッシュのサンドペーパーを取り
付けたものを用い、表面の片側に表面粗さを持つ研磨フ
ィルムを作製した。
【0043】(2)研磨フィルムによるTNF産生誘導
試験方法(実施例1〜9、比較例1〜9) フィルムを直径15mmに打ち抜き、粗さの付与された
面を上向きにして24ウェルプレート(Nunc、マル
チディッシュ、InterMed社製)のウェル底面に接着し
た。これらのウェルを注射用生理食塩水(大塚製薬社
製)で洗浄後、フィルムを接着したウェルにヘパリン採
血した健常人新鮮血2.0mlを加えて振盪器上に設置
して、37℃にて2時間振盪しながら培養した。しかる
後、血液を回収し、後述の方法で血漿中のTNFの濃度
を測定した。
【0044】(3)微粒子付着による腫瘍壊死因子産生
誘導実験(実施例10〜14及び比較例10〜12) 各微粒子を24ウェルプレート(Nund、マルチディ
ッシュ、InterMed社製)のウェル底面にそれぞれ後述の
方法で付着させた。これらウェルを注射用生理食塩水
(大塚製薬社製)で洗浄後、ウェルにヘパリン採血した
健常人新鮮血2.0mlを加えて振盪器上に設置して、
37℃にて2時間、振盪しながら培養した。しかる後、
血液を回収し、後述の方法で血漿中のTNFの濃度を測
定した。
【0045】(4)表面粗さの測定方法 各実施例及び比較例において記載されている中心線平均
粗さRa値、でこぼこ平均間隔Sm値は、表面粗さ測定
装置(小坂研究所製、装置名;サーフコーダSE−30
D)、または断差電子顕微鏡(ELIONX社製、装置名;ES
A-3000)により測定した。
【0046】(5)血漿中TNF濃度測定方法 TNF産生誘導試験後の血液を遠心分離して血漿を採取
し、血漿中のTNF−αの濃度をTNF−αモノクロー
ナル抗体を用いて、免疫酵素抗体法(R&DSystem社
製、商品名;Quantikine TNF- α)にて測定した。この
測定方法の検出限界濃度は7pg/mlであった。
【0047】また、採血直後の血液を遠心分離して血漿
を採取して、血漿中のTNF−αの濃度を同様にして測
定した。採血直後の血液の血漿中TNF−α濃度はいず
れも検出限界以下であった。
【0048】実施例1〜3及び比較例1〜3 PETフィルム(ユニチカ社製、ポリエチレンテレフタ
レートフィルム、商品名;エンブレットS−75)を用
い、上述した研磨フィルムの作製方法に従って、5段階
に研磨されたフィルムを作製した。そして、未研磨のフ
ィルム及び5段階に研磨されたフィルムのそれぞれにつ
いて、Ra値を求めた後、上述したフィルムによるTN
F産生誘導試験を行った。結果を下記の表1に示す。
【0049】
【表1】
【0050】表1から明らかなように、Ra値が0.6
1μmを超えるとTNFの産生誘導は急激に増加した。
【0051】実施例4〜6及び比較例4〜6 PETフィルムをCAフィルム(アードプラス社製、酢
酸セルロースフィルム、商品名;アセチフィルムVR−
R)に代え、さらに、メチルアルコールで洗浄する代わ
りにメチルアルコールでソックスレー抽出(24時間)
を行って可塑剤を抽出し、フィルムを取り出した後、1
5時間風乾後、さらに80℃で5時間乾燥させたこと以
外は、実施例1〜3及び比較例1〜3と同様にして未研
磨及び研磨フィルムを作製し、TNF産生誘導試験を行
った。結果を表2に示す。
【0052】
【表2】
【0053】表2から明らかなように、1200メッシ
ュ以下のサンドペーパーで研磨した研磨フィルム(Ra
値=0.58μm以上)においてTNFの産生誘導は急
激に増加した。
【0054】実施例7〜9及び比較例7〜9 500メッシュのサンドペーパーを用いて研磨したこ
と、及び研磨時間を変化させたこと以外は実施例1〜3
と同様にして、表面粗さRa値が1.0μm以上、Sm
値が20〜370μmの範囲にある5種類の研磨フィル
ムを作成した(表4参照)。上記5種類の研磨フィルム
と未研磨のPETフィルム(比較例7)とを用意し、実
施例1と同様にしてTNFの産生誘導試験を行った。結
果を表3に示す。
【0055】
【表3】
【0056】表3からも明らかなように、Sm値が20
0μmを超えている比較例7〜9に比べて、Sm値が2
00μm以下である実施例7〜9では、TNFの産生誘
導が著しく大きいことがわかる。すなわち、同程度のR
a値を持っていても、Sm値が200μm以下であると
TNF産生誘導の効果がより大きくなることがわかる。
【0057】実施例10及び比較例10 24ウェルプレートを、懸濁重合により作成したスチレ
ン−ジビニルベンゼン共重合体(共重合比は1:1)微
粒子(積水化学工業社製、粒径3μm)2重量%を懸濁
した酢酸セルロース(ダイセル化学工業社製、商品名;
リンター)の1重量%の塩化メチル−エタノール(重量
比で9:1)溶液に浸漬した後、風乾し、それによって
微粒子コーティングプレート(実施例10)を作成し
た。
【0058】ビーズ表面上に、上記微粒子が酢酸セルロ
ースによってコーティングされていることを、電子顕微
鏡により確認した。上記のようにして得た微粒子コーテ
ィングプレート(実施例10)及び微粒子を含まない同
様の溶液中に浸漬して作成したプレート(比較例10)
を用いて、前述したTNF産生誘導試験を行った。結果
を表4に示す。
【0059】
【表4】
【0060】表4から明らかなように、微粒子コーティ
ングプレート(実施例10)では、Ra値が2.46μ
mであり、比較例10に比べて、TNFの産生誘導が2
3倍の性能を示した。
【0061】実施例11及び比較例11 24ウェルプレートに、コーティング液として酢酸セル
ロース樹脂(ダイセル化学工業社製)5重量%の塩化メ
チレン/メタノール(重量比で9:1)溶液を用い、フ
ローコーター(フロイント産業社製、商品名;FLO−
5)を用いスプレーし、酢酸セルロース樹脂でコーティ
ングされたプレートを作成した。このコーティングされ
たプレートを走査型電子顕微鏡により写真撮影し、観察
した結果、厚み200μmのコーティング層を有する表
面多孔性の底面の得られていることが確認された。な
お、コーティング条件は以下の通りである。
【0062】スプレー空気圧 :3.5kg/cm2 スプレー液温度 :室温 スプレー液流速 :100ml/分 スプレー温度 :60℃ スプレーノズル口径:1.2mm 上記のようにして得たコーティングプレート(実施例1
1)及び末コーティングプレート(比較例11)を用
い、TNF産生誘導試験を行った。結果を表5に示す。
【0063】
【表5】
【0064】表5から明らかなように、コーティングプ
レート(実施例11)ではRa値が1.18μmであ
り、未コーティングプレート(比較例11)に比べて、
TNFの産生誘導が35倍の性能を示した。
【0065】実施例12,13,14,15及び比較例
12,13 粒子直径0.20μmのポリスチレンラテックス粒子
(Polybead:Polysciences社 USA. )5万個/mlを5
00μlと、アセトン1mlとを同時に24ウェルプレ
ートに添加し、ラテックス粒子をウェル底面に溶着さ
せ、10秒後に1ml蒸留水を加えて溶着を止めた。蒸
留水、メタノールにて洗浄した後、風乾し、注射用生理
食塩水にて洗浄した。同様にして、粒子径0.5、1.
0、6.0、20.0、45.0μmの粒子を溶着し
た。
【0066】これらのラテックス溶着プレートを用い
て、前述したTNF産生誘導試験を行った。結果を表6
に示す。
【0067】
【表6】
【0068】表6から明らかなように、Ra値が0.0
4μmを超え、かつ9.63μm以下のプレートにおい
てTNFの産生誘導は急激に増加した。
【0069】実施例16,17,18及び比較例14 ポリスチレン多孔性粒子ダイヤイオンHP−50、HP
−20(三菱化成社製)、ポリアクリルエステル多孔性
粒子ダイヤイオンHP−1MG(三菱化成社製)、ポリ
アクリルエステル多孔性粒子アンバーライトXAD−7
(オルガノ社製)を蒸留水にて3回洗浄し、一晩室温に
て静置した。次に、各粒子を蒸留水にて3回洗浄し、メ
タノールにて洗浄後、メタノールに懸濁して室温にて6
時間静置した。これを蒸留水、注射用生理食塩水で洗浄
し、注射用生理食塩水中に懸濁して超音波洗浄を行い、
吸引ポンプを用いて脱気した。
【0070】このようにして洗浄された各粒子を滅菌及
び洗浄を行ったポリプロピレン製チューブ(エッペンド
ルフセイフロックチューブ2.0ml用:ダイヤトロン
社製)にかさ体積で500μl充填した。このチューブ
に健常人からヘパリン採血した血液1.6mlを添加
し、37℃にて2時間、ゆるやかに転倒攪拌した。血液
を取り出し、血漿を分離して前述のTNF濃度測定方法
にて血漿中TNF濃度を測定した。結果を表7に示す。
【0071】
【表7】
【0072】表7からわかるように、表面粗さRaが
0.2μmより小さいHP−20ではTNFの誘導効果
は非常に小さいが、0.2μmよりも大きなHP−5
0、HP−1MG、XAD−7では著しいTNFの産生
誘導が認められた。
【0073】
【発明の効果】本発明によれば血液試料に上記特定の表
面粗さの材料を接触させるだけでよいため、簡便にかつ
迅速に血液からTNFの産生を誘導できる。これを用い
れば、例えば種々の病態時のTNFの産生能力の変化を
モニターすることによって病態を把握することができ
る。また、健常人においてもTNFの産生能力をモニタ
ーして種々の疾患の予防に役立てられる。あるいは細胞
のTNF産生能力を体外において事前に調べることがで
きるため、癌や種々の疾患に対する薬剤投与量や治療方
法を決める上できマーカーともなる得る。このように、
免疫や炎症等に関する生体反応を把握することができ
る。
【図面の簡単な説明】
【図1】でこぼこ平均間隔Sm値における山の定義を説
明するための図。
【図2】でこぼこ平均間隔Sm値を説明するための図。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平5−168706(JP,A) 特開 平6−209992(JP,A) 特開 平6−319796(JP,A) 実開 平1−98599(JP,U) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) G01N 33/50 - 33/98

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 中心線平均粗さRaが0.2μmから2
    0μmであり、でこぼこ平均間隔Sm値が200μm以
    下である表面粗さをもつ材料と血液とを接触させること
    により、腫瘍壊死因子(TNF:Tumor Necrosis Facto
    r)の産生を誘導させ、該TNFの産生量を測定するこ
    とを特徴とする生体反応検査方法。
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