JP3342799B2 - 良スケール厚鋼板の製造方法 - Google Patents

良スケール厚鋼板の製造方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、熱間圧延終了後の
冷却過程で薄スケール改質処理を施す良スケール厚鋼板
の製造方法に関するものである。なお、厚鋼板には、厚
板以外に、熱延鋼板(鋼管用素材を含む)、形鋼、条鋼
も含む。
【0002】
【従来の技術】熱間圧延されたスケールが表面に付着し
た鋼板をそのまま使用する場合もある厚板では、各種形
状に成形加工される時にスケール厚みが厚かったり、ス
ケールの密着性が良くなかったりするものは加工中に表
面スケールが部分的に脱落剥離し、外観の見栄えの悪い
成形品となり、商品価値が低下してしまう場合があっ
た。
【0003】この対策として、例えば特開昭56−93
820号公報には、仕上圧延終了温度範囲を特定し、そ
の後直ちに、前記終了温度から650℃の温度域での平
均冷却速度を30℃/s以上で冷却することにより、黒
皮スケールを低減する方法が記載されている。又、特開
平7−48622号公報には、圧延終了温度を850℃
以下にするか、又は圧延終了後800〜700℃まで水
冷し、スケールの生成を防止する方法が開示されてい
る。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】特開昭56−9382
0号公報は、薄手熱延鋼板に関して黒スケールを低減
し、その後の酸性性を向上する方法を開示したものであ
るが、厚鋼板では前記の冷却速度を満足することは困難
である。又、仕上圧延終了温度が800℃以下では、特
に厚鋼板において、表面が赤〜赤茶色になり、外観性状
が良くない。又、特開平7−48622号公報記載の方
法によって得られたスケールは青黒色であり、マグネタ
イト主体の十分に黒いスケールが得られない。この為、
最近利用の目立つ高密度エネルギー切断や表面処理によ
る加工の際に、エネルギーの吸収効率が必ずしも十分で
はないので、薄スケール化とともにスケールそのものの
改質が求められている。
【0005】
【課題を解決するための手段】本発明の要旨は、以下の
の通りである。
【0006】
【0007】 厚鋼板を熱間圧延するに際して、仕上圧
延前にデスケーリングを施し、800℃超で仕上圧延終
了後、直ちに水冷を開始し、その後鋼板温度650〜7
00℃で水冷を停止し、該鋼板の薄スケール改質を行う
ことを特徴とする良スケール厚鋼板の製造方法。
【0008】 仕上圧延終了後水冷開始迄の時間が4秒
以内であることを特徴とする前記 の良スケール厚鋼板
の製造方法。
【0009】 厚鋼板の冷却速度が1℃/s〜30℃/
s未満であることを特徴とする前記 又は の良スケー
ル厚鋼板の製造方法。
【0010】 改質したスケールをマグネタイト主体と
することを特徴とする前記〜 の良スケール厚鋼板の
製造方法。
【0011】本発明では、800℃超、好ましくは85
0℃以上の高温仕上、更にその後の水冷、及び所定温度
での水冷停止処理により、特殊な熱履歴を厚鋼板に付与
し、厚鋼板の薄スケールの形成とスケール改質を図り、
マグネタイト主体の黒スケールとするものである。本発
明法により製造された厚鋼板のスケールは、密着性が良
好であり、かつ光などの高密度エネルギーの吸収度も高
いので、高密度エネルギー線での切断性及び表面加工、
例えば凹凸加工、焼入処理なども良好である。
【0012】本発明法により形成するスケールとして
は、色彩測定方法、例えばJIS Z8729のL*
* * 表示系において、a* が小さい方が好ましい。黒
みがかったスケールはa* が0未満であり、0以上では
赤みがかるので好ましくない。
【0013】
【発明の実施の形態】本発明の製造方法は、厚鋼板であ
ればどの板厚にも適用できるが、一般的な6mm以上1
00mm以下が望ましく、35mm以下が更に好適であ
る。熱間圧延の加熱温度は、通常温度範囲であれば本発
明の効果が生じるが、仕上圧延前にデスケーリングを施
して、加熱時、粗圧延時に形成したスケールを出来るか
ぎり除去することが望ましい。
【0014】次に、本発明の限定理由について説明す
る。
【0015】仕上圧延終了温度が800℃以下では、ス
ケール色が黒色から赤色へ変化してしまうので、800
℃超とする。更に、仕上圧延中のスケールでの微細なク
ラックの発生を抑制するには、850℃以上が望まし
い。
【0016】水冷停止温度は鋼板温度で650〜700
℃にする。650℃未満では、厚鋼板であっても自己保
有熱が小さいので所要のスケール変態が完了しない。7
00℃超では、冷却停止後のスケールの生成を抑制する
ことが困難である。この鋼板温度としては、板厚方向の
断面平均温度をとることが、実際の鋼板温度を特定する
上で好ましい。この鋼板平均温度は、加熱圧延条件から
熱計算のみで算出しても良いが、表面温度の計測結果に
基づいて熱計算を修正して算出してもかまわない。
【0017】仕上圧延終了後の水冷開始迄の時間は4秒
以内が好ましい。4秒超では表面のスケール成長が著し
く、スケールが厚くなる。
【0018】水冷の冷却速度は1℃/s〜30℃/s未
満が好ましい。1℃/s未満では、水冷によるスケール
改質効果が十分に発揮されない。又、30℃/s以上の
冷却は板内熱伝導律速となり、工業的に困難である。
又、板厚が薄い場合、例えば4mm程度以下の場合は、
50〜700℃で冷却を停止する際に、冷却停止温度の
偏差がスケール改質効果に影響しやすいので、スケール
の改質が不十分となることもあり得る。
【0019】本発明では、熱間圧延直後の水冷と所定温
度での水冷停止によってこの冷却過程でのスケールの熱
履歴によってスケールが改質され、マグネタイト主体か
らなる薄スケールが得られる。この生成機構に関しては
明確ではないが、本発明者らは、圧延後の冷却時の熱履
歴の特定により、Fe系酸化物の変態熱との相乗作用に
よって、スケール厚みが薄く、しかもマグネタイト主体
のスケールが形成できるものと推定している。
【0020】本発明の対象とする鋼の化学組成は特に限
定しないが、重量%で、 C :0.001〜0.50%、 Si:0.05 〜1.00%、 Mn:0.05 〜2.00%、 P :0.001〜0.05%、 S :0.0001〜0.1%、 Al:0.001〜0.50%、 残部Fe及び不可避的不純物からなる鋼(A鋼とい
う)、A鋼に更に、強度改善元素群 Cu:0.05 〜1.50%、 Ni:0.05 〜1.50%、 Cr:0.05 〜2.00%、 Mo:0.05 〜1.00%、 V :0.003〜0.3 %、 B :0.0003〜0.01% の1種又は2種以上を含有する鋼(B鋼という)、A鋼
又はB鋼に更に、結晶粒制御元素群 Nb:0.003〜0.1 %、 Ti:0.003〜0.01% の1種又は2種を含有する鋼(C鋼という)、A鋼、B
鋼又はC鋼に更に、介在物形態制御元素群 Ca:0.0003〜0.01%、 REM:0.0003〜0.01% の1種又は2種を含有する鋼(D鋼という)等を対象と
することができる。
【0021】薄スケールの改質後の冷却方法は目的に応
じて適宜選択できるが、通常は空冷(放冷)、又は制御
冷却や直接焼入れ処理の加熱冷却処理などが採用可能で
ある。又、薄スケール改質後には、冷間加工や温間加工
等もスケール剥離に影響しない範囲で実施可能である。
【0022】
【実施例】常法で溶製した表1に示す鋼を鋳造後に、図
1に示すように、鋳片又は鋼片を1150〜1200℃
に加熱し、表2に示す圧延、冷却条件で厚鋼板を製造し
た。
【0023】
【表1】
【0024】
【表2】 注1)色調は色彩色差計によるa* で評価した。 黒:a* <0、赤:a* ≧0 注2)密着性は、試験片(全厚×幅100mm×長200mm、但し、板厚≧25mm では、表層側より厚12mmを採取し、表層を外面)を90°曲げ後のコー ナー部にセロテープ(登録商標)を密着させ、剥離したスケール面積率で 評価した。 ◎:0.1以下、 ○:0.1超〜0.2以下、 △:0.2超〜0.5以下、 ×:0.5超
【0025】実施例1〜5はスケールが薄く、十分にス
ケールの改質が行われているので、密着性も良好であっ
た。
【0026】比較例6は、冷却速度を確保するために水
圧を高圧にしたので、冷却過程で表層のスケールの部分
的な剥離が生じた。又、比較例7は、仕上温度が低すぎ
たのでスケールの改質が行われず、色調が赤で、かつ急
冷処理も行っていないので、スケール厚みが厚く、密着
性が極めて低く、スケール付着鋼板の加工性は良くなか
った。
【0027】
【発明の効果】本発明によれば、薄スケール化とスケー
ル改質を同時に達成することができるので、製造した厚
鋼板の成形加工性が大幅に改善される。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明を実施する設備の一例を示す図である。
【符号の説明】
1 加熱炉 2 デスケーラー 3 粗圧延機 4 仕上圧延機 5 デスケーラー 6 冷却装置 7 厚鋼板
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 大河内 敏博 東海市東海町5−3 新日本製鐵株式会 社 名古屋製鐵所内 (56)参考文献 特開 平7−48622(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B21B 45/00 C21D 8/02

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 厚鋼板を熱間圧延するに際して、仕上圧
    延前にデスケーリングを施し、800℃超で仕上圧延終
    了後、直ちに水冷を開始し、その後鋼板温度650〜7
    00℃で水冷を停止し、該鋼板の薄スケール改質を行う
    ことを特徴とする良スケール厚鋼板の製造方法。
  2. 【請求項2】 仕上圧延終了後水冷開始迄の時間が4秒
    以内であることを特徴とする請求項記載の良スケール
    厚鋼板の製造方法。
  3. 【請求項3】 厚鋼板の冷却速度が1℃/s〜30℃/
    s未満であることを特徴とする請求項又は記載の良
    スケール厚鋼板の製造方法。
  4. 【請求項4】 改質したスケールをマグネタイト主体と
    することを特徴とする請求項1〜のいずれか記載の良
    スケール厚鋼板の製造方法。
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