JP3340924B2 - 内燃機関の燃料噴射量制御装置 - Google Patents

内燃機関の燃料噴射量制御装置

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  • Electrical Control Of Air Or Fuel Supplied To Internal-Combustion Engine (AREA)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本説明は、内燃機関における
燃料挙動を表すパラメータを用いて同内燃機関に噴射供
給する燃料量を制御する内燃機関の燃料噴射量制御装置
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】従来より、この種の制御装置として、内
燃機関の吸気系における燃料挙動シミュレーションモデ
ルに基づいて同機関への燃料供給量を制御する技術が知
られている(例えば、特開平6−280648号公報
等)。このような制御装置では、内燃機関の吸気管壁面
への燃料付着量やその蒸発量をパラメータとして同内燃
機関の筒内に流入する燃料の挙動を数式化した燃料挙動
モデルを用いる。そして、内燃機関の運転条件とその空
燃比の目標値とに基づいて同内燃機関に要求される燃料
量を算出すると共に、上記燃料の挙動を数式化した燃料
挙動モデルに従って、該算出された要求燃料量を実際に
供給すべき燃料量に補正するようにしている。
【0003】こうして上記制御装置では、機関筒内への
流入燃料の挙動を表すパラメータを用いた燃料挙動モデ
ルに従って、内燃機関に噴射供給される燃料量が制御さ
れる。このため、それらパラメータの設定さえ適正にな
されれば、その制御される燃料供給量が当該内燃機関の
空燃比を理想の空燃比に近づけることができ、ひいては
燃料供給量が適正に制御されることとなる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】しかし、これら従来の
制御装置では、機関暖機後の定常運転時に対応する前記
パラメータを用い、C.F.アキノの式として周知の式
をそのまま使用して内燃機関の吸気系に付着している燃
料量を演算する。そして、その演算された付着燃料量に
基づいて同機関に噴射すべき燃料量を決定するようにし
ている。このため、車両加速時の過渡時等において前記
パラメータが変動する際には、付着燃料量等の燃料挙動
を正確に予測できず、実際に筒内に流入する燃料量を正
しく認識することができなかった。その結果、加速時或
いは減速時等において、空燃比の制御精度が極端に低下
するという事態を招き、トルク変動によるドライバビリ
ティの悪化や、排気エミッションの悪化の原因となって
いた。
【0005】また、インジェクタ近傍における燃料挙動
は、主に燃料の壁面付着率やその付着燃料の残留率をパ
ラメータとすることでその燃料動的モデルをシミュレー
トできる。ところが、既存の制御装置では、壁面付着率
や残留率が固定値として与えられていたため、車両の加
速要求や減速要求によって内燃機関の負荷状態が変化し
た場合には壁面への燃料付着量等が変動し、所望の燃料
噴射量制御が継続できないという問題があった。
【0006】この発明は、こうした実情に鑑みてなされ
たものであり、内燃機関内での燃料の挙動を表すパラメ
ータを用いて同機関に噴射供給する燃料量を制御するに
あたり、いかなる機関運転状態下にあっても同機関への
燃料噴射量を適正に維持することのできる内燃機関の燃
料噴射量制御装置を提供することを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】上記目的を達成するため
に本発明はその前提として、内燃機関の気筒に流入する
燃料の動的挙動モデルを使用してインジェクタによる燃
料噴射量を制御するようにしている。ここで、本発明で
は、例えば吸気ポートにおける噴射燃料の壁面への付着
率及び残留率、或いは気筒内に流入した燃料の壁面への
付着率及び残留率から燃料の動的挙動モデルを解析する
ようにしており、因みに筒内(燃焼室内)に直接、燃料
を噴射する内燃機関(いわゆる、筒内直噴式の内燃機
関)では、内燃機関の筒内に流入する燃料の壁面への付
着率及び残留率のみが燃料挙動を表すパラメータとな
る。
【0008】なお、吸気ポートにおける燃料挙動として
は、インジェクタ下流の吸気通路壁面に対して付着並び
に残留する要因の他に、該内燃機関の筒内からの吹き返
し流によりインジェクタ上流の吸気通路壁面に対して付
着並びに残留する要因、及び吸気バルブ上面(同バルブ
の吸気ポート側)に対して付着並びに残留する要因が含
まれる。また、該内燃機関の筒内における燃料挙動とし
ては、筒内壁面に対して付着並びに残留する要因の他
に、ピストン上面に対して付着並びに残留する要因が含
まれる。
【0009】
【0010】
【0011】
【0012】
【0013】請求項に記載の発明ではその特徴とし
て、内燃機関吸入空気の圧力を検出し(負荷状態検
出手段)、該検出した内燃機関吸気圧に基づいて前
記動的挙動モデルのパラメータである壁面付着燃料の残
留率を可変に設定すると共に、前記吸気圧の変化量に基
づいて前記残留率を可変設定する期間を予測する(パラ
メータ可変設定手段)。そして、該設定したパラメータ
を用いて前記燃料噴射量を補正する(燃料噴射量補正手
段)。
【0014】つまり、例えば車両加速時におけるスロッ
トル弁の開放に伴い、吸気圧が正側に変化した場合に
は、燃料噴射量の増量(加速増量)により吸気管(吸気
ポート)壁面に新規燃料が付着する。この加速の瞬間に
おいては、定常運転時に形成されていた燃料が筒内へ流
入し、付着燃料が新しく形成されることになる。このと
き、新しく形成された付着燃料は、揮発し易い燃料性分
(以下、軽質燃料と呼ぶ)を多く含むため、残留率は小
さくなる。言い換えるならば、定常運転時に形成された
付着燃料は既に軽質燃料が揮発した燃料性状であるた
め、新規付着燃料に比べて揮発し難い燃料(以下、重質
燃料と呼ぶ)を多く含むことになる。つまりは、残留率
が大きいこととなる。一方、例えば減速時におけるスロ
ットル弁の絞りに伴い、吸気圧が負側に変化した場合に
は、減圧効果によって付着燃料の一部が揮発する。この
揮発後の付着燃料性分は、減速前に比べてより重質燃料
が多くなるため残留率が大きくなる。
【0015】以上の事象から考察すれば、吸気圧の変化
時には付着燃料性分が変化し(残留率が変動し)、機関
が定常運転に戻るとやがて付着燃料性分は安定化する
(残留率が一定値となる)。従って、加速時や減速時の
吸気圧の変化時には、ある特定期間に限って残留率を変
化させる、すなわち残留率を可変設定する期間(残留率
を増加或いは減少させる期間)を予測しその期間に限っ
て当該残留率を変化させることで、より一層安定し且つ
適正な空燃比制御が実現できることになる。また、パラ
メータの可変設定期間を限定することにより、当該パラ
メータを過剰に変化させることが抑制される。
【0016】併せて、請求項に記載の発明のより具体
的な構成として、請求項に記載の発明では、前記吸
気圧の変化を同圧力の時間積分により検出する、・請求
に記載の発明では、前記壁面付着燃料の残留率を、
吸気圧が正側に変化するときには減少させるよう補正
し、吸気圧が負側に変化するときには増加させるよう補
正する、・請求項に記載の発明では、前記残留率を可
変設定する期間内において、残留率の補正量を徐々に減
じさせる、ようにしている。
【0017】求項に記載したように、吸気圧の変化
を同圧力の時間積分により検出するようにすれば、機関
の加速或は減速の程度を容易に且つ正確に予測すること
ができるため、前記残留率を可変に設定する期間が適正
に予測できることになる。
【0018】また、既述したように、例えば車両加速時
に吸気圧が正側に変化した場合には、吸気管(吸気ポー
ト)壁面に付着する燃料が揮発し易い軽質燃料を多く含
むために残留率は小さくなる。一方、例えば減速時に吸
気圧が負側に変化した場合には、減圧効果によって付着
燃料の一部が揮発し、この揮発後の付着燃料性分は、減
速前に比べてより重質燃料が多くなるため残留率が大き
くなる。従って、請求項に記載の発明によれば、上記
のような燃料挙動に則したパラメータの演算が可能とな
る。
【0019】さらに、請求項に記載の発明によれば、
吸気圧の安定後に残留率を定常値に収束させる際におい
て、急激な燃料噴射量の変化を招来することもなく、安
定した空燃比制御が継続できる。
【0020】
【発明の実施の形態】
(第1の実施の形態)以下、本発明を具体化した第1の
実施の形態を図面に従って説明する。
【0021】図1は、本実施の形態における構成の概要
を説明するためのブロック図である。図1において、内
燃機関M1の吸気通路M2にはインジェクタM3が配設
されている。負荷状態検出手段M4、パラメータ可変設
定手段M5及び燃料噴射量補正手段M6は、例えばマイ
クロコンピュータを中心に構成される電子制御装置(以
下、ECUという)M7により構成され、このうち負荷
状態検出手段M4は、図示しないセンサの検出結果を基
に内燃機関M1の負荷状態を検出する。
【0022】パラメータ可変設定手段M5は、負荷状態
検出手段M4により検出された前記内燃機関M1の負荷
状態の絶対量に対応させつつ、前記インジェクタM3に
よる噴射燃料の動的挙動モデルである、吸気管壁面付着
率「Rm」とその付着燃料の残留率「Pm」、及び噴射
燃料の筒内壁面付着率「Rc」とその付着燃料の残留率
「Pc」を可変に設定する。また、燃料噴射量補正手段
M6は、パラメータ可変手段M5により設定されたパラ
メータを用いてインジェクタM3による燃料噴射量Fi
を補正する。上記ECUM7の動作により、インジェク
タM3による燃料噴射動作が制御される。
【0023】図2は、本実施の形態にかかる内燃機関の
燃料噴射量制御装置をより詳細に示す構成図である。図
2において、火花点火式ガソリン多気筒内燃機関(以
下、単に内燃機関という)1には吸気管2と排気管3と
が接続されている。吸気管2には、アクセルペダル4に
連動するスロットル弁5が設けられ、同スロットル弁5
の開度は、スロットル開度センサ6により検出されるよ
うになっている。また、吸気管2のサージタンク7に
は、吸気圧センサ8が配設されている。
【0024】内燃機関1の気筒を構成するシリンダ9内
には図の上下方向に往復動するピストン10が配設され
ており、同ピストン10はコンロッド11を介して図示
しないクランク軸に連結されている。ピストン10の上
方にはシリンダ9及びシリンダヘッド12にて区画され
た燃焼室13が形成されており、燃焼室13は、吸気バ
ルブ14及び排気バルブ15を介して前記吸気管2及び
排気管3に連通している。排気管3には、排気ガス中の
酸素濃度に応じて異なる電圧信号を出力する空燃比セン
サ16が設けられている。
【0025】内燃機関1の吸気ポート17には電磁駆動
式のインジェクタ18が設けられており、このインジェ
クタ18には燃料タンク19から燃料(ガソリン)が供
給される。なお、本実施の形態では、吸気マニホールド
の各分岐管毎に1つずつインジェクタ18を有するマル
チポイントインジェクション(MPI)システムが構成
されている。この場合、吸気管上流から供給される新気
とインジェクタ18による噴射燃料とが吸気ポート17
にて混合され、その混合気が吸気バルブ14の開弁動作
に伴い燃焼室13内(シリンダ9内)に流入される。
【0026】ディストリビュータ20にはクランク軸の
回転状態に応じて720°CA毎にパルス信号を出力す
るクランク角センサ21と、30°CA毎にパルス信号
を出力する回転数センサ22が設けられている。
【0027】一方、ECU30は例えばマイクロコンピ
ュータシステムを中心に構成され、A/Dコンバータ3
1、入出力インターフェース32、CPU33、ROM
34、RAM35、バックアップRAM36、クロック
発生回路37等を備える。前記吸気圧センサ8の検出信
号及び空燃比センサ16の検出信号は、A/Dコンバー
タ31に入力され、A/D変換された後にバス38を介
してCPU33に入力される。また、前記スロットル開
度センサ6の検出信号、クランク角センサ21のパルス
信号、及び回転数センサ22のパルス信号は、入出力イ
ンターフェース32及びバス38を介してCPU33に
入力される。CPU33は、各検出信号に基づいて吸気
圧(PM)、空燃比、スロットル開度、基準クランク位
置及び機関回転数(Ne)を検知する。
【0028】さらに、ECU30には、前記インジェク
タ18の駆動を制御するためのダウンカウンタ39、フ
リップフロップ40及びインジェクタ駆動回路41が設
けられている。すなわち、後述する燃料噴射量制御ルー
チンで燃料噴射量が演算されると、その演算結果がダウ
ンカウンタ39に設定され同時にフリップフロップ40
もセット状態とされる。この結果、インジェクタ駆動回
路41によりインジェクタ18が通電され燃料噴射が開
始される。また、ダウンカウンタ39はクロックパルス
(図示せず)の計数を開始し、ダウンカウンタ39の値
が「0」になるとフリップフロップ40がリセットされ
る。そして、インジェクタ駆動回路41によりインジェ
クタ18の通電が遮断され燃料噴射が停止される。すな
わち、ECU30で演算された期間だけインジェクタ1
8が通電され、演算結果に応じた燃料が内燃機関1の各
気筒に供給される。
【0029】このように構成された燃料噴射量制御装置
において、インジェクタ近傍(吸気ポート17)の燃料
挙動を図3を用いて以下に説明する。図3は、インジェ
クタ近傍における燃料挙動シミュレーションモデルを示
す模式図である。なお、本シミュレーションモデルで
は、時刻を表すインデックスを「k」として示す。
【0030】図3において、「Fi(k)」は時刻kに
インジェクタ18より噴射される燃料量(噴射燃料量)
を、「Fmw(k)」は時刻kに吸気ポート17の壁面
に付着している燃料量(壁面付着燃料量)を、「Fc
(k)」は時刻kに筒内(シリンダ9内)へ流入する燃
料量(筒内流入燃料量)を、それぞれ示す。かかる場
合、時刻kの噴射燃料量Fi(k)のうち、吸気ポート
17の壁面に付着する割合(壁面付着率)を「Rm
(k)」とし、時刻kの壁面付着燃料量Fmw(k)の
うち、吸気ポート17の壁面に残留する割合(残留率)
を「Pm(k)」とすれば、以下の式(1),式(2)
が成立する。なお、この式は、C.F.アキノの式とし
て一般に知られている。
【0031】 Fmw(k)=Fi(k−1)・Rm(k−1) +Fmw(k−1)・Pm(k−1) …(1) この式(1)によれば、時刻kでの壁面付着燃料量Fmw
(k)は、前回の噴射燃料量Fi(k−1)及び前回の
壁面付着率Rm(k−1)の積と、前回の壁面付着燃料
量Fmw(k−1)及び前回の燃料残留率Pm(k−
1)の積との和により求められることとなる。
【0032】 Fc(k)=Fi(k)・(1−Rm(k)) +Fmw(k)・(1−Pm(k)) …(2) この式(2)によれば、時刻kでの筒内流入燃料量Fc
(k)は、今回の噴射燃料量Fi(k)から今回の燃料
付着分を減算した値と、今回の壁面付着燃料量Fmw
(k)から今回の燃料残留分を減算した値との和により
求められることとなる。
【0033】また、目標空燃比λ(理論空燃比)での燃
料の燃焼を実現する場合において、吸気流量を「Q
(k)」とすれば、実際に筒内に流入すべき目標流入燃
料量Fcr(k)は次の式(3)により求められる。
【0034】 Fcr(k)=Q(k)/λ …(3) この場合、インジェクタ近傍での燃料挙動を表す前記の
式(1),式(2)が実際の燃料挙動と一致するとすれ
ば、 Fcr(k)=Fc(k) …(4) が成立する。なお、吸気流量Q(k)は、吸気圧PM及
び機関回転数Neをパラメータとするマップから基本吸
入空気量を求め、該求められた基本吸入空気量をその時
の吸気温度で補正することから算出できる。
【0035】従って、目標空燃比λでの燃焼を実現する
際において、インジェクタ18による噴射燃料量Fi
(k)は、前記式(2)を変形することにより次の式
(5)から求められることとなる。
【0036】 Fi(k)={Fcr(k)−(1−Pm(k)・Fmw(k)} /(1−Rm(k)) …(5) この場合、燃料噴射量Fi(k)を求めるには、前記式
(1)から算出される壁面付着燃料量Fmw(k)が用
いられる。
【0037】以上の各式によれば、インジェクタ18に
よる噴射燃料の壁面付着率Rm(k)、付着燃料の残留
率Pm(k)の正しい値を求め、それにより前記式
(5)を解くことができれば、インジェクタ18に要求
される噴射燃料量Fi(k)が算出できることとなる。
【0038】ここで、従来一般には、壁面付着率Rm
(k)及び付着燃料の残留率Pm(k)は固定値として
扱われていた。しかし、壁面付着率Rm(k),付着燃
料の残留率Pm(k)は、機関の運転状態によって変動
し、必ずしも一定値とは限らない。また、インジェクタ
18近傍(吸気ポート17)における燃料挙動シミュレ
ーションモデルのみでは、空燃比の制御に限界がある。
そこで、本実施の形態ではその特徴として、前記C.
F.アキノの式に新たに筒内の燃料挙動シミュレーショ
ンモデルを追加すると共に、前記シミュレーションモデ
ルパラメータを吸気圧PMの絶対値に応じて可変に設定
するようにしている。
【0039】図4は、吸気ポート17並びに筒内(シリ
ンダ9内)における燃料挙動シミュレーションモデルを
示す模式図である。図4において、新たに追加した「F
cw(k)」は、時刻kに筒内壁面に付着している燃料
量(筒内壁面付着燃料量)を示す(なお、このFcw
(k)にはピストン上面に付着する燃料量も含む)。ま
た、時刻kの噴射燃料量Fi(k)のうち筒内壁面に付
着する割合(筒内壁面付着率)を「Rc(k)」とし、
時刻kの筒内壁面付着燃料量Fcw(k)のうち筒内壁
面に残留する割合(筒内残留率)を「Pc(k)」とす
れば、以下の式(6),式(7)により、筒内壁面付着
燃料量Fcw(k)及び筒内流入燃料量Fc(k)が算
出される。このとき、筒内流入燃料量Fc(k)は燃焼
に関与する筒内燃料量に相当する。
【0040】 Fcw(k)=Fi(k−1)・(1−Rm(k−1))・Rc(k) +Fcw(k−1)・Pc(k−1) …(6) Fc(k)=Fi(k)・(1−Rm(k))・(1−Rc(k)) +Fmw(k)・(1−Pm(k)) +Fcw(k)・(1−Pc(k)) …(7) つまり、燃料挙動パラメータとして新たに、筒内壁面付
着率Rc(k)とその付着燃料の残留率Pcとが加えら
れると共に、筒内壁面付着燃料量Fcw(k)が上記
(6)式により算出れされるため、前記の式(2)に代え
て、上記式(7)により筒内流入燃料量Fc(k)が算
出されることとなる。
【0041】この場合、前記目標空燃比λでの燃焼を実
現する際において、インジェクタ18による噴射燃料量
Fi(k)は、前記式(7)を変形することにより次の
式(8)から求められることになる。因みにこの式
(8)は、前記式(5)に代わるものである。
【0042】
【数1】 他方で、本実施の形態では、前記吸気管壁面付着率Rm
(k)とその残留率Pm(k)、及び筒内壁面付着率R
c(k)とその残留率Pc(k)を以下のように決定す
る。
【0043】
【数2】 前記の式(9)において、a,b,c,d,e,f,
g,hは実験によって求めることのできる定数であっ
て、機関運転時に学習することも可能である。吸気圧P
Mが絶対値〔kPa.abs.〕で表される場合、「0
<a<0.01」、「−0.001<b≦0」、「−
0.01<c<0」、「0<d<0.01」、「−0.
01<e<0」、「0<f<1」、「0<g<1」、
「0<h<1」である。
【0044】以上のことから、本実施の形態による燃料
噴射量制御が行われた場合には、車両の加速或いは減速
に伴う吸気圧変動が発生した時点で、適切な壁面付着率
Rm(k),Rc(k)、残留率Pm(k),Pc
(k)が吸気圧PMの絶対値に応じて可変に設定できる
ことになる。
【0045】上記パラメータを可変に設定する際の根拠
をより具体的に説明すれば、例えば車両加速時において
スロットル弁5の開放動作に伴い吸気圧PMが正側に変
化した場合、すなわちPM(k+1)>PM(k)の場
合には、PM(k)時に比較して、PM(k+1)時に
は、インジェクタ18による噴射燃料が霧化しにくくな
り(液滴な燃料となる)、噴射燃料が吸気管壁面に付着
する割合が増加する(吸気管壁面付着率Rmが増加す
る)。また、かかる場合において、吸気流速が増加する
ため、吸気管壁面付着燃料は、PM(k)時に比べ、P
M(k+1)時には筒内に押し流され易くなる。そのた
め、当該壁面付着燃料が該壁面に残留する割合が減少す
る(付着燃料の残留率Pmが減少する)。
【0046】さらに、筒内における燃料挙動に着目する
と、インジェクタ18から噴射された燃料のうち、筒内
に直接流入した燃料は、より強いスワール流或いはタン
ブル流を形成するため、筒内壁面へ付着しにくくなる。
このため該筒内壁面付着率は減少する(筒内壁面付着率
Rcが減少する)。また、高負荷時には燃焼期間が短い
ため、当該壁面付着燃料が揮発するために要する時間が
短くなることとなり、当該壁面付着燃料の残留割合が増
加する(筒内残留率Pcが増加する)。
【0047】すなわち、PM(k)が増加側の値になっ
た場合、PM(k+1)>PM(k)においては、前記
吸気管壁面付着率Rm、筒内壁面付着燃料の残留率Pc
を増加側の値に設定すると共に、筒内壁面付着率Rc、
吸気管壁面付着燃料の残留率Pmを減少側の値に設定す
ればよいことになる。
【0048】一方、例えば車両減速時においてスロット
ル弁5の絞り動作に伴い吸気圧PMが負側に変化した場
合(PM(k+1)<PM(k)の場合)には、インジ
ェクタ18による噴射燃料が霧化し易くなり(燃料が微
粒化される)、噴射燃料が壁面に付着する割合が減少す
る(吸気管壁面付着率Rmが減少する)。また、かかる
減速時には吸気流速が減少するため、吸気管壁面付着燃
料の筒内への流入は少なくなり、該壁面付着燃料が壁面
に残留する割合が増加する(付着燃料の残留率Pmが増
大する)。
【0049】筒内における燃料挙動に着目すると、イン
ジェクタ18から噴射された燃料のうち、筒内に直接流
入した燃料は、PM(k)時に比べてPM(k+1)時
には、スワール流或いはタンブル流は弱くなっているた
め、吸気とのミキシングが悪く、筒内壁面に付着し易く
なる。このため、該筒内壁面付着率は増加する(筒内壁
面付着率Rcが増加する)。また、軽負荷時には燃焼期
間が長いため、当該壁面付着燃料の揮発期間が長く、当
該壁面付着燃料の残留割合が低下する(筒内残留率Pc
が減少する)。すなわち、PM(k)が減少側の値にな
った場合、つまりPM(k+1)<PM(k)の場合に
おいては、前記吸気管壁面付着率Rm、筒内壁面付着燃
料の残留率Pcを減少側の値に設定すると共に、筒内壁
面付着率Rc、吸気管壁面付着燃料の残留率Pmを増加
側の側に設定すればよいことになる。
【0050】ここで、参考までに図7には、吸気圧PM
の絶対値〔kPa.abs.〕に対応する各パラメータ
Pm,Pc,Rm,Rcの計測データを示しておく。同
図によれば、計測データからも既述した各パラメータP
m,Pc,Rm,Rcの増加又は減少傾向が解明でき
る。
【0051】図5は、上述した燃料噴射量制御を実行す
るための手順を示すフローチャートであり、同処理は各
気筒の燃料噴射毎(4気筒であれば180°CA毎)に
ECU30内のCPU33により実行される。
【0052】さて、図5の処理がスタートすると、CP
U33は、先ずステップ101〜104で筒内目標空燃
比λを算出する。詳しくは、CPU33は、ステップ1
01で内燃機関1の制御上の目標空燃比(便宜上、制御
目標空燃比λaと言う)を設定する。また、CPU33
は、続くステップ102で空燃比センサ16の出力によ
り得られる空燃比(便宜上、排気空燃比λbと言う)が
計測可能であるか否かを判別する。ここで、ステップ1
02の判別処理は、周知の空燃比フィードバック制御条
件を判別する処理に相当し、機関の冷却水温が所定温度
以上であること、空燃比センサ16が活性状態であるこ
と、機関が高回転・高負荷状態であること等を含む。
【0053】そして、ステップ102が否定判別されれ
ば(フィードバック条件不成立時)、CPU33はステ
ップ103に進んでその時の制御目標空燃比λaを排気
空燃比λbとして設定した後、ステップ104に進む。
また、前記ステップ102が肯定判別されれば(フィー
ドバック条件成立時)、CPU33はステップ103を
バイパスしてそのままステップ104に進む。ステップ
104において、CPU33は、制御目標空燃比λaの
2乗を排気空燃比λbで除算して筒内目標空燃比λを算
出する。
【0054】その後、CPU33は、ステップ105で
前述の式(3)を用いて、筒内へ流入すべき目標流入燃
料量Fcr(k)を算出する。次いで、CPU33は、
ステップ106で燃料挙動の予測パラメータである噴射
燃料の吸気管壁面付着率Rm(k)、その付着燃料の残
留率Pm(k)、筒内壁面付着率Rc(k)、及び筒内
壁面付着燃料の残留率Pc(k)を前述の式(9)に基
づき算出する。このとき、吸気圧PMは、吸気圧センサ
8の検出結果に対応する絶対値であり、図示しない他の
ルーチンにて算出されている。
【0055】さらに、CPU33は、ステップ107で
上記ステップ105,106より得られた目標流入燃料
量Fcr(k),壁面付着率Rm(k),その付着燃料
の残留率Pm(k),筒内壁面付着率Rc(k),筒内
壁面付着燃料の残留率Pc(k)を使用し、前述の式
(8)に基づいてインジェクタ18による実際の噴射燃
料量Fi(k)を算出する。最後に、CPU33は、ス
テップ108で前述の式(1)及び式(6)に基づいて
時間インデックスkを(k+1)としたときの壁面付着
燃料量Fmw(k+1)及び筒内壁面付着燃料量Fcw
(k+1)を演算して本ルーチンを終了する。
【0056】なお、本実施の形態では、図5のステップ
106が燃料挙動を表すパラメータPm,Rm,Pc,
Rcを可変に設定するためのパラメータ可変設定手段に
相当し、ステップ107が燃料挙動パラメータPm,R
m,Pc,Rcを用いて燃料噴射量を補正するための燃
料噴射量補正手段に相当する。また、吸気圧センサ8並
びに同センサ8の検出結果から吸気圧PMの絶対値を算
出するCPU33による手段(図示略)が負荷状態検出
手段に相当する。
【0057】以上詳述した本実施の形態によれば、以下
の効果が得られる。 (a)要するに、本実施の形態では、吸気ポート17及
び筒内における燃料挙動パラメータとして、噴射燃料の
吸気管壁面付着率Rm,その付着燃料の残留率Pm,噴
射燃料の筒内壁面付着率Rc,その付着燃料の残留率P
cを設定し、それら各パラメータを可変に設定するよう
にした(図5のステップ106)。そして、該設定した
パラメータを用いてインジェクタ18による噴射燃料量
Fiを補正するようにした(図5のステップ107)。
従って、いかなる機関運転状態下であっても、その時々
の機関運転状態に応じた燃料挙動パラメータを設定する
ことができる。
【0058】つまり、吸気ポートのみのシミュレーショ
ンモデルから壁面付着率Rmや残留率Pmが固定値であ
った従来の装置とは異なり、過渡運転時において、実際
の燃料挙動を的確に予測したシミュレーションモデルを
実現化することができる。このため、過渡運転時におい
ても所望の燃料噴射量制御を継続することができ、空燃
比の変動を抑制することができる。その結果、トルク変
動によるドライバビリティの悪化や、排気エミッション
の悪化を抑制することができる。
【0059】図6は、吸気圧PMの変化に伴う排気空燃
比(A/F)の変動を示すタイムチャートである。同図
の排気空燃比において、実線は本実施の形態における推
移を示し、破線は従来技術における推移を示す。同図に
示すように、従来技術(燃料挙動パラメータを固定)の
場合には吸気圧PMの変動に伴い排気空燃比が目標空燃
比から大きく外れるが、本実施の形態(燃料挙動パラメ
ータを可変)の場合には排気空燃比の変動が少なくな
り、空燃比がいち早く目標値に収束するのが分かる。
【0060】(b)特に本実施の形態では、吸気圧PM
の絶対値を対応させつつ前記各パラメータRm,Pm,
Rc,Pcを演算するようにした。そのため、加速や減
速時において吸気圧PMの絶対値が変化したとしても、
それに追従させながら上記パラメータRm,Pm,R
c,Pcが可変に設定できる。そのため、気筒内にて燃
焼に供される燃料量が最適に制御できる。
【0061】次に、本発明の第2,第3の実施の形態を
説明する。但し、各実施の形態の構成において、上述し
た第1の実施の形態と同等であるものについては図面に
同一の記号を付すと共にその説明を簡略化する。そし
て、以下には第1の実施の形態との相違点を中心に説明
する。
【0062】(第2の実施の形態)次に、本発明におけ
る第2の実施の形態を説明する。図8は本実施の形態に
かかる内燃機関の燃料噴射量制御装置の概略構成を示
す。図8に示す内燃機関の特徴は、燃料が筒内へ直接噴
射されるようインジェクタ18が装着されていることに
ある(いわゆる、筒内直噴方式の内燃機関である)。こ
のような筒内直噴方式の内燃機関においては、吸気ポー
ト17への噴射燃料の付着を無視できるため、吸気ポー
ト17での燃料挙動パラメータである壁面付着率Rm及
び残留率Pmを共に「0」にすればよい。こうしてRm
(k)=0,Pm(k)=0とすることにより、前記第
1の実施の形態の制御ロジックそのまま適用できる。
【0063】本第2の実施の形態によれば、筒内直噴式
の内燃機関においても、燃料挙動パラメータを適正に設
定することができ、燃料噴射量の制御精度を向上させる
ことができる。その結果、上記実施の形態と同様に、い
かなる機関運転状態下にあっても内燃機関1への燃料噴
射量を常に適正に維持するという本発明の目的を達成す
ることができる。
【0064】(第3の実施の形態) 次に、本発明の請求項〜請求項にかかる第3の実施
の形態を説明する。本実施の形態では、前記第1の実施
の形態で使用した燃料噴射量制御システム(図1)をそ
のまま用いると共に、燃料挙動モデルのパラメータとし
て、吸気ポート及び筒内でのパラメータ(吸気管壁面付
着率Rm及び残留率Pm、筒内壁面付着率Rc及び残留
率Pc)を可変に設定するようにしている。また、本形
態のではその特徴として、吸気ポートにおける付着燃料
の残留率Pmを可変に設定する期間を予測するようにし
ている。さらに、その時の残留率Pmに対し、吸気圧P
Mの絶対値に応じた補正を実施している。
【0065】要するに、吸気管付着燃料の残留率Pm
(k)は、図9に示すように吸気圧PMの変化に追従し
て変動する。この吸気圧PMの変化は、車両の加速或い
は減速要求に伴い発生する。詳しくは、吸気圧PMが例
えば正方向(加速方向)へ変動すると、それに伴い残留
率Pm(k)が減少するが、その残留率Pm(k)の変
動期間は吸気圧PMの変動が収束した後にも継続するこ
とになる。
【0066】そこで、本実施の形態では、残留率Pm
(k)を吸気圧PMの積分値に応じて可変に設定するよ
うにしており、実際には、残留率Pm(k)は以下の式
(10)を用いて設定される。
【0067】 Pm(k)’=Pm(k)・α ・・・(10) ここで、αは、吸気圧PMの変動に伴う残留率Pm
(k)の変化量を補正するための係数であり、図10又
は図11に示すように、残留率Pm(k)の収束に伴い
徐々に「1」に収束する値となっている。つまり、残留
率Pm(k)は、吸気圧PMの安定後も変動するため、
この変動期間内においては残留率Pm(k)を補正係数
αにより補正するようにしている。かかる場合、この変
動期間をτとすれば、補正係数αと前記変動期間τとの
関係は図10及び図11に示す通りとなる。
【0068】このとき、補正係数αと変動期間τとの関
係を近似して数式化すると、 α=(1−α1 )(x/τ)∧n+α1 ・・・(11) として表される。なお、上記式(11)において「^」
はべき乗を示している。上式において、nは係数であ
り、吸気圧PMの単位が〔kPa.abs.〕であれ
ば、「0<n<1」となる。α1 は補正係数αの初期値
であり、x は補正開始後からの経過時間を表す。また、
α1 、τはそれぞれ次の式(12),(13)で表され
る。
【0069】 α1 =a・ΣΔPM+b ・・・(12) τ =c・(ΣΔPM)∧2+d・|ΣΔPM| ・・・(13) ここで、a〜dは実験により予め設定された係数であ
り、同値は機関運転時において学習することも可能であ
る(但し、ここのa〜dの係数は、第1の実施の形態に
おける式(9)の定数a〜dとは相違するものであ
る)。また、ΣΔPMは吸気圧変化量ΔPMの時間積分
値である。つまり、残留率Pm(k)の変動量及び変動
期間τは、吸気圧PMの経時変化量の大きさにて表すこ
とができ、本実施の形態では、吸気圧変化の時間積分値
ΣΔPMをもって代表することとしている。
【0070】以上のことから、本実施の形態による燃料
噴射量制御が行われた場合には、車両の加速或いは減速
に伴う吸気圧変動が発生した時点で、残留率Pm(k)
の挙動を刻々予測設定できることになる。
【0071】上記パラメータ(残留率Pm)を可変に設
定する際の根拠を、図10及び図11を用いてより具体
的に説明する。図10(a)に示すように、例えば車両
加速時においてスロットル弁5の開放動作に伴い吸気圧
PMが正側に変化した場合には、吸気管壁面への付着燃
料は新規に形成され、それに従いスロットル弁5の開放
動作終了後も残留率Pmは変化し続ける。つまり、徐々
に軽質燃料が揮発する期間、すなわち付着燃料の過渡期
間(図の変動期間τ)が車両加速後も存在する。この期
間は、急激に減少した残留率Pmが徐々に増加していく
期間である。そこで、この残留率Pmが減少する度合
(補正係数α)、及び残留率Pmの変動期間τを予測設
定することが必要になる。図10(b)に示すように、
補正係数αは変動期間τが経過した時点で「1」に収束
するように設定される。
【0072】一方、図11(a)に示すように、例えば
車両減速時においてスロットル弁5の絞り動作に伴い吸
気圧PMが負側に変化した場合には、吸気管壁面への付
着燃料は重質燃料が多い状態となり、スロットル弁5の
動作終了後、やがて定常時と同一の付着燃料性状とな
る。従って、残留率Pmは増加した後、徐々に減少す
る。そこで、加速時と同様に、残留率Pmが増加する度
合(補正係数α)、及び残留率Pmの変動期間τを予測
設定することが必要になる。図11(b)に示すよう
に、補正係数αは変動期間τが経過した時点で「1」に
収束するように設定される。
【0073】図12は、既述事項を基に燃料噴射量制御
を実行するための手順を示すフローチャートであり、同
処理は各気筒の燃料噴射毎(4気筒であれば、180°
CA毎)にECU30内のCPU33により実行され
る。
【0074】さて、図12の処理がスタートすると、C
PU33は、先ずステップ201〜204で筒内目標空
燃比λを算出する。詳しくは、CPU33は、ステップ
201で内燃機関1の制御上の目標空燃比(制御目標空
燃比λa)を設定する。また、CPU33は、続くステ
ップ202で空燃比センサ16の出力により得られる空
燃比(排気空燃比λb)が計測可能であるか否かを判別
する。ここで、ステップ202の判別処理は、周知の空
燃比フィードバック制御条件を判別する処理に相当し、
機関の冷却水温が所定温度以上であること、空燃比セン
サ16が活性状態であること、機関が高回転・高負荷状
態であること等を含む。
【0075】そして、ステップ202が否定判別されれ
ば(フィードバック条件不成立時)、CPU33はステ
ップ203に進んでその時の制御目標空燃比λaを排気
空燃比λbとして設定した後、ステップ204に進む。
また、前記ステップ202が肯定判別されれば(フィー
ドバック条件成立時)、CPU33はステップ203を
バイパスしてそのままステップ204に進む。ステップ
204において、CPU33は、制御目標空燃比λaの
2乗を排気空燃比λbで除算して筒内目標空燃比λを算
出する。
【0076】その後、CPU33は、ステップ205で
前述の式(3)を用いて、筒内へ流入すべき目標流入燃
料量Fcr(k)を算出する。次いで、CPU33は、
ステップ206で燃料挙動モデルのパラメータ、すなわ
ち噴射燃料の吸気管壁面付着率Rm(k),その付着燃
料の残留率Pm(k),筒内壁面付着率Rc(k),そ
の付着燃料の残留率Pc(k)を算出する。なお、その
算出手順は、第1の実施の形態における式(9)に準ず
るものとする。
【0077】その後、CPU33は、ステップ207で
残留率Pm(k)の変動期間τの演算、補正係数αの演
算、補正後の残留率Pm(k)’の演算をそれぞれ実施
する。詳しくは、CPU33は、ステップ207aで吸
気圧変化量ΔPMの時間積分値ΣΔPMを算出し、続く
ステップ207bで前述の式(12)を用いて補正係数
αの初期値α1 を算出する。このとき、吸気圧PMの時
間積分値ΣΔPMは、図示しない他のルーチンにて算出
されている。また、CPU33は、ステップ207cで
前記式(13)を用いて残留率Pm(k)の変動期間τ
を算出し、ステップ207dで前記式(11)を用いて
補正係数αを算出し、ステップ207eで前記式(1
0)を用いて補正後の残留率Pm(k)’を算出する。
【0078】さらに、CPU33は、ステップ208で
上記ステップ205〜207にて算出した各種データを
用い、次の式(14)に基づいてインジェクタ18によ
る実際の噴射燃料量Fi(k)を算出する。
【0079】
【数3】 次に、CPU33は、ステップ209で時間インデック
スkを(k+1)としたときの壁面付着燃料量Fmw
(k+1),筒内壁面付着燃料量Fcw(k+1)を演
算する。ここで用いられる数式は、前記の式(1),
(6)に準ずるものである。
【0080】また、CPU33は、ステップ210で前
記残留率Pm(k)の補正開始からの経過時間xが残留
率Pm(k)の変動期間τに達したか否かを判別し、x
≠τであればステップ210にてx=x+1とし、ステ
ップ207dへと戻る。このようにして、CPU33
は、x=τになるまで本ルーチンを繰り返して実行し本
ルーチンを終了する。なお、本実施の形態では、上記フ
ローのステップ206,207がパラメータ可変設定手
段に相当し、ステップ208が燃料噴射量補正手段に相
当する。
【0081】以上詳述した本実施の形態によれば、上記
第1,第2の実施の形態と同様に、本発明の目的が達せ
られると共に、それに加えて以下の効果が得られる。 (a)本実施の形態では、吸気圧PMに基づいて動的挙
動モデルのパラメータである壁面付着燃料の残留率Pm
(k)を可変に設定すると共に、吸気圧変化量ΔPMに
基づいて残留率Pm(k)を可変に設定する期間(変動
期間τ)を予測設定するようにした。この場合、吸気圧
PMの変化時には、変動期間τに限って残留率Pm
(k)を変化させることで、より一層安定し且つ適正な
空燃比制御が実現できることになる。また、パラメータ
(Pm(k))が変動する期間を予測し、それに対応し
てパラメータの可変設定期間を限定することにより、当
該パラメータを過剰に変化させることが抑制できる。
【0082】図13は、吸気圧PMの変化に伴う排気空
燃比(A/F)の変動を示すタイムチャートである。同
図の排気空燃比において、実線は本実施の形態における
推移を示し、破線は従来技術における推移を示す。同図
に示すように、従来技術(燃料挙動パラメータを固定)
の場合には吸気圧PMの変動に伴い排気空燃比が目標空
燃比から大きく外れるが、本実施の形態(燃料挙動パラ
メータを可変)の場合には排気空燃比の変動が少なくな
り、空燃比がいち早く目標値に収束するのが分かる。
【0083】(b)また、本実施の形態では、吸気圧変
化量ΔPMの時間積分値ΣΔPMに基づいて残留率Pm
(k)の変動期間τを設定するようにした。この場合、
機関の加速或は減速の程度を容易に且つ正確に予測する
ことができるようになるため、前記残留率Pm(k)を
可変に設定するための変動期間τが適正に予測できるこ
とになる。
【0084】(c)壁面付着燃料の残留率Pm(k)
を、吸気圧PMが正側に変化するときには減少させるよ
う補正し、吸気圧PMが負側に変化するときには増加さ
せるよう補正するようにした。かかる場合、例えば車両
加速時に伴う吸気圧PMの正側変化時には、吸気管壁面
に付着する燃料が揮発し易い軽質燃料を多く含むといっ
たことが前記パラメータに反映でき、他方、例えば車両
減速時に伴う吸気圧PMの負側変化時には、減圧効果に
よって付着燃料の一部が揮発しこの揮発後の付着燃料性
分が重質燃料を多く含むといったことが前記パラメータ
に反映できる。従って、上記のような燃料挙動に則した
パラメータの演算が可能となる。
【0085】(d)さらに、残留率Pm(k)を可変設
定する期間(変動期間τ)内において、残留率Pm
(k)の補正量を徐々に減じさせるようにした(補正係
数αを徐々に「1」に収束させた)。この場合、吸気圧
PMの安定後に残留率Pm(k)を定常値に収束させる
際において、急激な燃料噴射量の変化を招来することも
なく、安定した空燃比制御が継続できる。
【0086】なお、本発明は、上記各実施の形態の他に
次の形態にて実現できる。 (1)上記各実施の形態では、内燃機関の負荷状態とし
て、吸気圧PMを検出したが、これに代えて例えばエン
ジン水温、シリンダ壁温、スロットル開度、アクセル開
度等を検出し、その検出結果を燃料挙動モデルのパラメ
ータ(吸気管壁面付着率Rm,その付着燃料の残留率P
m,筒内壁面付着率Rc,筒内残留率Pc)に反映させ
るようにしてもよい。要は、内燃機関の負荷状態の絶対
量から前記パラメータを可変に設定できる構成であれば
よい。
【0087】(2)上記第1の実施の形態において、前
記図8の数値データを予めマップとしてメモリに記憶さ
せておき、このマップデータを用いて吸気圧PMの絶対
値に対応する各種パラメータを設定するようにしてもよ
い。このとき、各パラメータの値をマップから読み取る
ことで、より簡便に当該パラメータの可変設定が実現で
きる。なお、こうした数値マップは、使用環境や経時変
化に基づいて適宜学習するようにしてもよい。
【0088】(3)上記第3の実施の形態では、吸気ポ
ートでの燃料挙動モデルと筒内での燃料挙動モデルとを
併せて各種パラメータを設定したが、少なくとも前者の
燃料挙動モデルだけを想定してパラメータを可変設定す
るようにしてもよい。この場合にも、吸気管壁面燃料の
残留率Pmを可変設定すると共に、その変動期間を予測
するようにすれば、上記第3の実施の形態と同様の効果
が得られる。この場合には、CPU33による演算負荷
が軽減されるというメリットも得られる。 (4)上記
第3の実施の形態において、壁面燃料の付着量Pm
(k)の変動期間τを複数個の固定値として付与してお
き、そのうちから最適なτ値を予測結果として用いるよ
うにしてもよい。この場合、構成の簡素化が実現でき
る。また、補正係数αを設定する関数を例えば一次直線
式に変更する等、他の構成に変更してもよい。
【0089】(5)上記第1及び第3の実施の形態で
は、マルチポイントインジェクション(MPI)システ
ムにて燃料噴射量制御装置を具体化したが、これに代え
てシングルポイントインジェクション(SPI)システ
ムにて本制御装置を具体化してもよい。この場合には、
吸気マニホールド内での噴射燃料の壁面付着率及び残留
率が主となる予測パラメータを設定すればよく、筒内で
の燃料挙動を考慮する必要性が少なくなる。
【0090】(6)併せて、インジェクタによる燃料噴
射動作が同期噴射であるか、又はグループ噴射であるか
に応じて燃料挙動の予測パラメータの設定方法を変更し
てもよい。
【図面の簡単な説明】
【図1】発明の実施の形態における内燃機関の燃料噴射
量制御装置の概要を説明するためのブロック図。
【図2】第1の実施の形態における内燃機関の燃料噴射
量制御装置の概略を示す構成図。
【図3】吸気ポートにおける燃料挙動シミュレーション
モデルを示す模式図。
【図4】吸気ポート及び筒内における燃料挙動シミュレ
ーションモデルを示す模式図。
【図5】第1の実施の形態における燃料噴射量制御手順
を示すフローチャート。
【図6】第1の実施の形態における効果を説明するため
のタイムチャート。
【図7】吸気圧の絶対値と、付着率及び残留率との関係
を示すグラフ。
【図8】第2の実施の形態における内燃機関の周辺構造
を示す構成図。
【図9】第3の実施の形態において、吸気圧と壁面燃料
の残留率との関係を示すタイムチャート。
【図10】(a)は吸気圧と壁面燃料の残留率との関係
を示すタイムチャート、(b)は補正開始からの経過時
間と補正係数との関係を示すグラフ。
【図11】(a)は吸気圧と壁面燃料の残留率との関係
を示すタイムチャート、(b)は補正開始からの経過時
間と補正係数との関係を示すグラフ。
【図12】第3の実施の形態における燃料噴射量制御手
順を示すフローチャート。
【図13】第3の実施の形態における効果を説明するた
めのタイムチャート。
【符号の説明】
1…内燃機関、2…吸気管、8…負荷状態検出手段を構
成する吸気圧センサ、18…インジェクタ、33…負荷
状態検出手段,パラメータ可変設定手段,燃料噴射量補
正手段を構成するCPU。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 金原 賢治 愛知県西尾市下羽角町岩谷14番地 株式 会社日本自動車部品総合研究所内 (72)発明者 小浜 時男 愛知県西尾市下羽角町岩谷14番地 株式 会社日本自動車部品総合研究所内 (72)発明者 那須 昌博 愛知県豊田市トヨタ町1番地 トヨタ自 動車株式会社内 (56)参考文献 特開 平6−123246(JP,A) 特開 平7−119515(JP,A) 特開 平7−166922(JP,A) 特開 平4−36032(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) F02D 41/00 - 45/00

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】内燃機関の気筒に流入する燃料の動的挙動
    モデルを使用してインジェクタによる燃料噴射量を制御
    するようにした内燃機関の燃料噴射量制御装置におい
    、 前記内燃機関吸入空気の圧力を検出する負荷状態検
    出手段と、 該検出した内燃機関吸気圧に基づいて前記動的挙動
    モデルのパラメータである壁面付着燃料の残留を可変
    に設定すると共に、前記吸気圧の変化量に基づいて前記
    残留率を可変設定する期間を予測するパラメータ可変設
    定手段と、 該設定したパラメータを用いて前記燃料噴射量を補正す
    る燃料噴射量補正手段とを備えたことを特徴とする内燃
    機関の燃料噴射量制御装置。
  2. 【請求項2】請求項1に記載の内燃機関の燃料噴射量制
    御装置において、 前記吸気圧の変化を同圧力の時間積分により検出する
    燃機関の燃料噴射量制御装置。
  3. 【請求項3】前記壁面付着燃料の残留率を、吸気圧が正
    側に変化するときには減少させるよう補正し、吸気圧が
    負側に変化するときには増加させるよう補正する請求項
    1又は請求項2に記載の内燃機関の燃料噴射量制御装
    置。
  4. 【請求項4】前記残留率を可変設定する期間内におい
    て、残留率の補正量を徐々に減じさせるようにした請求
    項3に記載の内燃機関の燃料噴射量制御装置。
JP31510996A 1996-11-26 1996-11-26 内燃機関の燃料噴射量制御装置 Expired - Fee Related JP3340924B2 (ja)

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