JP3340856B2 - 電気光学品及びその製造方法 - Google Patents
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Description
造方法に関するものである。
晶、タンタル酸リチウム(LiTaO3 )単結晶が、オ
プトエレクトロニクス用材料として期待されている。ニ
オブ酸リチウム単結晶等からなる基板の上に、液相エピ
タキシャル法によってニオブ酸リチウム薄膜を得ること
が知られている。例えば、「Appl. Phys.Letters 」 Vo
l.26 No.1 (1975)の第8〜10頁の記載によれば、タ
ンタル酸リチウム単結晶基板上に液相エピタキシャル法
によってニオブ酸リチウム単結晶薄膜を形成している。
「Mat. Res. Bull」 Vol.10(1975) の第1373〜1
377頁の記載によれば、ニオブ酸リチウム単結晶基板
上に液相エピタキシャル法によってニオブ酸リチウム単
結晶薄膜を形成している。「J. Appl. Phys.」Vol.7
0, No.5, ( 1991 )の第2536〜2541頁によれ
ば、酸化マグネシウムをドープしたニオブ酸リチウム単
結晶基板上に、液相エピタキシャル法によってニオブ酸
リチウム単結晶薄膜を形成している。
説明する。図4は、液相エピタキシャル法における溶融
体の温度スケジュールを模式的に示すグラフであり、図
5は、例えばLiNbO3 ─LiVO3 擬二元系の溶解
度曲線を示すグラフである。まず、例えばニオブ酸リチ
ウム(溶質)とLiVO3 (溶融媒体)とを仕込んで混
合する。この溶融体の仕込み組成に対応する飽和温度を
T0 とする。この溶融体の温度を、飽和温度T0 よりも
高温T1 で保持し、ニオブ酸リチウムとLiVO3 とを
均一に溶融させる。図4において、「A」が、この溶融
状態に対応する。次いで、溶融体の温度を、飽和温度T
0 よりも低い温度T4 まで冷却して溶融体を過冷却状態
とする。図4において、「C」が、この過冷却状態に対
応する。過冷却状態の溶融体に対して、基板を接触させ
る。
ッキングカーブの半値幅によって評価することができ
る。例えば、「J. Cryst. Growth.」 132 (1993) の
第48〜60頁の記載によれば、酸化マグネシウムをド
ープしたニオブ酸リチウム単結晶基板を使用し、この基
板と同程度に小さい半値幅をもつニオブ酸リチウム単結
晶薄膜を作製している。
相エピタキシャル法について、改めて再検討した結果、
良質な単結晶膜を再現性良く形成することはできないこ
とがわかった。この理由について説明する。まず、単結
晶を作成する方法としては、いわゆる引き上げ法も知ら
れている。しかし、引き上げ法においては、膜の育成温
度が高いので、結晶性の良い良質な結晶を作成すること
は難しい。この点、液相エピタキシャル法は、引き上げ
法に比べると、低い温度が成膜できるので、結晶性の良
い単結晶膜を形成できるはずである。
NbO3 (溶質)の濃度が上昇すると、飽和温度が高く
なり、引き上げ法における育成温度に近づいてくる。従
って、結晶性の良い膜を形成するためには、できるだけ
低温で成膜する必要がある。この観点からは、1000
°C以下の低温で膜を形成することが好ましいのであ
る。
低くなると、特に飽和温度が1000°C以下になる
と、今度は液相線の傾きが非常に大きくなってくる。従
って、溶融体における溶質の濃度がわずかに変動した場
合にも、飽和温度は大きく変動してしまう。液相エピタ
キシャル法においては、まず溶融体を飽和温度以上に保
持し、次いで飽和温度未満の成膜温度にして過冷却状態
で成膜している。そして、膜の結晶性は、この過冷却状
態によって決定され、この過冷却状態は、飽和温度及び
成膜温度によって決定される。従って、溶融体における
溶質の濃度がわずかに変動すると、結晶性の良い膜を形
成することは不可能になってしまう。特に、実際の成膜
工程においては、基板への膜形成を繰り返すと、溶融体
の組成が直ちに変化していき、一定の溶質濃度を保持す
ることはできない。従って、再現性よく成膜することが
困難であった。
できるはずである、1000°C以下の成膜温度におい
ては、特に再現性が悪くなり、かえって結晶性が劣化し
てくるという問題があった。
板は、引き上げ法によって形成されている。しかし、従
来は、こうした単結晶基板の上に、この単結晶基板より
も結晶性の良い単結晶膜を形成することはできなかっ
た。この結果、この単結晶膜の方に、光導波路基板、S
HGデバイス等を作成した場合に、光導波路の耐光損傷
特性が劣っており、光導波路において導波できる光のエ
ネルギーのしきい値が低かった。このため、従来は、引
き上げ法によって作成された基板を機械加工して、光導
波路基板として使用しており、液相エピタキシャル法に
よる単結晶膜は、こうした製品の材料として有効に使用
されておらず、解決が待望されていた。
に、電気光学単結晶膜が液相エピタキシャル法により形
成されている電気光学品において、光導波路の耐光損傷
特性を、実用的に十分高い値にまで向上させ、光導波路
基板、SHGデバイス等の光学部品の材料として有効に
使用できるようにすることである。
板の上に電気光学単結晶膜を液相エピタキシャル法によ
って形成するのに際して、結晶性の良い単結晶膜を、再
現性よく製造することであり、特に、基板よりも結晶性
の良い膜を形成できるようにすることである。
晶基板上に、電気光学単結晶膜が液相エピタキシャル法
により形成されている電気光学品であって、電気光学単
結晶膜のX線ロッキングカーブの半値幅が、電気光学単
結晶基板のX線ロッキングカーブの半値幅よりも小さい
ことを特徴とする、電気光学品に係るものである。
電気光学単結晶膜を備えている電気光学品を製造する方
法であって、液相エピタキシャル法によって電気光学単
結晶膜を形成するのに際し、溶質と溶融媒体とを含む溶
融体中に液相と固相を共存させ、次いで溶融体の温度を
下げて液相を過冷却状態にし、電気光学単結晶基板をこ
の液相に接触させて単結晶膜をエピタキシャル成長させ
ることを特徴とする、電気光学品の製造方法に係るもの
である。
過程で、過冷却状態を作りだす方法を見直してみた。従
来は、まず1000〜1300°Cの十分な高温で溶質
と溶融媒体とを十分に溶融させ、次いでこの仕込み組成
に対応する飽和温度よりも低温にすることで、過冷却状
態を作りだしていた。即ち、十分な高温の液相から過冷
却状態を作りだす必要があるという常識であった。
質的に異なる方法に想到した。この方法について、図1
〜3を参照しつつ、説明する。図1、図3は、本発明の
液相エピタキシャル法における溶融体の温度スケジュー
ルを模式的に示すグラフである。図2(a)、(b)
は、ルツボ1内における溶融体の状態を模式的に示す断
面図である。
仕込んで混合する。この溶融体の飽和温度T0 は、溶融
体における溶質の濃度、即ち、仕込み組成に対応して、
一定値に定まる。この飽和温度は、例えば図5に示すよ
うな液相線から算出することができる。
よりも高温T1 で保持し、溶質と溶融媒体とを均一に溶
融させる。図1において、「A」が、この溶融状態に対
応する。また、図2(a)に示すように、溶融体2のす
べてが液相となっている。
りも低い固相析出温度T 2 まで冷却する。この状態で
は、溶融体は、最初は過冷却状態となるが、この温度で
十分に長い時間保持すると、溶融体から固相が析出して
くる。図1において、「B」が、この固相析出のための
保持状態に対応する。この時には、図2(b)に示すよ
うに、溶融体3が、液相4と固相5とに分離する。この
固相5は、主としてルツボ1の壁面に沿って析出する。
却状態にする。図1において、「C」が、この過冷却状
態に相当する。過冷却状態の液相4に対して、基板6を
矢印7のように降下させ、接触させ、単結晶膜をエピタ
キシャル成長させる。
示すように、まず、溶融体の温度を、飽和温度T0 より
も高温T1 で保持し、溶質と溶融媒体とを均一に溶融さ
せる。図3において、「A」が、この溶融状態に対応す
る。次いで、溶融体の温度を、飽和温度T0 よりも高い
保持温度T2 まで冷却する。むろんこの段階では固相は
析出しない。そこで、新たに所定量の溶質を溶融体に添
加する。このときには、溶融体の飽和温度が、T2 より
も高いT5 に上昇する。この温度T 2 で十分に長い時間
保持すると、固相と液相との状態が安定する。図3にお
いて、「D」が、この固相と液相とが共存した保持状態
に対応する。
相4を過冷却状態にする。図3において、「C」が、こ
の過冷却状態に相当する。過冷却状態の液相4に対し
て、基板6を矢印7のように降下させ、接触させ、単結
晶膜をエピタキシャル成長させる。また、溶融体の液相
を過冷却状態とするには、温度T2 に保持した溶融体に
対して、温度T2 よりも低い温度T3 に冷却した基板を
接触させてもよい。これにより、基板表面近傍の溶融体
は、溶融体全体の温度をT2 に冷却した場合と同様に、
過冷却状態となり、基板上に膜が形成される。
相が安定的に共存している状態B、Dを出発点とし、即
ち、温度T2 を出発点とし、この状態から温度T 3 にま
で温度を下げることによって、液相を過冷却状態として
いる。このように、固相と液相とが共存している状態で
は、系全体の飽和温度を越えない限り、液相における溶
質の濃度は、保持温度T2 における飽和濃度に保たれ
る。
したときには、保持温度T2 において、固相の量がその
分減少し、溶質の濃度が増加したときには、固相の量が
その分増加する。従って、液相の温度と濃度とは、常に
一定に保持される。そして、成膜温度T3 も、むろん一
定値に設定するので、T2 とT3 との差(過冷却度)も
一定に保持され、過冷却状態が完全に制御される。
への膜形成を繰り返したために、溶融体の組成が変化し
ていった場合においても、過冷却状態がほぼ完全に一定
状態に保持される。従って、結晶性の良い単結晶膜を、
再現性良く成膜することができる。
単結晶膜を再現性良く作成できるというだけでなく、単
結晶膜の結晶性自体が顕著に向上していた。特に、後述
する条件下においては、本発明によって、従来は作成不
可能であった、単結晶基板よりもX線ロッキングカーブ
の半値幅が小さい単結晶膜を形成することに成功した。
以下の理由によると思われる。従来の方法では、溶融体
に基板を接触させるときには、溶融体全体が均一な液相
である。従って、基板が溶融体に接触した瞬間に、基板
の表面において、液相全体の中で初めて固相の析出が起
こる。このため、単結晶膜の成長が開始するためには、
比較的大きな核形成エネルギーが必要であると推定でき
る。従って基板と膜との界面において膜の成長が開始さ
れる時に、核形成エネルギーが大きいために、この界面
において膜の結晶性が乱れ、その上に析出する膜の結晶
性が、この結晶性の乱れを反映するものと思われる。
すように、基板6が溶融体3に接触する前に、あらかじ
め溶融体3中に固相5が共存している。この状態では、
もともと固相5と液相4の界面では、微視的に見れば溶
融と析出とが起こっている。従って、あらたに基板6を
溶融体3に接触させても、スムーズに膜成長が開始さ
れ、結晶性に優れた単結晶膜が作製できると考えられ
る。
よりもX線ロッキングカーブの半値幅が小さい単結晶膜
を形成し、これに光導波路を形成し、その光学特性を測
定してみた。この結果、光導波路の耐光損傷特性が顕著
に向上することを確認した。この結果、本発明の電気光
学品を、各種光学部品として利用することが可能になっ
た。
ついて説明する。単結晶基板及び単結晶膜の結晶性は、
X線ロッキングカーブの半値幅によって評価することが
できる。一般に、この半値幅が小さいほど、単結晶の結
晶性が良好であると判断できる。この値そのものは、X
線測定装置において使用する基準結晶等によって変動す
るので、絶対値を特定することはできない。
される単結晶薄膜の結晶性は、単結晶基板の結晶性の影
響を強く受ける。従って、作製した単結晶膜の結晶性の
優劣を判断するには、使用した基板のX線ロッキングカ
ーブの半値幅を基準にしなければならない。特に、光学
グレードの単結晶基板は、現在引き上げ法によって作成
されているので、単結晶膜のX線ロッキングカーブの半
値幅が、光学グレードの単結晶基板のそれよりも小さい
ことが好ましい。
は,同一の物質によって形成してよく、異なる物質によ
って形成することもできる。ただし、両者の格子定数が
近くなければならない。電気光学単結晶としては、ニオ
ブ酸リチウム(LiNbO3 )単結晶、タンタル酸リチ
ウム(LiTaO3 )単結晶、LiNbxTa1-x O3
単結晶(0<x<1)が好ましい。
き上げ法によって製造されており、ニオブ酸リチウム単
結晶基板については、結晶性の良い光学グレードの単結
晶基板が得られている。しかし、現在の段階では、引き
上げ法により製造されるタンタル酸リチウム単結晶基板
は、ニオブ酸リチウム単結晶基板に比べて結晶性が悪
い。もともと結晶性が悪いタンタル酸リチウム単結晶基
板の上に、単結晶膜を形成しても、光学グレードのニオ
ブ酸リチウム単結晶基板上に作製した膜よりも優れた結
晶性を持つ単結晶膜を得るのは、困難である。
のニオブ酸リチウム単結晶を基板として使用することが
好ましい。ただし、この問題は、引き上げ法による製造
技術の問題であるので、将来ニオブ酸リチウム単結晶基
板と同等の結晶性を持つ、光学グレードのタンタル酸リ
チウム単結晶基板が開発されれば、これを基板として好
ましく使用することができる。
ウム及びLiNbx Ta 1-x O3 からなる群より選ばれ
た1種以上の溶質である場合には、溶融媒体をLiVO
3 とLiBO2 とからなる群より選ばれた1種以上の溶
融媒体とすることが好ましい。この溶質と溶融媒体との
組み合わせを採用した場合には、溶融体の仕込み組成
は、溶質10mol%─溶媒90mol%〜溶質60m
ol%─溶媒40mol%とすることが好ましい。
合には、例えば図5に示すように、溶質─溶融媒体の擬
二元系の相図において、液相線の傾きが急になりすぎ、
膜成長による溶融体の濃度変化が大きくなり、成膜条件
を安定して保つのが困難になる。溶質の割合が60mo
l%よりも大きい場合には、飽和温度が高くなるため、
成膜温度が高くなりすぎて結晶性の良い単結晶膜を作製
するのが困難になる。
組成を、溶質10mol%─溶媒90mol%〜溶質5
0mol%─溶媒50mol%とし、かつ成膜温度を9
50°C〜700°Cとすることが好ましい。この範囲
内に成膜条件を設定することによって、単結晶基板より
も単結晶膜の方を、X線ロッキングカーブの半値幅を小
さくすることができた。
成膜温度との差(過冷却度)は、単結晶膜のX線ロッキ
ングカーブの半値幅を小さくするという観点から見て、
一般には50℃以下とすることが好ましい。これは、電
気光学単結晶基板および電気光学単結晶膜がニオブ酸リ
チウムからなる場合には、20°C以下とすることが好
ましく、15°C以下とすることが好ましく、10°C
以下とすることが更に好ましい。また、過冷却度の下限
は、理論的には0°Cであるが、安定に成膜を行うため
には1°C以上とすることが好ましい。
る。(実施例1)LiNbO3 ─LiVO3 擬二元系に
おいて、溶融体の仕込み組成を、10mol%LiNb
O3 ─90mol%LiVO3 〜60mol%LiNb
O3 ─40mol%LiVO3 とし、図1の温度スケジ
ュールに従って、本発明の方法を実施した。各溶融体に
おけるLiNbO3 のmol%は、表1に示す。各溶融
体2を、十分に高い温度T1 (1000°C〜1300
°C)で3時間以上攪拌し、十分均一な液相の状態とし
た。
た後、12時間以上保持し、過飽和分のニオブ酸リチウ
ムが核発生して固相5が析出するまで待った。このと
き、溶融体の液相部分4は、温度T2 における飽和状態
であり、溶融体3内は、液相4とニオブ酸リチウムの固
相5とが共存した状態である。その後、溶融体3の温度
を、T2 から過冷却度ΔTだけ低い成膜温度T3 まで冷
却し、ただちにニオブ酸リチウム単結晶基板6を溶融体
に接触させ成膜を行った。
°Cで成膜した場合の、ニオブ酸リチウム単結晶膜のX
線ロッキングカーブの半値幅と、成膜温度及び溶融体仕
込み組成の関係を示す。表中の「×」は膜作製が不可能
であることを表す。表2は、過冷却度ΔT=10°Cで
成膜した場合の、ニオブ酸リチウム単結晶膜のX線ロッ
キングカーブの半値幅と、成膜温度及び溶融体仕込み組
成の関係を示す。
二結晶法により、(0012)面の反射を用いて行った。
入射X線としてはCuKα1を使用し、モノクロメータ
としては、GaAs単結晶の(422)面を用いた。ま
た、成膜前にあらかじめ基板のみのX線ロッキングカー
ブを測定しておき、作製した単結晶膜のX線ロッキング
カーブの半値幅と比較した。
酸リチウム単結晶基板のX線ロッキングカーブの半値幅
は、いずれも6.8〜6.9〔arc sec 〕であったの
で、これをニオブ酸リチウム単結晶基板の結晶性の基準
とした。
の液相エピタキシャル法によって、ニオブ酸リチウム単
結晶膜を形成した。溶融体を、飽和温度よりも十分に高
い1000°C〜1300°Cの温度で3時間以上攪拌
し、十分均一な液相の状態とした。その後、溶融体を飽
和温度よりも低い温度まで、60°C/時間で冷却した
後、ただちに成膜を行った。使用したニオブ酸リチウム
単結晶基板のX線ロッキングカーブの半値幅は、いずれ
も上記と同じ6.8〜6.9〔arc sec 〕であった。表
3は、溶融体の組成および成膜温度と、ニオブ酸リチウ
ム単結晶膜のX線ロッキングカーブの半値幅の関係を示
す。
なように、比較例では、まず極めて狭い温度範囲におい
てのみ、成膜が可能である。即ち、過冷却度(飽和温度
−成膜温度)がおよそ30°C以下の場合には、成膜前
にも成膜後にも、溶融体中に核発生は起こらず、溶融体
全体において、均一な液相の過冷却状態が保たれた。し
かし、過冷却度がおよそ30℃を越えると、溶融体自体
の中に核発生が起こり、固相が析出するために、過冷却
状態を維持することができず、膜作製が困難になったか
らである。
の仕込み組成がどのように変化しても、一旦固相を析出
する保持段階が存在するので、極めて広い温度範囲で成
膜が可能になっている。この点で、本発明の方法は、従
来の方法とは、まったく異なっていることがわかる。
仕込み組成について、いずれも、X線ロッキングカーブ
の半値幅が、表3に比べて大きく向上している。もっと
も、600°C以下の温度では、エピタキシャル成長自
体が困難であるし、各組成に対応する飽和温度を越える
と、成膜が不可能なのは当然である。
ol%─溶媒90mol%〜溶質50mol%─溶媒5
0mol%とし、かつ成膜温度を950°C〜700°
Cとすることにより、単結晶基板よりも単結晶膜の方
を、X線ロッキングカーブの半値幅を小さくすることが
できた。
が20°Cを越える場合には、膜作製が困難または不可
能であった。その理由は、過冷却度ΔTが20°Cを越
えると、溶融体の液相部分から急激に核発生が起こり、
液相部分を均一な過冷却状態に維持することができない
ためである。
二元系において、溶融体の仕込み組成を、10mol%
LiNbO3 ─90mol%LiVO3 とし、実施例1
と同様のプロセスにより膜作製を行った。使用したニオ
ブ酸リチウム単結晶基板のX線ロッキングカーブの半値
幅は、いずれも6.8〜6.9〔arc sec 〕である。た
だし、過冷却度(固相と液相とが共存している保持温度
と成膜温度との差)を、表4に示すように変更した。表
4は、過冷却度ΔTと、作製されたニオブ酸リチウム単
結晶薄膜のX線ロッキングカーブの半値幅の関係を示
す。表中の「×」は、膜作製が不可能であることを表
す。
0°C以下とすることにより、基板と同等以上の結晶性
を有する膜を形成できる。しかも、過冷却度ΔTを15
°C以下とすると更に単結晶膜の結晶性が向上し、10
°C以下とすると、一層結晶性が向上した。
二元系において、溶融体の仕込み組成を、20mol%
LiNbO3 ─80mol%LiVO3 とし、実施例2
と同様の条件で膜作製を行った。過冷却度(固相と液相
とが共存している保持温度と成膜温度との差)を、表5
に示すように変更した。表5は、過冷却度ΔTと、作製
されたニオブ酸リチウム単結晶薄膜のX線ロッキングカ
ーブの半値幅の関係を示す。
0°C以下とすることにより、基板と同等以上の結晶性
を有する膜を形成できる。しかも、過冷却度ΔTを15
°C以下とすると更に単結晶膜の結晶性が向上し、10
°C以下とすると、一層結晶性が向上した。
二元系において、溶融体の仕込み組成を、30mol%
LiNbO3 ─70mol%LiVO3 とし、実施例2
と同様の条件で膜作製を行った。過冷却度(固相と液相
とが共存している保持温度と成膜温度との差)を、表6
に示すように変更した。表6は、過冷却度ΔTと、作製
されたニオブ酸リチウム単結晶薄膜のX線ロッキングカ
ーブの半値幅の関係を示す。
0°C以下とすることにより、基板と同等以上の結晶性
を有する膜を形成できる。しかも、過冷却度ΔTを15
°C以下とすると更に単結晶膜の結晶性が向上し、10
°C以下とすると、一層結晶性が向上した。
仕込み組成を、10mol%LiNbO3 ─90mol
%LiBO2 〜60mol%LiNbO3 ─40mol
%LiBO2 とし、図1の温度スケジュールに従って、
本発明の方法を実施した。各溶融体におけるLiNbO
3 のmol%は、表7に示す。各溶融体2を、十分に高
い温度T1 (1000°C〜1300°C)で3時間以
上攪拌し、十分均一な液相の状態とした。
た後、12時間以上保持し、過飽和分のニオブ酸リチウ
ムが核発生して固相5が析出するまで待った。このと
き、溶融体の液相部分4は、温度T2 における飽和状態
であり、溶融体3内は、液相4とニオブ酸リチウムの固
相5とが共存した状態である。その後、溶融体3の温度
を、T2 から過冷却度ΔTだけ低い成膜温度T3 まで冷
却し、ただちにニオブ酸リチウム単結晶基板6を溶融体
に接触させ成膜を行った。
°Cで成膜した場合の、ニオブ酸リチウム単結晶膜のX
線ロッキングカーブの半値幅と、成膜温度及び溶融体仕
込み組成の関係を示す。表中の「×」は膜作製が不可能
であることを表す。
よれば、溶融体の仕込み組成がどのように変化しても、
一旦固相を析出する保持段階が存在するので、極めて広
い温度範囲で、結晶性の良い膜を形成することができ
た。
質10mol%─溶媒90mol%〜溶質50mol%
─溶媒50mol%とし、かつ成膜温度を950°C〜
700°Cとすることにより、単結晶基板よりも単結晶
膜の方を、X線ロッキングカーブの半値幅を小さくする
こともできた。
が20°Cを越える場合には、膜作製が困難または不可
能であった。その理由は、過冷却度ΔTが20°Cを越
えると、溶融体の液相部分から急激に核発生が起こり、
液相部分を均一な過冷却状態に維持することができない
ためである。
において、x=20mol%、成膜温度=900°Cの
場合について、単結晶膜の膜厚を変化させ、膜厚と結晶
性、即ち、X線ロッキングカーブの半値幅との関係を調
べた。この結果、単結晶膜の厚さとX線ロッキングカー
ブの半値幅との間に、次の表8に示す関係があることを
見いだした。
とすることにより、単結晶基板の前記半値幅よりも、単
結晶膜の前記半値幅の方が、小さくなることを確認し
た。この理由は、以下のように推定される。まず、引き
上げ法で作製されるニオブ酸リチウム単結晶基板は、調
和溶融組成(コングルエント組成)である。一方、本発
明の方法により作製されるニオブ酸リチウム単結晶膜
は、ほぼ化学量論組成である。従って、基板と膜との格
子定数が異なり、膜と基板の間に格子不整合(格子ミス
マッチ)を生じ、この格子不整合による残留応力が、膜
の結晶性に影響を及ぼし、膜の結晶性をを悪化させてい
ることが判明した。
合には、単結晶膜と基板の格子不整合により、膜の結晶
性が悪化するのに対して、膜厚が5μm を越えると格子
不整合の影響がなくなり、良好な結晶性をもつほぼ化学
量論組成のニオブ酸リチウム単結晶膜が作製できること
が判明した。
において成膜したものの中から、単結晶膜のX線ロッキ
ングカーブの半値幅が種々異なるものを選択し、それぞ
れについて、チタン拡散法によって光導波路を形成し、
その耐光損傷特性を評価した。この結果、単結晶膜のX
線ロッキングカーブの半値幅が単結晶基板と同等の6.
9である場合には、波長830nmの光に対しておよそ
0.2mWの出射光パワーで光損傷が発生したのに対し
て、単結晶膜のX線ロッキングカーブの半値幅が5.6
である場合には、1mWの出射光パワーでも光損傷が発
生しなかった。
の温度スケジュールに従って、液相エピタキシャル法に
よって成膜した。LiNbO3 ─LiTaO3 ─LiV
O3 擬三元系において、表9に示す各条件下に本発明を
実施した。
00°C〜1300°C)で3時間以上攪拌し、十分均
一な液相の状態とした。その後、溶融体を保持温度T2
まで冷却した後、12時間以上保持し、過飽和分の固溶
体が核発生して固相5が析出するまで待った。このと
き、溶融体の液相部分4は、温度T2 における飽和状態
であり、溶融体3内は、液相部分4と固溶体からなる固
相部分5とが共存した状態である。保持温度T2 と、こ
のときの液相部分4の組成とを、表9に示すように変更
した。
却度ΔTだけ低い成膜温度T3 まで冷却し、ただちにニ
オブ酸リチウム単結晶基板6を液相部分4に接触させて
成膜を行った。過冷却度ΔTも、表9に示すように変更
した。
1-x Tax O3 の組成を有していた。これらの固溶体膜
の組成を測定し、xの値を表9に示した。また、各固溶
体膜のX線ロッキングカーブの半値幅を測定し、表9に
示した。
2 で成膜したところ、飽和温度T2 が1200℃以下の
範囲内においては、前記半値幅の小さな、結晶性の良好
な固溶体膜を形成できる。特に、飽和温度が1150℃
以下である組成範囲内においては、固溶体膜の前記半値
幅が、ニオブ酸リチウム単結晶基板の前記半値幅よりも
小さい、即ち、基板よりも結晶性の良い固溶体膜を、形
成することができた。
ち、1200℃を越えると、固溶体膜の前記半値幅が顕
著に劣化することが分かる。
ような温度スケジュールを採用することによって、溶融
体の仕込み組成がどのように変化しても、一旦固相を析
出する保持段階が存在するので、極めて広い温度範囲で
成膜が可能になっている。そして、溶融体の各仕込み組
成について、いずれも、固溶体膜の前記半値幅が、きわ
めて良好になっている。
によれば、電気光学単結晶基板上に、電気光学単結晶膜
が液相エピタキシャル法により形成されている電気光学
品において、光導波路の耐光損傷特性を、実用的に十分
高い値にまで向上させ、光導波路基板、SHGデバイス
等の光学部品の材料として有効に使用できるようにする
ことができた。
晶基板の上に電気光学単結晶膜を液相エピタキシャル法
によって形成するのに際して、結晶性の良い単結晶膜
を、再現性よく製造することができ、特に、基板よりも
結晶性の良い膜を形成することも可能になった。
の温度スケジュールを模式的に示すグラフである。
の状態を模式的に示す断面図である。
の温度スケジュールを模式的に示すグラフである。
温度スケジュールを模式的に示すグラフである。
線を示すグラフである。
と液相とが共存している溶融体 4 液相 5 固相
6 電気光学単結晶基板
Claims (5)
- 【請求項1】電気光学単結晶基板上に、電気光学単結晶
膜が液相エピタキシャル法により形成されている電気光
学品であって、前記電気光学単結晶膜のX線ロッキング
カーブの半値幅が、前記電気光学単結晶基板のX線ロッ
キングカーブの半値幅よりも小さいことを特徴とする、
電気光学品。 - 【請求項2】前記電気光学単結晶膜の厚さが5μm以上
である、請求項1記載の電気光学品。 - 【請求項3】電気光学単結晶基板上に電気光学単結晶膜
を備えている電気光学品を製造する方法であって、液相
エピタキシャル法によって前記電気光学単結晶膜を形成
するのに際し、溶質と溶融媒体とを含む溶融体中に液相
と固相を共存させ、次いで前記溶融体の温度を下げて前
記液相を過冷却状態にし、前記電気光学単結晶基板をこ
の液相に接触させて前記電気光学単結晶膜をエピタキシ
ャル成長させることを特徴とする、電気光学品の製造方
法。 - 【請求項4】前記溶質と溶融媒体とを含む溶融体の温度
を、その飽和温度以下に保持することにより、前記溶融
体中に前記溶質からなる固相を析出させ、次いで前記溶
融体の温度を更に下げて溶融体の液相を過冷却状態にす
ることを特徴とする、請求項3記載の電気光学品の製造
方法。 - 【請求項5】前記電気光学単結晶基板および前記電気光
学単結晶膜がニオブ酸リチウムからなる場合に、前記液
相と固相とが共存しているときの温度と、前記液相を過
冷却状態にしたときの温度との差を20°C以下とする
ことを特徴とする、請求項4記載の電気光学品の製造方
法。
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