JP3340570B2 - 亜鉛めっき鋼板用メタル系フラックス入りワイヤおよびガスシールドアーク溶接方法 - Google Patents

亜鉛めっき鋼板用メタル系フラックス入りワイヤおよびガスシールドアーク溶接方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は亜鉛または亜鉛合金めっ
き鋼板をガスシールドアーク溶接した場合、特にピット
やブローホールなどの欠陥が発生しにくい健全な溶接金
属が得られる亜鉛めっき鋼板用フラックス入りワイヤお
よびガスシールドアーク溶接方法に関する。
【0002】
【従来の技術】一般に、亜鉛めっき鋼板は熱延あるいは
冷延された鋼材表面に防錆の目的で亜鉛めっきを施した
もので、その主な用途は薄板分野が多く、屋根板をはじ
めとする建築材料、家庭用電気製品の部品、自動車車体
等の広範囲な分野で多く使用されている。そのため、亜
鉛めっきの方法やめっきの付着量によって鋼板の種類も
多く、例えばめっき方法の分類では、JIS G 33
02に「溶融亜鉛めっき鋼板および鋼帯」が、JIS
G 3313に「電気亜鉛めっき鋼板および鋼帯」が規
定されている他、各種の合金化溶融亜鉛めっき鋼板等が
ある。また、めっきの付着量測定方法はJIS H 0
401「溶融亜鉛めっき試験方法」中に規定されてお
り、鋼板のめっき付着量についても例えばJIS G
3302「溶融亜鉛めっき鋼板および鋼帯」には40〜
600g/m2 の範囲でJIS G3313「電気亜鉛
めっき鋼板および鋼帯」には10〜50g/m2 の範囲
で規定されている。
【0003】これらの亜鉛めっき鋼板は、一般の鋼材同
様に、アーク溶接による加工を施されることが通常であ
るが、亜鉛めっき鋼板をアーク溶接する場合、溶接熱影
響により鉄の融点より低い沸点(906℃)をもった亜
鉛が気泡として溶融池内に侵入し、ピット(気孔が溶接
ビード表面に開口したもの)やブローホール(気孔が溶
接ビード表面に開口していないもの)等の気孔欠陥を多
発させ、溶接施工上の重要な課題となっている。
【0004】これらのピットやブローホール等の欠陥を
可及的に減少させる方法として、従来種々の溶接用ワイ
ヤや溶接施工法が提案されている。特に、溶接ワイヤに
メタル系フラックス入りワイヤとArにCO2 を混合し
た混合ガスを組み合わせたガスシールドアーク溶接方法
は、ソリッドワイヤとの組み合わせや純CO2 ガスとの
組み合わせに較べて、1.5m/minの高速溶接にお
いても溶接アークの安定性が良好であるためスパッタの
発生が少なく、フラックス入りワイヤの特徴である溶込
みの浅いビード形状により、溶接熱影響による亜鉛の蒸
発量を少なくできるため、亜鉛めっき鋼板の溶接には有
利な方法である。
【0005】亜鉛めっき鋼板用フラックス入りワイヤ
や、フラックス入りワイヤを用いたガスシールドアーク
溶接方法としては、特開昭64−31596号公報に全
ワイヤ中のC、O量を特定したことを特徴とするフラッ
クス入りワイヤが、特開平3−146295号公報にS
i、Mn、NbおよびV量とポテンシャル水素量を特定
したフラックス入りワイヤが、また、特公平4−557
97号公報にC、P、Zr、Ti、Nb量を特定したフ
ラックス入りワイヤ等が開示されている。これらのワイ
ヤはいずれもCO2 、純ArまたはAr−CO2 混合ガ
スとメタル系フラックス入りワイヤの組み合わせを用い
たガスシールドアーク溶接用ワイヤであり、それぞれ特
定のワイヤ成分と特定のめっきの付着量を有する亜鉛め
っき鋼板に対してのみ気孔欠陥の減少効果が得られてい
る。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】前述のように、純Ar
またはAr−CO2 混合ガスをシールドガスとし、メタ
ル系フラックス入りワイヤの組み合わせを用いたガスシ
ールドアーク溶接において、特定の金属成分のワイヤを
用いたガスシールドアーク溶接方法が提案されている
が、従来のワイヤを用いたガスシールドアーク溶接方法
は特定のめっきの付着量を有する亜鉛めっき鋼板に対し
てのみ有効なガスシールドアーク溶接方法であった。そ
のため、めっきの付着量の少ない場合には溶接金属に過
剰な水素が侵入したり、亜鉛と未化合の添加元素が溶接
金属の性能を劣化させる可能性が、まためっきの付着量
が多い場合には、従来の方法では気孔欠陥減少効果が得
られない等の問題があった。
【0007】さらに、シールドガスに酸化性の成分を添
加してワイヤ中金属元素の影響をコントロールする方法
も考えられるが、シールドガスに酸化性の成分を添加し
た場合には、アークが不安定になったり、スパッタが多
く発生したりするため純ArまたはAr−CO2 混合ガ
スを用いた場合の特徴であるアーク安定性そのものが損
なわれる恐れがあった。
【0008】本発明は、純ArまたはAr−CO2 混合
ガスをシールドガスとし、メタル系フラックス入りワイ
ヤの組み合わせを用いたガスシールドアーク溶接におい
て、従来のガスシールドアーク溶接方法では不可能であ
った広範囲な亜鉛めっきの種類およびめっきの付着量の
異なる鋼板に対して、高速溶接におけるアークの安定性
に優れ、亜鉛蒸気に起因するピット、ブローホール等の
気孔欠陥を少なくする亜鉛めっき鋼板用フラックス入り
ワイヤおよびガスシールドアーク溶接方法を提供するこ
とを課題としてなされたものである。
【0009】
【課題を解決するための手段】先ず、本発明者らは、溶
接電流およびアーク電圧と溶接アーク像を高速かつ高精
度に観察できるアーク溶接現象解析装置によって、従来
のメタル系フラックス入りワイヤを用いた亜鉛めっき鋼
板のアーク溶接現象を詳細に観察し、下記(1)〜
(3)の特徴を見いだした。 (1)メタル系フラックス入りワイヤとの組み合わせに
おいて、純Arまたは30vol%以下のCO2 を混合
した混合ガスではアーク安定性は良好であるが、CO2
混合率が30vol%を越えるとアークが不安定にな
り、溶滴移行においても短絡や不安定な溶滴形状での移
行が発生し易くなり、スパッタ発生量が著しく増加す
る。 (2)めっきの付着量が多い亜鉛めっき鋼板ほど、溶融
池からのガス発生量が多く気孔欠陥の発生量も多い。 (3)溶融池後方の凝固界面付近に微量のスラグが発生
し、スラグの粘性が高く厚さの大きいスラグとなる場合
に、気孔欠陥の発生する頻度が高い。
【0010】そして、亜鉛めっき鋼板の気孔欠陥を減少
させるためには、下記(a)〜(c)の作用が必要と考
え、ワイヤ成分を種々調整したメタル系フラックス入り
ワイヤで溶接を行い、アークの安定性が良好でかつ溶接
金属中の気孔欠陥を少なくできるガスシールドアーク溶
接方法を検討した。 (a)ワイヤ中の脱酸元素を制限し、さらに鋼板のめっ
きの付着量に対してワイヤ中の酸素量を適正にコントロ
ールし、鋼板に付着した亜鉛を酸化させることによって
亜鉛蒸気の放出量を抑制する。 (b)溶融池の酸素ポテンシャルを高めることにより、
溶融金属の粘性を下げ、攪拌作用により亜鉛蒸気の放出
をし易くする。 (c)ZnOおよび脱酸金属元素の酸化物を含む複酸化
物のスラグ組成を低融点かつ低粘性の組成とし、溶融池
表面部の凝固界面近傍における気泡の放出をし易くす
る。
【0011】その結果、めっきの付着量とワイヤ成分の
関係に最適な組み合わせが存在し、かつ溶接時に発生す
る微量のスラグの性状をコントロールすることによって
気孔欠陥の発生を効果的に減少することができるフラッ
クス入りワイヤおよびガスシールドアーク溶接方法を発
明した。すなわち、本発明の要旨は亜鉛または亜鉛合金
めっき鋼板を純ArまたはArに30vol%以下のC
2 を混合したシールドガスを用いて行うガスシールド
アーク溶接において、ワイヤ全体に対して、C:0.0
5〜0.10wt%、Si:0.10〜0.60wt
%、Mn:0.20〜1.00wt%、Nb、Vの1種
類以上の合計:0.20〜0.90wt%、SiO2
は珪酸化合物がSiO2 に換算してワイヤ全体に対して
0.30wt%以下を満足し、かつ鋼板溶接面における
めっきの付着量X(g/m2 )に対し、酸素含有量O
(wt%)がワイヤ全体に対して、0.43・logX
−0.2≦O≦0.43・logXであることを特徴と
するメタル系フラックス入りワイヤおよびガスシールド
アーク溶接方法である。
【0012】
【作用】以下に本発明の亜鉛めっき鋼板用フラックス入
りワイヤおよびガスシールドアーク溶接方法の作用を詳
細に説明する。先ず、本発明の溶接方法において、亜鉛
または亜鉛合金めっき鋼板を純ArまたはArに30v
ol%以下のCO2 を混合したシールドガスとメタル系
フラックス入りワイヤとの組み合わせを用いて行うガス
シールドアーク溶接方法に限定した理由であるが、本発
明のフラックス入りワイヤおよび溶接方法は溶接アーク
雰囲気中における亜鉛蒸気および金属成分の酸化を制御
することに特徴があり、シールドガス組成と後述のワイ
ヤ成分との組み合わせにおいてのみその効果が発揮され
るものであり、シールドガスの酸化性が必要以上に大き
くならないことおよびアークの安定性が良好であること
が重要な要件である。
【0013】従って、シールドガスは、前述のように、
純ArまたはArに30vol%以下のCO2 を混合し
た混合ガスが必要である。CO2 混合率が30vol%
を超える場合やO2 等の酸化成分が添加された場合は、
後述のワイヤ組成との組み合わせによる効果が発揮でき
ない上にアークが不安定になり、溶滴移行性においても
短絡や不安定な溶滴形状での移行が発生し易くなり、ス
パッタ発生量も著しく増加する。また、本発明のフラッ
クス入りワイヤおよび溶接方法はめっきの付着量300
g/m2 以下の場合に適用される。
【0014】さらに、本発明のフラックス入りワイヤを
メタル系のフラックス入りワイヤとしたことについて
は、ソリッドワイヤに比べてフラックス入りワイヤのア
ーク安定性が非常に良好であり溶接条件に対する裕度が
大きいこと、スラグ成分を多量に含むスラグ系のフラッ
クス入りワイヤでは、溶接時に多量のスラグが発生し亜
鉛蒸気や他のガス成分の放出が困難であること等の理由
による。
【0015】次に、本発明のフラックス入りワイヤの
C、Si、Mn、NbおよびVの組成限定理由について
述べる。本発明のフラックス入りワイヤは亜鉛めっき鋼
板の特定のめっきの付着量に対して、特定の範囲のワイ
ヤ酸素量を含有することに特徴があるが、ワイヤ中Cは
溶接金属の強度を確保すると共に、ガスシールドアーク
溶接では溶接アーク雰囲気中の酸素と最も良く結合する
成分でありC添加量が0.10wt%を越えた場合には
めっきの亜鉛を酸化するためのワイヤ中酸素量のバラン
スが崩れる。さらに、他の金属成分との兼ね合いから溶
接金属の低温割れが発生し易くなるため0.10wt%
以下に制限する必要がある。また逆に0.05wt%未
満の場合には溶融池の攪拌効果不足によるブローホール
が増加すると共に溶接金属の強度が不足するため採用で
きない。従って、ワイヤ中のCは0.05〜0.10w
t%の範囲に制限する必要がある。
【0016】ワイヤ中のSi、Mnは、何れも溶接金属
の機械的性能を確保すると共に、その一部は後述のワイ
ヤ中酸素と結合して複合酸化物組成の酸化皮膜またはス
ラグを形成する成分である。これらの成分を過剰に添加
した場合には亜鉛の酸化作用が抑制されると共に、溶融
池表面部の凝固界面近傍におけるスラグ生成量が過大に
なり気孔欠陥を低減する効果が発揮できないため、Si
は0.60wt%以下にMnは1.00wt%以下に制
限する必要がある。しかしSiを0.10wt%未満
に、Mnを0.20wt%未満にまで低下した場合には
脱酸不足となり、逆に気孔欠陥が発生し易くなる。従っ
てワイヤ中Siの適正量は0.10〜0.60wt%、
ワイヤ中Mnの適正量は0.20〜1.00wt%の範
囲に限定される。
【0017】次に、ワイヤ中のNbおよびVの作用につ
いて述べる。一般にメタル系フラックス入りワイヤで
は、鉄粉等の粉体原材料に表面酸化皮膜として不可避に
存在する酸化物、アーク安定剤または粉体原料の予備処
理剤として使用するアルカリ珪酸塩等の酸化物成分が存
在する。これらの酸化物成分、溶接によるワイヤ中のS
i、Mnの酸化、さらにはめっきの亜鉛が酸化して生成
するZnO等により溶融池表面にはSiO2 −ZnO−
MnO−FeO系のスラグが発生するが、このスラグの
粘性および溶融金属との界面張力が大である場合には、
溶融金属の対流により、凝固界面の近傍に濡れの悪いス
ラグが肉厚に形成される。この厚いスラグが気泡の放出
を阻害することにより気孔径の大きいピットやブローホ
ールが形成される原因となる。
【0018】ワイヤ中のNb、Vはその一部がシールド
ガスに混入した空気中の窒素と結合し窒素ガスに起因す
る気孔の発生を防止するが、本発明の溶接方法では、多
くは発生するスラグに対して、その粘性を低下させる作
用をする。NbおよびVは後述のワイヤ中酸素により酸
化されNb2 5 およびV2 5 としてスラグに作用す
ることによりスラグの粘性が低下し、気泡の放出を容易
にする。この効果を得るためにワイヤ中Nb、Vの量は
1種類以上の合計で0.20wt%以上必要であるが、
Nb,Vが1種類以上の合計で0.90wt%を越える
場合には溶接金属中に過剰に合金され、溶接金属が強度
過大となりすぎたり割れが発生し易くなるためNb、V
の量は0.20〜0.90wt%に限定される。
【0019】また、メタル系フラックス入りワイヤに
は、アーク安定剤または粉体原料の予備処理剤として使
用するアルカリ珪酸塩等の酸化物成分が存在することは
前述したが、これら酸化物中のSiO2 は微量でもスラ
グの量および粘性に及ぼす影響が大であり、ワイヤ中に
含まれるSiO2 又は珪酸化合物がSiO2 に換算した
量が、ワイヤ全体に対して0.30wt%を越える場合
には、スラグの発生量が過大かつ厚みのあるものとな
り、特にめっきの付着量が多い鋼板の場合には、亜鉛蒸
気や過剰の酸化ガス等の気泡がスラグから放出され難く
なる。従って、ワイヤ中SiO2 はSiO2 又は珪酸化
合物がSiO2 に換算した量が、ワイヤ全体に対して
0.30wt%以下になるよう限定されなければならな
い。
【0020】さらに、ワイヤ中の酸素量の限定理由であ
るが、本発明者らは、前述のように、広範囲なめっきの
付着量を有する種々の亜鉛めっき鋼板の気孔欠陥を減少
せしめるためには、鋼板のめっきの付着量に対してワイ
ヤ中の酸素量を適正にコントロールし、鋼板に付着した
亜鉛を酸化させることによって亜鉛蒸気の放出量を抑制
する方法が有効であると考えた。そして、種々のめっき
の付着量を有する亜鉛めっき鋼板について、ワイヤ中酸
素量の異なるメタル系フラックス入りワイヤを用いて溶
接試験を行った場合の耐気孔欠陥性を調査した結果、鋼
板のめっきの付着量とワイヤ中の適正酸素量の範囲との
関係は対数関数となり、その範囲は、鋼板溶接面におけ
るめっきの付着量X(g/m2 )に対し、酸素含有量O
(wt%)がワイヤ全体に対して、0.43・logX
−0.2≦O≦0.43・logXの範囲であった。
板の亜鉛めっき付着量に対するワイヤ中の酸素量が0.
43・logX−0.2(wt%)未満であると、鋼板
に付着した亜鉛を酸化させるに十分な酸素がなく、亜鉛
蒸気の放出量を抑制できず、気孔欠陥が多く生成する。
逆に鋼板の亜鉛めっき付着量に対するワイヤ中の酸素量
が0.43・logX−0.2(wt%)を越えると、
スラグ生成量が多くなり、亜鉛蒸気や他のガス成分の放
出が困難となって気孔欠陥が多く生成する。
【0021】尚、本発明のフラックス入りワイヤではワ
イヤ中のP、S、Ni、Cr、Mo、Cu、Ti、Z
r、RE金属等の他の成分は規定していないが、耐気孔
欠陥性を劣化させない範囲で添加をしてもよい。またワ
イヤの形状は、酸素の制御が容易なシームレスタイプが
良好であるが、外皮にフープを使用したタイプでもよ
く、金属成分や酸素の添加方法についても単体、化合物
としてフラックス中に添加しても、外皮金属中に添加し
てもよい。さらに、本発明の溶接方法に使用する溶接電
源や他の溶接周辺装置についても特に制限されないが、
インバータ方式のパルス波形を有する電源を併用するこ
とによってさらに良好な効果が得られる。
【0022】
【実施例】本発明の実施例を、試作ワイヤによる溶接試
験結果により説明する。表1に試作したメタル系フラッ
クス入りワイヤの組成と、そのワイヤを用いて亜鉛めっ
き鋼板の重ねすみ肉溶接を行い、気孔欠陥の発生量を比
較した結果を示す。本溶接試験に使用した試験板はJI
S G 3302 SGC400 相当材で、めっきの
付着量44.6g/m2 のものを使用した、寸法は何れ
も板厚2.0mm×幅50mm×長さ300mmで、溶
接ワイヤのワイヤ径は1.2mmである。溶接試験は8
0%Ar−20%CO2 の混合ガスを使用し溶接電流2
00A、溶接電圧24V、溶接速度20mm/secの
条件により重ねすみ肉溶接を行った。気孔欠陥率は溶接
試験後の試験板のX線透過試験写真から溶接ビード断面
積に対する気孔欠陥の断面積百分率を計算することによ
って求めた。亜鉛めっき鋼板の溶接部の気孔欠陥率によ
る評価は溶接部の静的強度および疲労強度を考慮し、1
0%未満を良好とし10%以上を不良として判定した。
【0023】表1から明かなとおり、ワイヤ中C、S
i、Mn、Nb、Vの1種類以上の合計、ワイヤ中Si
2 が本発明範囲以外であるW4〜W12のワイヤを用
いて溶接した比較例はいずれも気孔欠陥率が高く使用で
きない。特に、Mnが低すぎるW8ではアーク不安定に
より、Nb+Vの高すぎるW11、SiO2 の高すぎる
W12のワイヤではスラグ量が過大となり欠陥率が30
%以上にもなる。しかし、本発明例W1〜W3のワイヤ
で溶接した場合はいずれも気孔欠陥率が10%未満であ
り良好な効果が認められる。
【0024】また図1は、表2に示す5種類のめっきの
付着量を有する板厚2.0mmの亜鉛めっき鋼板につい
て、C、Si、Mn、Nb、V、SiO2 は表1、W3
の組成のままでワイヤ中の酸素量をFeOを調整するこ
とにより0.12〜1.06wt%に変化させたメタル
系フラックス入りワイヤを用いて重ねすみ肉溶接を行っ
た場合の耐気孔欠陥性を調査した結果である。それぞれ
の鋼板のめっきの付着量はJIS H0401の膜厚試
験方法により実測した。溶接条件は、表1の溶接条件と
同一であり、耐気孔欠陥性の評価は表1の方法と同じ評
価方法で欠陥率10%未満のものを耐気孔欠陥性良好、
欠陥率10%以上のものを耐気孔欠陥性不良として図示
した。
【0025】図1から、本発明の範囲である図中の2直
線間の範囲、すなわち、鋼板溶接面におけるめっきの付
着量X(g/m2 )に対し、酸素含有量O(wt%)が
ワイヤ全体に対して、0.43・logX−0.2≦O
≦0.43・logXの範囲の場合に比べ、本発明の範
囲から外れる場合には耐気孔欠陥性が不良となってお
り、本発明の効果が判る。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【発明の効果】以上のように、本発明のフラックス入り
ワイヤおよびガスシールドアーク溶接方法により、従来
のガスシールドアーク溶接方法では不可能であった広範
囲な亜鉛めっきの種類およびめっきの付着量の異なる鋼
板に対して、亜鉛蒸気に起因するピット、ブローホール
等の気孔欠陥を少なくするガスシールドアーク溶接が可
能となる。
【図面の簡単な説明】
【図1】亜鉛めっき鋼板の溶接における鋼板のめっきの
付着量とワイヤ中酸素が気孔欠陥に及ぼす影響を示す図
である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 三浦 利宏 東京都中央区築地三丁目5番4号 日鐵 溶接工業株式会社 研究所内 (72)発明者 須田 一師 東京都中央区築地三丁目5番4号 日鐵 溶接工業株式会社 研究所内 (72)発明者 志村 竜一 東京都中央区築地三丁目5番4号 日鐵 溶接工業株式会社 研究所内 (56)参考文献 特開 平3−146295(JP,A) 特開 平4−361877(JP,A) 特開 平1−143775(JP,A) 特開 平2−263594(JP,A) 特開 平6−31483(JP,A) 特開 平6−285685(JP,A) 特開 昭64−31596(JP,A) 特開 平2−235597(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B23K 9/23,35/30,35/368

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ワイヤ全体に対して、C:0.05〜
    0.10wt%、Si:0.10〜0.60wt%、M
    n:0.20〜1.00wt%、Nb、Vの1種以上の
    合計:0.20〜0.90wt%、SiO2 又は珪酸化
    合物がSiO2に換算してワイヤ全体に対して0.30
    wt%以下を満足し、かつ鋼板溶接面におけるめっきの
    付着量X(g/m2 )に対し、酸素含有量O(wt%)
    がワイヤ全体に対して、0.43・logX−0.2≦
    O≦0.43・logXであることを特徴とする亜鉛め
    っき鋼板用メタル系フラックス入りワイヤ。
  2. 【請求項2】 亜鉛または亜鉛合金めっき鋼板を、純A
    rまたはArに30vol%以下のCO2 を混合したシ
    ールドガスを用いて行うガスシールドアーク溶接におい
    て、請求項1記載のメタル系フラックス入りワイヤにて
    溶接することを特徴とする亜鉛めっき鋼板のガスシール
    ドアーク溶接方法。
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