JP3880826B2 - ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ - Google Patents

ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ Download PDF

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【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、貯蔵タンク、寒冷地向け構造物、海洋構造物などに使用される低温用アルミキルド鋼、造船用E級鋼の溶接に用いるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関し、アーク状態が極めて良好で、スパッタが少なく、溶接金属の低温靭性が安定して得られるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関する。
【0002】
【従来の技術】
貯蔵タンク、寒冷地向け構造物、海洋構造物などに使用される低温用アルミキルド鋼、造船用E級鋼の溶接には高能率性と利便性から、ガスシールドアーク溶接が広く使われており、その溶接用ワイヤにはソリッドワイヤとフラックス入りワイヤがある。
【0003】
ソリッドワイヤはJIS Z 3325他に規格化されている。フラックス入りワイヤには大きく分けてスラグ系フラックス入りワイヤと称されるスラグ成分を主としたフラックスを充填したワイヤと、メタル系フラックス入りワイヤと称される金属成分を主としたフラックスを充填したワイヤがあり、JIS Z 3313他に規格化されている。
【0004】
ソリッドワイヤは、溶接金属の機械的性質が安定して得られる、溶接金属の溶け込みが深い、スラグ生成量が非常に少ない、ヒューム発生量が少ないなどの利点がある。ソリッドワイヤを使用してアーク溶接した溶接金属の酸素量は低いため、ミクロ組織の適正化に有効なTi、B、Ni、Moといった合金成分を添加することによって、厳しい要求スペックに応えるのが比較的容易である。しかし、フラックス入りワイヤに比べて溶着量が少ない、スパッタ発生量が多く大電流での溶接ではそれが顕著になるなどの欠点がある。また、ソリッドワイヤにはNa、Kなどといったフラックス入りワイヤに広く流用されているアーク安定剤をワイヤ中に添加することはできない。
【0005】
スラグ系フラックス入りワイヤにはスラグの主成分がルチールであるルチール系が一般的であり、スパッタ発生量が少ない、溶着量が多い、広範囲の溶接条件で全姿勢溶接が可能であるなど溶接作業性に優れる利点があるが、ソリッドワイヤに比べて溶接金属の溶け込みが浅い、スラグ生成量が多い、ヒューム発生量が多い、ワイヤ内に充填されるフラックスが酸化物を多く含むため溶接金属の酸素量が高く低温靱性を得るのが難しいなどの欠点がある。このルチール系フラックス入りワイヤの低温靱性を改善するために種々の手法が試みられており、例えば特開平5−329684号公報や特開平5−269593号公報に開示されているように充填フラックス内にAl、Mgなどを添加し脱酸を強化したり、金属弗化物、炭酸塩などを添加してスラグの塩基度を高めたりして、溶接金属の酸素量を低減する試みがなされている。しかし、この手法を用いるとアーク状態が不安定になり、スパッタ発生量が顕著に増加するなどフラックス入りワイヤの特徴である良好な溶接作業性が劣化する。
【0006】
メタル系フラックス入りワイヤは充填フラックスの主成分が金属粉であり、その最大の特徴はスパッタの発生量が少なく、溶着量の多いことにある。しかし、その特徴は充填率が10%以上と高充填率である場合に効果が現れるものであって、本発明のような低充填率の場合はその特徴が生かされない。
【0007】
以上に述べたように、良好な溶接作業性を保ちつつ溶接金属の良好な低温靱性を得るためにはソリッドワイヤおよびフラックス入りワイヤ双方の長所を取り入れたガスシールドアーク溶接用のワイヤが望まれる。
【0008】
このような要求に応える一つの手法として、フラックス入りワイヤの低スラグ化、低ヒューム化、溶け込み深さなどの改善を目的とした、フラックス充填率5%という低充填率フラックス入りワイヤの技術開示が散見される。しかしながら、従来のフラックス成分系では溶接スラグ量の過多、ヒューム発生量の過多などの問題があり、このような低充填率ワイヤは実用に供給されていないのが実状である。
【0009】
例えば、充填フラックスの充填量をワイヤ断面積率で5〜25%が開示されている特公昭51−1659号公報がある。この発明の充填フラックスのワイヤ断面積率は5%と低い例が開示されているが、充填フラックスはアーク安定剤としてグラファイトを必須成分とするTi、Al、Mg等からなるもので、その配合比2〜10%、さらに脱酸剤を20〜90%含むものであって、かつ実質的に金属酸化物を含まないフラックスを充填するワイヤである。しかし、グラファイトを含むアーク安定剤は、そのグラファイトとワイヤ中の酸素又はワイヤ表面の付着酸素とのCO反応によるアーク不安定化の要因を含み、アークが粗くなり溶接作業性を劣化させスパッタ発生量を増加させる。また、溶接金属へC量の歩留りが過多となり溶接金属の機械的性質の調整が容易でない。
【0010】
また、特開平6−218577号公報ではフラックス充填率が5〜30%、MnおよびSの含有量そしてMnとSの比を限定した鉄粉を40〜60%、Si、Mn、Tiの鉄合金粉からなる脱酸剤を40〜60%含むフラックスを充填したフラックス入りワイヤが開示されている。これはメタル系フラックス入りワイヤに属するワイヤであり、フラックス充填率が5%、10%のワイヤにおいて、このような金属粉からなる充填フラックスでは十分に安定したアークが得られずフラックス入りワイヤとしての優れた溶接作業性は得られない。
【0011】
さらに、特開平3―180298号公報では、一次防錆剤であるプライマが塗布された鋼板のすみ肉溶接時におけるピット、ガス溝の発生防止のために、TiOをベースとしてNaOを含有し、金属弗化物および水分をも必須とするワイヤである。これはワイヤ重量比%で、低充填量のTiO、NaOを必須として含むフラックス入りワイヤであり、金属弗化物および水分をも必須とするもので、その水分とガス放出の調整が容易ではなく、また、スラグの流動性が高く、ビード形成性、溶接金属の性能に問題がある。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】
貯蔵タンク、寒冷地向け構造物、海洋構造物等に使用される低温用アルミキルド鋼、造船用E級鋼などの溶接に用いるガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤに関し、ソリッドワイヤの高溶着性、低スラグ発生量、フラックス入りワイヤの安定した溶接作業性、高生産性等の諸性能とを備えたガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤを提供することにある。
【0013】
【問題を解決するための手段】
本発明は、フラックス入りワイヤ中にアーク安定剤および特定限定されたC、Si、Mn、TiおよびBを含み、AlおよびMgの単独又は複合、MoおよびNiを単独又は複合添加し、さらにフラックス充填率を3〜10%と低充填化することにより、広い溶接条件範囲において、アーク状態が極めて良好で、スパッタが少なく、溶着金属の強度、靭性が安定して得られることを見いだし、これを完成させた。
【0014】
本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、鋼製外皮にフラックスを充填したアーク溶接用ワイヤであり、ワイヤ全質量でNa OとTiO を含む合成物:0.05〜1.8%(全ワイヤ質量%、以下同じ)、C:0.02〜0.15%、Si:0.3〜1.5%、Mn:0.8〜3.0%、Ti:0.10〜0.35%、B:0.002〜0.020%を含み、かつ、Al:0.05〜0.3%、Mg:0.05〜0.5%の1種又は2種以上を含み、その量がMn+Si+3Al+4Mg:2.5〜5であり、フラックス充填率が3〜10%であることを特徴とするワイヤである。
【0015】
前記した成分に加え、更に合金成分としてMo:0.5%以下、Ni:3.5%以下の1種又は2種以上を含有させたワイヤである。
【0016】
さらに、充填フラックスに鉄粉を含むワイヤである。
【0017】
また、鋼製外皮に継ぎ目が無い前記したワイヤである。
【0018】
以上の鋼製外皮の表面には、銅めっきが施されている前記したワイヤである。
【0019】
【発明の実施の形態】
本発明者らは、充填フラックスにNa2OおよびTiO2を含む合成物を含有させることにより、溶接時の溶滴の離脱を促進して溶滴の細粒化および移行回数を増加させてアークが安定することを見出した。また、適正な範囲のC、Si、Mnと共に、Ti、B、Al、Mg、Mo、Niを添加することによって溶接金属の低温靱性を向上させ、さらに、フラックス充填率を3〜10%と低くすることによりスラグ生成量およびヒューム発生量が少なく、深い溶け込みが得られることも見出した。
【0020】
以下に本発明のフラックス入りワイヤにおける成分等の限定理由を述べる。
【0021】
C:0.02〜0.15%について、Cは溶接金属の強度、靱性を確保するのに重要である。Cが0.02%未満ではミクロ組織の粗大化により、靱性が阻害される。また、必要な強度を得るのが困難になる。一方、Cが0.15%を超えると、溶接金属のミクロ組織がマルテンサイト化して強度が過剰に高くなり、靱性も劣化し、スパッタが多発して溶接作業性が劣化する。したがって、Cの添加量をワイヤ全重量に対して0.02〜0.15%とした。
【0022】
Si:0.3〜1.5%について、Siは脱酸剤として溶接金属の酸素量を低減し、靱性を向上させるとともに、強度を確保するのに必要である。しかし、Siが0.3%未満では脱酸力が不足し、ブローホール、ピットなど溶接欠陥が発生しやすくなり、靭性を低下させる。一方、Siが1.5%を超えると、溶接金属中への歩留りが過剰となり、過度に固溶硬化させ、靭性を低下させる。
【0023】
Mn:0.8〜3.0%について、Mnも脱酸剤として溶接金属の酸素量を低減し靱性を向上させるとともに、溶接金属の強度を確保する。また、溶融金属の流動性を高め、溶接ビード形状を改善する。0.8%未満では脱酸不足となり靱性が低下する。また、3.0%を超えると、溶接金属への歩留りが過剰となり、硬化して溶接金属の靱性を劣化させる。
【0024】
充填フラックスのSiおよびMn含有量は金属Si、金属Mn又はFe−Si、Fe−Si−Mn、Fe−Mnなど鉄合金のSi、Mnの換算値である。
【0025】
Ti:0.10〜0.35%について、Tiも強脱酸剤として働き溶接金属の酸素量を低減させる。また、溶接金属の凝固過程の高温域においてBより先に窒化物を形成してNを固定し、以降の凝固過程におけるBの窒化を抑制しフリーBとしてBをオーステナイト粒界に偏析させる。このフリーBは粒界に生成する粗大なフェライトを抑制し、靱性を向上させる。また、溶接金属に歩留るTiは上記作用の他に、旧オーステナイト粒内フェライトの核となるTi等の低級酸化物となり、微細なアシキュラーフェライトの生成を促進する。上記効果は0.10%以上の添加によって得られるが、0.35%を超えると溶接金属の固溶Tiが増え、過度に硬化し著しく靱性を劣化させる。
【0026】
B:0.002〜0.02%について、Bは前述のようにオーステナイト粒界に偏析することによって、粒界の粗大なフェライトの生成を抑制し、溶接金属のミクロ組織を微細化し、靱性を大幅に改善させる。この効果は0.002%以上の添加によって得られるが、0.02%を超えると、溶接金属に固溶し、過度に硬化して靱性を著しく劣化させる。
【0027】
Al:0.05〜0.3%について、Alは強脱酸剤として働き、溶接金属の酸素量を低減させる。しかし、0.05%未満ではその効果は得られない。また、0.3%を超えると、アークが不安定になりスパッタ発生量も多くなることに加え、生成スラグが過剰に多くなる。また、溶接金属に過度に固溶し、靱性を劣化させる。
【0028】
Mg:0.05〜0.5%について、Mgも強脱酸剤として働き、溶接金属の酸素量を低減させる。しかし、0.05%未満ではその効果は得られない。また、0.5%を超えると、アークが不安定になりスパッタ発生量も多くなる。
【0029】
Mn+Si+3Al+4Mg:2.5〜5について、この式は脱酸剤であるMn、Si、Al、Mgの適正な添加量を表現している。図1に示すとおり、溶接金属の−40℃程度における所定の靱性を得るためには、溶接金属の酸素量を600ppm以下に調整することが重要である。そのためには図2に示すように、充填フラックスの成分パラメーターとして[Mn+Si+3Al+4Mg]を2.5以上とすることにより、溶接金属の酸素量を600ppm以下にすることができる。一方、成分パラメーター[Mn+Si+3Al+4Mg]が5を超えると、アーク状態が不安定になり、スパッタが多発するようになる。また、生成スラグ量が多くなる。
【0030】
Mo:0.3%以下について、Moは溶接金属の組織を微細化し強度を確保する元素である。しかし、0.3%を超えて添加すると過度に硬化し、著しく靱性を劣化させる。
【0031】
Ni:3.5%以下について、Niは溶接金属の強度および靱性を確保し、かつ耐食性も向上させる。しかし、3.5%を超えると高温割れが発生しやすくなる。
【0032】
Na2OおよびTiO2を含む合成物について、これらは、SiO2を含む三成分系の合成物、Na2OとTiO2の割合が種々変化した合成物であっても同様な効果が得られ、本発明技術思想に含まれる。Na2OおよびTiO2を含む合成物はチタン酸ソーダであり、例えば、水酸化ナトリウムとルチールを所望の割合で配合して高温処理する方法で得ることができるが、Na2Oが10〜50%で、TiO2割合が50〜90%の範囲内の合成物とすることが好ましい。例えば、13Na2O−80TiO2、20Na2O−73TiO2、42Na2O−53TiO2、或は13Na2O−25SiO2−58TiO2を主要成分とする合成物などが挙げられるが、これらに限定されるものではない。13Na2O−25SiO2−58TiO2(チタン酸珪酸ソーダ)は、チタン酸ソーダに比較して、スラグの流動性が増してビード表面を均一に覆ってビード形成を良好にする。
【0033】
Na 2 OおよびTiO 2 を含む合成物:0.05〜1.8%について、Na 2 OおよびTiO 2 を含む合成物が0.05%未満では、ソリッドワイヤの溶接と同様に、溶滴が移行した瞬間に発生するアーク切れが防止できず、アーク状態が向上せず、スパッタ発生量が減少しないので、ソリッドワイヤを超える改善はできない。一方、1.8%を超えると、アーク切れは防止できるが、アーク長が必要以上に長くなり、その結果、スパッタ発生量が増加し、ヒュームの発生量も増加する。よって、Na 2 OおよびTiO 2 を含む合成物の添加量は0.05〜1.8%において溶接中のアーク状態が非常に良好で溶滴が小さく、スパッタ発生量が極めて少ない。
【0034】
なお、アーク安定剤としてNa OとTiO を含む合成物とは別に、Na O源をNa O換算値で0.20%以下、TiO 源をTiO 換算値で0.50%以下をNa OとTiO を含む合成物との合計量で1.8%以下含むことができる。
【0035】
本発明フラックス入りワイヤの充填フラックス充填率は、3〜10%とする。充填率が3%未満であると、フラックス充填および成形が困難となり、生産性が悪くなる。充填率が10%を超えるとスラグ発生量、スパッタ発生量が増えて、ワイヤの性能改善ができず、また、ワイヤ製造時の伸線性が劣り、断線による生産性の低下をきたす。しかし、より高い生産性と、スラグ過多、耐吸湿性を考慮した場合、フラックス充填率は3.5〜8%が好ましい。
【0036】
充填フラックスに含有させる鉄粉について、鉄粉は、溶着効率を上げ、又は、充填率を調整する目的で添加される。その好ましい添加量は、5%以下である。この鉄成分は、脱酸剤のSiおよびMn等の原料である鉄合金の鉄成分および鉄粉の合計値である。鉄粉を添加せず、金属Si、金属Mn、金属Mo、金属BまたはSi―Mn合金を使用する場合には、充填フラックス中に鉄粉を含まない場合がある。
【0037】
本発明のフラックス入りワイヤの断面形状を図3(a)および(b)に示す。図3(a)は、軟鋼パイプの鋼製外皮1に充填フラックス2を充填した後、伸線した断面、又は、帯鋼を成形工程でフラックス充填、O形に成形し、次いで溶接、伸線したワイヤの断面の模式図である。この鋼製外皮に継ぎ目のないワイヤは、大気中の水分を吸湿することなく、より良好な溶接金属性能を得ることができる。
【0038】
また、図3(b)に示す鋼製外皮1に継ぎ目を有するフラックス入りワイヤは、帯鋼を成形工程で、フラックス充填、O形に成形、さらに伸線したワイヤの断面模式図である。このワイヤにおいても、充填率が低いことから、外皮継ぎ目の接触面積が広くなり、充填フラックスと大気との遮断効果が大きく、大気水分の吸湿が極めて少ない。また、鋼製外皮の継ぎ目の形状は、図示に限られるものでなく、斜め継ぎであってもよく、外気との遮断効果はさらに向上する。
【0039】
鋼製外皮表面に銅めっきを有することにより、外皮表面に錆が発生しない、または、通電性と共にワイヤ送給性を良好にすることができる。また、ワイヤ表面にめっきを施さないワイヤは、ワイヤ表面に防錆剤、潤滑剤を適宜付着させて、耐錆性とワイヤ送給性を確保する。
【0040】
以上が本発明を構成する基本成分およびワイヤ構造であるが、充填フラックスに添加できる成分にはZr等の脱酸剤を通常のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤと同様に、溶接金属の脱酸不足によるブローホールの発生防止および、又は機械的性質の調整のために含有させる。しかし、過剰に含有されるとスラグ焼き付きによるスラグ剥離性不良、ビード外観不良、又は溶接金属の強度が過大となり靱性、耐割れ性が劣化する。なお、脱酸剤は溶接金属中に歩留り合金剤として働く以外にもスラグ化し、溶融スラグの組成および生成量にも影響し、本発明の目的効果を損なう場合があるので、種類、含有量は適宣制限することが好ましい。
【0041】
本発明は溶接ビードを覆っているスラグの剥離性を向上させる成分として、Bi(酸化Biを含む)、Sなどを本発明の基本的な技術思想に影響を与えない範囲で適宣添加できる。
【0042】
また、充填フラックスに含まれる金属成分は鋼製外皮の成分とその含有量を考慮して各限定した範囲内で配合成分を調整する。
【0043】
本発明フラックス入りワイヤの径は細径であり、溶接時の電流密度を高くし、高溶着率を得るために直径0.8〜2.0mmが好ましい。
【0044】
本発明フラックス入りワイヤを使用するアーク溶接時のシールドガスは、CO2ガスを使用して十分な溶接作業性が得られるが、さらに溶接作業環境面からヒューム発生量が少なくなるAr―CO2混合ガスを使用してもよい。
【0045】
次に、本発明品のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤの製造法を説明する。
【0046】
本発明フラックス入りワイヤの製造方法は、鋼製外皮に継ぎ目を有しない図3(a)に示すワイヤは軟鋼パイプをコイル状ボビン巻きにして振動装置に強固に載置し、充填フラックスを振動充填した後、縮径して素線とし、さらに伸線して0.8〜2.0mmの所定径の製品とする方法、また、帯鋼を成形工程で順次、U字形、フラックス充填、O形、溶接後、縮径して素線とし、引き続いて伸線してワイヤとする。
【0047】
また、鋼製外皮に継ぎ目を有する図3(b)に示すワイヤの製造方法は、帯鋼を成形工程で順次、U字形、フラックス充填、O形した後、縮径して素線とし、引き続いて、伸線してワイヤを製造する。これらの製造方法における伸線工程の中間においては適宣、通常の焼鈍工程を採用する方法である。
【0048】
【実施例】
以下に本発明の総括した実施例と比較例を用いて総括的に説明する。
【0049】
本発明および比較例に用いた軟鋼パイプの成分は、表1に示すP1、P2を、また、継ぎ目ありのワイヤ用の帯鋼は表1のH1を使用し、表2および表3に示す組成のフラックスを充填後、圧延およびダイス伸線、軟化および脱水素処理として中間焼鈍を施し、ワイヤによってはめっき処理を行い、鋼製外皮に継ぎ目なし、継ぎ目ありのワイヤ径1.2mmのフラックス入りワイヤを製造した。
【0050】
【表1】
Figure 0003880826
【0051】
【表2】
Figure 0003880826
【0052】
【表3】
Figure 0003880826
【0051】
表2および表3に示すワイヤ記号W1〜W6は本発明の実施例であり、ワイヤ記号W7〜W20は比較例である。
【0052】
本発明例と比較例の溶着金属試験は、溶接電流280A、アーク電圧30V、溶接速度25cm/min、溶接入熱が20kJ/cmとし、予熱温度およびパス間温度100±10℃、チップ−母材間距離:20mm、炭酸ガス流量:25リットル/min、表4に示す化学成分の鋼板を用いJIS Z 3111に基づいた開先形状で実施した。
【0052】
【表4】
Figure 0003880826
【0053】
溶着金属の機械的性質はJIS Z 3111に基づいて引張試験片(JIS Z 2201 A1号)および衝撃試験片(JIS Z 2242 4号)を作成し、試験した。そして、−40℃における吸収エネルギーが80J以上であれば合格とした。
【0054】
また、スパッタ発生量、溶滴移行回数、スラグ状態および溶け込み深さは、溶接電流280A、アーク電圧30V、溶接速度25cm/min、チップ−母材間距離:20mm、炭酸ガス流量:25リットル/minで評価をした。スパッタ発生量は、1分間の連続溶接を行い、その溶接中に発生したスパッタの捕集作業を1つのワイヤに対して3回行い、その捕集量(g/min)平均値で評価し、1.0g/min以下を合格とした。
【0055】
溶接における溶滴移行回数は、溶接中のアーク現象を高速度ビデオカメラで撮影して1秒間の溶滴移行回数を計測し、1つのワイヤに対して3回行い、その平均値で評価し、35回/sec以上を合格とした。
【0056】
スラグ状態については、溶接後の溶接ビード上に生成したスラグの生成量を目視による官能評価を行った。
【0057】
溶け込み深さは、ビードオンプレート溶接を行い、その溶接ビードをビード長手方向に対して直角方向に切断し、その断面を研磨、腐食して溶け込み状態を観察し、鋼板上面表面から溶け込み最下部までの距離を計測し、3回計測した結果の平均値を溶け込み深さとして評価し、3mm以上を合格とした。
【0058】
表5に溶接試験結果および溶接作業性の評価結果を示す。
【0059】
【表5】
Figure 0003880826
【0060】
本発明例であるワイヤ記号W1〜W6は、Na 2 OおよびTiO 2 を含む合成物、Si、Mn、Ti、B、Al、Mg、Mo、Niを適量含み、フラックス充填率が適正であるので、アーク安定し溶滴移行回数が多くてスパッタ発生量少なく、溶接金属の酸素量が少なく引張強さおよび吸収エネルギーが高く良好であるなど、極めて満足な結果であった。
【0061】
これに対し、比較例であるワイヤ記号W7〜W20は以下に述べるように不良であった。
【0062】
ワイヤ記号W7は、フラックス充填率が低く、生産性が悪くなった。したがって、評価を行わなかった。
【0063】
ワイヤ記号W8は、フラックス充填率が高いので、スラグ生成量およびスパッタ発生量が多くなった。また、Siが少ないので、吸収エネルギーが低値であった。
【0064】
ワイヤ記号W9は、アーク安定剤であるNaOとTiOを含む合成物が少ないので、溶滴移行回数が少なくスパッタ発生量が多くなった。また、Siが少ないので、引張試験片にブローホールがあった。
【0065】
ワイヤ記号W10は、アーク安定剤であるNaOとTiOを含む合成物が多いので、スパッタおよびヒューム発生量が多くなった。また、Mnが多いので、引張強さが高くなって吸収エネルギーが低値であった。
【0066】
ワイヤ記号W11は、Cが多いので、スパッタ発生量が多く、引張強さが高くなって吸収エネルギーが低値であった。
【0067】
ワイヤ記号W12は、Tiが少ないので、吸収エネルギーが低値であった。
【0068】
ワイヤ記号W13は、Mn+Si+3Al+4Mgが多いので、アーク状態が不安定でスパッタ発生量およびスラグ量が多くなった。また、Tiが多いので、引張強さが高くなって吸収エネルギーが低値であった。
【0069】
ワイヤ記号W14は、Bが多いので、引張強さが高くなって吸収エネルギーが低値であった。また、Niが多いので、クレータ部に高温割れが生じた。
【0070】
ワイヤ記号W15は、Bが少ないので、吸収エネルギーが低値であった。
【0071】
ワイヤ記号W16は、Moが多いので、引張強さが高くなって吸収エネルギーが低値であった。
【0072】
ワイヤ記号W17は、Alが多いので、アークが不安定になりスパッタ発生量およびスラグ生成量が多くなった。吸収エネルギーが低値であった。
【0073】
ワイヤ記号W18は、Mgが多いので、アークが不安定になりスパッタ発生量が多くなった。
【0074】
ワイヤ記号W19は、Mn+Si+3Al+4Mgが少ないので、溶接金属の酸素量が多くなって吸収エネルギーが低値であった。
【0075】
ワイヤ記号W20は、ソリッドワイヤであるので、アーク状態が不安定でスパッタ発生量が多くなった。
【発明の効果】
以上説明したように、本発明のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤは、特に貯蔵タンク、寒冷地向け構造物、海洋構造物、等に使用される低温用アルミキルド鋼、造船用E級鋼の大電流溶接におけるアーク状態が極めて安定し、溶滴移行回数が多く、溶滴が細粒移行してスパッタ発生量が少なく、溶け込みが深く、従来のソリッドワイヤおよびフラックス入りワイヤの良い点をさらに向上させ、溶接作業性およびビード形状が良好であり、合金成分の調整がフラックスにより行うことが極めて容易であることから、溶接部の品質および溶着効率が優れており、溶接作業の高能率化に貢献できる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 溶接金属中の酸素量と衝撃試験における−40℃における吸収エネルギーの関係を示す図である。
【図2】 Si+Mn+3Al+4Mgと溶接金属の酸素量の関係を示す図である。
【図3】 本発明ガスシールアーク溶接用フラックス入りワイヤの断面を示し、(a)は継ぎ目無しワイヤ、(b)は継ぎ目有りワイヤの断面模式図である。
【符号の説明】
1 鋼製外皮
2 フラックス
3 継ぎ目

Claims (5)

  1. ガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤにおいて、鋼製外皮にフラックスを充填したワイヤであり、ワイヤ全質量でNa OとTiO を含む合成物:0.05〜1.8%(全ワイヤ質量%、以下同じ)、C:0.02〜0.15%、Si:0.3〜1.5%、Mn:0.8〜3.0%、Ti:0.10〜0.35%、B:0.002〜0.020%を含み、かつ、Al:0.05〜0.3%、Mg:0.05〜0.5%の1種又は2種以上を含み、その量がMn+Si+3Al+4Mg:2.5〜5に規定されるフラックス充填率が3〜10質量%であることを特徴とするガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  2. Mo:0.3%以下、Ni:3.5%以下の1種又は2種以上を含むことを特徴とする請求項1記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  3. 充填フラックスに鉄粉を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  4. 鋼製外皮に継ぎ目のないことを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
  5. 鋼製外皮表面に銅めっきを有することを特徴とする請求項1乃至請求項のいずれかに記載のガスシールドアーク溶接用フラックス入りワイヤ。
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