JPH09239583A - 連続溶接性に優れたパルスアーク溶接用鋼ワイヤ - Google Patents

連続溶接性に優れたパルスアーク溶接用鋼ワイヤ

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JPH09239583A
JPH09239583A JP4597996A JP4597996A JPH09239583A JP H09239583 A JPH09239583 A JP H09239583A JP 4597996 A JP4597996 A JP 4597996A JP 4597996 A JP4597996 A JP 4597996A JP H09239583 A JPH09239583 A JP H09239583A
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wire
welding
arc
arc welding
steel wire
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JP4597996A
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English (en)
Inventor
Hiroshi Koyama
汎司 小山
Isamu Kimoto
勇 木本
Akira Hirano
侃 平野
Toshihiko Chiba
利彦 千葉
Takeshi Kato
剛 加藤
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Welding and Engineering Co Ltd
Original Assignee
Nippon Steel Welding and Engineering Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 (修正有) 【課題】薄鋼板および亜鉛めっき鋼板の高速ガスシール
ドアーク溶接において、優れた耐気孔性、耐ギャップ
性、低スパッタ性と連続溶接性が得られるパルスアーク
溶接鋼ワイヤを提供する。 【解決手段】ワイヤ表面付着物に由来するCa,Na,
Kが共に5ppm以下であること。重量%で、C:0.
02〜0.40%,Si:0.50〜2.0%,Mn:
0.20〜3.0%,P:0.005〜0.050%,
S:0.005〜0.050%,O:0.0030〜
0.050%,Ca:0.0005%以下であること。
さらに、Al:0.005〜0.20%,Ti:0.0
05〜0.20%,Zr:0.005〜0.20%の1
種または2種以上を含有し、且つNb:0.05〜1.
50%,V:0.05〜1.50%,Ta:0.05〜
1.50%の1種または2種以上を含有し、残部が実質
的にFeよりなる連続溶接性に優れたパルスアーク溶接
用鋼ワイヤ。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、主としてCO2
るいはAr−CO2混合ガスをシールドガスとして使用
する薄板用鋼ワイヤに関し、詳しくは亜鉛めっき鋼板、
非表面処理の冷延および熱延の薄板のガスシールドアー
ク溶接に使用して優れた連続溶接性を得るためのワイヤ
に係わるものである。
【0002】
【従来の技術】鋼材の錆び易い欠点を補う手段として、
冷延または熱延鋼板表面に亜鉛系塗料塗布や亜鉛めっき
を施した表面処理鋼板がある。これら表面処理鋼板は薄
板分野で、特にプレハブ等の柱、屋根の建築材料、ガソ
リン缶、洗濯機の部品のほか、自動車車体においても使
用されている。これら表面処理鋼板の溶接にはガスシ−
ルドアーク溶接法が多用されている。亜鉛系表面処理鋼
板の薄板の溶接ではピット、ブローホール等の気孔欠
陥の発生、スパッタの増加などの問題点に加え、溶
落ちや間隙に対する条件範囲が狭いなどの各問題点が
ある。
【0003】即ち、薄板の自動化は生産性向上を目的と
するもので、従ってより高速で安定した溶接が求めら
れ、多くの場合1m/min程度以上の速度の高速溶接
が採用される。このような薄板の高速溶接では、溶接入
熱が小さく、冷却速度も早いため、亜鉛めっき鋼板の場
合には溶融金属に侵入した亜鉛系ガスの浮上に要するに
充分な時間が得られずに気孔欠陥が多発するだけでな
く、シールド不足による気孔欠陥も考慮する必要があ
る。また、亜鉛めっき等の表面処理を施さない薄板(以
下、薄鋼板という)の高速溶接においては、開先間隙に
対しての条件裕度も狭くなるため耐ギャップ性も同時に
満足することが必要である。
【0004】亜鉛めっき鋼板に対する気孔欠陥の防止技
術として特開昭63−56395号公報にはTe,S
e,REM等の単体または酸化物、炭酸塩、弗化物等で
構成される防止剤を鋼板表面に塗布する技術が、また特
開昭63−108995号公報にはりん鉄を主成分とし
た塗布剤が提案されているが、これらは溶接前に予め鋼
板表面塗布することが必要であるばかりでなく、溶接後
も該塗布剤の除去の工数が必要となるものであり実用的
でない。
【0005】次に、鋼ワイヤとしては特開昭63−72
498号公報にはAl,Ti,Cuの他に多量のNiを
含有させるソリッドワイヤの提案がある。しかしなが
ら、この様な組成では本発明が対象とする亜鉛めっき鋼
板の高速溶接には効果が期待できないものである。ま
た、特開平1−309796号公報には、C,Si,M
n,Bi,O,Ti添加量を規制した亜鉛めっき鋼板溶
接用ソリッドワイヤが開示されている。この技術は亜鉛
めっき鋼板の気孔抑制やスパッタ発生量の減少には効果
があるものの、薄板高速溶接の耐ギャップ性には対して
は配慮がなされていない。
【0006】また、特開平4−41098号公報では
C,Si,Mn,BiにNb,VおよびAl,Ti,Z
rを規制した各種表面処理鋼板用ソリッドワイヤがあ
る。このワイヤも亜鉛めっき鋼板の耐気孔性に対しては
効果があるものの、スパッタ量や耐ギャップ性に対して
は効果が期待出来ない。また、特開平5−305445
号公報では、亜鉛めっき鋼板の溶接方法が提案されてい
るが、この技術は溶接速度が、100cm/minを超
える高速溶接では耐気孔性に対して効果がなく、さらに
耐ギャップ性に対しては配慮がなされていない。
【0007】さらに、薄板の高速溶接を対象とした特開
平5−305476号公報はC,Si,Mn,P,S,
Al,N,O量およびMn/Si比を規定したソリッド
ワイヤの提案である。このうちSの添加は普通鋼板の高
速溶接におけるスパッタの低減、ビード形成性の改善お
よびスラグ剥離性の改善を目的としている。またOにつ
いては、心線加工性と溶接作業性への悪影響からむしろ
制限しているものである。このように、この提案も3.
2mm程度の普通鋼板のみの高速溶接を対象としたもの
で、表面処理鋼板の耐気孔性を満足できるものではな
い。
【0008】このような薄鋼板や表面処理鋼板の自動溶
接上の課題に加えて、最近では溶接ロボットの採用によ
る自動化が進んでくると、多数の溶接ロボットを同時に
使用して1ラインを構成する生産方式が採用される場合
が多い。このような生産方式では、1台のロボットの溶
接トラブルによる稼働停止が、そのまま全ライン停止に
至り、自動化阻害要因として顕在化する傾向にある。溶
接トラブル発生には様々な原因が考えられるが、溶接材
料からの観点では、より安定して長時間の連続溶接性が
強く要望されている。
【0009】特に、パルスア−ク溶接のように、周期的
に平均電流の数倍にも及ぶ高電流が付与される場合に
は、溶接電流の通電箇所であるワイヤ表面とチップの接
触面にアーク切れ等の問題点が発生しやすく連続溶接に
影響を与える。しかしながら、連続溶接性に優れたワイ
ヤに関する従来技術での検討は少なく、さらにパルスア
ーク溶接での検討は非常に少ないのが現状である。
【0010】例えば、特開平1−249291号公報で
は、めっきワイヤにおけるCa量を規制し、Caに依存
のアーク停止回数を減少してアークを安定化する技術が
ある。しかし、この技術もパルスアークを対象とした技
術ではない。また、同様な技術として、特開平2−80
196号公報では、Caを実質的に含有しないワイヤの
製造方法が提案されている。特開昭63−108996
号公報には、ワイヤ表面に形成した溝にカリ化合物を適
当量付着させたワイヤおよび製造方法により、ワイヤ送
給性、アーク安定性を改良する技術が提案されている。
【0011】特願平3ー71266号公報では、ワイヤ
含有Ca量範囲とワイヤ表面双方のCa量を制限して、
アーク切れを減少してアーク安定化した技術が開示され
ている。このように、種々の技術提案があるが、これら
アーク安定性向上技術のいずれも通常の溶接を対象とし
たもので、パルスアーク溶接では効果が期待できないも
のである。
【0012】
【発明が解決しようとする課題】本発明は従来技術では
解決し得なかった、パルスアーク溶接におけるアーク切
れの発生等の連続溶接性と薄鋼板および表面処理鋼板に
おける気孔欠陥等を軽減できる技術を同時に達成したも
のである。即ち、すでに本発明者の一員が提案している
ワイヤに含有するCaとワイヤ表面に付着するCaが、
溶接におけるワイヤとチップ間の通電性を損ねるとの知
見を基に、パルスアーク溶接における通電性改善につい
て検討を重ねた結果、ワイヤ表面付着のCa並びにN
a,K等を抑制する通電性に対する効果を相乗的に良好
にならしめ、パルスアーク溶接における連続溶接性を可
能にするワイヤを提供することができた。特に、薄板亜
鉛めっき鋼板の高速溶接において、耐気孔性、スパッタ
発生量および耐ギャップ性を満足するに好適な鋼ワイヤ
組成においてより効果的に発揮される。
【0013】
【課題を解決するための手段】本発明は、高電流のパル
スアーク溶接における連続溶接性の問題点を解決するた
め種々検討した結果、ワイヤに含有するC量に比べて、
ワイヤ表層部のC量を低減すると共に、ワイヤの表面に
付着するCa,Na,K等を抑制する技術構成に至っ
た。また、薄鋼板および表面処理鋼板に好適なワイヤ成
分系でより好適に発揮できるもので、その構成は以下の
通りである。
【0014】(1)ワイヤ表面付着物に由来するCa,
Na,Kが共に5ppm以下であることを特徴とするパ
ルスアーク連続溶接性に優れたパルスアーク溶接用鋼ワ
イヤ。 (2)ワイヤ全重量に対して、重量%で、C:0.02
〜0.40%,Si:0.50〜2.0%,Mn:0.
20〜3.0%,P:0.005〜0.050%,S:
0.005〜0.050%,O:0.0030〜0.0
50%,Ca;0.0005%以下で、残部が実質的に
Feよりなることを特徴とする前記(1)記載のパルス
アーク連続溶接性に優れたガスシールドアーク溶接鋼ワ
イヤ。
【0015】(3)Al:0.005〜0.20%,T
i:0.005〜0.20%,Zr:0.005〜0.
20%の1種または2種以上を含有し、且つNb:0.
05〜1.50%,V: 0.05〜1.50%,T
a:0.05〜1.50%の1種または2種以上を含有
し、残部が実質的にFeよりなることを特徴とする前記
(1)記載のパルスアーク連続溶接性に優れたガスシー
ルドアーク溶接鋼ワイヤにある。
【0016】長時間溶接や高速ワイヤ送給条件における
パルスアーク溶接において発生するアーク切れあるいは
アーク不安定現象に着目して、その改良を検討した。ア
ーク切れ、アーク不安定現象は、主にワイヤ表面とチッ
プ間の通電性に依存しており、ワイヤ中のCaおよびワ
イヤ表面に微量に存在するCaの作用効果については、
本発明者らの一人による特開平4−309489号公報
の明細書で既にあきらかなように、Caイオンの存在に
よりチップ内壁とワイヤ表面間にスパークが発生し、こ
のスパークがチップ内壁を損傷して、アーク切れ、アー
ク不安定等の不具合を起こすものである。従って、ワイ
ヤ中のCa量およびワイヤ表面のCa量を制限すること
でこれらの不具合は抑制される。しかし、これらは通常
の溶接のように溶接電流がほぼ一定の場合には効果を発
揮するが、電流が短時間に急激に変化するパルスアーク
溶接の場合にはCaの制限だけでは、アーク切れ等の不
具合を抑制することが困難である。
【0017】そこで、パルスアーク溶接におけるアーク
切れ防止についてさらに検討を加えた結果、Caの抑制
以外にKおよびNa量の抑制も影響があることが判っ
た。図1は、JISZ3312のYGW16該当のワイ
ヤ表面にCa,K,Na付着量を変化させたワイヤを使
用したパルスアーク溶接における不安定短絡回数につい
て、ワイヤ表面のCa,Na,Kの合計量との関係を示
している。シールドガスとしてAr−20%CO2混合
ガスを用い、電流280A,電圧28V,溶接速度15
0cm/minの溶接条件でビードオンプレート(下
向)で溶接を行い、電流、電圧の変化をパソコンに記録
した。その電圧波形から、電圧の瞬時値が10V以下に
なる電圧変化を短絡時間として計数し、この短絡時間の
平均短絡時間と短絡時間の標準偏差(σ)を5秒間のデ
ータについて比較したものである。ワイヤ中のCa,
K,Naの増加に伴って、平均短絡時間、σ共に増加し
ていることが判明した。
【0018】尚、Ca,K,Na付着量の測定は100
gのワイヤをエチルアルコールで洗浄し、5〜10cm
の長さに切断した後、7%の希塩酸中で10分間沸騰さ
せてCa,Na,Kを溶解濾過し、原子吸光光度計で定
量した値によった。尚、ワイヤ中のCa,Na,K量は
いずれも3ppm以下である。このようなワイヤ中のC
a,K,Na等の存在によるアークへの影響は、溶接金
属中でCa,Na,Kの酸化物が形成され、この酸化物
を求めてアークが移動することにより、アーク長変動が
大きくなる。その結果、常にアーク力の影響を受けてい
るワイヤ先端の溶滴変動も激しく且つ不規則となる。こ
の不規則な溶滴の挙動が前述の平均短絡時間の増加およ
びσの増加として観察されたものと考えられる。
【0019】パルスアーク溶接は、高電流期間と低電流
期間とを周期的に繰り返す溶接法であるから、通常の溶
接より高電流が短期間流れる。この高電流域の電流値は
通常400〜600A程度、低電流域の電流値は100
A程度以下で、周波数は100〜300Hzであるの
で、通常溶接の2〜3倍の高電流時間が多く存在する。
この電流変動回数と高い電流値は、ワイヤ表面とチップ
内壁との通電現象に大きな影響を与える。特に、ワイヤ
表面にCa,Na,K等の存在は通電時にワイヤとチッ
プとの間に微小なスパークを生じる。このスパークによ
るチップ内壁の損傷が溶接時間と共に拡大して、図2に
示すようなアーク切れ現象を生じさせる。
【0020】図2は、表4のワイヤNo.18を使用し
て、約2分溶接−1分休止のサイクルで断続溶接した溶
接電流、溶接電圧およびワイヤ送給モーターの電機子電
流の変化をペン書きオシロに記録させたものであり、溶
接時間が10分程度でアーク切れが発生した例である。
また、図3はチップの内壁をCu,FeについてEPM
Aで分析した結果を示す顕微鏡写真である。図3の
(イ)は溶接に使用していない新品チップ内壁面、
(ロ)は溶接時間約10間の溶接した後のチップ内壁面
である。新品チップ(イ)の内壁面にはFeは全く認め
られないが、溶接したチップ(ロ)の内壁面には点状の
Feが認められる。このFeはワイヤとの間に生じたス
パークによりワイヤ(Fe)の一部がチップ内壁に融着
したものと考えられる。
【0021】次に、薄鋼板および亜鉛めっき処理鋼板に
おける問題を解決するため、薄板の亜鉛めっき鋼板の高
速溶接において、本発明者らが提案した特公平6−47
185号公報の発明をさらに詳細に検討を重ねた結果、
本発明を成すに到った。即ち、特公平6−47185号
公報の発明では、C:0.02〜0.40%,Si:
0.20〜1.50%,Mn:0.20〜1.50%,
P:0.030%以下,S:0.030%以下であっ
て、Nb:0.10〜1.50%,V:0.10〜1.
50%の内1種または2種を含有し、残部がFeおよび
不可避不純物からなる構成である。
【0022】該構成によれば、亜鉛めっき鋼板溶接の亜
鉛およびシールド不良による気孔抑制には効果がある
が、耐ギャップ性およびスパッタ量の低減に対しては充
分とはいえない。そこで上記特性に対してさらなる検討
を行い耐ギャップ性の向上にはSおよびOの検討により
向上できる事を見いだした。Sはワイヤへの添加により
溶接溶込みを減少すると共に、ビード幅の拡大と溶接金
属の母材のぬれ性を向上し架橋性を改善して、耐ギャッ
プ性を向上する作用がある。しかし、S添加のみでは本
発明が対象とする高速溶接ではアークの安定性が不充分
である。高速性の向上にはO添加が有効である。
【0023】また、OにはSと同様に耐ギャップ性向上
効果もありSとOの共存が高速溶接の耐ギャップ性確保
に有効である。このようなS,Oの溶込み減少やビード
幅を拡大による耐ギャップ性への効果は、S,Oが共に
表面活性元素であり、溶融金属の表面張力を減少させる
ことによると考えられる。特に高速溶接においては、
S,Oの共存による効果が有効に発揮される。またこの
様な表面張力低下は、ワイヤ先端の溶融金属にも作用し
てアークの安定化させ、スパッタ発生量低減にも寄与す
る。
【0024】Al,Ti,Zrの添加はスパッタ発生量
低減に効果がある。また、V,Nb,Taは溶融金属の
粘性を変化して耐ギャップ性の向上に有効に作用する。
このように、SとOの共存、Al,Ti,ZrおよびT
a等の検討を加え新たな構成を得た。Al,Ti,Zr
の添加は、アークの電位傾度を低下させてアークを安定
化させる作用があり、スパッタ発生量の抑制に有効であ
る。また、これらの元素は、シールド不良による気孔発
生を抑制する効果もある。V,Nb,Taの添加は、シ
ールド不良による気孔発生を効果的に抑制する効果に加
えて、溶融金属の粘性を高め、高速溶接における耐ギャ
ップ性を向上させる。
【0025】表1に示す成分系のワイヤ径1.2mmφの
鋼ワイヤを用いて、表2の溶接条件および図4の開先形
状により溶接した亜鉛めっき鋼板溶接金属の耐ギャップ
を検討した結果を表3に示す。耐ギャップ特性は溶け落
ちの生じない溶接可能な最大ギャップで評価し、またス
パッタ発生量および割れの有無を評価した。耐ギャップ
性評価は、溶接可能最大ギャップが1.0mm以上を、
スパッタ発生量評価は図5に示す銅製捕集箱内の捕集重
量が1.0g/min以下を基準とし、割れはX線透過
試験により溶接ビードのクレ−タ−部を除いて調査し
た。
【0026】
【表1】
【0027】
【表2】
【0028】
【表3】
【0029】このように、ワイヤ表面のCa,Na,K
付着量を制限し且つ、ワイヤにNb,V,Taを添加
し、Al,Ti,Zrを調整し、さらにS,Oの範囲を
各々規制にする事によって、耐ギャップ性、スパッタ発
生量および割れ共に改善された薄板の連続溶接性に優れ
たパルスアーク溶接が可能となった。以下に、本発明の
成分限定理由を作用と共に詳述する。
【0030】C:0.02〜0.40% Cは本発明の構成では、亜鉛めっき鋼板の気孔発生の抑
制に効果がある。しかし、0.02%未満ではその効果
が認められず、また、0.40%を超えるとスパッタ発
生量が増加し、薄板の高速溶接においても割れ感受性が
著しく高くなるので範囲を0.02〜0.40%とし
た。
【0031】Si:0.50〜2.0% Siは主脱酸剤として添加するが、そのほかビード形状
を改善すると共に、高速溶接での耐ギャップ性を向上す
る作用がある。しかし、0.50%未満ではそれらの効
果が得られず、また2.0%超ではスラグ発生量が増加
するためその範囲を0.50〜2.0%とした。
【0032】Mn:0.20〜3.0% MnはSiと共に脱酸剤として作用するほか、ビード形
状改善を目的に添加する。しかし、0.20%未満では
脱酸不足により、亜鉛以外の要因とする気孔発生が著し
くなり、またスパッタが多発するので、下限を0.20
%とした。また、3.0%を超えると、耐ギャップ性が
劣化すると共に、溶接金属の硬化が著しくなるので、範
囲を0.20〜3.0%とした。
【0033】P:0.005〜0.050% Pは亜鉛めっき鋼板の気孔抑制に効果があるが、過度の
添加は溶接金属の割れの原因となる。下限の0.005
%は気孔抑制の観点から、上限の0.050%は割れ性
の観点から範囲とした。 S:0.005〜0.050 Sは、耐ギャップ性を向上させる元素として酸素と共に
極めて有効である。その効果は0.005%程度から発
揮される。一方、0.050%超ではPと同様に耐割れ
性の危険が増加するため範囲を0.005〜0.050
%の範囲とした。
【0034】O:0.0030〜0.050% OはSと共に高速溶接における耐ギャップ性を確保する
に必要である。またスパッタ発生を減少させる作用もあ
る。本発明の構成では0.0030%以上で効果が顕著
となるが、0.050%を超えるとその効果が飽和する
ばかりでなく、アーク不安定状態となりスパッタも多発
するため上限とした。Oの存在形態は、固溶または酸化
物としてワイヤに均一に分布しても良いが、より好まし
いのは内部酸化層、粒界酸化層としてワイヤ表面部に集
中して存在する場合である。
【0035】Ca:0.0005%以下 Caはワイヤ中に含有する場合でも連続溶接性を損ねる
が、0.0005%未満であれば影響がない。 Al:0.005〜0.20% Alは強脱酸元素であり、また窒素固定元素として、T
i,Zrと共に極微量の添加でシールド不良による気孔
の発生を抑制する作用がある。しかし、0.005%未
満では上記効果は認められず、0.20%を超えるとス
ラグ生成量が増加して、亜鉛による気孔発生を促進する
ため上限は0.20%とする必要がある。
【0036】Ti:0.005〜0.010% TiはAl,Zrと同様に強脱酸剤であり、また窒素固
定元素として極微量の添加でシールド不良による気孔の
発生を抑制する作用がある。またアークを安定化させ高
速溶接性を向上させ、スパッタ減少に有効に作用する。
しかし、0.005%未満では上記効果は認められず、
0.20%を超えるとスラグ生成量の増加とスラグのビ
ード表面の被包面積が増加して、亜鉛による気孔発生を
促進するため上限は0.20%とする必要がある。
【0037】Zr:0.005〜0.20% ZrはAl,Tiと同様に強脱酸剤であり、Al,Ti
の複合添加によりシールド不良による気孔発生を抑制す
る。その効果は0.005%から発揮される。しかし
0.20%を超えるとAl,Tiと同様な作用により気
孔発生を助長する。 Nb:0.05〜1.50% Nbは窒化物生成元素として、シールド不良による気孔
発生を抑制し、また亜鉛による気孔生成にも効果があ
り、さらにはビード形状を良好にして高速溶接での耐ギ
ャップ性をも向上させる目的で添加する。その効果は
0.05%以上の添加で認められる。しかし、1.50
%を超えると上記各効果が飽和するほか、ビードの硬さ
が著しく高くなるため上限を1.50%とした。
【0038】V:0.05%〜1.50% VはNbと共に窒化物生成を析出し、シールド不良によ
る気孔生成溶接金属の目的で添加する。しかし、0.0
5%未満では効果が不足し、1.50%を超えるとむし
ろ割れ感受性が高まるので、範囲を0.05〜1.50
%とした。 Ta:0.05〜1.50% TaはNb,Vと同様に窒素固定元素として添加する。
その効果は0.05〜1.50%の範囲で認められる。
【0039】以下に実施例により、本発明を具体的に説
明する。
【実施例】表4に示す化学成分のワイヤ径1.2mmφ
の鋼ワイヤにより図4の溶接継手により表2の溶接条件
で溶接した。この継手溶接の耐気孔性、最大ギャップお
よびスパッタ発生量の評価した結果を表5に示す。また
連続溶接性は、Ar−20%CO2 ガスにより280A
−28V−150cm/minの溶接条件により、下向
の30分間の連続パルスアーク溶接を行い、その間の電
流、電圧波形をペン書きオシロに記録して、アーク切れ
発生の有無を観察し、1回もアーク切れが発生しないも
のを良好とした。
【0040】
【表4】
【0041】
【表5】
【0042】評価基準は、耐気孔性についてはピット個
数(外観検査)を測定して1個以下を、ブローホール発
生(X線透過検査)についてはブローホール合計幅/ビ
ード長さが30%以下を合格とした。また、耐ギャップ
性評価は溶接可能なギャップが1.0mm以上を、スパ
ッタ発生量評価は銅製捕集箱内の捕集重量が1.0g/mi
n以下を合格とした。
【0043】ワイヤNo.7は、Si値が本発明の範囲
未満であるため、亜鉛による気孔とは異なる形態のピッ
ト、ブローホールの発生が多く、また耐ギャップ性、ス
パッタ量も多くなっている。ワイヤNo.8は、Mn値
が本発明の範囲を超えるため、特に耐気孔性、耐ギャッ
プ性に十分な値が得られない。ワイヤNo.9は、Mn
が範囲未満であり、ワイヤNo.7の場合と同様の気孔
が多発し、スパッタが多発し、性能が劣化している。ワ
イヤNo.10は、Siが本発明の限定範囲を超えるも
のであるが、全体的に各項目の性能が得られない。
【0044】ワイヤNo.11は、Nb,V,Taが本
発明範囲未満であり、特に耐気孔性に劣り、またスパッ
タ量も多いばかりでなく、割れも発生する。ワイヤN
o.12は、V量が本発明超のワイヤで、耐気孔性に劣
っている。ワイヤNo.13は、Al,Ti,Zrが本
発明の範囲を満たしていないもので、耐気孔性が著しく
悪く、またスパッタ量も多い。ワイヤNo.14は、T
iが本発明範囲を超えており、耐ギャップ性が特に満足
できない。ワイヤNo.15は、S,Oが本発明の範囲
未満であるため、特に耐ギャップ性が劣り、またその他
の性能も全体的に不充分である。
【0045】ワイヤNo.16は、Cが本発明の範囲を
超えるため、特にスパッタが多く、割れの発生が認めら
れている。ワイヤNo.17は、ワイヤCa量が0.0
005%を超えるため連続溶接性が劣った。ワイヤN
o.18〜20は、ワイヤ表面のCa,Na、K付着量
が各々5ppmを超えたため連続溶接性が満足しなかっ
た。これらの比較ワイヤに比べて、本発明範囲のワイヤ
No.1〜No.6の各ワイヤはいずれの項目の全てに
良好な成績が得られることが明かである。
【0046】
【発明の効果】以上のように、本発明のワイヤにおいて
は、表面処理鋼板および普通鋼板の高速溶接において優
れた耐気孔性と耐ギャップ性共に優れたスパッタ発生量
の少ない溶接が可能となった。
【図面の簡単な説明】
【図1】ワイヤ表面のCa+Na+K合計量と平均短絡
時間および短絡時間標準偏差(σ)との関係を示す図で
ある。
【図2】アーク切れを示すペン書きオシロの溶接電流、
溶接電圧、電機子電流の記録図である。
【図3】チップ内壁面のFeおよびCuのEPMA分析
した顕微鏡写真である。
【図4】試験板の継手形状を示す斜視図である。
【図5】スパッタ量捕集方法を示す図である。
【符号の説明】
1 鋼板 2 溶接トーチ 3 銅製捕集箱 4 溶接ワイヤ
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C22C 38/04 C22C 38/04 38/14 38/14 (72)発明者 千葉 利彦 東京都中央区築地三丁目5番4号 日鐵溶 接工業株式会社研究所内 (72)発明者 加藤 剛 東京都中央区築地三丁目5番4号 日鐵溶 接工業株式会社研究所内

Claims (3)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ワイヤ表面付着物に由来するCa,N
    a,Kが共に5ppm以下であることを特徴とする連続
    溶接性に優れたパルスアーク溶接用鋼ワイヤ。
  2. 【請求項2】 ワイヤ全重量に対して、重量%で、 C:0.02〜0.40%、 Si:0.50〜2.0%、 Mn:0.20〜3.0%、 P:0.005〜0.050%、 S:0.005〜0.050%、 O:0.0030〜0.050%、 Ca:0.0005%以下 残部が実質的にFeよりなることを特徴とする請求項1
    記載の連続溶接性に優れたパルスアーク溶接用鋼ワイ
    ヤ。
  3. 【請求項3】 Al:0.005〜0.20%、 Ti:0.005〜0.20%、 Zr:0.005〜0.20%の1種または2種以上を
    含有し、且つ Nb:0.05〜1.50%、 V: 0.05〜1.50%、 Ta:0.05〜1.50%の1種または2種以上を含
    有し、残部が実質的にFeよりなることを特徴とする請
    求項1および請求項2記載の連続溶接性に優れたパルス
    アーク溶接用鋼ワイヤ。
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