JP3334572B2 - 減衰力制御装置及び路面推定方法 - Google Patents
減衰力制御装置及び路面推定方法Info
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Description
スペンションにおいて、サスペンション減衰力を状況に
応じて変更する減衰力制御装置及びそのための路面推定
方法に関する。
では、高い操縦安定性と乗り心地の良さを維持するため
に、減衰力特性が可変なショックアブソーバを使用し、
路面状態や走行状態に応じてこのサスペンション減衰力
を段階的に変更する制御が行われている。
ゴツした悪路では、減衰力を比較的低減させて乗り心地
の悪化を防ぎ、大きくうねったような波状路では、減衰
力を比較的高めて車体姿勢の安定化を図るといった内容
の制御が行われる。また走行状態の面では、ハンドル操
舵角度と車速に応じて左右いずれかの減衰力をより高め
て、いわゆるロールを抑える制御(アンチロール制御)
や、発進、制動時に前後いずれかの減衰力をより高め
て、車体姿勢の変化を抑える制御(アンチダイブ制御、
アンチスクワット制御)が行われる。
るための路面状態の判定には、従来では車体の加速度が
判定のもととなるパラメータとして使用されていた。す
なわち、車体の上下方向の加速度を計測し、この加速度
の計測値から路面が良路であるかゴツゴツ路であるか、
或いは波状路であるかを判定していた。
制御サスペンションでは、高価な加速度センサが必要に
なり、コスト面で不利になるという問題点があった。
いで、車輪速の微分値(微小変動)の波形をフーリエ変
換し、そのスペクトル解析結果を入力パラメータとして
路面状態をファジィ推論して、最適な減衰力制御を実現
する減衰力制御装置及び路面推定方法を提案している。
定を行う際、その車輪速を車両の加減速時に測定した場
合には、その加減速の成分も車輪速の微分値に当然含ま
れるため、路面状態に起因する微小変動の波形が正しく
判別できず、結果として誤判定を引き起こす恐れがあ
る。
いで、車輪速の微分値に基づいて、的確な路面判定或い
は最適な減衰力制御が実現できるとともに、車両の加減
速時においても路面状態に起因する車輪速の微小変動が
確実に正しく判別され、信頼性の高い路面推定或いは最
適な減衰力制御が可能な減衰力制御装置及び路面推定方
法を提供することを目的としている。
め、請求項1記載の減衰力制御装置は、車両の車輪速を
検出する車輪速検出手段と、この車輪速検出手段の検出
出力から前記車輪速の微分値を演算し、この車輪速の微
分値の波形から、微分値の波形全体の平均値が0になる
ように、前記波形のデータから波形全体の平均値を減算
し、この減算結果を新たな波形データとするアベレージ
オフセット処理を行い、このアベレージオフセット処理
により成形された前記車輪速の微分値の波形に基づいて
最適なサスペンション減衰力を判定し、この減衰力を指
令する減衰力信号を出力する減衰力判定手段と、この減
衰力判定手段より出力された減衰力信号に応じて車両の
サスペンション減衰力を変更する減衰力変更手段とを備
えたことを特徴とする。
輪速を検出する車輪速検出手段の検出出力から前記車輪
速の微分値を演算し、この車輪速の微分値の波形から、
微分値の波形全体の平均値が0になるように、前記波形
のデータから波形全体の平均値を減算し、この減算結果
を新たな波形データとするアベレージオフセット処理を
実行し、このアベレージオフセット処理により成形され
た前記車輪速の微分値の波形に基づいて、路面状態を推
論することを特徴とする。
前記アベレージオフセット処理が、前記車輪速の微分値
の波形の近似一次関数の勾配がしきい値を越える場合に
は、前記波形全体の傾きが0になるように、前記波形の
始点に相当する時点の値が0で前記勾配を傾きとするオ
フセット直線のデータを、対応する前記波形の各データ
から差引いて、この減算結果を新たな波形データとする
傾き補正処理と、この傾き補正処理により必要に応じて
傾きを補正された波形データから、この波形全体の平均
値を減算し、この減算結果を新たな波形データとするオ
フセット処理とを含むことを特徴とする。また、請求項
4記載の路面推定方法は、前記アベレージオフセット処
理が、前記車輪速の微分値の波形の近似一次関数の勾配
がしきい値を越える場合には、前記波形全体の傾きが0
になるように、前記波形の始点に相当する時点の値が0
で前記勾配を傾きとするオフセット直線のデータを、対
応する前記波形の各データから差引いて、この減算結果
を新たな波形データとする傾き補正処理と、この傾き補
正処理により必要に応じて傾きを補正された波形データ
から、この波形全体の平均値を減算し、この減算結果を
新たな波形データとするオフセット処理とを含むことを
特徴とする。
を図面に基づいて説明する。本例の減衰力制御装置は、
図1のブロック図に示すように、車両のハンドル操舵角
度を検出するハンドル舵角センサ1と、車両のブレーキ
の作動状態を検出するブレーキスイッチ2(ブレーキセ
ンサ)と、車両のスロットル開度を検出するスロットル
開度センサ3と、車輪の回転速度(以下、車輪速とい
う。)を検出する車輪速センサ4と、これらセンサの出
力値から最適なサスペンション減衰力を判定しこの減衰
力を指令する減衰力信号を出力するコントロールユニッ
ト5と、このコントロールユニット5より出力された減
衰力信号に応じて減衰力を変更するアクチュエータ6a
を備えた減衰力可変ショックアブソーバ6とよりなる。
出手段に相当し、コントロールユニット5は、この場
合、本発明の減衰力判定手段を構成している。また、ア
クチュエータ6aは、本発明の減衰力変更手段を構成し
ている。
には、例えばマイクロコンピュータよりなる処理装置で
あり、予め設定されたプログラムに従って、各センサか
ら入力されるデータを後述の如く処理して減衰力信号を
出力する。
は、例えば、内部の油の流れ(油路とオリフィスの大き
さ)を変化させるロータリーバルブ(図示省略)と、こ
のロータリーバルブを駆動するアクチュエータ6aとを
内蔵するもので、前記ロータリーバルブの作動位置によ
って、減衰力が例えばソフト(SOFT),ミディアム
(MEDIUM),ハード(HARD)の3段階に切換
わる。なお、アクチュエータ6aは、例えば、マイクロ
モータ、減速ギア、位置検出スイッチ(図示省略)より
なる。
コントロールユニット5の処理内容の具体例)について
説明する。図2は、コントロールユニット5のゼネラル
フローチャート(メインルーチン)を示し、図3は、コ
ントロールユニット5の割込み処理のフローチャートを
示している。
て概説する。車両のバッテリーより電源供給されて本装
置が起動すると、コントロールユニット5は、まずステ
ップS2でリセット処理を行う。次いで、イグニション
スイッチがオン操作されると、ステップS4では、イグ
ニションスイッチがオン操作された時の処理(IGon
時処理)を行う。なお、上記リセット処理やIGon時
処理は、制御処理上の各種変数やタイマなどの値を初期
値にリセットするなどの処理である。
か否か判定し、onであればステップS8へ進み、on
でなければこの判定処理を繰り返す。なおFlag1
は、後述の図3に示す割込み処理において所定周期毎に
onに設定されるので、ステップS8からS12の処理
は、イグニションスイッチがオフ操作されない限り、繰
り返し実行されることになる。
ffに設定しステップS10に進む。次にステップS1
0では、入出力処理一般が行われる。この処理には、ブ
レーキスイッチ2、スロットル開度センサ3、及び車輪
速センサ4などから入力される検出信号の処理が含ま
れ、後述する車輪速の微分演算や各種フィルタ処理、及
びアベレージオフセット処理、さらには減衰力総合判定
処理もこのステップで実行される。
FT演算や、このFFT演算結果(即ち、スペクトル解
析結果)に基づく路面状態のファジィ推論処理や、後述
のFFT3優先処理が行われる。つまり、これら処理
は、このステップS12が所定の周期で繰り返される度
に、順次実行され、このステップS12が12回繰り返
された時点で、前記ファジ推論処理やFFT3優先処理
等の一連の処理が終了する。
イッチがオフ操作されたか否か判定し、オフ操作されて
いればステップS16に進み、オフ操作されていなけれ
ばステップS6に戻る。次いでステップS16では、ス
トップモード移行処理を行い、次にステップS18で
は、ストップモードの処理を行って、イグニションスイ
ッチがオン操作されれば、ステップS4に戻る。
る。この処理は、所定周期毎の割込みにより繰り返し実
行される。まず、ステップS20では、処理開始時点か
ら計時を開始した内部のタイマの値が5の整数倍(0,
5,10,15,…)であるか否か判定し、そうであれ
ばステップS22に進み、そうでなければステップS2
4に進む。
ら入力されるアナログの検出信号をデジタル信号に変換
するA/D処理を行う。一方ステップS24では、前記
タイマの値が5の整数倍に1を加算した値(1,6,1
1,16,…)であるか否か判定し、そうであればステ
ップS26に進み、そうでなければステップS30に進
む。
nか否か判定し、onであればステップS30へ進み、
onでなければステップS28へ進む。そしてステップ
S28では、Flag1をonに設定しステップS30
に進む。
度を検知するために、ハンドル舵角センサ1から入力さ
れたパルス信号をカウントする処理を行う。次いでステ
ップS32では、アクチュエータ出力処理を行い、その
後割込み処理を終了してメインルーチンに戻る。なお、
このアクチュエータ出力処理には、減衰力可変ショック
アブソーバ6の減衰力を、後述の減衰力総合判定処理で
判定された減衰力に変更することを指令する減衰力信号
を、アクチュエータ6aに対して出力する処理が含まれ
る。
ートにおいて実行される減衰力制御の要部について、図
4を参照して説明する。図2及び図3の処理によれば、
結局図4に示すような流れで、最終的な減衰力総合判定
がなされ、この判定結果に基づいて減衰力が適宜変更さ
れる。
出力処理において、まず、図4に示す車輪速読み込み、
微分演算、ローパスフィルタ処理、第1ハイパスフィル
タ処理、第2ハイパスフィルタ処理、アベレージオフセ
ット処理が、実行される。
4の出力から検知される車輪速の波形を所定のメモリア
ドレスにデジタルデータとして記憶する処理である。な
お、ここでいう車輪速の波形とは、例えば図示省略した
別個のサブルーチンの処理によって、所定の計測期間に
おいて所定のサンプリング周期で多数サンプリングされ
た最新の車輪速のデータ列である。
して、車輪速の微分値の波形を得る演算である。具体的
には、上記車輪速読み込みの処理で読み込まれた車輪速
のデータのうち、時間的に隣り合うデータ間の偏差(例
えば、前回のサンプリング時のデータと、今回のサンプ
リング時のデータとの差)を逐次演算し、これら偏差の
値のデータ列(時系列に並べられた複数のデータ)を、
車輪速の微分値の波形として所定のメモリアドレスに登
録するものである。
演算により得られた波形(データ列)をデジタルフィル
タ処理して、この波形から高周波成分を除去するもので
ある。また、第1ハイパスフィルタ処理又は第2ハイパ
スフィルタ処理は、上記微分演算により得られた車輪速
のデータ列をデジタルフィルタ処理して、上記車輪速の
微分値の波形から低周波成分(オフセット成分)を除去
するものである。なお、これらフィルタ処理によれば、
路面状態のファジィ推論に不必要な周波数成分(ノイズ
など)が除去される。
理とは、上記微分演算により得られて各フィルタ処理に
より不要な周波数を除去された前記車輪速の微分値の波
形を、全体の平均値が0になるように成形するものであ
り、これにより、車両の加減速時においても路面状態に
起因する車輪速の微小変動が確実に正しく判別され、よ
り信頼性の高い路面推定が可能となる。なお、このアベ
レージオフセット処理の詳細は後述する。
データ(アベレージオフセット処理後のデータ)をもと
に、図2のステップS12の処理において、図4に示す
FFT演算、FFTゲイン調整、ファジィ推論、及びF
FT3優先処理が、所定の周期で最新のデータについて
実行される。ここで、FFT演算とは、高速フーリエ変
換(FFT;Fast Fourier Transform)という周知の演
算で、一定時間間隔でサンプリングされたデジタルデー
タの波形(この場合には、前述の車輪速の微分値の波
形)から周波数成分の分布を求めるスペクトル解析のた
めの演算である。
演算のゲインを調整する処理である。具体的には、FF
T演算の結果得られたスペクトルをFFTとした場合、
FFT=(FFT−a)×bという演算を行って、この
FFTの値を修正する処理である。但し、(FFT−
a)<0ならば、(FFT−a)=0とする。また、a
及びbは、定数である。
算された値を定数倍することで、より路面の特徴が出や
すいようになる。しかも、定数倍する前にオフセット分
がマイナスされて取り除かれるため、路面状態に無関係
な車輪速の特に微小な動きがパラメータに影響を及ぼさ
ないようになる。
周波領域のスペクトル(各周波数の振幅)の合計値FF
T3(例えば、5〜14Hzのスペクトルの合計値)
と、低周波領域のスペクトルの合計値FFT1(例え
ば、1〜3Hzのスペクトルの合計値)とが、ファジィ
推論の入力パラメータとして出力される。そして、上記
FFTゲイン調整の処理も、これらFFT3とFFT1
について実行される。
T演算によるスペクトル解析結果(この場合、上記高周
波領域のスペクトルの合計値FFT3と低周波領域のス
ペクトルの合計値FFT1)を入力パラメータとして、
車両が現在走行している路面の状態を推論し、その推論
結果に応じて減衰力を設定するものである。なお、ファ
ジィ推論の詳細については、後述する。
例えば次のようにして行われる。すなわち、予め設定さ
れた基本の減衰力(例えば、ミディアム)を、悪路と推
論された場合にはソフトに変更し、良路と推論された場
合にはミディアムのままに維持し、波状路と推論された
場合にはハードに変更するといったように、基本の減衰
力を修正することで設定される。
ィ推論の入力パラメータのうち、車両の乗り心地に影響
の強い特定の周波数域の入力パラメータ(この場合、高
周波領域のスペクトルの合計値FFT3)が設定値を越
えた場合には、他の周波数域の入力パラメータも考慮し
た前記ファジィ推論による路面状態の推論結果(或い
は、この推論結果に基づく減衰力)を修正して、この特
定の周波数域の入力パラメータの値に応じて最適な乗り
心地を実現する推論結果(減衰力)に設定変更するもの
である。
て、図4に示す減衰力総合判定の処理が実行される。こ
の場合、この減衰力総合判定は、ステップS10の処理
ルーチンの中で二分周された周期で逐次実行される。
12においてファジィ推論された路面状態と、ステップ
S10やステップS30で入力処理された各種センサ
(ハンドル舵角センサ1、ブレーキスイッチ2、スロッ
トル開度センサ3、及び車輪速センサ4など)の検出値
から判定される走行状態とから、最終的な減衰力を判定
する処理である。
設定され、前記FFT3優先処理により必要に応じて修
正された前述の減衰力を、走行状態に応じて修正するこ
とで減衰力総合判定が行われる。なお、走行状態に応じ
た減衰力の修正は、予め実験などにより設定された各パ
ラメータに対するしきい値に基づいて例えば以下のよう
に行われる。
しきい値を越えた場合には、リアサスペンションの減衰
力を1段階高くする(アンチスクワット制御)。 (2)スロットル開度の減速方向の変化がしきい値を越
えた場合、或いは、ブレーキ作動が検知された場合に
は、フロントサスペンションの減衰力を1段階高くする
(アンチダイブ制御)。 (3)ハンドル舵角がしきい値を越えた場合には、車両
が曲る側(右側又は左側)のサスペンションの減衰力を
1段階高くする(アンチロール制御)。
ンサ4の検出値から判定される走行速度)がしきい値を
越えた場合には、全てのサスペンションの減衰力を1段
階高くする。 (5)車両の走行加速度(例えば、車輪速センサ4の検
出値から判定される走行速度の微分値)がしきい値を越
えた場合には、全てのサスペンションの減衰力を1段階
高くする。
T3優先処理の結果決定された減衰力がハードの場合に
は、それ以上高くできないので、その減衰力を維持す
る。また、減衰力の修正は、減衰力を低減させる方向で
も行うようにしてもよい。例えば、スロットル開度の加
速方向の変化がしきい値を越えた場合には、フロントサ
スペンションの減衰力を1段階低くして、前後のサスペ
ンションの減衰力修正でより高性能なアンチスクワット
制御を行うようにしてもよい。
的に判定された最適な減衰力の設定に基づいて、図3の
ステップS32の処理において、アクチュエータ6aへ
の減衰力信号の出力処理が実行される。なお、この減衰
力信号の出力処理は、その時点での最新のデータに基づ
いて実行され、アクチュエータ6aの動きが決め細かく
制御される。これにより、減衰力可変ショックアブソー
バ6の減衰力が、上記減衰力総合判定により最終的に判
定された最新の減衰力に常に調整される。
詳細について、説明する。コントロールユニット5は、
前述のアベレージオフセット処理として、例えば図8の
フローチャートに示す処理を行う。なおこの図8の処理
は、例えば図2のステップS10においてコールされて
実行されるサブルーチンである。
算により得られて各フィルタ処理により不要な周波数を
除去された前記車輪速の微分値の波形のデータを読み込
む。なおここでは、1周期前の計測期間のサンプリング
から得られたデータ(前回のデータ)と、最新の計測期
間のサンプリングで得られたデータ(今回のデータ)と
が読み込まれる。
0で読み込まれた前回のデータ及び今回のデータの平均
値を計算する。次いでステップS44では、ステップS
42で計算した今回のデータの平均値が、例えば予め設
定された所定の誤差の範囲内で0に等しいか否かを判定
する。そして、所定の誤差の範囲内で0に等しければ、
データの補正は不要であるので、データを補正しないで
このアベレージオフセット処理を終了し、そうでなけれ
ばステップS46に進む。
勾配を計算する。ここで、近似一次関数とは、車輪速の
微分値の波形に近似した直線を表す一次関数のことであ
り、また近似一次関数の勾配とはこの直線の勾配のこと
をいう。そしてこの勾配は、ステップ42で計算された
前回のデータの平均値と今回のデータの平均値との差
を、計測周期で割った値である。
6で計算した勾配が、例えば予め設定されたしきい値を
越えているか否かを判定する。そして、越えていればス
テップS50に進み、越えていなければ、後述する傾き
の補正は不要であるので、ステップS54に進む。
線により、前記微分値の波形(今回のデータ)の傾きを
補正し、勾配がほぼ0の波形とする。具体的には、前記
微分値の波形の各データから対応するオフセット直線の
値を差引いて、差引いた後のデータを新たなデータとし
て登録する。なおオフセット直線とは、前記微分値の波
形の始点に対応する時点で値が0で、前述の近似一次関
数の勾配をもつ一次関数により表される直線である。
0で補正された後のデータの平均値を再度求める。な
お、上記ステップS46〜S50の処理は、本発明の傾
き補正処理に相当する。
8では、本発明のオフセット処理に相当する処理を行
う。即ち、前記微分値の波形の今回のデータの平均値
(ステップS52を経由している場合は、このステップ
S52で求められた平均値)を、今回のデータ(ステッ
プS50を経由している場合は、このステップS50で
補正された後のデータ)から差引いて、この減算後のデ
ータを新たな微分値の波形データとして更新登録する。
あるので、この場合、ステップS56でポインタを進め
つつ、ステップS54で上記減算を繰り返し行い、全デ
ータについて演算が終了すると、ステップS58の分岐
処理で一連の処理を終了するようになっており、図8で
はこの部分を詳細に図示している。
ば、例えば図9(a),(b)に示すように、車輪速の
微分値波形の平均値が0の場合又は0に近い場合には、
ステップS44の分岐処理で一連の処理が終了するた
め、波形の成形(傾き補正処理及びオフセット処理によ
るデータの補正)は行われず、そのままのデータが維持
される。
図11(a),(b)に示すように、車両が加速状態に
あるため、車輪速の微分値波形の平均値が0でない場合
には、ステップS44の分岐処理でステップS46に進
む。なおここで、図10は、車両が一定の加速状態(車
輪速が一次関数的に変化する状態であり、以下一次加速
状態という。)にあるため、路面状態に起因する微小変
動がその分振幅方向にオフセットされた波形になってい
る場合を示し、また図11は、車両が加速度を変化させ
つつ加速している状態(車輪速が高次関数的に変化する
状態で、以下高次加速状態という。)にあるため、路面
状態に起因する微小変動がその分振幅方向にオフセット
され、さらに全体的に傾いた波形になっている場合を示
している。
次関数の勾配が求められ、これがステップS48でしき
い値と比較される。この際、前述の近似一次関数の勾配
は、車輪速の微分値波形の全体的な傾きに相当するた
め、前記一次加速状態の場合には、この勾配は0又は0
に近い値になり、しきい値を越えない。一方、前記高次
加速状態では、この勾配はこの加速変化に応じた値にな
り、しきい値を越える。このため、前記一次加速状態の
場合には、ステップS50の傾き補正処理や、ステップ
S52の平均値再計算が実行されないで、処理がステッ
プS54以降に進む。
ップS50の傾き補正処理が実行され、例えば図11
(c)に示すように前述の近似一次関数の勾配を傾きθ
とするオフセット直線が求められ、このオフセット直線
の対応する時点の各データの値が、例えば図11(b)
に示すような車輪速微分値のデータから差引かれて、図
11(d)に示す如く傾きが修正される。そして、この
修正後のデータの平均値が、ステップS52で新たに求
められる。
前記高次加速状態の場合にも、ステップS54以降のオ
フセット処理が実行され、車輪速微分値の各データから
平均値が差引かれることで、図10(c)に示すよう
に、最終的に平均値が0で、路面状態に起因する車輪速
の微小変動のみを成分として有する波形が得られる。な
お、前記高次加速状態の場合には、事前に上述のステッ
プS50,S52の処理によって、図11(d)の如く
求められた新たな波形及びその平均値のデータに基づい
て、ステップS54以降の処理が実行されるため、結果
的に前記一次加速状態の場合と同様に、例えば図11
(e)に示すように、やはり平均値が0で路面状態に起
因する微小変動のみを有する波形が得られる。
作用説明では、車両が一定又は増加傾向の加速状態の場
合に、車輪速微分値の波形がどのように成形されるかを
例に挙げて説明したが、車両が減速状態にある場合や、
加速度が減少しつつ加速している状態にある場合などに
おいても、符号の関係が逆になるだけで、同様の処理内
容で処理されて、やはり平均値が0で路面状態に起因す
る微小変動のみを有する波形が得られる。
て、説明する。コントロールユニット5には、路面状態
(良路か悪路か波状路か)を推論するためのファジィル
ールとメンバーシップ関数とが記憶されている。
れば、図5のようになる。また、各ラベルは次の意味で
用いられている。すなわち、SMALLはスペクトルの
合計値が「小さい」、MEDIUMはスペクトルの合計
値が「中間」、BIGはスペクトルの合計値が「大き
い」を意味している。
(a),(b),(c)に示すように設定されている。
ここで、図6(a),(b)は、前件部のメンバーシッ
プ関数、図6(c)は、後件部のメンバーシップ関数で
ある。
AX法及び最大高さ法により行われる。すなわち、ファ
ジィ推論の演算過程では、まずその前件部で入力パラメ
ータとして、前記高周波領域のスペクトルの合計値と、
前記低周波領域のスペクトルの合計値とを与えて、上記
ファジィルールに対応するメンバーシップ関数にどの程
度適合するかを求める。そして、MIN−MAX法によ
り、後件部のパラメータ毎に適合度(波状路度、悪路
度、良路度)を選択する。そして後件部では、最大高さ
法により、判定値(良路か悪路か波状路か)を決定す
る。
を記述形式で示せば、以下のようになる。ここで、低は
低周波領域を、高は高周波領域を表す。また、B,S又
はMは、それぞれBIG,SMALL,MEDIUMを
表す。また、例えば「低=B」は、低周波領域のスペクト
ル合計値のラベルBIGへの適合度を意味する。 波状路度=MAX(低=B、MIN(低=M、高=S)) 悪路度=MAX(MIN(低=S、高=B)、MIN(低=M、高=M)、MIN(低=M、高=B)) 良路度=MAX(MIN(低=S、高=S)、MIN(低=S、高=M)) IF MAX(波状路度、悪路度、良路度)=波状路度 THEN 波状路 IF MAX(波状路度、悪路度、良路度)=悪路度 THEN 悪路 IF MAX(波状路度、悪路度、良路度)=良路度 THEN 波状路
域のスペクトルの合計値、及び前記低周波領域のスペク
トルの合計値と、上記ファジィ推論による路面状態の判
定結果との関係の概略を図示すれば、図7のようにな
る。
判定例によっても実証されるように、車両が現在走行し
ている路面の状態(悪路か良路か波状路か)が、車輪速
センサ4の検出値から的確に判定できる。即ち、車輪速
の微分値(微小変動)の波形は路面状態により大きく変
化し、ゴツゴツした路面では、高周波領域のスペクトル
が強くなり、うねりの大きな路面では、低周波領域のス
ペクトルが強くなることが、発明者らの研究などで判明
している。このため、高周波領域のスペクトルの合計値
を路面のゴツゴツ度として利用することができ、また、
低周波領域のスペクトルの合計値を路面のうねり度とし
て利用することができるため、上述したような条件での
ファジィ推論で、的確な路面判定が行える。
加速度センサを必要とすることなく、車両の走行速度検
知のために通常設けられる車輪速センサを利用して、フ
ァジィ推論により的確な路面判定が可能となり、この路
面判定結果に基づいて最適な減衰力制御が行われる。こ
のため、路面状態が良好でない場合(悪路や波状路の場
合)においても良好な乗り心地や操縦安定性を実現する
ことが、低コストで可能となる。
アベレージオフセット処理により、車両の加減速状態に
応じて成形され、車両の加減速による波形成分が除去さ
れ、路面状態に起因する微小変動のみを含む波形とな
り、その後この波形をもとに上述のファジィ推論が行わ
れる。このため、車輪速を車両の加減速時に測定した場
合でも、その加減速の成分が除去されるため、路面状態
に起因する微小変動の波形が正しく判別され、結果とし
て誤判定を引き起こす恐れが解消される。したがって、
車両の走行状態にかかわらず、より信頼性の高い路面判
定が可能となり、またこの路面判定に基づくより的確な
減衰力制御が可能となる。
論結果と、各種センサ(ハンドル舵角センサ1、ブレー
キスイッチ2、スロットル開度センサ3、及び車輪速セ
ンサ4など)の検出値から判定される走行状態とから、
最終的な減衰力が判定され、車両の各位置のサスペンシ
ョン減衰力が走行状態も考慮したより最適な値に適宜調
整される。このため、走行状態(急加速状態、急減速状
態、急ハンドル状態、高速走行状態など)に起因した車
両姿勢の変化(いわゆる、スクワット、ダイブ、ロール
など)が抑制され、より高い操縦安定性が得られる。
種の態様があり得る。例えば、路面推定の結果修正され
る前述の基本の減衰力は、ミディアムに限らず、例えば
ソフトでもよい。また、車両の運転者の操作により設定
される走行モード(例えば、スポーツモードとツアーモ
ード等)に応じて、この基本の減衰力を変更するように
してもよい。例えば、ツアーモードでは基本の減衰力を
ソフトとし、スポーツモードでは基本の減衰力をミディ
アムにするといった態様でもよく、また、スポーツモー
ドでは、路面推定の結果に係わらずミディアムを維持し
てスポーツ走行を可能にするといった態様にすることも
できる。
必ずしもファジィ推論を利用して行わなくてもよい。ま
た、路面推定という処理(悪路か良路かなどを判定する
処理)を行わずに、車輪速の微小変動の波形解析結果な
どから直接に減衰力判定を行うこともできる。例えば、
図7に示すような線図を予め設定しておき、この線図か
ら路面推定や減衰力判定を直接行うこともできる。
態例のものに限定されない。また、FFT3優先処理
は、必ずしも必要でない。また、ファジィ推論の入力パ
ラメータは、高低二つの周波数域のスペクトル合計値に
限られず、例えば周波数域を三つ以上に分けて、各周波
数域のスペクトル合計値(三つ以上)を入力パラメータ
とするといった態様もあり得る。また、本発明の路面推
定方法による路面状態の推定結果は、サスペンションの
減衰力に限られず、例えばアクティブサスペンションの
エアバネの空気圧制御に利用してもよいことはいうまで
もない。
衰力判定手段が、車輪速検出手段の検出出力から車輪速
の微分値を演算し、この車輪速の微分値の波形から、微
分値の波形全体の平均値が0になるように、前記波形の
データから波形全体の平均値を減算し、この減算結果を
新たな波形データとするアベレージオフセット処理を行
い、このアベレージオフセット処理により成形された車
輪速の微分値の波形に基づいて最適なサスペンション減
衰力を判定し、この減衰力を指令する減衰力信号を出力
する。そして、減衰力変更手段が、この減衰力判定手段
より出力された減衰力信号に応じて車両のサスペンショ
ン減衰力を変更する。
は、車輪速の微分値の波形に基づいているため、前述の
判定例によっても実証されているように、車両が現在走
行している路面状態に応じた最適な減衰力が判定でき
る。即ち、車輪速の微分値(微小変動)の波形は路面状
態により大きく変化し、ゴツゴツした路面では、高周波
領域のスペクトルが強くなり、うねりの大きな路面で
は、低周波領域のスペクトルが強くなることが、発明者
らの研究などで判明している。このため、上記車輪速の
微分値波形に基づく判定で、的確な減衰力判定が行え
る。
な加速度センサを必要とすることなく、車両の走行速度
検知のために通常設けられる車輪速センサを利用して、
最適な減衰力制御が行われる。このため、路面状態が良
好でない場合においても良好な乗り心地や操縦安定性を
実現することが、低コストで可能となる。
が、アベレージオフセット処理により、車両の加減速状
態に応じて成形され、車両の加減速による波形成分が除
去され、路面状態に起因する微小変動のみを含む波形と
なり、その後この波形をもとに上述の減衰力判定が行わ
れる。このため、車輪速を車両の加減速時に測定した場
合でも、その加減速の成分が除去されるため、路面状態
に起因する微小変動の波形が正しく判別され、結果とし
て誤判定を引き起こす恐れが解消される。したがって、
車両の走行状態にかかわらず、より信頼性の高い的確な
減衰力制御が可能となる。
車両の車輪速を検出する車輪速検出手段の検出出力から
前記車輪速の微分値を演算し、この車輪速の微分値の波
形から、微分値の波形全体の平均値が0になるように、
前記波形のデータから波形全体の平均値を減算し、この
減算結果を新たな波形データとするアベレージオフセッ
ト処理を実行し、このアベレージオフセット処理により
成形された前記車輪速の微分値の波形に基づいて、路面
状態を推論する。
れているように、車両が現在走行している路面の状態
が、車輪速検出手段の検出出力から的確に判定できる。
したがって、本発明の路面推定方法によれば、高価な加
速度センサを必要とすることなく、車両の走行速度検知
のために通常設けられる車輪速センサを利用して、的確
な路面判定が可能となる。
が、アベレージオフセット処理により、車両の加減速状
態に応じて成形され、車両の加減速による波形成分が除
去され、路面状態に起因する微小変動のみを含む波形と
なり、その後この波形をもとに上述の路面推定が行われ
る。
した場合でも、その加減速の成分が除去されるため、路
面状態に起因する微小変動の波形が正しく判別され、結
果として誤判定を引き起こす恐れが解消される。したが
って、車両の走行状態にかかわらず、より信頼性の高い
路面判定が可能となる。
して、前記車輪速の微分値の波形全体の平均値が0にな
るように波形成形するオフセット処理が実行されるの
で、車両が一定の加速度で加速又は減速している状態
(一次加速状態)にあるために生じる波形成分が除去さ
れ、このような加速度成分に起因する誤判定が信頼性高
く防止される。
ように、前記アベレージオフセット処理として、前記波
形全体の傾きが0になるように波形成形する傾き補正処
理と、この傾き補正処理後の波形全体の平均値が0にな
るように波形成形するオフセット処理とが実行された場
合には、車両が加速度を変化させつつ加速又は減速して
いる状態(高次加速状態)にあるために生じる波形成分
が除去され、このような加速度成分に起因する誤判定が
信頼性高く防止される。
る。
ローチャートである。
チャートである。
理の流れ)を示す図である。
示す図である。
数を示す図である。
の関係を示す参考図である。
オフセット処理)を示すフローチャートである。
値の波形を示す図である。
微分値の波形、及びその微分値波形のオフセット処理後
の波形を示す図である。
微分値の波形、その微分値波形の傾き補正のためのオフ
セット直線、傾き補正後の波形、及びオフセット処理後
の波形を示す図である。
Claims (4)
- 【請求項1】 車両の車輪速を検出する車輪速検出手段
と、 この車輪速検出手段の検出出力から前記車輪速の微分値
を演算し、この車輪速の微分値の波形から、微分値の波
形全体の平均値が0になるように、前記波形のデータか
ら波形全体の平均値を減算し、この減算結果を新たな波
形データとするアベレージオフセット処理を行い、この
アベレージオフセット処理により成形された前記車輪速
の微分値の波形に基づいて最適なサスペンション減衰力
を判定し、この減衰力を指令する減衰力信号を出力する
減衰力判定手段と、 この減衰力判定手段より出力された減衰力信号に応じて
車両のサスペンション減衰力を変更する減衰力変更手段
とを備えたことを特徴とする減衰力制御装置。 - 【請求項2】 車両の車輪速を検出する車輪速検出手段
の検出出力から前記車輪速の微分値を演算し、この車輪
速の微分値の波形から、微分値の波形全体の平均値が0
になるように、前記波形のデータから波形全体の平均値
を減算し、この減算結果を新たな波形データとするアベ
レージオフセット処理を実行し、このアベレージオフセ
ット処理により成形された前記車輪速の微分値の波形に
基づいて、路面状態を推論することを特徴とする路面推
定方法。 - 【請求項3】 前記アベレージオフセット処理は、 前記車輪速の微分値の波形の近似一次関数の勾配がしき
い値を越える場合には、前記波形全体の傾きが0になる
ように、前記波形の始点に相当する時点の値が0で前記
勾配を傾きとするオフセット直線のデータを、対応する
前記波形の各データから差引いて、この減算結果を新た
な波形データとする傾き補正処理と、 この傾き補正処理により必要に応じて傾きを補正された
波形データから、この波形全体の平均値を減算し、この
減算結果を新たな波形データとするオフセット処理とを
含むことを特徴とする請求項1に記載の減衰力制御装
置。 - 【請求項4】 前記アベレージオフセット処理は、 前記車輪速の微分値の波形の近似一次関数の勾配がしき
い値を越える場合には、前記波形全体の傾きが0になる
ように、前記波形の始点に相当する時点の値が0で前記
勾配を傾きとするオフセット直線のデータを、対応する
前記波形の各デ ータから差引いて、この減算結果を新た
な波形データとする傾き補正処理と、 この傾き補正処理により必要に応じて傾きを補正された
波形データから、この波形全体の平均値を減算し、この
減算結果を新たな波形データとするオフセット処理とを
含むことを特徴とする請求項2に記載の路面推定方法。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP24642997A JP3334572B2 (ja) | 1997-09-11 | 1997-09-11 | 減衰力制御装置及び路面推定方法 |
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Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
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JP24642997A JP3334572B2 (ja) | 1997-09-11 | 1997-09-11 | 減衰力制御装置及び路面推定方法 |
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Publication Number | Publication Date |
---|---|
JPH1178469A JPH1178469A (ja) | 1999-03-23 |
JP3334572B2 true JP3334572B2 (ja) | 2002-10-15 |
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Family Applications (1)
Application Number | Title | Priority Date | Filing Date |
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JP24642997A Expired - Fee Related JP3334572B2 (ja) | 1997-09-11 | 1997-09-11 | 減衰力制御装置及び路面推定方法 |
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JP4146734B2 (ja) * | 2003-01-17 | 2008-09-10 | 株式会社きんでん | 超音波振動感知センサを用いた人の状態判別装置。 |
JP7327300B2 (ja) * | 2020-07-02 | 2023-08-16 | トヨタ自動車株式会社 | スタビライザの制御装置 |
-
1997
- 1997-09-11 JP JP24642997A patent/JP3334572B2/ja not_active Expired - Fee Related
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