JP3329305B2 - 丸ビレット鋳片の連続鋳造方法 - Google Patents

丸ビレット鋳片の連続鋳造方法

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JP3329305B2 JP06614699A JP6614699A JP3329305B2 JP 3329305 B2 JP3329305 B2 JP 3329305B2 JP 06614699 A JP06614699 A JP 06614699A JP 6614699 A JP6614699 A JP 6614699A JP 3329305 B2 JP3329305 B2 JP 3329305B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、炭素を0.1〜
0.5重量%で、かつ、Mnを0.8〜3.0重量%含
有する溶鋼から丸ビレット鋳片を連続鋳造する方法に関
するものである。
【0002】
【従来の技術】炭素を0.1〜0.5重量%で、かつ、
Mnを0.8〜3.0重量%含有する溶鋼から丸ビレッ
ト鋳片を連続鋳造する場合、ビレットの表面に、図6に
示すように、ビレット表面の鋳込み方向に凹みを伴っ
た、長さが500〜3000mmのスジ状の欠陥(以
下、「スジ疵」と言う)が発生する。このスジ疵の凹み
が深い場合には、スジ疵の直下に割れが存在する。そし
て、スジ疵が発生した鋳片を、そのまま、例えばシーム
レスパイプの製造に供した場合には、表面疵が多発して
製品とならない。
【0003】図7、図8はスジ疵の発生率に及ぼす鋼の
炭素濃度及びMn濃度の影響を示したものである。Mn
濃度が1.0重量%の場合には、炭素濃度は0.1〜
0.5重量%(図7)の時に、また、炭素濃度が0.3
重量%の場合には、Mn濃度は0.8重量%以上(図
8)の時にそれぞれスジ疵の発生率が10%を超える。
【0004】上記したスジ疵は、その形態から推定する
と、図9に示すように、鋳型内における初期凝固シェル
1が座屈変形することにより発生すると考えられる。特
に、炭素を0.1〜0.5重量%で、かつ、Mnを0.
8〜3.0重量%含有する鋼において、スジ疵の発生率
が高い原因は、図10に示すように、溶鋼が1200℃
以下まで冷却されると、鋼の変形応力が鋼中におけるM
nの増加に伴って急速に増大することに起因している。
【0005】すなわち、丸ビレット鋳片の製造に際し、
鋳型内において凝固シェルが部分的に不均一な状態で凝
固が進行した場合に発生する凝固遅れ部2(図9(b)
参照)等の高温部が部分的に不均一な状態で存在する
と、凝固シェルの強度が凝固健全部(低温部)に比べて
相対的に弱くなるため、周方向の全歪がその部分(凝固
遅れ部2等の高温部)に集中し、凝固シェルが座屈変形
してスジ疵が発生すると推定されている。
【0006】従って、鋳型内における凝固シェルの凝固
収縮による周方向の座屈変形を防止するため、モールド
パウダーの凝固温度を上昇させて、鋳型への抜熱量を抑
制(鋳型内を緩冷却)することにより、凝固収縮歪みの
抑制を図ったものがあるが、図11に示すように、スジ
疵の発生割合は多少は減少するものの、満足できるもの
ではなかった。
【0007】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、上記した問
題点に鑑みてなされたものであり、炭素を0.1〜0.
5重量%で、かつ、Mnを0.8〜3.0重量%含有す
る溶鋼から丸ビレット鋳片を連続鋳造するに際し、スジ
疵の発生率を可及的に低く抑えることができる丸ビレッ
ト鋳片の連続鋳造方法を提供することを目的としてい
る。
【0008】
【課題を解決するための手段】上記した目的を達成する
ために、本発明に係る丸ビレット鋳片の連続鋳造方法
は、鋳型のオシレーションストロークを2〜6mmの範
囲となるようにして鋳造したり、また、加えて、鋳型内
にて電磁攪拌を付与するか、1.6〜2.6m/分の速
度で鋳造したり、また、1.6〜2.6m/分の鋳造速
度で電磁攪拌を付与したりすることとしている。そし
て、このようにすることで、炭素を0.1〜0.5重量
%で、かつ、Mnを0.8〜3.0重量%を含有する溶
鋼から丸ビレット鋳片を連続鋳造するに際し、スジ疵の
発生率を可及的に低く抑えることができる。
【0009】
【発明の実施の形態】本発明者らは、上記したスジ疵の
発生を可及的に抑制するために、先ず、スジ疵の生成メ
カニズムについて検討を行った。丸ビレット鋳片を連続
鋳造する場合、メニスカスにおける凝固シェルは円環状
となる。従って、鋳型オシレーションにより凝固シェル
の先端部が内側に倒れ込む際、周長さは一定であるた
め、先に図9で説明したように、凝固シェルは周方向に
座屈変形すると考えられる。
【0010】ここで、凝固シェルの先端部の倒れ込みの
指標となるオシレーションマークの深さは、本発明者ら
の実験によれば、図1に示すように、鋳型のオシレーシ
ョンストロークに依存することが判明した。このことか
ら、スジ疵を抑制するためには、オシレーションストロ
ークを減少することが有効であると考えられる。なお、
図1は炭素を0.4重量%、Mnを1.2重量%を含有
する溶鋼を、鋳型内にて電磁攪拌を付与しつつ、1.6
m/分の速度で連続鋳造した場合の結果である。
【0011】また、不均一凝固による凝固シェルに凝固
遅れ部等が発生した場合、先に説明したように、そこに
歪みが集中したり、凝固シェルの座屈変形が起こって、
スジ疵が発生する。このような凝固シェルの座屈変形に
対して、例えば特公平3−50614号では、鋳型に埋
設した熱電対の温度測定値からオシレーションを調節
し、縦割れを防止するものが、また、特開平7−963
60号では、鋳型に設置した磁界発生コイルにパルス状
の電流を、鋳型オシレーション周期に同期させるように
通電することで、モールドパウダーの消費量を調節する
と共に、オシレーション深さを低減させるものが開示さ
れている。
【0012】これらから、不均一凝固により凝固シェル
に凝固遅れ部等が発生し、そこに歪みが集中したり、凝
固シェルの座屈変形が起こって、生成されるスジ疵の防
止対策としても、オシレーションを調整することが効果
的であると推測される。
【0013】その他、不均一凝固を防止する方法として
は、図2に示すように、電磁攪拌を適用して、鋳型内壁
の温度変動σを減少させることも有効であると考えられ
ている。なお、図2に示す結果は、オシレーションスト
ロークを8mmとして、1.5m/分の速度で連続鋳造
した場合の結果を示したものである。
【0014】以上より、丸ビレット鋳片にスジ疵を発生
させないためには、以下の3点が有効であることが判明
した。 1) 凝固シェルの先端部における倒れ込みによるスジ
疵の起点生成を抑制するために、鋳型のオシレーション
ストロークを減少させる。但し、オシレーションストロ
ークを減少させた場合は、鋳型内モールドパウダーの流
入を阻害し、拘束を誘発するため、その下限を設ける必
要がある。図3はオシレーションストロークと拘束発生
率の関係を調査した結果であるが、この図3より明らか
なように、オシレーションストロークが2.0mm以上
の場合には、拘束なく丸ビレットを連続鋳造できること
が判る。
【0015】2) 丸ビレット周方向における凝固シェ
ル強度の相対的差異による凝固シェル座屈変形を抑制
し、鋳型内の均一冷却化を図るために、鋳型内電磁攪拌
を実施する。 3) 鋳型内の丸ビレットにおける凝固収縮の減少を抑
制するために、鋳造速度の下限を設定する。これは、低
速鋳造の場合、丸ビレットの鋳型内滞在時間が長くな
り、丸ビレットの収縮が大きくなるためである。加え
て、鋳型直下のブレークアウトを防止するために必要な
凝固シェル厚さを確保するため、鋳造速度の上限値も定
める。図4にスジ疵の発生率と鋳造速度の関係を示す
が、鋳造速度が1.6m/分以上ではスジ疵の発生率は
5%未満であることが判る。一方、鋳造速度が2.6m
/分を超えると、鋳型直下の丸ビレットの凝固シェル厚
さが薄くなるために、ブレークアウトが発生した。以上
の知見より、鋳造速度は1.6〜2.6m/分とするこ
とが望ましい。
【0016】本発明に係る丸ビレット鋳片の連続鋳造方
法は、上記した知見によって成されたものであり、炭素
濃度が0.1〜0.5重量%で、かつ、Mn濃度が0.
8〜3.0重量%を含有する溶鋼を丸ビレットに連続鋳
造するに際し、鋳型のオシレーションストロークを2〜
6mmの範囲となるようにして鋳造したり、また、加え
て、鋳型内にて電磁攪拌を付与するか、1.6〜2.6
m/分の速度で鋳造したり、また、1.6〜2.6m/
分の鋳造速度で電磁攪拌を付与したりすることを要旨と
する。
【0017】本発明に係る丸ビレット鋳片の連続鋳造方
法において、対象とする丸ビレットの製造に供する溶鋼
のMn濃度の上限を3.0重量%としたのは、これが普
通鋼丸ビレットの一般的規格内であるからである。上記
した構成の本発明に係る丸ビレット鋳片の連続鋳造方法
によれば、炭素濃度が0.1〜0.5重量%で、かつ、
Mn濃度が0.8〜3.0重量%を含有する溶鋼から丸
ビレット鋳片を連続鋳造するに際し、スジ疵の発生率を
可及的に低く抑えることができる。
【0018】
【実施例】以下、本発明に係る丸ビレット鋳片の連続鋳
造方法の効果を、本発明者らが行った実験結果に基づい
て説明する。直径が225mmの丸断面の連続鋳造用鋳
型を用いて、オシレーションストロークが8mm、鋳造
速度が1.6m/分の鋳造条件で、電磁攪拌を実施しな
いで、下記表1に示す含有率で炭素とMnを含有する溶
鋼を鋳込んで丸ビレット鋳片を連続鋳造した。その時の
スジ疵発生率を併せて表1に示す。
【0019】
【表1】
【0020】表1より明らかなように、本発明が対象と
する、炭素を0.1〜0.5重量%で、かつ、Mnを
0.8〜3.0重量%含有する溶鋼 (表1のC)から丸
ビレットを連続鋳造する場合には、スジ疵の発生率が各
段に高いのが判る。
【0021】次に、上記した表1のCの成分の溶鋼を、
上記した直径が225mmの丸断面の連続鋳造用鋳型に
供給し、鋳造条件を変化させて丸ビレットを製造した。
その結果を下記表2及び表3に示す。なお、表2及び表
3には鋳造条件も併せて示す。
【0022】
【表2】
【0023】
【表3】
【0024】上記表2に示したD及びEは、オシレーシ
ョンストローク、電磁攪拌、鋳造速度のすべての要件を
満たした請求項3に対応する実施例であり、完全にスジ
疵が防止できている。また、Fはオシレーションストロ
ークと電磁攪拌の要件を、また、Gはオシレーションス
トロークと鋳造速度の要件を満たした請求項2又は請求
項3に対応する実施例であり、スジ疵は少し発生するも
のの3%未満とかなり少ない。また、Hはオシレーショ
ンストロークの要件のみ満たした請求項1に対応する実
施例であり、スジ疵は3.8%と少ない。これらのうち
のE,G,H,Lについて棒グラフに表したのが図5で
ある。
【0025】
【発明の効果】以上説明したように、本発明に係る丸ビ
レット鋳片の連続鋳造方法によれば、炭素濃度が0.1
〜0.5重量%で、かつ、Mn濃度が0.8〜3.0重
量%を含有する溶鋼から丸ビレット鋳片を連続鋳造する
に際し、スジ疵の発生率を可及的に低く抑えることがで
きる。
【図面の簡単な説明】
【図1】炭素を0.4重量%、Mnを1.2重量%を含
有する溶鋼を、鋳型内にて電磁攪拌を付与しつつ、1.
6m/分の速度で連続鋳造した場合のオシレーションマ
ークの深さと鋳型のオシレーションストロークの関係を
示した図である。
【図2】オシレーションストロークを8mmとして、
1.5m/分の速度で連続鋳造した場合に、電磁攪拌を
適用した場合と適用しない場合の鋳型内壁の温度変動σ
を比較した図である。
【図3】オシレーションストロークと拘束発生率の関係
を示した図である。
【図4】オシレーションストロークが6mmの場合にお
けるスジ疵の発生率と鋳造速度の関係を示した図であ
る。
【図5】表2,3におけるE,G,H,Lの実施例につ
いて棒グラフに表した図である。
【図6】スジ疵の顕微鏡写真を示した図である。
【図7】Mn濃度が1.0重量%の場合におけるスジ疵
の発生率に及ぼす鋼の炭素濃度の影響を示した図であ
る。
【図8】炭素濃度が0.3重量%の場合におけるスジ疵
の発生率に及ぼす鋼のMn濃度の影響を示した図であ
る。
【図9】丸ビレット鋳片の製造に際し、凝固シェルが座
屈変形してスジ疵が発生する状態を説明する図で、
(a)は斜視図、(b)は平面図である。
【図10】鋼の変形応力におよぼす鋼中におけるMnの
影響を示した図である。
【図11】モールドパウダーの凝固温度を変化させた際
のスジ疵発生率を比較した図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平1−293960(JP,A) 特開 昭62−176656(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) B22D 11/00 B22D 11/16 B22D 11/053 B22D 11/115

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 炭素を0.1〜0.5重量%で、かつ、
    Mnを0.8〜3.0重量%含有する溶鋼を丸ビレット
    に連続鋳造するに際し、鋳型のオシレーションストロー
    クを2〜6mmの範囲となるようにして鋳造することを
    特徴とする丸ビレット鋳片の連続鋳造方法。
  2. 【請求項2】 鋳型内にて電磁攪拌を付与することを特
    徴とする請求項1記載の丸ビレット鋳片の連続鋳造方
    法。
  3. 【請求項3】 1.6〜2.6m/分の速度で鋳造する
    ことを特徴とする請求項1又は2記載の丸ビレット鋳片
    の連続鋳造方法。
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